品のいい人と言われる言葉づかい日本語倶楽部[編]
目次一章●言葉の正しい選び方から間違えやすい敬語まで──これだけはマスターしたい「品のいい」言葉づかいの基本「へりくだりすぎ」はかえって品がない●間違った敬語は卑屈に聞こえる目下の人への言葉づかいに品位が出る●「品のいい人」の基本のキ「どうも」…はみっともない!●言葉を省くと軽薄に思われる〝曖昧な言葉〟は百害あって一利なし●その〝口グセ〟を会話から一掃敬語を使いこなすコツ〈尊敬語編〉●たったこれだけでエレガントに敬語を使いこなすコツ〈謙譲語編〉●〝過剰な敬語〟はかえって品がないこんな〝勘違い敬語〟にご用心●多くの人がハマる敬語の落とし穴「恐れ入ります」は最強のフレーズ●言葉に見合うよう堂々と口にしよう「お金」に関する言葉づかいにご注意●これを誤ると急に下品になる品性を著しく下げるNGワード●つい口から出そうになったらこう言い換える二章●挨拶からお世辞、雑談での注意点まで──感じのいい人と言われる「社交上手」な言葉づかい品のいい挨拶の基本●こんな時候の挨拶ができれば上級者お年寄りに挨拶するとき●「お元気そう」「お若い」はなぜ無作法か久しぶりに会った人に声をかけるとき●まずは「ごぶさた」のお詫びをすると上品目上の人と雑談するとき●こんな言い回しができればぐっと好印象に目上の人に同意するとき●知性を感じさせる「あいづち」の極意とは女性が女性の容姿をほめるなら●ほめ言葉が相手の気分を損ねている?!女性が女性の性格をほめるなら●「感じたまま」を言うから角が立つお世辞を言われたとき●社交辞令には、この謙虚なフレーズで対応する自分や他人の伴侶の呼び方●目上の人に対して夫を「主人」と呼ぶのは失礼!気持ちのよい近所づきあいの極意●微妙な距離だからこそ配慮が必要セールス、勧誘の上手な断り方●丁寧かつ毅然とした断り文句とは知らない人に呼びかけるには●「あなた」「おたく」ではいかにも軽々しい見知らぬ人にものを尋ねるには●この言い回しならぶしつけにならない会計、心づけの際の言葉づかい●お金が絡むだけに一段と気を配って三章●お礼から訪問先での振る舞い・NGワードまで──きちんとした人と感心される「気配り上手」な言葉づかい品のいいお礼の言い方●状況に応じてしっかり使い分けたい頂き物をしたときは●「けっこうなお品」と言うと無作法な場合もさりげなく人を誘うには●こんな誘い方なら相手も負担にならない知人を家に招いたとき●この気づかいが相手の心をときほぐす来客にくつろいでほしいとき●丁寧すぎると恐縮されることも…来客をもてなすとき●手料理、お酒、お茶の上手なすすめ方は来客を送り出すとき●あなたの本性は〝最後の最後〟で表れる?!他家を訪問したとき●相手の気づかいに応える感謝の言葉は?訪問先で手土産を渡すとき●「つまらないものですが…」とは言わないほうがいい?訪問先でごちそうになる場合●いただく前に、この奥ゆかしいひと言が大事訪問先で「遠慮する」ときは●強く拒絶するような言い方は聞き苦しい訪問先を辞去するとき●感謝の気持ちはこの気品ある言葉で表す友人の赤ちゃんをほめるとき●お祝いにふさわしい上品な言い回しとは病気見舞いに行ったときは●これが病人の気持ちに配慮した振る舞い方目上の人を見舞うときは●「必要とされている」と思える言い回しを選ぶ四章●お詫びから頼みごと、断り方まで──言いにくいことを巧みに伝える「説得上手」な言葉づかい言いにくい話を切り出すとき●この〝ひと言〟で相手に心の準備をさせる人に謝るときの言い方●「すみません」では軽率に聞こえる人に質問したいとき●相手が負担に感じないソフトな「聞き方」とは人に依頼したいとき●ぶしつけな行為だからこそ言葉を選ぼう人に用事を頼みたいとき●相手の都合に気を配った言い回しを目上の人に相談したいとき●敬意のこもった切り出し方とは相手の依頼に応じるときは●「承知した」ことをはっきり伝えるのが礼儀相手の依頼を断りたいときは●相手の気分を害さない気配りとは相手の依頼をはっきり断るなら●「力になれず残念」という気持ちを言葉にする贈り物を断りたいとき●相手の厚意に感謝しつつも断るには相手に恨まれない忠告の仕方●この穏便な言い回しなら相手も受け入れやすい相手の間違いを指摘するなら●恥をかかせぬように「前置き」を反対意見を言うとき●真っ向から否定すれば、よい意見も通らない強く否定したいとき●感情を抑えたこんな言葉づかいが効果的借金の返済をせまるとき●相手に弁解の余地を残す気配りをけなし言葉のうまい言い換え方●いくら嫌いでも汚い言葉は使うべからず五章●初対面でのやりとりから商談で使えるフレーズまで──
