MENU

CHAPTER1KPIとは何か?

はじめに経営を語るうえでKPIは避けて通れないKPI(KeyPerformanceIndicators:重要業績評価指標。重要経営指標、重要業績指標などともいう)という言葉が、ビジネスの世界で当たり前に使われるようになって久しいものがあります。筆者がビジネスパーソンになった1990年前後くらいは、まだこの言葉はほとんど使われておらず、単に「指標」や一部のものについては「比率」などと呼ばれていました。そして1990年代の中頃から徐々にビジネスシーンで使われるようになり、近年、一気に市民権を得るようになったのです。これは単なるバズワードとして一時だけ流行ったという話ではありません。それだけKPIというもの、あるいはKPIに基づいた経営が効果的であることの証左ともいえるでしょう。本書は、KPIの意義を改めてご紹介するとともに、代表的なKPI100個について、その意味合いや使い方、あるいはどのような人々にとって特に重要な意味を持つのかなどをまとめたものです。必要に応じて該当のKPIを使っていただいても結構ですし、辞書的・用語集的に活用することもできます。1冊を読み通していただければ、経営学全般の理解にもなりますし、すでに経営学に触れた方にも良い復習の機会、あるいは新たな情報収集の機会になると思います。本書の構成本書は大きく分けて2部構成となっております。まず前半の「PART1KPIの概要」では、KPIに関する基本的な、全般的な解説をします。「CHAPTER1KPIとは何か?」で、まずKPIというものを設定して経営を行うことのメリット、効用などを説明しています。そしてそのうえで、実際にKPIを設定し、組織を運営する際の勘所やコツなどをあわせて紹介しています。また、どのような有効なツールにも必ず裏面というものがあります。KPIというツールは「切れる刀」であるからこそ、そのリスクも正しく理解しておくことが必要です。ここで述べることはビジネスの数字全般に当てはまることですので、まずはしっかり理解してください。続く「CHAPTER2KPIの実例ストーリー」では、2つのミニケースでKPIを使った経営がいかにパワフルかということをご紹介します。紙面の都合上、あらゆるシーンについてのケースはご紹介できませんが、最も典型的なパターンということで参考にしてください。後半の「PART2基本KPI100」は、個別のKPIについて解説するパートとなります。次の順で、合計100のKPIについてご紹介します。CHAPTER3マーケティング・セールスのKPICHAPTER4オペレーション・イノベーションのKPICHAPTER5組織のKPICHAPTER6会計・ファイナンスのKPI勘のいい方はお気づきかと思いますが、この4つのカテゴリーは、バランススコアカード(BSC、COLUMN参照)の4つの視点に近いものがあります。組織を数字でマネジメントしようとすると、結局は似たようなカテゴリーになるということかもしれません。特にCHAPTER3では近年になって登場したウェブマーケティング系のKPIなども多めに取り上げていますので、これからそうした取り組みを強化するという方はぜひご覧ください。基本がわかればどんなKPIも扱える本書は100ものKPIを取り上げていますが、もちろん他にもたくさんのKPIが存在しますし、業界によって独自に存在するKPIなどもあるでしょう。例えばレンタルDVD店であれば、1回当たりの貸出日数や新作の稼働率などです。私立大学であれば企業からの学生評価なども気になるKPIになるでしょう。それらをすべて網羅することは物理的にもできませんが、今回紹介する基礎的なKPIを理解しておけば、皆さんの組織に応じたKPIなども独自に開発・運用できるはずです。また、時代とともに新しいKPIが生まれても、「これはあのKPIの発展版だな」と気づくこともできるでしょう。本書の執筆に当たっては、企画から発売に至るまで東洋経済新報社の齋藤宏軌氏に非常にお世話になりました。改めて感謝申し上げます。他の書籍でも書きましたが、基礎=Essentialsは本質にもつながる言葉です。ぜひ本書を通じて基礎となるKPIをしっかり理解し、経営というものに対する洞察を深めていただければと思います。嶋田毅

KPI大全──目次はじめにKPI100‐INDEXPART1KPIの概要CHAPTER1KPIとは何か?1本書におけるKPIの定義2KPIの効用3KPI経営の課題CHAPTER2KPIの実例ストーリーCASE1A光学工業の営業改革CASE2コクーンの新規事業PART2基本KPI100CHAPTER3マーケティング・セールスのKPIMARKETING001売上高002市場シェア003顧客内シェア004認知率005使用経験率006市場カバレッジ007配架率008既存顧客維持率009NPS(ネット・プロモーター・スコア)010客単価011坪当たり売上高SALES012営業担当者1人当たり売上高013新規顧客数014問合せ数015SQL数016RFP数017成約率018受注期間019営業担当者のコンピテンシー020価格維持率(値引き率)WEBMARKETING021CPA(CostperAcquisition)022LTV(LifeTimeValue:顧客生涯価値)023継続率024流入数025平均セッション時間026直帰率027クリック率(CTR:ClickThroughRate)028コンバージョン率(CVR:ConversionRate)029ユニークユーザー数(UU)030ダウンロード数031有償転換率032翌日再訪問率033送客数034フォロワー数035シェア数CHAPTER3用語解説CHAPTER4オペレーション・イノベーションのKPIOPERATION036スループット037稼働率038納期順守率039提供スピード040不良品率041カイゼン提案数042トラブル件数043ヒヤリ・ハット報告数044プロジェクト予算超過率045ロボット化率(機械化率)046商品ロス率047売上高物流費率INNOVATION048売上高研究開発費率049特許数050新製品数051開発案件数052社外シーズ比率053開発期間054新製品の売上高比率CHAPTER4用語解説CHAPTER5組織のKPIHRM055従業員1人当たり売上高056従業員1人当たり人件費057労働分配率058従業員の平均年齢059従業員増加率060離職率061本社費率062正社員比率063中途採用数064階層数065従業員満足度066カルチャーサーベイ0671人当たりの人材開発投資068女性比率069有給消化率070内定辞退率

071社外取締役比率072SDGsへの貢献CHAPTER5用語解説CHAPTER6会計・ファイナンスのKPIACCOUNTING073売上総利益率(売上高粗利率)074売上高営業利益率075売上高経常利益率076売上高税引後利益率077包括利益078ROA079ROE080自己資本比率081当座比率082在庫回転期間083CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)084固定費085限界利益率086損益分岐点売上高087製造原価088EBITDAFINANCE089フリーキャッシュフロー(FCF)090WACC(加重平均資本コスト)091NPV(正味現在価値)092ROIC(投下資本利益率)093EVA(経済付加価値)094実効税率095株価096売上高成長率0971株当たり配当額098海外売上高比率099銀行預金残高100バーンレートCHAPTER6用語解説

KPI100INDEXA~ZCCCCPA(CostperAcquisition)CTR(ClickThroughRate)→クリック率CVR(ConversionRate)→コンバージョン率EBITDAEVAFCF→フリーキャッシュフローLTV(LifeTimeValue)NPSNPVRFP数ROAROEROICSDGsへの貢献SQL数UU→ユニークユーザー数WACCあ行売上総利益率売上高売上高粗利率→売上総利益率売上高営業利益率売上高経常利益率売上高研究開発費率売上高成長率売上高税引後利益率売上高物流費率営業担当者のコンピテンシー営業担当者1人当たり売上高か行海外売上高比率カイゼン提案数階層数開発案件数開発期間価格維持率加重平均資本コスト→WACC稼働率株価カルチャーサーベイ機械化率→ロボット化率既存顧客維持率客単価キャッシュ・コンバージョン・サイクル→CCC銀行預金残高クリック率経済付加価値→EVA継続率限界利益率顧客生涯価値→LTV顧客内シェア固定費コンバージョン率さ行在庫回転期間シェア数自己資本比率市場カバレッジ市場シェア実効税率社外シーズ比率社外取締役比率従業員増加率従業員の平均年齢従業員1人当たり売上高従業員1人当たり人件費従業員満足度受注期間使用経験率商品ロス率正味現在価値→NPV女性比率新規顧客数新製品数

新製品の売上高比率スループット正社員比率製造原価成約率送客数損益分岐点売上高た行ダウンロード数中途採用数直帰率坪当たり売上高提供スピード問合せ数投下資本利益率→ROIC当座比率特許数トラブル件数な行内定辞退率認知率ネット・プロモーター・スコア→NPS値引き率→価格維持率納期順守率は行バーンレート配架率1人当たりの人材開発投資1株当たり配当額ヒヤリ・ハット報告数フォロワー数フリーキャッシュフロー不良品率プロジェクト予算超過率平均セッション時間包括利益本社費率や行有給消化率

有償転換率ユニークユーザー数翌日再訪問率ら行離職率流入数労働分配率ロボット化率

目標達成の度合いを確認する指標まず最初に、KPI(KeyPerformanceIndicators)について改めて定義しておきましょう。KPIは端的にいえば、組織や個人が目標達成に向かって業務が順調に進んでいるかどうかを確認するための重要な指標です。売上高や利益率のような財務数字だけではなく、顧客満足度や不良品率といった指標もKPIとして用いられます。どのKPIを重視すべきかは、企業の戦略によっても変わってきますし、当然立場によって重みも変わってきます。例えば筆者のような立場の人間であれば、年間に何冊書籍を出したかなども重要な個人ベースのKPIになります。なおKPIは、狭義にはKGI(KeyGoalIndicators)と区別することもあります。KGIとは、企業でいえばより最終目標に近い数字、具体的には売上高や営業利益などが相当します。ただ、本書ではそうしたKGIもKPIに含めて議論します。つまり、広義にKPIを捉え、考えるということです。あらゆるシーンで使えるKPIKPIは、営利組織である企業以外の組織や個人であっても、人間が関わるあらゆる営みに援用することができます。例えば公立の小学校の学年主任であれば、学級崩壊率、落ちこぼれていない児童の比率、教師の平均残業時間、教師のメンタル不調率などは、学校が適切に運営されているかどうかを知る重要なKPIとして用いることができるでしょう。プロ野球の野手であれば、出場試合数、打率、本塁打数、打点、盗塁数といった昔ながらのKPIに加え、OPS(出塁率+長打率)やWAR(そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを統計的に推計した指標)といった新しいKPIを組み合わせることで選手のパフォーマンスや課題をチェックすることができます。なお、これは試合におけるパフォーマンスを示すものですが、プロ選手であれば、関連グッズの売上げなども球団にとっては重要なKPIといえるでしょう。2020年はコロナ禍に見舞われた年ですが、何を最重要KPIとして政府が政策を決定すべきかということもよく議論されました。ウイルス学の権威や医師であればまずは新型コロナの感染者数や死者数、致死率に目が行きます。また、病院の機能が機能不全に陥ることによる他の原因での死者数増なども気になるでしょう。一方で、自粛要請などであまりに経済を止めてしまうと、失業率が上がり自殺者も増えてしまいます。「医学的理由による死者数だけではなく、そうした間接的な死者数も含めてKPIとし、政策に反映すべき」という意見もよく聞かれました。これについては本書の執筆時点で最終結果は出ていませんが、数年後に政策の是非を振り返る際に、しっかりと検証すべきポイントといえるでしょう。いったん企業活動に戻りましょう。企業活動をマネジメントするうえでKPIを用いることの効用とは何でしょうか。いくつか典型的なものを挙げます。

①物事が可視化されることで管理しやすくなるビジネスには、「測定されないものは管理できない」という言い回しがあります。実際には全く管理できないということはないのですが、やはり測定され数値化されているものに比べると管理が難しくなります。また、KPIがない場合、仮に管理ができたとしても属人化しやすく、マネジャーが代わったときに引き継ぎが難しくなるというデメリットがあります。部下の評価の詳細などはその典型でしょう。仮に新任で赴いた職場で、ある部下がトータルで5点満点の点数がついていても、あとはぼんやりした定性情報しかないというのではやはりやりにくいものです。それに対し、組織文化のような一見ふわっとしたものでも、アンケートなどを活用してKPIとして可視化しておくと管理が容易になります。ちなみにグロービスでは2年に1度カルチャーサーベイというアンケート調査を行います。それを時系列で見たり、部署間比較することでどこかに問題がないか、好ましくない兆候が起きていないかなどを把握しやすくなるのです。なお、問題解決についていえば、派手な分析を行う以上に、単純に重要なKPIの時系列変化を見ておくことが有効ということも多いものです。工場であれば不良品率、顧客からのクレーム数、納期順守率などをしっかり確認し、問題が起こりそうな兆候にいち早く気づくことが重要です。分析の基本は比較です。KPIをしっかり設定・測定するとともに、適切な対象と比較し、問題発見やその解決に役立てることが大切です。特に以下の比較は定番中の定番ですので、常に意識するようにしてください。・時系列比較(昨年度との比較なども含む)・部署間比較、業界のライバル他社との比較(社内平均や業界平均との比較なども含む)・対目標比較比較方法の詳細については、『定量分析の教科書──ビジネス数学力養成講座』(グロービス著・鈴木健一執筆、東洋経済新報社)などを参考にしてください。②PDCAが回しやすくなるPDCA(Plan‐Do‐Check‐Action)は単純ではありますが、非常に効果が出やすいマネジメントの最強フレームワークです。高いパフォーマンスを継続的に出している組織は、このPDCAがタイトに回されていることが多いものです。通常の組織でなおざりになりがちなのは、CheckとActionの部分です。つまり、PlanとDoまではどの組織でもある程度はするのですが、CとAが甘く、その結果問題が放置されて問題解決が後手に回ったり、目標の未達が起こりやすくなってしまうのです。筆者がかつて所属したある企業では、年度末になると売上げ目標達成のためのコンティンジェンシープラン(緊急時対応)が発動されました。本来は、PDCAがしっかり回っていればそうしたことは起こらないはずなのですが、PDCAが緩い会社では、そうしたことが多発してしまうのです。日本でPDCAを愚直に回している企業の代表は日本電産でしょう。同社では、例えば営業であれば、日時レベルでPDCAを回し、ビハインドの状態にならないことを目指します。例えばある週に50のことを達成すべく、毎日10の目標をクリアすることになっているとします。多くの企業では、仮に最初の月曜日に7の結果しか出なかったら、残りの4日で43の分を達成しようとする、あるいは次の週も含めてリカバリーしようとするかもしれません。しかし日本電産では、月曜日に7の結果しか出なければ、翌日の火曜日に13の結果を出し、すぐに目標にキャッチアップすることが求められます(ちなみに、月曜に13の結果が出たら、火曜は7でいいというわけではなく、それはそれで10の結果が求められます)。その結果、日本電産はめったなことで下方修正がなく、常に目標を上回る結果を残し続けられるのです。業態や製品特性によっても変わってきますが、通常、特定の部署(営業部や工場など)では10個前後のKPIが設定され、PDCAを回すのが一般的です。そしてそれらがさらに個人レベルの短期目標に落とし込まれ、入れ子のような状態で組織の中で満遍なくPDCAが回ることが理想です(図1)。③人々の意識を集め、動機づけしやすくなるKPIは戦略など新しい方針を組織に落とし込む際にも威力を発揮します。例えばそれまで売上げ重視だった企業が、粗利率の高いカスタマーサポート部門を内部化し、売上げ以上に利益を重視する方針を出したとします。であれば、当然重視するKPIも変わってくるでしょう。それまではとにかく売上げが大事なKPIだったかもしれませんが、新しい戦略の下では、売上げはもちろん、それ以上に利益や、カスタマーサポート部門の売上げ、あるいは顧客満足度がより重要なKPIとなってくるでしょう。人々をそのKPIの目標達成に向かわせるには、評価(さらには報酬)とセットにするのがセオリーです。前記の例でいえば、利益目標を達成した個人を高く評価し、ボーナス面でも優遇するようにすれば、多くの人はそれを実現しようとして行動するものです。逆にいえば、いくら新しい戦略として利益重視を打ち出したとしても、評価制度がそれに連動したものになっていなければ、新しい戦略も現場に浸透しないのです。新しい方針に向けて人々のモチベーションを高めるうえでは、KPIとして何を選ぶかということに加え、そのKPIの目標をどの程度にするかという点も大切です。走り高跳びに例えると、バーの高さが3メートルだと最初から皆が諦めてしまいますし(男子の世界記録は2メートル45センチ、女子で2メートル9センチです)、バーの高さが1メートル20センチ程度だと簡単すぎてこれまたモチベーションにつながりません。「工夫や努力で何とかクリアできる」というレベル感の目標設定がセオリーとされています。なお、しばしば、あえて一見無理そうに見える高い目標を設定することもあります。営業担当者数を3分の1にして前年と同じ売上げを上げる、といったやり方です。これは、あえてそれまでのやり方を疑い、イノベーティブなやり方をひねり出すときに向いている手法です。高跳びのケースであれば、「トランポリンを使ってはダメと書いてないから、それを使おう」などのクリエイティブな発想を促すのです。毎回このやり方が奏功するわけではありませんが、時折試してみる価値はあるでしょう。COLUMNバランススコアカード管理会計の著名なツールにバランススコアカード(BSC)があります。これは、図2に示したように、「財務」「顧客」「内部プロセス」「学習と成長」の4つの視点についてそれぞれ数

個、合計で20個から35個程度のKPIを設定し、戦略の実行を推進するものです。1990年代の前半に、管理会計の大家であるロバート・キャプランらによって開発されました。当初は戦略遂行のツールとして導入されましたが、その後、人々の意識変容にも効果があるなど、さまざまな副次的なメリットが報告されています。なお、BSCのユニークな点に、単に表やチャートでKPIの達成度合いを捕捉するだけではなく、同時並行で戦略の因果関係を示した戦略マップを作るというものがあります(本書では割愛)。これによって、それぞれのKPIの関係もわかりやすくなりますし、戦略の流れが可視化されることで、従業員一人ひとりが「自分はここに貢献しているんだ」という当事者意識が湧きやすくなるのです。

KPIを用いた経営は、「適切に行えば」非常に効果的なのですが、時にはかえって費用対効果を損ねたり、意図せぬ結果を招くこともあります。ここでいくつかの運用上の重要ポイントをご紹介しましょう。①KPIのバランスをとる特に人々の行動を望ましい方向に向ける場合、KPIの設定とその評価をバランスよく適切に行わないと、かえって人々の行動を間違った方向に向かわせる可能性があります。極端な例で考えてみましょう。ここではプロサッカーチームを例にとります。戦略としてポゼッション重視(ボールを相手に渡さない)戦術をとるとします。このとき、選手の評価を「パス成功率」100%で行ったらどうなるでしょうか?私が選手なら、難しいパスは出さず、味方同士の無難なパス回しをしようとするでしょう。そうすればパス成功率は上がるからです。しかしこのようなことを皆がしてしまうとおそらく得点は入りません。サッカーにおける得点は、「通るか通らないか」というギリギリのリスキーなパスが数本つながり、かつ最後の難しいシュートが決まって初めて実現します。仮にパス成功率のみをKPIにしてしまうと、得点につながるようなリスキーなパスを通そうとするインセンティブがなくなってしまうのです。このケースでは、おそらくパス成功率は上がるでしょうが、得点が取れない弱いチームになってしまうでしょう。それでは本末転倒なのです。別のケースで、例えば病院で外科医の評価を「手術成功率」のみで行ったらどうでしょうか?筆者がその病院の医師なら、最初から成功が難しそうな手術は断るという行動に出るかもしれません。「難しい手術は断る病院」という評判が広がってしまっては、病院の本来の存在意義を損ねてしまうことになるでしょう。こうしたこともあり、通常は部署あるいは個人レベルで与えるKPIは、複数のものをバランスを考慮しながら設定するのが一般的です。例えば営業担当者であれば、最終的な受注額や売上高はもちろん重要ですが、それ以外にも「価格維持率」「既存顧客売上高」「新規顧客開拓数」「顧客満足度」「訪問件数」「RFP数」「他プロジェクトへのパス数(横展開数)」などを、戦略も意識したうえでバランスよく設定するということです。ただ、この「最適のバランス」は自動的に答えが出るものではなく、試行錯誤しながら探るしかありません。例えば営業担当者のプロセス評価で、「訪問件数」の重みを過剰にしてしまうと、「絶対に受注できない顧客なのに、訪問だけはする」という行動を促してしまう可能性があるかもしれないのです。なお、ここまでは人々の動機づけの側面を主に見てきましたが、管理するという立場に立てば、KPIは多いに越したことはありません。その方がきめ細かく物事を把握できますし、問題のありかも発見しやすいからです。一方で、管理される側からすると、KPIが多すぎると結局何が重要なのかがわかりづらくなったり、息苦しさを感じるものです。問題解決のためのKPIと評価のKPIが必ずしも同じである必要性はありませんが、通常、評価に直結するKPIの数は多くても20個以下が普通です。ちなみに、高利益率、高額の報酬で知られるキーエンスは、営業担当者1人につきKPIが3桁に上ることもあるようですが、やはりそれは例外です(それをこなせるからこそ高給を与えられるともいえますが)。常識的に「少なすぎず多すぎず」のKPIを設定し、それに加え日頃のコミュニケーションも活用して彼/彼女の望ましい行動を促し、かつ動機づけるのがセオリーです。②KPIを適度にブレークダウンするこれは特に問題解決の場面では重要です。例えば売上げというKPIはどの企業でも必ず最重要KPIとして見ているものですが、「塊」としてはあまりに大きすぎて、何か問題があったときにも、どこから手を付けていいかわからないということがあります。そこで、常日頃から図3のようにブレークダウンしたKPIを測定しておくことで、どこに問題があるのかを発見しやすくするのです。先に評価に絡むKPIは多すぎると混乱すると書きましたが、問題発見については粒度高く分析できるに越したことはありません。この両面を意識しつつ、常日頃KPIをバランスよく測定しておくことが望ましいのです。あるいは、常日頃は前面に出して管理していなくても、その気になれば測定・分析できるようにしておくことも大事です。例えば流通業で、いざとなれば「女性客/男性客」といったようにブレークダウンできる用意をしておくなどです。KPIの粒度を上げる方法に、図3の足し算・掛け算型のほかに、ファネル分析のファネルを細かくするという方法もあります。ファネルとは漏斗の意味で、どんどん狭くなっていく様子を表したものです。これはプロセスを分析したり、顧客のステータスを分析する際に有効です(WORDS014からWORDS017を参照)。図4の例でいえば、認知率と通常使用率のみの測定では、どこに問題があるのかがすぐにはわかりません。しかし、仮に同じ認知率と通常使用率であった場合、「認知率→使用経験率」が最も低いコンバージョン率であれば、それはプロモーションや配架率(WORDS007参照)の問題である可能性が高いでしょうし、「使用経験率→過去1年使用率」のコンバージョン率が最も低いようなら、それは製品の競争力そのものの問題の可能性が高いでしょう。

