会社を進化させるマニュアル化の基本マニュアルを会社の成長につなげる3つのフェーズここまで読んできて、マニュアルの必要性を十分理解できただけでなく、実際にマニュアルを作ってみたくてうずうずしてきた方もいるんじゃないでしょうか。
お待たせしました!この章では、「マニュアル化の入門」をテーマに、マニュアルを用いた標準化(マニュアルの作成と運用)の基本的なポイント解説と、実際に具体的なマニュアル作成を実践するところまでお伝えします。
最後まで読めば、必ずマニュアルが作れるようになりますよ。
さて、改めて聞きます。
業務のマニュアルを作る理由はなんでしょうか?答えは、「業務のマニュアルを作ることで、会社が成長していくから」です。
言い換えれば、マニュアルは会社を成長させるために必要なツール(アイテム)です。
時々、業務のマニュアルを作ること自体が目的になっている会社もありますが、それは間違いです。
マニュアルは「会社が成長するため」に必要なツール(アイテム)で、あくまでも目的は「会社の成長」です。
マニュアルを導入すること=マニュアル化はそのための取り組みだということを見失わないでください。
2・1が考える、「会社が成長する」ためのマニュアル化は、次の3つのフェーズで構成されています。
・フェーズ1業務を可視化する(可視化)・フェーズ2運用を仕組化する(仕組化)・フェーズ3更新を習慣化する(習慣化)そして、この可視化→仕組化→習慣化をサイクルとして回すことで、マニュアルが磨かれ、そのマニュアルを活用することで会社の成長につながっていくのです。
フェーズ1業務を可視化する(可視化)まずは可視化からスタートします。
これは、文字どおり、今の業務を洗い出して見える化することです。
その業務に精通している社員から、「彼らのやり方」を徹底的にヒアリングし、その業務でどんなことを、どういう頻度で、どういう順番で行っているか、などをすべて洗い出します。
そうして業務の「棚卸し」ができたら、その内容にしたがって、マニュアルの形にしていきます。
どうですか?思ったより簡単でしょう?でも、この第一歩でつまずき、挫折してしまうケースがとても多いんです。
最初から完璧な内容を目指す必要はありません。
とにかく、まずは業務内容を洗い出し、それをマニュアルに落とし込むこと。
このプロセスをやりきることが大切です。
〔フェーズ1を経ることの効果〕・今一番よいやり方を共有できる(発見、洗い出し)・個人に隠れていた技を共有できる(発見、洗い出し)・業務のムリ・ムダ・ムラを発見できる・現場の悩みが浮き彫りになる・現場の知恵と工夫を吸い上げることができる具体的にどのように業務を洗い出し、マニュアルの形にしていくかについては、のちほど解説します。
ここでは、まず一度マニュアルを作りあげるところまでがフェーズ1だということを押さえ、次のフェーズ2、フェーズ3まで俯瞰しておきましょう。
フェーズ2運用を仕組化する(仕組化)運用というのは、できあがったマニュアルに関わる社員全員が、マニュアルを“バイブル”として常に使っている状態を指します。
マニュアルはただ作ればいいわけではなく、「みんなで使う」ものになることが非常に重要です。
そうして、「社員全員が常に使っている状態」にすることが仕組化です。
仕組化のはじめの一歩は、「全社員への周知」です。
会社の基準として、会社のルールとして、そして、社員の規範として、マニュアルを導入する意味を社員に理解してもらうのです。
一般的に、「マニュアルを導入する=マニュアル化」というと、「マニュアルを作る」ことだと認識しがちですが、そうではなく、全社員が「マニュアルを使う意味を理解する」ことがマニュアル化だということを覚えてください。
〔フェーズ2を経ることの効果〕・教育にかかる時間が激減する・作業ミスが激減する・引き継ぎが効率的に、かつ均質的にできる・社員教育が効率的に、かつ均質的にできる・新人が今までより早く戦力になるフェーズ3更新を習慣化する(習慣化)マニュアル化を会社の成長につなげるためには、マニュアルの更新が欠かせません。
社員のみなさんは、どんな立場の人でも、日々の業務の中で何かを感じ、考えています。
その“気づき”を、メモをする人とメモをしない人がいます。
また、メモをする人の中にも、そのメモを見返す人と見返さない人がいます。
さらに、メモを見返す人の中にも、その内容を周囲と共有する人と共有しない人がいます。
それらをすべて考え合わせると、業務の中で発見された膨大な“気づき”のほとんどは捨てられ、忘れ去られてしまっているわけです。