仕事のできる人と思われる「クレバー」な言葉づかい初対面の相手に挨拶するとき●好印象を与える気のきいた言い回しとは名刺のやりとりをするとき●たんに「いただきます」では失格アポイントメントをとりたいとき●これなら先方の「会う気」を引き出せる取引先に自社まで来てもらうとき●「呼びつけた」ように聞こえない好フレーズとは取引先や客を迎えるとき●多くの人が犯している〝過ち〟とは取引先を辞去するとき●引き揚げの際に品格がにじみ出る取引先に上司を紹介するとき●どちらを先に紹介すべきか取引先で上司への伝言を頼まれたら●つい、上司に尊敬語を使っていませんか?取引先に催促するとき●相手の立場を慮った言い回しを取引先へ「NO」を言うとき●こんな断り方なら角が立たない取引先に「お詫び」するとき●「遺憾です」は先方の怒りをあおるだけ取引先を食事に誘うとき●せっかくの招待も、これでは失礼に宴席でお酒を断りたいなら●「飲めないんです」ではどうにも無作法商談で使える好フレーズ●強引にならずに交渉をリードできる言葉づかいとは来客に面会相手の不在を告げる場合●社外と社内の敬語づかいに注意客に商品をすすめるとき●「着てみてください」では手にとる気も萎える来客の様子がおかしいとき●気を使ったつもりが、これでは逆効果…客へ「NO」を言うとき●困ったお客には礼を尽くしたこの言い回しを六章●上司への相談・反論からうまい切り返し方まで──職場で一目置かれる「スマート」な言葉づかい上司にアドバイスを求めるとき●いきなり話すから誤解が生じる上司からほめられたときは●これが大人の品格漂う返し方上司に反論したいとき●相手の気分を害さずに意見できるフレーズとは上司の都合を聞くとき●「いま、いいですか?」では軽率すぎる廊下で上司を追い越すとき●上司を追い越すのは、やはり無作法?上司より先に帰るとき●こんな挨拶なら快く送り出してもらえる上司の誘いを受けるとき●感じのいい「YES」の言い方とは上司の誘いを断りたいとき●こんな心憎い言い回しなら角が立たない七章●かけ方・受け方から取り次ぎ、間違い電話の応答まで──好感を印象づける「電話の達人」の言葉づかい品のいい電話のかけ方●ふだんより丁寧な言葉づかいで好印象電話の取り次ぎ・伝言の仕方●名乗らない相手や当人が不在のときは電話で相手を呼んでもらうとき●「○○さんお願いします」では、がさつすぎる電話した相手が不在のときは●こんな〝間違い〟を犯しやすいのでご注意〝OFF〟に電話をするとき●急ぎの用でも最初に非礼を詫びるべき間違い電話の上品な対応法●「違います!」と無作法に電話を切っていませんか?八章●贈り物のお礼からお祝い、不快感の伝え方まで──〝こころ〟がしっかり伝わる「手紙ならでは」の言葉づかい感謝の手紙を書くとき●頂き物なら具体的に感想を入れる依頼の手紙を書くとき●丁寧なつもりで不遜な表現をしているかも…贈答品に手紙を添えるなら●この配慮ある添え書きがあなたの株を上げる不快感、怒りを伝える手紙を書くとき●ストレートに感情をぶつけるのはいかにも軽率今後もつきあいの継続をお願いするとき●社交辞令とは感じさせない気のきいた表現とは手紙で相手の気づかいを遠慮するとき●先方の負担をなくすこれが魔法のフレーズ手紙で相手に注意をうながすときは●「ご注意願います」をさらに丁寧に言うと…お詫びを伝える手紙の書き方●非礼の度合いに応じた品のいい表現とは面識のない相手に手紙を書くとき●受け取る人に配慮した上品な決まり文句とは招待状の書き方と返事の仕方●この奥ゆかしい表現なら相手に喜ばれる