「分けるは分かる」ともいいます。問題解決のためのKPIは可能な範囲できめ細かくする、あるいはその気になれば測定し分析できる状態にしておくことが効果的です。③KPIは正確さと鮮度にこだわるKPIは当然正しく測定されるに越したことはありません。何事もそうですが、間違った数字を用いていては正しい意思決定はできないからです。一方で、100%の精度にこだわるあまりにスピードを削いでしまうのも考え物です。例えば、皆さんの会社では月次の売上げと利益はどのタイミングで速報が出るでしょうか?これが1カ月かかるようでは遅すぎです。業態や競争環境にもよりますが、可能であれば翌月の5営業日以内には98%程度の精度で速報値が出るというのが望ましいでしょう。通常、98%や97%程度の精度があれば、そこまで大きな判断ミスはありません。現代はスピード勝負の時代です。無為に2週間、3週間を過ごすのは時として致命的です。100%の精度ではなくても、ある程度問題のない精度でスピーディに数字が収集されることが一般的には望ましいといえます。なお、この点に関していうと、個々の企業のKPIとは異なりますが、政府や公共機関の情報は遅すぎます。例えば2020年の意思決定を行う際に(コロナ禍のトラブルは無視するとして)2018年度の政府発表資料を使っていては、時に意思決定を誤ってしまいます。政府の資料は重要ではあるのですが、そうしたタイムラグ(時間のズレ)があることを忘れてはいけません。④KPI至上主義に陥らないKPIを用いた経営は効果的ですが、KPIが過度に偏重されるようになるのも問題です。例えば企業において最上の行動指針になるのは経営理念ですが、通常そこに数字は入らないことが多いでしょう。ビジョンや戦略には数字が入ることも多いですが、その場合も「〇〇業界ではナンバーワン」といった表現になることが多いものです。つまり、KPIは目的となるケースがゼロではないものの、やはり手段としての意味合いが大きいのです。何事にもいえることですが、手段の目的化や、手段が目的を振り回すことはあまり好ましいことではありません。例えば新聞社が、社会的意義を忘れて部数のみにこだわって大衆に迎合しすぎた紙面を作ったり、内容をおろそかにしてはやはり大問題です(その他にも営業面での「押し紙」の問題なども長く指摘されています)。テレビの民放も、視聴率は確かに大事なKPIですが、それに振り回されすぎると、人々の支持を失ってしまいます。より身近な例でも、減量をしすぎて健康を損ねるようでは本末転倒です。常に、何のためにKPIを設定してマネジメントを行っているのかという原点に立ち返ることが必要です。数字というものは、往々にして独り歩きしたり、金科玉条のように最終目的化することが少なくありません。皆にとってわかりやすいものであるがゆえに、あるいは他者と比較して優越感や劣等感を抱きやすいがゆえに暴走しやすいのです。そうした数字の持つマイナスの効用も踏まえたうえで、KPIというものと付き合っていくことが必要です。KPIを用いたマネジメントには限界があるという理解も必要です。例えば、確かに特定のKPIに評価報奨を紐づければ、人々をそのKPI達成に向けて動機づけることは可能です。しかし、それだけに頼った経営は非常にもろいものです。動機づけは確かに評価を活用して行うこともできますが、やはり本人の内発的動機が必要ですし、それを踏まえた上司とのコミュニケーションによっても大きく向上するものです。そうしたことを忘れて数字だけで人を動かそうとすると、非常にぎすぎすした組織になってしまうのです。また、先述したように、評価に結び付く特定のKPIを高めるために、本来の企業の目標にそぐわないような行動をとってしまう可能性もあるのです。KPIは切れる刀だからこそ取り扱いには注意が必要だ、ということは強く認識しておくべきでしょう。

A光学工業の基本情報A光学工業は、企業や大学などの研究機関向けに特殊な顕微鏡などのニッチ製品を売る「隠れた優良企業」である。海外販売は基本的に商社と現地の販売代理店に委託していたが、売上げの40%を占める国内については主に直販制度を採用していた。セールスの主軸となるのは営業部門であった。営業が問合せに応じて企業を訪問したり、時には「コールドコール」(WORDS014[概要]参照)的に見込み顧客となりそうな企業や研究機関に電話をかけ、アポを取り訪問する。そして最初の訪問から商談を煮詰め、リード(見込み顧客)を特定し、最終的に受注へと結び付けるのが営業担当者の役割であった。セールスのサポートを行うのがマーケティング部門である。マーケティング部門は、電話やウェブでの問合せを喚起すべく専門誌などに広告を行ったり、営業部隊が営業しやすいようなプロモーションツール(パンフレットや時には動画など)を作成する。これまでの営業担当者の動きこれまで営業担当者は、過去のパフォーマンスなどを勘案し、一人ひとりに受注目標額が与えられ、それをクリアすることが求められた。国内に十数カ所ある各支店には数人の営業担当者が配属されていた。支店ごとにも受注目標額が与えられ、それを各人に割り振るのが一般的であった。A光学工業の営業部門は、昔ながらの体育会的な組織であった。先輩が後輩の面倒を一定期間見て、数カ月で独り立ちさせる。人事的な評価は基本的に最終受注額で決まる。「後輩の育成」や「同僚へのアドバイス」といった定性的側面も評価対象になったが、基本的に数字を上げた人間がそれに応じて良いボーナスを受け取った。最も営業成績の良い人間は、インセンティブボーナスが500万円程度になった。管理職への昇格はさすがに指導力などの適性も見られたが、実際に支店長になっているのは過去に優秀な営業成績を上げた人間ばかりであった。数字を上げられない営業担当者は、別の部署に異動になるか、会社を辞めて別の企業に行くことが多かった。とにかく数字を上げた人間が偉いという文化が浸透していた。A光学工業では、売り方は各営業担当者に任されており、一人ひとりが自ら工夫して売っていた。地道に訪問を重ね製品特性を打ち出して売る人間もいれば、接待などを活用して人間関係重視で売る人間もいた。接待予算枠は若干の額がほぼ一律に設けられていたが、ほとんどしない人間もいれば、その枠では足りず、自腹を切ってまで大々的に活用する営業担当者もいた。営業担当者は年間および四半期ごとにMBO(目標管理)で目標が設定された。四半期の売上げ目標を早々に達成した営業担当者は、あえてそれ以上売ることをせず、翌期の貯金として回す者も多かった。目標さえ達成してしまえば、あとはパチンコ屋で時間をつぶすという、昔ながらの営業担当者といった人間も少なからずいるといわれていた。営業改革へこうした営業スタイルを見直すべきという議論のきっかけになったのは、競合であるBオプトサイエンス(以下、Bオプト)の台頭であった。Bオプトはベンチャー企業であったが、その製品力の高さもあって、A光学工業のシェアを奪い始めていた。これまでであればあっさりA光学工業が受注できたような案件でもBオプトに負けるということがしばしば起きていた。Bオプトはまた、単にモノがいいというだけでなく、顧客ニーズに合わせたコンサルティング営業に特徴があった。A光学工業が製品スペックや人間関係を頼りに売っていたのに対し、Bオプトは愚直に顧客の根源的なニーズを聞き出し、そのソリューションを提供するというスタイルで顧客の支持を集めていった。A光学工業内には危機感が漂っていた。製品のレベルは決して負けているわけではないのだが、顧客からは「A光学工業さんは昔ながらの営業だからねえ」などと揶揄されることも多かった。「Bオプトの方が丁寧に話を聞いてくれるし、気の利いた提案もしてくれる」という声も多かった。営業体制にメスを入れる必要があるのは明らかであった。そこで招聘されたのが、営業コンサルタントの佐藤幸太郎であった。佐藤は社内ヒアリングや顧客ヒアリングを行った結果、「営業の見える化・標準化」と「SFA(セールスフォースオートメーション)の段階的な導入」を提案した。以下、本ケースでは主に前者の「営業の見える化・標準化」について記述する。佐藤の問題意識佐藤がヒアリングをする中で最も課題と感じたのは、営業があまりに属人化しており、「標準」となるものがないことであった。もちろん、全営業担当者に同じ動きをさせることは不可能ではあるが、やはり何かしらの「標準」を設定し、それをベースにプラスアルファを積み上げることが有効であると佐藤は過去の経験から知っていた。では何を標準化するか。佐藤はそれは営業プロセスと営業担当者のコンピテンシー(WORDS019参照)だろうと仮説を立て、さっそく動き出した。まず作ったのは、図5に示した営業のフロー図である。そしてこのフロー図の各プロセスにKPIとなる成果物を指定し、さらに次のプロセスへのコンバージョン率を示すことで営業プロセスの見える化を行うことにした(CHAPTER3参照)。

これを月次で、各営業担当者、各支店ごとに行うことにしたのだ。これを行えば、各営業担当者が今どのステータスにあるのかがわかるし、もしプロセスの上流が枯れているようなら、そこを厚くする活動を行う必要がある。それまで最終受注額のみで評価されてきた営業担当者の一部には根強い抵抗を示す者もいたが、「営業改革こそBオプトに勝つうえで必須」という社長の後押しもあって導入されることになった。図6に示したのは中堅のCさんのある月の事例である。カッコ内の分子に示したものが実績、分母で示したものが目標である。目標は、部署の平均的なパフォーマンスや過去の実績に応じて設定されていた。Cさんは最終的には頑張って3000万円の目標受注額に対し2500万円と頑張ったものの、83%の未達という結果であった。その原因がどこにあるかといえば、上流工程、特にRFP(WORDS016参照)が獲得できていないことである。これは仮説として、確度の低い相手をリードとみなしている、あるいは適切な購買意思決定者(DMU:DecisionMakingUnit)にアプローチできておらず、そこで時間をロスしていることなどを示唆していた。一方、受注1件当たりの額は大きい。比喩的に野球の打者に例えていえば、「選球眼は悪いが、当たったときには大きい」とでもいえよう。これが正しいのであれば、確度の高いリードを見出したりDMUを適切に見出すスキルを伸ばすべく上司がコーチングや営業模擬セッションなどを行う必要があるだろう。一方で、なぜCさんの1件当たりの受注額が大きいのかも分析し、それを横展開すれば、組織全体としての受注額も上がるかもしれない。また、図6はあくまでも目標に対する達成度であるが、営業担当者同士の比較や、前年度との比較など、多面的に比較・分析を行えば、より効果的なアクションがとれることはいうまでもない。これまで不透明だった営業担当者の行動は、これによってかなり明確に可視化されることになり、また営業担当者ごとのテコ入れポイントが明確になってきたのである。なお佐藤は、営業プロセスの見える化に合わせ、それまで受注額100%に近かった評価(定量面)も、プロセス部分に20%から25%程度の重みを置くことを提唱した。最終的な数字を上げることだけではなく、適切なプロセスを踏むことの重要性を組織に浸透させるためである。これについては、「訪問数だけをいたずらに増やす営業担当者が出たりしないか」と取締役会でも反対は出たが、「中長期的にはそうした行動は減るだろう」ということで、おいおい導入される見込みである。また、後輩の指導などはそれまで定性項目として扱われてきたが、これもメールなどでの指導回数などを用いて可視化できないか検討することとなった。コンピテンシーの標準化もう1つ佐藤が取り組んだのがコンピテンシー(WORDS019参照)の標準化である。これにより、営業担当者としての適性の見極めを早くし、また中途採用などにも活かそうというのである。当然、指導も効率化される。そこでまず、結果を残している営業担当者がどのような優れた行動特性を持っているかが調べられた。そして、いくつかの行動特性の中から、すべての営業担当者に必要になるだろうと考えられる、7つの鍵となるコンピテンシーとその得点範囲が明確にされた。得点は100点満点ではあるが、特定のものだけが高すぎるのも問題があるため、ベストの点数は100点ではなかった。

このモデルの導入にも抵抗はあったが、コンピテンシーは必ずしも評価報奨にダイレクトに結び付くものではなく、全体の底上げを図るものだということを丁寧に説得することで現場の理解は得られた。A光学工業はもともと中途採用を積極的に行う会社であったが(そのかわり辞める人間も多かった)、新しい採用は基本的にこのコンピテンシーを参考に行われた。例えば論理的思考が非常に得意な人間であっても、課題洞察力に難があれば、彼/彼女は営業担当者としては採用しないということである。先のプロセス管理の導入と並行して、営業担当者の育成プログラムも改変され、これらのコンピテンシーを底上げするようなプログラムが組まれた。例えば論理的思考力や(コンサルティング)コミュニケーション力に関するコンピテンシーが低い人間には「クリティカル・シンキング」や「ビジネスコミュニケーション」などのプログラムが実施された。この仕組みを徹底した結果、1年後には営業部門のコンピテンシーは確実に上がっていった。結果佐藤はこれらの他にも、営業担当者の使用時間分析や、ターゲット顧客の絞り込みのための分析ツールをいくつか紹介した。そして営業支店のリーダーは、それを確実に使えるようになることが求められた。業務プロセスの標準化とコンピテンシーの標準化については、当初こそ現場の反発もあったが、半年くらいするうちに明らかに効果が出てきたこともあって、そこからは一気に定着していった。そして佐藤が招聘されてから1年半。今では部下の指導や中途採用の面談に当たって、これらの情報が当たり前に用いられるようになっている。業績も好調で、営業担当者の生産性は1年半前に比べて20%上がり、今後もさらなる向上が期待されている。佐藤を招聘した社長の山田順一郎はつくづくと思いにふけっていた。「最初は心配だったが、物事をKPIとして可視化すると、これほどまでにマネジメントの効率が上がるとは……。今後は可視化がしにくい開発部門についてもこのやり方を応用したいものだ。佐藤さんは営業改革が専門だから、開発業務に詳しい知人がいないかぜひ聞いてみよう」山田は絶好調が予測される今年度の予算実績管理表を見ながらそう考えるのであった。

コクーンの基本情報コクーンは、もともとはゲームソフトの会社である。新規事業としてエンターテインメントに学習を加味した「学べるアプリ」こと「学ボウズ」を展開することを決めたのは2017年のことであった。そのプロジェクトリーダーを任されたのは、教育機関にも籍を置いたことのある下田優里であった。下田は早速企画書を作成することになった。そして上司や経営企画室のサポートも得て、以下のような骨格が出来上がった。想定顧客:大学生から20代の若手ビジネスパーソン製品:若手のビジネスパーソンに役に立つ読み物や動画などをエンターテインメント性を加味して提供。ゲーム的要素も入れる。基本的にスマートフォンのアプリで展開する(PC版もあり)。製作は外注化する。内容はどんどん追加、統廃合し、アップデートしていく。ユーザー同士の交流サイトもあり価格:1年ごとのサブスクリプションモデルで年間9000円。1年単位で更新するプロモーション:主にウェブマーケティングで行う。コクーンの全社広告でも紹介してもらう。最初の1カ月はお試し期間として無料で使用可能チャネル:販売代理店などは使わない。基本的にアプリなので物流は発生しない。ただし、スマートフォンからのダウンロード時に15%の「テラ銭」がとられる(実際にはAppStoreでは初年度は30%、2年目以降15%だが、ここでは単純化のためこの前提で議論を進める)同時並行で優里(社内に下田という姓の人間が2人いたので、優里は社内では通常「優里さん」と呼ばれていた)はラフな投資採算分析を行った。用いたのはオーソドックスなDCF法である(WORDS089[概要]参照)。その結果が図9だ(図中の用語についてはCHAPTER6を参照のこと)。なにぶん、コクーンとしても初めての試みだったのでその前提については議論になったが、最終的なNPVはプラスということでGOサインが出されることになった。優里は早速4人のプロジェクトチームを組み、プロジェクトがスタートした。2020年6月現在の戦略ミーティング「学ボウズ」の出足は予想以上に順調であった。ユニークな広告クリエイティブのおかげもあり、ターゲット層への認知率は初期から高いものがあった。顧客の満足度も適宜モニタリングし、コンテンツの改善を図ったことも奏功した。事業計画は毎年ローリング(修正)されていったが、基本的に目標数値はクリアする状況が続いていた。とはいえ、個々のKPIについては未達のものもあり、それをどうするかは常に課題であった。

2020年6月の月次戦略ミーティングで出された資料をピックアップしたものが図10と図11である(いずれももっと精緻な図であるが、重要なパートのみを抽出している)。優里は、毎週のチームでの進捗ミーティングに加え、月次レベルで上長も交えたミーティングを開催し、大きな戦略方針を変える必要がないかどうか確認することにしていた。そこで大きな未達があったり、予想外の出来事があるたびに戦略を微修正していくのである。

これまでコクーンにはこのような緻密なPDCAの回し方をするケースはあまりなかったが、優里は前職での経験も踏まえ、こうしたミーティングを愚直に行うことこそ成功への近道だと考えていた。直属の上司である北川裕もそうした正論に反対することはせず、月に1度のミーティングでは出てきた数字を見ながらアドバイスをすることにしていた。場合によっては人員を増強したり、他部門の協力を得るように動くのも彼の仕事だった。一通りの報告が終わった後、まず図10を見ながら議論が始まった。優里「ご覧の通り、数字は目標をすべて上回りました。新型コロナの問題もあってどうなるかとも思ったのですが、むしろ『巣ごもり需要』を取り込めたようで、数字的には良かったと思います」北川「目標数字をクリアしたのはまずは良かった。こういう状況下だからね。でも、会社全般でも『巣ごもり需要』があったおかげで、全般的にコクーン全体の業績は悪くないようだ。しかし、この資料を見ると、次プロセスへのコンバージョン率(WORDS028参照)が下がっているのは多少気になるな。ウェブ訪問数がこれだけ増えているのに、結局有料会員になったのは目標の9%増程度か……」優里「それについては、有料会員になる際には使用開始からのタイムラグもあるので、もう少し慎重にウォッチする必要がありますね」北川「それにしてもこれだけ訪問数が増えたのは、やはり在宅勤務が増えたせいだろうか?」マーケティング担当の大沢武が答えた。大沢「その可能性は高いでしょうね。次の資料でご紹介しますが、広告に反応した顧客もさることながら、検索などで自然流入したUU(WORDS029参照)が多いようです。もちろん、そうした訪問者も同程度にコンバージョンできればいいのですが」北川「そうか。有償化した顧客に何らかのインセンティブをつけるといいのかな」大沢「それもありますが、ランディングページ(★11参照)をもう少し魅力的なものにする方が効果があるような気がします」優里「私も直感的にはその方がいいと思います。今までは広告からの流入を前提にランディングページを作っていましたが、最近はその他の流入が多いです。ここは一度何か試してみる機会かと思っています」北川「……そうか。であれば、素案ができたら相談してくれ。それは別にして、継続率は上がっているようだね」優里「これは地道にコンテンツの統廃合をしてバージョンアップしているので。あと、最近になって会員の交流サイトがかなり活性化してきて、そのおかげで離脱率が減ったという印象があります」北川「それはユーザーの声かな」優里「そうです。まだ一部の声だけですが、交流サイトが魅力的だという意見をかなり交流サイトの中でもアンケートでも目にする機会が増えました。エンタメ性も以前に比べると評価は上がっています」交流サイト設計担当の大川瑞希が発言した。大川「私も同じ意見です。今はまだ定性的な情報しかありませんが、これも何かしらKPIを設定して捕捉していきたいと思います」北川「KPIの候補はどんなものかな?」大川「交流サイトの発言の質を定量化するのは難しいですが、まずはコメント数ですね。あと、インフルエンサー的なユーザーへのヒアリングを行うことも検討しています」北川「うん、その辺はよろしくお願いするよ」優里「あと、アプローチ方法は工夫の必要がありますが、離脱したユーザーの声も拾いたいと思っています。できればデプスインタビュー(★14参照)で本音のところを聞きたいですね」北川「現時点での仮説は?」優里「若い層などは、年間9000円、税込みで9900円といえども負担になっているという声を聞いています。実は30代のユーザーも多いのですが、そうした人はもっと実用性を高めてほしいと感じているのでは、というのが現時点での仮説です」北川「なるほど。それは早めに確認しておきたいな。その分析もよろしくお願いするよ」次に図11についての議論に移った。広告担当の花岡次郎が発言した。花岡「見ていただくとおわかりの通り、全体のCPA(WORDS021参照)は下がっています。メイン媒体である媒体Bと媒体AのCPA改善が効いています。一方で、媒体Cは急激に悪化しました。理由はこれから詳細を検討しますが、媒体C自体が炎上問題で評判が下がったことの影響を受けた可能性はあります。また、新たに試した媒体Dですが、これは有料登録数も低いですし、効果に見合っていないと思います。クリエイティブの問題かもしれませんが……。一応、今月も継続する予定ですが、数字が悪ければ継続せずということでよろしいでしょうか?」北川「まあその線で行こうか。媒体Cは気になるが、今月は様子見だな」優里「個人的には媒体Aと媒体Bにもっとフォーカスして広告を出してもいいと思うけど、花岡さんはどう思う?」花岡「その意見も一理あると思いますが、もう3カ月くらいはいろいろと試してみたいと思います」優里「……わかったわ。ぜひいろいろ工夫してね」花岡「承知しました」北川「自然流入なども含めた全体のCPAはどのくらいになるかな?」優里「そうですね。自然流入といっても検索の効率を上げるためのSEO(WORDS024[KPIの使い方]参照)などのコストもかかっているので、だいたい12500円といったところでしょうか」北川「12500円ということは、当初優里さんが立てた計画にかなり近くなってきたということか」優里「そうですね。ただ、顧客のLTV(WORDS022参照)が予想より低い可能性もあるので、もう少しCPAが下げられないかいろいろと検討をしてみます」北川「うん、それはよろしくお願いするよ。同時に本当にCPAが低くなりそうなのか、向上させるためには何が必要かのアイデアも考えてほしいな。それを次回のミーティングで議論しよう」全員「わかりました」このようなペースで会議は続き、1時間の間に建設的な意見がいくつも出された。ミーティングを終えた北川は感じていた。「このやり方を最初提案されたときは戸惑ったが、明らかに効果的だな。KPIを見ながら議論できるから精度も高いし、的を射た議論もできる。この方法論をぜひ全社に広めたいものだ」

PART2では、各章末に用語解説のコーナーを設けています。[★]印がついている用語について詳しく知りたい方は章末をご参照ください。また、各節末にある「関連KPI」のうち、本書「基本KPI100」として紹介しているものにはリンクを張っています。そちらもご参照ください。

企業にキャッシュが入ってくるパターンは突き詰めると4通りです。①売上げを上げる、②負債(借り入れなど)で調達する、③増資で調達する、④資産を売却する。このうち④はやや例外ですし、②③は①の見込みがあるからこそ銀行や投資家がお金を提供してくれるといえます。つまり、突き詰めれば企業活動を存続させるには、①売上げをしっかり顧客から上げるということが基本となるのです。売上高を順調に上げている企業は、基本的に企業活動も順調な企業といえます。売上げは全社単位、部門単位、製品単位など、さまざまなレベルでチェックします。そして時系列で見た比較や予算に対する実績で見た差異分析などをしっかり行い、PDCAを回すのが企業活動の基本です。PDCAはあらゆるKPIについて当てはめることができますが、経営者が最も意識を向けるのはやはり売上げです。年次や四半期ベースはもちろん、日次、週次、月次など、さまざまな時間軸でこれをチェックするのが一般的です。なお、売上げは売掛金を回収してこそ実現します。支払い能力に疑問がある取引先に売って売上げ目標を達成しても、不良債権となってしまっては意味がありません。ここではある事業や製品の売上げに着目しましょう。目標売上げは、市場環境、競合環境、自社の経営資源といった経営環境をバランスよく考慮して設定します。例えば市場が成長期で自社も人員を増やしている場合、多少競合が増えていたとしても、過去の売上げを参考に〇〇%アップと設定することが多いでしょう。一般的には、事業トップとして達成したい売上げと、現場(営業担当者など)から上がってくる目標売上げを突き合わせ(通常、前者のトップダウンの数字の方が後者のボトムアップで積み上げた数字より最初は大きくなります)、目標売上高をすり合わせていきます。目標売上高の設定に当たっては、CHAPTER1でも触れたように、さまざまな下位のKPIにブレークダウンして見込みを作ることも少なくありません。例えば「新規顧客からの売上げ+既存顧客からの売上げ」、あるいは「延べ顧客数×1回当たり購買額」、「リアル店舗での売上げ+Eコマースでの売上げ」などです。売上げは一人ひとりの営業担当者やマーケティング担当者など、個人レベルに落とし込まれるKPIの中でも最も重視されるものです。売上予算未達の営業担当者などは早期にその原因を突き止め数字を上げるべく、上司からの指導などが行われるのが一般的です。売上高は最も多くの従業員が気にするKPIです。それゆえ時々起こるのは、このKPIに目が行きすぎてしまい、経営陣が望む行動をとらないという結果です。例えば営業担当者は通常は売上げを上げるプレッシャーが強いと、容易に売りやすい商品や売りやすい既存顧客をあてにしてしまいます。これは往々にして利益を下げたり、将来の売上げ見込みを細らせることになります。売上げは重要ではありますが、やはり他のKPIとの適度なバランスによるマネジメントが必要です。関連KPI受注額、売上高成長率、不良債権比率、市場シェア

