この本を、姉妹のポーラ、エリザベス、サンドラ、母親のアグネス、父親のパトリックに捧げる。私たちは一緒に暮らし、一緒に泣き、一緒に立ち、一緒に戦ってきた。今の私があるのは家族のおかげだ。
下を向き、倒れそうになっている人たちへ。すべてのシングルマザー、失業中の父親、夢追い人、まだ何者でもない人たちへ。みなさんは私だ。そして、みなさんならできる。
この本はあなたを励ますために書いたものだ。
あなたが内に秘めた本当の能力に目覚め自分を責めるのをやめて、輝かしい人生に歩み出すのを手伝うために、私はこの本を書いた。
人は常に自分と会話している
あなたは、自分が回し車の上のハムスターのようだと感じたことはないだろうか?猛烈に足を動かしているのに、ちっとも前に進んでいない気がしたことは?思考がぐるぐるとループし、小さな声が「お前は怠けてばかりいる」「バカだ」「どうしようもないやつだ」とささやきかけてくる。
その声に飲み込まれそうになっているのにも気づかず、毎日をストレスや緊張と闘うことに費やしている。
自分の人生を生きようとがんばりつつも、「このまま無限ループから抜け出せず、人生の目標へたどり着けないんじゃないか」というあきらめに押しつぶされそうになっている。
求めている幸福やダイエットの成功、仕事のキャリア、人間関係といったものには永久に手が届かない気がする。
そんなふうに、心の中の自滅的な声が止まらない人のためにこの本はある。寄せては返す不安の波は、日々の生活をむしばんでいく。この本はあなたを励ますために書いたものだ。
あなたが内に秘めた本当の能力に目覚め、自分を責めるのをやめて、輝かしい人生に歩み出すのを手伝うために私はこの本を書いた。
まずは大切なことを確認しよう。人はみな、2種類の会話をしながら生きている。ほかの人との会話と、自分との会話だ。
「自分としゃべったりなんてしない!」と言い張る人もいるかもしれないが、実は人間の一番の話し相手は自分自身なのだ。頭の中は、誰にとっても「心地よい」プライベートな空間だからだ。
内気な人も、社交的な人も、クリエイティブな人も、現実的な人も、誰もが多くの時間を自分としゃべって過ごしている。
自分としゃべりながら、運動し、働き、食べ、読書し、ものを書き、歩き、メールし、泣き、話し合い、交渉し、計画を立て、祈り、瞑想し、(1人で、またはパートナーと)セックスをする。
眠っているときも自分との会話は続いている。この本を読んでいる今この瞬間も続いている。それはおかしなことじゃない。
あるいは、人は誰しもちょっとだけおかしいということだ。いずれにせよ、みんなやっているのだから、安心しておかしなショーを楽しもう。
研究によると、人間の頭には1日5万以上もの考えが浮かぶそうだ。私たちはいつも、自分に対して頭の中で「そんなのは違う」とか、「負けるもんか」とか言いながら生きている。
頭の中に自動的に浮かんでくる思考にはほとんど無反応なのに、自分が重視する思考には過剰に反応する。何が重要で何が重要じゃないかなんて、最初から決まっているわけじゃないのに!
自分にどんな言葉をかけるかで人生が変わる
自分と何を話すかが人生の質を決定的に左右するということが、神経科学や心理学の研究で証明されてきている。
アラバマ大学のウィル・ハート教授は、被験者に楽しかった出来事とつらい出来事、そのどちらでもない中間的な出来事を思い出してもらう実験を行った。
すると、何かの出来事をまるで今それが起こっているかのように語る人は、中間的な出来事を楽しい思い出のように、つらい出来事は実際よりもっとつらいことのように感じているのがわかったという。
つまり、どう表現するかで自分が置かれた状況のとらえ方や感じ方は変わってくるし、人生の過ごし方や、さまざまな問題への対応の仕方もずいぶん違ってくるということだ。
言い方次第で感じ方が変わるのは何百年も前から知られていた話で、ヴィトゲンシュタインやハイデガー、ガダマー(ハイデガーに学んだドイツの哲学者)といった哲学者は、言葉の意義や重要性を理解していた。
ヴィトゲンシュタインは「文法には思考と現実の調和が見られる」と言った。
自分とポジティブな会話を行えば、気分がよくなり、自信が増し、生産性が高まるといった好影響が出ることが次々と解明されている。
