41ロマニュアルはマイナスか?
● マニュアルは嫌われ者?
例えば、あなたがはじめてパソコンを買ったときのことを覚えていますか? どうやって配線を して、どのように操作して、どうやると色々な機能が使えるのか。
多くの不安と期待を膨らま せて、製品の入った箱を手にとつたことでしょう。
そして、そこには数冊にも及ぶマニュアルが一緒 に入っていました。
そして、あなたはそのマニュアルを片手にパソコンを配線し、作動し使い始め たのではないでしようか。
しかし、世の中でマニュアルという言葉は、あまり良い印象を持たれていません。
例えば、「マ ニュアル人間」という比喩がイコール「融通が利かない人」ととらえられています。
さらに、マニュ アルは、創造性を拒否し想像力を低下するものであるとの否定論があります。
また、マニュアルは理想の姿であり、現場では使えないなどの無用論もあります。
このように創造性、柔軟性、 現場では使えないなどのマイナスなイメージが先行しているのも事実です。
しかし、冒頭のパソコンの話で、もし、マニュアルがなかったら購入したその日にスイッチを立ち 上げ、使えるようになったとは考えられません。
マニュアルはきっと、私たちが想像する 以上に多くの力を与えてくれるものでしょう。
マニュアルは、誰もが使える手順を教えて くれているのです。
あなたは、車の運転は得意ですか? 1週間で、どのぐらいの頻度で車を運転しますか? こ れは、人によつて様々です。
環境も影響してくるでしょう。
でも、多くの人は車を運転します。
この中で、車が動く仕組みをわかっている人や説明できる人はいますか? このような人はごく少 数でしょう。
しかし、私たちは車を運転できるのです。
これは、教習所で車の運転の手順を習ったからです。
そして、その手順を体が覚えているからです。
動かし方を習わなければ、パソコンと同じように すぐに車を走らせることはできないでしょう。
車の場合は大きな危険が伴うので、免許制となっていますが、理屈は同じです。
端的に手順を伝え、誰もが同じような品質を保てることがマニュアルの最重要ポイント となってくるのです。
● マニュアルがなかったらどうなるか?
マニュアルに対するイメージは良くありません。
そして、マニュアルそのものにも否定的な意見 が多いのも事実です。
しかし、マニュアルがなかったらどうしますか? パソコンの例や車の例で書 きましたが、マニュアルがなければ購入した日や運転席に座ってすぐに動かすことはできないので す。
業務のマニュアルを例にとつてみましょう。
マニュアルがなかったら次のような事態が考えられま す。
●業務を教えるのに先輩社員がつきっきりで教えないといけないので時間と労力がかかる●教える先輩社員によって自分自身が考えた教え方で伝えるため、新人のスキルにばらつ きが発生する ●先輩社員、個人の思い込みが大きく反映され、業務の範囲が把握できなくなる ●個人個人での伝承がベースのため、非効率な仕事をしてしまう ●従業員のスキルをはかる基準ができず、従業員評価が主観的になる ●会社の統¨感や¨体感が生まれず、業種によっては個人事業主の集まりといった印象を外 部者に植えつけてしまう などです。
決まっていることがないので、教える時間はかかるし、ばらつきも発生します。
さらに、仕事 を指示する立場の社員も自分の経験がすべてとなり、良いもの、悪いものが主観的、感覚的になっ てしまうのです。
特に人事評価などの場合、マニュアルなどで基準ができていないと、すべては考課者の主観によ るものとなるのです。
そうすると、好きか嫌いかで判断が決まることになりがちです。
つまり、マニュアルがなかったら、業務も人事も基準がなくなってしまうのです。
マニュアルが物事のベースをつくるのです。
2 仕組みがなければ成長はありえない
● わかるとできるは大きな違い
あなたの仕事を細分化し、ルーチン業務を標準化するために、マニュアルを利用しようという ことは物事の筋道としてとらえられています。
そして、そこに書かれていることは一見「ごく当 たり前」と思われることが書かれています。
このとらえ方によって、あなたが今後大きく発展するか否かの分かれ道になるのです。
「こんなこと、前からわかっているから、適当にやるよ」 もし、このように考えたあなた、この先は大きく発展することはないでしょう。