これは実にもったいない。
もし、その膨大な“気づき”が会社に蓄積されていけば、大きな資産になります。
マニュアルの更新とは、まさにこの“気づき”を現場に反映させることです。
マニュアルは社員のみなさんの経験と勘の蓄積でできているものであり、その経験と勘も、マニュアルを作成した時点のものです。
言ってみれば、それは日々の現場で次々に生まれる“気づき”を、ある時点で取り出したものにすぎません。
どんどん出てくる“気づき”を、適切なタイミングでマニュアルに反映することで、マニュアルはどんどん磨かれていきます。
そして、この更新によって、会社と個人がどんどん成長していくんです。
2・1がマニュアル化をお手伝いしたある会社では、毎月1回、マニュアル運用に関する定例会議を行っています。
社員の方にはマニュアルについて気づいたことを日々メモしておいてもらい、会議の席で発表してもらうんですが、1か月で94個も挙がってきたときがありました。
それを仕分けして、必要なものをマニュアルに反映させ、更新していくわけです。
更新のタイミングは、その会社でムリのない範囲で設定すれば大丈夫ですが、たとえば「マニュアル作成後、3か月目に1回、その後は半年に1回の頻度」というように、きちんとルール化しておくことが大切です。
ちなみに、2・1ではこの3つのフェーズを回す仕組みを「マニュアルPDCA」と呼んでいます。
紙幅の関係で、本書ではマニュアルPDCAについては説明しませんが、この仕組みを構築することで、会社がもっと成長していくための成長基盤ができあがります。
〔フェーズ3を経ることの効果〕・社員の業務への取り組み姿勢が向上する・現場のナレッジを吸い上げる仕組みができる・業務上のトラブル検証や対策がスピードアップする・ほかの業務にも派生する・社内の雰囲気が明らかによくなる
では、ここからいよいよマニュアルの作り方に入っていきましょう!
マニュアル化の“超”基本手法と構成マニュアル化のファーストステップ「可視化」を行うには?マニュアル化の3つのフェーズ「可視化」「仕組化」「習慣化」のうち、本書ではフェーズ1の「可視化」について、具体的に説明します。
可視化の到達点はマニュアル作成です。
可視化=マニュアル作成のポイントを理解できれば、簡単なマニュアルを作れるようになります。
マニュアルの3つのコンセプト2・1では、次の3点をマニュアルのコンセプトとしています。
・再現性・検索性・法則性第一章でも説明しましたが、マニュアルは“目的”に応じた“行動”が明示され、求められる“結果”を誰もが“再現”できるツールであるべきです。
読み手の解釈によって行動に差が出たり、読み手の力量によって結果が変わったりするマニュアルは、よいマニュアルではありません。
「再現性」というのは「仕事の実行のしやすさ」のことで、読み手が求められる結果を理解し、正しく遂行できることを意味します。
望む結果をきちんと得られるように、マニュアルにはその業務を再現できる手順がしっかり書かれていることが必要です。
「検索性」というのは「情報の探しやすさ」のことで、ほしい情報に迷いなく、素早くたどり着ける構造になっていることを意味します。
後述しますが、検索性を実現するためには「目次」が重要になります。
そして、「法則性」というのは「結果の出しやすさ」のことで、あらゆる行動において基盤となる考え方、“王道パターン”、ルールを意味します。
マニュアルのとおりにやったらうまくいく、という方法がきちんとマニュアルに書かれていることが求められます。
2・1では、「よいマニュアルの条件」として、この3点が確保されていることを重視しています。
マニュアル作成前に準備することマニュアル作成前には、まず次の4つの準備から始めましょう。
〔作成前にやるべきこと〕①可視化する業務の選定②プロジェクトメンバーの選定③作成ルールの設定④作成目標スケジュールの設定
「マニュアル作りを始めよう!」となった場合、まずほとんどの方は「じゃあ、まずどんな業務をやっているか、書き出していこう」などと、いきなりマニュアル作成に着手しようとします。
これ、失敗のもとです。
マニュアル作りを成功させるためには、作成前の準備がカギになります。
作成前に、まず全体のゴールを定めることが肝心です。
そのポイントは「スケジュール設定」と「実態把握」です。
①可視化する業務の選定マニュアル作りのスタートは、まず可視化のニーズを確認し、可視化させる目的をハッキリさせて、可視化する業務を選ぶところから始めます。
