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第1章なぜ、「音声障害」が起こるのか?

はじめに私は現在、音声専門の医師として、山王病院東京ボイスセンターのセンター長を務め、「声をうまく出せない」という患者さんの診療をさせていただいています。私のもとには首都圏のみならず、全国から声の悩みを抱えた方がたくさん診察を受けに来られます。診察と検査を受けていただいたあと、今後の治療方針をご希望をお聞きしながら決めていくのですが、このとき、多くの人が次のように口にします。「声が出ない原因がわかって安心しました。はじめて受ける検査説明もありました」ここに至るまで、いくつもの病院を受診され、そのたびに不安を募らせてこられた方が多いからです。「手術をせずに治す方法(リハビリ)もあるのですね」「声の医者やリハビリの先生がいることを知りませんでした」「一般のクリニックだと『声を出さないで』としか言われませんでした」声の不調の原因が判明し治療を始めてまもなくすると、患者さんたちからこうした感想を聞くことがあります。声の状態が良くなったことをきっかけに、今まで声のためにできなかったさまざまなことに挑戦される人もいます。声の不調は決して治らないものではありません。もちろん、治癒まで時間がかかる病気もありますが、きちんとした診断と適切な治療をすれば、治ることも多いです。決してあきらめないでください。声に不調を抱えている人は、子どもから大人まで全国に推定で6パーセント、752万人ほどいるといわれています。そういう人たちに、「声の不調は原因がわかれば、改善できる」「声は何歳からでもよくすることができる」ということをお伝えしたくて、本書を執筆しました。声の不調の原因がわかれば改善できる声が出しにくい、声がかすれるなどの、声を思い通りに出せなくなる症状は、医学的には「音声障害」といわれます。症状が軽ければ病院にも行かず、声に違和感を抱えながら生活している人もいます。また、病院に行っても異常なしと診断され、適切な処置をされずに、症状が改善せず病院を転々とされる人もいます。声の不調は心臓や脳の病気などと違い、多くは直接生命にかかわるものではありません。しかし、声に不調があるとコミュニケーションがとりづらく、確実に生活の質は下がります。また、不調の裏に大きな病気が隠れており、重症化するものもあります。甲状腺がん、肺がん、食道がん、さらに胸部大動脈瘤や脳梗塞が原因のケースもあるのです。こうならないためにも、声の不調の原因を早期に発見し、治していくことが大切です。しかしながら、音声障害を治療する専門の医師は全国に少ないという現状があります。一般的に、「耳鼻いんこう科」と標榜していると、医師は耳と鼻とのど、すべてについて診ることができるだろうと考えます。ところが実際は、「耳鼻いんこう科」は、「耳」を専門にする医師、「鼻」を専門にする医師、「のど(咽喉)」を専門にする医師に分かれており、声の治療を得意とする「のど」を専門にする医師は1000人ほどしかいない、というのが現状です。声に不調を抱えた人が、耳鼻いんこう科を訪ね歩かざるを得ない原因がここにあります。そこで本書では、声が出しにくい、声がかすれるなど声に不調を抱えているが、どのように治療すべきかわからない人、あるいは病院では特に異常なしと言われたものの、声をうまく出せるようになりたいと思っている人に、音声障害を改善する方法を紹介しています。病気・症状ごとに解説するとともに、声に不調を抱える人が複数の耳鼻いんこう科を訪ね歩かなくてすむよう、病院と医師の探し方についてもご紹介しています。また、声を出しやすくするエクササイズや日ごろのケアについても述べました。のどは体の中でいちばん外気にさらされている部分です。のどのエクササイズやケアをすることは、全身の健康を守ることにつながります。十分にケアをし、のど周りの筋肉を鍛えていい状態に保つことは、きわめて有効な健康法なのです。本書が、あなたの役に立つことを、心から願っています。渡邊雄介

目次はじめに第1章なぜ、「音声障害」が起こるのか?「音声障害」とはどのような病気なのかあなたの症状をチェックしてみよう音声障害の3つのパターンこんな人が音声障害になりやすい

