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chapter2上司に仕えるオキテ

09プロ秘書はどんな上司にも仕えることができる 秘書という職は、特別な仕事ではありません。なぜなら、「秘書」という名前がついていないだけで、上司のサポートをしている人はたくさんいるからです。しかし、秘書は、第三者から秘書としての「適性がある」と見込まれないと、就けない職でもあります。その適性のひとつとして挙げられるのが、「どんな上司にも仕えられる」という点です。 秘書は、自分が仕える上司を選ぶことができません。これは、誰でも上司を選べないのと同じことです。とはいえ、人間であれば、「どうしても合わない」と感じる人がいるものです。たとえば、自分より立場が下の人間に対しては居丈高な態度をとったり、命令口調で話したり、気分次第で叱りつけたり。こちらが良かれと思ってしたことも、少しでも自分の意に沿わないと「余計なことをするな」と機嫌を悪くしたり……。これは、誰にとっても付き合いづらい人だと言えるでしょう。そうでなくても、「神経質すぎる」「大雑把すぎる」「マイペースすぎる」など、自分の性格とあまりにかけ離れていると、仕事を進めるうえでの気苦労も多く、付き合いづらいと感じるものです。 そんなときは、まずは「合わないな」という事実をそのまま受け止めて、上司との不調和に一喜一憂しないことが大切です。感情的になって、嘆いてみても溝は広がるばかりです。合わない相手に対しては、「そういう考え方もある」とすべてを受け入れて、対策を立てていきましょう。相手の言動や態度をすべて「情報」としてインプットして、次に同じことが起きたときに上手く対応できるようにしていくのです。たとえば、何かをして意に沿わず、気分を害した場合は、「これはこだわりがある部分なのだな」「こういう考え方をするタイプなのだ」「機嫌が悪いタイミングだったのかもしれない」などなど。上司の言動すべてが自分にとって有益な情報だと思えば、「また叱られた!」「否定された」と腹を立てずに、感情をコントロールすることができます。そして、情報が蓄積されていけば、自然と上司にとって心地の良い間合いで動くことができるようになるでしょう。 これは私が経験から感じたことですが、最初「合わないな」と感じるくらいタイプの違う上司のほうが、仕事においてはプラスになることが多いようです。合わないということは、性格や考え方、仕事の進め方が違うということ。言ってみれば、得意分野が違うとも考えられます。「合わないな」と感じつつもお互いの違いを理解して仕事が進められるようになれば、欠点を補い合えるでしょう。また、時には上司への提案役になるのも秘書の役目。タイプが違えば、「そのまま進めても大丈夫?」「本当にこの方法でいいのかしら」という疑問が自然にわいてくるので、上司に確認しながら気づかせることもできるでしょう。 気の合わない相手の行動も、情報としてインプットしていく思考回路をつくること。それができれば、不要な怒りや不満を心に溜めこむことなく、お互いの能力を最大限生かせる仕事上のよきパートナーになれるかもしれません。 □「合わないな」と感じる上司のほうが、仕事においてはプラス