市場シェアは、定義した市場における自社の存在感を示す数字といえます。市場シェアが特に重要になるのは、それが競争力に結び付く業界においてです。具体的には、規模の経済性やネットワークの経済性が効きやすく、「規模が大きいこと」や「顧客が多いこと」などがコスト競争力や利便性につながる場合、シェアは重要なKPIとなり、それをいかに増やすかということが大事な経営課題となります。市場シェアは順位や、ライバル企業のシェアと合わせて見ることが必要です。例えば、同じシェア約30%といっても、自社もライバルも30%でほぼ拮抗してトップ争いをしているケースと、自社がシェアトップで2位の市場シェアが15%の場合、当然その意味合いは変わってきます。また、平均価格がプレーヤーごとに大きく違う場合は、数量ベースと金額ベースの両方を見ることで市場での地位をより正しく捉えることが必要です。古典的なフレームワークのランチェスターの法則(市場シェアに応じてとるべき戦略は異なると考える)では、市場シェアがおよそ42%を超えると、市場1位の地位は安定したものになるとされます。金額ベースの市場シェアに関しては、市場規模×自社の市場シェア=自社の売上高となりますから、目標とする市場シェアは、目標とする売上高と非常に強い連関を持つことになります。全体の市場規模がある程度想定される場合、目標とする売上高を決めれば、自ずと目標シェアが決まってくるともいえます。一般には売上目標を先に決めることが多いですが、目標シェアを先に決めることもあります。それはシェアが戦略目標上重要な場合です。例えば、特に業界1位の場合、そのことがプロモーションにも使えるため(例:「○○市場トップの定番商品です」といった売り方ができる)、競合との現状の差を勘案したうえで先に目標シェアを決めることもあります。市場シェアは市場の定義次第で変わるので、「自社にとって意味のある業界定義」をしたうえでシェアを見ることが必要です。例えば地域密着型のスーパーであれば、全国シェアよりも、展開している地域におけるシェアの方がより重要といえるでしょう。なお、導入期にあるような市場の場合、正確な市場シェアのデータを取れないというケースもあります。そうした場合には、自社を含め主要プレーヤーを例えば10社程度ピックアップし、彼らの推定売上高から自社の大まかなシェアを推定し、目標を設定するといったやり方をすることもあります。COLUMNあまりに高すぎるシェアはしばしば独占禁止法の対象になることがあります。1980年代までビールのシェアで60%以上を誇っていたキリンビールは、それゆえビールのシェアを高めることにあまり力を注ぎませんでした。結果論ではありますが、それがアサヒビールの「スーパードライ」に付け入るスキを与えたともいえるのです。シェアが高いからといって油断はやはり禁物です。関連KPI売上高、相対シェア[★1]

[★2]顧客内シェアは、市場全体に占める割合ではなく、個々の顧客に占める割合を見ることから、個別の顧客の自社製品に対するロイヤルティを測る指標となります。一般に、顧客内シェアが高いほど、その顧客の自社商品へのロイヤルティが高いことを意味し、企業にとっては好ましい状態といえます。一方で、顧客内シェアの低さは、その顧客に対する「伸びしろ」が大きいともいえます。顧客内シェアは顧客ごとに出る数値ですから、個別の顧客の重要性を勘案してメリハリをつけながら見る必要があります。通常は、その業界の市場シェアの大きな顧客ほど顧客内シェアが高い方が望ましいといえるでしょう。例えば自動車業界が顧客となっているならば、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダにおける自社の顧客内シェアが高い方が好ましいということです。顧客内シェアはBtoCの業界でもアンケートなどによってある程度は推測することはできます。ただし、一人ひとりの顧客について実際にそれをモニタリングし、個々に対応をとることは通常はできません。むしろ、セグメントごとのシェアを意識する方が現実的といえるでしょう。例えば、20代から30代の女性をターゲットにしている商品で、「30代のユーザーの顧客内シェアが60%あるのに対し、20代のユーザーの顧客内シェアは30%しかない」という状況があるのならば、それに応じたマーケティング戦略をとるといったことです。この指標は単独で用いるよりも、市場シェアとあわせて分析する方がより多くの示唆が得られます。例えば、競合と比べて市場シェアが同レベルで、主要顧客(特に先進的ユーザーやオピニオン・リーダー[★3])の顧客内シェアが低いときには、競争力低下の危険信号として捉えるなどです。目標を設定する際も、そうした顧客の重要性を鑑みて個々に数値を設定します(重要な企業だけこの指標を設定することもあります)。ただし、通常、顧客内シェアをいきなり設定することはあまりなく、顧客別の売上げ目標と同時並行的に考えていくことが多いでしょう。「顧客A社の想定購買額は昨年並みのようだから、今年は顧客内シェアを40%から50%に上げて売上げ25%アップを図ろう」といったイメージです。なお、顧客別の売上げ目標は往々にして「対前年○○%アップ」という方針で立てられることもありますが、それだけで目標を設定するのは賢明ではありません。年によって購買予算額が変わることも多いため、予め顧客の大まかな予算をしっかり把握することが営業活動においては重要になってきます。この指標の難しさは、個々の顧客の総購買額を知ることが難しいということです。大きな設備投資や正社員の採用投資などは本社で把握していることが多いですが、各部署レベルで発注するタイプの商材(例:ITコンサルティング)などでは、顧客企業の中でも誰も総購買額を知らないというケースもあります。そうした場合はフェルミ推定[★4]などを用いて大まかな数字を把握するということもあります。競合を正しく設定することも必要です。観葉植物レンタル業者であれば、同業だけを見て顧客内シェアを考えるよりも、「オフィス環境投資予算」の中でのシェアを見る方が有効かもしれません。関連KPI市場シェア、顧客満足度、NPS、売上高

認知率はさらに再認率(助成想起率)と再生率(純粋想起率)に分けることができます。再認率は「○○という銘柄を知っていますか」と聞いたり、商品やその写真を見せたりするのに対し、再生率では「ビールといえば、何の銘柄を思い出しますか」というように商品情報を提示せずに回答してもらいます。なお、アンケートでこれらを同時に調査するときには、当然、再生率を聞く質問を先にします。いずれも、高い方が自社製品がよく知られているということであり、好ましい状態といえます。これらの指標が特に重視されるのは新商品発売時です。特にマスを対象とするBtoCの商材では、個別商品のブランドの認知度を時系列で注意深く見ます。また、すでに市場に流通している商品についても、その商品の競争力が維持されているかどうかを調べるために適宜認知率の調査がされます。再認率と再生率はいずれも値が高い方がよいのですが、特に再生率が高ければ、多くの顧客が商品の存在や名称を正しく認識していることになるので、企業にとって好ましい状態といえます。新製品導入の場合、認知率の設定は、通常、過去の似たケースを参考に行います。例えばお菓子メーカーにおいて、過去の新製品発売時に「市場導入から3カ月時点での再認率50%」が平均だとしたら、それをまずは参考にするということです。そのうえで、その製品の重要度や、全くの新製品なのか派生商品なのかを勘案して目標値を絞り込んでいきます。通常は時間軸も意識したうえで、「1カ月後は○○%、3カ月後は△△%、半年後は□□%……」のように設定します。また、認知率は勝手に上がるものではなく、上げるためには相応のマーケティング支出を必要とします。認知率が増えたとしても、それが売上げにつながるとは限りませんので、それも意識したうえで費用対効果の高いと思われる数値を設定していきます。それゆえ、このKPIは「実際に売上げにつながっているか」も意識しながら、適宜モニタリングしてPDCAをスピーディに回すことが必要です。その検討に当たっては、単に認知率の高さだけを見るのではなく、認知されている内容や購入意向、さらには好感度などもあわせて見ていくことが大切です。既存製品の認知率については、まずは現状維持が基本ですが、プロダクトライフサイクル[★5]の変化や競合の状況なども勘案したうえで、あえて追加投資はせず、下がることも許容するといった意思決定をすることもあります。認知率は当然、ターゲットとする層における数値が最も重要です。もちろん現実にはターゲット以外の顧客が当該の製品を買うこともありますが、それはやはり追加的なものなので、まずはターゲット顧客層の認知率向上を促す施策をとるのがセオリーです。また、派生商品やコーポレイトブランド名を冠している商品の認知率は、元の製品や企業の認知率と混同されることがあります。例えば仮にキリンビバレッジが「プレミアム生茶」という新製品を出した場合、元の「生茶」と混同して答える人は一定比率います。それらが正しく伝わっているかを確認することも大切です。関連KPI好感度、売上高広告費率

当然ですが、どのような製品・サービスであっても、「初めて利用した」という瞬間があるものです。まずはその製品・サービスに触れてその良さを知ってもらい、リピートしてもらうことはマーケティングの基本ともいえるでしょう。使用経験率はその「触れた顧客」の比率を意味するものです。使用経験率は、顧客の態度変容プロセスの1つであるAMTULモデル[★6]でいえば3つ目の「T」に当たるものです。単に認知するという段階からより先に進んだステージにあるといえます。この指標は一般的にはアンケートで測定されます。商材の特性にもよるので何%以上なら高いといっためどはありませんが、コンビニエンスストアに置かれているような安価な定番商品は高くなる傾向があります。例えば「コカ・コーラ」やカルビーの「ポテトチップス」などは90%以上の高い使用経験率があるとされます。当然ながら、高価な製品や新商品はそれに比べると低くなります。使用経験率は絶対的な数値も大事ですが、ライバル商品と比較した高低も非常に重要です。使用経験率は、それ単独で考えるものではなく、認知率や購買意向とあわせて調査されたり議論されることが多い数字です。例えば同じ使用経験率30%という数字がアンケートで出ていても、認知率が80%の場合の使用経験率30%と、認知率が50%の場合の使用経験率30%とでは意味合いが変わってきます。購入意向とのバランスも大事です。同じ使用経験率30%でも、その中における購入意向が90%と10%ではこれも大きく意味合いが違ってきます。前者であれば製品の競争力が非常に高いと推定されますので、認知率や使用経験率を高く設定し、そのための努力を行うことは理に適っています。一方、後者であれば、製品の魅力度がないことが推定されますので、認知率や使用経験率を上げることに注力しても効果は限定されます。その前に製品の魅力度や競争力を上げることにフォーカスすべきでしょう。認知率や使用経験率はライバル製品との比較も大事な指標です。使用経験率がライバル製品と同様であるにもかかわらず、シェアが半分であれば、何かしらの原因があることが推測されます。その意味でも多面的な比較検討が必要な指標といえるでしょう。使用経験率は必ずしも購買経験率と一致しない点には注意が必要です。これは購買者とユーザーが異なる場合に生じます。BtoBのサービス(例:会社支給のスマートフォンなど)はその典型です。親が子どもに買い与える商品や主婦/主夫が家族のために買う商品もその傾向が出ます。より厳密を期すのであれば、使用経験だけではなく、購入経験もあわせて調査検討する方がいいでしょう。関連KPI認知率、使用意向、購買経験率

例えばBtoBのあるビジネスにおいて、潜在顧客数が800社あるのに対し、アプローチできている数が480社だとしたら市場カバレッジは60%ということになります。仮にその会社の製品・サービスに競争力があったとしても、残りの40%の市場は「戦わずして失っている(あるいは負けている)」という状況になっていると考えられます。この数字は次項で説明する配架率と近い意味を持ちます。一般的にはこの指標は高い方がいいと考えられますが、この数字を上げようとするとマーケティング担当者や営業担当者などの増員が必要になることが多いため、100%でなくてはだめだというものではありません。自社の固定費を増やさずに市場カバレッジを上げる方法に、流通チャネル(卸や小売りなどの外部販売業者)の活用があります。ただし、チャネルは通常自社のコントロールが利きにくいことが多く、また(テリトリーなどの契約次第ですが)、往々にしてチャネル同士で顧客のとり合いをしてしまうことがあります。そこで自社商品の値下げ合戦でもされたら目も当てられません。チャネルの活用に当たってはそうした要素も勘案します。この数字は主にマーケティング担当のマネジャーや営業担当のマネジャーが気にするものです。必ずしも多くの会社で明示的に設定されるわけでもありませんが、企業によってはこの数字をモニタリングし、マーケティングの施策などに活かしていきます。特に成長期にある場合は、潜在顧客数がどんどん増え、カバレッジが追い付かないというケースが少なくありません。一方で売上げは伸びているので安心しがちです。市場シェアとあわせてこの数字をモニタリングしておくことが本来望まれます。なお、先述したように、自社の営業担当者が直接訪問しているケースと、半分はチャネルに任せているケースでは、同じ市場カバレッジ80%でもその意味合いは異なってきます。商材の特性にもよりますが、直接的なカバレッジと間接的なカバレッジを分けて設定するというのも1つの手です。この指標の設定で難しいのは、潜在顧客の見積もりです。例えば「従業員100人以下の中堅企業」であればまだしも潜在顧客数の推定は容易ですが、「英語が苦手だけどそれを必要としている社長がいる中小企業」となるとその数字を明確にすることは容易ではありません。こうした場合には、過去の営業での感触なども勘案しながらフェルミ推定で潜在顧客数を設定することもあります。この指標は、数字の高低のみならずその質も重要です。例えば年に1度だけあいさつ程度のメールを送っているのと、四半期に1回程度足しげく通っているのとでは、カバレッジの質が違ってきます。法人顧客の場合は担当者が代わると急に疎遠になるというケースもあります。そうした内容の差にも目配せし、「あるべきカバーの仕方」もイメージしたうえで設定・運用する必要があります。COLUMNカバレッジを、「競合との勝率」とあわせて測定し、アクションに活かすこともあります。例えば自社のカバレッジが80%で、そのうち無競争が30%、競争状態が50%とします。話を単純化するために、競合は1社とし、カバレッジがそのままシェアに反映されるものとしましょう。このとき、現在、自社のシェアが50%だとすると、競合は無競争でシェアの20%を取り、さらに競争した50%の中で30%を取っていることになります。つまり、シェアは同じ50%で拮抗していても、「勝負になったときの勝率」は低く、相手がカバレッジを増してきた場合、自社がシェアを失う可能性が高いことが示唆されます。関連KPI配架率、カニバリゼーション度合い

最近はEコマースの影響もあって、必ずしも店頭に並んでいなくても商品を買えるルートが増えました。しかしそれでも特に安価な消費財、特に最寄品といわれる「身近な店で買う。そこに置いてなければ他社の商品で間に合わせることも多い」というタイプの製品については、確実に店頭に並べてもらうことが大事になります。この指標は顧客に買ってもらうための準備ができているかを示す指標ともいえます。この数字は基本的に高い方が顧客の購買につながりやすくなります。「棚落ち」している商品を顧客は通常買わないからです。この数字が高い状態は、商品力(顧客の強い支持がある)があることを示すとともに、チャネルに対しての営業をしっかり行っていることを示します。例えばビールを買える小売店(コンビニエンスストアや量販店など)で、ビールのナンバー1商品であるアサヒビールの「スーパードライ」を置いていない店はまずありません(瞬間的な品切れは除く)。それを置かないことは顧客の不満につながりますし、小売店にとっても何のメリットもないからです。日本茶の「お~いお茶」(伊藤園)なども同様といえます。この数字はマーケティング担当者やチャネル営業の担当者が特に意識します。特に配架率が重視されるシーンに新製品の発売時があります。せっかく広告をどんどん流して認知度向上に努めているのに、店頭に置かれていないのでは大きな機会損失につながるからです。小売店としても、通常、広告が多く流れている期間はその商品を置きたがりますから、チャネルのニーズを叶えるうえでもしっかり配架できるよう、生産や物流体制を準備しておく必要があります。新商品の配架率は、過去の製品の数字を参考に、その商品の戦略的位置づけなども勘案しながら設定します。最終的な理想は100%ですが、商品が売れなかった場合はチャネルに迷惑をかけることにもつながりかねないので、市場導入時から高速でPDCAを回しながら徐々に高めていくケースが多いです。なお、メーカーサイドで準備をしても、卸が必ずしも思った通りに動いてくれない場合があるので注意が必要です(通常、安価な最寄品は卸を通しているのが一般的です)。したがって小売り(特にチェーン展開している大手)への働きかけもさることながら、チャネルに対しても適切に情報を共有し、協力してもらえるよう働きかけることが大切になります。この指標も、数字の高低だけではなく質を見る必要があります。店頭にわかりやすく置かれているのと、目立ちにくい場所に置かれているのとでは意味が違いますし、申し訳程度に1個だけ置かれているのも「配架されている」とは堂々といえないでしょう。メーカーが望むやり方で配架されているかを現場も見ながら確認することが必要です。COLUMN配架率は高くても商品の魅力度が小さい場合、委託販売を採用しているケースなどでは、売れ残った製品が戻ってくるということになります。このとき、単に戻ってくるだけならいいのですが、なまじ店頭に並べてしまったがゆえに商品が物理的に劣化してしまうことがあります。書籍であれば、文字通り手垢がついたりカバーが破損するなどです。こうなると、また別の売り場に出すのも難しくなってしまいます。「どのくらい売れそうか」を極力正しく見積もり、実力以上の配架をしないことも時には必要です。関連KPI市場カバレッジ

企業にとって売上げを上げる手っ取り早い方法は、新しい顧客を苦労して獲得することよりも、昨年も買ってもらった顧客に今年もリピートで買ってもらうことです。一般に顧客満足度と強く連動する数字であり、この数字が高いことは顧客が満足していることを示すことが多いものです。そのため、営業やマーケティング部門のみならず、製品・サービスを提供する開発部門やオペレーション部門も気にする数字です。このKPIは企業レベル、事業部レベル、営業担当者レベルなど、さまざまなレベルで設定できます。既存顧客維持率は、商材の特性やライバルの新商品が出てくるスピードなどによって変わるため、絶対的に「この数字だったら高い」「この数字だったら低い」という相場観はあまりありません。そのため、比較対象となるのは社内(あるいは業界他社)の他事業の数字や、前年までの数字との比較です。通常は顧客満足度やNPS(WORDS009)とあわせて議論されることの多いKPIです。このKPIは通常、前年実績をベースに、経営状況にあわせて設定するのが一般的です。例えば、市場が成熟期に入ってきた場合、新規顧客の獲得は難易度が上がります。そこで、全体の売上げ目標も考慮したうえで、昨年の法人顧客の維持率が80%だったなら、今年は3ポイント積み増して83%を目指そう、などとなります。既存顧客維持率は先述したように顧客満足度と関係性の高いKPIですが、愚直な営業(特にBtoBの場合)や広告(特にBtoC)などの活動にももちろん左右されます。目標数値次第ですが、顧客満足度を上げるのか、営業担当者の訪問回数を増やすのか、広告を増すのかなど、どの活動に力を入れれば目標を効率的に達成できるかを総合的に考える必要があります。必然的に、顧客訪問回数や広告の到達率といったKPIともあわせて用い、何が効くかを正しく理解することが必要です。なお、このKPIを営業担当者個人レベルで必要以上に強調してしまうと、ほんの少額でもいいので取引さえあればいいという方向に営業担当者を動機づけることがあります。1億円の売上げの翌年の100万円の取引に意味があるのかといえば疑問でしょう。それゆえ、単に維持率のみならず、既存顧客からの売上増加率などもあわせて見るとより正確に実態を把握できますし(例:既存顧客維持率は75%、既存顧客からの売上高は対前年90%など)、営業担当者を正しい方向に動機づけることができます。BtoBの場合、顧客名が固有名詞レベルで捕捉できるため、このKPIは比較的管理しやすくなります。一方、BtoCの場合はアンケートに頼らざるを得ないことが多く、多少の誤差が生じることもあります。近年拡大しているネットビジネスでは、IDレベルでかなり精緻なリピート状況を把握することができるので、リコメンドなどのプロモーションもより効果的に打てるのが特徴です。関連KPI顧客満足度、NPS、既存顧客からの売上高増加率

NPSはコンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーによって開発された指標であり、顧客のロイヤルティを如実に示す指標とされます。NPSの算定に当たっては、まず「自社(あるいは自社の特定の製品・サービス)をあなたの親友にどのくらい勧めたいと思いますか?0点から10点まででお答えください」という質問をして回答を得ます。そのうえで、その回答が9点か10点なら「プラス1」、7点か8点なら「ゼロ」、6点以下なら「マイナス1」として置き換え、点数化し、平均を求めます。NPSの最高点はプラス1、最低点はマイナス1となります。NPSは、通常の1点から5点までの満足度調査の数字よりも、顧客のリピート意向や口コミ効果と強く相関することが知られています。これらは結局企業の業績にも相関しますので、NPSは企業業績とも正の相関があります。前記の例からもわかるように、NPSにおいては、6点や5点といった中間的な数字では失格で、10点や9点といったポジティブな評価がないと顧客ロイヤルティはつながらないと考えます。一般にはNPSがプラスならまずまず合格とされ、0・3以上あればかなり優秀な成績とされます。事業責任者などがこの数字を用いることが多いです。もともとアメリカ生まれの指標であるため、日本企業に比べると、外資系の企業でよく用いられています。通常、まず目標値となるのはNPSでプラスを維持することです。社内で過去の情報があるのであれば、それも勘案して微調整することもあります。例えば非常に顧客からの評判の高い製品のNPSが現状0・4で、導入当初は0・2だったとすれば、「今回はまだコンセプトが緩いベータ版だから、まずはマイナス0・1から0程度を維持し、改良して0・2から0・3にもっていこう」といった具合です。なお、NPSの質問に対する答えは国民性によって異なることが知られています。もともとこの指標が開発されたアメリカでは、良いと思えば普通に10点や9点といった答えが返ってきます。一方、日本人の場合、満足していても8点程度の数字を答える人が少なくありません(イタリア人などはさらにこの傾向が強く、「悪い」で5点、「良い」で7点と答える人が多いとされます)。8点という答えはNPSではゼロと換算されますから、これでは真の顧客ロイヤルティが測れません。そこで日本では、もともとのやり方を少し変え、質問に対する点数の読み替えを本来のものとは変えるなどの工夫が必要となります。グロービスでも近年出したあるプロダクトは、そうした調整を行っています。また、「個人的には満足したが、紹介するような友人・知人がいない」ということで数字を低く答える人が時折います。それは本来知りたいNPSをゆがめることになるので、そうした場合は点数をつけないように誘導するなどの工夫も必要です。NPSの別の注意点として、「高い点数をつけてもらうように誘導する」という操作がしばしば行われるということがあります。消費財のアンケートの場合はそうでもないのですが、BtoBビジネスの場合、NPSは営業担当者やプロジェクト担当者ごとに測定されることが少なくありません。そうすると、例えば営業担当者が「NPSの調査が来たら、9点か10点と答えてください。そうしないと私の立場がないんです」などと顧客にお願いするのです。顧客としても、積極的に切り替えるほど不満がないのであれば、そのお願いを断固断るなどといったことをしないのです。関連KPI顧客満足度、リピート率、紹介件数

