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第1章あなたの声はどんな声?

はじめにあなたは自分の声に自信を持っていますか?「いい声」の持ち主はそれだけで、相手を心地よい気分にさせます。話している自分自身もとてもすがすがしい気分になり、自分もまわりもみんな笑顔になるのです。「いい声」で話す人は、初対面から相手に好印象を与えます。はじめからよいイメージを持たれれば、コミュニケーションもとても楽になりますね。私はオペラ歌手ですが、この本は「美声で歌えるようになろう」というような音楽の本ではありません。みなさんに幸せをお届けする本です。そのために必要な「いい声」を手に入れる方法をお伝えしたいと思います。「いい声」という、コミュニケーションに役立つ強力な武器を得たあなたの生活は、きっと変わることでしょう。今よりも、人から好かれるようになります。人から信頼され、頼りにされるようになります。人間関係がスムーズになり、広がります。そうすると、仕事もうまくいくようになります。つまり、人生がすべてうまくいくようになるのです。「いい声」とは、選ばれた特別な人だけが持つものではありません。人はみな、生まれながらにして、美しい声を神様から授けられているのです。大声で泣く赤ちゃんの姿を思い浮かべてください。あのお腹から出している大きな泣き声が理想的な発声であり、人間が本来持っている美しい声の原型です。赤ちゃんは大声で泣き続けていても、声をからすことはありません。それは、無理のない自然な発声による声を持って生まれてきているからです。私は、この正しく発声された「いい声」の、そのパワーを「声力」と名づけました。ところが成長するにつれ、気候や食生活などの影響を受けて、その天賦の美しい声はしだいに失われていってしまうのです。なぜオペラ歌手の私が、歌を歌う方法ではなく、一般の方が話すときの発声について論じるのかといいますと、歌うときの声は、話すときの声が基本となっているからです。「歌うときと話すときの声は別」と思っている方が意外と多いのですが、オペラ歌手(特に外国人のオペラ歌手)は、ふだんの会話のときも「いい声」です。オペラ歌手=いい声の持ち主、といえるのです。といっても、私自身はずっと声にコンプレックスを持っていて、歌曲を歌う世界にはいるなんて考えたこともありませんでした。銀行マンの父と母のもとに生まれ、クラシック音楽に包まれて育ったわけでもありませんでした。高校時代まではスポーツ少年で、大声を出しながらグラウンドを駆け回っていたので、運動部員にありがちな、かすれたバンカラ声の持ち主でした。今の私の声は、その後のさまざまな訓練によって獲得したものです。私がこの本をまとめたいと思った動機は、私自身が「いい声」を獲得する過程で編み出した方法をみなさんにお伝えし、みなさんにも「いい声」になっていただいて、ぜひ人生をよりよいものにしていただきたいと思ったからです。それが、本書でお伝えする「いい声」レッスン、別名「声力開発トレーニング」です。私は20年以上前から、横浜市の言語障害児教育に携わる先生方に、発声法・発音法を教えていました。ここに一般の先生方や一般の方々も参加するようになり、「発声教室」が始まりました。みなさんどんどんいい声になり、声がよくなってきたことで「歌いたい!」という気持ちがわき上がってきたようで、発声教室はやがて「声楽教室」となりました。最近では、横浜市のホールでのコンサートに参加し、独唱されるほどになりました。声をしっかりと出すことで、みなさん若々しく魅力的でいきいきとされているのです。発声教室は、いまでは横浜だけでなく、東京、大阪、前橋、高崎などでも開かれています。声力の効用は絶大です。あなたも、人生がうまくいく「いい声」をぜひ手に入れてください。

CONTENTSはじめに第1章あなたの声はどんな声?誰もが「いい声・美しい声」を持っている相手に与える印象の4割は「話し方や声の質」まずは自分の声をチェックしよう声を分ける4つの要素「悪い声」とはこんな声です発声のしくみを学ぼう①たいせつなのは呼吸発声のしくみを学ぼう②腹式呼吸と横隔膜発声のしくみを学ぼう③声帯の働き発声のしくみを学ぼう④発音について

