はじめに「話がつまらない人」は損をする?突然ですが、あなたの話は、おもしろいですか?いきなり何だと思うかもしれませんが、自分の話し方がまわりにどう思われているか、ちょっと考えてみてください。「この人の話って、つまんないなあ」「アイツの話は、いつ聞いてもつまんないよね」あなたにハッキリ言わなくても、周囲の人はそう思っているかもしれません。「話がつまらない」ということは、生きていく上で致命的なハンデです。それはこの世の中が、「話がつまらない」人より「話がおもしろい」人のほうが、ずっと有利に生きられるようにできているからです。話がおもしろければ、学校でも人気者になれますし、異性にもモテます。部活やサークルでは、誰もがあなたの話に耳を傾けるでしょうし、社会に出れば、営業トークや会議のコメント、プレゼンなどで評価されるはずです。他にも結婚式のスピーチや弔辞、宴会でのあいさつや合コン、婚活などなど、話を披露する場はいくつもありますが、あらゆる場面で話がおもしろい人のほうがいい思いをするのはご承知のとおりです。それなのに、学校では、おもしろく話す方法なんて教えてはくれません。それに現代は、生活の中で「話す力」を磨くのがむずかしい時代でもあります。昔と違って、大家族で食卓を囲むことも少なくなり、ひとりで黙々と食事をする人も多いと言います。また、スマートフォンなど通信機器の進化によって、人と人とが直接話す機会が少なくなりました。だとすれば、私たちはどうすればいいのでしょうか?そう、おもしろく話すテクニックを自ら学ぶしかないのです。「おもしろい話」をするのに才能はいらない「話がおもしろいかつまらないかなんて、結局は話す人の性格でしょ?」と言う人がいるかもしれません。本当にそうでしょうか?たとえば千原兄弟の千原ジュニアさんは、学生時代はひきこもりだったとか。また、森三中の大島美幸さんはイジメられっ子だったそうです。しかし、2人のお話は、お笑い芸人の中でも随一のおもしろさです。つらい体験をすると、どうしてもネガティブな思考に陥って暗い性格になりがちですが、それでも彼らが「おもしろさ」を開花させたのはなぜでしょうか?それは、自分の思いをおもしろく伝えるテクニックを体得したからです。おもしろく話すことに、性格や才能、得意・不得意などは関係ありません。そのテクニックを「知っているか、知らないか」だけの差なのです。たとえば料理をつくるときには、お出し汁をとるかとらないかで味に大きな差が出ます。当たり前ですが、「お出汁をとる」ことを知らない人は、おいしい料理をつくることはできません。でも、「お出汁をとる」というテクニックを知り、練習をしていけば、いずれ誰でもおいしい料理をつくれるようになるでしょう。同じように、「自分には話の才能なんてない」「自分は話をするのが苦手だ」という人でも、テクニックを知り、練習をすれば、誰でもおもしろく話すことができるようになるのです。では、おもしろく話すテクニックとはどのようなものでしょうか?その秘密は、私が携わっている「仕事」に隠されていました。テレビ番組と話し方との知られざる関係私の仕事は放送作家です。子どもの頃からずっとテレビっ子で、番組を自分でつくるのが夢でした。テレビの世界に入るキッカケとなったのは、大学生のとき。テレビ番組の企画を公募していた「フジテレビバラエティプランナー大賞」に入賞し、アルバイトから放送作家としての活動をスタートしました。ところが現場でプロの厳しさを知るにつれ、自分のレベルがあまりに低いことを痛感。「このままじゃ通用しない」「誰かに弟子入りして勉強しなきゃ」と、危機感を覚えるようになりました。そして、試行錯誤の末に、運良く秋元康さんに弟子入りさせてもらってから、6年ほどの修業期間を経てフリーに転身、現在に至ります。私の自己紹介はこのへんにしておきますが、読者のみなさんの中には、「なぜ、放送作家が話し方の本を書くの?」