ここではまず、1回の購買当たりに支払う金額としての客単価について考えましょう。客単価はあらゆるビジネスで重要な指標ですが、供給キャパシティに限りがあり、顧客数の増加がある程度以上になってしまうと見込めなくなる立地型のビジネス(飲食店や小売りなど)で特に重視される指標です。売上げは突き詰めれば「顧客数×客単価」ですから、顧客数に天井があるならば、売上げを上げるためには客単価を上げざるを得ないのです。この数字の高い店は、魅力的な品ぞろえがあったり、つい長居して追加購入してしまう仕組みができているといえます。このKPIは経年変化や業界他者との比較が重要になります。居酒屋の例であれば、似たようなメニューの近隣のライバル店よりも自社の客単価が劣っているのであれば、価格設定に問題があるか、あるいはそもそも商品力がないなどの理由が考えられます。時系列で客単価が下がることも通常は好ましくない兆候です。正しく価値を訴求するなどのアクションが必要となります。客単価はさらに、「顧客当たりのアイテム数×アイテム平均価格」に分けて見ることもできます。顧客のその日の予算が決まっているなら何をしたところで消費金額は変わらないかもしれませんが、寿司屋などで「胃袋のキャパシティ」の方が重要ならば、アイテム当たりの単価を上げることで客単価を上げることが可能になるかもしれません。客単価は通常、自社の商品ラインナップに大きな変化がない場合、前年までの数字をベースに設定します。基本は現状維持となります。なおこれはインフレ率の低い日本国内のケースでの話であり、インフレ率が高い海外市場ではそれも織り込んで客単価をどんどん高くしていく場合もあります。一方で、何か大きな改善が必要な場合には、それまでより高めに設定し、そのための施策を考えることがあります。例えば日本マクドナルドは一時期食品偽装の問題で業績が低迷しました。その際同社は、「安かろう悪かろう」のイメージを払拭するために、あえて目標の客単価を高くし、高級バーガーを販売するようにしたのです。また、夜など少し多めに食べたい時間帯向けの、ボリュームのある高価なハンバーガーセットも開発しました。それらが奏功し、同社の業績はV字回復したのです。新規出店のようなそれまでの実績がないケースでは、類似の顧客層と思われる店舗を参考にします。例えば埼玉県の大宮駅そばに出店するのであれば、東京都の赤坂の客単価ではなく、浦和駅の客単価などを参考にするといいでしょう。客単価は購買頻度とあわせて見ることも必要です。それが一定期間当たりの客単価です。1回当たりの客単価が増えていても、購買回数が減っていたのでは意味がないのです。これを意識したのがRFM分析です。これは既存顧客について、Recency(最近の購入日)、Frequency(来店頻度)、Monetary(1回当たりの購入金額)を見ることで、顧客の状況にあわせた打ち手を考えるものです。関連KPI購買頻度、顧客当たりのアイテム数、アイテム平均価格

坪当たり売上高は面積効率を重視するリアル店舗の小売業(特にコンビニエンスストア)や飲食店などで重視される指標です。これらの業界では物理的なスペース以上に顧客を押し込めたり製品を置くことはできませんから、限りのあるスペースの中でしっかり売上げを上げることが求められるのです。この数字を見る場合は、年当たりか月当たりかを間違えないように注意します。業態にもよりますが、飲食店の場合、15万円/坪・月が概ね合格点のラインとされます。粗利率が低い小売業ではもう少し高くなりますが、特に高いのはコンビニエンスストアで、50万円/坪・月を超える店も少なくありません。かつて小売りでは百貨店が坪当たり売上高が最も高かったのですが、最近は低迷しています。なおこの数字は売り場面積当たりのものなので、バックヤードは除いた面積を元にしています。バックヤードのスペースは必ず必要なので、新規出店に当たってはそれも当然意識する必要があります。通常、特定の店舗の面積はそう変わることはありませんので、この指標は新規に出店をする際や、新しい業態のビジネスを展開する際に特に入念に検討、モニタリングされます。また、新規出店に当たっては、同時並行的にその店舗の目標売上げや店舗面積も検討されるのが一般的です。コンビニエンスストアなどは各社とも店舗数が多く、豊富なデータがありますので、かなり精度の高い予測ができます。また知名度も高くビジネスの立ち上がりが速いため、目標も最初から高めに設定される傾向があります。難しいのは新業態の店舗を出すときです。通常、こうした場合は同業他社のデータを活用します。高級スーパーを新規に出すのであれば成城石井のデータを利用するなどです。ただし、当然各社の訴求ポイントは異なりますから、その企業の戦略や強みにあわせた数字を設定することが必要になります。実際にビジネスを始めた後は、顧客の入り具合や売上げの動向などをベースに目標値をどんどん変えていきます。例えば通路が必要以上に広いなどの状況が観察されれば、レイアウトを変えたりします。また、通常は商材ごとの売上げも捕捉できますので、坪当たり売上げの低い商品ラインの取り扱いを変える(例:雑誌コーナーをやめる)などといった施策を打つことで、さらに高い坪当たり売上高を設定するということもあります。一般的にはこの指標は高い方がいいのですが、高ければ高いほどいいというわけでもありません。ひょっとすると顧客は狭いスペースに不満を感じており、それが長期的に見ると顧客の不満足につながる可能性もあるからです。また、売上げも重要ですが、利益率の低いものばかりが売れているのも問題ですので、同時に坪当たりの粗利益や、坪当たりの在庫額などもあわせて捕捉することが必要です。関連KPI店舗面積、坪当たりの粗利益、坪当たりの在庫額

この指標の数値が高ければ、少ない営業担当者で高い売上高を上げていることを意味するので、生産性が高いといえます。具体的には、営業担当者個々の能力が高い、営業担当者のサポート体制が整備されている、あるいは、需要を的確に予測してそれにあわせて営業担当者の配置を行っている、といった場合などにこの数値は高くなります。商材や業態にもよりますが、通常、粗利率の低い流通業(特に卸売業)ではこの数字は高くなり、粗利率の高いサービス業などではこの数字は低くなります。製造業はその中間になります。それゆえ、この数字は営業担当者1人当たりの粗利額とあわせて見ることの多い数字でもあります。また、全従業員に占める営業担当者の比率が低い場合(営業担当者以外の従業員数が多い場合)、営業担当者はその他の従業員の人件費なども稼ぐ必要がありますので、この数字を高く維持する必要性が増します。この数字は、売上げ目標や営業担当者数、会社の1人当たり人件費などとあわせて検討されることの多い数字です。例えば平均粗利率が10%、営業担当者の人数が全従業員の4分の1、労働分配率(付加価値粗利に占める人件費の比率)を50%とすると、仮に営業担当者1人の売上高が5億円の場合、従業員1人当たりの人件費は、5億円×10%4×50%=625万円となります。この会社の人件費(社会保障費や福利厚生費なども含むので、実際の給与はもうちょっと少なくなります)が1人当たり625万円で適切と考えるのであれば、この目標数値は概ね適正であるといえます。もしこの数字では人材採用の競争上足りない、あるいは先行投資のための資金を賄えないと考えるのであれば、このKPIの目標値を上げ、1人当たりの粗利額を上げることが必要となります。このKPIは時々、ライバル企業などのそれも意識することがあります。ほぼ同じ商材を扱っているライバルよりも明らかにこの数字が低い場合は当然見直しがされます。ただし、ライバル企業の正確な数字を取るのは普通は難しいので、参考情報程度にとどめている企業も少なくありません。営業担当者1人当たりの売上高は、会社や部署としては平均値として設定されますが、ほとんどの企業では一人ひとり数字が割り当てられ、そのレベルでPDCAサイクルが回されます。成績の振るわない営業担当者はしっかり上司が指導することが必要ですし、逆に成績の良い営業担当者がいれば、そのやり方を模範とし、組織内に横展開していくことが求められます。この指標は時系列で比較したり部署間で比較したりすることもあります。当然、同じ基準での比較が望ましいのですが、往々にして、「誰までを営業担当者とみなすか」という問題が生じることがあります。例えば営業に同行するテクニカルエンジニアが仮に50%の時間をそれに使っているならば、個人の目標数字は持たないまでも、部署としては半分、営業担当者数に含める方が適切かもしれないのです。関連KPI営業担当者1人当たり粗利額、従業員1人当たり人件

どのようなビジネスであれ、既存顧客との付き合いだけで成長できる企業はありません。常に次の成長の原動力となる新規顧客の開拓は必要です。それゆえ多くの企業では、売上げや総顧客数のみを見るのではなく、この指標も同時にウォッチするのです。それゆえこの数字はその企業の成長見込みを表す数字ともいえます。この数字は特にBtoBビジネスやネットビジネスといった、固有名詞(あるいは固有ID)での追跡が容易なビジネスで意識され、かつ重視される数値です。この数字が既存顧客数に比べても十分に多いことは、将来的に売上げが上がる可能性が高いことを示します。通常は1年単位で見ることの多い数字ですが(特に大型取引の多いBtoBビジネス)、ネットビジネスではより短い時間軸で見てPDCAを回すことも多いです。なお、この数字をカウントする際には、何をもって新規顧客とみなすのかの線引きを決めておくことが必要です。例えばすでに親会社と付き合いがある状態で、最近分社化した子会社と取引を始めたときにそれを新規顧客とみなすか、既存顧客深耕の一環とみなすかということです。あるいは大学を顧客とする理化学機器メーカーならば、大学単位ではなく、購買の意思決定を行う研究室単位で新規か否かを判断する方が適切かもしれません。この数字は特に事業リーダーや営業のマネジャーが意識する数字です。また、実務的には営業担当者個々人にも割り当てられることが多いです。先述したように、どれだけ売上げ全体が好調でも、新規顧客の開拓ができていなければ中期的な売上げ停滞を招きますから、営業がしっかりしている企業では必ず営業担当者に売上げ目標だけではなく、新規顧客開拓数もKPIとして設定しています。新規顧客開拓は通常、既存顧客深耕よりも難しいですから、この目標を設定することは営業担当者のスキル向上にもつながります。それゆえ、一律のルールで新規顧客数を割り振るのではなく、営業経験やスキルの差などを勘案することも多いです。新規顧客の目標設定に当たっては、事業のライフサイクルや既存顧客の平均取引期間なども勘案されます。新規事業の場合、当然、新規顧客数の目標は高くなります。取引が何十年にもわたって続くようなビジネスであれば、既存顧客数に対してそれほど新規顧客数も多くなくてもいいですが、顧客が一定期間で「卒業」してしまうようなビジネス(例:スタートアップ企業に特化した人材紹介ビジネス)では、常に高いレベルの新規顧客獲得が欠かせません。なお、特にBtoBビジネスでは新規顧客との取引が急に生じることは少ないので、後述する問合せ数やMQL(MarketingQualifiedLead)数、SQL(SalesQualifiedLead)数、RFP(RequestforProposal)数なども踏まえたうえでこの目標を設定することも大切です。新規顧客の口座を「こじ開ける」ことは商売の第一歩ではありますが、単に安価な製品・サービスを売ってそれ以上の深耕が図れないようでは、せっかくの新規顧客も有効活用できていないといえます。多くの企業では「ドアノッカー」と呼ばれる、比較的導入しやすい安価な製品・サービスを持っているものですが、そればかりを売って強引に目標を達成しようとする営業担当者には適切な指導を行うことが必要です。関連KPIMQL数、SQL数、RFP数

この数字は比較的高額なBtoCビジネスにも援用できますが、特にBtoBビジネスにおいて重視されます。BtoBビジネスでは、もちろんコールドコール(これまで接点のなかった新規の見込み顧客に電話やメール、飛び込みで営業をすること)や紹介による「こちらからダイレクトに働きかける初期接触」もありますが、業界誌への広告やダイレクトメール、セミナーなどに反応した見込み顧客からの問合せが初期接触というケースも多いです。この数字が多いことは、仮に初回購入までの遷移確率が同じとすれば、当然、新規顧客の増加にそのままつながることになります。数字そのものの意味は非常に単純ですが、何をもって問合せ数と数えるかについては、企業によって多少ばらつきがあります。電話やメールの件数そのものをカウントすることもあれば、資料送付、説明会やセミナーへの参加などに結び付いた問合せのみをカウントするケースもあります。時系列で比較することも多い数字なので、その時々の定義はしっかり押さえておくことが必要です。この指標を気にするのは主にマーケティング担当者です。日本では事業部内でマーケティングと営業を切り離している企業が多いですが、問合せ数やMQL数(WORDS015[概要]参照)はマーケティングの管轄、そこから先のプロセスになるSQL数(WORDS015参照)やRFP数は営業の管轄とすることが多いようですこの指標の目標設定は、一般的には「問合せ→MQL→SQL→RFP→成約(受注)」といったファネルを想定し、成約件数やRFP数から過去の実績などを逆算し、設定することが多いです。通常、売上げに結び付く成約数は対前年増で設定されることが多いので、この数字もそれにスライドさせて設定することが多いです。右記ファネルの次プロセスへの遷移率(コンバージョン率)が上がれば問合せ数は同じでもいいという考え方もありますが、この数字(特にメールや電話での問合せ数)は多すぎて困るということは一般にはないので、あえて減らすということはあまりしません。競争状況が激しくなったり、ライフサイクルが進むと、成約に至る比率を低く見て、むしろこちらの数字を高めに設定することもあります。問合せ件数はチャネル別に分類することも多い指標です。例えば電話での問合せの方がメールのそれよりも成約に至る可能性が高いことが最初からわかっているのであれば、そうした分類は大いに意味があるといえるでしょう。また、何を見て問合せしてきたのかという情報を確認することもマーケティングの効率を上げるうえで重要です。COLUMN製品やサービスのタイプ、あるいは顧客のタイプにもよりますが、せっかく広告を打ったりホームページに誘導しても、「どう問合せしていいのかがわかりにくい」というケースがしばしばあります。よくあるのは、電話で問合せしたいのに、電話番号がなくメールでしか問合せできないというケースです。それで問合せをやめてしまうというケースもあります。自社として業務効率を上げたいのはやまやまではありますが、顧客の立場に立って、問合せしやすい状態を作ることも大切です。関連KPI訪問数、MQL数、SQL数、RFP数、新規顧客数

一般的には、この数字が多いほど新しい顧客を獲得できる機会が多いことを示します。なお、SQLはその直前のプロセスであるMQL(MarketingQualifiedLead)とセットで考えるのが一般的です。MQLは資料送付(近年ではホームページからの資料ダウンロードなども多い)、あるいは説明会への参加などを通じてマーケティング担当がデータベース上に登録し(その際に名寄せも行います)、さらにメールや電話などを通じてナーチャリング(見込み客を顧客に近づけていくこと)して、営業に「受け渡し可能」にした状態を指します。SQLはさらにそこから絞り込まれた確度の高い見込み顧客を指します。企業によってはMQLとSQLをそれほど明示的に分けず、単にリード(見込み顧客)として扱い、確度などによって区分することもあります。CHAPTER2のCASE1の図5も、リード数を用いた例です。なお、近年はSFA(セールスフォースオートメーション)に代表されるさまざまな営業支援企業がありますが、企業によってMQLやSQLの定義は多少異なりますので、彼らと会話する際には注意が必要です。この数字も一般的には多い方が望ましいといえます。ただし、どのくらいの確度以上の見込み顧客をSQLとみなすかは企業によって多少異なります。仮に1%でも可能性があればSQLとみなすということにすればこの数字は増えますが、営業の効率が落ちるため、営業担当者の時間という貴重な経営資源を無駄遣いしてしまうことになりかねません。一方で、50%の確度がないと本格営業しないというのでは売上げは伸びないでしょう(よほど引き合いが多く、供給能力の方が追い付かないというケースは別ですが)。営業部隊としては、過去の経験値などをフル活用して費用対効果の高いSQLの絞り込み、あるいはランク付けをして資源配分を考えることになります。なお、SQLという用語は、新規顧客のみに用いる場合もあれば、新規の「案件」(例:既存顧客の別事業部からの別テーマに関する相談など)すべてに用いるケースもあるので、経年変化を見る際にはそれも正しく確認しておく必要があります。この数字は特にマーケティング担当者や営業リーダーが意識する数字です。多くの企業ではマーケティング(企業によってはセールスディベロップメントなどの名称のこともあります)から受けたMQLというパスを訪問などによってSQLに遷移させたうえで(分担は企業によって異なります)、本格的に営業担当者に分配します。この数字も目標設定の際は、目標とする売上げや成約件数などから逆算して設定するケースが多いです。また、確度ごとにSQLを色分けしておくと、より効果的な営業プロセスのマネジメントが可能になります。MQLやSQLはマーケティングと営業の連携(コミュニケーションや意識合わせなど)が非常に大事になるKPIです。マーケティングがMQLだと思って渡した案件がSQLになる可能性がゼロでは困りますし、逆に明らかにSQLになりうる案件をマーケティングがふるい落とすようでも困ります。例えば大企業の子会社で本来横展開などのポテンシャルがあるのに、「無名で従業員数20人程度だから先のプロセスに進めるのは止めよう」などと判断しては困るわけです。関連KPI問合せ数、MQL数、リード数、RFP数、新規顧客数

BtoBビジネスでも必ずしも企画書を提出しなくてもいいビジネスはあります。一方で、RFPはIT業界やコンサルティング業界では非常に重要な意味を持ちます。企画書の提案を要望されたということは、少なくとも自社の製品・サービスに一定以上の関心があり、その出来不出来によってコンペに臨んだり、社内稟議に回されることも多いからです。グロービスの企業研修事業でもRFPは重要なKPIとなっています。RFPは新規顧客についても既存顧客についても用いる指標です。一般にはこの数が多いほど、最終的な受注に至る件数も増すことが多いです。ただし、企業によっては実質的に発注先が決まっているにもかかわらず、体裁的に相見積もりをとる必要がある、あるいはコンペの形にしないとまずいなどの理由から、発注意図がないにもかかわらずRFPを出すこともあります。いわゆる「当て馬」です。売り手がそれを見抜くのは必ずしも容易ではないですが、この段階でもやはり単にRFPの数だけを見るのではなく、「確度」を意識し、トータルとして受注予測をする必要があります。RFPの数は営業担当者はもちろん、供給側(製造業であれば工場、コンサルティングファームであればコンサルタント)が気にする数字でもあります。なぜなら、営業活動がこの段階まで来るとデリバリー(納品、実施)が近くなりますから、供給側としてもキャパシティ以上の受注につながるRFPをとられても困るのです。それゆえ、年間を通してのRFPは通常は多い方が望ましいのですが、短期間については過度なRFP数の増加は困るという事態が生じるのです。そこで通常は営業サイドと供給サイドが短期間における供給力も勘案し、案件数を調整したりします。例えば顧客としては8月にはサービスのデリバリーを開始してほしい場合でも、彼らにお願いして9月あるいは10月からのデリバリーに変えてもらうなどです。社内の意思疎通のみならず、顧客との巧みなリレーション構築などが必要とされる場面です。なお、営業担当者個人別のRFP数には別の意味合いもあります。それは提案能力の強化です。提案書には、「なぜあなたの会社は弊社を選ぶべきなのか」ということを過不足なくロジカルに書くことが望まれます。これは顧客の視点に立つという営業の基本や、ビジネスに不可欠な論理的思考力を鍛えることにもなるのです。また、顧客とのトラブル回避にも役に立ちます。好ましくない状況として、供給サイドが対応できないような提案書を営業担当者が書いてしまうということがあります。これは、受注につながった場合、社内を混乱させますし、顧客の不興も買います。営業担当者は必要以上に「目の前のお客さんは絶対にとりたい」という恐怖心にかられることが多いのですが、そうした暴走が起こらないようにするのも営業マネジャーの務めです。関連KPI問合せ数、MQL数、リード数、RFP数、新規顧客数

成約率は何を分母とするかで変わってきます。SQLに対する比率なのか、RFPに対する比率なのか等は明確にしておくことが必要です。この数字はコンペになった際の勝率などとあわせて利用される数字でもあります。この数字が高いことは、自社の製品・サービスに競争力があることや、営業担当者のコンサルティングセールス能力の高さを示唆します。先述したようにこの数字は通常は高い方がいいのですが、それだけで営業担当者を評価することはできません。例えば、あえて難しい案件(テーマ自体が難しい新規顧客からの引き合いなど)に挑戦している営業担当者はこの数字が下がってしまう一方、自社が比較的強い製品・サービスばかりを売っていれば、営業能力は高くなくてもそこそこの数字は上がったりするからです。また、コンペの勝率なども、金額が大きくライバル各社が力を入れる案件は当然低くなりますが、格下のライバルしかコンペに参加しないような案件ばかりを扱っていればこれも高くなってしまいます。それゆえ、どれだけ難しい案件なのかという側面もあわせて見ていく必要があるといえます。この数字を気にするのはやはり営業部門です。通常、営業担当者一人ひとりの単位でも測定できますので、評価や指導の参考にします。ただし、この指標だけを追うのではなく、先に示したように、質の面や金額面にも意識を向ける必要があります。小さい金額の案件の成約率は高いものの、高額の案件ではこの数字が圧倒的に低いというのでは収益性は高まりません。また、値下げや無理な納期など、顧客の無茶な要求を聞いてこの数字を上げることも評価されるものではありません。経年変化や個人別の比較を行うことも大事ではありますが、個別の案件の事情もしっかり斟酌する必要があります。こうした事情から、成約率はいたずらに高い数字を設定するのではなく、その期のチャレンジ度合いなども勘案し、ある一定幅に設定することが多くなります。この数値は新規顧客、既存顧客の両方で測定しておきたい数字でもあります。既存顧客関係の案件で成約率が下がってきていることは、顧客の自社に対する満足度が下がってきていたり、顧客のニーズを押さえきれていない兆候であることも多いためです。COLUMN高い成約率の別の落とし穴に「強引な営業」があることもあります。例えば消費財の場合、判断力の鈍ったお年寄りや、気の弱そうな人に半ば強引に販売してしまうのです。これは確かに短期的には売上げにつながりますが、長い目で見たときに企業のブランドを毀損しますし、営業担当者のメンタルにも悪影響を与えます。自分は買いたくない、あるいは家族や友だちには売りたくないという商品を営業担当者に無理やり売らせるというやり方は、経営者としては本来避けるべきといえるでしょう。関連KPIRFP数、コンペ勝率

