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2章「マニュアル」の威カを考える

目次

身近な存在としてのマニュアJ

ここで、『マニュアル』の意味・定義について確認しておこう。

語源を調べてみると、「手に持った本」を意味するラテン詩とあ る。

「manu~」は、“手”を意味し、派生した言葉には、マナー・マ ネジ、ヤー・マニュファクチュア(製造)・マニュスクリプト(原稿) などがある。

サービス業の『マニュアル』には必須の項目である“マナー”は、 手の動かし方から行儀作法へと発展したものらしい。

つまり、『マ ニュアル』は語源から見ても、“手”や“手を動かす”ことに関係し たものであると言うことができる。

マニュアルの定義としては、「知識やノウハウといった暗黙知を共 有するための形式知」というのが代表的な説明である。

一般的には、 手順書・手引書・取扱説明書などのほうがなじみやすし、。

『ドヮハゥマニュアルJとしての料理レシビ

この『マニュアルJは、言葉の響きやイメージから難しさや硬さを 連想するが、私たちの身の回りには、意外に多くの『マニュアル』が 存在している。

その代表格が料理のレシピである。

これは料理の手順書である。

こ れによって、初めての人でもそれなりに料理を作ることができる。

レシピは、普通、次の要素で構成されている。

① 完成形(出来上カずった写真など) ② 準備するもの(材料など) ③ 所要時間 ④ 手順と注意点

レシピの目的は、これを読む人(使う人)が、これを使って料理が 作りやすいようにすることである。

それも、ほとんどがB5サイズ 以下で、1枚ものが圧倒的に多い。

つまり、左記の要素がきちんと整 理されていれば、誰でもレシピが作れ、それを読んだ人は、誰でも料 理を作れるということになる。

これはもう、りっぱな『ドゥハウマ ニュアルJの世界である。

これ以外にも、簡単な家具・家財道具や本棚の組み立て方などに も、この要素を押さえた『取扱説明書』がついている。

これらは、通 常『マニュアjレjとは呼称されないが、間違いなく『マニュアルJで ある。

読む側(使う側)の視点に立った構成

これらに共通していることは、読む側(使う側)の視点に立って、 構成・展開されているということである。

もちろん、情報整理の仕方 や記述方法、フォーマットに一長一短があるのは事実であるが、作成 者の意図は、使う側が使いやすいようにということが基本にある。

完 成してもらわなければ困るのである。

そうでなければ、返品やクレー ムが押し寄せる結果になってしまう。

このように、『マニュアル』は本来、使う側、手作り、目的の達成 といった要素・条件を持っていたのである。

つまり、便利な道具とし ての重要な役割・価値を担っていたと言える。

これがいつのまに、読み物や学術書みたいなものへと形骸化してき たのか。

特に企業における状況には、目に余るものがある。

これは、 相手が“お客様”ではなく、“従業員”だからということからくるの であろうか。

いずれにしても、本来の『マニュアル』のあるべき姿、 原点に立ち返って考えることが必要である。

私たちの身近にある『マニュアル』は、そのことを教えてくれてい る。

黙知と形式知

数年前、団塊世イtがいっせいに大量定年するということがあった。

多くの企業では、彼らベテランの貴重なノウハウを会社の財産として 残し、次代を担う人材の指導・育成に役立てるために、あちこちで勉 強会なるものを聞いた。

勉強会は、講師(団塊世代)がまとめた資料をもとに、質疑応答を 交えながら進行するといったカタチが一般的で、あった。

その模様をビ デオに収録する、あるいは勉強会の記録として小冊子などを作成し、 配付するといった会社もあったらしい。

これを『マニュアルJと称し て、大切に保存していくとのことである。

勉強会自体は非常に意味のあることであるが、問題はその後であ る。

恐らく、話の内容は大変興味深く、刺激的なもので、あったろうと 思われる。

まさに、彼らの苦闘の物語でもあり、感動や感銘を受けた 人も多いに違いない。

新しい発見や気づきもあっただろう。