第2章私の「声力」探しの旅

まずは私のプロフィールをご紹介だみ声の高校生が藝大をめざす正しい訓練で「いい声」を手に入れるイタリア・ドイツで発音・発声法を学ぶ教えることで「声力開発トレーニング」を確立

第3章「いい声」にたいせつなこと

「いい声」を出すための腹式呼吸医師も認めている腹式呼吸腹式呼吸にはさまざまな健康効果がある日本語は「いい声」を出すにはむずかしい言葉国による発声の違いには環境も関係している声帯には個人差がある声帯を意識して自然な声の出し方を覚えよう声帯を疲れさせない発声をしよう日本語独自の特徴を知っておこう声を出すための準備のどを疲れさせない正しい立ち方

第4章声力開発トレーニング声力開発

トレーニングの進め方正しい立ち方のレッスン腹式呼吸のレッスン*準備運動①腹式呼吸のレッスン*準備運動②腹式呼吸のレッスン*準備運動③腹式呼吸のレッスン*準備運動④腹式呼吸のレッスン*準備運動⑤腹式呼吸のレッスン*準備運動⑥腹式呼吸のレッスン*基本エクササイズ①腹式呼吸のレッスン*基本エクササイズ②腹式呼吸のレッスン*基本エクササイズ③発声のポイント①口蓋垂を上げてのどを開く発声のポイント②声帯を下げて振動させる発声のレッスン①口蓋垂を上げる練習発声のレッスン②声帯を振動させる練習「イー・エー」発声のレッスン③声帯を振動させる練習「イー・エー・アー」発声のレッスン④総仕上げ

第5章「声力」を活かす

声力で自分を表現しよう声力は伝達力*アナウンサーSさんの話声力は人間関係力*セミナー講師Fさんの話声力は説得力*企画マンIさんの話声力はコミュニケーション力*予備校講師Hさんの話声力は人間力*言語聴覚士Oさんの話おわりに〜いろいろな声を表現する日本語の豊かさ〜

第1章あなたの声はどんな声?

誰もが「いい声・美しい声」を持っている私は「いい声」こそが、人の自信や力となり、幸せを得るための大きな武器となるツールだと思っています。「オペラ歌手ならあたりまえでしょう」と思われるかもしれませんが、けっして歌手だからというだけではありません。人前に出て歌ったり話したりする職業でなくても、会社員や主婦の方、あるいは学生の方であっても、誰にとっても声の重要性は変わりません。声はその人を表現する重要なものだからです。人間は社会生活をする動物です。社会生活をうまくするためには、他人とのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションを円滑にするためには、自分の意思をはっきりと伝え、相手にその内容を理解してもらわなければなりません。円滑なコミュニケーションのためには、何が必要でしょうか?しっかり整理して話すこと?説得力を持たせる内容にすること?相手の立場になって話をすること?もちろん、これらはとてもたいせつなことです。でもそれ以前に、他人と話をするときに大きな「障害物」があることを忘れてはいませんか?その障害物とは、「好き・嫌い」という人間の生理的な感覚です。人間は、「好意を持っている人の話はしっかり聞こうとするが、嫌いな人に対しては耳をふさぐ」ものです。これは理性ではなく、まさしく生理的な問題です。人と会ったとき、はじめに目に入るのは相手の姿形です。その人の顔や服装、かもしだす雰囲気などパッと見てとれる部分だけで、まず「好き・嫌い」のフィルターが働きます。だからこそ人は外見に気を配り、その場に合わせた装いになるように服装を整えるなど、努力をするのです。そして、つぎに判断基準になるのが「声」です。相手の声が、自分の耳に心地よく響けば好意を抱きますし、耳障りなものであれば嫌悪感を持ってしまいます。ですから、どんなに会話がうまくても、「声」が気に入られなくては、じゅうぶんなコミュニケーションは成立しないのです。「他人に気に入られる声」といっても、声にも好き嫌いの感情が働きますから、すべての人が同じような声を好きになるわけではありません。だから、こういう声を出せばコミュニケーションがうまくいくという「絶対的な声」は存在しません。それでも、「より多くの人に好感を持たれる声」は存在します。それは、「正しく発声された声」、つまり「人間が生まれながらにして持っている、無理のない、自然な声」です。すべての人が持っていたはずの自然な発声を思い出し、あなたの「いい声」を取り戻すことが、私のお教えする発声法なのです。残念ながら多くの人は、顔やプロポーションほどには自分の声に気を使っていないのが現状です。けれども、もしもあなたが発声法で「いい声」を手に入れられるとしたらどうでしょうか。健康や美容のために努力したり、おしゃれに気を使うように、自分の発声を見直してみましょう。自然な発声を覚えるだけですから、そんなにむずかしいことではないのです。

