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将来への見通し ビジョン(高度4000メートル)

目次

対象範囲

将来への見通しを定めるために必要な「構想」(高度4000メートル)で考えるべきは「長期的な成功のイメージ」である。

そのときどんな自分の姿が見えているか、何が聞こえているか、どんな気分になっているかを考えてみよう。

「構想」のカテゴリーに属するのは通常、数年かけて取り組む必要があるようなことだ。

個人の場合は、ライフスタイルや仕事上の目標、方向性に関することである。

企業の場合は、会社の戦略や、どんなことをどれくらいの水準でやっていきたいかといつたことがそれにあたるだろう。

また、「2年より長い時間をかけて達成すべき長期的目標は何か」と考えてもらってもよい。

より大胆に「将来大きな成功をおさめているとしたら、そのとき自分は何をしていて、どんな状態になっているか」と想像してもらつてもかまわない。「長期的」という言葉が具体的に意味するところは状況によって変わる。

14歳の子どもとすでに退職した人では明らかに違うだろうし、航空宇宙関連の会社と新興のソフトウェアベンチャー、地元商店の長期戦略はかなり異なったものになるはずだ。

どこまでの未来をイメージすべきかには、個人や会社が影響を受ける変化のサイクルも大きく関わってくるだろう。

宇宙飛行士になりたい、街造りをしたいといつた夢を持っている人は、おそらく数十年先まで見通して計画を立てる必要がある。

一方、オープンソースのソフトウェアのコンサルタントになりたいのであれば、2年以上先の想像をしてもあまり役に立たない可能性が高い。

管理の仕方

高度3000メートルの場合と同様に、このレベルのことも、落ち着いた静かな場所で話しあったり、ゆつくり考えたほうがよい。将来の可能性をどこまで自由にブレインストーミングできるかが重要だ。

通常の発想に縛られずに伸びのびとアイデアを出していくために、外部のコンサルタントが呼ばれることもよくある。

私が高度4000メートルを見渡す作業を指導するときには、できるだけリラックスした、自由な雰囲気を保つように心がけている。そのほうが成果が上がりやすいからだ。

また、どれくらい先まで見通せばいいか、どのようなかたちでアイデアが出てくるかは、その組織の構造や、周囲の環境などで変わってくる。

場合によつてはストレートに「5年後に何をしていると思いますか」と訊くだけで、創造的なアイデアがあふれてきてビジョンが明確になることもある。

将来の特定の時期に目を向けさせると日頃やつていることから離れて考えられるようになることが多いからだ。

「あなたのいちばん大きな夢(もしくは組織にとっての理想)は何でしょう」とシンプルに尋ねるやり方が有効なこともある。

イメージが浮かんできたら、そうなるのはいつごろかもあわせて考えてもらおう。

こうしたビジョンを描く際には、創造的な思考を助けてくれるさまざまなテクニツクやフレームワークが大いに役立つ。

それらを用いることで、ふだんと違った視点から思考ができるようになったり、より大胆なアイデアを思いつくことができるようになる。

こうした思考の枠組みを提供するためのプロも存在するので、彼らを活用するのも1つの手だろう。「もしも……だつたら」という質問もよく使われる。

例えば、「全国レベルの新聞や雑誌に大きな記事が載つたとしたら?」と想像し、チームや会社の業績を賞賛する記事を全員で書いていくやり方もある。

こうしたエクササイズを「形式的で意味がない」「アホらしい」という人もいるが、実際にやってみると必ず興味深い結果が出てくる。

その結果、組織の変化につながる前向きな決断が下されたり、方向性が定まったりするのを、私は実際に何度も見てきている。

個人の場合は、理想の未来について書き出してみることで同じような結果が得られる。

夢が実現したときに現実になっていてほしいこと―人間関係や生活環境、仕事、健康、経済面などの理想的な状態をリストにしてみよう。

不思議なことに、それを実践した人の多くはその夢を実現してきている。実のところ、私自身もそのうちの1人だ。さらには、より具体的なシナリオを書くことにチャレンジしてみてもいい。