しかし、マニュ アルをきちんと理解し、行動レベルまでに落とし込むことができるようになった場合、今後は大 きく発展する可能性が高くなります。
人間は頭でわかると、思考がそこでストップしがちです。
しかし,実際はわかっ た気になっているだけです。
マニュアルで行動レベルまでに項目を落とし込むと話 は違います。
できないことが発生するのです。
つまり、今までわかっていることや理解している ことは「できる」と思っていたのが、錯覚だったと気づくのです。
理解していることはできるこ ととイコールではないのです。
チェックシートをつくる
では、具体的なマニュアルやチェックシートを使って、その効果を見てみましょう。
会社に新人 が入社した例と社員が辞めるときの例を基に考えてみます。
次ベージの「採用時手続きチェックリスト」をご参照ください。
社員を募集し、面接の選考後に入社の手続きを行うときのチェックシートです。
このシートが あれば、公的な手続きの漏れがないようにつくられています。
リストに記載されている項目は、会社が受け取る書類です。
履歴書をはじめ、住民票記載 事項証明書や年金手帳、雇用保険被保険者証など、会社が本人を管理するための書類、公 的保険の加入時に必要なものが記載されています。
もし、社員が入社する場合、漠然と書類 を集めていたら、担当者の記憶を頼りに、業務が進むことになるでしょう。
しかし、このようなチェックシートを1枚つくるだけで、書類を集めるという作業 は誰でも可能になるのです。
シートがなければ、入社者に何を持ってきてもらうのか説明で きません。
説明するということは、最低でも「なぜ必要か」が理解できないといけないのです。
これを理解するということは法律要件を知らないといけません。
入社者は本人の状況も様々です。
扶養者がいる場合といない場合も種類が異なつてきます。
その状況も理解していないといけないのです。
しかし、チェックシートに注意書きを書けばそれ で事足りるケースがあるのです。
このシートはさらに本人に渡すもの、手続きが済んだら返却するものも書いてあります。
シー トのチェツクボツクスに済んだ手続きをチェックするだけです。
さらに、担当者が行政に手続きを確認するところもあります。
そして、最期に書類調整ということで、会社が労働基準法で揃 えなければいけない3つの帳簿のチェックもあります。
このシートに会社独自の支給物などを記 載してもいいでしょう。
本当に1枚で済むのです。
いかがでしょうか。
このように最初につくったノウハウをチェツクシートという仕組み に落とし込んで使いやすくすれば、後任者がいちいち「そのわけ」「原因」を理解 しなくても、一定のクオリティーが保たれるのです。
このチェックシートは、タイトルとチェック項目を変えれば様々な業務に使えるので、ぜひご活 用下さい。
3 イレギュラーに対応する
● マニュアルを基本書と考える
ここまで読んできて、あなたはマニュアルをどのように捉えているでしようか? 前述したように、中には融通が利かない、画一的な印象があり、否定的なイメージを持つ人 も少なくありません。
これは、ある部分事実です。
つまり、イレギュラーなことにマニュアルは対 応しきれないということです。
ただし、この弱点は、マニュアルを単なる「手順書」ととらえているか、それとも、 「基本書」ととらえているかによって大きく異なるでしょう。
手順書だけであれば、工程を進めるためだけのものです。
しかし、基本書と捉えれば、ベー スの動きに対応する方法が記載されていて、応用のもとがマニュアルにあると考えられるのです。
このように考えるためには何が必要かというと、それは、マニュアルについて教育することです。
ビジネスにおいて″常識″は日々変わっていきます。
だから、マニュアルはあくまでも多型゛ であり、イレギユラーが発生したとき、「何をすればいいか」を自分の頭で考えるよ うにしなければならないのです。
つまり、 ●基礎をマスターする ●イレギュラーな状況を予想できる ●イレギュラーな状況と基礎の状況のギャップが把握できる ●ギャップの中から、基礎で応用できることを見つけられる ●予想を立て、解決策を実行する ●もしだめなら、さらなる解決策を実行するこの方法が活用できるように、個人個人を教育する必要があるのです。