と不思議に思う人がいるかもしれません。ちょっと考えてみてください。テレビ番組を見ていると、デビューしたてのアイドルが、他の出演者や観客を大爆笑させることがあります。また、視聴者参加番組などで、一般の方のトークに思わず聞き入ってしまうことがあります。なぜ、プロでもないのに、彼らはうまく話すことができるのか?その答えは、テレビ番組を制作するノウハウにあります。実はテレビ番組をつくるノウハウには、普段の話し方に役立つテクニックがふんだんに盛り込まれているのです。この本では、これまで明かされなかった番組制作のノウハウを解き明かしながら、誰でもおもしろく話せるテクニックを紹介していきます。話し方が変われば人生が変わるおもしろい話ができるかどうかで、人生は大きく変わります。あなたは、本当は魅力的な人なのに、話し方が悪いばっかりに、周囲にうまくとけこめなかったり、友だちができなかったり、誤解を受けたりしていないでしょうか?ものすごく努力しているのに、話がつまらないばっかりに、チャンスを活かせなかったり、チャンスそのものを逃したりしていないでしょうか?そんな方々に、この本を読んでいただきたいと思います。そして、この本をキッカケに、多くの方々が自分のトークに自信を持ち、その才能を発揮できるようになることを願っています。私がもっとも尊敬する偉人のひとり、インド独立の父、マハトマ・ガンディーはこう言っています。「見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい」おもしろく話すテクニックを学んで、あなたが夢見る世界を実現してください。
テレビをおもしろくするのは「構成」だ▼放送作家の3つの仕事「放送作家をしています」と自己紹介すると、「どんなことをしているのか、よくわからない」と言われることがよくあります。確かに、私の師匠である秋元康さんは作詞家、プロデューサー、映画監督などもやっていますし、先輩の小山薫堂さんは映画「おくりびと」の脚本を手掛ける一方で、「くまモン」のプロデュースもしています。また、鈴木おさむさんは、妻である森三中・大島美幸さんとの結婚に至るエピソードをまとめて本にしたり、舞台の演出をやったりしています。私自身も、最近はテレビ番組制作のかたわら、企業のプロモーションやインターネットに関する仕事をすることが増えてきました。こんな説明をすると、ますます混乱するかもしれませんが、実は放送作家の本来の仕事は明確に定義することができます。「テレビのプロデューサー、ディレクター、出演者の方々と打ち合わせをしながら、番組をゼロからつくっていく仕事」これが、私たち放送作家の仕事です。この仕事は大きく3つに分けられます。1企画を考える2構成を考える3台本を書く1と3は、何となくイメージがわくでしょう。1の「企画を考える」は、「出演者が番組で何をするか?」を考えることです。たとえば、「有名人が食べ物の好き嫌いを当てっこする」とか、「ファミレスの人気メニューベストテンを当てるまで帰れない」とか「料理の金額を予想して、一番大きく外した人は全部おごらなければいけない」など、とにかく「何をしたらおもしろくなるか?」を会議で延々と話し合い、ときには徹夜までして考える。これが「企画」です。3の「台本」は、出演者が番組を進行していくための、いわばシナリオです。台本はプロデューサー、ディレクター、放送作家が議論を重ね、想像力を駆使して「どう進行したら、よりおもしろくなるか?」という視点から、つくられます。出演者はこの台本をもとに、「続いてのゲストはこちらの方です」とか「まずはこちらのVTRをご覧ください」と言って番組を進めていくのです。ただし、すべての出演者が台本どおりに進行するわけではありません。台本を外れても、その場のアドリブによって、予想以上に盛り上げてくれる人もいます。