MENU

第2章リーダーは人を動かしてはいけない

マネジメントは「管理」じゃない組織で働く中で成果を上げていると、やがて後輩ができたり、小さなチームを任されたりするようになってくる。

そこからさらに結果を出していけば、昇進してマネージャーになる。

ビジネスパーソンにとって「昇格してチームを任される」というのは、「自分が評価された証」として誇らしく感じる一方で、そこで新たな壁に突きあたる人もかなりの数、存在する。

それは「チームメンバーが思うように動いてくれない」という悩みや、「プレイヤー時代に自分がやってきたやり方が通用しない」という壁である。

あなたが昇進したということは、それまでのやり方が奏功して成果を上げたからであり、それまでのやり方が間違っていたわけでは決してない。

しかしそれはあくまで「自分個人としての成功法則」であって、部下があなたと同じやり方で取り組んだとして、同様の結果が出せるわけではまったくない。

そんな人にまず考えてもらいたいことは、「そもそもマネジメントって何なのか?」「マネージャーって何をする人なのか?」ということだ。

まず、マネジメントとは管理することではない。

日本語だとマネージャーのことを「管理職」と言うため、「Manage」をどうしても「管理する」こと、あるいは「運営する」ことだと思い込んでいる人が少なくない。

しかし、英語で一般的に「Manage」というと、「あちらを立てればこちらが立たずの状況を何とかやりくりする」という意味になる。

「管理職」というと、部下の仕事ぶりや仕事の進み方を「管理」して、「監督」するというイメージになりがちだが、本来は「仕事において直面する困難(ボトルネック)を何とかして乗り越える」のが本来のマネジメントなのだ。

そうした中では、「目の前に現れた困難を乗り越えるための動き方を決定する」ことが大切になる。

たとえば、営業チームに、①新規客開拓の売り上げが上がっていない、かつ、②一度受注できた顧客の顧客満足度が低くリピート受注ができていない、というダメダメな状況があり、マネージャーが部下から「新規と既存のどちらを頑張ればいいんですか?どちらが大事なんですか?」と質問されたとしよう。

そこで、「どちらも大事だから、両方頑張れ」と答えるようではマネージャー失格だ。

企業の工場などに行くと「品質第一」「安全第一」といった「第一」だらけの標語が掲げられているが、その企業にとっては「品質」や「安全」と並んで「売り上げ」も「利益」も「第一」のはずで、こんな風に「すべて均等に第一」にしてしまうと、かえって全部中途半端になりがちだ。

リーダーに必要なのは、具体的な仕事の現場における選択肢の中で何が第一で、何が第二なのかという優先順位をはっきりと示すことだ。

永遠に正しい普遍的な正解などない。

当面かつ個別具体的でいいから、何を選ぶべきかを明言すべきだ。

ビジネスの現場では短期の売り上げと長期の利益、社内の負荷と社外の満足、人材育成と業績達成のような、どれも大切だけれども相反する要素が混在している。

だからこそリーダーは「選択肢の中で、今この状況ではどれが大事かをはっきり決める」ことが大切なのである。

また、こうした決断を下したうえでマネージャーにさらに求められるのが、チーム内に〝盛り上がり〟のムードをつくることだ。

マネージャーになったばかりの人が陥りがちなのが、はりきり過ぎて部下の一挙手一投足を管理して、手取り足取り指導をしようとしてしまうことである。

ありがたがる部下も中にはいるかもしれない。

しかし、大半の部下は「どうせ何をやっても細かく直されるんだから」とやる気をなくしてしまう。

そして、そういう細かい口出しをする、いわゆるマイクロマネジメントは、出世するほど、組織が大きくなるほど、そして部下が取り組む課題が高度になるほど、機能しなくなる。

マネジメントは「指示する人と指示通りに動く人」に分かれるものではなく、組織にいい空気をつくってひとりひとりの部下がやる気を出して自発的に動くように働きかけるものである。