たとえば、「次期人材雇用に向けて社員教育環境を整えたい」「職務引き継ぎのために可視化したい」「上場に伴ってマニュアル作成が必要」など、会社ごとにマニュアルを作りたいと思うさまざまなニーズがあるでしょう。
可視化作業のポイント◎可視化ワークシートを作る・まず、可視化のニーズを確認するために、「可視化ワークシート」を作ります。
・どんな業務があって、誰がやっていて、どのくらいの時間をかけていて……というように、実際に日々行われている業務を洗い出し、リスト化します。
・そして、どの程度可視化=見える化したいか、優先順位をつけていきます。
◎可視化の範囲を絞り込む・可視化ワークシートができたら、次に可視化の範囲を絞ります。
・可視化にはとても時間がかかります。
マニュアル化する業務範囲が広いと、細分化して作るマニュアルが多くなり、いつまでたっても完成しないという状態になってしまうので、まずはマニュアルが必要な部分を厳選することが大切です。
◎可視化範囲を絞る条件の例・教えられる人員が限られている業務・習得に時間がかかっている業務・従事者の入れ替わりが頻繁な業務・新人が最初に携わる業務・ミスやクレームが目立つ業務
このようにマニュアルが必要な条件を絞り込み、可視化ワークシートの優先順位との兼ね合いで、マニュアルを作る業務の範囲を絞ります。
②プロジェクトメンバーの選定次に、マニュアルの作成担当者を決めます。
誰がマニュアルを主導して作るのか、マニュアル作成プロジェクトの責任者を決めることが重要です。
頓挫してしまうプロジェクトの原因の大半は、責任者がいないことです。
そして、責任者に任命したからには、このプロジェクトの重要性と権限も含めて伝えましょう。
メンバー選定時のポイント(1)◎マニュアル作成の目的に合わせて選ぶ(例)新人向けマニュアル→普段から新人指導をしている人ベーシックな営業マニュアル→標準的な営業スキルを持っている人メンバー選定で注意したいのは、その業務を知り尽くしているからといって、トップ中のトップの方は選ばないようにする、という点です。
たとえば、営業マニュアルを作る場合、トップ営業マンが作成担当者になると、どうしても高度な内容になりがちです。
多くの場合、マニュアルは新人教育や引き継ぎ用に作ることが多いものですが、マニュアルを読む彼らはその業務の初心者です。
そんな彼らにトップ営業マンの高度な知見を読ませても、理解できないでしょう。
大学生の教科書をいきなり小学生に渡すようなものです。
マニュアルは読む側の視点に合わせて書く必要があります。
新人向けのマニュアルならそのレベルに合わせて作り、徐々にレベルを上げていくべきです。
トップの知見は、マニュアルができた後にエッセンスとして盛り込めば十分です。
メンバー選定時のポイント(2)◎マニュアルの作成は一人に任せるマニュアルの内容は、できれば作成担当者一人の知見で作りましょう。
ありがちなのが、「みんなで話し合って内容を決める」というケースですが、これをやってしまうと、常に議論ばかりで結論が出ず、前に進まなくなります。
なので、まずは一人の知見でいったん作ってしまう。
そして、できたマニュアルに対してみんなで議論し、磨いていけばいいんです。
作成担当者になる方は、確かに仕事が増えて大変にはなりますが、メリットもあります。
まず、業務を言語化することで業務内容の整理ができ、理解が深まるうえ、日頃の業務のムリ・ムダ・ムラに気がつけます。
可視化そのもののスキルも学べますし、何より担当業務において責任のある立場になれます。
可視化作業には学びが多いので、その経験は必ず作成担当者の財産になりますよ。
③作成ルールの設定続いて、可視化にあたってのルールを設定します。
可視化作業のための下準備です。
このルール設定は、先に説明したフェーズ2の「仕組化」につながる部分でもありますが、マニュアルを作った後で、しっかり運用していくために必要な作業です。
作成ルール設定時のポイント◎マニュアル化の意義や目的を言葉にする・「何のためにマニュアル化をするのか」「どういうときにマニュアルを使うのか」という、マニュアル化の意義や目的を説明できるようにします。
◎全社員に知ってもらう下地作りを行う・社内にこれからマニュアル化を進めることをアナウンスしたり、作成担当者やプロジェクトメンバーの紹介とその役割、可視化にあたっての流れを説明するなど、マニュアル化をスムーズに進めるための下地作りと、そのやり方を決めていきます。
④作成目標スケジュールの設定作成前準備の最後に、作成目標スケジュールを決めます。
