はじめに
この本は「ほめ言葉」を使って、人生を劇的に変える、人生に奇跡を起こす方法を書いた本です。
わたしはこれまで「ほめ言葉」のおかげで人生が大きく変わった人に、数多く出会ってきました。
たとえば、「8年も疎遠になっていた息子夫婦と和解した。
もう、死ぬまで仲良くなれないと思っていたのに」「不仲だった父親と、いまでは強い絆で結ばれている」「関係が冷え切っていた夫が心をひらき、何でも相談し合えるようになった」「反抗期だった中学2年生の娘が、最近、悩みを打ち明けてくれる」「なまけものだった高校1年生の長男が、自分から宿題に取り組むようになった」といった、ほめ言葉が起こした奇跡に、わたしはこれまで何度も出会ってきました。
申し遅れました。
この本の著者の原邦雄です。
わたしの仕事は、夫婦、親子、友人、職場などの人間関係をよくするようなほめ言葉を教えることです。
全国各地、ときには世界を飛び回って、「ほめ言葉の大切さ」を50万人以上に伝えてきました。
そして、どこに行っても、つねに予想を上回る反響をいただき、そのたびに感動を覚えます。
たったひとつの言葉で人を変えることができるもちろん、ただほめればいいというものではありません。
相手の心を動かす技術があるのです。
たとえば、子どもがテストで100点を取ったとしましょう。
「100点を取って、えらいね」こんなほめ言葉をかけたことはありませんか。
でも、実はこれはよくない「ほめ」なのです。
では、どう言えばいいのか。
「あのとき、テレビを見たいのをガマンしていたよね」「いつもより早起きしてお勉強していたよね」「お友達と遊びたいのを耐えてがんばっていたよね」そうです。
こう言えば、あなたの言葉は子どもの心にしっかり届きます。
そして、できるだけ具体的に、がんばったときのシーンが相手の心に浮かんで「あの時のことだ!!」とわかるくらい、日時を入れるなどして詳しく伝えてあげましょう。
大切なのは、「結果」をほめるのではなく、「行動や努力」、そして「人間性」をほめる、という点です。
確かに、テストで100点を取るのはすごいことです。
けれど、もしも次のテストの点数が80点だったらどうでしょう。
同じように努力しても、いい成績のときもあれば、思ったほど点数が取れないときもあるはずです。
子どもの成績がよくないとき、ほめるに値しないのでしょうか。
そんなことはありません。
努力をしたこと、一生懸命がんばったこと、その「過程」をほめてあげることが大事なのです。
人生は小さながんばり、小さな決断の積み重ねでできています。
素晴らしいのは「100点を取った」ことよりもむしろ、「100点を取るための行動を選んだ」ことにあるのです。
その姿勢、子どもも大人も関係なく、きちんとほめるべきでしょう。
テストの点数だけをほめることは、子どもの価値をほんとうに認めたことにはなりません。
どんな人でも人間性をほめられたいものです。
それは、外見や成績といった表面的なことではなく、ひたむきさや誠実さ、努力する姿勢といった、その人の本質を肯定することなのです。
ほめ言葉が、ほめられた人の人生をも変えてしまう理由。
それは、ほめ言葉がその人の生き方、そして人間性を肯定するからなのです。
あなたを変えるのも、あなた自身ほめ言葉は、ほめられた人を変えるだけではありません。
ほめた人自身をも変えてしまいます。
ここで、佐藤さんという男性のお話をしましょう。
佐藤さんは、かつて学校でいじめにあったり、家庭の事情でご両親と離れて暮らさなければならなかったりなど、不遇な幼少期を送りました。
その結果、佐藤さんの生活は荒れてしまいました。
暴走族に入り、ギャンブルに明け暮れました。
その後、佐藤さんは結婚してふたりの子どもに恵まれましたが、家族を大切にすることができず、離婚。
わたしが初めて会ったとき、佐藤さんは、まさに八方ふさがりの状況でした。
同居する息子さんとの関係も冷え切ってしまい、ご両親とも仲たがいしていまし
た。
「変わりたい、今の状況から脱出したい」その一心で、佐藤さんはわたしを訪ねてきたのです。
わたしは、佐藤さんに、普段のくらしのなかで気づいたさまざまな「ありがとう」をメッセージカードにしたためて、息子さんに渡すようにとアドバイスしました。
「洗濯物をたたんでくれてありがとう」「お風呂をわかしてくれてありがとう」佐藤さんは、それまで息子さんに感謝を伝えたことはありませんでした。
佐藤さん自身、息子さんがしてくれることを当たり前のように感じていたのです。
いきなりカードなんて渡したら驚くだろうなと思いながらも、佐藤さんは勇気をふりしぼって、メッセージカードを差し出しました。
「は?何これ」息子さんにそう言われて、カードはゴミ箱行きになったそうです。
わたしは佐藤さんにこう伝えました。
「1回でうまくいかなくても続けてください。
感謝の気持ちをカードに書いて、何度でも息子さんに渡してください」「今までお父さんにほめられたことがなかったのですから、息子さんもどう反応したらよいのか、とまどっているのでは?」2回目のメッセージカードを、息子さんは何も言わずに受け取りました。