あなたの品性は、確実に〝言葉〟に表れる!──前書きふだんの会話のなかで、ふと「この人、上品だな」「話していて気持ちがいいな」と感じる人がいます。一方で、身なりや振る舞いはきちんとしているのに、なぜか「がさつ」な印象を受けたり「軽薄」に思えたりする人がいます。両者はどこが違うのでしょうか。そう、その差は「言葉づかい」にあるのです。言い換えれば、言葉づかいほど、その人の品のよしあし、つまり人格や知性が端的に表れるものはないと言えます。「品のいい言葉づかい」をするためには、敬語が使いこなせることはもちろん、近所の人とのちょっとした挨拶や知人との会話、さらに謝罪や拒否を表す言葉なども、礼儀をわきまえたうえでスマートにこなさなければなりません。ところが、こうした日常的な場面での言葉づかいほど、じつは難しいものなのです。この本では、プライベートな場からオフィシャルな場まで、さまざまなシーンで「こう言えば品のいい人と思われる」という言い回しの数々を紹介しました。さらに、つい使いがちな悪例と、その解説も述べてあります。言葉づかいは慣れの問題が大きいもの。本書を参考に言葉づかいを磨いていただければ、あなたの品格はぐっとアップするはずです。日本語倶楽部
一章●言葉の正しい選び方から間違えやすい敬語まで──これだけはマスターしたい「品のいい」言葉づかいの基本
「へりくだりすぎ」はかえって品がない●間違った敬語は卑屈に聞こえる「品のいい言葉づかい」というと、とにかく丁寧な言葉を使わなければと思うあまり、必要以上にへりくだった言葉づかいをしてしまう人がいます。たとえば、どなたかを招待した際、あなたならどのようにあいさつをするでしょうか。「本日はおいでいただきまして、ありがとうございます」でしょうか。それとも、「本日はおいでくださいまして、ありがとうございます」でしょうか。前者の「おいでいただきまして」という言い方をする人が案外多いのではないかと思いますが、これは間違い。前者はへりくだりすぎなのです。どちらも丁寧な感じがするのに、どうして前者がいけないのか?敬語には、簡単に言ってしまうと、相手を持ち上げる言い方(尊敬語)と、自分を下げる言い方(謙譲語)があります。そうして相手と自分の立ち位置をずらして上下関係をつくることで、相手に対して敬意を表しているわけです。これにあてはめると、「おいでいただきまして」という前者は自分を下げた言い方、「おいでくださいまして」という後者は相手を持ち上げた言い方となります。相手を持ち上げても、自分がへりくだっても、どちらも相手の位置は自分より高くなりますから、相手への敬意という意味では同じような効果があるはずですが、このようなケースでは、「本日はおいでくださいまして、ありがとうございます」というほうが品のいい言い回しなのです。冒頭から文法の話になってしまって恐縮ですが、基本的に敬語は、相手の動作には尊敬語、自分の動作には謙譲語を使います。この場合は、招待に応えて「おいでになった」のは相手ですから、相手を持ち上げた言い方をするのがふさわしい。それなのに、自分を下げた言い方をしてしまうと、へりくだりすぎて卑屈な印象を与えてしまいます。丁寧な言葉づかいをすることと、自分を下げた言い方をすることはイコールではありません。もちろん威張りくさったような乱暴な言葉づかいはいけませんが、かといって、必要以上にペコペコとへりくだるのは、上品な言葉づかいをしているつもりでも逆効果。けっして品のいいものではありません。「威張らず、へりくだりすぎず」。これが品のいい言葉づかいの基本です。まずは、このことを心にとめておきましょう。
目下の人への言葉づかいに品位が出る●「品のいい人」の基本のキさて、お客さまを招待して、はじめのあいさつはもちろん、その後の歓談でも上手に敬語を使いこなして、和気藹々と進んだとしましょう。ところが、そんな敬語の達人が、店の接客係にはぞんざいな言葉で接していたら、どうでしょうか。もてなす相手とは「さようでございますね」「恐れ入ります」などと、立て板に水の敬語を駆使していながら、接客係には「ちょっと。おしぼりが来ていないよ」「これ、下げて」……。これでは幻滅です。目上の人に対しては言葉づかいに気をつけるのに、部下や店の店員など目下の人には乱暴な言葉で接したり、平気であごで使うような態度をとるようでは、品位を疑われてしまいます。招待した相手に対しては粗相がなくても、そんな言葉づかいを聞かされては、相手も不愉快な気分にさせられてしまうはずです。