それは、ビジネスの 現場を通して伝えるのが一番早いでしょう。
どんな仕事でも、現場の緊張感の中でもまれることが人の成長を早めていくのです。
しかし、 考え方というのは言ってみれば思考法、問題解決力ですので、これは現場に立つ前に学習する必 要があります。
何事も経験値が必要と思われがちですが、実際は、臨機応変な想像力の勝負 です。
イレギュラーなケースをどれだけ頭に思い浮かべることができるかがポイントとなります。
● 業務細分化の弊害
マニュアルで、業務の役割分担が細分化されるとスタッフは、自分の仕事が「会社の歯車」に 感じられるようになります。
このようになると、スタッフ個々のやる気が落ちて、業務を「こな している状況」に陥ります。
この状態は「木を見て、森を見ず」の状態です。
さらに「私の仕事、 他人の仕事」ということになり、自分の仕事しか見なくなります。
他人の仕事については、興 味がないのです。
こうなると、組織の危機です。
まさに「隣の人は何する人?」となり、疎外感や閉塞感が社内に充満してくるのです。
私が相談を受けた会社を事例にお話しします。
この会社は、食品卸の会社でした。
業務改善で「効率化」を追求することとなったのです。
その前までは、顧客ごとに担当者が張りついていたのですが、この改善で食品の種類ごとに担当 が割り振られました。
さらに効率化のため、業務が細分化されました。
そこで発生したのが、 次の工程の人が何をしているかわからず、自分の仕事さえ順調に進めばいいと考えるようになっ てしまったのです。
こうなると、身勝手な発想しか生まれなくなります。
そして、仕事も雑に なってしまいました。
この会社は、効率化を追求しすぎ、かえって今までの品質も危うくなる状況に陥っ たのです。
このままでは、改善どころではなく、会社も危機的状況に陥る可能性すら出てき たのです。
このままではいけないと、社長は「何がいけないのか」を考えました。
そして、業務 の流れや全体像がおろそかになっていることが原因と断定したのです。
そして、効率的に振り 分けた業務の役割を改善したのです。
具体的には、担当の役割を少し広げ、これまでの自分の仕事の範囲や取り組み方についての 振り返りができるようにしました。
すると、自分の仕事だけで完結しているのではなく、他の 人の仕事とつながって仕事が進んでいることがわかるようになりました。
また、他人の仕事が理解でき、自分の仕事の重要性を改めて知った場合は、責任感が芽生え てきます。
さらに、周りへの気配りができるようになるのです。
この循環ができたなら、業務全般が良い方向に行きます。
今まで悪いスパイラルに向かって流 れていたものが断ち切られ、良い方向に流れができてくるのです。
4 業務フローをマニュアルにする
● マニュアルづくりで押さえておきたい5つのポイント
さて、ここまでマニュアルがいかにチームマネジメントにとって重要であるかを説明してきました が、では、実際に使えるマニュアルとはどういったものなのでしょうか? まず、マニュアルをつくる上でのポイントは、 田利用目的が明確である 口評価基準がハッキリとしている 日誰が読んでも理解できる 四一つ一つの手順が具体的で、体系的にまとまっている 日見直してみる
があります。
田の「利用目的」というのは、マニュアルが「誰のために」「何のために」あるのかを明示す るということです。
どういう場合で、誰が必要とするのか、これを組織内で共有できなければ そもそもマニュアルの意味がありません。
口の「評価基準」は、その作業をどう達成すれば、「できた」「完了」と言えるのかが明確 に示されていることです。
これも当たり前のように見えるかもしれませんが、ゴールがきちんと 提示されていなければ、マニュアルを使用する本人も正解がわかりません。
作業がいい加減にな らないように、「できた」のラインを示してあげます。
日はマニュアルの大前提でもありますが、「誰が読んでも理解できること」。
具体的には、誤 解のない文章、文脈で簡潔に書きます。
これは、憲法や法律と同じです。
誰にも通用する、 より普遍的なマニュアルを目指しましよう。
四は、マニュアルづくりの核の部分になります。
マニュアルというのは、作業が段階的にゴールに 向かうようにつくらなければなりません。
各作業は細かく分け、手順どおり、段階をつくって 列挙していきましょう。