ちょっとは前進したのかな……そんなことを思いつつ、佐藤さんは3回目のカードを渡しました。
するとどうでしょう、佐藤さんのLINEに、息子さんから「親父、ごはんでも食べに行こうよ!」とメッセージが届いたのです。
ひさしぶりに親子で食事をしながら、息子さんは、「親父がそんなふうに思ってくれていたなんて知らなかったよ。
親父、ありがとう!」と言ってくれました。
それを聞いた佐藤さんは、涙がいつまでも止まらなかったそうです。
佐藤さんは息子さんを自然にほめることができるようになり、それとともに、親子関係がよい方向に変わっていきました。
そして、佐藤さん自身も息子さんからもらった感謝の言葉をきっかけに、自分の人生を肯定的に捉えられるようになったのです。
長らく断絶状態にあった佐藤さんのご両親との付き合いも再開し、今では家族の絆を取り戻しています。
すべての人が「ほめ言葉」で満たされれば……わたしは、佐藤さんの話を聞き、ほめ言葉がきっかけになって、まるで魔法のように人生が変わるのだと、あらためて想いを強くしました。
ほめることは、ほめられた人を肯定するだけではありません。
ほめた人自身の心も満たすのです。
自分のほめた人が、今度は自分をほめてくれる。
こんなプラスの循環が自然に生まれます。
ほめ言葉の魔法は人から人へと連鎖するのです。
人をほめるなんて、最初はちょっと恥ずかしいかもしれません。
けれども、ほめることは、相手の幸せや成長につながるだけでなく、あなた自身の人生にも幸せを呼びこみます。
これこそが、ほめ言葉の魔法なのです。
ほめ言葉は、家庭や地域、会社での人間関係をよくするだけにとどまらず、社会全体を変えてしまう力すら秘めています。
タクシーやバスに乗ったときのことを想像してみましょう。
バスの運転手さんが時間通りに運行をしてくれ、行き先に正確な時間で到着したとします。
このとき、あなたが車を降りながら、運転手さんに「ありがとう」や「安全運転でしたね」などと、一言声をかけたら、どんなことが起きるでしょうか。
もし、運転手さんが、あなたのほめ言葉を聞いて、ちょっぴり幸せな気分になったとしたら?たとえば、コンビニに買い物に行ったときにも、ほめ言葉はかけられます。
商品をレジに持っていき、お会計をすませてお釣りをもらったら、一言「ありがとう」と言ってみたら、どんな反応が起きるでしょう。
店員さんは、ちょっぴり驚きながらも、ほほえみを返してくれるはずです。
あなたと出会った人が、少しだけでも「明日もがんばろう」という気持ちになったとしたら?ほら、世界が少しずつよくなっていくように感じられませんか。
たった一言のほめ言葉から、小さな幸せが生まれます。
そこから幸せの連鎖が始まるのです。
あなたのほめ言葉が、まわりの人たちに次々とつながっていけば、世の中には笑顔がどんどん増えていくはずです。
「人は、ほめられるために生まれてきた」わたしは本気で、そう思っています。
そして、自分や他人を「赦す」ことから「ほめ」は始まるのです。
この本では、ほめ言葉の魔法をたっぷり紹介したいと思います。
「あの人にはほめるところがない」「ほめ言葉も見つからない」「ほめたいけど気恥ずかしい」ほめる側のそんな揺れる気持ちを受け止めながら、わたしは、まだ人をほめられずにいるあなたが、本当は人を大切に思っていることを知っています。
そんなあなたの、背中をそっと押してあげるのが、わたしの役割なのです。
自ら進んでほめ言葉をかけられるようになれば、まるで魔法をかけられたように、あなたの人生や、まわりの人が幸せスパイラルに入ることを、わたしは確信しています。
もくじはじめにたったひとつの言葉で人を変えることができるあなたを変えるのも、あなた自身すべての人が「ほめ言葉」で満たされれば……
第1章ほめ言葉のすごい力
たった一言の「ほめ言葉」でバラバラだった家族の心がひとつに
たった一言の「ほめ言葉」で人生が変わる。
簡単には信じられないことかもしれませんが、そのようなできごとがわたしの知り合いの家族でおきました。
それはどんなものだったと思いますか?ふだんつかわないような、とっておきの言葉だったのでしょうか。
映画やドラマで俳優たちが言うような「キメ台詞」だったのでしょうか。
実は、そんな大げさなものではありませんでした。
わたしたちの身近にあって、もしかしたらあなたもついさっき、口にしたかもしれない言葉でした。
「ありがとう」の一言。
これだけで、バラバラだったある家族がひとつになれたのです。
78歳になる高橋さんご夫婦には、ある悩みごとがありました。
それは、自分たちと息子夫婦、娘の心がはなれてしまい、家族がバラバラになってしまったことでした。
きっかけは遺産相続でした。
自分たちの将来のことを考えて、土地や家を2人の子どもたちのどちらに、どのように分けようかと家族会議をしたのですが、息子さんと娘さんの意見が真っ二つに割れてしまったのです。