相手に与える印象の4割は「話し方や声の質」この本でご紹介する「声力開発トレーニング」は、何か特別な「いい声・美しい声」の出し方ではありません。みなさんが、本来生まれながらに持っている、ごくごく自然な声をよみがえらせるトレーニングです。そうして「いい声・美しい声」を出せるようになると、あなたの毎日は大きく変わり始めるのです。それはなぜでしょう?心理学に「メラビアンの法則」というものがあります。アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが発表したもので、別名を「3Vの法則」ともいいます。「3V」とは、Visual(見た目、表情、しぐさなどの目からはいる情報)Vocal(声の質、話すスピード、声の大きさ、話し方などの耳からはいる情報)Verbal(話している内容などの言葉の意味情報)の頭文字をとったものです。見た目、声、話の内容ということで、カンのいい方ならピーンと来たかもしれませんが、これは相手とコミュニケーションするときの、相手の印象を左右する情報の要素を数値化した法則です。これによると、・「見た目、表情、しぐさなどの目からはいる情報」が相手に与える印象度合い……55%・「声の質、話すスピード、声の大きさ、話し方などの耳からはいる情報」が相手に与える印象度合い……38%・「話している内容などの言葉の意味情報」が相手に与える印象度合い……7%いかがでしょうか。話している内容そのものよりも、「目や耳からはいってくる情報」のインパクトのほうが、はるかに強いというのです。つまり、「いい声・美しい声」を出せるようになると、相手に約4割のインパクトを与える「聴覚情報」に対するベーシックな武器を手に入れられたことになります。正しい発声による声は、話し相手に心地よさ、安心感、信頼感を与え、話す内容が受け入れられやすい下地をつくります。この声のパワーこそが「いい声」、すなわち「声力」です。声力は、話す仕事、声を出す仕事についている人なら、誰もが必要とするパワーでしょう。話す仕事、声を出す仕事にはどんなものがあるでしょうか?アナウンサー、歌手、俳優、司会業、政治家、弁護士、教師、セミナー講師、営業マン、経営者、バスガイドやツアーガイド……。ちょっと待ってください。たしかに、これらの職業の人は、話をしたり、声を出すことの多い仕事ですが、ほかのほとんどの職業の方も、人とコミュニケーションをうまくとったり、会議やプレゼンテーションの場で説明しているのではないでしょうか?また、プライベートの場でも、友人と楽しく語ったり、恋人に愛をささやいたりしているのでは?冠婚葬祭のスピーチなどでも、「いい声」できちんと話せることは大切なことです。職業に関わらず、「声力」を身につけておくことがいかにたいせつか、おわかりいただけると思います。