スケジュール設定時のポイント◎可視化は短期間で行う・何度か説明していますが、業務の内容やみなさんが持っている情報は日々変わっていくので、のんびり作業をしていると、作った内容はどんどん陳腐化していきます。
そうならないために、期間を決めて一気に作りましょう。
可視化範囲を絞る理由もそのためです。
◎運用(更新)まで見据えた期間を設定する・マニュアルは作って終わりではありません。
スケジュールは可視化だけでなく、運用(更新)まで見据えた期間を考慮して設定しましょう。
最重要!本当に“使える”マニュアルの基本構成準備が整ったら、いよいよマニュアルを作ります。
まずはマニュアルに必要な基本の構成を説明しましょう。
基本の構成=マニュアル作成の流れと理解してください。
マニュアルに必要な構成は、大きく次の4つです。
〔マニュアルの基本構成〕①ワークフロー②ステップアクション③用語集④目次①ワークフローワークフローは対象業務全体の流れを表すものです。
その業務での動き方や考え方が可視化された状態がワークフローで、業務全体を俯瞰して見ることができる“地図”と言えます。
ワークフローを見れば、今どの段階にいるか、次に何をすればいいのかが、一目瞭然でわかります。
ワークフローに入れる要素〔必須〕・業務のプロセス…何を、どんな流れで行うか〔選択〕・作業時間…ワークフローを見ただけで、作業時間をつかむことができる・関係者情報…お客様や他部署スタッフなどを関係するプロセスのところに書き出すことで、役割や流れが整理できるワークフローの作り方・まずはその業務に関して、普段どんなことをしているのか、思いつく限り書き出す・業務の内容を洗い出したところで、時系列や内容を整理する・流れが一目でわかる形にまとめるワークフロー作成時のポイント・「業務の流れが一目でわかる」ことを第一優先にする・シンプルに作ることを心がけ、複雑に分岐する場合は分割する・ムリにひとつにまとめようとしない実際のワークフローを例に見ていきましょう。
例に挙げたのは「新規商談フロー」です。
新規顧客に向けて商談を行うための業務内容を、大きく「プロセス」ごとに分け、それぞれのプロセスで、何を、どんな流れで行うのかを並べていきます。
陥りがちな失敗パターンに注意!(A)「時と場合による」失敗型たとえば、営業でどんなやり方をしているかを書き出す際に、「時と場合によってやり方が違うから、ワークフローなんて作れない」と言う方もいます。
時と場合によるやり方があるなら、まずはそれを全部書いてください。
書き出したうえで、それを並べてみると、パターンなり、基本的な流れが見えてくるものです。
また、そうやって自分がやっていることを洗い出すことで、バラバラにやっていたやり方がいかに非効率だったかが見えてきます。
そのうえで、ムダなやり方をそぎ落とし、王道パターンのワークフローを作っていけばいいでしょう。
ただし、ムダが多いことがほとんどなので、できれば「時と場合による」というのは禁止にしてしまいましょう。
(B)整理・省略失敗型(A)の反対で、業務の中にいろいろな作業があるのに、それを整理したり、省略したりして、ひとつのワークフローにまとめようとするパターンがこれです。
中には、無理矢理調整したために、フローの入口と出
口が違ってしまったりするケースもありますが、これではフローを作る意味がありません。
ワークフローはシンプルであればあるほどいいんです。
複雑に分岐したり、大きく横に広がるようなフローになるなら、もっとプロセスを分けて、別々のワークフローを作るべきです。
読み手の解釈が必要になるようなフローでは使い物になりません。
ワークフローの目的は、あくまでも業務の流れが一目でわかるようにすること。
ワークフローをひとつにするために、必要な作業を整理・省略するなんて本末転倒です。
ムリにまとめたがらず、必要なところは分割し、シンプルでわかりやすいワークフローを目指しましょう。
(C)変化・成長失敗型(A)に似ているケースですが、「刻々と変化しているから、今のやり方がベストかどうかわからない」と言って、ワークフローが作れないというパターンです。
これもただの言い訳です。
「その変化はいつ止まるんですか?」と聞きたいくらいです(笑)。
今やっているやり方は、それが一番いいと思ってやっているわけですよね?ベストじゃなくても、それがベターなやり方なら、まずそのやり方でワークフローを作ればいい。
そのうえで、ベストなやり方が見えてきたら、フローを変えていけばいいんです。
(D)秘密主義失敗型たとえば、「自分の営業のノウハウは人に教えたくない」と言う人がたまにいます。