営業に要する期間は一般には短い方がいいといえます。この数字はどこをスタート地点とするかで当然大きく変わってきます。多いのは、問合せ時点やMQL、SQLとなった時点から見るというものです。この指標は新規案件でも既存顧客の案件でも用いることができますが、通常は既存顧客の案件の方が短くなります。この数字は業界や金額による差異が大きい数字の1つといえるでしょう。一般に億円単位の商売ではこの数字は長くなりますし、数十万円単位のビジネスでは比較的短くなります。また、自社の営業担当者がどれだけ頑張っても、顧客が優柔不断でなかなか意思決定しないこともあります。そうした顧客は急かしたから意思決定が早くなるというものでもないので、顧客企業の特性にも左右されることが多いといえます。同じ金額の案件でも、一般的には大企業の顧客は長く、中小企業(特にオーナー企業)の顧客では短くなる傾向があります。営業担当者が最終的に評価をされる際に特に重視されるのはやはり受注額や売上高、粗利等なので、営業期間が短いから偉いとはならないことも多いでしょう。ただし、効率的な営業をした結果、この指標が短くなり、それゆえに受注金額なども増えるのであればそれは評価されるべきといえます。部署全体で見た場合、営業期間があまりに長いようだと確度も下がって受注予測も立てにくくなったりしますから、やはり好ましいことではありません。なお、景気後退局面など、外部要因でこの数値が長期化することもあります。最重要なKPIというわけではないかもしれませんが、1つのめどとして測定し、時系列等で比較するのがよいでしょう。この指標が短く生産性も非常に高いことで有名なのが、今や時価総額ランキングベスト10に入ってきたキーエンスです。その理由としては、①DMU(DecisionMakingUnit:意思決定者)である工場長などにダイレクトにアクセスしている、②現場に入り込んで的確な提案をしている、③技術部門との連携がスムーズにとれている、などがあります。全社としてこのような仕組みが出来上がっている企業はやはり強いのです。逆に、顧客の意思決定プロセス(稟議の通し方や誰がDMUなのか等)を知らない、顧客の予算設定や消化の傾向(例:民間企業ではあるが年度末には使い切る傾向がある等)を知らない、といったことが積み重なると、この指標は会社全体としても長くなります。この数値はまずは平均値を見ますが、そのバラつきにも意識を向けましょう。例えば2年かかった案件も、通常ならば諦めてしまうところを粘って受注したのかもしれません。であれば、平均受注期間が長くなったとしても悪いことではない可能性もあります。関連KPI受注額、成約率、顧客内シェ

コンピテンシーとは、高いレベルの業務成果を生み出す、特徴的な行動特性を指します。営業担当者であれば、例えば市場把握力、戦略的思考、説得力、コミュニケーション力、積極的なクロージング[★7]などの項目について、営業担当者が部署あるいは個人としてどの程度それを満たしているかを数値で表します。この数字の高さは、理想の営業行動がとれている度合いを示すといえます。コンピテンシーとは成果につながる行動特性であり、単なる知識、思考力、資格や偏差値とは異なります。もともと人材コンサルティングのヘイグループが「コンピテンシー・フレームワーク」を提唱したことからスタートしました。通常、コンピテンシーの設定は、高い成果を安定的・継続的に上げている社員の特徴的な行動特性(どのような環境で、何を、どのようにやったか)を具体的に取り上げて分析し、それを積み上げていく中で行われます。そうして設定されたコンピテンシーは、その組織あるいは職種にとっての評価システムにおける基準となるのです。通常、各項目について0~100点のスケールで設定します。なお、コンピテンシーの項目は商材や企業によって異なってきます。コンピテンシーは長年の研究により、適切に用いれば大きな成果を生み出すとされています。ただし、アメリカ生まれの概念かつ、コンサルタント抜きに自社のみで設定するのは簡単ではないため、日本企業でそれを本格的に用いている企業は多くありません。とはいえ、理論的に純粋なコンピテンシーとはいえないまでも、それに近い評価項目を過去の経験やノウハウから見出し、評価や育成に活かしている企業もあります。この数値は通常、項目ごとに「望ましい範囲」を設定します。項目全体がバランスよく設定範囲の中で高く収まっていることが理想です。例えば「戦略的思考」や「コミュニケーション力」が目標範囲に満たないのに、「大胆なクロージング」だけが突出して高くても好ましくはありません。その逆もしかりで、「戦略的思考」や「コミュニケーション力」がどれだけ高くても「大胆なクロージング」ができなければこれも営業成績に結び付かないでしょう。各指標の目標範囲を部署として徐々に上げていくということもあります。例えば「コミュニケーション力」の項目を、5カ年計画で「60~75点」から、「70~85点」に上げていくなどです。当然、相応のトレーニングや採用方針の変更などが必要となります。営業担当者個々人のコンピテンシーを上げていく取り組みは重要ですが、中にはどうしても営業に向いていないというケースもあります。そうした場合は育成コストが無駄になる可能性もありますので、配置転換などが有効というケースもあります。上げようとすることが常に正しいわけでもないのです。関連KPI営業担当者1人当たり売上高(受注額)、成約率、受注期間

営業担当者にとって最も安易な販売方法は値引きです。特に売上げが芳しくない営業担当者は安易に値引きをする傾向がありますが、それはある意味麻薬のようなもので、確かに目の前の売上げはとれますが、値下げがどんどん他にも波及してしまい、全体としての収益率を下げたりブランドイメージを毀損してしまうことにもつながりかねません。そこで多くの企業では、事業部別、商品別、営業担当者別などで価格維持率をKPIとして測定し、安易な安売りが行われていないかをモニタリングするのです。この指標は製品の競争力や営業の規律を反映する数字といえます。最も高い数字は100%となります。どのくらいの数字が妥当かという絶対的な数値はありませんが、業界他社と比較して明らかに低いようであれば問題がありますし、逆に高く維持できているようであれば、製品力やコンサルティング営業力があることの証となります。より重要なのは同じ部署内での営業担当者間の比較です。例えばAさんがほぼ定価販売しているのに、Bさんの価格維持率が80%(20%の値下げ率)だとすると、部署としての営業の方針が定まっていないことを示します。営業担当者ごとのバラつきが少なく、売り方の方針が一貫しているのが一般には好ましい状態です。筆者の経験でも、高い利益率を維持できている企業はこの部分がしっかりしています。このKPIを部署としてどう設定するかは営業戦略次第です。数量で稼ぐよりもあくまで定価販売にこだわり差別化イメージを守ろうとするなら、100%に近い数字を設定することもあります(ちなみにグロービスの法人営業は正規のボリュームディスカウントなどを別にすれば基本的に定価販売の方針をとっています)。一方、ある程度の裁量を営業担当者に移譲しているケースでは、年間を通じて90%といった数字が設定されることもあります。このKPIは、年度が終わってからPDCAのCAを行うのでは遅すぎます。商材や営業方法のタイプにもよりますが、月次や四半期ベースで営業担当者ごとのバラつきが少ないことを確認する必要があります。突出して値下げを行っている営業担当者がいる場合には、価格維持こそが利益率向上につながることを説明したり、値下げをしたい場合には上長の了解を事前に求めるなどの施策を打つなどが必要になります。なお、価格維持率の多少低い営業担当者の方がむしろ利益が大きい場合(例:部署としては価格維持率を90%に設定したが、87%と86%の営業担当者が一番利益を稼いでいる)などは、もともとのKPIの目標値を変えることも検討する必要があります。このKPIはBtoCの商材の店頭価格に援用することもできます。チャネルに対する価格拘束はできませんが、想定している希望小売価格を大きく割っているようなら、その製品に競争力がないことを示すことが多く、何かしらのテコ入れが必要という判断材料にもなります。商品力があるにもかかわらず店頭価格を低くされている場合には、チャネルに対して自社のマーケティング戦略を正しく説明する必要があります。関連KPI売上高、粗利益、営業利益

CPAは通常、サービスの単価やARPU(AverageRevenuePerUser:ユーザー当たり収益)、ARPPU(AverageRevenuePerPaidUser:課金ユーザー当たり収益)、次項で解説するLTV(顧客生涯価値)との比較でその高低を判断します。LTVに比べてCPAが低い場合、非常に効率的に顧客を獲得できているといえます。CPAはウェブマーケティング以外にも活用できますが、ここでは主にウェブマーケティングを前提に議論します。例えばあるアプリのダウンロードを考えてみましょう。フェイスブックに1000万円、インスタグラムに500万円の広告を投下して、それぞれアプリをダウンロードしたユーザーが4000人と2500人だった場合、フェイスブックの広告のCPAは1000万円4000人=2500円、インスタグラムの広告のCPAは500万円2500人=2000円となり、わずかにインスタグラムの方が効果的ということがわかります。この2つの媒体にしか広告を行わなかったとしたら、トータルのCPAはおよそ2300円になります。単位は厳密には「金額/人」ですが、金額のみで示すのが一般的です。なお、この事例からもわかるように、通常CPAはダイレクトに投下した直接費で見ます。実際にはそれ以外にも広告担当者の人件費といった間接費(共有している費用)が生じているはずなのですが、通常それはCPAには含めません。また、オーガニックな検索からの顧客は分母に含める場合と含めない場合があるので、議論をする際には注意が必要です。なお、事業や企業全体としての顧客獲得コストはCAC(CustomerAcquisitionCost)と呼ばれ、そこにはさまざまな販売管理費が盛り込まれます。より正確な採算性分析を行うためにはABC(活動基準原価計算)[★8]などを用いてCACやCPAの妥当性を検証する必要性があります。CPAはマーケティング担当者が意識する数字です。人事考課面で用いられることもありますが、より効果の高いマーケティング手法を探るための意思決定に用いられます。また、経年比較などをしてCPAが上がっていないかといったこともチェックします。例えば4つの媒体に広告を打ったとします。仮にその時点でのLTVが10万円と見積もられている中で、媒体AのCPAが5万円、媒体Bが2万円、媒体Cが15万円、媒体Dが3万円だとしたら、明らかに媒体Cに広告を出すのは得策ではありません。もちろん、媒体ごとにクリエイティブ(広告表現)が異なる可能性もあるのでその精査は必要ですが、そこに大きな差がないのにこの結果だとしたら、媒体Cの予算を削って媒体Bや媒体Dに振り向けることが有効ということがすぐにわかります。CPAはライフサイクルやその時々の経営環境に応じても変わってきますので、通常は短い時間軸できめ細かくPDCAを回し、それを低減することを目指します。トータルとしての目標設定は、社内の類似事例や目標とする利益(初期フェーズではマイナスとすることも多い)などを勘案して設定するのが一般的です。CPAはもちろん低い方がいいのですが、LTVを増大させる(例:内容を充実させることで離脱率を減らす)ことでCPAの許容度を増やすことができるという点も忘れてはいけません。関連KPILTV、ARPU、ARPPU、媒体当たり広告費、CAC

LTVはウェブマーケティングのみならず、一般のマーケティングにおいても非常に重視される数字です。競合に比べてLTVの高い企業やビジネスは、それだけ顧客の支持を得ている企業、ビジネスといえます。この数字は前項で説明したCPAのめどを立てる数字ともなります。LTVの額そのものは商材やビジネスモデルによって大きく異なりますので、数字そのものの大小以上に時系列比較や競合比較が重要となります(競合の情報を得るのは難しいですが、ラフな推定はできます)。LTVが重視されるようになった背景には、競争激化の中、新規顧客の獲得が難しくなる中で、既存顧客を大事にしてそこからキャッシュを得る方がより有効だという考え方があったとされます。LTVはまた、3つの要素に分解して見ることも基本とされます。それは、LTV=1回当たり購買額×年間購買回数×継続年数というものです。よりシンプルに2つの要素に分解して、LTV=年間購買額×継続年数で考えることもあります。近年流行っているサブスクリプションという定額料金の課金モデルでは、年間の購入額は決まっていますから(ただし、ラインナップがいくつかある場合は加重平均を取りますので、高額のプランのユーザー比率が高まれば年間の購入額すなわちARPPUも上がります)、継続年数を高めることに注力します。そしてそのために、次項で述べる継続率を高めようとするのです。LTVも人事考課に用いるKPIというよりは、より良い方策を検討するためのKPIといえます。特にこれを重視するのはマーケターですが、顧客維持には製品・サービスの提供者全体が関わるため、バリューチェーンをまたいで皆が意識すべき指標でもあります。アメリカのSaaS(SoftwareasaService)やサブスクリプション型のサービスを扱うベンチャーなどでは、LTV/CACの比率が3を超えれば概ねそのビジネスは順調とされます。この数値の目標設定に当たっては過去の実績などを参考にしますが、難しいのは、ビジネスによってはLTVがその性質上、「終わり」を設定しづらいことがある点です。例えば学習塾というサービスは、通常、十年にわたって利用するものではありませんので、LTVも比較的めどが立てやすくなります。一方、小売店などは明確な「終わり」がないため、LTVを設定するためには、組織内で何かしらの「決め」を作り、運用するしかないのです。ベンチャー企業の目新しい新事業なども、そもそも参考にすべき前例がなく、かつサービスを止める顧客がどのくらい出るかもわかりにくいため、数字の設定が難しくなることもあります。LTVは高いに越したことはありませんが、顧客数が少ない場合などは、顧客維持のための投資(固定費的要素を持つ)の分散ができず、顧客獲得コストも含めるとマイナスになってしまうケースもあります。常に費用とのバランス感が必要です。関連KPICPA、CAC、継続率、平均継続年数、LTV/CAC比率

継続率が高い(離脱率、解約率が低い)ということは、一般にはその製品・サービスに対する満足度やロイヤルティが高いことを示しており、企業にとっては好ましい状態といえます。ただし、私立大学のように「いつまでも顧客が残らない」タイプのビジネスもありますし、満足度が低くても他に代替手段がないから仕方なく継続しているというケースもあるので(例:自宅最寄りの鉄道)、そうした特性も理解しておく必要があります。この数字は商材やビジネスモデルによって相場が異なります。ライバルの数字を取ることはなかなか難しいですが、業界平均を超えているに越したことはありません。業界によってやや定義や測定方法が異なる点には要注意です。わかりやすいのは、サブスクリプション型の動画配信ビジネスや携帯電話などの月額料金が決まっているビジネスです。これらのビジネスでは、離脱した顧客はすぐにわかりますから、継続率の特定も容易ですし、月次単位の詳細な数字が取れます。小売業などは、ポイントカード保有者ベースにはなりますが、そのデータを活用することで、年単位での離脱率を捕捉します。これも概ね全体の傾向をよく捉えています。一方で、病院などは、そもそも健康な人であれば毎月行くというタイプのサービスではありませんし、仮に満足度が高くても、年間を通じてその病院で扱う病気をしなければ訪問しないということもあるでしょう。そのため、正しく継続率を取るのは容易ではありません。事業責任者やマーケティング担当者はこの数字を重視することが多いです。顧客の離脱率を5%減らせば、25%の利益改善になるという「5-25ルール」という経験則もあるからです。目標の設定は過去の実績や業界での相場観などを意識して行うことが多いですが、先に説明したように、継続あるいは離脱した理由も大事です。数字だけを見るのではなく、「なぜ継続したか」、逆にいえば「なぜ離脱したのか」という理由とともに見るべき数字といえます。多くの企業は、離脱した顧客についてもアンケートなどを行うことで対策を講じています。例えば離脱率は同じ20%でも、「サービスそのものを使う機会がなくなった」が離脱理由のトップなのと、「より魅力的なA社のサービスに乗り換えた」が理由のトップなのとでは、打つべき対策も変わってくるということです。継続率は顧客ロイヤルティを反映することが多いため、それを上げるためにはサービスのレベルを上げ続けることが重要とよくいわれます。一方で、リマインドメールをタイムリーに送ったり、メールマガジンを配信するだけでも継続率は上がったりしますから、そうした地味な活動も疎かにすべきではありません。関連KPILTV、離脱率(解約率)、年間利用時間

ウェブマーケティングの第一歩は自社のサイトに来てもらい、そこで伝えたいメッセージに触れてもらうことです。トータルとしての流入数が多いことは訪問者数が多いということで、最終的な売上げにもつながりやすくなります。もちろん投下した広告投資との比較も大事ですが、仮に同じ広告投資であれば、流入数が多いことは好ましいことといえます。流入数は、「どこからの流入なのか」を知ることが大事な数字です。典型的なものとしては、検索からの流入、広告からの流入、SNSからの流入などがあります。これらはGoogleAnalyticsに代表される解析ツールを用いることで測定できます。なお、流入数という数字を使う際には前提となる定義を知っておくことが必要です。例えばGoogleAnalyticsの場合、カウントされるのはあくまでブラウザの数です(なお、各ツールにおける用語の定義や運用はしばしば変更されるので注意が必要です)。つまり、仮に何人かでそのブラウザを同時に見ていたとしても、それはあくまで1件とカウントされます。また、同じ人が来た場合でも、前回の訪問から30分以上経ったり、日付が変わった場合は改めて1件とカウントされます(30分という数字はマーケター側で設定を変えることもできます)。また、別のチャネルから流入した場合(例:10分前に検索から流入し、今度は広告から流入した)も改めて別の訪問としてカウントされます。この数字もマーケターが意識する数字です。特にウェブ広告を大量に行っていたり、SNSを積極活用している場合にはこの数字を常にウォッチします。例えばグロービスでもそうしたマーケティングを重視しているサービスでは週ごとの流入数を媒体ごとに確認し、順調に伸びているかをモニタリングしています。そうしたサイトの場合、目標数字はマーケターとコンテンツ企画者の両方が議論のうえ共同で持つことになります。マーケターとしてはいかに有効なプロモーションを行うかが重要になりますし、コンテンツ作成側は、多くの人々が読みたくなる魅力的なコンテンツを作ることが求められることになります。流入数を増やすためにはSEO(SearchEngineOptimization:検索エンジン最適化)を地道に行うことも有効です。グーグルの「検索エンジン最適化スターターガイド」を参考にする、対策するキーワードを決めて、そのキーワードにユーザーがどういう情報を求めているのかをしっかり検討する、サジェストキーワードや共起語[★9]などを調べてコンテンツ化するといった地道な作業が訪問数を確実に増やすのです。SEOは有効な手段ではありますが、しばしばグーグルが表示のアルゴリズム[★10]を変えることがあり、その結果、「昨日までは1ページ目に出ていたのに、今日は2ページ目の後半だ」といったことが起こります。また、あまりに「あざとい」SEOをすると懲罰的に検索にひっかからないようにされてしまうこともあるので、そうした側面も意識しておく必要があります。関連KPI直帰率、平均セッション時間

ウェブの目的によって多少変わりますが、一般に平均セッション時間が長いウェブはそれだけ長く人々が滞留していることを示し、読まれている可能性が高いことを示します(別のページに移動しても、自社サイトにとどまっている限りは1セッションと考えます)。情報を伝えるサイトの場合、この数字が大きいことは好ましいといえそうです。なお、GoogleAnalyticsでは離脱ページの滞在時間は加算されないため、正確を期すならば他のツールも使って平均セッション時間を知ることが必要です。例えば企業のサイトなどでは概ね5分から10分程度が平均的なセッション時間とされています。先に、平均セッション時間は長い方がいいと書きましたが、Eコマースのサイトなどでは必ずしもそれが当てはまらない場合もあります。例えば、ウェブの設計が悪く、ユーザーがあちこちのサイトを行ったり来たりして滞在時間が長くなってしまっているのではむしろマイナスです。Wi‐Fiの環境が悪く動作が遅くなることでもこの数字は上がることになります。そのため、平均セッション時間だけに着目するのではなく、顧客の生声を集め、それを丁寧に読むことも大切です。また、ページごとの滞在時間もその気になれば測定できるので、こちらも意識しましょう。例えば10分の動画ページがあった場合、平均滞在時間が10分に近くなるほど、そのコンテンツの魅力度が高く、最後まで見てしまった人が多いことを示します。平均セッション時間は、次項で説明する直帰率とあわせて見ることが多い数字でもあります。この数字を見るのは主にウェブの作成者です。先述したように、その目的なども勘案したうえで「長すぎる」「短すぎる」といった判断をします。特に時系列の比較は意識されることが多いようです。例えば自社のホームページからの訪問者の平均セッション時間が短くなった場合、彼らが読みたくなるような情報を提供しきれていない、あるいは情報が更新されていないため、すぐにセッションを打ち切る訪問者が増えたなどの理由が推定されます。より適切に対応するためにはさらなる分析が必要ですが、この数字が減少傾向にある、あるいは増加傾向にあるといったトレンドは見ておく必要があります。また、動画コンテンツなどを提供している場合は、先述したように、その動画の長さと比較してどの程度見られているのかを知ることも、改善の情報を得るうえで非常に重要です。平均セッション時間は、訪問者の質が変わることでも変化します。何らかの理由(例:若者が多いSNSから急に人が流れてきた)で本来想定している訪問者以外の比率が増えた場合、この数字が下がることもあるので、

一般論としては、訪問者に見てほしいページをあちこちと回遊してもらうのが理想です。しかし、最初のランディングページ[★11]に魅力がなければ、そこですぐに離脱してしまう人が増えるでしょう。これでは平均セッション時間も増えません。直帰率を減らし、平均セッション時間を増やすようにウェブを設計することが大切です。直帰率もGoogleAnalyticsの数字だけを見ていると錯覚しやすい数字です。例えばそのページを10分間丁寧に見ていたとしても、そこでブラウザを閉じてしまえば直帰とみなされるからです。しかもGoogleAnalyticsでは離脱したページの時間はカウントしませんから、このケースでは「直帰、滞在時間0分」となってしまうのです。そこで、通常は他のツールも用いて「どのページに遷移したか」「どのくらいそのページ(特にランディングページ)に滞在していたか」などを細かく見ます。その際、訪問者に、企業側として望ましい行動をどのくらいとってもらえているかを測定することが必要です。例えば、次にこのページに遷移してほしいというのであれば、どのくらいその行動がなされているのかを測定すべきでしょう。あるいは、資料のダウンロードなどが期待されるなら、実際にどのくらいその資料がダウンロードされたのかなどの比率を丁寧に見ることが必要です(なお、GoogleAnalyticsでも、ダウンロードのようなアクションがあった場合は、ランディングページしか見ていなくても直帰扱いにはなりません)。この数字もウェブの作成者が意識する数字です。一般論としては直帰率が高いことは好ましい傾向ではありません。この数字は単独ではなく、時系列の比較や、他のランディングページとの比較が大切です。例えばAというキャンペーンの直帰率が30%だったのに対し、Bというキャンペーンの直帰率が80%だったとしたら、明らかにBの方に問題がありそうです。パッと見たときの魅力度が低かった、訪問者にとって読みにくい内容だった、訪問者にクリックなどのアクションを促したくてもその方法がわからなかった、などの理由が考えられます(もちろん、キャンペーンそのものの魅力度が影響している可能性もあります)。これらの原因を見極め、丁寧につぶしていくことが求められます。直帰率の目標の設定は、過去の類似のページの直帰率を参考にすることが多いようですが、この数字だけを過度に強調するのではなく、平均セッション時間や訪問数など、総合的に目標設定することが必要です。適切なツールを使うことによって、「おそらく真の直帰」と「おそらくある程度は読んだうえでの直帰」を分けることもできます。例えば1ページを読むのに1分程度かかるページにおいて、40秒以上滞在があったら「読んだ」とカウントするように設定しておくなどの工夫ができます。どこまで手間暇をかけるかの判断は難しいですが、GoogleAnalyticsの数字を鵜呑みにするのではなく、目的に応じた測定方法を工夫することも大事です。関連KPI流入数、平均セッション時間