ここで注意したいのは、自分は当然のようにこなしている作業でも、他 の人にしたらわからないことがあるということです。
マニュアルをつくる際は、一度その業務に必 要な作業や要素をすべて洗い出してみましょう。
最後に、マニュアルが完成したら、一度じっくりと読み直します。
そのマニュアルで、自分がいつ も行っている業務が本当に再現されるかどうか思い描いてみましょう。
簡潔に示すことが前提で すが、あまりに簡潔すぎては伝わりません。
過不足ないよう、そのバランスを最後に整えてあ げるのです。
ここで述べていることがわかるように、例として「FAXでの受注業務マニュアル」をつくってみ ました。
75 ページの5つのポイントとともに、特に気をつけてもらいたいことには、「注意事項」を設け ておくとマニュアルを使う人も配慮しやすくなります。
また、いつでも誰でも使用できるように、マニュアルはすべて同じフォーマットでつくるというの も手です。
すると、整理整頓が簡単になり、業務の種類ごとに管理しておくことも可能にな ります。
こうした作業手順を示したマニュアルでは、「対応力」がキーワードです。
組織で誰か欠員が 出たときにも、こうしたマニュアルがあることで他の人にすぐ引き継ぐことができます。
社内で慌てることなく、最低限の対応力を提供してくれるのがこのマニュアルです。
ぜひ参考 にしてみてください。
5 マニュアルの位置づけと活用について
● マニュアルは手段であり、ツールである
マニュアルは、日標が明確化され、基準が示されていて、会社が期待している業務をこなすた めの指示書です。
ただし、マニュアルそのものはただの指示書です。
これを理解し、また、社員 に理解させ、はじめてマニュアルの存在意義が生まれるのです。
さらに、マニュアルをベース に業務を自在にこなしてこそ、マニュアルというツールは活きるのです。
マニュアルを活かすには、「人」が必要です。
つまり、教える人です。
この教える人がマニュア ルを生かすか殺すかの全権を持っていると言っても過言ではないでしょう。
マニュアルを教える人 はおおむね、マニュアルを作成する人のケースが多いです。
この場合は、マニュアルを作成して満 足しているケースが見受けられるので、ミッション全体を考えましょう。
ミッション全体というのは、つまり、部下やスタツフなどに技術や考え方をマニュアルを使って伝承するということです。
ここで重要になることがあります。
それは、「育成」ということです。
マニュアルは「読んでお いて終わり」という単純なものではないでしょう。
技術や考え方の伝承であれば、次のプロセス が必要となるからです。
●知らない ●わかった ●覚えた ●できた ●身についた このプロセスが伝えることなのです。
そして、マニュアルに記載されている「基本」を徹底的にマスターすることにより、応用へと発 展し、さらに個人独自で創造ができるようになるのです。
●基本 ↑ ●応用 ↑ ●創造 マニュアルが嫌われるという話の中で、融通が利かない、画一的という話をしましたが、果たし て基本なくして応用や創造ができるでしょうか? 例えば、野球選手になろうと思っても、すぐになれるものではありません。
何百回、何千回 バットを振つて、そして、ヒットやホームランが数多く飛び出すのです。
基本をマスターした者が 結果を出すのです。
これは、ビジネスの世界でも同じことがいえます。
「量より質」という話があります。
このことについて私も否定はしません。
しかし、質の高い 業務をこなせるようになるのは、量をこなさないといけないのです。
だから、量をこなすことは、基本をマスターすると同義なのです。
さらに、基本をマスターさせることを伝えるやり 方が、会社の、組織の風土をつくるのです。
きちんと基本をマスターすることを重要な位置づけとするのか、それとも、なんとなく教え るかによって、教えてもらっている人の印象は変わります。
その人が将来、教える立場になった ときに、そのときの空気感も一緒に伝えていくでしょう。
空気感や雰囲気というのは、その場そ の場で感じ取るものです。
なかなか教えることはできません。
しかし、伝え切れないことでは ありません。
コツは、考え方を最初に伝えることです。
それもマニュアルが作成された当時から の意気込みなどを伝えるのです。