あるいは理想的な状態を短編小説のつもりで書いてみるといい。もっとビジュアルで表現したいなら「宝の地図」を描くのがお薦めだ。

簡単なイラストを描いていってもいいし、雑誌などの文字や写真を切り抜いてコラージュにしてもいい。

これらを実践すると、創造的なアイデアが湧いてきて、大いにモチベーションが高まるはずだ。

左のページにあるのは、私が1990年のH月に数日間かけて描いてみた絵である(一部ぼやけているところがあるのはイラストとしての効果を狙ったわけではなく、何かをこぼした痕である)。

当時私は、理想的な人生やライフスタイルの全体像を描くことで、何か得るところがあるのではないかと思った。

そこで自由に想像してアイデアを収集してみたのだ。20年経った今、そこに描かれてあることの大半は実現している。

細かいところで違っているものもあるが、少なくとも本質的な部分は達成されている。描いた当時は、これらのほとんどが単なる想像で、どのように実現していけばいいかはまったく見えていなかった。

だが、絵を描くことで自分の心の奥にあつたものが明確に認識され、目の前に現れたチャンスに気づいて行動していけるようになったのだと思う。

前向きな未来を明確に描くことができれば、リスクを恐れずに挑戦していく勇気が生まれてくるのだ。

いつ、どのように取り組むか

これは上のほうのレベルに共通していることだが、4000メートルの部分についても、好きな頻度で見直すといいだろう。

特にこの頻度でやらなくてはいけないというルールはない。あなたが必要だと感じたときが、見直すタイミングである。

組織の多くは毎年の事業計画などで長期的なビジョンを検討しているが、中には2年から3年おきというところもあるかもしれない。このレベルのことは、時とともにはっきりしてくることも多い。

情報が増えたり状況が変化したりして調整が必要になることもあれば、関係者が経験を積んだり成長したりした結果、ビジョンがより明確になることもある。

また、機会や課題に直面して、すでに思い描いたことを見直す必要が出てくるケースも、もちろんある。

そのようなときは、それらの新たな要因を考慮に入れて長期的なビジョンを描き直さなくてはならない。

私の場合は、会社を大きくしていこうと妻と決断したときにビジョンの見直しをせざるをえなかった。

世界中で高まるGTDへの関心や熱意に応えるために、具体的にどういうことをすればいいのかをじっくり考える必要があったのだ。

それからスタッフを増やしたときも、我々がやろうとしていることの規模や範囲について、さらに深く、きちんと見極める必要があった。

人生や会社に関して大きな変化が起こったときも、当然ながら将来のビジョンを見直さなければならない。

子どもの自立、大切な人の死、離婚、再婚、遺産相続、自分にとって大きなチャンスとなる転職の誘い、突然の病気や後遺症の残る事故といったものだ。

ある日帰宅したら「大きな仕事の誘いを受けたのだけれど、最低2年は地球の裏側ですごさないといけないの、いっしょに来てくれる?」と妻に尋ねられるかもしれない。

そうしたときは、夕食を食べながら高度4000メートルのことを見直していく必要があるだろう。もちろん、あなたを取り巻く世界の変化も大きく関わってくる。

これまでも、政治、軍事、会社や組織、環境、経済などの大きな変動によって、多くの人や組織が日常の営みを離れて高い視点で考えることを余儀なくされてきた。

会社が人件費を減らすために早期退職制度を導入すれば、対象となるかもしれない社員にとっては、人生を見直す大きなきっかけとなる。

私は9・Hの事件が起こったときにニューヨークのウオール街にいたが、あのような予想外の大事件が起こると、否応なく人生を見直さざるをえなくなる。

この事件のせいで、少なくとも次の年が暮れるころまでは、ほとんどの人が4000メートル(とその上)の高さのことを、それまでよりずっと意識的に考えるようになっただろう。