娘さんは言います。
「兄さんは家族がいるし、一緒に住んでいるマンションがあるじゃない。
だから家と土地はわたしに譲ってよ」しかし息子さんは首をたてに振りません。
「ふざけるな!自分が長男なんだから、全部を相続するのは当たり前だろ。
それに一人で気楽に暮らしているおまえには、実家の家も土地も、広すぎる」高橋さんご夫妻は、困り果ててしまいました。
子どもの頃はどこへ行くにも一緒で仲の良かった兄妹が、大人になってお金がからむとこんなにもみにくく争ってしまうなんて。
ご夫婦は心を痛め、何とか間に入って子どもたちの仲を取り持とうとしました。
しかし、ご夫婦が何か意見を言った途端に「どうして親父とおふくろは妹の肩ばかり持つんだ。
昔からそうだ。
あいつのほうが可愛いんだろ」「お父さんとお母さんは兄さんが長男だからって何でも優先して、わたしの気持ちを全然わかってくれない」と、取りつく島がありませんでした。
それどころか、だんだんとご夫婦と子どもたちの間までこじれてくる始末。
「どうして2人とも自分のことしか考えないんだ。
お金のことばかりこだわって……。
自分たちは育て方を間違ったんだろうか」やがて高橋家は冷え切った関係になりました。
以前は、お正月になると必ず顔を見せてくれた子どもや孫たちがパタリと立ち寄らなくなり、気をつかってメールをしても、返事すらこなくなってしまったのです。
そんな日々が何年も続くと、やがて高橋さんご夫妻は「もう私たちも年だし、子どもたちとの関係を元に戻せないまま、死んでしまうのだろうか」と考えるようになってしまいました。
そんな関係は8年ほど続いたそうです。
しかしあるとき、突然、息子さんから2人の携帯電話にメールが届きました。
そこにはこんなメッセージが。
「元気にしてる?長い間、連絡しなくてゴメン。
寒くなってきたけど、風邪とかひいてないか?もう年なんだし、昔みたいに思ってちゃダメだよ」いきなりのことで、ご夫妻は顔を見合わせたそうです。
でも同時に、涙が出るほどうれしかったそうです。
語り尽くせないほどのごたごたがあって、こじれにこじれた親子関係とはいえ、やはり本音では「仲よくしたい」という思いがあったのですから。
これをきっかけに、高橋さん親子の関係は少しずつよくなっていきました。
なぜ、高橋さんご夫妻の携帯電話に、息子さんから突然のメールがあったのでしょう。
実を言うと、メールを送る少し前に、息子さんはわたしとある会合で出会っていたのです。
当時、息子さんは会社での人間関係や、ご近所の方々との人間関係に悩んでおられました。
うまく付き合いたいけどできない。
そんな悩みを持って、わたしに相談を持ちかけてきたのです。
わたしは息子さんに「ほめ言葉のかけ方」のアドバイスをしました。
息子さんはそれを実践し、周囲との関係をだんだんよくしていき、同時に「ほめ言葉」の力を実感していきました。
「ほめ言葉」の凄さを知った息子さんは、もっと根深い悩みについても、わたしに打ち明けてくれました。
先ほどお伝えした、両親との関係のことです。
わたしは「ぜひ、ご両親にもほめ言葉を伝えてあげてください」とすすめました。
「そうは言っても、もう8年も音信不通ですし。
今さらやりづらいですよ」「少しずつでもいいんですよ。
あなたも妹さんもご両親も、ほんとうは仲よくしたいはず。
最初はあいさつ程度でかまいませんから、少しだけ気づかいの言葉を入れて、気持ちを伝えてあげてください」息子さんは思い切って両親に先ほどのメールを送りました。
そして妹さんにも、同じように連絡をとってみたそうです。
このことをきっかけに、からまっていた糸がほどけるように、高橋家の心がひとつになっていきました。
息子さんはそれからも、自分から積極的にメールを送りました。
「暑くなってきたね。
おふくろはいつも夏になると夏バテになっていたね。
今年も気をつけて」「5才になったともくんがこの前、幼稚園のお遊戯会でこびとの役をやったよ。
正直、王子役のほうが似合っていたと思う。
これって、親バカかな(笑)?」「むかし、親父にはよく近くのロックガーデンに連れて行ってもらってたよな。
おふくろが作ったおにぎりとお茶を持って、途中の肉屋でコロッケを買って、お
昼に食べたよな。
今度、ともくんをそこに連れて行こうと思うんだ」「家族で毎年行っていた○○温泉に、俺たち家族で行くことにしたよ。
みんなで泊まったあの部屋を予約してみた。
7歳のときに俺がつけた柱の傷、まだ残ってたりして(笑)」「娘の七五三の写真が今日、写真屋から届いたよ。
美人だな。
嫁にやりたくないわ(笑)。
今度、持って行ってもいい?」……こんなメールでのやり取りが続いたある日、今度は高橋さんご夫妻に息子さんからの電話がかかってきました。
「今までいろいろあったけど、親父とおふくろには本当に感謝しているんだ。
相続の件で、ひどいことを言ってごめん。
あのときの俺はどうかしていた。
今ではほんとうに親父とおふくろがいてくれてよかったと思ってる。