制作する側も、出演者によっては、そんな即興的な効果を期待してあえて台本にダンドリを書かないこともあるのです。では、2の「構成」とは何でしょうか?くわしくは後ほど説明しますが、実は「構成」こそがテレビをおもしろくするための重要な鍵であり、その「構成」を考えるプロが放送作家なのです。だから、業界では放送作家のことを「構成作家」と言うこともあります。テレビ番組の最後に流れるスタッフロールを見ると、「構成」という言葉が見つかると思いますが、そこに名前がクレジットされているのが放送作家なのです。では、テレビをおもしろくする「構成」とは、どんなものなのでしょうか?▼構成=どうしたらおもしろく伝えられるか?「構成」という言葉はむずかしいものではないので、いろいろな場面で目にするでしょう。「国会は衆議院と参議院とで構成されている」「あなたの家族構成を教えてください」一般的には、こんなふうに使われると思います。では、テレビ番組づくりにおける「構成」とは何か?「何をしたらおもしろくなるか?」を考えることが「企画」だとしたら、それに対して、「どうしたらおもしろく伝えられるか?」を考えること。これが「構成」です。企画がどんなにおもしろくても、構成が悪ければ、そのおもしろさをうまく伝えることはできません。たとえば、「とんねるずのみなさんのおかげでした」の名物コーナー、「新・食わず嫌い王決定戦」の企画は、「2人の有名人が嫌いな食べ物を当てっこする」というものです。ただ、この企画が、2人の有名人が向かい合って「おまえの嫌いな食べ物は◯◯だろ」とか、「あなたの嫌いな食べ物は××ね」と当てずっぽうに言い合うだけのものなら、全然おもしろくないですよね。テレビ番組には、より多くの方に観てもらうというミッションがあります。そのためには、だんだんと盛り上がり、最後に劇的なクライマックスを迎える右肩上がりのシナリオが求められます。そこで、登場するのが「構成」です。「構成」とは、どうしたら企画をおもしろく伝えられるか、を考えることでした。
なぜ、あなたの話はつまらないのか?目次はじめに第1章「おもしろい」をつくる達人――放送作家という仕事テレビをおもしろくするのは「構成」だ放送作家の3つの仕事/構成=どうしたらおもしろく伝えられるか?/おもしろく伝えるための要素を探そう/要素を並べてみよう/「何をするか」と「どう伝えるか」つまらない話はなぜ「つまらない」んだろう?つまらない話にはパターンがある①内輪ウケ話②自己中心的話③ダラダラ時系列話④結論ポロリ話/ダメな構成が話をつまらなくする/「おもしろい話」を完成させる3つのプロセス
第2章「おもしろい話題」はどうやって見つけるか?
「おもしろい」の正体って何だろう?重要なのは話のネタ選び/「スベる」と「おもしろい」を掘り下げる/「おもしろい」はつくり手に対する共感/「おもしろい」「つまらない」を決めるのは聞き手テレビ番組はどのように題材を選んでいるのか?グルメ番組はなぜ視聴率がとれるのか?/経験がないと共感できない/テレビ番組は絶対多数の共感をねらう/スベらないのは共感できる話スベらない話題が見つかる「共感のピラミッド」ネタ選びの決め手「共感のピラミッド」/テレビでも強い「家族ネタ」/聞き手の想像力を利用する/このネタで話せばもうスベらない!?/ネタは突然見つかるものではない/話題がなければ「質問」すればいいもっと共感が得られるテクニック①ナサバナ法「情けない話」には共感しやすい/相手との距離を縮める効果ももっと共感が得られるテクニック②たとえば法情景をわかりやすくするたとえ/むずかしいことをわかりやすくするたとえ/Hな本を見つかったときみたいに恥ずかしい/食べ物・飲み物にたとえてみるもっと共感が得られるテクニック③コンプレックス法恥ずかしい部分をさらけ出す
第3章「おもしろい話」をどのように組み立てるか?