マネジメントという仕事の中に「管理」とはまったく異なる「クリエイティブな要素」がたくさんあることを理解しよう。

きっと、マネージャーになった時に、ただの「管理職」よりもイケてる働き方ができるはずだ。

手を動かすな。

ボトルネックを探せ「人に仕事をしてもらって、その人のパワーを最大限引き出すこと」、つまり「人に仕事をしてもらうことが、自分の仕事である!」これは私がライブドア時代にたたき込まれたマネージャーの仕事の基本原則だ。

マネージャーに就任するのは、平社員時代に仕事ができて、評価されてきた人物だ。

そんな「できる」人から見れば、当然部下の仕事のやり方に不満があるし、「自分がやった方が早いし、うまくいく」などとつい考えてしまいがちだ。

ここで忘れてはならないのが、本項の冒頭で述べた「マネージャーは人に仕事をしてもらうことが仕事」という鉄則である。

たとえば、喫茶店でトースト、ゆで卵、コーヒーを組み合わせたモーニングセットを提供するケースで、お客をうまくさばくことができなくて売り上げも利益も伸びないという問題があったとしよう。

こうした時、店のマネージャーはどのように対応すべきだろうか?管理型のマネージャーならウェイターの動き方をストップウォッチ片手にチェックして、「歩くのが遅い。

もっと速く歩きなさい」と指導するかもしれないし、自分の腕に覚えのあるマネージャーなら、部下に仕事を振らず、「俺がやる」となるかもしれない。

しかし、こうした状況でマネージャーがすべき仕事はそうではない。

「客がさばけない」という問題のボトルネックは何なのかを考えるのだ。

たとえばパンを焼くのに時間がかかっているとしたら、「トースターをもう1台購入しよう」という提案をする。

卵をゆでるのに時間がかかっているとすれば、「あらかじめ、ゆでてある卵を仕入れたらどうだ」というアイデアを出す。

従業員は、目の前の仕事に追われていると、どうしても「もっと頑張らなきゃ」と思いがちで、マネージャーも彼らに「もっと頑張れ」と鼓舞しがちである。

しかし、ここで「頑張れ」としか伝えられない人は単なる「応援団」であって、「マネージャー」ではない。

マネージャーがすべきことは目の前にある課題の解決策を考え、部下が仕事をしやすいようにその前提となる環境を変えるための意思決定を行い、資源を調達し、部下がただがむしゃらにやらなくても効率的に結果を出せる仕組みをつくることなのだ。

POINTリーダーは、チームメンバーが成果を上げる阻害要因(ボトルネック)を見つけ、対処せよ。

管理力よりも幹事力これまで述べてきた「人に仕事をしてもらって、能力を最大限発揮させる」という原則に立てば、マネージャーのすべきことはおのずと明確になる。

「チーム内にいい空気をつくり、メンバーが自分から動き出すような空気をつくることこそが最高のリーダーシップ」というのが私の持論だ。

そのために欠かせないのが社内の飲み会に代表される表彰イベントである。

「本当に優秀なマネージャーの仕事は、達成パーティの幹事だけになる」と言ってもいいだろう。

今は新型コロナウイルス感染症の影響で、会食の機会自体が減っているが、それを抜きにしても近年は、そもそも上司と一緒に飲みに行くのを嫌がる部下が増えているため、会社の「飲み会」というものが失われてきている。

こうした中、「飲み会や社内パーティの幹事なんて絶対にやりたくない」と思う人はかなり多いが、そうした人は重要なことに気づいていない。

飲み会やパーティ、社員旅行の幹事というのは、満場一致で全員が100%満足する正解が存在しない「マネジメントそのもの」であり、あらゆる仕事の中で最も難しい仕事の1つなのである。

飲み会の幹事と言うと、よくあるのは入社して間もない新人や若手社員が担当するケースだ。

「雑用を押し付けられた」と思って、「まあ、いつも行っている居酒屋でいいか」と適当に済ませてしまう。

こうした人は、幹事は出欠をとって、会費を集めて、適当に店を決めればそれでいい、と思っているかもしれない。

しかし、こんな飲み会なら上司も部下も積極的に出たいと思わないだろうし、チームの士気が上がるはずもない。

リクルートに入社した時、ご多分にもれず私も、まずはじめに飲み会の幹事をやらされたが、その時、ある上司が次のように言い放った。

「田端。

飲み会の幹事ってのはな、一番仕事ができる奴がやる仕事なんだよ」当時はよく意味がわからなかったが、数年後、部下を持つようになって、ある時、ふと、この言葉を思い出した。

