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1章 ノウハウから“ドゥハウ”へ

目次

たるところに、『マニュアルJあり

仕事柄、様々な『マニュアル』に出会う。きちんとデザインされた豪華な装丁のものから、A4用紙2~3枚をクリップで留めてあるもの、百科事典以上の厚さと重量のあるものなど、実に多彩である。

また、新聞・雑誌やインターネットの世界でも、『マニュアルJという言葉は頻繁に使われている。以前インターネットで検索してみたところ、何百という種類の『マニュアルJがヒットした。

これに『取扱説明書』『手引書Jなどという言葉を加えたなら、おそらくこの数百倍の件数が画面を埋め尽くすのではないだろうか。いずれにせよ、『マニュアル』という言葉は、この社会を縦横無尽に悶歩している。

それだけ『マニュアル』(という言葉)が、身近な存在として認められている証左でもある。

『マ=ュアJll.Iとは、便利で使い勝手の良い言葉?

ところで、『マニュアル』はどのように理解されているのだろうか。

国語辞典には、「1.機械などの使用説明書。2.作業の手順などを体系的にまとめた冊子の類。3.操作などが、手動式であること。」(大辞泉より)とある。

つまり、“仕方・やり方”などの方法が書いてあるものと言える。

また、「マニュアルはこうでなくてはならない」といった明確な規定・1レールはない。大きさも形式も表現方法も、まったくの自由である。

作成者が「これはマニュアルである」と言えば、即『マニュアルJになる世界である。1枚のメモ程度のものから、電話帳サイズのものまで、ひとくくりに『マニュアル』として片付けられる。

ある意味、非常に便利で使い勝手の良い言葉であると言えるだろう。

かんむりしかし、だからと言って何でもかんでも『マニュアルJという冠をかぶせて良いものなのか。何かルールごときものはないものかと探してみたが、これがない。

強いて言えば、方法などの解説・記述をする上で、“わかりやすい”ということが要求されているぐらいである。

これとて明確な定義はなく、作成する側が“わかりやすい”だろうと思えば、それで済まされる世界なのだ。だから、実に多くの『マニュアル』が、まさに百花練乱のごとく存在することになる。

その範囲・種類は驚くほど広い。こうした状況をどう見るか。

『マニュアルj(という言葉)が身近な存在として、手軽に誰でも作れる“モノ”として認知されてきたことは、喜ばしいことではある。

しかし、もっと『マニュアル』の良さを、価値を、その効果を多くの人に広めたい者としては、あまりにも無原則的に粗製乱造されていないだろうか、という一抹の危倶を持っている。

こうしたことが、結果として、『マニュアル』に対する“否定的な考え”につながっているのではないだろうか。

「誰でも作れる」ということは、それほど価値や効果を期待されていないということの裏返しではないだろうか。

『マニュアlレJの良さを知って、手軽に作ってほしいと思う半面、『マニュアルJの果たす役割、その重要性について、もっと深く考えてほしいという思いが交差している。

「たかがマニュアル」ではないはずである。ちょっと知識をまとめただけのものを『マニュアル』と呼ぶのは、正直どうなのか。そういうモノに使う便利な言葉、それを私は『マニュアルもどき』と呼んでいる。

『マニュアルもと‘き』とは何か

そもそも、『マニュアルJとは、いったい何だろうか。私は、「ある目的を達成するための、効果的・効率的なツール(道具)である」と考える。この詳しい説明は後述するが、“便利なツール”としての『マニュアル』を提唱している。ツール、道具である。

ゆえに、“わかりやすさ”より“使いやすさ”を優先させている。使いやすさとは、言うまでもなく“使う側にとって”である。

つまり『マニュアル』の良い悪い、出来不出来の評価は、わかりやすさより使いやすさにある。その評価が優先されるべきであると考える。

では、使いやすさとは何か。それは、「使う側が目的を達成しやすい」ということである。そのためには、使う側や目的を明確にしなければならない。使う側のレベルに配慮もしなければならない。

つまり、ある知識・技術などを使いやすくするために、加工・工夫をして、使う側にわかりやすくすることも必要になるのである。

使う側が“使いやすい”が基本

繰り返すが、作成する側が“わかりやすい”だろうではなく、隼之側が“使いやすい”であり、“わかりやすい”ということが重要なの「/一ー一一一~一一『一一一一ー{である。

また、何のために、なぜ、この『マニュア川タ竺広之ゑ~'。どんなアウトプット、成果を期待しているのか。

これが|慶昧なモノ、つまり、目的が不明確では、そもそも使いやすくはならないはずである。前述したように、『マニュアル』とは、目的を達成するためのツールなのだ。

だから、作成者の思いを連綿と綴ったもの、専門知識をこれ見よがしに記述したもの、知識・情報をただ整理しただけのもの、「第一章総論Jから始まる類のものを、私は『マニュアル』とは呼ばない。