10プロ秘書は上司がよく話す話題を見逃さない 上司が何を考え、何を望んでいるのかを理解して、先回りできてこそプロの秘書です。そのためには、上司が話すことに耳を傾け、常にアンテナの感度を高い状態にして情報収集する必要があります。 上司の性格や人となりを理解するために役立つのは、「昔話」や「頻繁に出る話題」です。「音楽好きでバンドに明け暮れた青春時代の話」や「一人で海外を旅した話」あるいは「父や母との思い出話」などの過去のエピソードからは、現在の上司の姿からは想像できない、意外な一面を垣間見ることさえできるでしょう。隠れた興味・関心を発掘することもできるかもしれません。それなりに肩書のある立場に就いている人は、「仕事用の顔」と「プライベートな顔」を使い分けていることもあります。昔話は、そのプライベートな顔を知り、本質的な性質や考え方を理解するために役立つのです。 よく出る話題には、今の上司の関心事がそのまま反映されます。たとえば、新商品の開発など、新しいプロジェクトを動かす際には必ず関連情報をリサーチします。そのため、おのずと会話の端々に、新プロジェクトに関連した話題が出るものなのです。常に上司の話をよく聞いていれば、普段と違う内容の話題に「あれ?」と違和感を覚えるはず。そこから、「 ○ ○に関するプロジェクトを進めているのかもしれないな」と推測することもできるでしょう。よく出る話題は、上司が欲している情報を知るための良いヒントになります。 最近よく出る話題に気づいたら、「 × ×という商品が、最近若い女性に人気だそうですよ」など、さりげなく上司との会話に興味がありそうな情報を盛り込みましょう。「 ○ ○についてリサーチしてほしい」という正式な依頼がなくても、積極的に情報提供してみるのです。自分の興味・関心を察してくれる「かゆいところに手が届く」秘書に、きっと上司は感謝するはずです。 また、共通の話題「 =共通言語」が見つかれば、たとえビジネスには関係がなくても、コミュニケーションを円滑にするための手がかりになります。「私も食べることが好きで、新しいお店がオープンすると必ず友人と出かけるんですよ」「実は私も学生時代にスポーツをしていて……」など、他愛のない内容で構いません。「僕も」「私も」という共感ポイントが増えるほど、お互いの人間性がわかり、安心感も増していくのではないでしょうか。これは上司にかぎらず、一緒に働いている同僚などにも言えることです。 相手を認め、理解することがコミュニケーションの大前提です。上司の「昔話」や「よく出る話題」には特に注意を払い、効率よく理解を深めていきましょう。そこから得た情報が、上司をサポートするための良きヒントになるのです。 □上司の「昔話」や「よく出る話題」には特に注意せよ

11プロ秘書は「ゴミ箱」で上司の優先順位を知る 上司の仕事をサポートしていくためには、何よりも観察が必要です。行動や発言、表情など、上司を見てわかることもありますが、上司周辺の「物」からヒントが得られるケースもあります。意外かもしれませんが、「ゴミ」が上司を理解するために役立つのです。 実は私も、宗次德二の秘書になった頃、社長室のゴミ箱をチェックしました。私が注目したのは、捨てられた DMや資料などです。それらは、上司に「いらない」と判断されたもの。すなわち、興味・関心がないものだということがわかるのです。まずはそれらをすべて記録しておきます。常に開封せず捨てられているものに関しては事前にふるいにかけ、興味がありそうなものだけを渡すようにしました。社長ともなると、郵便物の数も膨大なので、今必要な情報に絞り込むのもひと手間です。秘書がそれを行うことができれば、上司は貴重な時間を有効に使うことができるでしょう。 また、お取引のない企業から「面談をお願いしたい」という申し入れがあった場合、いつも上司が捨てている D Mに関連する企業であれば、「たぶん会わないだろうな」と判断できます。そうすれば、はじめから相手に期待を抱かせない対応をしておき、上司に確認してから「投資には興味がないようで、どちらからお話をいただいてもお断りしているんです」などと、相手を不快にさせない断り方ができるでしょう。 ただし、「いつも捨てているから」と自分だけの判断で処分することがあってはいけません。捨てていいのは、「投資には興味がないから、全部捨ててしまっていいよ」などと言われた「絶対に不要」なものだけ。少しでも自信がなければ、そのつど上司に確認し、「これは必要」「これは不要」という情報を蓄積していきます。また、興味がないのに勝手に送られてきてしまう高価そうなカタログなどがあれば、「受取拒否」としてそのままご返送したり、送付をストップしてもらえるよう連絡したりすることも必要でしょう。なかには悪質な「押し売り」のようなケースもありますが、これに関しては後述します。 また、上司は興味がなくても、社内の別の部門にとっては有益な情報かもしれないと感じた資料があれば、「 ○ ○部にお渡ししておきましょうか?」と提案してもいいかもしれません。そうするためには、上司にとって必要のないものであっても、いちおうは目を通し、内容を確認するという作業が必要になります。機械的に宛名を見て、「必要ない」と捨てていくだけでは、そこまでの気配りに到達できません。とはいえ、「あくまで仕分け」というスタンスを忘れてはいけません。まるで自分が「会社にとって有益な情報に気づかなかった」と言われているように感じて、気分を害する上司もいるからです。 上司を理解して動くためには、上司にとって不要なものを知ることも必要です。重要度や優先順位をはかるために、上司の身の回りの「物」や「ゴミ」にも注意する視点を持ちましょう。 □捨てられた資料や DMから上司の関心がわかる