参加者全員の好みに合う店、料理、飲み会でのスピーチの内容……「普遍的な正解」は存在しない中、選択肢の中で最適と思われるものを選び、会がうまく執り行われるよう調整につとめる。

これは言わば「マネジメントそのもの」であり、あらゆる仕事の中で最も難易度が高く、クリエイティビティとホスピタリティが求められるものの1つなのだ。

社内の飲み会だけではなく、接待も同様である。

たとえば外資系の企業の重役が来日したとしよう。

相手がフランス人だから、と脊髄反射で、高級ホテルの三ツ星フレンチを選ぶようではまったくイケてない。

じっくり考えず安易に出した「正解」は、いくらお金をかけて接待したとしても相手の記憶に残ることはないのだ。

大切なのは接待する人について事前にしっかりと調べたうえで、相手が普段どんな生活をしているのかを想像し、その気持ちにぴったりとあった店を選び抜くことだ。

記憶に残る接待というものは、このようにしてはじめてできる。

会社の飲み会も同様だ。

幹事を任された若手社員なら、まずは「そもそも、何のためにこの飲み会をするんだろう?」という目的を考え、飲み会に参加する上司や先輩、同僚の趣味嗜好や普段の生活にイマジネーションを働かせて店を選ぶ。

そうすれば「飲み会なんて面倒くさいなあ」と、いやいや参加したはずの人の「心のツボ」を押せる、「記憶に残るいい飲み会」が可能になる。

もちろんどんなに考え抜いて飲み会をセッティングしたとしても、参加者全員が100点満点で満足するわけではない。

しかし、参加した人間の大半が「今日は楽しかったなあ」「ずいぶん盛り上がったなあ」と思って帰ったとしたら、その幹事は参加者に対して「影響力」を発揮したことになるし、「あいつは意外とやるじゃないか」という評価を得ることもできる。

マネージャーとしていい仕事をするために、「飲み会の幹事力」を上げることは非常に重要なのである。

時にはチアリーダー、時にはDJであれマネージャーの仕事を突き詰めていくと、最終的には「飲み会の幹事」だけになる。

なぜかというと、「人に仕事をさせることが仕事」である以上、マネージャーが心がけるべきは部下の管理でも監督でも監視でもなくて、チームメンバーが動き出したくなる「いい空気づくり」をすることだからだ。

その意味ではマネジメントというのはDJに似ているし、メンバーを応援するという点ではチアリーダーにも似ている。

私はテクノが好きで、昔はDJもやっていたが、マネージャーを経験するうちに、「マネジメントって、DJに近い感覚があるな」と思うようになった。

「踊れ」と上から目線でお客に命令するDJがいたら、途端に場がしらけてしまう。

それと同様に組織のチームにおいても、上司が「言った通りに動け」と頭ごなしに指示するのはうまいやり方ではない。

上司には権力があるので、ある程度は部下も従うかもしれないが、内心では「いちいち口を出してきて煩わしいな」と不満を抱く。

こんなマネージャーは二流だ。

社内の飲み会でも上司がやたらとはりきって、「今日は無礼講だ!盛り上がろうぜ」と、参加者全員に無理やりに酒を飲ませて盛り上がる飲み会なんか、超寒いし、みんな「二度と出たくない」となってしまう。

その点、イケてるDJというのは、その場にいる人たちが自然と踊り出したくなる、いい感じの空気を醸成するのに長けている。

会社組織のリーダーに必要なのはこうした感覚だ。

そのために効果的なのが前項でも話した「社内飲み会」で、私はマネージャー時代には、メンバーが営業に走り回っている時にも、自分は昼から「次の飲み会の店はどうしようかな」といつも考えていた。

リーダーが毎回の飲み会にどれだけの意味とメッセージを込められるかが勝負だ。

それさえうまくいけば、リーダーが細かく指図しなくてもメンバーが自然と自分で動きはじめ、勝手に期待以上の力を発揮してくれる、生産性の高いチーム運営ができるはずである。