生んでくれて、育ててくれてありがとう。
今度の正月は、みんなでそっちに行くよ」この電話を受けて、高橋さんご夫妻は人生で一番、心が満たされたそうです。
これまで息子や娘から生んだこと、育てたことに感謝されたことなどなかったからです。
やがて娘さんからも「会いたい」との連絡が。
子どもたちのほんとうの気持ちを知ることができて、これまでのごたごたをすっかり水に流そうと思ったそうです。
翌年の正月。
高橋家は8年ぶりに顔をそろえました。
高橋さんご夫妻、息子さんとその家族、娘さんが集まりました。
それまで夫婦だけでさみしく感じていた家が、一気ににぎやかになったそうです。
ひさしぶりの家族団らんに、高橋さんご夫妻はこれまでに感じたことのない幸せをかみしめました。
そして、相続のことも、みなでお互いのことを考えながら、納得いくかたちで落ち着いたのです。
たった一言の「育ててくれてありがとう」をきっかけに、高橋家の止まっていた時間が再び動き始めました。
それは高橋さんご夫妻がもっとも聞きたかった言葉、子どもたちに言ってもらいたかった言葉なのだと思います。
誰もが「認められること」に飢えている
わたしのセミナーでは、参加者のみなさんに、実際にほめたり、ほめられたりしていただきます。
「ほめ言葉」の力を実感してもらうためです。
すると、驚くべきことが起こります。
なんと、ほめられた人が「泣く」のです。
ほめられたぐらいで人が泣くなんて、と思われるかもしれませんが、ほんとうのことなのです。
専業主婦の渡辺さんの例を挙げてみます。
渡辺さんは、毎日毎日、一生懸命に家事をこなしています。
朝食、夕食はもちろん、掃除、洗濯、お買いものなど、やることは日々たくさんあります。
何よりたいへんなのは子どもたちの世話。
まだ小学校に上がる前の子もいて、なかなか手がかかります。
けれど、夫からは感謝の言葉ひとつもらったことはありません。
夫も仕事でたいへんだし、仕方ないと渡辺さんは考えていました。
主婦とは、そんなものだと思いながら過ごしてきたのです。
そんななか、機会があって、渡辺さんはわたしのセミナーに参加しました。
最初のうち、渡辺さんは、「別に、わたしは、ほめられるようなことは何もしていませんよ」と、おっしゃっていました。
しかし、よくよく聞いてみると、毎日、主婦としての仕事をきっちりこなしているではありませんか。
わたしは言いました。
「あなたのしていることは、当たり前のことではありませんよ。
あなたが家事を引き受けているから、ご主人は安心して仕事に打ち込めるし、お子さんもすくすくと育っている。
すごくがんばっているではありませんか。
あなたは立派に家族を支えていらっしゃいます」こう語りかけると、どうしたことでしょう、渡辺さんの目がみるみる潤んできて、一筋の涙が頬を伝ったのです。
そして涙があふれて止まらなくなりました。
「あれ、どうしてわたしは泣いているんでしょう」と、本人も不思議がっていました。
でも、わたしにはわかりました。
渡辺さんは自分でも気づいていませんでしたが、ほんとうは認められたかったのです。
日々の家事と子そだては、骨が折れる仕事です。
渡辺さんは、それが自分の役割だと思いつつも、夫には「やって当たり前」のようにみなされています。
彼女がどんなに子育てで神経をすり減らしても、夫はそれを知りもしないし、知ろうともしない。
わたしのことを知ってほしい、「よくがんばったね」と抱きしめてほしい。
その願いが、一筋の涙の理由なのです。
セミナーでほめられて泣いた人は、渡辺さんだけではありません。
けっしてレアケースではないのです。
誰かに認められることは、大人が思わず涙を流すほど心を揺さぶられ、感動するできごとなのです。
考えてもみてください。
あなたは、ここ数日のうちに誰かにほめられたことがありますか。
もしあれば素敵だと思いますが、日々がんばっているのに、なかなか機会がないのではありませんか。
だからこそ、たった一言のほめ言葉が心にしみるのでしょう。
わたしは毎回、多くの人の涙を目撃しています。
普段、誰からも認められない切なさを抱えて生きている人がそれだけたくさんいるのだと思います。
とくに、日本は「ほめ言葉」をかけてもらえずに、つらい思いをしている人が多いように思います。
というのも、わたしは毎年、世界各地を旅しながら、いろいろな国の人たちと、教育などについて、じかに意見を交わしています。
その経験から言えるのですが、日本は世界のなかでも幸せ探しが苦手な国です。
安全で便利、そして物質的には世界でも指折りの豊かな国なのに、人間関係では人のマイナス面にばかり焦点が当たり過ぎて、マイナスの言葉であふれ返っています。
実はこれが日本人にとって、もっとも不幸なことではないかと思うのです。
わたしは、ほめ言葉をかける文化を日本に根づかせたいと思っています。
人のプラスの面に焦点を合わせれば、人々が前向きで明るく苦難を乗り越えることができます。
そんな、力がみなぎる国になってほしいと願っています。