とくに、自己満足で終始しているモノに出会うと、腹立たしくなる。「何をしたいのだ」「どうさせたいのだ」と思わず口に出してしまう。本当にこれで対象者が理解できるのか、使えるのか。はなはだ疑問に思うのである。

目的と使う側の視点を欠いたもの、それをあえて『マニュアルもどき』と命名している。そして、この『マニュアルもどき』が、実は想像以上に数多く存在しているのである。

ある企業が高額な費用をかけて、『マニュアル』を作成した。優秀なデザイナーの手によるその『マニュアルjは、見た目には非常によくできている。役員会などでもお褒めの言葉をいただいたそうである。

しかし、使われていない、現場で使えない、使いづらいのである。なぜ、こんなことになったのか。目的や対象(使う側)は明確である。そうでなければ、予算が降りるわけがない。

結論から言えば、現場で必要な情報、特に“どのように”という方法・手順が、不足していたのである。

重要なことは、情報をどのように整理するか、使いやすいとはどういうことかといったことの深掘りである。

目的と対象を踏まえ、何を・どのようにするのか。そして、どう伝えるのか。それが、その考えが、決定的に欠けていた。デザインに、見た目にごまかされてはならない。これが肝要である。

E里解・納得、そして、行動へ

あるテーマに基づいて、複雑多岐にわたっている情報を整理し、その方法・ルールなどを明確にする。読者にわかりやすく解説する。これはこれで、十分価値ある仕事である。

しかし、少なくとも企業(組織)における“ツール”としての『マニュアルJを作成するのであれば、これでは不十分で、ある。

一歩も二歩も踏み込んで考えなければならない問題が、そこにはある。知識・技術などを、理解・納得してもらえれば良いのか、それとも行動として発揮してほしいのかということである。

『理解一納得行動J、これは反応の基本である。理解・納得しなければ、行動に移せない。

もちろん、扱うテーマ・材料によって異なることは言うまでもない。このとき、何を最優先に持ってくるのか。力点の置き方、つまり、目的は何かということが問題になる。

『読み物』か『恒聖竺芦瞳よか

行動として発揮してもらいたいのであれば、行動しやすいように、知識・技術を整理・加工しなければならない。

知識・技術がそれなりにわかりやすく解説しであれば、即行動へと結びつくと考えるのは早計である。ときとして、作成者はこれを錯覚する。が、事はそう簡単にはいかない。

「なるほど、わかった(理解・納得できた)。それで、どうするの?」となってしまう。

もちろん、行動が伴わない理解(認識)は、本当の理解(認識)ではないという説があることも承知しているが、ここでは一般的な反応の流れで展開していく。

知識・技術の理解を目的とした『読み物』にするのか、具体的な行動に導く『手引書』にするのかの違いが、ここで生まれる。

『行動の手引書』にするのであれば、アウトプットとしての行動のイメージが具体的でなければならない。

つまり、そうした行動を発揮してもらうためには、どのような知識・技術が必要なのかということになる。

少す:反容と逆のアプローチが必要になってくるのである。f行動竺~声:』にするためには、この視点が非常に重要となる。しかし、とくにその道の専門家と呼ばれる担当者には、これがなかなかできない。

これまでの経験が、行動のイメージ(自分の行動イメージ)をふくらませ、理解・納得したなら、即垣根を飛びこえることができると、つい錯覚してしまう。

「これは簡単だから…..・Jということを、よく口にする。

しかし、その簡単とは、作成者のそれで、あり、対象者のそれではないことが圧倒的に多いのである。「理解・納得、そして行動へJという流れは、そう簡単に流れない。そこには、ーにも二にも工夫が必要なのである。

ノウjりから“ドゥjkウ”へ

ある専門的な知識・技術などは、ノウハウ(know-how)と呼ばれている。しかし、当たり前のことだが、このノウハウを羅列しているだけでは、Fl[J行動に移すことはむずかしい。

『マニュアル』は、最新・最高のノウハウを集大成したものである。が、行動として発揮してもらうためには、もう一歩踏み込むことが必要になる。

行動に導く方法論、それが“ドち片”‘7—C_Do-how)”である。ソウハウ”は知恵であり、“市ゥハヴ’β行動であるとも言える。

今、『マニュアルJに必要なこマつまず様々なノウハウを行動に移すドゥハウである。ノウハウ=ドゥハウではない。

知識・技術=行動ではないのと同じである。

“ノウハウ”かS“ドゥハウ”マニュアルへ

では、どのように行動へと導くのか。まず、次の点を明確にしておかなければならない。

-目的は何か・誰に(対象).何を・いつ(いつまでに)・どのように伝えるか(習得させるか)そして、この点を踏まえて、使いやすさとわかりやすさを追求しなければならないのである。