POINTDJやチアリーダーのように、チームメンバーが気分良く成果を上げられる「雰囲気」をつくれ。

モチベーションは「ゲーム」で上げろ──肉の写真を貼れ!マネージャーにとって、チームで目標達成するためには、いかにチームメンバーのやる気に火をつけるかが鍵を握る。

私がライブドアで広告営業のマネジメント担当役員をやっていた時のことだ。

当時はライブドア事件の直後である。

世間の風当たりが厳しく、社員たちも迷いと不安だらけの中で働いていた。

そうした状況下では当然、目標を達成することも容易ではなかった。

そんなメンバーを何とか鼓舞できないかと私が思いついたのが「壁に肉の写真を貼る」こと。

次のエピソードは営業部など、前線で戦う部門のものだが、それ以外の職種についている読者にも参考になる部分があるはずだ。

当時、ライブドアのオフィスが入っていたビルの地下に「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」という高級ステーキ屋が入っており、私は「目標を達成したら、みんなで食べに行こう」という意味で、その店のステーキの写真を常にメンバーの目に留まる場所に貼り出した。

「そんな子どもだましみたいなことでうまくいくのか」と感じた人もいるかもしれないが、実際には絶大な効果があり、見事目標を達成したのだから、「盛り上がりの威力」は侮れない。

後日、そのステーキ屋で行われた達成会でこんなスピーチをしたのを覚えている。

「古来、人間はみんなで力を合わせて狩猟をしてきました。

マンモスや猪を倒そうと思ったらチームプレイをしないといけません。

そして倒した暁には、みんなでその肉を分け合って食べる。

みんなで狩りをするわけだから、倒した獲物の肉もみんなで食べる。

みんなで成果を出して、みんなでおいしいものを食べるというのは、古来、人間がやってきた団結力の高め方だ。

今回、みんなで達成できて、みんなでお肉を食べることができる今日この場を持てたことが、俺は本当にうれしい!」給料が1万円上がるのもうれしいが、給与アップよりも客単価1万円のレストランに行って、みんなで一緒にご飯を食べる方がより一層団結力が高まり、いざという時に、踏ん張りが利くチームができる!というのが私の信念だ。

最近はコロナ禍の影響もあり、社内外を問わず「○人以上の会食を禁ずる」といった動きがあって、チームのみんなでおいしいものを食べながらのお祝いもしにくくなっているようだが、みんなで一緒に「同じ釜の飯を食う」ことの威力は、マネージャーたるものよく理解しておくべきだ。

結局、人間の気持ちが「盛り上がる」ためには、そんなに難しいことは必要ない。

「これを達成したらみんなでおいしいものを食べに行こうよ」(あるいは沖縄へ社員旅行に行こうよ!でもいい)というように、お互いが共通して体験可能なゴールを共有するだけでも十分に盛り上がることができるし、「同じ釜の飯を食った仲間」とは精神的な結束も自然と強まっていく。

また、これは私がリクルートで働いていた頃のことだが、営業部署の壁に等身大のグラビアアイドルのポスターを貼って、売り上げが伸びるたびにポスターに貼った付箋をはがしていたことがある。

今同じことをやったら大問題になるが、当時のリクルートでは、毎日の朝会で「今日は、おっぱいの谷間を見るぞ!エイエイオー」などと朝礼で気合を入れて、受注するごとに「おっ、ついに谷間が見えてきましたね!」と大騒ぎをしていたりしたものだが、人間のやる気など、案外とこんな簡単なゲームで火がつくものなのだ。

これは一種のゲームだ。

でも、壁に貼り出した無味乾燥なグラフを見せられて、しかめっ面のリーダーに詰められるよりもよっぽど楽しい。

達成会には2種類ある前項では営業部隊など、会社組織の前線で戦うチームメンバーの盛り上げ方について書いてきたが、忘れてはいけないのが、どのような企業でも必ず存在する、戦闘部隊を支えるバックオフィスの人たちだ。