第2章こんなにある!音声障害の検査法と治療法

治療を始めるうえで大切なこと音声障害を治療するための6つの検査音声障害の代表的な4つの治療法代表的な治療法①言語聴覚士による音声治療代表的な治療法②沈黙療法代表的な治療法③薬物療法代表的な治療法④手術それぞれの疾患に対する治療の流れ知っておきたい音声障害治療のお金のこと音声障害の治療に役立つ漢方薬・再生医療

第3章信頼できる医師・病院の見つけ方6つのチェックポイント

声の不調を正しく治せる人を見つけるのは難しい医師に伝えるべき5つのポイントポイント①のどの専門医であるポイント②「喉頭ストロボスコープ検査」ができるポイント③言語聴覚士の音声治療が受けられるポイント④さまざまな治療法を提示し、きちんと説明できるポイント⑤術後のケアも執刀医が行うポイント⑥セカンドオピニオンを認める

第4章音声障害を改善した患者さんの実例集

音声障害の原因はさまざま①特定の場面でのどが締まる「痙攣性発声障害」(30代・女性)②声帯にこぶができる「声帯結節」(30代・男性)③突然声が出なくなる「声帯麻痺」(20代・女性)④声を出すと咳が出る「老人性嗄声」(90代・男性)⑤風邪をきっかけに発症した「急性声帯炎」(70代・女性)⑥のどそのものに異常はない「心因性発声障害」(30代・女性)

第5章声の不調をラクにする毎日の習慣・トレーニング

のどの不調を治すうえでやめるべき9つの習慣のどにうるおいを与えて不調を防ぐ「つや声ドリンク」「吸入器」を使ってのどの不調を解消音声障害を改善する基本のトレーニング・のの発声法・ハミング法・チューブ発声法「声筋」の力をアップさせて不調を防ぐスペシャル・トレーニング・イエィ!プッシング法・ニャーオ法・チューイング法・つや声ストレッチ・つや声マッサージおわりに

「音声障害」とはどのような病気なのか「音声障害」とは簡単にいうと、「発声機能に障害が生じ、思い通りの声が出なくなる病気・症状」です。しかし、「音声障害」と一口に言っても、その原因はさまざまです。声帯やのど周りの異常により声が出しづらくなっている人もいれば、声の出し方に問題があるために声が出しづらくなっている人、精神的な問題に起因して声が出しづらくなっている人もいます。また、声の不調というと、「のど」だけに原因があるように思うかもしれませんが、声の不調には「のど」の声帯だけではなく、舌の動き、呼吸の仕方など、さまざまな要因がかかわっています。では、まず声が正しく出るしくみについてお話ししましょう。①声帯が均等にぶつかり、しっかり閉じることができる声を発するうえで最も重要な役割を担っているのが「声帯」です。声帯は左右1対となった細長い筋肉で、のどの上部に位置し、発声時には振動を起こして「音」を出します。声帯は男性で長さ1・5センチ、女性では1センチ程度の小さな組織で、のど仏の骨の内側にあります。息を吸うときは肺に空気を取り込むために外側に広がり、発声時には左右の声帯がぶつかり合って振動を起こさせるために、すき間がほとんどない状態となります。声を発するうえで大切なのは、左右の声帯が均等にぶつかり合って、きちんと閉じることです。しかし、左右いずれかの声帯にポリープがあるなどの理由で、声帯がぴったりと閉じないと、声がかすれたり発声しにくかったりといった症状が現れます。②舌や唇で上手に声を共鳴させることができる発声には、舌や唇の動かし方も深いかかわりがあります。肺から押し出される空気が声道を通るときに、声帯が狭まることで空気が振動します。このとき、舌や唇が柔軟に動くことで口の中で共鳴が起き、さまざまな音がつくられます。「あ・い・う・え・お」「か・き・く・け・こ」などと、音を区別して発声することができるのは、その音に合った舌や唇の動かし方ができているためです。③きちんとした呼吸ができている声を正しく出すには、声帯が左右均等にぶつかり合い、舌や唇の動きで共鳴する必要があるとお話ししましたが、これだけでは「聞き取りやすい声」にはなりません。音は空気の振動で伝わる性質を持っているため、声を自分以外の人に届けるには、空気で声帯を正しく振動させる必要もあります。この場合の「空気」とは、「自分自身の吐く息」です。つまり、口からきちんと息が出ていないと、声が正しく出せないのです。これらのことから、声が聞きとりやすい状態とは、①左右の声帯が健康で、左右均等にぶつかり合っている②出したい音に合わせて舌や唇を動かし、共鳴させることができている③吐く息で声帯が正しく振動しているこの3つがそろった状態になります。それに対して、声がきちんと出ない場合は、次のようなことが起こっている可能性があります。①炎症やポリープなどによって、左右の声帯が均等にぶつかり合っていない②舌や唇で正しく共鳴させることができていない