12プロ秘書は「上司の機嫌」を判断できる 誰にでも、気分が乗らない、「機嫌が悪い」タイミングがあります。イライラしやすい気質の人であれば、ちょっとしたきっかけで不機嫌になってしまうこともあるでしょう。しかし、上司の機嫌に振り回されていては、秘書の仕事は務まりません。プロの秘書は、上司の機嫌を察して、気持ちのいい間合いをとることができます。 一般的に、人はランチ前のお腹が減る時間帯にイライラしたり、仕事が立て込んでくると余裕がなくなるものです。逆に、ランチの直後や出社して一杯コーヒーを飲んだタイミングであれば、心に余裕があり、「機嫌がいい」場合が多い。しかし、こればかりは人によって千差万別。状況によっても変わってくるので、残念ながら「これが正解」というものはありません。解決策はただひとつ。上司の表情や、思考や行動パターンを日頃からよく観察することです。 最初のうちは、トライアル・アンド・エラーの精神で、「ちょっとよろしいでしょうか?」とひと声かけて反応を見るのもひとつの手です。「ああ、いいよ」と言われたり、「どうして今話しかけるんだ」と叱られたりするうちに、機嫌を判断するための情報が蓄積されていきます。そして、「午前中は機嫌が悪いことも多いから、できるだけ打ち合わせは午後にお願いしたほうがいいだろう」「重要な書類を見てもらうのは、昼食後コーヒーを飲んでいるときがよさそうだ」など、上司の状態を察して自分の行動を合わせられるようになるはずです。ちなみに私も、ほかの部署の方から「企画書を提出したいんだけど、今日の社長の機嫌はどうかな?」などと聞かれることがありました。誰でも、機嫌のいいタイミングで自分の提案を上司に受け取ってもらいたいと思うもの。機嫌のよし悪しで、企画そのものに対する印象までが変わってしまうこともあるからです。立場的に、秘書は上司のことを一番よく理解しているため、そうした場面で社内の人間から頼りにされることもあります。 もし、「このタイミングなら大丈夫」という間合いがわかっても、それを過信してはいけません。仕事で緊急の案件が発生していたり、家庭内で心配事があったりすれば、いつも通りにいかないこともあるからです。どんなときでも、「ちょっとよろしいでしょうか?」とひと声かけてから本題に入ったほうがいいでしょう。表情が曇ったり、面倒臭そうな顔をしたなと感じたら、「お忙しそうなので、出直しますね」と引き下がればいい。相手の都合に合わせて、その時々で距離感をはかる配慮を忘れてはいけません。 ただし、「納品でミスがあった」「お客様からクレームが入った」などのトラブルが発生した場合は別です。どんなに上司の機嫌が悪くても、「放っておいてほしい」という空気を感じていても、迅速に情報を伝えることが先決。少しでも早く報告したほうが、早くフォローに取りかかれて、被害を最小限に食い止めることができるからです。タイミングを読む以前に、スピードを求められる状況があることも覚えておきましょう。 □上司の表情や、思考や行動パターンを日頃からよく観察する

13プロ秘書は「ネガティブなサイン」を見つけることができる 仕事をしていれば、気難しく、何を考えているのかわからない人と付き合っていかなくてはならないこともあります。そんな人が自分の上司になると、気苦労も多いことでしょう。しかし、「わからない」とこちらが諦めてしまっては、物事はいい方向に進みません。プロの秘書は、コミュニケーションを円滑にするヒントを得るために行動します。 こういうケースでは、心理学的な考え方、分析力が助けになります。心理学によると、人の行動には必ず意味があります。体が動いたときには、何らかのサインが発せられているといってもいいでしょう。そこで、参考までにネガティブなサインとポジティブなサインの代表的なものを以下に挙げます。ネガティブなサイン ●腕を組む、脚を組み替える、座り直す ●体が離れたり、反らしたりする ●横を向いたり、そっぽを向いたりする ●眉間にしわを寄せる、表情が曇る ●相づちがない(あっても気のない相づちである) ●返答や質問がない ●時計に目をやるなど、しきりに時間を気にしている ●物に手をやったり、物を動かしたりするポジティブなサイン ●リラックスしている ●体が近づいたり、身を乗り出したりする ●表情が柔らかい、笑顔がある ●視線が合う ●相づちを打つ ●返答や質問が入る 話をする際に、これらのサインを見逃さないよう気をつければ、「考えが違ったかな」「この話題には興味があるのかもしれない」などと、上司の心を推し量るヒントになります。そうすれば、たとえ相手が「いいよ」と答えていても、「打ち合わせのお時間、もう少し早いほうがよろしいでしょうか?」などと尋ねることができます。そこで、「朝イチのほうがありがたい」などと言わせることができれば、こちらの勝ち。「人に会う予定は午前中に済ませてしまいたいのかな」「この日の午後は、何か他にしたいことがあるのかもしれない」などと推測し、次の行動につなげることができるのです。 また、相手から要望が出るたびに改善を加えていけば、徐々に上司にとっての心地良い状態をつくることができます。そして、「この秘書は自分が言えば必ずやってくれる」とわかれば、上司もあれこれ注文を出すようになります。細かく注文をつけられるのは面倒だと感じるかもしれませんが、これはむしろ喜ぶべき状況です。上司の不満を解消していく糸口が見つかれば、「わからない」と悩んでいるときよりも、大きく前進したことになります。 上司が理解してくれることを願っているだけでは、何も始まりません。「苦手な人だ」と避けるのではなく、克服するために歩み寄り、行動することが大切です。心理学がすべてを教えてくれるわけではありませんが、気楽な気持ちで関連書を読んでみるのもおすすめです。 □気楽な気持ちで心理学の関連書を読んでみる