品のいい言葉づかいとは、表面を取り繕えばいいというものではなく、あくまでも内面からにじみでるもの。相手を見てものを言うようなことをすれば、いくら上品ぶった言葉づかいをしても、いくら敬語の用法が正しかったとしても、たちまち人品の卑しさを見抜かれてしまいます。どんな相手にも誠意ある言葉づかいを忘れてはいけません。目下の人に対しても丁寧な言葉づかいをするよう心がけましょう。品のいい言葉づかいの基本「威張らない」というのは、そういうことです。先ほどの例で言えば、「おしぼりをお願いします」「これを下げてください」と言えばいいのです。「です」「ます」調の丁寧語の場合は、相手を持ち上げたり自分を下げたりするものではありません。つまり、目下の人に使ったからといって、相手との上下関係が変わることにはならず、また、必要以上にへりくだった言い回しになることもないのです。むしろ、丁寧語を使ってこそ、話し手の品位が上がるものだと心得ましょう。
「どうも」…はみっともない!●言葉を省くと軽薄に思われる丁寧な言葉づかいをするにあたって、もうひとつ気をつけたいのが、言葉を最後まできちんと言うということです。知り合いにあいさつをされても「こんにちは」の代わりに「どうも」。落とし物を拾ってもらったときも「どうも」。ごちそうになったお礼も「どうも」。どんなときでも、「どうも」ですませていませんか?「どうも」というのはなるほど便利な言葉で、とっさにどう言ったらいいのか困ったときに、ひと言「どうも」と言っておけば、急場をしのげてしまいます。けれども、「どうも」には、「どうもありがとう」「どうも恐れ入ります」というように、本来はあとに続く言葉があるはずなのです。それなのに、あとの言葉を省略して「どうも」のひと言だけですませては、たとえ感謝の気持ちがあったとしても、その気持ちはうまく伝わりません。それどころか、軽薄な印象になってしまいます。また、場合によっては横柄に聞こえることさえあります。いつも「どうも」と、何となくごまかしたあいさつをしていては、いつまでたっても品のいい会話ができるようにはなりません。「どうも」のあとを略さずに、きちんと最後まで言葉に表現するようにしましょう。あいさつだけではありません。ものを言うときは、最後まで責任をもって言い切ること、これが大事です。たとえば、上司に「今日はおごりだ。何がいいかな。中華はどうだろう?」と尋ねられて、「はあ、それもいいんですけどぉ……」などと、モゴモゴ言っているようでは、社会人としては失格。「おや、中華は嫌いなのか?」「あ、いえ。ただ和食っていうかぁ……」。こんな学生のような言葉づかいでは、上司も部下をねぎらう気持ちが失せてしまうに違いありません。上司だからという遠慮の気持ちから、意思表示をはっきりしにくいという言い訳もあるのかもしれませんが、文を最後まで言わずに語尾を曖昧にぼかすのは、かえって相手に対して失礼です。「中華も好きなのですが、今日は和食というのはいかがですか?」すっきりと、こんな具合に答えたほうがよほど印象もよいものです。最後まできちんと言うということは、自分の言葉に責任をもつということ。そうした堂々とした話し方が、品のいい言葉づかいの第一歩となるのです。
〝曖昧な言葉〟は百害あって一利なし●その〝口グセ〟を会話から一掃「どうも」のほかにも、日常のなかで思わず使ってしまいがちな〝曖昧な言葉〟はたくさんあります。「ちょっと」も、そのひとつ。「ちょっとご意見を伺わせてください」などと、相手に何かを依頼するときに最初につけて使う人を多く見かけます。あるいは、自分が何かを否定したいときに、「それはちょっと……」とか、「その日はちょっと都合が悪くて……」などという言い方で、語尾をぼかすのもよく耳にします。この「ちょっと」という言い回しからは、「お願しているのは〝ちょっとしたこと〟なのだから大丈夫ですよね」という魂胆や、否定の意を極力ぼかしたいという意識が透けて見えます。押しつけがましくなく、やんわりとした言い回しを心がけるのは、相手を尊重する意味で悪いことではありませんが、「ちょっと」というような〝曖昧な言葉〟で意味をぼかすのはいただけません。だいたい、「ちょっと」を省いても意味はそのまま通じます。