まずは自分の声をチェックしよう正しい声の出し方を学ぶ前に、いま現在のあなたがどんな声を出しているのかを、改めて観察してみましょう。といっても、自分が口から出している声と同じものは、けっして自分では聞くことはできません。あなたが聞いている自分の声は、ほかの人の耳に音の波として届くものと同じではなく、あなた自身の耳骨の振動を聞いているものなのです。録音した自分の声を聞いたとき、ほとんどの人は、「あれっ?」と違和感を持つはずですが、実際は、その録音された声のほうがほかの人が聞いているあなたの声に近いのです。では、あなた自身の声を自己診断してみましょう。日本語は声を表現する形容詞が豊富な言語です。いろいろな角度から、声の自己分析をするために、自分の声のチェック表を見てチェックしてみてください。①Aグループ〈声の表現〉自分の声のチェック表の「Aグループ」には、声を表現する25組の対照的な言葉が並んでいます。自分自身の声を思い浮かべ、左右のどちらか近いと思う言葉に○をつけてください。わかりにくかったら、誰かにあなたの声を聞いて評価してもらってもよいでしょう。厳密に考える必要はありません。パッと見たときの印象で、どちらか近いほうを選んでください。②Bグループ〈声の印象〉つぎは自分の声のチェック表の「Bグループ」です。こちらには声の印象を表す38の形容詞群があります。あなた自身の声を表すのにふさわしいと思う言葉のすべてに、○印をつけてください。つけ終わったら、印をつけた言葉を読んでみてください。それがあなたの「声」の特徴です。「よい」「悪い」の評価ではありません。あなたの今の声を浮き彫りにしているだけです。ただし、一般的に「人が聞いて心地よい声」というものはあります。誰にでも受けがよいのは、具体的には次のような声といえます。・明るい声―――――聞いている人の気分も明るくなります・ゆったりした声――周囲が落ち着いた雰囲気になります・通る声――――――とても聞きやすく、話が伝わります・やさしい声――――気分がなごみ、説得力が増します・温かな声―――――ホッとした雰囲気を生み出します・静かな声―――――相手が話をよく聞こうという気分になります先ほどつけた○印の言葉をもう一度眺めてみてください。その中に、「あまりイメージのよくない言葉だな」と感じるものがあったら、それがあなたの声の改善ポイントです。正しい声の出し方をマスターすれば、そのほとんどが改善され、魅力的な声に近づいていくはずです。

声を分ける4つの要素前項でのチェックで、あなたがどんな声の持ち主か、なんとなくわかってきたでしょうか?そもそも人の声には、大きく分けて4つの要素があります。①大きい声、小さい声といった「声の大小」②高い声、低い声といった「声の高低(ピッチ)」③早口、のんびり口調といった「話すスピード」④よく響く声、くぐもった声といった「声の響き方」それぞれご説明しましょう。①大きい声、小さい声といった「声の大小」声の大小(ボリューム)は、肺から吐き出される呼気の量、強さで変化します。ギターの弦を、強く弾くと大きい音になり、そっと弾くと小さな音が出るのと同じ原理です。②高い声、低い声といった「声の高低(ピッチ)」声の高低は、声帯の振動数で決まります。一般的に短い声帯は高い声、長い声帯は低い声になります。ギターで振動する距離を短くして押さえると高い音、振動する距離を長くして押さえると低い音になるのと同じです。音程は、声帯の筋肉の緊張をコントロールしてつくり出しているのです。③早口、のんびり口調といった「話すスピード」これは話し方の問題なので、声帯や口腔の動きとは関係はありません。話し方を意識することで、自分でコントロールできる要素です。④よく響く声、響かない声といった「声の響き方」響き方は、共鳴させる部分の容積で決まります。咽頭、鼻腔、口腔を広げて、共鳴容積が大きくなると声がよく響くようになります。声をきれいに響かせることができないと、くぐもったこもった声で、聞き取りにくくなってしまいます。この4つのポイントがわかれば、自分の声の改良にとりかかることができます。たとえば、声が小さくて悩んでいる人が、いきなり大きな声を出そうとがんばってはいけません。そんなことをすれば声帯を傷めるだけです。それより、腹式呼吸をマスターして、肺から出る空気の量を多くし、強く吐き出すことを覚えればよいのです。高い音域の音が出ない、あるいは低い音が出ないと感じている人は、声帯の筋肉の動きをコントロールすることをマスターしましょう。声が響かず、「エッ?」と聞き返されることの多い人は、正しい発声、発音をしていない人がほとんどです。このような人は、正しい口の開け方や、口腔内のコントロールを覚えればよいということになります。