14プロ秘書は「引いたほうが勝ち」と知っている 秘書の立場であっても、上司に提案や疑問を投げかけることもあるでしょう。その結果、予想外の激しい議論に発展してしまうことがあるかもしれません。そうならないための会話のテクニックに関しては後述しますが、今回は議論になった場合の「場の収め方」についてお話しします。 上司と議論になってしまい、このまま話し続けても平行線だと感じたら……。この場合、取るべき対応はただひとつ。秘書が引くのです。「なるほど、わかってまいりました。お時間をいただいて、ありがとうございました」でも構いませんし、「そのようにお考えでしたか。勉強になりました」でもいいでしょう。何か考えがあって始まった議論なので、進展のないまま切り上げることには納得がいかないと思います。しかし、とりあえずは「上司の考え方を理解しました」と言って、いったん引き下がってください。それ以外によい場の収め方はありません。 そもそも、こちらが「このまま話していても、ただの言い合いにしかならないな」と感じているときは、たいてい相手も同じように感じています。とはいえ、上司には経験値があり、上司としてのプライドも権限もあるため、「相手の言い分もわかる」と感じていても、素直に伝えられない人もいるのです。そうであれば、その議論はお互いの関係を悪くするだけの行為。理解を深めるために始まった議論であるはずなのに、本末転倒です。今後の関係を考えれば、後味の悪さを残さないためにも、部下であるこちらが引くのが得策でしょう。 また、誤解から上司に叱られた場合なども同じです。指示通りにしただけなのに、「僕は ○ ○と言ったのに、どうして × ×になっているんだ」と怒られれば、誰でも「理不尽だ!」と腹が立つことでしょう。しかし、そこで「あなたが × ×と指示しました。これが証拠です」と何らかの証拠を突きつけても、「上司を言い負かした」と一瞬気分がスッとするだけのこと。相手は「そういう言い方はないだろう」と腹を立てるでしょうし、結果的にこちらには何の得もありません。この場合もやはり、「申し訳ありませんでした」と謝り、こちらが引き下がるのが得策なのです。 怒り心頭だった上司も、怒ってすっきりすれば冷静になります。そもそも、「もしかして自分の説明不足が原因かもしれない」という可能性についても考えるでしょう。さらには、メールなどを確認して「自分の思い違いだった」と知ることもあるかもしれません。そうすれば、自分に非がないのに引き下がり、甘んじて怒りを受け止めてくれた秘書に「申し訳ないことをした」という気持ちを抱くはずです。そして、今後は勘違いから理不尽な怒りをぶつけることのないよう、怒る前に少し立ち止まるのではないでしょうか。指示ミスを犯さないよう、注意深くなってくれる可能性もあります。長い目で見れば、反論せず黙っておいたほうがいい場合もあるのです。 とはいえ、自分の指示を綺麗さっぱり忘れてしまうような上司であれば、話は別。同じ問題が起こらないよう、メールや文書で指示の記録を残すようにします。上司には多少嫌味に聞こえてしまうかもしれませんが、「これは ○ ○で進めてもよろしいですね?」と確認する回数を増やすのも、効果的でしょう。「上司にとって働きやすい環境を整えるのが秘書の仕事である」とはいっても、それは横暴を通すということではありません。必要であると思えば、意見を言うことがあってもいいのです。ただし、引くときは引く。反論すべきでないと判断したら、黙っておく。嫌な空気を残さないよう配慮するのは秘書の役目です。 □長い目で見れば、反論せず黙っておいたほうがいい