③息の吐き方に問題があるこのように正しく声が出なくなっている状態を「音声障害」といいます。こうした音声障害の症状を放っておくと、場合によっては手術をしなければならなくなったり、のどの筋肉が衰え、誤嚥を誘発し肺炎になってしまうこともあります。また、自分ではちょっとした声の不調だと思っていても、実は裏に別の病気があるために、声が出しにくくなっていることがあります。その中には、喉頭がんなどの重篤な病気を併発していることも少なくありません。喉頭がんのほかにも、声帯麻痺により声に症状が現れるがんで最も多いのは、甲状腺がんで、その次が肺がん、さらに食道がんと続きます。胸部大動脈瘤や脳梗塞が見つかることもあります。胸部大動脈瘤の場合、5人に1人の割合で音声障害の症状から始まっています。とはいえ、まさか誰も声のかすれが胸部大動脈瘤から来ているとは思わないでしょう。そのため、音声障害は、早く原因に気づき、ていねいに治療していく必要があるのです。発声や音声の障害と言葉の障害は異なる本題に入る前に、1つ留意していただきたいことがあります。それは「発声や音声の障害」と「言葉の障害」とは異なるということです。声に不調がある人の中には、発声や音声の障害ではないのに、本人やご家族が思い違いをしていることがあります。たとえば、「吃音」は最も混同されやすい症状の1つです。「吃音」は話し言葉がなめらかに出ない発話障害で、声ではなく脳が関係しているといわれています。また、「失語症」も音声障害と間違われることが多いです。失語症は脳梗塞や脳内出血によって、大脳にある言語をつかさどる部分が損傷されることによって起こる障害です。言葉が浮かばないという症状があります(故・田中角栄氏や長嶋茂雄氏が罹患した病気です)。こうした病気や症状は発声や音声の障害とは異なるものなので、当然のことながら治療のやり方が異なります。ご自身で判断できない場合は、まず近くの耳鼻いんこう科へ行き、ご相談いただくといいでしょう。耳鼻いんこう科で医師に声帯を見てもらえば、どの科へ行くべきかきちんと判断してもらうことができます。

あなたの症状をチェックしてみよう音声障害は本人が気づかないうちに起こっていることがあります。人は自分の声を客観的に聞くことができないからです。よほど自分の声に敏感な人でもない限り、気づくことは難しいでしょう。ここでは音声障害の兆候をいくつかご紹介しましょう。相手から聞き返されることが増えた正常な人は1回息を吸うと、20~30秒くらい話し続けることができます。ところが音声障害になると、話し出すとすぐに息苦しくなってしまうため、一息でしゃべることのできる時間が短くなります。頻繁に息継ぎをしなければならなくなるため、出てくる声は不安定になります。特にこうした症状が目立つのは、電話で話しているときです。電話の場合は機械を通して相手の声を聞くので、ただでさえ音が聞きとりづらい状況です。音声障害により声が不安定になっていると、相手に声が届きにくくなります。日常での会話はもちろんのこと、電話で何度も聞き返されることが増えている場合は音声障害を疑ったほうがいいでしょう。歌い慣れた歌が歌いにくくなったあなたは、以前よく歌っていた歌を、今も同じ声の高さで歌うことができますか?もしサビの部分の音が高くて出しづらくなっていたり、息が続かなくてブレスの回数が多くなったりしていたら要注意。音声障害になっている可能性があります。15秒以上声を出し続けることができない深く息を吸ったあと、「あ~」という声を15秒間出し続けたときに、声が続かなかったり、かすれてしまったりする場合は、音声障害の可能性があります。成人男性は30秒、成人女性は20秒が正常値となっています(正常値は「平均値」ではなく、正常な人の95パーセント以上ができるという意味です)。もし、15秒間声を出し続けられなかった場合は、発声器官に何か異常が起きていると考えたほうがいいでしょう。10秒以下の場合は、ほぼ確実に何らかの病気になっていると考えられます。すぐ病院へ行かれたほうがいいでしょう。以上のような兆候のほか、音声障害によくある特徴を次ページにいくつか挙げています。日本人の場合は、合計点数が15点以下であれば正常です。15点よりも高ければ、できるだけ早めに病院で受診することをおすすめします。