「悪い声」とはこんな声です「いい声」の出し方を説明する前に、反面教師としての「悪い声」についても考えておきましょう。悪い声とは、どこかにムダな力のはいった、無理をして出している声です。この「無理」をしている部分に注意し、発声を修正していけば「いい声」になるはずです。①大げさに力のはいった声②息を吐きすぎの声③息を止めて力を入れた声④鼻声⑤だんご声(こもった声)⑥ピッチの高すぎる声⑦大きすぎる声⑧もごもごしゃべる声それぞれご説明していきましょう。①大げさに力のはいった声別に強調するわけでもない言葉に力をいれて、たえず力がはいっているしゃべり方です。とくに語尾に力がはいるしゃべり方で、関西弁によく見られます。これは、その人に自信がない場合に多く見られます。自分の主張を聞き入れてもらいたいときのしゃべり方です。すぐに疲れるばかりでなく、のどに異常な力がはいって声帯を疲れさせてしまいます。②息を吐きすぎの声ふつう以上にのどに力がはいってこれも声をからしてしまい、声帯を疲れさせてしまいます。声帯に異常のある場合に多い発声です。③息を止めて力を入れた声お腹に息をたくさん吸いこんで、妙に力んで出している声です。威厳を持たせよう、貫禄があるように見せよう、という意識がこのような声を生み出します。大相撲の力士が勝負後のインタビューでしゃべっているときのような感じで、聞いているほうも息苦しくなってしまいます。④鼻声鼻にかかった声はフガフガしていて聞き取りにくいものです。これは声帯の疲れを減らすために息を節約し、鼻腔共鳴を使って声を出しているケースです。鼻腔共鳴とは、本来口から鼻に抜ける息が、鼻の中で共鳴してしまうことをいいます。自分の声がこのような鼻声になっているかどうかを判別する方法があります。指で鼻をつまんで「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」と母音を発音してみてください。ふつうは声は変わりませんが、鼻声の場合は声が変わります。同じように鼻をつまんでナ行の「ナ」「ニ」「ヌ」「ネ」「ノ」、マ行の「マ」「ミ」「ム」「メ」「モ」を発音すると、詰まった音になって声にならないのも鼻声の特徴です。⑤だんご声舌の奥、つまり、舌根(舌の付け根)に力を入れて出している声です。舌の付け根が上に上がって、のどの奥でこもって声を出しているのです。うがいをしているようなのどの形で声が発せられる状態で、これも聞いている人が疲れてしまいます。舌根に力がはいっているということは、声帯にも余計な力がはいっているということですから、すぐにのどが疲れます。これがいちばんのどが疲れる声の出し方で、多くの人にこの状態が見られます。⑥ピッチの高すぎる声一般にいう「甲高い声」です。声を出している人のテンションの高さからくるもので、過剰にのどの筋肉を使っているため、いわゆるリズムのないしゃべり方になって、すぐにのどが疲れてしまいます。テンションが高いため、聞いている人は興奮させられますが、長時間聞いているとやはり疲れます。⑦大きすぎる声耳が遠い人などによく見られるのですが、しゃべっている部屋の広さや話し相手との距離感を無視して、それ以上に大きな声でしゃべってしまいがちです。のどに異常な力を入れてしゃべっているため、のどの筋肉が疲れてすぐにしわがれ声になってしまいます。聞いている人もすぐに疲れてしまいます。⑧もごもごしゃべる声口をあまり開けずにしゃべる話し方です。母音の区別がつきにくく、子音も唇や舌などもあまり動かしません。口の中で空気がこもって、正しく外に呼気が出ていないのです。このようにしゃべる人の話はわかりづらく、聞いている人は言葉を理解するための努力だけで疲れてしまいます。自分の声、話し方にあてはまるものはあったでしょうか。多くの人はこうした欠点に気づかず、悪い声を自覚していないものです。自分でわかっていれば、改善策は必ずあります。この本でご紹介する「声力開発トレーニング」は、これらの悪声をコントロールするためのスキルであり、そ