多少乱暴な言い方ではあるが、フロントで前線に立つ営業部隊というのは、ドーンと盛り上げて士気を上げれば成果につながる。

そして成果が上がれば、ボーナスや昇給といった「わかりやすいかたち」での対価も得られる。

しかし、彼らを裏で支えるバックオフィスの人たちは、懸命に営業部隊を助ける仕事をしてくれていても、なかなかほめられもせず、給与面でも大きなリターンは得にくい。

このような人たちに対して、リーダーが「仕事だから当然でしょ」と冷ややかな態度で接し、とりたててほめることもしないというのはNGだ。

営業に比べて、バックオフィスの仕事は地味ではある。

しかし、一見、売り上げ数字は上がっていても、事務作業が苦手だったり、決められた期日を守らなかったりと、バックオフィスに迷惑をかけている営業社員は少なくない。

そんな営業社員のミスを懸命にカバーしてくれるバックオフィスの人たちがいてはじめて、営業セクションの仕事は成り立っているのだが、そこにあまり目が向かないリーダーは多い。

私自身、営業部隊を率いていた時にはそんなバックオフィスの苦労がわからなかったし、自分から進んで目を向けようともしなかったわけだが、ある時、バックオフィスで働く女性社員から日ごろの苦労を聞いて、やっと気づくことができた。

こうした苦労を知った時、上司が絶対にやってはいけないのは、バックオフィスに面倒ばかりをかけている営業社員を呼び出して、「なぜルール通りにやらないんだ!」と叱りつけることだ。

これでは逆に、フロントの営業社員が萎縮してしまい、かえって売り上げが下がってしまいかねない。

もちろん、あまりに度が過ぎるようだと注意することも必要ではある。

ただ、より優先すべきは、バックオフィスのメンバーに、「みんなの頑張りのお陰で仕事が進んでいるよ、本当にありがとう」という感謝を伝え、一緒においしいものでも、食べに行くことだ。

営業部隊の達成会がとことん盛り上げて、その成果を祝う祝勝会であるとすれば、バックオフィスの部隊に関しては日ごろの頑張りに感謝する、一種の「お疲

れさま会」になる。

こうした会を折に触れて実施していると、営業部隊、バックオフィス双方のチームともにムードが良好になるし、メンバーはそれぞれ次の目標に向かって「さあ、頑張ろう」という気分になるものだ。

リーダーに必要なのは日ごろからのこうした良いムードづくりである。

POINTチームが成果を上げる土壌を整えるために、リーダーが盛り上がりをつくれ。

「いい人間関係」は目標達成の単なる手段「アマは和して勝ち、プロは勝って和す」とは、プロ野球の名監督だった三原脩さんの言葉である。

アマチュアが互いに協力しながら一丸となって勝利を目指していくのに対し、プロはもともとがプロの集まりなのだからそれぞれが責任を果たすことで勝利し、勝ち続けることで選手たちの心が1つになっていく、という意味だ。

これは球界だけの話ではなく、会社組織で働くリーダーにとっても同様である。

お金をもらって働くプロの集団である以上、リーダーの仕事は組織目標をいかに達成するかであり、人間関係を良くするために心を砕くことではない。

もちろん人間関係が悪いよりはいい方がいいに決まっているし、リーダーは部下から嫌われるよりは好かれる方がいい。

だが、それらはあくまでも目標を達成するための一手段であって、目的にしてはいけない。

リーダーがやたらとチーム内のコミュニケーションを良くしよう、人間関係を円滑にしよう、とそのことばかりに気をとられ、肝心の目標を達成できなかったり、ビジネス上の勝負に負けてしまったりしては何の意味もない。

ビジネスの現場でしばしば間違いやすいのが「手段」を「目的」ととらえてしまうことだ。

たとえば中小企業などでIT化を推し進めようとパソコンやスマホを全社員に持たせることで目標を達成したような気分になるが、それらはあくまでも手段に過ぎない。

にもかかわらず、いつの間にか目的にすり替えてしまい、それを実現しただけで満足してしまうことがある。

手段に夢中になり過ぎると肝心の目的がどこかに行ってしまうのである。

「部下との人間関係を良くする」ことについても同じことが言える。

リーダーが目指すのはみんなが和気あいあいと仕事をする「仲良しクラブ」をつくることではなく、部下ひとりひとりの知恵を引き出し、課せられた目標を達成することだ。

たしかに今の時代、リーダーが率いるチームの人材は多様化していて、チームをまとめる難易度はより一層高くなってきているが、だからといってチームの人間関係を良くすることばかりに気をとられていては肝心の目標達成ができなくなってしまう。