自分のやり方を真似されたくないという心理が働くからでしょうが、であれば、たとえその人がトップ営業マンであっても、その人のノウハウをムリにワークフローにする必要はありません。
ワークフローを作る目的は、業務の王道パターンを作ることです。
秘密にしているトップ営業マンのノウハウが王道パターンになるかといえば、大いに疑問ですし、そのノウハウを吐き出させることに時間を使うのももったいないことです。
会社には、そのトップ営業マンの次に売れている人がいますよね?なんなら、そのさらに次の人でもいいです。
まずは社内にある、売れているノウハウをワークフローに落とし込むことが先決です。
そのうえで、よりよいノウハウが出てきたら、フローを更新すればいいことです。
②ステップアクションワークフローができたら、次はそれぞれのプロセスごとに「ステップ」と「アクション」を作っていきます。
プロセスを「章(大項目)」とするなら、ステップは「節(中項目)」で、アクションは「項(小項目)」となります。
つまり、業務内容ごとに階層化していくわけです。
プロセスが一番粗い粒度の業務の流れで、さらに細かい業務がステップの中の手順、それをさらに細かく説明するのがアクションということです。
フローの作り方・ステップフローは、プロセスに書かれた業務について、詳細な流れを表す・アクションフローは、ステップのひとつひとつについて、さらに細かく具体的な流れを表す・フローを作るときには、全体の流れを把握するために、業務内容を粒度の粗いものから細かいものへと整理していく(細かい手順から作り始めない)・階層化は一気にやろうとせず、徐々に分解していくステップアクションには、必ず「目的」「行動」「結果」を示します。
ここからは、ワークフローの2番目のプロセス「初回商談」を例に見ていきましょう。
【目的】その業務を遂行する目的を明確にします。
・何のためにその作業をするのか・誰のためにするのか(お客様/相手)・なぜその作業が必要なのか(理由)また、目的を書く場合には「利己的視点」と「利他的視点」の両方から書くようにします。
たとえば、「商品補充」についての目的を考えてみましょう。
利己的視点で書くと、「販売の機会損失を起こさないため」となります。
それを利他的視点で書くと、「お客様に買い物を楽しんでいただくため」となります。
なぜ2つの視点で書くかというと、自社のために何をするかという利己的視点だけでは、利益追求に走りがちになります。
会社というものは、お客様や他社の利益、貢献があってこそ業績が反映されていくものなので、常に「お客様のため」という視点を忘れないために、利他的視点も入れておくことが大切です。
【結果】「結果の状態」と「期限や所要時間」を記載します。
「結果の状態」とは、目的を達成した状態・あるべき姿やゴール(合格基準)を明確にすることです。
この基準をクリアすることで、読み手に「習得できた」「業務が完了した」と理解させることができます。
〔結果の状態のポイント〕・目的、生産性基準、手順を実施すれば到達する状態を書く・形容詞、動詞よりも、できるだけ数字、名詞を使う「期限や所要時間」とは、その作業に必要な時間・回数・頻度などを明記することです。
たとえば「5分」や「1枚につき約10分」「約5分(1件)」などのように、標準時間や所要時間などのスピードの基準を示すことで、業務の品質の均一化が図れます。
時間設定で気をつけたいのは、対象者に合わせることです。
あまり厳しい設定にせず、「新人でも、このくらいの時間なら達成できるだろう」と思われる目安を設定するようにします。
〔期限や所要時間のポイント〕・対象者に合わせる・目安を設定する【行動】その作業を行う行動のひとつひとつを、手順と詳細に分けて明記します。
目的や達成基準、生産性基準を踏まえて、それらを達成するためにもっともよい作業手順を定めます。
書き方は、「~する」という能動的な動詞の形で書くといいでしょう。
その際、「これぐらいならわかるだろう」という考え方は厳禁です。
やるべき行動はすべて書きましょう。
また、どのような行動をすればいいのかが一目でわかるように、全体の流れやイメージをつかめる表現で書くようにしましょう。
たとえば、学校で授業が始まる前にする挨拶の仕方をマニュアルにするとしましょう。
よく見かける書き方はこんな感じでしょうか。
〔挨拶のマニュアル〕手順1起立します。
手順2気をつけの姿勢を取ります。
手順3礼をします。
手順4着席します。
30人の生徒に「このマニュアルのとおりにやりなさい」と指導したら、どうなるでしょうか。
おそらく全員が違う挨拶の仕方になるでしょう。