音声障害の3つのパターン音声障害の原因や症状はさまざまですが、大きく分けると次の3つに分類されます。①機能性音声障害(声の出し方に問題がある障害)②器質性音声障害(声帯やのど周りに異常がある障害)③心因性発声障害(精神的な問題に起因する声の障害)それぞれについて、ご説明しましょう。①機能性音声障害(声の出し方に問題がある障害)機能性音声障害は、声帯や舌、唇など、声を出す器官(器質)に問題はないのに、出てくる「声」が正常でない症状をいいます。楽器にたとえると、楽器自体には問題がないのに、出る音がよくない状態です。ピアノ自体の状態もよく、ピアノ線は全部正常に張られていて鍵盤もそろっているのに、弾き手があまり上手でないので、いい音が出ないというイメージです。機能性音声障害は声帯や舌、唇も正常に動いており、きちんと息も吐けているのに、声帯や舌、唇など、声を出す器官の〝使い方〟がよくないために、正常な声にならないのです。機能性音声障害の代表的なものとしては、次の3つがあります。・過緊張性発声障害舌やのどの筋肉が過剰に緊張することによって、声が出にくくなる障害です。・痙攣性発声障害普段はきちんと発声できるのに、特定の言葉を発するときだけ、のどがキュッと締まったり、声がふるえたり、かすれたりするなどの症状が起こる障害です。特定の動作をするときに障害が起こる「ジストニア」(筋肉が異常に緊張した結果、異常な姿勢・異常な運動を起こす状態)の一種と考えられています。・変声障害変声期を過ぎても変声前の高い声が続く障害です。思春期の男性に発症しやすいという特徴があります。機能性音声障害の場合、声帯や舌、唇そのものに問題はないので、治療は薬や手術ではなく、発声専門の言語聴覚士の指導のもと、リハビリとして声の使い方、呼吸の仕方、横隔膜をもとの正しい位置に戻し、自宅でもトレーニングを行いながら回復を目指すことが主な治療方法となります。②器質性音声障害(声帯やのど周りに異常がある障害)器質性音声障害とは、声帯をはじめ、声を出す器官や声帯を動かす神経などの身体的な異常により、声をうまく出せない症状をいいます。器質性音声障害は、その要因となる病気・症状が治らない限り、症状が改善することはありません。先ほど声が出しにくくなる症状の裏に、がんなどの重篤な病気が隠れている場合があることをお伝えしましたが、それらの病気が原因で起こる音声障害も、この器質性音声障害に当たります。自然回復が見込めない場合、まずは声帯を休めるために声を出さない「沈黙療法」を行い、あわせて薬の投薬、場合によっては手術など、その人の状況に合った医学的な治療を受けていただくことになります。代表的な器質性音声障害の症状をいくつかご紹介しましょう。・声帯炎声帯に炎症を起こしている状態です。声帯炎になると、のどの痛み、かすれなどの症状があります。大声で話したり、友達と会って長話をしたりした日の翌日、のどの痛みを感じたり声がかすれたりすることがありますが、この場合、ほとんどが声帯に炎症を起こしています。声を出さずに静かに過ごしたり、薬を使って治療したりすることで症状を改善させることができます。・声帯ポリープ・声帯結節声帯ポリープや声帯結節は、声帯にできる「こぶ」のようなもので、のどを酷使する職業の人に多く見られます。声帯結節は簡単にいうと声帯の使いすぎによる炎症性のむくみです。両方の声帯の前方3分の1くらいのところに、左右対称に発生しやすい傾向があります。長期間にわたり無理な発声をしたり声を出しすぎたりすると、声帯の粘膜にむくみが生じ、結節ができます。その状態のままさらに声帯を酷使すると、粘膜の充血した部分が破れて出血し、血腫を形成してポリープとなっていきます。声帯ポリープは血腫で、通常左右の声帯のいずれか片側の中央部分にできやすくなっています。なお、ポリープのような大きな血腫を形成しないまでも、喫煙などによって左右の声帯にむくみが生じている「ポリープ様声帯」になることもあります。いずれの場合も、声帯をぴったりと閉じることができなくなるため、正常な発声ができず、声がかすれたり思うような声が出なくなったりなどの症状が起こります。