ハート教授の研究からわかるように、言葉は幸せな人生を送るためのカギになる。ところがその逆もまたしかりで、自分とのネガティブな会話は気持ちを落ち込ませ、絶望を招く。
ささいな問題を大問題のように見せ、ありもしない問題をつくり出す。話し方によっては、想像を絶する苦しみを味わいかねない。そうした点を踏まえた上で、一つはっきりさせておこう。
この本は正しい言葉を使って人生を上向かせる方法を解説したものだが、私は今すぐポジティブな思考を持てとか、自分を愛そうとか言うつもりはない。
そうした方法は(成否はともかく)出尽くした感があるし、この本で紹介するのはまったく別のアプローチだ。
私はあなたに「自分は虎だと言い聞かせなさい。自分の中の獣を解き放ちなさい」とは言わない。なぜって、人は虎じゃないから。
そうしたやり方が向いている人もいるかもしれないが、私にとってそうしたことを自分に言い聞かせるのは、メイプルシロップをドバっとかけた古いキャンディを無理やり口に突っ込まれるようなものだ。気持ちはありがたいが、遠慮させていただきたい。
ポジティブ・シンキング好きの人にとっては残念な話かもしれないが、この本では別の道を行く。この本の目的は、本当の意味であなたの手助けをすること。あなたに本当に合ったヒントを示し、本当の能力を引き出せるようにすることだ。
ネガティブな言葉がネガティブな感情を呼ぶ
人間の感情の大部分が思考から生み出されているのなら、感情をコントロールするには思考をコントロールすればいい。
もっと言うなら、心の中で思い描く文章、つまり自分との会話に使う言葉を変えればいい。そもそも感情はそこから生まれているのだから。
─アルバート・エリス(アメリカの心理学者)これは、現代心理学の父の1人と呼ばれるアルバート・エリスの言葉だ。
エリスは、体験の印象はとらえ方や話し方によって変わるということを発見した。つまり思考と感情は切っても切れない間柄にあるということだ。
さらにエリスは、人間は極めて非合理的な考え方をする生き物だということも発見した。私たちは、毎日のように心の中でこう思う。
「自分はなんてバカなんだ」「いつも失敗ばかりして」「もう人生おしまいだ」と。何か悪いことが起これば「最悪だ」と考える。
あとから振り返れば全然大したことのない問題を、大げさに騒ぎ立ててしまった経験があなたにもあるはずだ。
あらためて考えると、そうした過剰反応が起こる直前には、ネガティブな心の声が響き、そのせいで理性的な自分がどこかへ行ってしまったことに気づくだろう。
人間は常に理性的なことを言ったり、やったりできるわけではないのに、私たちはみな、自分がいつも理性的だと思い込んでいる。
ちょっとしたネガティブな会話からも悪影響をこうむって、ネガティブな感情が呼び覚まされていることに気づいていない。
心の声はいつもはっきり聞こえてくるわけではなく、抑え目のときもあるが、マイナスの作用は変わらない。
何かに取り組んでいて、「すごく大変。間に合わなかったらどうしよう?」と思ったことはないだろうか。
あるいは「しくじった場合」が気になって、不安や心配を感じたことは?こうしたネガティブな言葉は、怒りや悲しみ、フラストレーションの呼び水になり、まったく別の状況でそうした負の感情が爆発する原因になりかねない。
ネガティブな声は人生の大敵だ。「大変だ」と自分に言うほど、本当に大変な気がしてくる。
残念ながら、私たち人間はそうした自動思考を常に耳にし、ネガティブな声が頭の中で鳴るのに慣れている。
そうした思考の影響に気づかないまま、頭の命じるがままに行動している。一番嫌いな家事を思い浮かべてほしい。
そうした雑用がものすごく面倒に感じるのは、面倒だという思い込みがあるからだ。洗濯物をたたむのも、洗った食器を片付けるのも、実際には大した時間はかからない。
ところがそうした小さなことも、いくつも積み重なっていけば重大なことに思えてくる。そしてやがてそうしたものに圧倒され、人生に疲れてしまう。
人はどうして、そうした小さなものに「抵抗」するのだろう?それは、心の中の意見がネガティブだからだ。
自分の人生を振り返ってそうした「障害」を探してみれば、私の言っている意味がわかるはずだ。あなたの中には、ポジティブな「セルフトーク」を阻む大きな障害がきっとあるに違いない!