のために肉体を改造していくトレーニングです。

発声のしくみを学ぼう①たいせつなのは呼吸ふだんなにげなく声を出しているときは、発声のしくみなどは意識していませんね。あたりまえのように話をしていると思います。ここでは、発声のしくみを勉強しておきましょう。人は、次のような流れで声を出しています。①呼吸で肺から押し出された空気が、横隔膜の収縮で気管に送られる②送られてきた空気が声帯にあたり、声帯を振動させて音をつくる③振動してできた音が口腔(口の中)で共鳴し、母音をつくる④さらに口、唇、歯、舌、のどなどを動かして、子音をつくるつまり発声とは、息を吐き出すことで声帯に息をあて、声帯を振動させるという行為です。声はつねに呼吸にともなって出ています。ですから、よい発声には、まず「呼吸」がとてもたいせつな要素となります。あなたは、しゃべるときに呼吸を意識しているでしょうか?おしゃべりな人を「機関銃のよう」などと形容することがありますね。「いつ息継ぎをするのだろう」と思うほどに、まくしたてる人もいます。息つぐ暇もなくしゃべりつづけたり、しゃべっている途中で一気にたくさんの空気を吸いこみすぎたりするのはおすすめできません。そのような呼吸は、自然な空気の流れではないので、のどに異常な負担がかかってしまいます。呼吸はつねに一定のリズムでおこなうこと。これが発声のポイントのひとつですので、おぼえておいてください。

発声のしくみを学ぼう②腹式呼吸と横隔膜声を出すのに必要なのはまず「呼吸」と述べました。呼吸には、「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。胸式呼吸は、胸の筋肉を使って肺を覆っている肋骨を広げ、胸をふくらませておこなう呼吸です。一度にたくさんの空気を吸うことができますが、胸や肩の筋肉を使い、身体は緊張状態になって、のどにも力がはいってしまいます。いっぽう腹式呼吸は、お腹を使って横隔膜を下げることで、肺をふくらませておこなう呼吸です。胸の筋肉は使わず、身体もリラックスした状態になり、のどにもムダな力がはいらない呼吸法です。通常の呼吸は、どちらか一方ではなく、組み合わせておこなわれています。ですが、発声のためには、身体を緊張状態にせず、のどにも負担がかからない腹式呼吸のほうが適しています。そして、腹式呼吸に非常にたいせつな役割をしているのが「横隔膜」です。横隔膜はドーム状の形をした薄い筋肉で、肺の下にあり、肺のある胸部と内臓のある腹部を分けています。横隔膜は筋肉ですから、トレーニングをして鍛えることができます。横隔膜を鍛えることで、腹式呼吸がやりやすくなり、「いい声」が出るようになります。また、体幹が安定してぶれない身体になるといったメリットもあります。本書でご紹介する「声力開発トレーニング」の柱のひとつは、横隔膜を鍛える腹式呼吸のレッスンです。くわしくは4章をご覧ください。