マニュアルに書く行動は、どうすればいいかわかるように具体的に書く必要があります。
たとえば、こんな感じです。
〔挨拶のマニュアル・改〕手順1挨拶する相手の目を見ます。
手順2両手を、机の手前3センチにつきます。
手順3両手で机を押しながら、お尻をあげて立ち上がります。
手順4腰から30度前傾します。
……など。
「起立」「気をつけ」「礼」「着席」を具体的に書くと、手順はとても4つでは収まりません。
〔行動のポイント〕・それぞれの手順で行う動作やそのポイントを、分解してより具体的にする・それぞれの手順における注意点や心得を記載する・それぞれの手順で必要とするセリフなどはしっかり書き込む・それぞれの手順の中に手順が存在する場合もある・言葉は節約する
そして、目的、結果、行動以外に、次の4つの要素も盛り込むと、さらに細かい情報が得られるマニュアルになります。
〔プラスの4つの要素〕◎準備…その作業(行動)をするうえで必要な道具・資料◎発生時期…この作業はいつ発生するのかという時期やタイミング◎全体の注意点…一連の作業(行動)で必要な心構え、留意点、チェックポイント◎その他…書く手順で必要な写真・イラスト③用語集ステップアクションの中に出てくる専門用語をまとめたものです。
必ず作るべきというものではないので、必要に応じて作りましょう。
用語集以外に、トークスクリプトやトーク例の解説、チェックリスト、行動指針などを入れる場合もあります。
④目次目次の作り方・検索性を意識する・一度マニュアルが完成してから、最後に作るマニュアルには「検索性」が備わっていることが求められます。
どこに何が書かれているかがわからなければ、必要なときにすぐマニュアルを使えません。
すぐに使えないマニュアルは、よいマニュアルではありません。
目次はその検索性を確保するために重要なので、必ず作りましょう。
目次の作り方のポイントは、ワークフローの業務の流れを抽出し、マニュアルを読む人が、迷わずに読みたい場所へすぐ飛べるように作ることです。
マニュアル作成中にはページの増減や移動が発生するので、目次は一度マニュアルが完成してから、最後に作るようにします。
マニュアル作成の基本テクニックここからは、見やすい、読みやすいマニュアルを作るための具体的なテクニックを紹介します。
見やすく、読みやすくするテクニックポイント「視認性」「可読性」「判読性」を意識まず大切なのが「視認性」「可読性」「判読性」です。
「視認性」とは「文字の見えやすさ」のことです。
たとえば、適切に余白があるか、ごちゃごちゃしていないか、色が薄くないか、色合いは見やすいかなど、見た瞬間に文字として認識できるかどうかがポイントです。
「可読性」とは「文章の読みやすさ」のことです。
難しすぎず、理解しやすい内容か、文章が長すぎず、正確に速く読めるか、読んでいて疲労を感じないか、などがポイントになります。
「判読性」は可読性と混同されやすいんですが、「文章のわかりやすさ」のことです。
誰の観点で書かれているかがわかるか、素人目線でわかりやすく書いてあるか、などがポイントです。
用語集を整理するのは、この判読性の向上につながります。
曖昧、強調、カラフルは避けるポイント・読む人によって解釈が変わるような曖昧表現は避ける・強調文字は原則使わない・色づかいはシンプルにマニュアルに書く言葉で、曖昧な表現は避けましょう。
「できるだけ」「率先して」「1日に数回」など、読む人によって解釈が変わる可能性のある書き方は、業務の標準化の質を落とします。
また、マニュアルの文章中、強調する部分を入れることもできるだけ避けましょう。
強調する部分が多ければ多いほど、それが強調したい内容とは認識されなくなるからです。
マニュアルに書く内容は重要なことばかりです。
反対に、重要でないことは書くべきではありません。
そのうえで、どうしても「そこは強調すべき」という部分だけ強調するようにしましょう。
そして、色づかいもシンプルにします。
カラフルなマニュアルは華やかで、見やすいように思えますが、色を多く使いすぎると、どこがポイントなのかがぼやけてしまいます。
2・1のマニュアルでは、文字の色は基本的には2色しか使いません。
シンプルに、見やすくするのがポイントです。
禁止表現は禁止ポイント・禁止表現は使わず、能動的な言葉を使う世の中を見回すと、「○○禁止」「○○してはいけない」「○○するべからず」などという禁止表現が使われた表示がたくさんありますが、こうした書き方は、効果的な伝達方法とは言えません。