・老人性嗄声加齢による生理的変化や、人と会話をしないことで声帯が委縮したことにより、声が出しにくくなったり、しゃがれ声になったりする症状です。息が長く続かず、会話をしているときに息継ぎが多くなったり、話しているときに咳をしやすくなったりといった症状も起こります。特に男性に多く見られます。老人性嗄声はのどの筋肉が弱ることで、誤嚥を誘発し、肺炎の原因になることもあります。声を出さない生活をしたり、症状を放置したりしてしまうと、余計に声帯の筋肉の萎縮が進むので注意が必要です。嗄声(声がれ)の症状がある場合は、きちんと病院へ行き、診断を受けて、対処されることをおすすめします。・声帯麻痺声帯麻痺とは、外傷や腫瘍、声帯をつかさどる神経の損傷などにより、声帯をコントロールする筋肉が動かせない状態をいいます。声帯麻痺になると左右の声帯をぴったりと閉じることが困難になるため、罹患前に出ていた大きさの声が出ず、かすれ声になったり、発声時に息もれがして声にならなかったりといった症状が起こります。声帯麻痺の原因はさまざまです。甲状腺がんや肺がん、食道がん、胸部大動脈瘤のような重篤な病気からくるもの、脳梗塞や脳出血、脳外傷によるもの、また長時間の全身麻酔の影響によるもののほか、原因不明で起こることもあります。原因不明のものの中には、ウイルス感染によるものがあると考えられています。声帯麻痺は自然回復するものもあれば、長期間にわたって症状が持続し、自然回復が見込めないケースもあります。・逆流性食道炎による音声障害逆流性食道炎による音声障害は、強い酸性を持つ胃液や胃で消化されるはずの食べ物が、食道に逆流することで起こります。胃液や食べ物が逆流すると、食道に炎症が起こり、胸の痛みや胸やけなどの症状が起こります。この逆流が声帯に及ぶと、声帯が炎症を起こし、声がかすれることがあります。逆流性食道炎による音声障害は、寝る前にドーナツなどの脂っこいものを食べる習慣のあるアメリカの人に多いとする報告もあります。・喉頭がん喉頭とは「のど仏」の骨のところに位置する器官で、声帯も含まれます。鼻や口から取り込んだ空気を気管へ、食べ物や飲み物を食道へと振り分ける働きをしています。喉頭にできるがんは「喉頭がん」といい、がんが発生した場所によって「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3つに分類されます。これら3種の喉頭がんのうち、最も声に影響するのは、声帯にできる声門がんです。声門がんの場合、発症後、早い段階で声がれの症状が現れます。がんの進行とともに声がれの状態はひどくなり、声門が狭くなるために息苦しさを感じるようになります。また血痰が出ることもあるため、比較的早期発見されやすいという特徴があります。声門上部がんの初期には、食べたり飲んだりしたときに異物感や痛みを感じることが多いです。声門下部がんではがんが進行するまで無症状で、かなり進行してから声がれなどの症状が現れることが多いため、発見が遅れがちです。のどに異変を感じたら、早めに耳鼻いんこう科で診察を受けるようにしてください。