これは伝えるというよりも「叩き込む」と言ってもいいでしょ う。
それだけ重要なポイントになります。
「そんな目くじらを立てなくても」と思われるかもしれませんが、会社組織のほころびは、 最初はいつも小さなところからです。
気をつけましょう。
特に、業務の基本を教えるところをい い加減に対応してしまうと、将来修正がきかなくなる場合があるのです。
6 マニュアルと人事評価は運動させる
● いかに社員が働きやすい環境をつくるか
人事評価とは何でしょうか? ●賞与を決めるためのもの ●昇給を決めるためのもの ●人事異動の材料となるもの ●社員の序列をつけるもの などいろいろな意見があると思います。
あなたが、第一に想像したのは、以上のような点ではないでしょうか? 人事評価は、「社員の値決め」のツールと考えられがちです。
しかし私は、人事評価は1年に1回、もしくは半年に1回の上司と部下の「正式な コミュニケーションの場」と考えています。
組織を人体に例えると、コミュニケーションは「血液のめぐり」です。
人の体は血液の流れが 止まると死んでしまいます。
組織も同じことがいえます。
コミュニケーションがうまくいかないと、 機能不全を起こしてしまいます。
組織にとってもコミュニケーションはとても重要なのです。
しかし、日々の業務の忙しさにかまけて、上司が日常的に部下の業務態度や業務成績につい てのコメントをすることはまれです。
ここを会社の正式なコミュニケーションとしての位置づけを もって「人事評価」を行うのです。
給与や賞与の額を決めることが人事評価の最終目的ではありません。
これはあくまでも副 次的な効果であって、人事評価の主旨は「いかに社員が働きやすい環境をつくるか」です。
そ のための業務上の正式なコミュニケーションの場面が、人事評価における「面接」なのです。
年に1回〜2回の面接の場面は、アフタ15の時間とは異なり、業務について部下が抱えてい る問題点や課題を上司と真剣に話し合い、改善の方向へ導くものです。
決して、賞与や給与 の額を「上げる、下げる」という判断だけではないはずです。
仮に、業務成績が芳しくなく、 賞与の額が平均より下がるケースなどでは、 ●なぜ、賞与額が下がるのか ●平均とのギャップがどのぐらいあるのか などの話が必要です。
そして、今後の業務の動きを、 ●どのようにすれば改善させられるか ●成績が落ち込んだ原因を取り除く方法は何か ●異なる手段を必要とするかなどを検討する場面となるのです。
このように、人事評価はとても重要です。
人事評価については、特に業務のベースと なる部分と運動させる必要があります。
これは、基本をマスターさせるためです。
業務のベー スとなる部分と人事評価をリンクさせ、習得しなければならない業務を評価することにより、 確実に実践の場面に活かせることになるのです。
いくら業務を習得しても、きちんと評価されないのであれば、業務意欲は落ちていきます。
そのためにも評価は必要です。
このように習得の度合いを計るためには、明確な評価項目が必要となってきます。
しかし、 世の中の会社の評価、特に現場に従事する社員を評価するシステムは、なかなか難しいとされ ています。
それは、基準が曖味、評価者によってばらつきがあるなどシステムの問題、考課側の 問題とされてきました。
確かに、このような問題があるときちんとした評価はできません。
しかし、社員の行動に注 目してみましよう。
例えば、評価項目で「在庫管理システムを使用できる」という項目があったとします。
これ に対して○か×かで、評価するのです。
つまり、「行動が取れるか取れないか」だけを判断基 準とするのです。
そうすると、評価そのものに「感情」が介入することが少なくなり、「でき るか、できないか」が判断の基準となるのです。
そして、行動項目を多く設定することで、いろいろな角度から「行動できるかできないか」 を判断していくのです。
次ページの「人事評価シート」はひとつの例です。
これは、現場の社員を評価するための一つの例ですが、行動のみで評価するのは評価する側、 される側にとつて、ストレスの少ないものです。
かつ「あなたの評価は○○ができていないから、 ここは低いのです」と言うように客観的に指摘事項を伝えることができるのです。
人事評価にもマニュアルを取り入れていきましよう。