禁止表現にはネガティブな印象がありますし、言葉のニュアンスもきつく感じられます。
そもそも「禁止」と書かれている内容は、悪いことはわかっていながら、人がついついやってしまうことがほとんどです。
再発しない仕組みを作らない限り、「禁止」とだけ言っても、根本的な解決にはなりません。
ですから、マニュアルは禁止表現でなく、能動的な言葉で書くようにしましょう。
ほかにも細かい約束事がありますが、まずはこのくらいのことを押さえておけば、基本はバッチリです。
さあ、みなさん、もう簡単なマニュアルなら作れるはずですよ。
実践!マニュアル作りに挑戦してみよう店舗の清掃業務をマニュアルにするでは、実際に業務マニュアルを作ってみましょう。
挑戦する業務の内容は「店舗の清掃」です。
設定あなたは、ある飲食店の従業員です。
マニュアルの作成担当者として、店舗の清掃業務をマニュアル化することになりました。
〔店舗の概要〕・郊外にある洋風レストラン・フロアはフローリング・エントランスはガラス製の自動ドア・窓はガラス製ではめ込み式・テーブル数は20卓・トイレは男女別/床はタイル貼り/男性トイレは小便器2つ、洋式便器1つ/女性トイレは洋式便器2つ/洗面ボウルが各2つ・従業員用の事務所あり■課題1可視化ワークシートを作るまず、可視化する業務を選定するために、可視化ワークシートを作ってください。
店舗の概要を参考に、考えられる清掃業務の内容を図に示したフォーマットに書き出してみましょう。
【課題1の回答例】回答例の図を確認してください。
ポイント・抜け漏れなく業務を洗い出すこと。
時系列で思い出したり、業務の種類ごとに洗い出すと、抜け漏れが発生しづらくなる。
・自分が思いつく業務や手順を、とりあえず書き出すこと。
整理は後からでよい。
(解答例は整理された状態になっているが、最初からきれいにしなくてよい。
)・書き出した後に、業務の種類ごとにグルーピングし、各グループに名称をつける。
補足・この例の場合、店外の清掃として「バイクの洗車」「駐車場」「店舗外観」、店内の清掃として「ホール・ホール設備」「トイレ」「キッチン・キッチン設備」「スタッフルーム」などがありますが、それを「いつ清掃するか」という大項目に区分し、清掃する場所を具体的に中項目に区分、そしてひとつひとつの手順を小項目に書き出しています。
・たとえば「ホール」という場所の中でも、「床」と「テーブル・カウンター・椅子」の清掃手順は異なります。
このような場合は、2つに中項目を分ける方が、手順を具体的に示しやすくなります。
■課題2ワークフローを作る課題1で作った可視化ワークシートをもとに可視化したい業務を絞り、その業務のワークフローを作ってください。
今回は、課題1の「6~12」の部分である、開店前準備の時間帯で行う、店舗内の清掃フローを作ってみましょう。
【課題2の回答例】回答例の図を確認してください。
ポイント・業務を行う時系列順に並べる。
・実際の作業手順をイメージしながら、違和感がないか確認する。
・時系列で並べた後に、関係者を洗い出す。
・場合分けが存在するときは、まず基本のフローを作り、後から派生部分を作成する。
補足・この場合は、まずホールの床掃除から始め、テーブル、壁、窓、照明器具と、ホール設備関連が一通り終わってからトイレ清掃、そしてレジ周りの清掃へと進めることを示しています。
・開店前の限られた時間で、何をどの順でやればよいか、一目でわかるワークフロー作成を目指します。
一人の担当者が全部できるものなのか、想像しながら作りましょう。
■課題3「トイレ清掃」のステップアクションを作る課題2の回答例のワークフローにある「トイレ」の清掃に関する、ステップアクションを作ってください。
図に示したフォーマットを参考に、次の項目を埋めてみましょう。
・概要・誰が/誰に・目的(利他/利己)・求める結果(期限/完了時の状態/所要時間)・心得・コツ・ポイント・アクションフロー・アクション1~4
【課題3の回答例】回答例の図を確認してください。
言葉や手順は、例のとおりでなくても構いません。
次のようなポイントが反映されているかを中心に、チェックしましょう。
ポイント・結果の状態は、終わったときの状態が想像できるように書く。
・期限や所要時間は、数字で具体的に書く。
・アクションは「~する」の形で書く。
・アクションと補足情報(コツ、注意点等)は、分けて書く。
補足・完成状態を示す図や写真があれば、欄内に貼っておくのも有効です。
また、注意すべき点などを、補足して書くのもよいでしょう。
・作成した後は、そのマニュアルを利用する担当者になったつもりで読み直し、抜け漏れがないか、確認します。