ほめるときは3つの欲求を満たしなさい
なぜ、「ほめ言葉」が、認められることを求めている人の心に刺さるのでしょうか。
それは、その人を肯定する言葉だからです。
「あなたと一緒にいると楽しい」「今日の夕飯、おいしかったよ」「いつも子どもの面倒を見てくれてありがとう」こんな言葉をかけてもらえたら、自分に自信が持てますよね。
わたしは家族の役にたっているんだ。
わたしは認められているんだと感じられます。
ほめ言葉は、居場所をつくる言葉でもあるのです。
わたしが大事にしているのが「自尊心の3大欲求」です。
これはアメリカの心理学者ウィル・シュッツ博士が提唱したもので、「自己重要感」「自己有能感」「自己好感」という3つの欲求のことです。
ほめ言葉によって、この3大欲求が満たされるのです。
わたしなりにひとつずつ分析してみましょう。
まず、自己重要感。
これは「自分を大事な存在として認めてほしい」という欲求です。
「ありがとう」と言われたときに満たされます。
次に、自己有能感。
「的確な意思決定と行動ができるようになりたい」という欲求で、「すごいね」「成長したね」と言われたときに満たされます。
最後に、自己好感。
こちらは「人に好かれたい」という欲求です。
「好きだよ」「好感が持てる」などと言われたときに満たされるものです。
つまり、理想的なほめ言葉は、次のような言葉が自然にあふれ出てくることです。
「ありがとう」「すごいね」「成長したね」「好き!」「好感が持てる」たとえば、「きちんとあいさつできていたね、すごいね!」と、ほめられた子どもは自尊心が満たされます。
それだけではなく、もっと認められたい、好感を持たれたいと願うようになります。
「次はもっと大きな声であいさつをしてみよう」「もう少し、きちんとした姿勢のほうがいいかな?」「あの人にも、あいさつしてみよう」このように、思考がどんどんプラスの方向に進んでいきます。
たった一言のほめ言葉だとしても、相手の自尊心を満たしてあげられれば、その人の心を動かすことができるのです。
お世辞と「ほめ言葉」はまったくの別物
「そのネクタイ、素敵ですね」このほめ言葉を、あなたはどう思いますか。
「別に、普通じゃないか」そうお考えでしょうか。
でも、わたしに言わせれば、これはほめ言葉ではなく、お世辞です。
先ほどもご説明しましたが、ほめるというのは、相手の人間性を肯定することです。
「ネクタイが素敵ですね」では、ネクタイのことしか話していませんよね。
それに、たったこれだけの言葉をポンと言っても、「その場の思いつきで言ったんじゃないのか」と、逆に勘ぐられることすらあります。
お世辞は「おだてておけば、相手はいい気分になるだろう」という、相手を見下した心が背景にあります。
それが見透かされるようでは、かえってその人との関係は悪くなってしまいます。
わたしだったら、こうほめます。
「昨日と違うネクタイですね。
何種類持っているんですか。
いつも身だしなみに気を使っているんですね」こんなふうに具体的にほめると、その人の人柄が見えてくると思いませんか。
素敵なネクタイをしている人は、常に相手からどう見られているのかを考えて行動しています。
その人の心がけがネクタイの選び方にも表れているのです。
ほめられた相手は「お、やるな」と思い、わたしを見る目も違ってくるでしょう。
このように、一見なんでもない、たったひとつのほめ言葉をきっかけに、人生がプラスへと動き出すものです。
大切なのは、一言そえるほめ言葉です。
どうすれば、こうしたほめ言葉がかけられるのでしょうか。
難しそうに思われるかもしれませんが、ご安心ください、誰にでもできます。
そのポイントは、追ってご紹介します。
「ほめ言葉」4つのポイントと4つの効能
ほめ言葉には、人を成長させる効果があります。
たとえば、子そだて中のお母さんなら、どんどん子どもをほめて自信を持たせてあげてください。
自信を持てば持つほど、心の底からやる気がわいてきて、勉強はもちろん、スポーツなどいろんなことに対して積極的に取り組むようになります。
ただし、何でもかんでもほめてはいけません。
そこで、人を育てるためのほめ言葉について、覚えておきたい4つのポイントと、4つの効能をご説明します。
ポイント1存在を認めてあげるほめて、相手を育てるには、その人のかけがえのない長所を見つけ、伸ばしてあげることが大事です。
その大前提となるのが「生まれてきただけで、そこに存在しているだけでまずはOK」という考え方です。
なぜなら、人はほめられるために生まれてきたからです。
今はまだその人が、夢や希望、自分なりの意思を持てずにいたとしても、いずれ見つかるものです。
あたたかく、長い目で見てあげてください。
ポイント2自分の翼で飛べるように育ててあげる人間は似たような姿形をしていたとしても、中身はそれぞれ違います。
ほかの誰かに大きな翼があるからといって、自分の子も同じ翼を持っているとは限らないのです。