自分にとっての現実は、自分の頭でつくり出せる
話し方が影響するのは、その瞬間だけではない。話し方はその人の無意識に入り込み、身体の一部になって、のちのちの思考や行動も変えていく。
生活への影響で言うなら、話し方は人生観を形づくり、そして人生観は行動を変える。それを無視するのは危険だし、人生観なんてないと自分をごまかすのはもっと危険だ。
「人生は不公平だ」と不平を言いながら生きている人は、その見方に沿った行動を取るようになり、やがては被害妄想を抱く。
ある研究によれば、そんな不平をよく言う人は仕事がおざなりになるという。「がんばったって意味がない」と最初から決めつけているからだ。
不公平だという見方は、こうしてあっという間にその人の現実になっていく。
逆に、「成功はどこにでも転がっている」という見方の人は、仕事に打ち込めるのはもちろん、エネルギッシュで生き生きとした人生を送ることができる。
もちろん、自分は成功できるという自信は、実際に成功するための(大切ではあるが)一つの要因でしかなく、成功へ至る道はほかにもある。しかし成功への信念がなければ、道のりは険しいものになる。
「そんな信念なんて持ってない」という人には、この本がお勧めだ。
のちにローマ皇帝になったストア派の哲学者、マルクス・アウレリウスは、「大切なのは、つらいときに『なんて不幸なのだ』と思うのではなく、『がんばる機会が得られて運がいい』と思うことだ」と言っている。
問題をどうとらえ、どう表現するかは、すべて自分次第だ。それは足かせにもなれば、前へ進むための踏み台にもなる。人生を沈ませることもあれば、浮かび上がらせることもある。
アウレリウス帝のようなストア派の哲学者は、外界の物事に影響される必要はまったくないと考えていた。
自分にとっての現実は、自分の頭でつくり出すことができると考えていた。痛いと思う気持ちを否定すれば、痛み自体もなくなる。─マルクス・アウレリウスこの言葉をよく考えてほしい。
人生のあり方は、状況や事情ではなく、自分との対話の仕方によって決まってくる。
自分ならできる、あるいは自分にはできないという思考は、実際の状況よりも、自分の無意識の影響を強く受けている。
自分の外側ばかり見て苦境から抜け出そうともがいても、待っているのは無力感や脱力感、倦怠感だけだ。よくても成功と失意、幸福と絶望を行ったり来たりする人生だ。どうしようもない状況もあるだろう。行き詰まり、手が着けられない状況だ。
今より幸せでよりよい人生を送れると思って、目標に向かってがんばったのに、結局は何も変わらないということもあるかもしれない。
あるいは、いつかは輝かしい日が来るとしても、現在とその日までのあいだは苦しい日が続くかもしれない。
あなたはどうする?答えを見つける必要なんてない。あなたが答えなのだから。この本はあなたが答えを手に入れることを願うが、答えは外側ではなく、あなたの中にある。
答えを見つける必要なんてない。あなたが答えなのだから。
私のクライアントには、白馬の騎士の訪れをずっと待っている人がいるが、私はよくこう伝える。あなたが騎士なのだと。あなたの人生は、あなたの訪れを待っている。
脳を少しずつ鍛え直そう
無意識が人生に影響を及ぼすというのは、何も小難しい心理学の話ではない。思考によって脳の物理的な構造は変わりうるということが、科学的にわかってきている。
この画期的な現象を神経可塑性という。人は新しい物事を学び、経験しながら生きていき、脳もそれに合わせて神経の通り道を調整する。
人間の思考や行動をコントロールするこの通り道は、幸いなことに、思考に注意を払うことで意識的に組み替えることができる。
一番簡単なのは、意識的ではっきりとしたセルフトークを行うこと。自分との力強い会話は、道を切り開き、人生をコントロールする力をもたらす。
無意識にこなせるようになるまで繰り返した行為が習慣になるように、強力かつ積極的な言葉を使い続けることで、人生に決定的な変化が生まれる。
幸せなことを考えていれば幸せが訪れる、といった単純な話ではない(ポジティブ・シンキングを今すぐ捨てる必要はないが)。
あなたのすべてが物理的な脳の構造に影響するのだ。思考をコントロールできれば、どんな気持ちになるかをコントロールできる。
そして思考をコントロールするには、使う言葉を意識すればいい。大切なのはオープンな心構え、そして変わりたいという意志だ。
最初の一歩は、自分のためにならないしゃべり方はやめて、ためになるしゃべり方を意識することだ。
正しい言葉を使い、問題を別の角度からとらえ直すことで、ものの見方、世界との関わり方は劇的に変わる。
「自分なりの現実をつくる」という言葉を聞いたことがあるだろうか。自分なりの現実はつくれる。
たくさんの人が実践している!何より、ただつくれるだけではなく、そこで行動し、その中で生きられるのだ。覚えておいてほしい。
今の状況がどんなにつらく、厳しいものでも、それをどうとらえ、どう向き合うかで結果はまったく変わってくる。繰り返すが、答えは外ではなく自分の中にある。
話し方、考え方、まわりの物事のとらえ方は、その人なりの現実のまさに基盤となる。望みの現実をつくり出すには、一定の(自分自身や他人との)会話スタイルを身につければいい。
たとえば私は、「問題」をチャンスととらえ直すのを習慣にしている。すると問題はすぐに、自分を成長させる材料になる。
落ち込み、イライラしたくなるのをぐっとこらえて、問題に興味を持ち、積極的に関わるようにするわけだ!