15プロ秘書は「心ある叱責」に感謝できる 大なり小なり、誰にでもミスはあります。それが原因で、上司から叱られることもあるでしょう。そんなときは、自分の失敗を素直に認め、叱責を「ありがたい」と受け止めること。それだけではなく、失敗を挽回するための代案を提案しなくてはいけません。 そもそも、誰かを叱るということにはパワーが必要です。誰彼構わず当たり散らすようなモンスター上司でもない限り、「できれば叱りたくない」というのが本音でしょう。それでも注意してくれるということは、自分が期待されているということ。「もっと頑張ってほしい」「同じミスをしないでほしい」という部下への期待があればこそ、叱責があるのです。 そのため、上司から注意を受けたら、素直に受け止めて反省しなくてはいけません。そして、ミスの原因を突き止め、「二度と同じ失敗を繰り返すまい」という気持ちで仕事に挑むこと。そうすれば、次に同じようなケースに遭遇したときには、必ず正しいやり方で対処することができます。 一番あってはいけないのは「だって」と言い訳をすることです。たとえ、表面だけ取り繕って「申し訳ありません」と謝っていても、心の中で「私は悪くないのに」と反抗していれば同じこと。上司のせっかくの注意をシャットアウトした段階で、自分の成長は止まってしまうと思ってください。それどころか、同じミスを繰り返してしまうかもしれません。また、反抗する気持ちは必ず態度や表情に表れるので、口先だけで謝っても、上司には「反省していないな」と見抜かれています。「毎回毎回同じことで叱るなんて、嫌な上司だな」と考えるのも間違いです。自分の機嫌次第で過去の失敗を何度も蒸し返すなら別ですが、そうでなければ「毎回同じことで叱られる」 =上司の注意を糧に事態を改善できていないから、毎回同じ部分で叱られてしまうのです。この場合の非は、完全に自分にあります。 また、叱られた後に落ち込みすぎるのも問題です。もちろん、反省する過程では誰でも「自分はなんてダメなんだろう」と落ち込むものです。しかし、「もうおしまいだ」「何もかもうまくいかない」とまで考える必要はありません。自分への失望感で思考が止まってしまうと、結局は成長もストップしてしまいます。そうならないためにも、しっかり反省した後は「失敗は誰にでもあることだ」「次から頑張れば取り戻せる」とポジティブに考えて、自分を奮い立たせましょう。気持ちを切り替えて、注意深く次の仕事に取りかかればいいのです。良い仕事をすることが、叱ってくれた上司への恩返しになり、信頼を取り戻す足がかりにもなります。 失敗の原因を探り、それが自分の努力不足だとわかれば、二度と同じことで失敗しない方法を見つけたのと同じことです。古くからある「失敗は成功のもと」という言葉は、真実を言い当てているのです。 □部下への期待があるからこそ、叱責がある