大切なのは、その子が持っている翼を見つけ、羽ばたいていけるように育ててあげること。
時間がかかるかもしれません。
ですが、その子が必ず飛べると信じ、ほめ言葉をかけてあげてください。
いずれ、自分の翼で飛べるようになります。
ポイント3根っこに水をあげるお花を育てるときに、何も考えずにただお水をあげたときと、ちゃんと根っこに届くようにお水をあげたときでは、同じ花でも育ち具合は変わってきますよね。
それは人も同じです。
人には、その人しか持っていない長所があります。
それを育てるために、「ほめ言葉」というお水を与えることが重要です。
「こんなふうに育ってほしい」という愛情を込めながら水をあげ、見守ってあげてください。
葉の先端が、根の先端。
根っこを知るためには、上を見ないといけません。
また水をあげすぎると腐ってしまう草木もあれば、水をあげないと枯れてしまう草木もあります。
つまり、相手を知らなければいけません。
相手を知り、その人が一番育つ水の量やタイミングをはかり、水をあげてください。
ポイント4ほめっ放しにしないほめすぎると天狗になってしまうことがあります。
ですから、ときには方向修正をしてあげましょう。
その人が、よくない方向へ進んでしまいそうだと思ったら、そのときは叱ってあげることも必要だと、覚えておいてください。
ただし、叱るときには「あなたの感情が乱れていないこと」「愛情を持って包みこんであげること」「成長の矢印を修正してあげるイメージを持つこと」が大切です。
決してその人の芽を摘みとることではありません。
以上、4つのポイントを押さえると、次にご説明する4つの効能があらわれてきます。
ココがすごい1成長が予測を上回るこれは「ほめ言葉」で人を育てる、最大の魅力かもしれません。
ほめられて、自信を持つようになると、ほんとうに人は驚くほどぐんぐん伸びるのです。
わたしだけでなく、これまで「ほめ言葉」を教えてきた、多くの人たちがこのことを実感しています。
ココがすごい2とびっきりの笑顔を見られる人はほめられることで「自分はできる人間だったんだ」と気づきます。
また周囲からも「この人はできる人なんだ」と認められるようになると、それまでとは違う、とびっきりの笑顔を浮かべるようになります。
行動もどんどん変わり、結果も変わってくるものです。
好循環が生まれるのです。
ココがすごい3自分の気持ちを表現するようになる日本人にとって、謙虚さは美徳。
海外の人に比べ、あまり自分から進んで意見を言おうとはしない人が多いのです。
これは決して悪いことではなく、私たちの国に根づいた素晴らしい文化のひとつです。
しかし、謙虚と遠慮は違います。
「自主的な意見を言うこと」「自分の気持ちを言葉で表現すること」も、生きていくうえでは大切なのです。
「ほめ言葉」をかけられることで自信を持てるようになると、自分の気持ちを素直に表現できる人に育ちます。
ココがすごい4自分を律する人にはかけがえのない長所がありますが、その一方で短所もあります。
でも、それはあまり見たくないものですよね。
自分でフタをしたり、見て見ぬフリをしたりして先延ばしにしたりします。
ほめ言葉をきっかけに、自分に自信が持てるようになると、人は自主的に改善しようとします。
まわりからほめてもらわないと、行動できない状態から、自分を律して、短所を改善できるようになるのです。
脳科学でも証明された「ほめ言葉」の幸せ効果
ほめ言葉の魔法は、実は科学的にも証明されています。
生理学研究所の定藤規弘教授が「ほめられた人は、学んだことを忘れにくくなる」という研究成果を発表したのです。
テレビ朝日の「報道ステーション」でも紹介され、反響を呼びました。
この番組には、わたしも登場しており、当時キャスターだった古舘伊知郎さんも、「ほめ言葉」の効果に驚いていました。
それは、このような研究です。
定藤教授は、まず、右ききの成人男女48人を16人ずつ3つのグループに分け、左手でキーボードを速く、正確に入力するという試験を行いました。
1つめのグループ=試験結果に関係なく、思いっきりほめる。
2つめのグループ=他人がほめられている映像を見せる。
3つめのグループ=自分の成績が示されたグラフを見せる。
翌日、この3つのグループに前日と同じ入力作業をしてもらいました。
すると、思いっきりほめられたグループは、ほかの2つのグループに比べて、明らかに多くの入力ができたというのです。
定藤教授は「脳にとって、ほめられることは金銭的報酬にも匹敵する社会的報酬」だともおっしゃっています。
ほめられると人は幸福を感じること、さらに、いわゆる「ほめると伸びる」ことが、最新科学でも証明されたのです。
また、近年、「ほめられるとキレイになる」ということも科学的に説明できるようになっています。
ほめられると元気になったり、気持ちが前向きになったりするのは、脳の「報酬系」と呼ばれる部位が活性化することによって起きる現象です。
この報酬系が活発になると、ストレスホルモンが減って、アクティブに動けるようになります。
