『トレ一二ンク‘キット』とは何か
これまで何度も述べたように、『マニュアルJは活用しなければ、 その“成果” は出ない。
そして、そのためには“仕組み”を必要とす る。
それが、教育・訓練と制聞の仕組みである。
この仕組みを構成す るものが、『トレーニングキットJと呼ばれるものである。
別な言い 方をすれば、使わざるをえない仕組みとして、[トレーニングキッ ト』を活用するということになる。
.rマ ニュアルjを使わなければ…ー・教育・訓練できない ・『マニュアル』を使わなければ……言軒面できない 『トレーニングキット』は、その呼び名通り、教育・訓練・評価に 必要なものがキット(道具などの一式)に入っている。
そのキットを 持ってトレーニングに行く。
必要な資料が分散しない、保管がしやす いなど、現在、私どもが様々な企業に提唱している方法でもある。

『マニュアルjは別にして、この6種類で構成されている。
もちろ ん、『トレーニングプログラム』などは、単独で、存在するわけでな く、『指導要領』や『学習の手引き』の中に含まれる。
あえて、6種 類と言っているのは、それぞれが独立した重要な役割を担っているか らである。
この『トレーニングキット』を活用することによって、効率的・効 果的に育成ができる。
つまり、『マニュアル』を核とした人材育成シ ステムの整備ができるのである。

トレーニングプログラム
期待レベル(目標)を達成するためには、“何を”“いつまでに” “どのように”習得してもらうかを考えなければならない。
そのために必要なものが、前述した『習得管理表Jである。
そし て、この『表』をもとにして、『トレーニングプログラム』を作って いくのである。

①習得項目(数)と習得期間の確毘
『習得管理表Jで、1羽待レベル”“習得項日’“項目数”“習得期 間”を確認する。

②習得項目を教える時間(所要時間)の設定
各項目を教えるためには、どのくらいの時間が必要か。
座学だけで 良いのか、現場で実習が必要なのかどうか。
該当する『マニュアルJ の内容をもとに、目安となる時間と場面を設定していく。
そして、 ベル別に、所要時間の合計を出す。

③1日の教育時間と項目(組み合わせ)の決定
レベル1の項目数(30項目)を教えるためには、座学と現場でそ れぞれ50時間と40時間の計90時間が必要であることがわかった。
こ れを習得期間1ヶ月以内に教えなければならない。
仮に、1日2時間 とすると45日間必要となる。
これでは、期間内に習得させるのは、 到底無理な話である。
再度、各項目の教え方や教える時間、1日の教育時間などを検討 し、見直していく。
こうして、例えば、次のことが決まる。
• 1日の教育時間……基本3時間(月間トータル60時間) ・各項目の所要時間・… ー(座学・現場でそれぞれ設定)次に、この「3時間パッケージJを、教える順番に組み合わせてい く。

この「パッケージ」を積み重ねることで、レベル別のプログラムの 全体が見えてくる。
④習得確認のタイミング・時期の設定
習得期間が1ヶ月としても、その問、ただ教えているだけでは、も ちろんない。
教えたことカえきちんと習得したかどうかを絶えず確認 (チェック・評価)しながら進まなければ、言わば“教えっぱなし” ということになる。
教えてから1週間から10日前後が“習得確認”のタイミングとし ては良いだろう。
短すぎると、確認する回数が多くなる。
長すぎる と、確認がむずかしくなるということもある。
レベルが上がってきた り、内容によって、適切なタイミングで実施することが必要である。
育成は、こうしたチェック・許制Iiを繰り返し、習得度合を確認しな がら前へ進んでいく。