16プロ秘書は相手の良い点を二つ見つける 人間は、相手の短所を見つける天才です。自分に害が及びそうなこと =危険を察知するのは人間の本能なので、放っておけば、周りへの不平不満はいくらでもわいてくるでしょう。しかし、相手のことを短所も含めて「こういう考え方をする人だ」「こういうことが苦手な人なのだ」と受け入れることが、相手とうまくコミュニケーションをとるための第一歩「苦手だ」「嫌いだ」と断じて心を閉ざしてしまわないためには、意識して長所を探す心がけが必要です。 長所は、誰に対しても最低二つは見つけておくといいでしょう。「それくらいなら簡単だ」と感じるかもしれませんが、実際に「今からできるだけたくさん長所を挙げてみよう」と考えると、なかなか難しいことのようです。以前社内研修で、仲の良い二人に「相手の長所を一〇個挙げてアピールしてください」とお願いしたところ、スムーズに出てきたのは五つほど。そこから先は言葉に詰まってしまい、なかなか出てきませんでした。いつも接している相手でも、自然と目につくのは短所ばかり。積極的に探していかないと、長所は短所に埋もれてしまうということのいい例です。 上司の良い点を見つけようと思えば、行動をよく観察するようになります。これだけでも、「苦手だな」とだけ思って避けていたときに比べれば、大きな前進です。観察することで、「こんな良い面がある」と気づけば、感謝や尊敬の気持ちがわいてきます。また、たった二つでも良い部分があるとわかれば、上司の行動に対してネガティブな感情がわいてきても、「なんて大雑把な指示をするんだ!(マイナス 1)だけど、この人はおおらかで(プラス 1)誰に対してもフラットな対応ができる腰の低い人だ(プラス 1)」と、最終的には「差し引きプラス 1」で、ポジティブな感情を持つことができます。 ネガティブな感情は、相手に伝わりやすいという特徴もあります。「苦手だな」「嫌いだな」と思って接していれば、どんなにうまく隠しているつもりでも、態度や表情に表れてしまうもの。そして、こちらが「苦手だな」と感じている場合、ほぼ一〇〇パーセント相手も同じように感じていると思っていいでしょう。自分が相手に対して抱いている感情は、鏡のように自分に返ってくるのです。 上司と良い関係を築いていくためには、まず相手の良い部分を探して、認めること。何か自分と違う部分があっても「合わないな」、だから「苦手だ」と考えるのではなく、「自分とは違うな」、だから「何か学べることはないかな」と、ポジティブに思考を転換しましょう。秘書には、多様な考え方を受け入れられる、優れたバランス感覚が求められているのです。 □「苦手だ」ととらえるのではなく、「自分とは違う」と考えよ

17プロ秘書は必ずやりとげる方法を見出す 仕事が山積みで忙しいとき。どう見積もっても手が付けられそうにない。そんなときに被害を最小限に食い止めるための方法は、ただひとつ。「絶対に締め切りに間に合わないものは何か」を判断し、早めに上司に相談するのです。プロの秘書は、時には「できません。申し訳ありません」と潔く自分の無力を謝ることができます。 もちろん、締め切りに間に合わせるために最大限努力をすることは当然です。はじめから自分に甘い設定をして、「ムリだろうな」と判断することがあってはいけません。しかし、締め切りになって突然、「頑張ってはみたものの、どれもこれも中途半端に手を付けただけで、結局何ひとつ形になりませんでした」と泣きつかれても、上司も困ってしまいます。そうならないためには、早い段階で「これは間に合う」「これはムリだ」と冷静に判断する必要があるのです。「間に合いません」という報告をするときは、まずは自分の能力不足を素直に謝罪することです。そして、やりとげるための方策を提案し、完了できる日時をまず伝えます。つまり、ただ「できません」と報告するのではなく、「 ○ ○日いただければできます」と代案を提示して交渉します。相手が知りたいのはどう取り組むかという姿勢なのです。 交渉の結果、譲歩してもらえることになったら、今度は期限を守れるよう、必死で頑張るしかありません。信用を取り戻すには、それしか方法はないのです。それすら守れずに何度も泣きついていると、締め切りの延長や援助をしてもらえなくなるだけでなく、信用も失ってしまいます。今後、大きな仕事を任せてもらえなくなっても仕方がないでしょう。 とはいえ、早い段階で相談しておけば、なんとか手段が見つかるケースも多いもの。私の経験上、相手がかなり余裕を見て締め切りを伝えてきている場合もあります。そういう場合は、「締め切りに間に合わせただけ」のクオリティの低いものを提出されるより、結果的には締め切りを延ばして良かったと思われることもあるでしょう。 仕事は常に時間との勝負です。与えられた時間の中で、自分のやるべき仕事をどれほどの精度でこなせるかがはかられています。もし、力不足で予定より多くの時間が必要になった場合は、早めに相談することと、代案を提示してそれだけは確実に守る努力が必要です。また、次からは同じことを繰り返さないよう、どうすれば作業を効率良くこなせるか考えることも大切です。それが、責任ある大人の仕事というものです。 □「できません」の報告より、「 ○ ○日あればできます」という代案を提示