7 マニュアルは会社の資産になる
● マニュアルで組織の風土をつくる
マニュアルは、評価システムの連動により社員を育て上げるシステムとなるということは前述し ました。
そして、単に評価するということではなく、ここにも会社が望むべき「社員像」を投 影させるのです。
つまり、評価システムの項目は、会社が望むことを「行動基準」で伝えることにもなるのです。
そして、評価と連動した教育のシステムをつくっていくのです。
これは、評価者が教育担当者となり、業務遂行上のポイントを明確に伝授することを目的 としています。
さらに、教育担当者と評価者が同一人物であればマネジメント能力も高められま す。
会社組織の「風土の伝承者」として機能することができるのです。
また、マニュアルそのも のが会社の歴史を担うツールとなるのです。
マニュアルが活かされている場合は、目的がぶれません。
さらに業務実施の進め方、留意点、 所要時間などがきちんと押さえられるのです。
そして、流れは次のようになるのです。
田業務の説明 口やってみせる 日やらせてみる 四評価する
←目的の理解¨重要性の説明 ←模範を示す¨手順、ポイントを説明しながら ←実践させる一できるまで反復練習 ←でき映えを褒める¨できない点を指摘する
さらに、イレギユラーなケースの対応などの考察をすれば、マニュアルは単なる手 順書の域を超え、教育システムとなっていくのです。
教育システムとなれば、会社組織の 基礎となります。
会社の「社風」ができてきます。
「社風」ができることとは、つまり、「会社独自の文化」を持つことです。
それは、会社の歴 史となり、何よりも変えがたい「資産」となっていくのです。
人づくりほど難しい教育システムはありません。
それが、動きはじめて稼動すると、その運 用システムは会社の資産となるのです。
いかがでしょうか。
8 業務シートを工夫する
● メリット・デメリットすべてを表現する
物品の購入や案件の処理方法など、担当しているスタッフのみで決めることができない場合は、 決裁権限に従って稟議書を作成し、上司に判断を仰ぐことがあります。
会社の規模などもあ るので、それぞれの会社で基準があるのでしょうが、基本的な考え方は同じです。
稟議書を作成することにより、「なぜ、決裁を仰がなければならないのか?」を担当者は考 えます。
そして、自分なりの判断で意思を表現します。
ここが重要です。
自分で結論を考えないといけないのです。
判断を仰ぐということは、自分 なりの意見をもって上司に話を通すということです。
ここで、次の「稟議書」を見てください。
この稟議書には、稟議内容を審議するための材料 を記載する欄があります。
つまり、案件内容についてのメリツト、デメリットの項目を明示するようになって います。
案件の内容をよりわかりやすくするための工夫です。
この欄を設けることに より、本当に稟議内容が「会社にとって必要なのか」をさらに検証できるようになります。
例えば、この稟議書を使って、コピーとファックスの複合機を購入しようと考えた場合、メリッ トとして次の項目が挙げられます。
●フルカラーで印刷ができるので、プレゼンテ‥ション資料などの見栄えが良くなる ●現在のフアックスが混雑しているときに対応可能となる ●コピーのスピードが速い ●多量の資料作成時に帳合機能やホチキス機能があり便利である しかし、デメリットも次のように挙げられます。
●購入コストが高い
●カラーコピーの単価が高い ●カラ‥印刷の要望が少ない ●多量のコピーの頻度は少ない このように具体的にメリット、デメリットがわかれば、購入コストに見合うのか、感覚的に購 入したいのか、現在の設備で足りない部分は何なのかが客観的にわかります。
雰囲気に押し流 されないで、決裁者が判断できるようになります。
稟議書を例に取り上げましたが、他のシートでもちょっとした工夫により同じような効果が 望めます。
さらに、シートの工夫により、議案者が色々考えるようになります。
この稟議書では、 コスト意識、経営感覚が知らず知らずに意識されるようになっています。
そうすると、小さいことからですが、「企業マインド」が植えつけられ、会社の風土として育っ ていくのです。
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