おもしろい話をするには正しい順序立てがあるあなたの話の順序は正しい?/レーガン大統領の名スピーチ/話をおもしろくする仕掛け「フリオチ」とは?/フリオチとは打ち上げ花火である/安齋さんはなぜ七三分けになったのか?フリオチをつくろう①「ネズミ捕り」方式話の中におけるフリオチの役割とは?/マツコ・デラックスの洋服/おもしろい話に不可欠なチーズとワナフリオチをつくろう②「なのに」方程式矛盾した内容を接続する「なのに」フリオチをつくろう③3ステップでおもしろい話をつくるステップ①話したいことを見つける/ステップ②「なのに方程式」に当てはめる/ステップ③フリ↓オチの順に並び替える世界はすべて「フリオチ」でできている「おもしろさ」はフリオチで説明できるもっと話の組み立てがうまくなるテクニック①アバン法番組冒頭で見どころを伝えるアバン/「○○の話なんですけど法」で見出しをつくるもっと話の組み立てがうまくなるテクニック②Qカット法視聴者の関心をつなぎとめるQカット/聞き手の視線を集める「あの人の話法」もっと話の組み立てがうまくなるテクニック③クエスチョン法問いかけることで注意をこちらに向けさせる/質問は聞き手を引き込む最上の手段
第4章話をもっとおもしろくするための㊙テクニック
1意外な共通点を利用するシンクロニシティ法意外な共通点があるとおもしろい/「偶然の一致」はつくり出せる?/ロンブー淳のシンクロニシティ法2いつもと違うキャラを演じるギャップ法ギャップとはフリオチだ/安住アナとGACKTのギャップ/ギャップ法を使う場合の注意点3聞いたこともない音を繰り出す変則擬音語・擬態語法イノシシが落ちてクリクリベーン!/音は自由につくっていい/「噛む」というリスク4気持良くけなすという高等技術愛の毒舌法毒舌は悪口ではない/注意点①愛情を持つ/注意点②名指しをしない5オリジナリティーで勝負するたとえツッコミ法ツッコミとはフォローである/四捨五入したらオスですよ!/共感される「たとえツッコミ」はどうつくる?6抜群の臨場感を演出できるひとり芝居法登場人物をひとりで演じ分ける/演じたい人のどこを観察する?7裸のつきあいを実践する適温下ネタ法「下ネタ」はなぜ下ネタと言う?/場の空気を変えるリリー・フランキー流下ネタ/「言い換え」と「たとえ」のセンス/笑いを誘う自虐ネタ/有吉弘行の「食べたくない焼きイモ」8「へえ~」を引き出す雑学プレゼント法リアクションに困る雑学もある/雑学は聞き手に贈るプレゼント/使える雑学、使えない雑学の違い《まとめ》あなたの話はこの流れでおもしろくなる「おもしろい話」をつくる3つのプロセスおわりに
私たち放送作家が「構成」を考える際には、以下の2つの作業を行います。1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスする2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てるこれは具体的にどういうことなのか?先ほど例に挙げた「新・食わず嫌い王決定戦」に当てはめていきましょう。▼おもしろく伝えるための要素を探そうあらためて確認すると、「新・食わず嫌い王決定戦」の企画はこういうものでした。「2人の有名人が嫌いな食べ物を当てっこする」この企画の構成は、会議ではこんなふうに組み立てられていきます。まず、先ほど挙げたように、おもしろく伝えるために必要な要素を挙げていきます。たとえば……「やっぱり目の前においしそうな料理が並んでいるほうがいいよね」「その料理は有名人の好きな料理だったら情報性が増すよね。そこに嫌いな食べ物が1品だけあるということにすれば、視聴者も『どれかな?』って考えられるんじゃない?」「順番に食べていって、その表情を見れば、どれが嫌いな食べ物か推理するヒントになると思うよ」「相手に嫌いな食べ物を当てられたら罰ゲームというルールがあったら、『勝ちたい』というモチベーションが上がるよね」仮にこの時点で、「有名人がよく行くお店のロケVTRを挿入したらどうか?」とか、「料理のカロリーを表示したらどうか?」などの要素が挙がったとしても、それは「嫌いな食べ物を当てる」という趣旨がブレてしまうので、必要がないと判断され、省かれます。こうして、「どうしたら企画がおもしろく伝わるか?」という基準をもとに、必要な要素だけがチョイスされていきます。▼要素を並べてみよう次は、2番目の「チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる」です。必要な要素がチョイスされたら、次はそれを「どうしたらよりおもしろく伝えられるか?」という基準で、出演者が進行できるように組み立てていきます。たとえば……