あってもなくてもいいような、さほど意味をなさない言葉。それをなぜつけるのかというと、自分の言っていることに責任をもちたくない、あらかじめ予防線を張っておきたいという心理の表れだといっていいでしょう。「わりと」「けっこう」「なんか」「いちおう」「とりあえず」も同様です。若い世代の人たちが口癖のように使う「~かも」「~みたいな」「~さん的には」も、意味をぼかしたり、相手の出方次第ではどのようにでも言い換えられる、日和見的な〝曖昧な言葉〟です。「そのデザイン、なんか好きかも」「とりあえずトライしてみる、みたいな」「ワタシ的には厳しいと思うんですが、○○さん的にはどうですか?」といった具合に、深く意識せずになんとなく使っている人もいるのではないでしょうか。けれども、これらはとても品の悪い言い方です。もしも、あなたがこれらを毎日のように使っているとしたら、ただちにボキャブラリーのなかから追放してください。
敬語を使いこなすコツ〈尊敬語編〉●たったこれだけでエレガントに品のある言葉づかいをするためには、やはり敬語を避けて通るわけにはいきません。正しい敬語を美しく使いこなしてこそ、品格のある雰囲気を醸しだすことができるのです。とはいえ、敬語というだけで、難しそうと身構えてしまう人も少なくないようです。ここでは、敬語を使いこなす基本的なコツを紹介しておきましょう。尊敬語から話を進めていきますが、その前に、「A先生が本を書きました」という文章を正しい敬語に直してください。さて、どう言い直しますか?正解は、次の言い方です。「A先生が本をお書きになりました」「A先生が本を書かれました」と言い直した人もいるでしょうが、この言い方はおすすめできません。もちろん、「書く」を「書かれる」、「読む」を「読まれる」といった具合に、言葉の語尾を「れる、られる」に変える形の尊敬語もありますから、文法的には間違いではありません。ビジネスシーンでも頻繁に使う言い方です。ただ、この「れる」活用の尊敬語は〝簡易尊敬語〟で、とりあえずの形で相手に敬意を表する簡便な言い回し。文法としては問題がなくても、その簡便さゆえに一段下の尊敬語ということになり、せっかく尊敬語を使っても品位に欠けるものになってしまいます。ですから、尊敬語を使う場合は、この「れる」活用の簡易尊敬語は使わずに、その代わり、「お~になる」という言い方をするように心がけましょう。「書く」は「お書きになる」、「読む」は「お読みになる」──簡単ですね。また、「見学する」「会食する」といった「漢語+する」の場合は、「ご見学になる」「ご会食になる」というように、「ご~になる」とすればいいのです。すべての尊敬語は、この形で表現することができ、例外は次の五つだけです。*「食べる」→「召し上がる」*「行く」「来る」→「いらっしゃる」「おいでになる」*「見る」→「ご覧になる」*「言う」→「おっしゃる」*「くれる」→「くださる」尊敬語に関しては、最低限こうした点をマスターしておけば、エレガントな敬語づかいを周囲に印象づけることができるはずです。
敬語を使いこなすコツ〈謙譲語編〉●〝過剰な敬語〟はかえって品がない次に、謙譲語についてお話ししましょう。自分の動作を表す謙譲語にも、尊敬語と同じように法則があります。その謙譲語の法則とは、「お~する」。また、「漢語+する」の場合は、「ご~する」。これにあてはめれば謙譲語になります。さっそく、「取る」「渡す」「説明する」を、それぞれ謙譲語にしてみてください。*「取る」→「お取りする」*「渡す」→「お渡しする」*「説明する」→「ご説明する」いかがでしたか。ちっとも難しくないでしょう?また、謙譲語にも尊敬語同様に特殊なケースがあり、それは次の七つです。*「見る」→「拝見する」*「会う」→「お目にかかる」*「言う」→「申し上げる」*「もらう」→「いただく」「頂戴する」*「行く」「来る」→「まいる」「伺う」*「する」→「いたす」*「思う」→「存ずる」これらはよく使う言葉ですから、そのまま覚えておきましょう。これら例外を除いては、すべて「お~する」「ご~する」で対応できます。ちなみに「伺う」は、「質問する」「尋ねる」という意味でも使えます。