⑤ 『トレーニングプログラム』の全体像の決定
1日ごとのトレーニングの積み重ねと習得確認の時期などを踏まえ て、『トレーニングプログラム』の全体像を決定する。

こうして、『習得管理表』をもとにした、“何を・いつ・どの順番 で・いつまでに”教えるかのプログラムが明確になった。
次は、“何を・どのように”教えていけば良いのかということにな 143 る。
指導要領
「『マニュアルJができたから、あとは現場でうまく使って……」 「現場は忙しいから、一つのやり方を押しつけるのは…・・J といった『マニュアル』の活用方法をめぐる問題が、よく起こる。
しかし、現場に判断を任せるのは、実は非常に無責任である。
確か に現場は忙しいし、各現場ごとの状況や抱えている問題も違う。
だか らこそ、現場が置かれている状況を踏まえた施策が必要なのである。
何もしなければ、現場にただ任せていては、結局、忙しいを理由に活 用されないことになる。
『マニュアjレ』は会社の基準である。
それを現場に徹底し共有化す ることは、何にも増して重要な活動である。
さらに、人材育成であ る。
新人を早期に戦力化する教育ツールとしての『マニュアルJの活 用は、本来歓迎されることで、あっても、迷惑がられるようなシロモノ ではない。
作成及び活用担当者の認識・自覚不足こそ問題である。
『習得管理表』によって、期待レベルと“何を・いつまでに”習得 させれば良いのかが明確になっている。
あとは、“どのように”であ る。
この“誰に・どのように”教えていけば良いのかをまとめたもの が、『指導要領』である。
『教育の手引き』『トレーニングガイ凡な どとも呼ばれている。
指導(教育)方法を明確にしたものである。
こ の『指導要領Jは、レッスンプラン的な比較的簡単なものから、本格 的な『インストラクター( トレーナー)マニュアルJとして作成する ものまで、その形態・内容(量) などは実に様々である。
共通要素としては、次の点が挙げられる。

これによって [ 効率的・効果的に教えられる |② 教える負担を軽減できる I CE教え方のバラツキをなくす など、非常に重要な役割を担っている。
前述したように、『マニュアル』を使わざるをえない仕組み、 が『指導要領Jの作成によって、整備されるのである。


<インストラクターの育成について> ここで、インストラクターの重要性について、述べておきたい。
期待レベル(目標)の業務遂行ができている、つまり、習得したこ と(基準)が、“日常的に行動として発揮できている”状態を作り出 し、維持することがインストラクターの重要な役割である。
|基準の{臓|キ|基準の糊| インストラクターは、教育担当者・トレーナーなどとも呼ばれてい るが、要は実際に教育指導をし、評価をすることが、その仕事であ る。
しかし、この役割の遂行度合によって、成果は大きく左右され る。
その意味で、どのように教えるか、一制面するかの技能(インスト ラクションスキル)を向上させることは、非常に重要なことである。
ところが、役割や責任が重い割には、インストラクターとして十分 な教育を受けずに、実戦配備されているケースが多い。
その結果、 -今のやり方で‘良いのか迷っている ・指導に必要な知識や技術が不足しているのではないか .わかりやすい説明の仕方を知りたい などといった悩みや不安を抱えることになる。
教育・=制面の仕組みを第一線で回しているのは、こうしたインスト ラクターの一人一人である。
成果を上げる一番の方法は、このインストラクターの育成・強化と言っても過言ではない。
そして、彼らこそ が、『マニュアルJ活用の最大の担い手なのである。
学習の手引き
『指導要領Jに比べて、この『学習の手引き』を作成している企業 は、意外に少ない。
しかし、これもまた重要な役割を担っている。
『学習の手引き』は、教育を受ける側(対象者)が指導を受けると きに必要とするものである。
その主な項目としては、 ① 目的 ② 教育システムの概要 ③ トレーニングを受ける心構え(留意点) ④ トレーニングの受け方 ⑤ トレー二ング内容 ⑤ チェック・評価方法 ⑦ 進捗管理 などが挙げられる。
これによって、期待レベルを理解し、“何を・いつまでに・どのよ うに”習得すれば良いかがわかる。
つまり、目的や目標が明確になる ことで、より学習意欲の向上につながるということになる。
また、 「トレーニングを受ける心構えjの中には、積極的に質問する、メモ をとるなど、とかく受身になりがちな対応を戒め、積極的な関わりの 重要性を記述する。
さらに、『ワークシートJや『チェツクシート』などを組み込ん で、参画性の高い構成・内容にするなど、学習者がより主体的に関 われる工夫を考えることも必要である。
これらは、『習得管理表Jによって、自分には何が期待され、いつ まで、にイ可を習得すれば良いかが明確になっているから、できることで もある。

このように、『習得管理表』をもとに、『指導要領.] (教え方)、『学 習の手引き.] (学び方)を整備することによって、期待レベル(目 標)の達成がより可能になるのである。
チ工ツクシート
『チェツクシートJの具体的な説明に入る前に、評価の仕組みにつ いて触れておきたい。
教えた内容が習得しているか評価(チェック)し、不十分な点や改 善が必要な点をフォローして、確実に身につけてもらう。
いくら教育 をしても、実際の仕事の場で実践できなければ意味がない。
また、い くら習得しても、きちんと詞河町されないのであれば、学習意欲は落ち る。
明確な習得の確認、評価を反映させることによる働く意欲の向 上、それがこの制面の大きな目的である。
評価の仕組みは、次の要素で構成される。
① 何を(評価項目) ② いつ(評価時期) ③ どのように(評価方法) ④ その結果(評価の反映)
①評価項目の確認
習得項目=評価項目である。
『習得管理表』で、習得(評価)項目・項目数を確認する。
また、作業(行動)をいくつかに分解した方が、より評価(習得確 認)が具体的で明確になるということで、評価項目を増やすことがあ る。
但し、あまりチェック項目が多くなるのも問題である。
必要最低 限の項目に絞ることが必要である。