自分たちが弱く、ちっぽけな存在だと気づかされるようなことが起こると、改めて高い視点に目を向ける必要が出てくるのだ。

人生と仕事のロードマツプのこの部分をきつちり見直す作業は、特殊な状況に直面したときだけでもいいかもしれない。

ただ、近い将来にやるべきことをはっきりさせ、秩序を回復するための唯一の方法が、もっと遠くの将来への見通しを定めることである場合も多いのだ。

未来は現在の中に

目標やビジョンに関して、あまり知られていない重要な事実がある。それは未来について考えると、変化は現在に起こってくるというものだ。

私は今まで未来に行ってきたことはないし、現実は常に「現在」に固定されている。

だが、未来のことを考えると、必ず現在の認識に変化が生じ、今、納得してやっていることについてもそれなりに見直しが必要になってくる。

長期的なビジョンを持つことの真のメリットは、未来のイメージを思い描くことで、ふだんは思いつかないような、自分の可能性を想像できることにある。

今から5年後に自分がどんなにすばらしい状態になっているかを考えてみてほしい。日曜日の午後、あなたはどんなふうにすごしているだろうか。どれだけ豊かで自由になっているだろう。周囲の環境はどうだろう。

影響力や人間関係はどうなっていて、どんな機会が目の前に開けているのだろう。こうした自由な想像は、視点をずっと先に置くことで可能になる。

同じことを2週間先についてやろうとしてもそれほど自由に想像することはできないだろう。

心に抱いているイメージが、我々の認識に影響を与えていることはすでに広く知られている。突然の変化に直面したとき、前向きに対処できるかどうかは自分の心の中にあるイメージに大きく左右される。

ただ、これについては知っておくべきことがある。

心は、あなたが自分にふさわしいと思ったり、達成できると思ったイメージしか持ちつづけることができないのだ。

目標を立てたリビジョンを描いたりすることに抵抗を感じる人が多いのはそのためである。

これまでいろいろな人を見てきた経験で言うと、将来の自分のイメージや目標は、少なくとも50%以上の確率で達成できるものでない限り、いつまでも心に抱きつづけるのは難しい。

目標はそれなりに大きなものでないと、物足りなく感じられたり、やりがいがなさそうに思えてきて、意欲や興味が湧いてこない。

一方で、あまり大きすぎても、無意識のうちに達成できないと感じてしまい、イメージのパワーを十分に発揮することができないのだ。

適切なビジョンを定め、そこから逆算して短期的な目標やゴールを決め、プロジエクトとそれを進めるための行動を明らかにしていくと、生産性は飛躍的に高まってくる。

これは、GTDの柱をなす思考プロセスー‐「望んでいる結果」と「次にとるべき行動」を実践することで、劇的な成果が上がる例だ。

「世界から飢餓をなくす」といった抽象的な目標も、「ヨハンに電話して食糧配給所のアイデアを相談する」「配給の詳しい知識を教えてくれる講座がないかネットで調べる」といった具体的な「次にとるべき行動」を定めてしまえば、それを実行していくモチベーションがぐつと高まってくる。

ただ、私の経験で言うと、単にビジョンや長期的な目標を明らかにして、折に触れて注意を向けるだけでも、それなりの結果がもたらされることは珍しくない。

私が達成したことの多くは、ふと思いついて書き留めた夢やアイデアだった。

具体的には「いつかやる/多分やる」のリストに入れておいたり、繰り返し自分に言い聞かせたり、理想を描いたシナリオや「宝の地図」に組み込んでおいたものだ。

それらのほとんどは、プロジェクトや次にとるべき行動を具体的に考えていたわけではなかった。

しかり折に触れて注意を向けることで、無意識下にある思いが徐々に膨らんでいき、何かしないと気が済まない状態になった。

その結果、適切な行動を起こすことができるようになり、最終的にそれらを達成することができたのだ。

高度4000メートルで考えたことをより現実に近い高さのことに落とし込んでいくことも大切だが、単にビジョンを描いて自分の中で熟成させることも、同じくらい有意義で、行動に結びついていく可能性がある。

人間は未来に目を向けたがる生き物である。仕事と人生で着実に成功をおさめていくには、ときにより大局的な視点を持ち、適切なレベルに適切な注意を向けていく必要がある。

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