しかし、酷な言い方をすれば、それはそれだけ、1回限りのことで ある。

果たしてどれだけ後輩の指導・育成に役立つのかということで 考えれば、首を傾げざるをえない。

もちろん、仕事への熱い思いや取 り組み姿勢、努力の大切さといったメンタルな部分は、伝わると思 う。

しかし、それも、その場所に参加した者たちだけである。

よほど のことがない限り、小冊子などでは伝わらない。

ビデオとて同様であ る。

効果には疑問符がつく。

彼らの話した貴重なノウハウ・知恵といったものがどれだけ伝わる のか。

会社の財産としてどれだけ残るのか、活きるのか。

言葉を変え れば、活用できるノウハウ・知恵となっていくのかということであ る。

形式知=マニュアル、ではない

知」ではある。

しかし、それは暗黙知を小冊子という形式知にしたこ とで済むものではない。

重要なことは、それを成果を上げるツールに していかなければならないということである。

『小冊子Jで確かにある部分は共有化できるかもしれないが、それ が何らかの行動として成果に結び、つくのか、つけられるのか、非常に 疑問である。

そして、本当に“もったいない”とも思うのである。

成果を上げるためには、マニュアル化というステップがどうしても 必要になる。

暗黙知→形式知、そして、マニュアル化である

暗黙知を、ただ単に形式知にしたものを、私は『マニュアル』とは 呼ばない。

あえて言うなら、それは『ノウハウマニュアル』であり、 今必要とされている『ドゥハウマニュアルJではないのである。

暗黙知→形式知+マニュアル化

ベテランの貴重なノウハウ・知恵、その価値が半減してしまう結果 になることを危倶する。

講演録や小冊子、それらを『ドゥハウマニュ アル』の視点で再構築したならば、どうだろうか。

恐らく具体的な質 問が数多く出るだろうし、不明な点も浮き彫りになる。

しかし、そう して出来上がった『マニュアル』こそが、会社の貴重な財産となりう るのである。

それでこそ、次世代を担う人材の指導・育成に役立ち、それをタタ キ台として、さらに発展させることもできる。

彼らのノウハウ・知恵 の価値を、何倍にも高められることにつながる。

Tit![かに『マニュアル』は、形式知にしたものではあるが、成果を上 げるツールにするためには、もう一歩深く、積極的に位置づけなけれ ばならないのである。

社提供型から現場発信型へ

『マニュアル』は、その時代を、企業のレベル・実態を反映する。

時代・状況が絶えず変化しているように、『マニュアル』もそれに 合わせて絶えず変化させていかなければならない。

『マニュアル』の 変化とは、一言で言えば“修正・改訂”である。

これまでは、本社の一部の人聞が作成し、「マニュアルができまし た。

現場で活用してください」と言って、配付し、終了。

そして、数 年がたち、制服が変わった、新しいレジスターが導入されたから、あ るいは、内容が古くなった、現場で活用されていないといった外圧的 要因で、『マニュアル』の改訂に着手するというパターンが多かった と言える。

しかし、現場では日々新しいノウハウ(知恵)がフツフツと生み出 されている。

現場における創意工夫は、新商品の開発につながるものから、トイ レの清掃方法の改良といった日常の雑多なものまで、多種多様にわたτコれは、どれをとっても貴重なものである。

確実に何かをより良 くするものである。

会社の基準・ルールを壊す、“ローカルルール”

この現場発のノウハウを、会社の貴重なノウハウとしてマニュアル 化する仕組みが必要になる。

なぜなら、これを放置しておくと、次の ような問題が生じる。

-このマニュアルより、もっと良いやり方があるのに・ .うちの職場に合ったやり方でやろう…・-

などといった、会社の基準・ルールを結果的に無視したローカルルー ルが、あちこちに出没することになる。

もしこれが、全国にチェーン展開している企業であれば、同じ看板を掲げながらオベレーションが 違うという、各店バラバラの状態になってしまう。

事実、全国的に有 名な某社は、各店の味が違うのが有名で、「駅前の店は良いのだが、 あとはダメ・・・・・・」「薄味が好きなのに、この間行った店は濃かった… 一-」などと、笑えない許哨面をいただいている。