また、ほめられることによって、エストロゲンという女性ホルモンがたくさん分泌されるそうです。
エストロゲンが多く分泌されると、肌にツヤが出てきます。
常に注目を浴び、ほめられている女性タレントがいきいきとして、美しさを発揮できるのも、周囲からのほめ言葉が作用しているのでしょう。
学習への目覚ましい効果、そして美への効果まで注目されているのです。
「ほめられて」育ったから一流になれた
著名な人物でも、ほめて育てられた人は数多くいます。
その代表格は、発明王トーマス・エジソンでしょう。
子どもの頃、エジソンは落ちこぼれでした。
落第して、8歳で退学になってしまったエジソンを、母親はほめ続けました。
エジソンは、ほかの科目の成績はひどかったのですが、理科だけは抜群にできました。
母親は、そこに注目したのです。
「あなたは理科の天才。
きっと素晴らしい人間になる」こう言って、息子を励まし続けました。
母の言葉を胸に、エジソンは、あきらめずにがんばり、やがて発明王にまでのぼりつめたのです。
日本にも、ほめて育てられた天才がいます。
元メジャーリーガーの松井秀喜さんです。
父親の昌雄さんはほめることの重要性をとてもよく理解していました。
昌雄さんによると、子どもを叱ることは大事ですが、8割ほめて、2割叱ることが重要なのだそうです。
叱る場合も、まずはほめることを探し、ほめたあとで叱ると、心が開いているので素直に受け取り、子どもは伸びていくとのこと。
秀喜さんもそうやって育てられたのでしょう。
秀喜さんは、選手として一流なだけではありません。
その人柄も讃えられています。
彼は、決して人の悪口を言わないそうです。
「父との約束です」と秀喜さんは話していて、昌雄さんの教育がいかに素晴らしかったかがわかります。
また、秀喜さんの愛読書は聖書とのこと。
人々から賞賛される生き方の背景には、聖書の教えもあるのです。
昌雄さんは、秀喜さんがプロになってからも、はげましの手紙やファックスを送り続け、その数は約200通にもなったそうです。
わたしが大好きな、ピアニストの辻井伸行さんもほめて育てられたひとりです。
伸行さんは、20歳のときに「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」で優勝し、今や日本でもっともチケットの取れないピアニストといわれています。
目が見えない伸行さんと二人三脚で歩いたのが、母親のいつ子さんです。
いつ子さんは、伸行さんがまだ幼い頃、彼の音楽の才能を見抜き、ピアノを習わせました。
いつ子さんが心がけたのは「上から目線」で話をしないことでした。
「よくこんな難しい曲が弾けるね!」「今の演奏には、すごく感動したよ!」「今度はあの曲が聞きたいな、楽しみにしているね」いつ子さんは伸行さんをほめ続けました。
「ほめて育てる」という意図ではなく、ただただわが子のファンでありたいという一心だったそうです。
ハンディがあるにもかかわらず、伸行さんが世界的なピアニストに成長した背景には、いつ子さんの「ほめる」育て方があったのではないでしょうか。
ほめられて、一流になった人はまだいます。
宇宙飛行士の若田光一さんもそのひとりです。
少年時代、光一さんは飛行機が大好きで、「パイロットになりたい」とずっと言っていたそうです。
もっとも、子どもの言うことはコロコロ変わります。
お母さんのタカヨさんは、光一さんが何になりたいと言っても「がんばってね」とはげましたといいます。
もしも、頭ごなしに否定すれば、子どもはやる気をなくしてしまいます。
「何をやるかは大きくなったら自分で選べばいい」と、タカヨさんは光一さんの好奇心旺盛なところを、ほめ続けました。
やがて光一さんは、航空機の技術者としてJALに入社。
その後、宇宙飛行士に公募に応募して、複数回の宇宙飛行を経てアジア人初の国際宇宙ステーション(ISS)の船長に選ばれました。
子どもの頃に描いた、大空への夢は、空の向こうにある宇宙で大きく花開いたのです。
反抗期の子どもにもほめ言葉は効果的
世の中には、ほめにくい相手がいます。
そのひとりが「反抗期の子ども」です。
思春期に入り、事あるごとに口答えをするようになると、わが子ながら憎たらしいと思うのも、無理もないことです。
わたしの友人で、思春期の子どもを持つ鈴木さんというお母さんがいます。
キャリアウーマンでもある彼女は、バリバリ働いていましたが、家族のことも人一倍大切にしているつもりでした。
ところが、娘さんが中学2年生になったあたりから、鈴木さんに激しい言葉を浴びせるようになりました。
「ママは黙ってて!」「もういいって。
わかってるから!」毎日こんな調子です。
反抗期だから仕方ないとあきらめつつも、鈴木さんの胸はもやもやした思いでいっぱいになり、晴れることがありませんでした。
ある日、そんな鈴木さんから相談を受けました。
鈴木さんの話を聞きながら、わたしが思ったのは、「結論ばかりを伝えているな」ということです。