セルフトークをアサーティブ(主張型)に変える
自分なりの現実をつくり出すには、セルフトークを会話型から主張型に変えることだ。
セルフトークを「流れていく会話」(自分自身や他人や人生について、意見を言ったり判断を下したりする会話)にするのではなく「主張の場」ととらえるのだ。
放っておいたらまぎれ込んでくる「雑音」を振り払い、今この瞬間に、自分の力を注ぐ必要がある。気をつけていないと犯してしまいがちなミスがある。
「~する予定だ」とか「~するつもり」といった言葉は使ってはいけない。
さらに「~すべき」や「~したい」なんてもってのほかだ!そんなことをすれば、無意識は「それなら今やらなくてもいいか」と思い込んでしまうからだ。
新年の誓いを守れる人がいないのは、そこに「~したい」などの表現を使うからだ。人は普通、自分がやりたくないことを誓いに書き、「絶対に達成するぞ」とやる気をみなぎらせる。
ところがいよいよ取り組まなければという瞬間が来ると、とたんにやる気がしなくなる。そこにあるのは厳しい現実だ。
何かをやめると誓ったことで人生にぽっかりと穴が開き、独りぼっちで立っている気がする。そして心の声が暴走を始める。
ダイエットを誓ったけれど、ピザがどうしても食べたい。貯金を誓ったけれど、ジャケットがほしくてたまらない。
最初のやる気が消えうせ、元の思考パターンが戻ってきたタイミングでそうした瞬間が訪れたら、どう対処すればいいのだろうか?ほかに何ができるだろうか?アサーティブなセルフトークが真価を発揮するのはこうした瞬間だ。
「自分は~だ」「~を歓迎する」「受け入れる」「主張する」といった現在形の力強い断定的な言葉を使い、「~するつもりだ」とか「~が目標だ」といった言葉は避けよう。
今という瞬間に関わるアサーティブな言葉を使うことは、人間の心と体に大きな影響を与えるだけでなく、今の現実を変える力も持っている。
「がむしゃらにやる」と「がむしゃらにやるつもりだ」はまったく違う。前者は現時点の人生に切り込むもので、後者は今後の可能性を表すものだからだ。
あなたも日々の暮らしでアサーティブな言葉遣いを心がけ、お茶を濁すようなしゃべり方になっていないか注意してほしい。
この本の使い方
この本では、行動に必要なパワーやエネルギーをもたらし、気分を高め、積極性を引き出すアサーティブな言葉を紹介していく。
歴史上の人物や哲学者の言葉、科学的な発見も紹介しているが、それはアプローチを説明する助けになりそうだと思ったからであって、自分の正しさを証明するためではない。
どれもいい言葉ではあるが、本当の意味でこの本を読み、この本と触れ合いたいのなら、あなた自身が私の言うことをよく考え、ときには疑問を感じてほしい。
意見を持ち、検討し、自分であれこれ試してほしい。自分自身のことを確かめるのに一番いい材料は、実体験に決まっているのだから。
ただうなずきながら読んでいくのではなく、自分で内容を確かめながらページをめくっていく人は、これまでに味わったことのない、人生を変えるような劇的な体験ができるはずだ。
私の言葉には納得がいかなかったり、心がざわついたり、ムカッときたりすることもあるだろう。それでかまわないから、そのまま読み進めていってほしい。いい映画のように、最後には話がすべてつながってくるはずだ。
あまりにもムカついてどうしようもない人は、読むのをやめて、気に入りそうなまわりの誰かにこの本をプレゼントするのをお勧めする。
この本が、セルフトークの複雑さと威力を理解し、生きていくための武器にする方法を知る助けになればうれしい。
この本では、言葉のプラスの力やマイナスの力について、そこまで踏み込んだ話はしないが、読んでいけば、人生は日々の思考とセルフトークによって形づくられているということがわかってくるはずだ。
この本では、あなたに考えることを求める。言葉や感覚を日々の生活と意識的に結びつけ、人生という広大な土地を探索することを求める。やがてあなたは、話し方と感じ方との魔法のようなつながりに気づくだろう。
私としては、付箋や蛍光ペンを使って気になる部分にチェックを入れながら、全体を読み通してほしいと思っている。
なるべく多くの人が使いやすい、わかりやすい本となるよう心がけたつもりだ。
各章は全体の一部であると同時に、ある程度は独立しているので、好みに応じてじっくり読み込んだり、さらっと読み流したりしてほしい。
ぼろぼろになるまで読み、人生を変えるのに必要な言葉を見つけ出してもらえれば本望だ。
日々の生活の中で、常にこの本と首っ引きというわけにもいかないだろうから(まあ、それでもかまわないが)、この本の真の目的は、人生に行き詰まったり、再出発の必要を感じたりしたときの出発点になることだ。
そういうときが来たなら、この本の世界へ跳び込み、内容を飲み込んで、そしてまだ見ぬ自分を解き放ってほしい。楽しんでくれたら幸いだ。
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