②評価時期
制面する時期は、前述した『トレーニングプログラムJの中で、基 本的には設定されている。
それをもとに、制面を実施する具体的な日 時を決定すれば良い。
③評価方法
“どのように”という「評価方法」を考える場合、次の要素を明確 にしておくことが必要である。
<評価者> 通常は、教育担当者(トレーナー)が、そのまま評価者となる。
た だし、できるだけ複数の人が評価者になることが望ましい。
制面の客 観性・公平性という意味からも必要である。
また、レベルのアップとともに、役職者が評価を担当することになる。

<評価の種類> 一制面項目によって、いくつかの種類を組み合わせて実施する。
また、レベルのアップにつれて、評価を厳しくすることも必要で、あ る。

<評価の方法>

“知っている・できる”ことが、実際の場面で具体的な行動として 発揮されているかどうかが、評価のポイントとなる。
ただし、初期レ ベルでは、明日っている・できる”ことを評価することが多いが、そ れは習得の1ステップとして、別に問題ではない。
評価の方法としては2段階方式が多いが、レベルや内容によって は、3段階や5段階で喜刊聞した方が良い場合もある。

<チェック(評価)シート> これについては、後述する。
(155ページ参照) <評価のステップ> 対象者に、“評価する”ことを伝えてから、ー制面活動は始まる。
評 価する内容によっては、観察する場面はなく、即実技試験ということ もある。
(次ページの図参照) <合否の判定(習得確認) > 「2人以上の評価者が満足(評価項目が全て“O”)で合格」 「不合格の場合は、0日以内に再度一制面を実施する」 といったルールを決めておく。
習得項目(会社の基準)の一制面である。
いい加減な気持ちで矧面し たり、甘い評価は、結果的に仕事やサービスの質を落とすことにな る。
期待レベルを踏まえて、しっかり評価することが必要である。
また、ょくできている点についてはほめる、気づいた点・改善点は 具体的に指摘するなど、育成の視点をしっかり持って、委刊岡活動に取 り組むことが重要である。

④評価の反映
制面した結果を“どのように・何に”反映させるか。
対象者にとって、習得することの必然性と学習意欲につながる、大 きな問題である。
また、制面する側にとっても反映されないのであれ ば、指導にも熱が入らず、評価もおざなりのものになってしまう。
通常は、次の3つになる。
① 育成のステップアップ ② 昇格 ③ 昇給 「育成のステップアップ」に反映させるということは、これに合格 すれば次のレベル(段階)に進むことができるということである。
つ まり、合格しなければ、次の教育内容を教えてもらえない。
言い方を 変えれば、いつまでも同じ仕事・役割を続けてもらうということにな るのである。
「昇格・昇給」は、評価の最も一般的な反映のさせ方である。
昇格・ 昇給の基準・ルールを明確にし、それに合わせて一剤師を反映させてい くことになる。
制面の結果を、きちんと反映させる仕組みを持つことは、育成の点 でも非常に重要である。
を刊出しっぱなしということは、評価そのものの価値を下げることに もなるのである。
教育=今朝面は、切り離せない育成の→重のステップ 『チェック(評価)シート』について| 『チェツクシート』は、レベル別・業務ごとに作ることが基本であ る。
ただし、あまりシートの枚数が多くならないように注意する。
『チェツクシート』には、次の3種類がある。
① 自己評価のみ ② 他者(上司・トレーナー)評価のみ ③ 自己・他者併用評価(次ページ参照) レベル・内容によっても異なるが、「自己・他者併用型」が一般的 には多いと思われる。
前述した評価のステッフ。
に沿って、使用するこ とになる。
この『チェツクシート』は、本人と他者の評価の違いを明 確にして、指導に役立てることが大切である。
その読み方について、 まとめておこう。
< 『チェツクシート』の読み方> ① 評価する項目(ほめる項目) ・上司・本人の双方が「OJをつけた項目 ・フォローの時に、この点をまずほめて、今後も引き続 き頑張るように指導する
② 改善が必要な項目 ・上司・本人の双方が「×Jをつけた項目 ・上司が「×Jを、本人が「ムJをつけた項目 ・確認欄に「×Jをつける ・フォローの時に、しっかりと基本から復習する
③ 特に注意する項目・上司が「×Jを、本人カ官、「0」をつけた項目 ・確認欄に「×Jをつける ・上司から見たら“できていない”のに、本人は“でき ている”と思っている。
客観的に“どこが、どうでき ていないのか”を、本人に納得させることからフォロー を始める
いずれにしても、必要な項目が確実に習得したかどうかを、チェッ ク(評価)するのである。
事前の連絡からはじまって、きちんとした プロセスを踏んで、対応しなければならない。