「2人の有名人は、石橋貴明さん率いるタカさんチーム、木梨憲武さん率いるノリさんチームに分かれる」↓「それぞれの好きな食べ物がテーブルに並んでいる」↓「実はその中に1品だけ、嫌いな食べ物が入っている」↓「交互に相手の食べる料理を指定していき、指名されたほうがその料理を食べていく」↓「相手の表情を見て、どれが嫌いな食べ物かを推理する」↓「全部食べ終わったところで、相手が嫌いな食べ物を予想して色紙に書き、見せる」↓「相手が予想した食べ物を互いに食べる。もし当たっていたら『まいりました』とコールする。どちらも外していたら、もう一度やり直し」↓「負けが決定したら、敗者は罰ゲームをする」これにより、嫌いな食べ物をおいしそうに食べる演技をしたり、それを相手に演技だと見抜かれたり、実は演技だったのにバレなかったり……というようなドンデン返しのドラマが生まれるのです。▼「何をするか」と「どう伝えるか」ちなみに「構成」を組み立てる作業は、何もバラエティ番組だけではなく、他の番組でも取り入れられています。たとえば音楽番組では、1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイス→旬のアーティストをキャスティングする2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる→ステージが盛り上がるよう、アーティストの出演順を考えるまた、政治討論番組でも、1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイス→今、議論すべきテーマと、それについてコメントできる政治家を選ぶ2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる→テーマをどのような順序で議論していくかを考えると、必ず1、2で「構成」されます。このように、テレビの制作者は、すべてのテレビ番組を「何をするか」という発想で企画し、それを「どう伝えるか」という視点で構成し、さらにそれを「台本」に落とし込み、よりドラマチックな(おもしろい)展開にしていくのです。さて、ここまで、テレビ番組制作のノウハウと、番組制作における構成の役割について解説してきました。ここで読者のみなさんは、疑問に思うかもしれません。「で、その〝構成〟は、話し方とどんな関係があるの?」実は、「構成」の考え方を学べば、誰でもおもしろい話ができるようになるのです。逆に言うと、おもしろい話をしたければ、「構成」を意識しなければいけません。そして、これがまさに、本書のテーマなのです。
つまらない話はなぜ「つまらない」んだろう?▼つまらない話にはパターンがある「構成」は、話し方にどう関係しているのか?この質問に答える前に、ちょっと考えてみたいことがあります。焦らないで、ほんの少しだけおつきあいください。私たちは、普段の会話の中でついつい話の仕方を間違えて、聞き手に「つまらない」と思わせてしまうことがあります。もちろん、聞き手はあからさまに「つまらない」とは言わないでしょうが、薄々そう感じていることは表情を見ればわかりますよね。そんな聞き手の反応を見れば落ち込むし、「あそこでああ言えば良かった……」なんて後悔するかもしれません。そういう経験をすれば、人前で話をしたり、プレゼンをしたりするのが怖くなってしまうこともあるでしょう。もちろん、私たちは話し方のプロではないのですから、「つまらない」と思われても、思いっきりスベっても、それで仕事を失うようなことはありません。だけど、できれば「場」を盛り上げたいし、話がおもしろい人だと思われたいでしょう。何より、話し終わったあとの、「え?だから?」「で、どうかしたの?」「結局、何が言いたいの?」という寒々しい空気だけは味わいたくないものです。こういう感想が、あの人の話は「つまらない」という評価につながってしまうのです。そこでまずは、「つまらない話」について、掘り下げてみたいと思います。「つまらない話」にもいろいろなものがありますが、あなたのまわりの人、あるいはあなた自身が、こんな「つまらない話」をしていないでしょうか?①内輪ウケ話たとえば、こんなことはないでしょうか?あなたは同じ部署のAさんと、隣の部署のBさんと話をしています。来月、3人で顧客を訪ねて商品の説明をするので、その打ち合わせをしています。話が途切れたとき、あなたは、その場にいないCさんのことを思い出しました。あなた「そういえば……Cのヤツ、この間の飲み会でちゃんと帰れたの?」Aさん「いや、知らないっす。彼女の家に泊めてもらうとか言ってましたよ」あなた「え?アイツ、彼女いるの?」Aさん「みたいっすね。でも、『そろそろ潮時かな』とか言ってましたけど……」あなた「何で?何か問題あるの?」Aさん「いや~。お互いに忙しくてすれ違ってるんじゃないですか?」あなた「嘘だろぉ、アイツ、今、暇じゃん。忙しいフリするの世界一だな?」