③心因性発声障害(精神的な問題に起因する声の障害)本来、人は無意識に声を出すことができます。歩くのと同じように、成長とともに学習し、無意識に発声ができるようになっていきます。ところが、何らかのストレスがきっかけで、器質的にも機能的にも問題がないにもかかわらず、声がかすれてうまく出せなくなったり、ほとんど声が出なくなったりすることがあります。これを「心因性発声障害」と呼びます。突然声が出なくなるケースと、徐々に声が出なくなっていくケースの両方があります。たとえば、大勢の人の前で話をするなど緊張を強いられる場面で、声がひっくり返ったりかすれてうまく出なかったりする経験をしたとします。すると脳が「緊張した」という思いと、「声がうまく出なかった」という事実を結びつけて認識します。脳が誤作動を起こすわけです。そのため、次に同じ状況に陥ったとき、同様の誤作動が起こり、声がうまく出せない状態になってしまうのです。また、強い悲しみなど精神的ショックを受けたことをきっかけに、声が出なくなることもあります。このように、心因性発声障害はストレスが原因なのですが、本人がストレスと認識していない場合があります。そのため、医師と対話を重ね、さまざまな可能性を探りながら治療していく障害でもあります。***このように声の不調にはさまざまな種類があります。症状も突発的に起こるものから徐々に起こるものまでさまざまです。自分で判断するのは難しいので、まずは病院で判断してもらうのが治療の一歩になります。

こんな人が音声障害になりやすい音声障害には、さまざまな種類があるといいましたが、音声障害は職業や生活習慣によって発症しやすい人がいます。どんなタイプの人が音声障害になりやすいのか、見ていきましょう。①よく声を使う人政治家や教員、歌手、声優などの声をよく使う職業の人は、声帯結節や声帯ポリープなどの「器質性音声障害」が起こりやすい傾向があります。声帯結節は「声帯のペンだこ」とも呼ばれています。声は左右の声帯がぶつかり合って出るので、声を出す回数が多ければ多いほど、声帯がぶつかり合う回数が多くなります。ぶつかったところが硬くなって節ができてしまうのです。②10~20代の女性若い女性は一般的に高い声を出します。高い声を出すためには、声帯をたくさん振動させなければなりません。たとえば、50代男性の場合、声帯の振動数は1秒で100回程度ですが、若くて声が高い女性は1秒で200回と、振動数が倍に跳ね上がります。振動数が多いのは、声帯がぶつかり合う回数が多いということ。すなわち声帯結節や声帯ポリープができやすく、音声障害を起こしやすいのです。③喫煙習慣のある人喫煙は、のどを熱い煙が通るため、声帯に悪影響を及ぼします。熱によって声帯がやけどをしたような状態になってしまうのです。声帯はやけどをすると水膨れに似た感じになり、むくみが出てきます。むくむことによって左右の声帯がきっちり閉じず、発声がうまくできなくなります。また、のどが煙でいぶされることで、声質がスモーキーにもなります。タバコをよく吸う人の声がざらざらした感じがすることが多いのは、声帯が絶え間なくいぶされているためです。④高齢者人間の体内の水分率は、乳児のときは70~80パーセントと最も多く、年齢を重ねるにつれて減っていきます。成人男性で60パーセント、成人女性で55パーセントとなり、高齢になるとさらに50パーセント程度まで低下します。体内水分率の低下により直接的な影響を受けるのが、いわゆる粘膜と呼ばれる器官です。声帯も粘膜の一種で、健康な状態ではみずみずしくうるおっているため、きれいに振動することができます。ところが、高齢になって水分量が減ってくると、声帯もうるおいを欠いた状態になります。するときれいに振動を起こすことができないため、カサカサした声になってしまうのです。⑤閉経後の女性女性は閉経後に音声障害が起こる場合があります。女性の声が高いのは女性ホルモンの働きに負うところが少なくありません。そのため閉経後、女性ホルモンの分泌の低下にともなって、高い声が出せなくなったり、声がかすれたり、出にくくなったりすることがあるのです。閉経後の声の変化も音声障害の一種として、治療の対象となります。なぜなら、ホルモン分泌の低下にともなう音声障害は、ホルモンを補う治療をしても完全には治りにくいからです。この場合は、ホルモンの補充療法を行うこともあります。下支えとして音声治療も行います。もし①~⑤のタイプに当てはまらなくても、41ページのチェックリストで当てはまることが多い場合は、病院で診断を受けることをおすすめします。第2章では、音声障害の検査法と治療法の種類、それぞれの障害にどのような治療をしていくのかについてご説明します。

 

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