今や広告への予算投下比率は、分野にもよりますが、ウェブ広告がテレビ広告を上回るケースも多数出ています。ただし、どれだけバナー広告や検索連動型広告を出したところで、それがクリックされないようでは意味がありません。この数字が高いということは、それだけそのウェブ広告が有効であることを示す1つの材料になります。クリック率はそれほど高い数字が出るわけではありません。バナー広告の場合で概ね0・2%程度、検索連動型広告(リスティング広告[★12])の場合で2、3%程度とされています。近年はビッグデータやAI(人工知能)によるリターゲティング[★13]の効果が上がってきているといわれてはいますが、それでも平均すれば低いパーセンテージのユーザーしか反応してくれないわけです。広告代理店側は過去のデータからおおよそのクリック率のデータを持っており、それを活用して広告の売り込みを行います。なお、広告主のサービスや商材によっても当然クリック率の相場は変わってきます。リスティング広告の場合、最もクリック率が高くなるサービスは「出会い系」や「法律系」といわれており、ユーザーの関心や真剣度合いを強く反映しています。この数字を意識するのは広告出稿側の関係者、そして広告代理店側です。こうした広告の課金は通常クリック数に応じて発生することが多いですが、クリック率の低いバナーやリスティングのクリエイティブを作っていては効果的ではありません。そこで追加の無駄な費用が生じることもあります。やはりクリック率が高いクリエイティブを工夫することが、即効性の高い広告効果につながります。広告出稿側の目標設定は、一般的には過去の実績を参考に行います。また、どのような媒体が費用対効果が高いのかなども測定し、適宜出稿媒体を変えたり、新しい媒体の実験なども行います。またクリエイティブについては、A/Bテスト(2パターンの広告表現を出して、どちらの方が反応がいいかを見定めるテスト)なども繰り返し、クリエイティブをどんどん改善していくのも昨今では常識化しています。広告出稿主にとっては、どの広告代理店を選ぶかが、広告効果を上げるうえで非常に大切になります。価格だけではなく、実績や分析能力、アフターサービス、提案能力などを勘案して選ぶことが大切です。なお、広告代理店によって得手不得手もあるので、それらも考慮して数社を使い分けるといったこともよく行われています。関連KPIコンバージョン率

「売上げにつながるアクション」は企業によって定義が異なる場合がありますが、「申込みの数」や「問合せの数」といった数字が用いられることが多いようです。Eコマースの場合は、そのまま「購買に至った数」などを用いることもあります。コンバージョン率が高いということは、それだけ広告によって「質の高い見込み顧客」を集めたことを意味します。なお、率だけが高くても絶対数が少ないと意味がありませんので、通常はコンバージョン数と同時に見ていきます。一般にコンバージョン率が高いことは望ましいことですが、もともとのクリック数が少ないようでは効果半減です。前項のクリック率も掛け算した「インプレッション総数に占めるコンバージョン率」などもあわせて見るといいでしょう。最も好ましいのは、クリック数が増え、かつコンバージョン率も上がるという状況です。なお、コンバージョン率の高さはもちろん広告のみによって決まってくるものではありません。サービスそのものの力(過去の実績や高い費用対効果)はもちろんのこと、ランディングページのコンテンツのわかりやすさやインパクト(キャッチコピーの良さなど)、入力フォームのシンプルさ、操作性の良さなど、さまざまな要素が関係してくることを理解しておきましょう。この数字はもちろんウェブ広告の担当者が意識しますが、先に記した通り、サービスそのものに力がなければ結局は申込みなどには結び付きません。その意味で、ウェブマーケティング担当者に丸投げするべき数字ではなく、サービスの設計者や提供責任者なども同時に注目すべき数字といえるでしょう。極端な話、サービスレベルが低いのに、ウェブ上で工夫してコンバージョン率を上げたところで、不満な顧客が増えるだけです。この数字も、目標設置は過去の事例を参考に行います。また、トータルの数字もさることながら、ウェブ媒体ごとにPDCAを回し、最適化を図っていきます。コンバージョン率が下がってきているといった状況は、自社サービスの競争力が落ちてきている兆候の可能性もありますので、要注意です。他の広告(新聞広告など)と同時並行で広告を出している場合、ウェブ広告は「感度が高く、かつ若い人が多い」メディアでもあるので、先行指標的な意味合いを持つこともあるので、その意味でも要ウォッチといえるでしょう。コンバージョン率は、「指名ワード」と「一般ワード」に分けて見ることもあります。指名ワードとは、例えば英会話教室の場合、「ECC」や「GABA」といった企業名そのものや、「マンツーマン英会話サービス」といった特徴的なワードを指します。一般的に指名ワードの検索はすでに関心が高いため、コンバージョン率も高くなるとされます。関連KPIクリック率、申込数

例えばあるサイトがあったとします。1週間にAさんが1回、Bさんが3回、Cさんが5回、Dさんが20回訪問した場合、訪問数は29回とカウントされます。しかし実際に訪問したのは4人だけですから、ユニークユーザー数は4人となります。つまり、1人のユニークユーザーが何度も来るタイプのサイトでは、ページビュー(PV)が多くても、ユニークユーザーは少ないこともあるのです。なお、ユニークユーザー数と一緒によく用いられるページビューは閲覧したページの総数を指すため、常にユニークユーザー数セッション数ページビュー数となります。ユニークユーザーが多いということは、それだけ多くの人が利用しているサイトといえるでしょう。サイトの目的にもよりますが、ユニークユーザーの多さは、そのサービスのリーチの広さや、購買への誘導機会が多いことを示します。なお、ユニークユーザーで捕捉できるのは通常はブラウザ数なので(実際にはIPアドレスやクッキーなどを見て解析ツールが同一のユーザーかを判断します)、同じ人が会社のPCと自宅のPC、さらにはスマホで同じページを見た際には、ユニークユーザーは3人とカウントされます。近年は複数の機器のブラウザを利用する人も多いので、実は真の人数はユニークユーザー数よりも低いというケースがしばしば生じます。とはいえ、ユニークユーザーと実際の人間の数でそんなに大きな順位の逆転が起こることはないので、ユニークユーザーの多さは、やはりリーチの広さと考えて問題はないでしょう。オンラインメディアなどの場合、このユニークユーザー数を増やすことは非常に大切です。通常はそのサービスの責任者やマーケティング担当者が責任を負う数字となります。ただしこの数字は小手先のテクニックで上がるものでもありません。例えば「炎上商法」で瞬間的にユニークユーザーが増えたところで、「内容そのものはつまらないサイトだ」ということがわかってしまえば、結局ユニークユーザー数も減ってしまいます。では何をすればいいかといえば、コンテンツサイトであれば、有益な情報、コンテンツを地道に増やすことです。同時にSEOなどの対策も行うと、即効性はやや低いですが、確実にユニークユーザー数は増えます。ローマは一日にして成らないのです。ユニークユーザーを増やす方法論として、SNSの活用による誘導という方法もあります。後述するように、フォロワー数を増やしたり、シェア数を増やすべく「思わず他人にも知らせたくなる」「共感できる」と読者が感じられるコンテンツを多く持つことも必要です。COLUMNユニークユーザーは、年単位、月単位から、週単位、日単位、時間単位まで測定できます。ただし、解析ツールによっては、例えば日をまたいで23時から25時まで利用したユーザーを2人と二重にカウントするケースもあります。これは、時間単位など、測定の時間軸が短くなるほど大きな誤差を招くことになります。用いている解析ツールのカウント方法を正しく認識することが必要です。関連KPIセッション数、ページビュー

もともとPCのアプリは昔からありましたが、近年はスマートフォン向けのアプリが簡単かつ安価に作成でき、またAppStoreやGooglePlayストアという流通のためのインフラが整備されたことから、一気にアプリの数が増えました。LINEやメルカリ、フェイスブックやツイッターといった有名なサービスもスマホのアプリをダウンロードして用いている人は多いでしょう。ダウンロード数(DL数)の多さは、そのアプリの人気度合いを如実に示すものといえます。ダウンロード数は、PCのもの、スマホのもの、さらにはiOSのもの、アンドロイドのものなどが極めて正確に捕捉できます。特に近年は「スマホの画面や時間の奪い合い」がネットビジネスでは非常に重要になってきたため、スマホ向けアプリのダウンロード数は非常に注目されています。商材のタイプや潜在的な顧客の数もあるため、何件以上なら多い/少ないということは一概にはいえませんが、例えば日本で大ヒットしたLINEアプリは、サービス開始から3年で10億ダウンロードされたといいます。いわゆる「ネットワーク効果」が働くプラットフォーム型のビジネスでは、「ユーザー数の多さが利便性を生み出し、さらなるユーザー獲得につながる」「WinnerTakesAllになりやすい」という傾向が強く、早い段階でこのダウンロード数を増やすことが戦略上も重要とされています。以上の説明からもわかるように、この数字は戦略と極めて強く連動してきます。特にネットワーク効果が働くプラットフォームアプリの場合、テレビ広告を大々的に行ったり、無料アプリにもかかわらずアマゾンカードを500円分配る(LINEの例)といった、一気にダウンロード数を増やす施策が採られることがあります。この数字はMAU(月間アクティブユーザー:MonthlyActiveUsers)やDAU(1日当たりアクティブユーザー:DailyActiveUsers)と同時並行で用いる数字でもあります。例えばSNSアプリでナンバーワンのフェイスブックは、2019年3月時点で、全世界でMAUが23億8000万人(前年比8%増)、DAUが15億6000万人(前年比8%増)と極めて多くの人々に支持され、日々用いられています。ダウンロード数やMAUなどに責任を持つのは一義的には事業責任者やマーケティング責任者ですが、そのアプリの重要度が高い場合には、経営者自らが先頭に立ってこの数字を増やすべく、さまざまな指示を出すこともあります。魅力のないアプリは、一度ダウンロードされてもすぐにアンインストールされる傾向があります。ユーザーも、あまりに多くのアプリは使いこなせないからです。そうならないためにも、アプリそのものの魅力を高め、また操作性や見映えを良くするなどの工夫が必要となります。関連KPIMAU、DAU、ARPU、ARPPU

多くのサービスには「お試し版」というものがあります。例えばDAZNのような定額見放題サービス(いわゆるサブスクリプションモデル)についても、いきなり有償会員になるのはハードルが高いため、一定期間(例:1カ月)の無償利用期間が設けられることがあります。そのサービスを良いと感じてもらえれば、その一定比率が有償サービスに移行します。あるいは、フリーミアムというビジネスモデルでは、基本機能は無料で利用できるものの、一定以上のレベルの機能を利用するためにはお金を払う必要が生じます。DeNAのゲームのアイテム課金や、LINEのスタンプなどがその典型です。有償でもサービスを利用したいと思うユーザーが多いということは、そのサービスの魅力が高い、あるいは課金アイテムの魅力が高いことを示します。サービスの種類や金額によっても有償転換率は異なりますので、世間一般の水準は示しにくいですが、ネット上のフリーミアムモデルの場合、一般的に5%程度の有償転換率があればビジネスは成功するといわれています。逆にいえば、95%(20人に19人)は無償ユーザーであっても、20人に1人でも課金アイテムを買ってくれると十分に採算がとれるということです。これは顧客が1人増加した場合の追加費用、いわゆる限界費用が非常に低いためでもあります。有償転換率の数字は類似の業界のものと比べるとその高低が判断しやすくなります。この数字は事業責任者、サービス設計者、マーケティング担当者などが責任を持つ数字です。通常は社内のコストや想定される利益(ケースにもよりますが、黒字化までに数年の期間を想定する場合もあります)なども勘案し、無料期間、無料で提供する機能などと有償部分との切り分けや、有償部分の価格などを決めます。有償転換率が目標に到達しない場合は、価格の問題なのか、無料サービス部分で価値が訴求できなかったのか、それともプロモーションの問題なのか等を見極め、しかるべき施策を打ちます。ネット商材の場合、PDCAについても早いタイミングで回し、問題解決をしていくことが必要です。サブスクリプションモデルの場合などは、解約率(チャーンレート)もあわせて検討します。多くのケースでは、メニューにいくつかのバリエーションがあることも多いので(例:ベーシックコース、スタンダードコース、プレミアムコースなど)、次のレベルへの転換率もこまめに測定し、平均単価を上げる努力も必要です。COLUMN有償サービスは、それが価格に対して魅力的であるほど、転換者が増えます。その筆頭はアマゾンのプライム会員でしょう。配送が無料になるなどの他、ビデオや音楽を無料で楽しむことができます。特に日本は他の先進国より値段が安く、先行投資的に会員数を増やしています。これはまず成長と顧客満足の仕組みに投資し、利益は後で回収するというアマゾンの戦略をそのまま反映したものといえます。なかなか真似はできないですが、価格設定やサービス設計に当たっては、そうした長期スパンでの戦略も意識することが望まれます。関連KPI解約率、有償アイテム平均利用額、ARPPU

毎日でも使ってほしいサービス(例:SNS的なサービスやブログ的なサービス、英会話サービスなど)の場合、継続率、逆にいえば離脱率に大きな影響を与えるとされるのが翌日再訪問率です。人間は習慣に流される部分が多い動物であるため、翌日に来ないようだと、そのままずるずるとそのサイトを訪れなくなってしまうのです。なお、サービスのタイプによってはもともと毎日までは利用しないものもあります(タクシーの配車アプリなど)。その場合でも、翌週や翌月に訪問があったかを週次や月次で把握しておくと、長期的な継続率を知るヒントとなります。翌日再訪問率が高いサービスは、顧客が訪れたくなる魅力的なサービスといえます。継続率同様、この数字は「なぜ翌日に訪れなかったのか」という理由とあわせて見ると理解が深まります。図12の事例では、初日に投稿がなかった、あるいは利用時間が10分未満だと、楽しみ方がわからないので翌日も訪問しなくなる可能性が高いという仮説が成り立ちそうです。この数字は、ソフトやアプリの利用の中でも比較的後半に位置します。それゆえ、ここで顧客をとりこぼさないように、継続する仕掛け(例:アラームを送る、初期継続の特典を付けるなど)の対策をしっかり考えることが求められます。この数字の高さは、継続率などとあわせて、顧客に対するマーケティングや使い方に関する啓蒙の武器として活用することもできます。離脱した人の生の声を聞くのはなかなか難しいものですが、できれば登録情報から生声を聞きやすい人を抽出し、何件かデプスインタビュー[★14]を行うと効果的です。関連KPI継続率、離脱率、初日利用時間

企業によっては、部署ごとにサイトを作ったり、ある特定のサイト(あるいはサイトの一部)を他部署への送客用に設けることがあります。そうしたサイトにおいては、その特定の部署のサイトにどのくらいの「送客」をしたか、あるいはコンバージョンに結び付けたかが大事なKPIになります。予定通りの送客を実現できているサイトは、他部署のマーケティングの一環として機能しているサイトといえるでしょう。送客数は一般には多いに越したことはありません。例えば出版社のオンラインサイトの書籍紹介のコーナーであれば、(特に自社出版物の場合)その書籍のアマゾンサイトに誘導して実際に書籍を買ってくれる人が多ければ、それを担当した編集部や編集者からは非常に感謝されるでしょう。我々グロービスでも「GLOBIS知見録」という無料のナレッジライブラリを持っていますが、「グロービス学び放題」という定額学び放題のサービスへの送客や、グロービス経営大学院への送客については重要なKPI(サイト訪問数および、グロービスで設定したコンバージョン数)の1つとなっています。この数字は、ある部署が一方的に設定するということはなく、送客される側の部署と相談のうえ、「これくらいの数を目指しましょう」と取り決めるのが一般的です。例えば月間100万のページビューがあるサービスであれば、そのうち2%を送客される側の申込みサイトに送り込むなどです。通常は時系列の数字を参考にします。そのうえでコンテンツの工夫やサイト設計の工夫などをすることで上積みを図ります。多くの場合、送客される側もアイデアを出すのが一般的です。例えば先の出版社のオンラインサイトの例であれば、そこに載せる紹介文(あるいは書籍の内容に関連する記事)や魅力的なキャッチコピーを編集者サイドで準備し、それを載せてもらうなどです。企業によっては、そこに移転価格(振替価格)を設けることもあります。移転価格とはあたかも別企業であるかのように部門間で架空のお金のやりとりを発生させることです。それによってフリーライドの不満を解消しつつ、「他部門の役に立つサイトにしよう」というインセンティブを生み出すのです。通常、企業において最も多くの人が見るのはホームページなので、ホームページ担当者(広報部の人間など)がホームページからの送客に責任を持つこともあります。ただし、特定の部門にのみ偏りすぎるのもブランディング等の問題上、好ましくないこともあるので、通常は各部署のマーケティング担当の声を聞いてバランスをとります。関連KPI流入数、送客先でのコンバージョン率

近年、フェイスブックやインスタグラム、ツイッター、ユーチューブなどをマーケティングに活用する企業が増えました。ただし、「やっている」というだけでは意味がなく、どれだけ多くの人に見てもらえるか、あるいはタイムラインに自分の投稿が流れるかといったことが非常に重要になります。媒体にもよりますが、メジャーなSNS等でフォロワー数が多い人(あるいは企業)は、ネット上での発信力が大きいとみなすことができます。フォロワー数は一般に多い方がいいとされます。例えばツイッターの場合、2020年現在、ビジネス系で最もフォロワー数が多いのは前ZOZO社長の前澤友作氏でおよそ700万人(総合でも有吉弘行氏と松本人志氏に次いで3位)、企業ではスターバックスコーヒージャパンの公式アカウントとローソンの公式アカウントがそれぞれ470万人規模となっています。前澤氏のツイートが良くも悪くも世間で話題になることが多かったのは有名な話ですし、スターバックスやローソンは日本人のおよそ25人に1人がフォローしているわけで、何かを伝えるチャネルとしてもかなりの媒体になっていることがわかります。なお、フォロワー数はあらゆるサービスのものを単純に足してもあまり意味はありません(全くないわけではないですが)。通常、目的に応じて使うサービスも異なりますので、フェイスブックならフェイスブックのフォロワー数、ツイッターならツイッターのフォロワー数など、サービスごとに見るのが良いでしょう。この数字に責任を持つのは通常は企業のマーケティング担当者です。経営者自らが前面に立って情報発信する場合は、経営者本人やブレーンがこの数字を上げるべく力を入れます。この数字もその質とともに評価されるべきものといえるでしょう。例えばツイッターの場合、フォローバックを促す機能を利用することもできますので、こちら側がフォローを増やすと、勝手にフォロワー数も増えることになります。これはフォロワー数を増やすには確かに有効なのですが、自分にそれほど関心がない人もひっかけてしまうという問題があります。企業の公式アカウントで露骨にこれをやるとむしろ反感を買うこともある点は意識しましょう。最もいい方法は、地道に投稿などの魅力度を上げ、評判になることです。その際、もともとの知名度が高いことは非常に有利に働きます。また、1日に3回など、何かしらの目標設定をして地道に情報発信を繰り返すことがフォロワー数アップにつながります。フォロワー数の多さは、他社と共同でキャンペーンなどを行う際に、自社の交渉力を高める効果などもあります。最近であればティックトックなど、どんどん新しい媒体やキュレーションサイトが立ち上がりつつあります。その際、いち早くそのサービスの中でプレゼンスを築いておくと、後々有利に働く場合があるので、マーケティング担当者は要注意です。ニュースのキュレーションアプリであるニューズピックスのように、インフルエンサーを「PRO」などとして遇してくれるケースもあります。社内にそうしたインフルエンサーがいる場合は、彼/彼女を戦略的に露出させることも効果的です。関連KPI「いいね」数、シェア数、エンゲージメント率

ウェブマーケティングにおける重要な要素にバイラル性があります。つまりウイルス(英語ではバイラル)が広がるように、どんどんシェアされて拡散されていくほど、投稿の価値が高いということです。それを反映する典型的な指標がシェア数(ツイッターであればリツイート数)です。当然フォロワー数が多いほどシェア数も上がりやすくなります。トータルのシェア数が多いアカウントは、情報発信力のあるアカウントとみなせるでしょう。シェア数はそれ単独で見るのではなく、エンゲージメント率と同時に見ることが多い指標です。エンゲージメント率とは、フェイスブックの場合、投稿に関して「いいね」がついたり、コメント、シェア、あるいはクリックされた人数の比率です。つまり、シェアまでされなくても、「いいね」がついたりコメントされるだけでも、何らかの好ましい反応を引き起こしたと考えうるのです。なお、エンゲージメント率の定義はサービスによって異なるので注意してください。フェイスブックの企業アカウントの場合、通常エンゲージメント率は0・5%から2%程度とされています。通常のエンゲージメント率に比較してもシェア数の多い投稿の場合、それは「誰かに知らせたくなる投稿」「極めて共感度の高い投稿」であったことを示すと考えていいでしょう。特にまだフォロワー数が少ない人や組織の場合、「いいね」やコメントが多くてもバイラル性は薄いですから、シェア数がより重要な意味を持つといえます。シェア数はいたずらに増やせばいいというものではなく、内容も当然肝心です。いわゆる「炎上」でシェアが増えても全く意味はありません。捕捉するのは多少難しいですが、プラスの効果をもたらすシェア数とマイナスの効果をもたらすシェア数は分けてカウントするのがいいといえます。運営責任者としては、適切な運営をすることでプラスの効果のシェアを増やすことが命題となります。時々「悪名は無名に勝る」ということで炎上ギリギリの投稿をする企業もありますが、ギャンブル性の高いやり方であることは意識しておくべきでしょう。シェア数の多さやエンゲージメント率の高さは、フォロワー数同様、他社と共同キャンペーンなどを行う際に自社の交渉力を高める効果があります。エンゲージメント率については、分母をフォロワー数とする流儀と、インプレッション数とする流儀などがあります。どれが絶対的に正しいというわけではないですが、時系列変化を見る際などには統一しておく方がいいでしょう。関連KPI「いいね」数、エンゲージメント率

この数字を高め、しっかり納期を守ることはビジネスの基本でもあります。よくQCD(Qは品質、Cはコスト、Dはデリバリー[納期、数量])を守ることが大切だといいますが、どれだけ品質が良くコストが低くても、納期オーバーするようではやはり顧客の信頼を損ねてしまう可能性が高いからです。この数字は通常高い方が望ましいといえます。ビジネスによっては、納期遅れにペナルティが科されることもありますし(例:建設やITシステムなど)、直接ペナルティはないまでも顧客満足度が下がる結果、リピートの確率が一気に下がることにもなりかねません。なお、この数字だけではなく、納期遅れが生じた場合についてはその具体的な日数なども同時に測定します。納期順守率は通常、顧客にコミットした納期についての数字を取ることが一般ですが、これを社内の業務の受け渡しに援用することもできます。例えば社内のサービスカンパニーが「〇〇の仕組みを△△までに構築する」とコミットしたならば、それがどのくらい実現できているかで当該の部署の評価の一環とすることもできるのです。この指標は、全社的にも重要な指標ですし、プロジェクトリーダーにとっても重要な指標です。あるプロジェクトリーダーが特に納期遅れを起こしているとしたら、彼/彼女の評価は当然低いものになります。また、部門横断的、あるいは機能横断的なプロジェクトについて、納期遅れの原因がある部署やプロセスに起因することが多いとしたら(例:営業の見積もりが甘く、最初から無理な納期を顧客に約束している)、その責任者の評価も厳しいものになるでしょう。その意味で、非常に多岐にわたる関係者の協力で初めて向上する指標であり、皆に関係のある指標ともいえます。この指標は過去の数字や業界平均などを踏まえ、自社の戦略方針なども加味して目標設定します。必ずしも100%が良いわけではありません。過度にバッファ期間を置きすぎてしまい、かえってスピードを削いでいる可能性もあるからです。したがって、顧客の不満を招かない納期の設定ができているかも適切に見極めたうえで、この指標を適切な範囲に設定する必要があります。なお、人間には楽観バイアス、計画バイアスというものがあることが知られています。これは特に新しいプロジェクトにおいては人々は楽観的な納期やコスト設定をしてしまい、実際にははるかにそれを超過するケースが多いというものです。それゆえ、新規性の高いプロジェクトについては、過去に類似の事例があったプロジェクトとは分けて管理をするのも1つの手です。この数字が高すぎても問題となる別の理由に、従業員の過重労働を招きかねないということがあります。IT業界の俗にいう「デスマーチ[★17]」はその典型です。納期を守ったとしても、顧客に転嫁できない残業代が増えたり、従業員の健康(身体的・精神的)を損ねては意味がありません。過労死などは最悪のケースといえるでしょう。コンプライアンス(法令順守)なども、正しく理解したうえでの納期設定とこの指標の運用が必要です。関連KPI納期オーバー日数、プロジェクト予算超過率