発声のしくみを学ぼう③声帯の働き前の項目でお話ししましたが、発声とは「息を吐き出すことで声帯に息をあて、声帯を振動させる」行為ですから、もっとも重要なのは「声帯」です。まず、声帯の位置の図で声帯の位置を確認してください。声帯は、口や鼻と肺をつないでいる気管の上にある「喉頭」と呼ばれる部分にある筋肉(表面は粘膜)です。まず、喉頭について説明しておきましょう。少し難しいですがお付き合いください。喉頭は、喉頭蓋、甲状軟骨、披裂軟骨、声帯などから成り立っています。喉頭蓋は、その名のとおり「のどのふた」。喉頭のいちばん上方にあり、食べ物を飲みこむときに倒れて、食物が気管に入りこまないようにフタをする役目をします。甲状軟骨は、のどの前側にあって、喉頭蓋を倒すことに関係しています。甲状軟骨の突起している部分が、いわゆる「のどぼとけ(喉頭隆起)」です。声帯は、前側を甲状軟骨に覆われ、後ろ側は披裂軟骨にくっついています。呼吸をするときは、声帯は、カーテンのように真ん中から割れて空気を通しますが、声を出すときは左右から閉じ、狭いすきまをつくります。このすきまを息が通るとき、声帯が振動して音が出るのです。この声帯を閉じる働きには、披裂軟骨がかかわっています(大橋耳鼻咽喉科院長音声医のファイバースコープによる観察より。呼吸時の声帯と発声時の声帯の図参照)。声を出すときにのどぼとけをさわると、奥のほうが振動しているのがわかるでしょう。これは閉じた声帯の隙間を空気が通って、声帯を振動させているということなのです。このしくみは、木管楽器の音が出るメカニズムとよく似ています。木管楽器には、奏者が吹くところにリードという薄い板がついていて、息を吹きこむことで、リードがこまかく振動して音が出るしくみになっています。同じ木管楽器でも、クラリネットのような1枚リード(シングルリード)の楽器と、オーボエやファゴットのような2枚リード(ダブルリード)の楽器がありますが、発声のしくみは2枚リードの楽器と同じになります。余談ですが、プロのオペラ歌手の披裂軟骨は、発声のときに十分に動いて声帯をきちんと閉めることがわかりました。プロでない方は、披裂軟骨があまり動かず、声帯の閉まりも十分でないのです。声帯の閉まりがいいほど息が長く続き、きれいなフレーズをつくることができます。4章「声力開発トレーニング」では、このあたりを鍛えることもできますので、参考にしてみてください。

発声のしくみを学ぼう④発音についてここまで、声が出るしくみについてご説明してきました。しかし、しゃべるという行為はただ声を出すだけではダメで、出した声をしっかりした「発音」に変えて、相手に伝えなければなりません。発音をするとき私たちは、声帯を振動させて出した音を、口、唇、歯、舌、のどなどを使って、言葉に変えます。言葉には母音と子音がありますが、言葉をはっきり伝えるためにまずたいせつなのは、母音を明瞭に発音することです。オーボエの場合は、リードの先の長い管(手で支える部分)で音を共鳴させますが、人間の場合は、鼻腔、咽頭、口腔などの口の中で、「ブルブル」と音を響かせます。これではじめて声になります。声の質や特徴は、この共鳴する空間の容積、形によって決まります。母音の発音でとくに重要なのは、舌の位置の変化です。口を軽く開け、唇の形も変化させないように意識して、「ア・エ・イ・オ・ウ」と発音してみてください。舌が動いているのがわかりますね。具体的には、母音の発音は次のようにおこないます。「ア」……舌の奥が少し盛り上がり、その部分を少し摩擦して発音する「エ」……舌が平らで、上の左右の奥歯に舌の側面をつけて発音する「イ」……「エ」の発音で、口の中をもっと狭くして発音する「オ」……舌を奥に引っこめ、その奥を軽く摩擦して発音する「ウ」……「オ」の発音で、口の中を極端に狭くして発音するどの母音も口を横に開くような気持ちで発音すると、より明瞭になります。これは外国の言葉にもいえることです。言葉にはそのほかに「子音」もあります。母音は、口の開け方、唇の形、舌の位置で発音しますが、子音はこの動きに、さらに口、唇、歯、舌、のどなどの動きを加えて発音します。「ア・カ・サ・タ・ナ・ハ・マ・ヤ・ラ・ワ」と1語ずつ区切って発音してみてください。基本的な「ア」の口の形はそのままで、「カ」はのどの奥をいったん詰める、「サ」は舌と上歯と下歯を合わせる、「タ」は舌と歯をくっつける……微妙に口の中が変化しているのがわかりますね。この動きを、専門的には「調音」といいます。

 

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