18プロ秘書は自然体で話すことができる 何が良くて、何が悪いのか。自分なりのものさしを持つことは大切です。しかし、いかにも「優等生然」として正論を振りかざしていると、人間関係においてはうまくいかないことも多いかもしれません。 実は以前、「優等生が、いいとは限らないよ」と言われたことがあります。優等生は正しくて、みんなから憧れられる存在です。でも、優等生は堅苦しくて、どこか近寄りがたい存在でもある。そういう「とっつきにくい」雰囲気は、秘書にはないほうがいいというわけです。また、私の講演を聞いた事務局の方から、「理路整然と話してもらえるのはいいんだけど、あまりにも立て板に水で面白くないんですよね」と言われたこともあります。「ベストセクレタリー」を受賞してから、おかげさまでたくさんの講演の機会をいただくようになりました。その第一回目の講演だったため、私も少なからずショックを受けましたが、耳の痛い話ほど真摯に受け止めなくてはなりません。それからは講演会やセミナーに参加して、他の方がどのように話すのか、どんなことを話せば印象に残る話になるのかを研究しました。その結果たどり着いたのは、「自然体で親しみの持てる話のほうが人の心に響く」ということです。つまり、事務局の方も、いかにも優等生らしく起承転結でまとまった話が、「聞き手にとって遠い存在になっている」と指摘してくださっていたのです。 どんなに一生懸命自分の考えや経験を話しても、「理想だけど、自分にはできないな」と思われてしまうより、「私にもできるかもしれない」「ちょっとやってみようかな」と感じてもらうためには、自分のカッコ悪い部分や欠点もさらけ出していかなくてはならないのです。そのことに気づいてからは、最初の頃とはまるで違うスタイルで講演をするようになりました。講演のテーマに合わせて話題を決めたら、あとは会場の雰囲気を見て失敗談を盛り込んだり、多少話を脱線させたり。決めていった内容が十分話せずに時間が来てしまうこともありますが、来てくださったお客様が笑って「元気が出ました」と帰ってくだされば、私の言わんとすることは少しは伝わったのだと思うことにしています。 これは、上司と話をする場合も同じこと。「いつでもきちんと丁寧に接してほしい」と考えている相手でなければ、マナー違反にならない程度に相手を敬い、自然体で話すことがあってもいいのです。そのほうが相手に余計な緊張感を与えずにすみますし、親しみを感じてもらえます。要は、相手が心地良いと感じる人間像を演出するのです。相手がどのような人間像を求めているかは、行動を観察していれば自ずと見えてくるでしょう。 どんな上司からも、礼儀正しい優等生の秘書が求められているとは限りません。秘書はサービス業。そう考えれば、時には人間味のある接し方で「上司が何でも言いやすい相手」を演出することも、秘書の務めではないでしょうか。 □自分のカッコ悪い部分や欠点もさらけ出せ

19プロ秘書は自ら手柄を求めない 繰り返しになりますが、秘書の仕事は上司のサポートをすることです。重要事項や機密事項を取り扱い、トップの意向を知りうる立場にありますが、それは、「たまたま職務上そうなっている」というだけのこと。自分の「秘書」という仕事を卑下する必要はまったくありませんが、あたかも自分が上司と同じ地位にあるかのような勘違いをして、「権威を笠に着る」ことがあってはいけません。 しかし、社内の重要事項に触れたり、他社のトップとの会食に参加したりしていると、感覚がズレてしまい、自分にも権力があるかのように「勘違いする秘書」もいるようです。また、秘書が職務上知りうる機密情報を自分の出世のために利用しようと考える人や、秘書を取り込むことで上司に近づこうと考える人もいます。そのため、秘書という仕事を誠実にまっとうするためには、「自分は一社員である」という自覚を持って、厳しく自分を律する必要があるでしょう。 そういった「つまずき」は、「手柄を立てたい」「評価されたい」「認められたい」という欲求から生じることが多いようです。それ自体は仕事をする上での健全な目標ですが、「楽をしたい」という考えが加わると、途端に過ちを犯しやすくなるようです。「楽をして手柄を立てるために、秘書という立場を利用する」ということが起きてしまうのです。 秘書は、上司の肩書を利用しても、利用されてもいけません。あくまでも自分の「お客様」である上司のために動き、上司が能力を発揮できるようサポートするのが仕事です。自分のために仕事をし、自ら手柄を求めた段階で、上司の信頼を失うと考えましょう。秘書の最大の手柄は、上司からの「ありがとう」という感謝の言葉です。くれぐれも、自分の立場を勘違いしないようにしてください。 □自らの手柄を求めた段階で上司の信頼を失う

 

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