人間関係の良さや、リーダーの人望などといったことは目標達成のためのツールに過ぎないのだから、くれぐれもそれらを目的と勘違いして勝負に負けないようにしたい。

プロは和して勝つわけではない。

勝つことではじめて和すことができる。

年上部下には「教えてください」の建前で臨め最近のリーダーは、かなり難しいマネジメント上の問題を抱えている。

その1つが「年上部下」だ。

今や5歳、10歳、あるいはそれ以上年上の人が部下になるケースも多い。

年功序列によらず、その人物の持つ能力への「期待」を示す一手段としての抜擢人事が盛んに行われるようになったことに加え、定年年齢の延長や再雇用制度、役職定年の導入などによって、「シニアの一般社員=年上部下」が増えたからだ。

その結果、以前は部長をしていた人が自分の部下になるという現象も起きているのだ。

中には「年上の働かないおじさん」や「元〇〇の神様」のような人もいて、「年下のリーダー」にとっては何とも厄介な存在である。

私自身は「年上か否かは、仕事とは無関係」と思っているし、年上だからという理由でビビっていることが相手に伝わるのは、絶対によくないと思っている。

「年上部下」だからといって、みんなが同じわけではない。

中には「田端さんはすごい人だから、自分の上司になるのは全然かまわない」と思っている人もいれば、「何であんな奴の下で働かなきゃいけないんだ」と思っている人もいる。

それを無視して「あの人は年上だから」というたったそれだけの理由でこちらの態度を変えたり、まるではれ物に触るように気を遣ったりすること自体が不自然だ。

理由は簡単で、たとえば異性の部下に対して、「彼はイケメンだから」「彼女は美人でスタイルがいいから」という理由で態度を変えるなどというのは、リーダー失格である。

また同様に「あの人は年上だから」という理由だけで態度を変えるのもご法度だ。

とはいえ、「自分が上司なんだから、年上だろうが何だろうが、とにかく自分の言うことを聞け」と必要以上に偉そうにするのもリーダーとしての資質が疑われてしまう。

ではどうすればいいかと言うと、たとえば、上司として着任してすぐに1対1での面談を設定し、年上部下には、次のように伝えることだ。

「今回、リーダーとして着任することになりましたが、私よりAさんの方がずっと経験豊富ですから、私に『ここはこうした方がいいのでは』といったアドバイスやアイデアがあれば、いつでも遠慮なくおっしゃってください。

皆さんの知恵を集めて全員でよりいい仕事をしていくためにも、特にAさんにはアイデアやアドバイスをお願いしたいと考えています」メンバー内で明らかに自分のことを気に入っていない部下がいる場合(こういうものは、えてして雰囲気でわかるものだ)に、話しかけることさえ気が重いというリーダーの気持ちはよくわかる。

しかし、そのような相手に対しても「組織の目標を遂行するためには我々全員が力を合わせることが大切で、そこには、年上も年下もない。

いいアイデアがあれば何でも提案してほしい」という「反論が不可能な建前」を押し通すことは、絶大な効果があるのだ。

リーダーに求められるのは、チームメンバーの経験、見識などを活用して、全員で組織の目標を達成することだ。

チームというのはそのために集まっているし、リーダーもそのためにいるわけだから、その目標を達成するうえで「どっちが年上で、どっちが年下か」はまったく関係がない。

「年上部下」というとそれだけでビビってしまう人もいるが、部下という点では年上も年下もないし、男性も女性もない。

組織目標の前では全員が平等であり、チームの力で組織目標の実現に向かわなければならないという当たり前のことを当たり前に貫くことができれば、年上部下にビビる理由はなくなるはずだ。

POINT年上部下に「目標達成のために建設的なアドバイスを」と伝えることで、チームはうまく機能する。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次