このあと、あなたとAさんは、爆笑しながらCさんの話題でさらに盛り上がるのですが、取り残されたBさんは、その話題についていけず、あいまいな薄ら笑いを浮かべるだけ……。このように、身内しかわからないネタ、符牒、ギャグで盛り上がり、部外者が「おいおい、何のこと話してるんだよ!」と思わずツッコミたくなるのが「内輪ウケ話」です。ここまで相手の存在を無視してしまうのは論外ですが、日常の会話の中で似たような場面に遭遇することは、意外とあるのではないでしょうか。「ああ、そういう人っているよね」と、他人事のように考えている人も要注意です。「それじゃマジョリティーに響かないよ」「イシューが明確じゃないね」「デバイスを使い分けないとダメだよ」「それで、アカウンタビリティーが果たされていると言えるの?」あなたは、こんなふうに〝入れる必要のないカタカナ語〟をさりげなく織り交ぜて話していないでしょうか?あなたにとってはごく普通に使っている言葉でも、意味を知らない人にとっては、まったく話が通じない、ということもあります。これも、話し手とその周辺だけにしか意味が通じないという点で、立派な「内輪ウケ話」の一種。人は、普段接している人たちとの間でつくられる世界が、「常識」だと勘違いしてしまう生き物です。あなたの「常識」とは別の世界に生きている人にとっては、あなたの話は「つまらない話」以外の何物でもないのです。②自己中心的話会社の上司や先輩と飲みに行って、「実はオレも昔はヤンチャでね……」「20年前、オレがあのプロジェクトを手掛けたときは……」「言っとくけど、部長にかけあって数字変えさせたのはオレだからね!」といった〝武勇伝〟を延々聞かされて、ウンザリした経験はないでしょうか?あるいは、「株で500万円儲かったんだよ。オレ、やっぱ才能あるよね?」「高校時代はずっと学年1番でさあ、あ、1度だけ2番だったことがあったかな」「バスケ部の敦子とテニス部の優子から同時に告られちゃって、まいったな~」といった〝自慢話〟をエンドレスで語られたことはないでしょうか?このように、話し手は話せば話すほど陶酔して気分が良くなるけれども、聞き手にとってはどうしようもなくつまらない話が「自己中心的話」です。
「私は武勇伝も自慢話もしないから大丈夫」などと安心してはいけません。たとえば、あなたが夢中になっているアーティストやアイドル、もしくはテレビ番組や映画、アニメやマンガ、釣りや鉄道などの趣味について、その魅力を語るときに、知らない間に話し方に熱がこもっていないでしょうか?あなたが、それをどんなに素晴らしいと思っても、よく知らない人にとってはつまらない話に聞こえる危険性があるのです。また、女性に多い傾向があるのですが、昨日見た「夢の話」を延々と語る人がいます。これも、「自己中心的話」に分類されます。夢は、当人にとっては驚くべき体験かもしれませんが、聞き手にとってはまったくの他人事でしかありません。今話している内容が、聞き手にとっておもしろいのかそうでないのかを客観的に分析するのは、とてもむずかしいと思います。しかし、それをせずに、自分の話にひたすら没頭してしまえば、「あの人は自分の話ばかりする人」だと思われてしまうでしょう。人が自分のことを話したくなるのは、仕方のないことかもしれません。どんな人でも、自分のことを語りたい(聞いてほしい)という欲求を持っているからです。みんなが自分の話に注意深く耳を傾け、うなずき、笑ってくれるのは、確かに心地いいでしょう。ただ、ここで大事なのは、それを聞き手もおもしろいと思えるかどうか、ということ。聞き手が、心の中で、「あ~もう、わかったよ。頼むから早く終わってくれないかな」と思ってしまったら、あなたの話は「つまらない話」なのです。③ダラダラ時系列話「昨日、何してた?」そんなふうに聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか?昨日経験した出来事の中から、自分が「おもしろい」と思うエピソードを選んで簡潔にまとめられればいいのですが、それが苦手な人もいます。「え?昨日?えーと、朝起きてぇ、シャワーを浴びてぇ、お昼はミキちゃんとランチしてぇ、夜はユカと映画観に行ったんだけどぉー」こんなふうに、昨日の行動を延々と話してはいないでしょうか。聞いているほうは、「日記じゃないんだからさ……」とボヤきたくなってきます。