これは、状況の変化・スピード(急速な店舗展開、新しい設備の導 入)に、会社が対応できていない一例である。

以前、「現場が、独自のマニュアルを自主的に作っていまして… . Jなどと得意気に話してくれたチェーンストアの経営者がいたが、 とんでもない話である。

“ローカルルール”の存在は、会社(本部)の怠慢のあらわれでも ある~社がやらないなら、私たちで」ということになるので ある。

しかし、前述したように、ローカルルールを認めてしまったら、 様々な問題が起きる。

例えば、長刊面である。

人事評価は、当たり前だ が会社にひとつである。

評価されない(できない)項目が出てきてし まう。

また、その職場や店舗のトップが替わるとどうなるか。

「前任 者と私は違います」で破棄されてしまうことにもなる。

会社の基準ではないのだから、これはこれでしょうがない。

さらに、本部での研修効果が出ない、コスト削減等の施策の成果が 出づらいなどといったことにも、実は影響してくる。

つまり、ローカルルールは会社としての統一感・一体感づくりの妨 げになるのである。

会社の基準として決められたものが、本社から『マニュアルJとし て提供される。

この流れは間違いではない。

しかし、前述したよう に、“会社に役立つノウハウ”は、日々フツフツと現場で生まれてい るのである。

古くなったから改訂では遅すぎる。

変化のスピードに対 応できていないことになる。

現場からノウハウを発信させる

現場のノウハウを、吸い上げる仕組みが必要である。

現場からノウ ハウを発信させるべきである。

そして、その吸い上げたノウハウを、 『マニュアルJとして現場に戻す。

この本社から現場、現場から本社 へのサイクルが早く回るほど、会社としての最新・最高のノウハウ が、全体に共有化されるということになる。

従来のいわゆる“本社提供型”で済ますのではなく、現場のノウハ ウを吸い上げる“現場発信型”で作成する『マニュアルJ。

これは何も、全国に支店や店舗がある企業だけに通用することでは ない。

本社のみの会社にとっても同様である。

むしろ重要だと言え る。

一人一人の社員の創意工夫を、活動の中で生み出されるノウハウ を、どんどん取り上げていく。

少ない社員数の会社であれば、まさに 自分たちで『マニュアルJを作ることになり、より仕事も楽しくなる だろう。

自分たちが考えたこと・やっていることが、会社の『マニュ アル』になっていくのだから。

そうしてできた『マニュアJレ』は、新 人の指導・育成をはじめ、業務の引き継ぎや改善など、様々なことに 役立ち、多くの成果を上げることは言うまでもない。

企業における『マニュアJレ』の位置づけ

経済が右肩上がりの時代は、決められたことが決められた通りにで きるだけでも良かった。

また、一度決めたものをそう何度も直す必要 も、それほどなかったと言える。

しかし、高度成長期をへて更にバブ ル崩壊後は、事’情が変わってきた。

『マニュアル』を発展させるので はなく、“否定”するようになったのである。

「マニュアル無用論」な るものが、紙面をにぎわしたのもこの頃で、あったと思う。

『マニュアルJを、企業の中でどのように位置づけるか。

「必要な人聞が読めば良い」的な役割(価値)なのか、それとも 「人材育成や業績向上に結びつける(達成させる)ツール」として位 置づけるのか、である。

また、『マニュアルJを固定的に捉えるのか、時代と状況に合わせ て変動的に捉えるかの違いもある。

『三三ニと斗2基要|生・価値を、明確に認識している経営者は、 いたって少ないのが現状である。

暗黙知を形式知にしただけのものを PニユアルJと呼んではばからない。

前述したように、『マニュアル』にするためには、考え方・情報整 理の方法論・形式(フォーマット)の3つが必要である。

この理解が 圧倒的に少ない。

「うちのノウハウは、社員が一番よく知っている」 から、「自分たちで作れ! 」と号令を出す。

繰り返すが、ちょっと装飾をほどこした形式知を『マニュアルJと は呼ばないのである。

ここがよく理解できていなし、。

せっかくの貴重 なノウハウを、結果として埋もれさせてしまっている。