前項の納期順守率も重要ですが、そもそもの提供スピードが速いということも、このスピード重視の時代には重要です。ライバル企業に比べて提供スピードが速いことは、競争力にもつながります。このKPIについては明確な基準があるわけではなく、企業ごとの定義が用いられることが多いです。一番わかりやすいのは顧客から正式提案を受けてから納品までの時間ですが、それだけが企業の対応スピードを表しているわけではありません。例えば、営業の過程で「こんな感じの試作品ってできますか?」との相談を受けたとき、圧倒的な速さでそれを提供できれば、本受注に結び付く可能性は非常に高くなるでしょう。実際にそうしたスピードを活かして業績を伸ばしてきたのが日本電産です。同社は顧客の相談にのって試作品などを提供するスピードが極めて速く、その結果、商談などもどんどん進んでいきます。そしてライバル企業が提案を持ちかける頃にはそれは的外れなものになってしまっており、顧客は日本電産の製品を前提に物事を考え始めてしまっているのです。前記の事例からもわかるように、目標の基本はライバルよりも速いことです。日本電産のこだわりまでは真似できないまでも、例えばライバル企業が10日ほどで対応している事柄に対して1週間で対応できればそれは大きなアドバンテージになります。目標は全社や事業部レベルでも平均値として立てられますが、個別案件ごとに必要な時間は異なることも多いため、平均対応日数もさることながら、「ライバル企業よりも先んじた割合」なども案件ごとに確認していくといいでしょう。特に重要な顧客については、リソースをそこに集中させてスピードを上げ、受注の確度を上げるといった対応も考えられます。この指標は営業担当者が初期の提案書や、議論に必要な資料を顧客先に提供するようなケースにも援用できます。例えば通常の企業であれば1週間程度資料集めにかかるような件で、それを3日で提供できれば、顧客は「この会社はやることが速いな」と一目置いてもらえる可能性が高くなるのです。そのためには、単に個々人の能力が高いだけではだめで、適切な権限移譲が必要になります。日本企業にはかなり高い比率で「自分だけでは決められないので、上の者と相談してからお返事します」と顧客にいってしまう文化があります。全体のスピードを決めるのは作業のスピード以上に、こうした確認や相談、意思決定の時間であることは認識すべきでしょう。いうまでもなく、どれだけスピードが速くても、内容がプアなものだったりミスや不良品だらけでは顧客は評価してくれません。完璧主義はむしろ敵になることが多いのですが、あまりに拙速になってかえって不信感を持たれるような愚は避けましょう。関連KPI納期順守率、不良品率、各プロセスの平均所要時間

ほとんどの製造現場では、製造効率や収益性を向上させるために「不良品率の低下」を目標の1つに掲げています。この指標の数値が低いほど、良品を無駄なく生産し、顧客にも提供できていることを意味するからです。この指標から、その企業がどの程度積極的に品質管理に取り組んでいるかを推測することもできます。一般的に、この数字は低い方がいいとされます。不良品の多さはコストや納品スピードなどにおける競争力低下に直結するため、特に競争の激しい業界では業績不振の大きな原因となるからです。不良品の廃棄コストや追加生産に要する諸費用が増えれば、製造コストが上昇しますし、また、不良品率の高さはそのぶん良品の生産量が減ることを意味し、約束した納期・数量が守れない、欠品による販売機会ロスが生じるなどの弊害が出るおそれもあります。さらに不良品が市場に出回った場合、消費者がその商品や企業に対して不満や不信感を抱き、再購入を控えたり、競合商品に乗り換えたりするだけでなく、長年かけて培ってきたブランドイメージを損なう可能性もあります。不良品率は、理想的にはゼロにしたいのですが、それには多大なコストがかかります。そこで、顧客のニーズを見極めたうえで、費用対効果の高い目標不良品率を設定します。商材にもよるので一概にはいえませんが、例えば1万個に1つの不良品率に抑えるのが費用対効果上ベストだ、などと判断します。ここで注意したいのは、日本企業は往々にしてオーバースペックになりがちだということです。特に製造業では、それを武器に世界で戦ってきたという歴史もあるせいか、必要以上に品質あるいは不良品率の低さにこだわる傾向があります。日本人(日本企業にとっては自国民)が品質にうるさいという傾向もそれを正当化する根拠になります。飛行機の部品など、それが人の命に関わるような商材であればそれも仕方ないのですが、その必要性が低い場合でも過度に不良品率にこだわるのは得策ではありません。私は過去にある業界を取材した際、製品について以下のような趣旨のことをそのユーザーにいわれたことがあります。「日本製品は本当に不良品はないけど、アジア製のものに比べると5倍は価格が高い。アジア製のものは確かに100個に1個くらい不良品もあるけど、残った99個が生きていれば問題はないタイプの商材なのだから、日本企業ももっと考えるべきだ」。市場がどんどんグローバル化する中で、真に適切な不良品率を設定することは、企業にとって決して容易ではないのです。何をもって不良品とみなすかということの設定も実は簡単ではありません。例えば書籍という商品は、乱丁・落丁といった「モノ」としての不良品以外に、誤字・脱字のミスは必ず数カ所はあるものです。通常は1、2カ所程度の誤字・脱字であれば、書籍としての品質を落とすわけではありませんので、増刷時に直すことで対応すれば十分です。しかし、時には内容に大きな影響を与える誤字・脱字もあります。17世紀の有名な『姦淫聖書』(モーセの十戒の一部で、「not」を落としたせいで「汝姦淫するなかれ(Thoushaltnotcommitadultery)」が「汝姦淫せよ(Thoushaltcommitadultery)」になってしまった)といった極端な例もあります。どの製品のどこにエネルギーを用いるべきかを決めるのは容易ではないのです。関連KPI生産期間、トラブル件数、リコール数

改善(カイゼン)はKAIZENというローマ字でそのまま世界中で通じることからもわかるように、日本が生み出した誇るべき経営手法です。特に製造業においては従業員にカイゼン提案を出すことを強く奨励し、そこから具体的な改善のためのアクションにつなげていることも少なくありません。カイゼン提案数の多さは、その企業の品質に対するこだわりや生産性向上への意思の表れと見ることができます。カイゼン提案数は多いに越したことはありません。なぜなら提案というものは「量は質に転化する」という側面もあるからです。10件の提案しかなければ「当たり」が含まれる可能性は小さいかもしれませんが、1000件も提案があれば、そこに一定のインパクトをもたらすものがいくつか含まれる可能性はがぜん高くなるのです。もちろん、総数だけではなく、従業員当たりの数字もあわせて見るといいでしょう。カイゼン提案数は全社のものも重要ですが、現場単位でも集計し、比較するとよいでしょう。カイゼン提案で有名なのはやはりトヨタ自動車です。同社では、従業員数が多いことは別にしても、毎年数十万件のカイゼン提案が集まるそうです。使えそうなものはすぐに各工場に横展開されて現場で用いられます。そうしたことが世界的な競争力を誇るトヨタ流生産システムの土台となっているのです。カイゼン提案数は、単に増えればいいというものではなく、いいものはしっかり現場で活用することが大事です。それがないと結局は現場のモチベーションは上がりませんし、当事者であるという意識も湧かないからです。カイゼンへの意思は組織文化そのものともいえますので、トップを始めとする経営陣が本気度を見せることが必要です。「うちはせっかく報奨金の制度も作ったのにカイゼン提案が来ないね」などとぼやくケースもあるようですが、それは経営陣の本気度の弱さを反映しているのです。その意味では、提案数だけを見るのではなく、経営陣や現場責任者がどのくらい実際にそれを活用したかという件数もあわせて見るといいでしょう。京セラ創業者の稲盛和夫氏がJALの再建をした際、年間で数千円程度のコスト削減につながる提案が若手社員よりあったそうです。「その程度で」と思った経営陣もいたようですが、稲盛氏は「こういう提案こそが大事なんだ」と経営陣を戒め、当該の若手社員を褒めたといいます。ここからも、経営陣の本気度を反映する数字といえることがわかります。提案数は、合計数も大事ですがバラつきも意識したいものです。一部の社員ばかりが提案をして他の社員はゼロといった温度差があるのは好ましくありません。1人でも多くの社員が当事者意識を持ち、何かしらの提案をする状態がより望ましいといえるでしょう。カイゼンのうまい企業では、提案フォームをフォーマット化し、また情報を上げるルートなども明確化することで総数を増やしています。関連KPI不良品率、提案採用率

何をもって重大なトラブルとみなすかは業界や企業によって異なります。自動車業界であればリコールや自動車に起因する運転中の事故などが該当するでしょうし、私立大学であれば教員や学生の不祥事、個人情報の漏洩、学内での事故、ブラック労働による訴訟などが該当するでしょう。これらは組織の評判を下げるだけではなく、トラブルシューティングにトップの多大なエネルギーを費やさせるなど、直接的、間接的にダメージを与えることになります。一般論でいえばトラブルは少ないに越したことはありません。業界ごとに報告義務があり比較が容易なもの(例:リコール件数など)については、まずは競合以下にこの数字を収めることが必要です。また、自社でコントロール可能なものだったか、極めてそれが難しかったかの区分けも大事です。例えば東日本大震災時の福島第一原発の件も、どこまでを東京電力の責任とすべきだったかは容易に決められません。べき論としてはゼロを目指したいところですが、人間が行う営みである以上、トラブルが起きないということはまず稀でしょう。業界他社の状況や経年比較も踏まえつつ、減らす努力をするのが一般的です。ただ、現実的には難しい面もあります。よくあるのはトラブルがあったにもかかわらず、それをもみ消し、上層部には報告しないというパターンです。なまじトラブル数を評価項目にした場合などにこうした事態は起きやすくなります。例えばセクハラやモラハラといったやや主観的な案件について、本来は報告すべきところ、本人に直談判するなどしてなかったことにしてもらうという人は多いかもしれません。しかしこうしたことが蔓延すると、さらに大事(例:自死や週刊誌沙汰など)になることもあるのです。また、トラブルを防止しようとして過度なルールを設けることも善し悪しです。例えば私立の中学校や高校では、厳しい校則を設ける学校が少なくありません。「飲酒・喫煙禁止」といったものは内容的にも妥当でしょうが、「男女交際禁止」あたりになると、人権的にも問題ですし、人格の形成上も好ましいといえないかもしれません。「SNS禁止」「LINE禁止」なども、情報リテラシー教育の観点からは微妙です。必要以上に過度なルールを設けて萎縮を招くことも望ましくはないのです。トラブル件数も大事ですが、そのトラブルにいかに対応したかが企業の評判を左右することも忘れてはいけません。通常のクレーム対応もそうですが、そこで誠実に対応するか、不誠実に対応するかが、尊敬される企業とそうでない企業の分水嶺となるのです。COLUMNトラブルにうまく対応した例として有名なのが、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のタイレノール事件におけるアクションです。これは、同社の「タイレノール」という薬剤に店頭で毒が混入されるという事件でした。このとき、J&Jは自社の責任ではなかったにもかかわらず、多額の費用を投下し、製品をすべて市場から引き上げました。そして毒が混入できないようなパッケージにして市場に再投入したのです。瞬間的にはコストがかかったものの、「さすがJ&J」と評判が高まり、むしろ従前よりもブランドイメージが向上したのです。関連KPIリカバリーに要した時間、ダメージ額、ヒヤリ・ハット報告数、ブランドイメージ

この指標を理解するうえでは、俗に「ヒヤリ・ハットの法則」とも呼ばれる「ハインリッヒの法則」を理解しておく必要があります。これは、1件の重大な事故の背景には、29件の軽微な事故と、300件のちょっとした異常(ヒヤリとしたり、ハッと青くなったこと)が存在するという経験則で、発見者のハーバート・ウィリアム・ハインリッヒの名に由来します。つまり、報告が適切になされているのであれば、300件もこの報告があると、重大な事故が起きうるほどの環境にあると判断できるわけです。この数字は低いに越したことはありません。ただし、実務的に難しいのは、そうした報告は必ずしも上がってこないということです。本来は日頃からそうした報告を奨励し可視化することでクリティカルな事故に至らないようにすることが大切なのですが、「報告をしたら怒られるのではないか」「報告をするまでもないだろう」といった従業員側の判断が入る結果、実態以上に少なく見えてしまうのです。工場や建設の現場、あるいは交通機関や病院など、トラブルが人の生死に関わる業界では比較的早くからこの指標が重視されてきました。そして実際に重大な事故が起こる前にそれを回避する手が講じられてきました。人の生死は経営マターですから、こうした職場では、現場のリーダーのみならず、経営者もこの指標を重視してきました(もちろん具体的な内容にも注意をむけます)。そうした組織では「ヒヤリ・ハットは報告するもの」という意識が浸透していることが多く、純粋にそれが減るように手立てを講じることができます。難しいのは、経営的に重要であっても、必ずしも人の生死に関わるような事故には至らないような業界での運用です。例えば英会話教室などはその例で、ちょっとしたトラブルがあったからといって、先述した現場とは異なり、直接人の死を招くわけではありません。一方で、個人情報の漏洩などは経営的に非常に大きなダメージを与える可能性があります。これからはそうした企業であっても、ヒヤリ・ハット(例:メールで個人情報の入った内容を誤送信しそうになった)を報告し、つぶしていくことが望まれます。ヒヤリ・ハットの報告を促す際のポイントとして、個人攻撃や犯人捜しに走らないことが重要です。つまり、個人のせいではなく、それを誘発したシステムの方に問題があると考えるわけです。トヨタ自動車ではこの発想が徹底しており、それが同社の高い生産性にもつながっているのです。筆者の聞いた話ですが、トヨタ自動車のある海外工場の生産スタッフは、あるときラインを自らの判断で止めました。企業によってはそれを非難されることもあるのですが、その社員は「ラインを止めてくれてありがとう」といわれ、非常に感激したそうです。関連KPIトラブル件数

この数字が高いということは、もともとのプロジェクトのコスト見積もりが甘い、あるいはプロジェクトの進捗管理がしっかりしていないなど、その企業のプロジェクトマネジメント能力の低さを表します。プロジェクトはあらゆるレベルのものに援用できますが、特に巨額の投資となりやすいITプロジェクトや、オフィスの移転/建設プロジェクトなどでこの数字は重要となります。また、ビジネスそのものがプロジェクトの集合ともいえるSIerやエンジニアリング会社にとってもこの数字は重要な意味を持ちます。この数字は一般には低い方がいいように思われますが、低すぎるのも問題があるケースがあります。例えばあるシステム関連のプロジェクトで60%の予算しか使わなかったとしましょう。そのプロジェクト単体で見ればこれはいい話に見えますが、その予算を確保しようとして、本来手掛けていたらよかった別プロジェクトの予算にまでお金が回らず、その別プロジェクトへの着手が遅れてしまったりということがあるからです。その意味ではちょうど100%近くになることが、事前見積もりの正確さも反映していていいように思えますが、それにも問題があるケースがあります。つまり「せっかくの予算を使い切らないともったいない」などと考え、必要性の低い追加発注などをしているケースもあるからです。この指標を意識すべきはやはりプロジェクトマネジャーです。ただし、予算は守っても納期遅れや品質に問題があっては意味がありませんので、いわゆるQCDをバランスよく達成することが求められます。そのため、納期オーバー日数などと同時並行で活用されることが多い指標です。また、全社的には、(どこまでのプロジェクトを含めるかは要検討ですが)会社全体としてどのくらい予算をオーバーしたプロジェクトがあるかを時系列で把握しておくことも有効です。予算超過率(特に社内のプロジェクト)はライバル企業と比較することが一般には難しいため、自社の過去の数字やプロジェクト間での比較が重要になります。ここで難しいのはそれまでに経験のないタイプのプロジェクトを行う場合です。類似のプロジェクト経験がある場合は過去の実績からそれほど大外れしない予算が導けることが多いですが、新規性の高いプロジェクトの場合、WORDS038[KPIの使い方]でも触れたように、「計画バイアス」と呼ばれる、根拠のない「まあ、何とかうまくやれるだろう」というバイアスが生じることが知られています。その結果、予算超過100%超ということがしばしば起きます。先述したように過度に保守的になるのも問題ですが、逆に楽観的になりすぎないよう、多面的にチェック機能を働かせることが重要です。以上からもわかるように、この数字自体は、どの数字がベストかとはいえない部分が大です。先に挙げた例以外にも、下請けに無理難題を押し付けて予算を何とか死守したとしても褒められたことではありません。また、社内ではコントロールできない要因で予算を超過するケースも多々あります。あるエンジニアリング会社では、アメリカのプロジェクトにおいて、巨大タイフーンの影響や(予想外だった)トランプ政権誕生による移民規制などで熟練工の確保が難しくなった、などということもありました。数字は数字で管理しつつも、その内容をしっかり検討する必要性の高いKPIといえます。関連KPI納期超過日数、追加発生費用、プロジェクト後のユーザー満足度

ロボットとは、狭義には生産現場などにおける産業用ロボットを指しますが、より広義にはコンピュータやITの力でそれまで人がやっていた仕事をロボットに置き換えるもの全般に当てはまります。銀行のATMなどもその意味で広義のロボット化といえるわけです。投資銀行がトレーディング業務をほとんどコンピュータ任せにしたのも同様です。人口が減り、しかもテクノロジーが進化する中で、ロボット化を進めることは必須の流れといえます。この数値の高い企業はそうした時代の潮流に乗った企業といえるでしょう。この指標は、どこまでをロボット化されていない状態とみなすかで少し変わってきます。例えば電卓もそろばんのロボット化と捉えられなくはないですが、それはやや極端です。常識的に「それまで人がやるのが当たり前だったプロセスを、どのくらいロボットに置き換えたか」で見るといいでしょう。他社との正確な比較は難しいですが、自社内では定義を明確にしたうえで、毎年上げていくことが望まれます。この指標は生産や物流(ロジスティクス)といった、「機械で置き換えたこと」が明確な部署、いい換えれば身体的な作業が見極めやすい部署で多用されてきました。例えばロボット化率が25%の工場で、2025年までに50%を目指すなどです。先進的な工場ではすでに99%のプロセスをロボット化しているところもあります。ただ、近年はAIの進化もあって、RPA(RoboticProcessAutomation)やオートメーション化が進んでおり、その影響はそれまで定型化が難しかったホワイトカラーの業務にも及んでいます。例えば営業であれば、WORDS015[概要]で触れたようにSFA(セールスフォースオートメーション)のソフトを活用して見込み顧客のナーチャリングを行い、途中で人的販売に切り替えるなどです。そうした企業においては、そこまでのプロセスをどのくらい機械に置き換えたかという「ハイテク営業比率」をロボット化率とほぼ同じ意味で用いる場合があります。世の中はDX(デジタルトランスフォーメーション)の時代です。機械に置き換えられるものはどんどん機械化されていくでしょう。これからは、生産や物流、あるいは営業といった部署以外でも、ロボット化率と同等の意味を持つ指標が設定され、どこまでDXが進んでいるかの目安となることが予想されています。ただし、ロボット化は同時に人員の配置転換なども必要とすることが多いため、その目標設定に当たっては、戦略面のみならず、人事的な側面なども勘案する必要があります。ホワイトカラーの業務の機械化は、当初は一定のトラブルも発生するものです。例えば採用にAIを活用してスクリーニングを行おうとしたところ、過去の機械学習が不適切で、好ましい結果が得られなかったなどです。ただし、そこでひるんではDXは進みません。トラブルから学びながらもリーダーシップを発揮することが経営者には求められます。DXはトップレベルの強いコミットメントがないと成功しないことが、さまざまな調査からわかっているからです。関連KPI資本分配率、ハイテク比率

この数字は一般には低い方がいいといえます。気をつけたいのは、業界によってロスの主な理由が異なる点です。製造業であれば出荷後の事故による破損(その意味で不良品とは異なります)や物流過程での紛失や盗難、小売業であれば廃棄や万引き、飲食業では廃棄がその主要な要因になります。業界による差異はありますが、ここでは小売業を例にとりましょう。小売業のタイプにもよりますが、概ね1%から3%程度がロス率の1つの目安とされます。小売業界では大きく「廃棄」と「その他」に分け、さらに「その他」を「外部要因(万引きなど)」「内部要因(従業員不正)」「不明」などとして分類します。ロスの原因は商材による差異が大きく反映されます。例えば書店は委託販売(売れない書籍や雑誌は取次に返品できる)という制度の関係で廃棄ロスは少ないですが、万引きの被害が多くなっています。特にコミックのカテゴリーでは高いとされます。ドラッグストアなども万引き被害の大きな業界です。一時期のマツモトキヨシのように「万引き上等」ともいえる陳列で顧客を集めた例もありますが、やはり例外です。一方、生鮮食品を扱っている商店などでは、やはり賞味期限切れによる廃棄ロスの比率が増えます。先述の通り、業界や商材などで原因は大きく異なってくるため、単にロス率という合計で見るだけではなく、商材別や重要なロスの原因別など、細分化して測定・管理する必要があります。この数字の設定に当たっては、過去のトレンドや業界で平均とされる数値をまずは参照します。例えばスーパーでは青果の廃棄率は平均で3・5%程度、総菜は10%程度とされていますので、まずはそれを意識します。多店舗展開している小売店や飲食店の場合、店舗間でのロス率の比較も非常に重要です。例えばある店舗で明らかに廃棄ロスが多い場合、発注見込みの甘さや陳列の不徹底(賞味期限の早いものほど前に出して並べるという基本を怠っている)などが考えられますので、店長や売り場責任者にしかるべく指導することが必要となります。一方で、廃棄ロスを恐れるあまり在庫を持つことを躊躇しすぎると、今度は販売機会ロスが生じ、全体の売上げを減らすことにもつながりますので、適切な範囲の数字を模索することも必要です。ロスの削減はいつまでも人手に頼ると人件費がかさんだり、店舗ごとのばらつきが出るという問題があります。例えば万引きであれば、昨今はデバイスの価格も下がっていますので、チップの埋め込みとアラーム機器で対応するなど、全社的に取り組む方が効果も出やすく、店長に対する心理的プレッシャーを低減することにもつながります。顧客からしても「ちょっとカバンの中を見せてください」などと勘違いしていわれるより、機械の誤作動の方が印象は悪くないものです(もちろん程度問題ではあります)。回転寿司チェーンのスシローは、ベルトコンベアに流す寿司について、ビッグデータとAIを用いた需要予測システムを使用しています。回転寿司の皿にICチップをつけて単品管理し、過去の膨大なデータも活用して1分後と15分後に必要なネタと数量を予測します。それを見て職人が寿司を握るのです。これにより、従前の経験に頼る方法に比べ、寿司の廃棄量を75%カットすることができたといいます。適切な機械化は非常に大きな恩恵をもたらすといえるでしょう。関連KPI廃棄ロス率、万引き数(金額)