そのためには、具体的な行動のイメージを明確にし、それを達成(実現)するために、どうノウハウを加工するかということになる。この加工したものが、“ドゥハウ”である。

従来、いわゆるノウハウを羅列しただけのものを『マニュアル』と呼んでいることが多かったのではないか。

読み物的『マニュアル』は、圧倒的にこの類である。

しかし、今求められていることは、『マニュアJレJの成果である。それは、具体的な行動に他ならない。

つまり、これからの『マニュアル』は、限りなくドゥハウで作成されなければならないと考える。『ノウハウマニュアル』ではなく、『ドゥハウマニュアルJである。

『ノウハウマニュアル』と『ドゥハウマニュアル』の違い

では、『ノウハウマニュアlレJと『ドゥハウマニュアル』は、どこがどう違うのか。図1は、よく見られる『清掃マニュアル』である。しかし、よく読むといろいろな問題があることに気づく。図2で示したような疑問点が出てくるのである。

第2章清掃1.トイレ清掃(1)トイレは常に清潔に保ちます。

(2)汚れに気がついたら、誰もが率先して掃除を行います。

(3)出来るだけ汚さないように用を足します。

(4)1日に数回はトイレ掃除を行うよう心がけましょう。

(5)従業員は必ず従業員専用トイレを使用してください。

(6)洗面台や鏡もきれいさを保ってください。

それを解決したのが、図3である。図4は、図1に比べて明確になった点を示している。図1と図3、どちらが行動に移しやすいだろうか。

もう一例見てみよう。

図5は、これもよくある『電話応対マニュアルJの1ページである。

読むと、確かにそれなりに理解はできるが、行動に移すとなると、これもまた、どうしたら良いか考えてしまうことになる。

頭の中で一度整理し、組み立て直すということが必要になってくる。つまり、知識・技術を“行動の手順に翻訳する”という作業が生じるのである。図6は、それを解決した例である。

『ドゥハウマニュア}l,jの3つの要素2つの例をご覧いただいておわかりのように、これが『ドゥハウマニュアル』である。

『ドゥハウマニュアル』には、これまで述べてきたように、目的をはじめとした『マニュアルJの考え方、情報整理の方法論と効果的な形式(フォーマット)が必要になる。

/『ドゥハウマニュアルj

①マニュアルの考え方

②情報整理の方法論

③効果的な形式(フォーマット)

この3つが、『マニュアル』の成果としての行動を引き出すキーである。もちろん、より成果を出すためには、教育・訓練システムが必要なことは言うまでもない。「マニュアルは、決して一人歩きはしない」「作っただけでは、成果は出ない」のだから。

ただ、言えることは、『マニュアル』を読んで行動のイメージが浮かぶかどうか、行動に移しやすいかどうかが、成果を大きく左右するということである。

その意味で、『ドゥハウマニュアルJこそが、前述した使いやすきを考えた『マニュアル』であり、わかりやすい『マニュアル』であると、これまでの幾多の経験を通して、確かに言えるのである。

そして、『マニュアル』は“武器”になる

『ドゥハウマニュアル』一一行動へと導く手引書としての『マニュアルJ。『マニュアlレ』の成果は、理解ではない。期待したい行動の発揮である。

『マニュアルJを活用することによって、その成果を上げることにある。繰り返すが、『マニュアル』は読み物ではない。ツール(道具)である。ある目的を達成するための、効果的なツールである。

このツールが優れていれば、そして、ツールを上手に活用できれば、自ずと成果はあらわれる。企業活動における成果とは、お客様満足の向上であり、業績の向上である。引き継ぎ時の円滑化や業務改善のスピードアップなども、その意味で成果と言えるだろう。

いかに効率的・効果的に大きな成果を出すかは、このツールの作成と活用次第である。『ドゥハウマニュアル』は、単なる読み物的『マニュアル』から、成果を効率的・効果的に上げる、企業活動の“武器”としての『マニュアル』への転換を意味する。

読み物かSツール、そして、武器へ

読み物からツールへ。ツールから武器へ。積極的に位置づけることによって、『マニュアJレ』は大きく飛躍する可能’性を持っている。今、『マニュアル』に求められていることは、ノウハウよりドゥハウである。この認識・視点で、これから『マニュアルjについて述べていきたい。

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