これまで書か れた様々な『マニュアJレ』の本は、情報の整理術的要素が強すぎると 思われる。

だから、小手先の整理テクニックに終始してしまう。

『マ=ュアル』は成果を上げるツール

しかし、である。

『マニュアル』は、成果を出すツールであり、武 器になりうるのである。

『マニュアル』を、もっと積極的に位置づけ る。

そして、その効果、成果をきちんと検証すべきである、「マニュ アルが使われている?」程度のことではない。

使われているかいない かの評価ではなく、その目的に合った成果の検証である。

例えば、営業パーソンの基本スキルの向上を目的として作成した 『営業基本マニュアルjなら、 -商談件数のアップ .成約率の向上 ・訪問軒数のアップ -日常業務のミスの減少 .クレームの減少 ・・・・etc など、検証すべき項目は、いくらでもあるだろう。

もし、成果が出ていないなら、それは教育・訓練の問題なのか、 『マニュアル』の内容が問題なのかを追及すべきである。

繰り返すが、企業にとっての『マニュアルjは成果を上げるツール である。

ニュアル作りは企業文化作

『マニュアルJの威力を発揮させるためには、企業の中で『マニュ アlレ』をどう位置づけるかということが、非常に重要になる。

これまで述べてきたように、もっと積極的に『マニュアル』を評価 し、その可能性を引き出し、より成果に結びつけていく。

この認識 が、経営の武器にする初めの一歩である。

ここで、私の『マニュアル』についての考え方を、整理しておこ つ。

マニュアルとは、 ① 企業の理念(方針・姿勢)をもとに、 ② 目標・期待・基準を明確にし、 ③ 考え方・行動・判断・評価の根拠となるもの である。

そして、 ① 作っただけでは、成果は出ない(一人歩きをしない) ② 変化に対応しなければ、すぐ古くなる ③ 作成一活用一改訂のサイクルを、絶えず回すこと ということになる。

(詳しくは、拙著『業務マニュアルの作り方・ 活かし方J[明日香出版]を参照)

1冊の『マニュアル』が、企業を変革する

企業における『マニュアル』は、本来、経営者の熱い思いを出発点 として、それを具現化したものであると思う。

だからこそ、そうした 『マニュアル』を作り、現場で徹底的に実践していく。

それによっ て、一人一人の意識・行動が変わっていく。

それは、経営者のDN Aを受け継いだ、新しい企業文化を生み出す

ことにほカミならない。

また、“知らない”ことを知り、“できない”ことができるようにな ることは、ハの可能性を拡げ斗起型三主ることでもを至。

その もと、基礎・基本となるものが、『マニュアル』である。

その基礎・ 基本とは、目標(ゴール)に達成する最も効率的・効果的な方法を具 現化したものであると言える。

そして、『作成活用一改訂』を繰り返す中で、より『マニュア ル』の精度が向上し、より“使われる”マニュアル=武器へと成長 していくのである。

このように、『マニュアル』を徹底的して活用することによって、 熱い思いは隅々まで行き渡り、それは、企業文化作りにつながってい くのである。

大げさな言い方かもしれないが、1冊の『マニュアル』が、企業を 変革する。

マすした威力を『マニュアルJは持っているのである。

『マニュアJll.I の威力を上げるには、様々な仕組みが必要

そして、『マニュアル』を活かす(活用する)ためには、様々な “仕組み作り”を必要とする。

それは、教育・斜面・改訂の仕組みである。

『マニュアル』は、“一人歩きをしない”ので、こうした“レール= 仕組み”が必要で、あり、それによって、“使われる” 『マニュアル』に なるのである。

『マニュアル』の威力とは、成果を上げる威力であり、変革を促進 する威力である。

これまでの幾多の取り組みの中で、私は確かに、そ れを実感している。

これまで、私の『マニュアルJに対する考え方・思いを述べてき た。

次章から、この考え方をもとにした、具体的な『マニュアル』の作 成・活用・改訂の方法について説明していきたい。

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