物流は見落とされがちですが、競争優位の源泉になることも少なくありません。その典型は、かつてのウォルマート(リアル店舗で全米ナンバー1)、近年ではEコマースのアマゾンでしょう。両社とも積極的に物流に投資することで顧客に対する利便性を増し、シェアを拡大してきたのです。この数値が業界標準に比較して高い会社は、積極的に物流に投資している企業か、逆に物流のマネジメントがプアで売上げに対する比率が上がっているかのどちらかといえるでしょう。この数値は業界によって差が出ますので、業界平均との比較が大切です。日本の製造業の場合、概ね4、5%とされていますが、比較的安価な商材や、「足の早い商材」を扱うとこの数値が上がる傾向があります。食品や紙・パルプなどはその典型です。逆に精密機器などは「嵩張らない割に高額」な商材ということもあって、物流費の占める割合は高くありません。製造業に比べると、小売業などはずっと物流費の比率が高まります。業態的に高いのはやはり通信販売で、商材としては生鮮食品などが高めになります。近年浸透してきたデジタル商材(動画サービスなど)などは、物流費がほとんどゼロに近い企業もあります。昔から物流は「(コスト削減の)宝の山」とされ、いかに効率化するかに目が向きがちでした。トラックの積載率を高めたり、より物流費用が安い業者を探すということがよく行われていました。しかし、それを全く変えてしまったのが先述したアマゾンです。21世紀初頭には10%を超えていた売上高物流費は、一時期6、7%程度にまで下がったそうですが、近年ではフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)のサービスを展開したこともあり、物流費率は再び10%を超えるまでになっています。FBAはアマゾンの物流拠点に商品を預けるだけで、商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでアマゾンが代行するというものです。この例からもわかるように、売上高物流費率は、単に物流担当者が減らすことを目指す数字ではなく、経営者や事業部長が戦略とともに設定する数字に変化しつつあります。物流は、内製か、アウトソースするかという課題が常に付きまといます。その分水嶺となるのはやはり稼働率です。戦略的に投資したとしても、その稼働率を高め、単位当たりのコストを下げる努力は常に必要なのです。COLUMN経営戦略論の大家であるマイケル・ポーター教授は、物流バリューチェーンのフレームワークを提唱した際に、物流を購買物流(製品の原材料や商品を外部から調達して貯蓄・配分する活動)と出荷物流(完成品を顧客に提供する活動)に分けました。例えば自社が原材料や商品の提供者に対して強い立場にあるのであれば、それぞれの原材料や商品の出荷物流を彼らに負担してもらうことが可能となり、その分コストの削減ができるのです。関連KPI物流費、物流外注費、顧客への平均配送日数

この指標は特に製造業や研究型のIT企業などで重視される数字です。一般的に、この数字が高いことは新製品の開発に旺盛に取り組んでいることを意味します。事実、技術競争が激しい業界や、技術を軸にコア・コンピタンス[★18]や競争優位を築いている企業では、数値が高くなる傾向があります。それに対して銀行などの業界ではこの費目自体がないこともあります。この指標は業界他社との比較が大切です。ただ注意点もあります。同じ業界であればこの数字が大きいほど研究開発に熱心といえそうですが、この指標はあくまで率なので、実際の研究開発額もあわせてウォッチしておくことが必要です。例えば製薬業界では、医科向けの新薬を1つ開発するためには、現在1000億円の研究開発費がかかるとされています。これはどのような薬であってもそう変わりません。期間も10年以上を要します。したがって、仮に売上高研究開発費率が同じ10%だとしても、売上高10兆円の企業と5000億円の企業では、その研究開発費の額は大きく異なり、新薬開発の成功率も大きく変わってくるのです(医薬品業界でM&Aが盛んなのはそうした背景もあります)。なお、当然のことながら、この指標の数値が高いからといって、技術的な成果や売上げや利益が約束されるものではないという点には注意が必要です。時には非常に小さな研究開発投資で大きな成果が生まれることもあります。ノーベル賞を受賞した中村修二博士が青色発光ダイオードを開発して間もなくの日亜化学工業などはその典型です。この指標は会社全体としても事業部レベルでも設定します。設定に当たっては、先述のように業界他社との比較や経年変化、戦略などを勘案しながら設定します。例えば自社の戦略を「画期的な新技術は追わず、既存技術を軸に商品展開を行う」などと変更すれば、この指標の目標も変わるということです。実際にこうした戦略によって、この数値を低い水準に抑えている企業もあります。医薬品業界ではジェネリック医薬品に特化した企業などがその例です。なお、研究開発は将来の収益基盤を創造するための活動なので、設備投資などに比べ、景気の影響などを受けて大きく変えるべきではないという意見がかつては多数派でした。「うちは研究開発費が多い」ということが採用の際に優秀な技術者・研究者を引き付ける武器ともなるという側面もありました。それゆえ固定費的性格が強い費用でもありました。この傾向は今でも残っていますが、近年ではそうした「聖域」にもメスを入れ、研究開発に効率性や採算性を求める動きも盛んになっています。近年増えてきたオープンイノベーション(WORDS052[概要]参照)などは、極力研究開発の効率を上げようとする動きと捉えることができます。業態にもよりますが、研究開発費の多くを占めるのは研究員の人件費です。それゆえ、この比率や実額を下げるという方針を出すことは、研究者のモチベーションを下げる危険性があります。また、オープンイノベーションも長い目で見ると自社の研究開発力を下げるケースがあるという研究結果もあり、適切な数字の設定は容易ではありません。ただし、放っておくと現場からの研究開発費の増額要求はとどまることを知りませんので、やはり歯止めは必要です。関連KPI研究開発額、開発期間、研究者数

特許は研究開発が重要なビジネス(製造業などが典型的)においては重要な要素です。特にニーズの高い商品について基本的な特許を数多く持っていることは、その企業の競争力の高さや、それを支える研究開発陣の優秀さを示します。この指標は、定義からもわかるように、新規のものと過去からのストックの両面で見るのが一般的です。特許には年限がありますので、過去にたくさん特許をとった時期があった場合、それ以下の新規特許しかとれなければストックは減ることになります。また、特許にも、新規の特許と改良特許、要素技術に関わるものと生産プロセスに関わるものなど、いくつかの種類があるので、企業の戦略にあわせてブレークダウンしてみることも必要です。例えば基礎研究にはそれほど力は入れていないものの生産に力を入れている企業であれば、生産プロセスに関する特許の方がより重要と考えるなどです。一般的にこの指標を気にするのは研究開発部門です。通常は企業戦略や過去のトレンドなども勘案して、競争力を維持できる特許数を検討し、それを目標に設定します。中央研究所がある企業の場合、その業績評価の項目として新規に取得した特許の数が盛り込まれることが少なくありません。研究所の中にいくつかの研究グループがある場合、グループごとに目標特許数が割り当てられることもあります。研究開発は他の事業活動よりも長いスパンで考える必要があるため、単年度の数字に過度にこだわるというよりは、比較的中期的なスパンで評価される傾向があります(企業や業態によって異なります)。特許数が多い企業は研究開発に熱心であるとともに、研究環境が良好なことを示すことが多いため、研究開発畑の従業員の採用の際の武器にもなります。これは論文数なども同様です。ストック面の特許数に目を向けると、近年は外部から特許を買う(あるいは他社に特許を売る)という動きも活性化しています。研究開発部門のリーダーや知財部門のリーダーなどは、こうした状況も鑑み、社内で開発された特許だけではなく、特許の売買数なども目標設定することが増えています。なお、特許には強い特許と弱い特許があります。強い特許とは、企業の業績に貢献し(自社製品の売上げにつながり、ライセンス供与先からの特許収入なども大きいなど)、かつ容易に模倣されたり代替手段が出てこないような特許です。かつてコピー機市場をゼロックスが独占できたのは、そうした強い特許をたくさん持っていたからです。それゆえ、特許の数のみにこだわるのではなくその質を見ることも大切です。一般的に研究者という職種は、企業の業績よりも論文数や特許数の方に関心が高いという人の比率が高い傾向があります。それゆえ往々にして個人の関心に走ってしまい、「知的には面白いけど、強くない特許」ばかりを追い求めることが稀にあります。また、個人やチームレベルの評価で特許数をあまり強調しすぎると、企業の業績にはそれほど寄与しない、とりやすい特許ばかりをとろうとすることもあります。チームリーダーや研究部門のリーダーはそれも意識して目標設定し、適宜指導する必要があります。関連KPI論文数、特許収入、クロスライセンス件数

どのような製品にも通常はプロダクトライフサイクルというものがあります。ライフサイクルの長さはビジネスによってそれぞれですが、昨今はあらゆる業界でそれが短期化しており、それゆえかつてより速いスピードで新商品を出す必要性が増しています。新商品がコンスタントに出ている企業は一般に市場対応力や製品開発力が優れていると考えられます。この指標は、概念自体は非常にシンプルなのですが、「何を新製品とみなすのか」ということの意識合わせは必要です。例えばカルビーという会社には「ポテトチップス」という超強力な定番製品があります。特にコンソメ味などは長年にわたる売れ筋です。仮にそこに「ポテトチップス薄口コンソメ味」という製品を市場導入したとして、それを全くの新製品(例えば二十数年前に初めて「じゃがりこ」という製品が出たとき)と同列とみなすかどうかは意見が分かれるところでしょう。過去の製品のエッセンスを9割程度残してリニューアル商品を出した場合も、それを純粋な新製品とカウントするかは微妙です。必要な手間暇やイノベーションの度合いなども勘案し、「何を新商品と考えるか」の線引きをしっかり行ったうえでこの数字を見る必要があります。あるいは、最初から「全くの新商品」「派生商品」「リニューアル商品」などと細分化してみるのも1つの考え方です。この指標は全社的にも意識されますし、事業部長や製品開発担当者、マーケティング担当者などが強く意識する数字です。一般には、業界の重要なライバル(例:アサヒビールならキリンビール、東京海上日動火災保険ならSOMPOやMS&ADなど)との比較が非常に重要となります。目標設定に当たっては、そうした要素や、先述したように、既存の製品がプロダクトライフサイクルのどの段階にあり、今後の売上げがどう推移しそうかという予測などが勘案されます。なお製品開発に要する期間はビジネスによって全く異なります。航空機のように非常に長い業界もあれば、出版社(特に雑誌やムック)のように比較的短い業界もあります。それゆえ、PDCAのサイクルもそれを反映したものになります。また、特に開発期間が長いビジネスでは急に新商品は出ませんので、開発パイプライン(例:基礎研究→製品化研究→量産化準備→マーケティング検討中など)の各ステージに現在いくつの仕掛案件があるかを正しく認識しておくことも必要です。一般には新製品数が多いことは望ましいことですが、時にはチャネルや顧客の強い声に負けて必要性の薄い新製品を出すというケースもあります。例えばBtoBのビジネスで重要顧客向けに特注製品を作ったものの、他社には売れない、といった例です。経営資源は限られていますので、真に競争力強化や成長につながる製品開発にフォーカスできているかを吟味することも必要です。関連KPI新製品の売上高比率、開発期間

他企業とアライアンスを結んだといったケースを別にすれば、特に製造業やコンテンツビジネス(ゲーム、映画、書籍など)では開発というプロセスを経ることになります。業態にもよりますが、開発案件数の多さは最終製品の数の多さや質(量が多い方が、良いものが含まれる確率も上がる)にもつながりますので、企業内でどのくらいの開発案件があるのかを把握しておくことは、そうしたビジネスでは非常に重要になります。この指標は業態や、何を「案件」とみなすかで大きく変わってきます。特に製造業では基礎研究も行っていることが多いのですが、どこからを案件とみなすかは企業によっても大きく変わってきます。一般にはある程度最終製品をイメージした「テーマ」となった段階で案件とカウントすることが多いようです。一方、映画や出版などは、ジャストアイデアのものまでを企画と考えると多すぎることになるため、企画書レベルになったものを案件数と考えるといいかもしれません。開発案件数は一般にはパイプラインのどこにあるかを意識して、それごとに把握するケースも多々あります。書籍出版中心の出版社であれば、「企画書段階~執筆前段階のものが○○件」「執筆開始~執筆が軌道に乗るまでの段階のものが△△件」「執筆が軌道に乗る~初稿段階までのものが□□件」「初稿~ゲラ段階のものが◇◇件」「ゲラ~発売段階ものが☆☆件」などです。この数字は開発に関わる部門の人間や事業部長などが意識する数字です。例えば過去の数値などと比較してパイプラインのどこかが減少している場合、あるいはパイプライン全体のバランスを見てどこかが細っている場合、それは将来新製品の数が減ったり、新製品の発売時期にムラが生じる(それゆえ従業員の繁閑にも影響を与える)ことを意味し、好ましいこととはいえないでしょう。それゆえ、目標設定に当たっては、目標とする新製品数やその売上高などを意識したうえで、過去の「開発案件が最終製品化された当たり率」の実績なども勘案し、「パイプラインのこの部分には概ねこのくらいが入ることを定常の状態として目指そう」などといったやり方をします。案件ばかりが増えても製品化、さらには売上げにつながらなければ意味はありませんので、その案件が製品化された場合の期待売上げやその確度、さらには自社の戦略との合致度なども同時に検討すべき内容といえます。昨今は働き方改革の影響などもあって減りましたが、かつては「闇研」と呼ばれる「コッソリ研究」から生まれたヒット製品もありました。今でも3Mやグーグルのように勤務時間の一定比率は自由に使っていいという企業もあります。KPIであまり管理しすぎると、創造性を阻害したり、「尖った」アイデアが出にくくなるという点も意識してマネジメントを行う必要があります。関連KPI次のプロセスへの通過率、売上高研究開発費率、新製品数

近年、オープンイノベーションが叫ばれています。つまり、外部で開発された技術や商品などを買収したり提携するなどして社内に取り込み、開発期間の短縮化や事業拡大のスピードアップを図るのです。この比率が高いことは、積極的に外部の知恵を活用している企業といえるでしょう。なお、シーズとはもともと種の意味で、最終的な事業や製品につながる技術のことを指します。この指標は定義を揃えにくいこともあり、企業間比較が難しい数字です。それでも「コネクト&ディベロップ」戦略で有名なP&G社は、「オープンイノベーション推進のため、外部との協力によるイノベーションを50%にする」といった、常識的に考えても高い目標設定をしています。一方で、オープンイノベーションを推進しすぎたことで、P&G本体のR&D力が弱まったとする意見などもあり、その適度なバランスは難しいものがあります。この数字はまた「年間の件数」といったレベルだけで見ると判断を誤る可能性があります。例えば製薬メーカーであれば、海外の企業を丸ごと買収したという案件と、通常の大学との提携を同じ次元では語れないでしょう。製品開発のパイプラインのさまざまな段階で見ること、そして中長期的な視点も盛り込むことが大切です。この数字を特に意識するのは研究の責任者や事業部長などでしょう。営業部門などは、売れさえすれば自社開発製品にこだわらない傾向がありますので、この指標にはあまり意識を向けないことが多いです。先述したような理由もあって、この数字の目標をどこに定めるとその会社にとってベストなのかの設定は容易ではありません。現実的にはこのKPIそのものは参考数値的に扱い、開発案件数や新商品数、開発期間などをより重視している企業が多いようです。こうした指標を上げようとすれば自ずと社外シーズにも目を向けざるを得なくなるからです。とはいえ、技術者にはNIH(NotInventedHere)症候群という、社外シーズを軽く見る(見たい)という傾向があります。その傾向が強すぎるようであれば、社外シーズ比率をあえて明示的に示し、昨対比で〇〇ポイントアップといった形で、達成すべきKPIとして提示するのも1つのやり方です。社外シーズはさらにタイプ別に分けると状況の可視化が進みます。例えば「企業買収」「特許等の取得」「製品やコンテンツの取得」「企業間提携」「大学との提携」他に分けるなどです。COLUMN技術的なシーズではあまり起こらない話ですが、コンテンツなどのシーズを外部から持ってきた場合、もともとの著作権を有するコンテンツの原著作者とトラブルが生じる場合があります。特に著作者人格権は見逃しがちですが重要です。例えば著作者人格権に含まれる同一性保持権は、「自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利」を保障しています。契約に当たってはこうした部分をしっかり認識し、詰めておくことも必要です。関連KPI新製品数、開発案件数、開発期間、研究者数、共同研究数

この指標は市場の変化やニーズに合わせてタイムリーに新製品を投入できるかどうかを示す指標の1つです。近年は技術変化が早く、製品ライフサイクルも短くなる傾向にあるため、新製品をタイムリーに市場に投入することの重要性は高まっており、この数字の短期化が求められています。この指標は、商材のタイプによって大きく変わってきます。多角化している企業であれば、無理に全社平均を出す必要はなく、商材のタイプごとの平均を見ておけば十分でしょう。例えばソニーであれば家電と金融と映画は別々に見るということです。この指標が短いことは、機動的に新製品を導入できる可能性が増すことを意味します。新製品をタイムリーに投入できれば、売場の活性化に貢献したり、売れ行きの悪い既存製品を代替することが可能です。逆に、開発期間が長くなれば、陳腐化した製品に代わる新製品の投入が遅れるため、店頭での棚の確保が難しくなったり、売れ残り品が不良在庫になるなどして、企業の収益性悪化につながるおそれがあります。さらに、市場にアピールできる新製品がないことは、販売担当者の意欲低下を招きかねません。この指標は、製品開発部門の人間、特に中央研究所以上に事業部の製品開発責任者が強く意識します。また、テストマーケティングから正式発売になるまでに時間を要することもあるので、マーケティング部門の人間も意識すべき指標です(例えば3Mの「ポスト・イット」は最初のテストマーケティングから全米発売を最終決定するのに3年を要しています)。先述したように、これが長引くことは通常は好ましくはないので、過去のトレンドを見据えたうえで、短期化するように設定します。なお、シーズとなる基礎研究はすそ野が広いため、どの時点を製品開発のスタートとするかの判断は難しいですが、ある程度用途を見据えてテーマを設定し、研究を始めた時点を開始時点とするのが一般的でしょう。特定の製品の開発期間については、通常は過去の類似製品を参考に設定します。メーカーの場合、製品の企画・設計、試作品のテストやシミュレーション、生産部門における量産設計、テストなど、さまざまなプロセスを経るため、トータルの数字だけではなく、各プロセスの数字をめどとして設定することもあります。昨今はAIによるシミュレーションや3Dプリンターといった新技術も登場しており、あらゆるプロセスの短縮化に貢献しています。これらを適切に用いることが期待されます。一般に開発期間は短くなることが好ましいですが、この指標を重視するあまり「粗製乱造」や「多産多死」を招くようでは本末転倒です。また商材にもよりますが、売れないだけでなく、製造物責任(PL)[★19]が問われるような事故を起こしては企業の存続にも関わります。短縮する努力はしつつも、品質管理なども含め各プロセスの質を同時に挙げていくことも必要です。COLUMN製品開発期間を短縮化する必要性の高い業界にアパレルがあります。なぜなら、特にファッション性の高いアパレルの場合、流行期間を逃してしまうと一気に売れなくなってしまうからです。そこで登場した手法が、ベネトンの無地のものを縫製してからの染色であったり、ザラの「流行がわかってからの超高速市場導入プロセス」です。今となっては当たり前に見える手法も、プロセスにイノベーションを起こしたことで成り立ったのです。関連KPI新製品数

この指標が高い場合は一般に、新製品が顧客に受け入れられたことを意味し、研究開発やマーケティング活動が効果的であり、業界内で競争力を維持できていることを意味します。この数字にこだわっていることで有名なのは「ポスト・イット」などでもお馴染みのアメリカの3Mでしょう。同社では「過去5年以内に発売した製品で全社売上げの40%を占める(数字はしばしば変更される)」といった目標を掲げ、従業員を鼓舞しています。同社は非常に強い技術基盤を持つ企業としても知られていますが、それらを有効活用して、新しいアイデアをどんどん出し、どん欲に製品化することを目指しているのです。この数字は全社的に重要な数字ですが、各事業単位で設定することもあります。「過去何年間」の数字を取るのが妥当かは、その業界の環境変化の速さなどによって変える必要があります。一般論としては、昨今は顧客のニーズがどんどん変化しライフサイクルが短くなっていますから、「10年間」などは長すぎでしょう。この数字はまず、時系列で見たときに極端に下がらないようにすることが重要です(3Mのケースでは、この数字をKPIとしてからは、基本的に右肩上がりになっているようです)。同業他社との比較も大事ですが、他社の売上数値が簡単に取れない業界もありますので、その場合はラフに推測をします。正確な数字は取れないまでも、明らかに他社がどんどん新しいヒット製品を出しているのに、自社が出せていない場合は赤信号です。新製品には大きく新事業部におけるものと既存事業部におけるものがあります。通常、新事業の新製品寄与率は高めに、既存事業部のそれは相対的に低めに設定されます。当然、事業の特性も考慮します。ライフサイクルの短い製品を扱っている事業部では、極端な場合、「3年以内の新商品で70%の売上高」が目標になるかもしれません。市場全体の新製品比率をラフに算出することができれば、新製品を市場に導入すべきタイミングや頻度とあわせてこの指標の設定がより妥当性を持ちます。この指標は、「新しいアイテムが生み出した売上げの比率」と援用することもできます。例えば最近は定額制(サブスクリプションモデル)の動画サービスなども増えています。サービス自体は同じでも中のコンテンツがどんどん入れ替わったりアイテム数が増えていくわけです。このケースであれば、視聴者がどの番組を見たかは容易に捕捉できますので、「サービス自体の売上増分×新規アイテム視聴比率」を新製品の売上高比率とほぼ同様に捉えることができるというわけです。この指標は一般的には高い方が望ましいのですが、あくまで比率ですから、既存製品の売上げが落ち込んで総売上高が減少したときにも数値は高くなっています。また、数年にわたってそうした状態が続くようだと、企業として長寿の定番ヒット製品を生み出せないこと、あるいは基軸商品に対する営業の手薄さを意味することにもなりかねません。単にこの指標だけを追うのではなく、個々の製品の実売成績やシェア、市場での評判なども勘案したうえで適切な目標を設定する必要があります。関連KPI開発期間、製品のライフサイクル、新製品のマーケティング費用

CHAPTER4用語解説[★15]サプライチェーンマネジメント(SCM):原材料から加工、販売に至るまでの業界のサプライチェーン全体を俯瞰し、その最適化(時間短縮やコスト削減など)を図ろうとする試み[★16]制約理論:全体のボトルネックとなる工程に注目し、スループットを最大化するための考え方。物理学者のE・M・ゴールドラット博士が提唱した。ボトルネックの発見・解消や、適正な仕掛在庫の置き方などを検討する[★17]デスマーチ:特にIT関連の開発プロジェクトにおいて、プログラマーが極度の過重労働、疲弊状態になることを指す[★18]コア・コンピタンス:企業において中核となる強みのこと。トヨタ自動車であればその生産方式などが該当する[★19]製造物責任(PL):製品の欠陥によって消費者の人命や身体、財産などに損害が及ばないようにする、製造者が果たすべき責任。法制化もされており、PL法という法律に拘束される

 

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次