「どんな子どもだったの?」「高校生のときは、どんな感じだったの?」「大学を卒業してから何をやってたの?」こんな質問をされたときに、まるで自分の年表をつくっているかのように時間軸にそって話してしまう人は要注意です。話し手は丁寧に順を追って話しているつもりでも、聞くほうにとっては思いつくままに話しているようにしか思えないので、「つまらない話」だと認識されてしまいます。こういう話をすると、「ああ、わかる!起きたことを羅列するだけのヤツって、いるよね」と言う人がいます。でも、本当にあなたは「ダラダラ時系列話」をしていないと言い切れるでしょうか?たとえば、プレゼンの資料を最初から順を追ってダラダラと説明していないでしょうか?仕事の手順を後輩に教えるときに、ポイントを絞らないでダラダラと説明していないでしょうか?駅までの行き方を説明するのに、どうでもいい情報まで盛り込んでダラダラと話していないでしょうか?これでは、肝心の内容が全然相手に伝わっていない可能性もあります。話の要点がきちんと伝わらないという点では、「ダラダラ時系列話」をしているのと同じことなのです。人は誰かに自分の体験を話すとき、過去のことを思い出しながら話すので、ついつい時間軸に沿って順番に説明しようとします。しかし、聞き手にとっては、話し手がこだわる細かい順序や時間よりも、話の要点のほうが重要なので、話そのものを「つまらなく」感じてしまうのです。④結論ポロリ話私たち放送作家は、「プレビュー」といって、ディレクターが編集したVTRをオンエア前に観て意見を求められることがあります。そのとき、ADさんが機材の操作を誤って、先にVTRのオチとなる部分を再生してしまうという、あってはならない事態が時々起こります。「今のは観なかったことに……」というわけにはいきません。プレビューに集められた放送作家は、先にオチがわかってしまってガッカリ。何十時間もかけて編集作業をしたディレクターは、怒り心頭です。このように、せっかくおもしろい話をしようと思ったのに先にオチを言ってしまった、あるいは、プレゼンや営業トークで話の決め手となる部分を先に言ってしまった、ということはないでしょうか?たとえば、こんな話があります。「都市伝説」になっている、有名な〝怖い話〟です。
ある日の深夜、女性が帰宅しようとすると、自宅マンションの物陰から、黒っぽい服を着た男が走り去っていきました。女性は驚きましたが、仕事で疲れていたし、顔も見えなかったので、あまり気に留めずにそのまま家に入りました。次の日、出勤しようとすると、マンションの1階にパトカーが止まっていて騒然となっています。管理人さんに聞くと、殺人事件が起きたということでした。数日後、家でくつろいでいると、私服警官が訪ねてきました。「事件のことで、住民の方にお話を聞いています。不審な人物を見ませんでしたか?」女性は事件当夜のことはすっかり忘れていて、見なかったと答えると、彼は「何か思い出したら、小さなことでもいいので教えてください」と言い残して帰っていきました。その後も警官は定期的に訪ねてきて、犯人らしい人を見かけなかったかと尋ねます。女性は「犯人の手掛かりがないのかな」と思いつつ、知らないと答え続けました。しばらくして、警官が来なくなった頃、ニュースを観ていた女性は青ざめました。テレビ画面には、逮捕された殺人犯の写真が映っていました。それはまぎれもなく、あの私服警官の顔だったのです。彼は自分が顔を見られたと思い込み、女性が思い出したら口封じに殺してしまおうと狙っていたのでした……。たとえば、この話をするのに、「めちゃくちゃ怖い話しようか?知ってる?ニセ警官の話」こんなふうに切り出したとしたら、どうでしょう?台無しですよね?この話はニセ警官=犯人という真相が最後にわかるからゾッとするのです。それを最初にバラしてしまったら、まさに「プレビュー」の冒頭で結末を再生するようなもの。このように、重要な部分を先に言ってつまらなくしてしまうのが「結論ポロリ話」です。もちろん、結論を先に言うことで、話がわかりやすくなることもあります。前述の「ダラダラ時系列話」よりは、結論を先に話すほうが、言いたいことがきちんと相手に伝わるでしょう。でも、それがどんなときも有効かというと、そうとは限りません。話をおもしろく伝えるには正しい順序があります。その順序を守らず、先に結論を話してしまっては、「おもしろい話」が、途端に「つまらない」話になってしまうのです。▼ダメな構成が話をつまらなくする①~④のパターンは、どれも、聞き手にとっては「つまらない話」ですよね。それでは、なぜこれらがつまらなくなってしまうのか、みなさんはわかりますか?「話がおもしろいかどうかなんて、その場の雰囲気でしょ?」いえ、そうではありません。