鈴木さんは、人一倍、娘想いです。
忙しい仕事の合間を縫って、娘の世話をしてきました。
しかし、時間の余裕がないために、娘さんにかけていたのは、「指示」だったり、先回りした結論の言葉ばかりだったのです。
「明日は○○に行くから、○○を用意して」「あれ、ママがやっておいたから、あなたは安心して」これでは、娘さんは、いつまでたっても母親は自分を認めてくれない、自分のことを信用してくれない、という気持ちになってしまいます。
もちろん未成年ですから、親が面倒を見なければならないこともあります。
けれども、そろそろ心理的にも自立したい年頃です。
あれをしろ、これをしろと言うだけではなく、できることは任せてみて、見守ってあげるのも大事でしょう。
そこで、わたしは鈴木さんに言いました。
まず、忙しい合間でもかまわないから、娘さんのことを見てあげること。
そのとき、指導する親の立場から離れて、彼女の心に寄り添ってあげること。
そして、彼女のしたことを認め、ほめてあげてください、と言いました。
鈴木さんは、あらためて娘さんを観察してみました。
すると、いいところがたくさん見つかったのです。
そして、素直に娘さんのことをほめてみました。
「宿題、自分からやるなんて偉いね」「お友だちのことを考えてあげているのね。
あなたはホント、素晴らしい」これは、決して無理してひねり出したほめ言葉ではありません。
「ほめる」という前提で娘さんを見たとき、鈴木さんの視点が変化したのです。
視点が変わったために、自然にほめるべきポイントが見つかったのです。
やがて、娘さんからは以前とは違う言葉が聞かれるようになりました。
「ママ、これってどうしたらいいかな?」「お願い!相談に乗って」そう、娘さんは先回りしたパーフェクトな回答を求めていたわけではなかったのです。
どんなに役に立ったとしても、自分を見ていない親から発せられた言葉は、子どもにとって冷たく、意味のない言葉に聞こえます。
鈴木さんは、ほめることを通して、「ちゃんと見ているよ。
安心していいよ」という気持ちを娘さんに伝えられるようになりました。
鈴木さんの自然なほめ言葉を、娘さんは素直に受け止めたのです。
「実は、わたしも子どもとの関係がうまくいっていない」と、ひそかに悩んでいるあなたも、まずは子どもをほめることから始めてみてはいかがでしょうか。
ほめることは、居場所を作ること
ほめ言葉にも、相手からやる気を引き出すものと、やる気をそぐものがあります。
たとえば「アメとムチ」のアメのようなほめ言葉の使い方は、相手のやる気をそいでしまいます。
ではどのようなほめ言葉が、相手にやる気をもたらしてくれるのでしょうか?それは、「居場所を作ってあげるようなほめ言葉」をかけてあげることです。
「この分野はめっぽう得意だね。
誰にも負けないんじゃない!?」「君のこの営業は、みんなが見習うべきところだよ」その人の成長ぶり、その人しか持っていない長所、特長を言い切る。
これが言われた人の居場所、安全地帯になります。
失敗して何か落ち込むことがあったとしても、「ほめ言葉」が与えてくれた場所に戻ることで、人は安心感が持てます。
「わたしもまだまだ捨てたものじゃない」と、自分に対するゆるぎない信頼を持つことができるのです。
「居場所がある」という安心感は、言葉だけではなく、行動でも与えることができます。
わたしは、あるラーメン店の経営者からたのまれて、店長さんやスタッフの方にほめ言葉の素晴らしさや、ほめ言葉をかけてあげることで人は成長するということを定期的にお話しさせていただいています。
先日、そのお店の店長さんのスタッフ思いの行動が、とても印象的で素晴らしかったのでみなさんにご紹介しましょう。
ある女性スタッフが、突然、接客スキルもやる気も急成長したことがありました。
わたしは不思議に思って、何があったのか彼女に聞いてみました。
彼女が変わったのは、大失敗の直後だったそうです。
なぜ、失敗の直後にモチベーションが上がったのでしょうか。
「ラーメンのスープをこぼしちゃって、めちゃくちゃ迷惑をかけてしまったんです。
申し訳ない気持ちでいっぱいで、わたしはほかでもバイトをしているし、ここは辞めちゃおうと思いました。
そしたら店長からメールが来たんです。
『よくあることやから、気にするな。
明日、待ってんで』。
わたし、このメールを保存して、今でも大事にしているんですよ」翌日、彼女が出勤すると、休みをとっているはずの店長が待っていました。
「あれ、店長、お休みじゃなかったんですか?」「心配やったから。
昨日メールしたやろ。
『明日、待ってんで』って」彼女は「ああ、ここは安全地帯なんだ。
わたしの居場所はここなんだ」と思ったそうです。
彼女が急成長をしたのも納得ですね。
居場所作りも単なるスキルやノウハウではありません。
居場所を作ってあげる側に無償の愛がなければ、まったく意味をなさないのです。
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