理解度テスト
実施する時期については、前述した『トレーニングプログラム』の 中で、基本的に設定されている。
それをもとに、実施する日時を決定 する。
一般的には、『チェツクシート』による評価に比べ、『理解度テス ト』による評価は、それほど回数は多くない。
各レベルの合否を決め る段階か、その中間で実施されることが多い。
ただし、『チェツクシート』と併用する形で実施している企業もあ る。
この場合、『チェツクシート』による評価と同じ回数ということ になる。
評価という大げさなものではなく、「覚えたかどうかチェッ クします」という程度の意味合いである。
『理解度テスト』は、『確認テストJとも呼ばれたりするが、言うま でもなく知識レベルの評価である。
もちろん、『チェツクシート』に よっても、この評価はできる。
例えば、「サービス目標を理解していますか」という質問に答えら れるかどうかで、その評価はできる。
ただ、『チェツクシート』は、 行動・技能レベルの評価fiを中心にして、知識レベルの制面は、できる だけこの『テスト』に任せたほうが良いだろう。
「テスト問題」は、言うまでもなく『マニュアル』から出題され る。
対象者は、再度『マニュアルJを勉強し直して、テストに臨むこ とになる。
この『テストJの所要時間は、レベル・内容によって当然異なる が、15分~30分を一つの目安として考えておく。
これまで習得した 項目を全て網羅するのではなく、期待レベル(目標)を踏まえて、最 低限必要な“問題”に絞り込んで実施すべきである。
選択式・記述式 など、内容やその重要度において適切な方法を選ぶ。
(次ページの図 を参照) また、合否の段階で実施する場合には、何点以上が合格ラインかなどの基準を決めておくことが必要である。
いずれにしても、『チェツクシート』と同じように、あくまでも習 得確認、そして育成が目的である。
できなかったところを、『マニュ アル』で再確認させ、確実に身につけてもらうことが、重要な使命・ 役割である。

進捗笥里表
『進捗管理表Jは、“どこまで教育したか、何が習得(修了)したの か”を、対象者別に明確にした『表Jである。
これをきちんと管理す ることで、対象者全員に、必要な習得項目をモレなく教育・評価でき る。
進捗と同時に履歴も管理できるスグレものである。
(次ページの 図参照) この『進捗管理表』は、指導する側が管理のために必要であるが、 対象者にも見える所に貼っておくという方法もある。
どこまで教えた(学習した)のか、あとは何が残っているのかが、 一目でわかるということは、教える側・対象者双方にとって、目標が 明確になり、お互いに進捗を管理することができるようになるのであ る。
また、人事異動などの場合でも、この『表』を異動先の教育担当者 に提出することで、教育・評価を継続して実施できることになる。
この『進捗管理表Jという1枚の『表』は、『トレーニングプログ ラム』全体の進行管理を円滑にするという重要な役割を担っている。
これまで『トレーニングキット』を構成する6種類について、具体 的に見てきた。
その一つ一つが、『マニュアル』を使わざるをえない 仕組みとして機能している。
これが、一つの『キットJに入って、期 待レベルの達成、育成に大いに貢献するのである。

個別指導の進め方
この「個別指導jは、『トレーニングキット』を構成する要素では ないが、『指導要領』の中には必要な項目である。
「個別指導」「フォローの話し合ぃ」「振り返り」といったような呼 び方をされるが、要は指導したあとに、対象者本人と話し合うことを 意味している。
1回10分~15分程度が多い。
しかし、この短い話し合いが、様々な 成果に大きく影響してくるのである。
つまり、信頼関係作り、コミュ ニケーションを深める機会としての役割である。
この話し合いを上手 に進めることによって、学習意欲が大幅に向上する。
いくつかの進め方をまとめてみよう。
<1日の振り返り> ① “お疲れさま”と、今日一日の労をねぎらう ② 今日の教育を受けての感想を聞く(気づいたことなど) ③ 疑問点や不安なことが、あれば、質問を受ける ④ 明日の教育の内容を話す ⑤“明日もよろしく!”と明るく声をかける



コメント