さらに、「する」の謙譲語として紹介した「いたす/いたします」をつける言い回しもあります。ただし、「~いたします」はとても格調のある表現なのですが、使用にあたってはひとつだけ注意しなければならない点があります。それは、たとえば、「説明する」なら「説明いたします」とすること。ところが、往々にして「ご説明いたします」と言ってしまいがちなのです。章の冒頭で、へりくだりすぎると下品になるという話をしました。「いたします」という表現には、すでに謙譲の意が含まれているのに、さらに「ご説明」とすると過剰敬語になってしまい、敬語づかいとしては下品になるのです。この加減がわからなくて失敗する人が多いので、使うなら、「ご説明します」、あるいは「説明いたします」のいずれかなのだと記憶しておいてください。
こんな〝勘違い敬語〟にご用心●多くの人がハマる敬語の落とし穴前項で「ご説明いたします」が出たところで、ありがちな〝勘違い敬語〟をまとめておきましょう。(1)二重敬語先ほどの「ご説明いたします」の例をはじめ、もっともありがちな間違いが二重敬語。しかも、自覚なく使っている人がいちばん多いものです。たとえば、「お書きになられる」「お目にかからせていただく」「拝見させていただく」──これらは、どこが変だと思いますか?「お書きになられる」は、二重尊敬語。「お~になる」の法則にのっとった「お書きになる」に、「れる」活用の〝簡易尊敬語〟までつけてしまっています。*「お書きになられる」→「お書きになる」正しくは、シンプルにこれでいいのです。以下も同様です。*「お目にかからせていただく」(二重謙譲語)→「お目にかかる」*「拝見させていただく」(二重謙譲語)→「拝見する」くり返し説明しているように、丁寧すぎるのは文法的に間違っているだけでなく卑屈な印象を与えてしまうもの。すでに尊敬、謙譲の意を表しているうえに重ねてゴテゴテと飾り立てることはやめなければいけません。(2)あべこべ尊敬語さらに恥ずかしいのは、謙譲語と尊敬語をあべこべに使ってしまう間違いです。謙譲語に、「れる」活用尊敬語をつけたり「お~になる」としたりして無理やり尊敬語にしてしまう、ありがちな例を挙げます。*「申される」(「申す」は謙譲語)→「おっしゃる」*「拝見される」(「拝見」は謙譲語)→「ご覧になる」*「お伺いになる」(「伺う」は謙譲語)→「お聞きになる」(3)「さ」つき言葉これは、「~させていただく」を何にでもつけてしまうものです。*「休まさせていただきます」→「休ませていただきます」*「楽しまさせていただきます」→「楽しませていただきます」最近は、サービス業などで「~させていただく」を頻繁に使っていますが、そもそもへりくだりすぎた言葉なので、皆さんは使わないほうが賢明です。
「恐れ入ります」は最強のフレーズ●言葉に見合うよう堂々と口にしようあいさつ言葉のなかには、品がよく、なおかつ、どのような場面でも使える心強いワンフレーズがあります。「恐れ入ります」がそれです。たとえば、お店やレストランで店員に呼びかけるとき、あなたは何と言いますか?おそらく、「すみません。これを試着したいのですが」とか、「すみません。メニューをお願いします」などと口にしているのではないでしょうか。呼びかけるのに、どうして「すみません」などと謝らなければならないのだろうと思いながらも、なかなか適当な言葉が見当たらず、結局「すみません」と言ってしまっている人が多いのが実情です。そんなときこそ「恐れ入ります」と使えばいいのです。「恐れ入ります」は、とても美しいあいさつ言葉。とっさのときに、「どうも」や「すみません」などと言わずに「恐れ入ります」を使えば、そのひと言で、ぐっと品のいい印象になります。先の項で「どうも」という便利なワンフレーズも禁句にしてしまいましたから、その代わりに覚えておくと大変重宝するはずです。また、道を尋ねるときも、「すみません。道を伺いたいのですが」ではなく「恐れ入ります」で始めれば、ぐっと奥ゆかしい感じになります。席を譲ってもらったときも、お茶をすすめられたときも、落とし物を拾ってもらったときも、名刺を交換するときも、すべて「恐れ入ります」──これで通ります。「恐れ入ります」は、あらゆる場面で使うことができる〝魔法の言葉〟だといえるでしょう。ただし、ぺこぺこ頭を下げながら口にしてはいけません。きちんと背筋を伸ばして、軽い会釈とともに「恐れ入ります」と言うようにしましょう。この言葉には、そのような堂々とした、気品ある態度が似合います。さらに、たしかに「恐れ入ります」というのは、さまざまなシチュエーションで使うことができますが、きちんと感謝の意を表すべきときには、「恐れ入ります」一辺倒ですまさず、素直に「ありがとうございます」と言うようにしたいものです。