コンピュータのソフトが起動しなければ、必ずどこかに欠陥があるように、つまらない話にもハッキリと「つまらなくなる原因」があるのです。では、その原因とは何か?それはズバリ、「構成が悪いから」なのです。ここでもう一度、構成が何だったのか、思い出してみてください。構成とは、次の2つを考えることでした。1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスする2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てるだとすると、逆に「構成」が下手な話というのは、1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスできていない2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるための順序立てができていないとなります。これに、先ほどのつまらない話のパターンを当てはめてみると……1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスできていない→①内輪ウケ話、②自己中心的話つまり、①は聞き手がまったく知らない要素を、②は聞いていてウンザリするような要素をチョイスしているので、本人がいくらおもしろいと思っていても、相手にはまったくそのおもしろさが伝わらないのです。他の2つも同様です。2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるための順序立てができていない→③ダラダラ時系列話、④結論ポロリ話③は省略してもいい要素が残っているために、④は話す順番を間違えているために、せっかくおもしろい要素をチョイスしても、そのおもしろさが相手にうまく伝わらないのです。このように、つまらない話の原因は、「構成」に問題があると考えられます。逆に、「構成」がうまければ、話をおもしろくすることができます。大爆笑とまではいかなくても、思いっきりスベるようなことはないでしょう。プロの噺家さんやお笑い芸人さんたちが、経験談をおもしろおかしく語ることがありますが、彼らだって毎日ビックリするような情報に接したり、腹を抱えて笑ってしまうような経験をしたりしているわけではありません。しかし、私たちより彼らの話がおもしろく聞こえるのは、きちんと「構成」を意識して話しているからなのです。▼「おもしろい話」を完成させる3つのプロセスでは、構成力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。その具体的なノウハウを、次章よりくわしく紹介していきます。繰り返しますが、構成とは次の2つを考えることでした。1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスする2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる第2章では、1の「おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスする」方法を紹介していきます。話をする前には、何をしゃべろうか、いろいろと考える(企画する)でしょう。そのとき、どんなネタを選べば相手(聞き手)におもしろいと思ってもらえるのか、考えます。第3章では、2の「チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる」方法を紹介します。どんなにおもしろいネタを選んでも、その伝え方を間違えれば、おもしろさがきちんと相手に伝わりません。話をおもしろく伝えるためには、話の「構造」を理解しておかなければならないのです。第4章では、テレビで活躍する有名人が使っているテクニックをご紹介します。有名人のテクニックといっても、特別なスキルが必要なものはありません。ちょっとしたコツで、あなたの話し方の幅を広げてくれるものばかりです。この3段階のステップを踏めば、あなたは、今よりずっとおもしろく話せるようになります。迷うことはありません。あとは“やるか、やらないか”でしょう。ミッキーマウスの生みの親、ウォルト・ディズニーはこう言っています。
「現状維持では、後退するばかりである」では、テクニックをマスターして、一歩ずつ前進していきましょう。
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