「お金」に関する言葉づかいにご注意●これを誤ると急に下品になる品のいい言葉づかいを心がけようとして慣れない言い回しを使い始めると、かえって不適切な言葉を使ってしまうことも、ままあります。それでは、せっかくの努力が台無し。とくにお金にまつわる言葉づかいで気を抜くと、とたんに品のない感じになってしまうので、よくよく注意が必要です。お金に関することは、あからさまな言い方を避ける──これが第一のポイント。なにしろ、お金や欲というのは俗っぽいもの。それをリアルに感じさせるような言葉づかいは、上品とはほど遠いものです。実際にはだれもがお金に無縁でいられるわけではありませんが、本当のところはどうかということは別にして、お金のニオイを漂わせないことが大切なのです。たとえば、「買う」「いくら」という直接的な表現はしないこと。相手の洋服がとても素敵で、どこで購入したのか教えてほしいときは、ストレートに「どこで買ったのですか?」と尋ねるのではなく、「どこでお求めになりましたか?」と言います。「お求めになりましたか?」の代わりに、「お取りになりましたか?」という、より上品な言い方をする場合もありますが、これはデパートなどがお得意さまに対して、売り場を通さない直接販売取引をする商い習慣に由来する言い回し。そのため、この言い方をすると、直接店に買いに行ったのではなく、外商に注文の品を届けさせたというニュアンスになります。しかし、それだけに、上品ぶったイヤミな感じに聞こえたり、あるいは、最近では通信販売のお取り寄せ先を尋ねているように聞こえる可能性もあります。一般的には、「どこでお求めになりましたか?」を使うほうが無難です。また、値段を尋ねるときは「いくらですか?」や「おいくらですか?」ではなく、「いかほどですか?」と言い換えると、品のよさがにじみます。
品性を著しく下げるNGワード●つい口から出そうになったらこう言い換えるお金にまつわる言葉以外にも、うっかり口走ってしまうと、とたんに下品になってしまう言葉があります。その最たるものが「やつ」という言葉。「品」「物」「方」などという意味で使う人がいますが、これは非常に下品です。「別のやつを見せてください」「新鮮なやつを頼みます」「見かけたことのあるやつ」などなど、何でも「やつ」ですませてしまうのは、絶対にタブーです。うっかり「やつ」と言いそうになったら、とにかくひと呼吸置くこと。「別の品を見せてください」「新鮮な物を頼みます」「お見かけしたことのある方」という具合に、状況に即した適切な言葉を考え、きちんと言い換えるようにしましょう。「様」の使い方にも注意してください。「さん」よりも「様」のほうが品のある言い方なのはもちろんですが、「様」は原則としては、「鈴木様」「一郎様」というように名前のあとにつけるもの。たまに、「あなた様」「社長様」という言い方をする人を見かけますが、とても下卑た印象を受けます。さらに、「うれしいです」「楽しかったです」のように、形容詞に「です」「ます」をつけて丁寧語にするケースも要注意です。多くの人が、いい年の大人になっても無意識に使っているようですが、文法的に間違っていますし、とても子どもっぽく響きます。形容詞を丁寧語にする場合は、「うれしく思います」「楽しく思いました」のように言うべきです。また、自分の呼称ですが、「あたし」「おれ」というのは、仲間うちのくだけた言い方。社会人としてオンのときには使えません。男女ともに、「わたし」が一般的。ただし、少しあらたまった席では、「わたくし」という言い方が適切です。
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