いかがでしたか?最初は難しく感じるかもしれませんが、考え方を理解していれば、どんどんよいマニュアルを作れるようになってくるでしょう。
また、一度作ったマニュアルを更新して、マニュアルを磨く練習をしてみるのも効果的です。
そして、マニュアル化の考え方は、仕事だけでなく日常生活でも役に立ちます。
課題3のトイレ掃除のマニュアルなどは、家庭のトイレ掃除にも応用できるでしょう。
たとえば、キッチン清掃のマニュアルやワードローブ整理のマニュアル、領収書やレシート、郵便物などの書類を整理するマニュアル、ペットのお世話を人に頼むときのマニュアルなど、日頃何の気なしに行っている行動を洗い出し、マニュアル化してみると、ムリ・ムダ・ムラな行動や動作がわかります。
それらを整理することで思考の空き容量が増え、これまでとは違う時間の使い方ができるようになるかもしれませんよ。
毎日の業務や日常生活を、ぜひ「マニュアル」という目線で見直してみてください。
きっとたくさんの発見があることでしょう。
会社と社員を幸せにする「武器」を手に入れようマニュアル化に消極的な言い訳はもういらないここまで読んできたあなたなら、マニュアルの効果がすでにおわかりだと思います。
それでも、いざ職場での実践を考えると、こんな声が頭をよぎるかもしれません。
「うちの会社じゃ必要性が感じられないな」「忙しくて、マニュアルを作っている場合じゃないよ」「まだマニュアルを作る段階じゃないから」「自分たちでうまく作れるかわからないし」会社や自身の成長を考えたら、すぐにでもマニュアル作成に取りかかるべきです。
そんな後ろ向きの言い訳なんてしている場合じゃありませんよ!①必要性を感じていない本当にマニュアルは必要ないんでしょうか。
当然ですが、会社に利益や成長は必要ですよね。
継続的な利益や成長は何からもたらされるでしょう?それは「仕組化」と「改善」です。
仕組化と改善にマニュアルが不可欠であることは、ここまで読んできた方ならもう理解できていますよね。
だから、「必要性を感じない」というのはもうやめましょう。
会社の成長にマニュアルは必要なんです。
②忙しくて、マニュアルを作っている場合じゃないなるほど、もっともらしく聞こえますが、マニュアルがなければ業務の効率化は進みません。
業務が属人的で、ムリ・ムラ・ムダが多く、いつまでたっても忙しいままでしょう。
どこかで仕組み化と改善を進めなければ、成長と進化はありません。
もうその言い訳はやめましょう。
後回しにせず、今すぐマニュアルを作りましょう。
③まだマニュアルを作る段階じゃないマニュアルの必要性はわかっているんです。
そのうえで、「うちはまだ成長過程で、今のやり方はベストじゃない。
だから、この状態でマニュアル化するのは早いんじゃないか」などと考えています。
まだ会社の基盤が固まっていないベンチャー企業に多いパターンです。
でも、今のやり方が続いているのは、それがその会社の現在のスキルだからです。
今のやり方よりいいやり方があって、それができるなら、とっくにやっているはずです。
業務を分析し、正しく改善していくためには、見える化とルール化=マニュアル化が必須です。
マニュアル作成時には業務の洗い出しを行いますが、その作業によって、現場のノウハウや個人に隠れているノウハウが見えてきます。
今のノウハウを見える化することで、どこがよくないのか、どこが非効率なのかがハッキリします。
つまり、まずはマニュアル化して、そのとおりにやってみてから、「もっと改善するにはどうしたらいいか?」と検証してみればいい。
問題点や改善点がハッキリすれば、ノウハウは更新され、磨かれていきます。
それを繰り返すことが、結果的に会社のノウハウの標準化につながり、企業価値が向上するわけです。
ぜひ、今すぐマニュアル作りに取りかかりましょう。
もしかしたら、「組織がもっと大きくなってからやろう」と考えているのかもしれません。
けれども、第二章で説明したように、従業員が増えると個人に任せるものが増えていき、どんどんルール化しにくくなるものです。
マニュアルを作るなら、より早く、より人数が少ないときにやりましょう。
理想は従業員を1名雇ったとき、です。
④うまく作れるかわからないこれについては、この章で述べてきたとおりです。
簡単なマニュアルなら、あなたはもう作れるはずです。
「3つの壁」を知って乗り越えよう!2・1では、「過去に、自分たちでマニュアル作りに挑戦した」、あるいは「一度は作成したことがある」という会社から相談をいただくことも少なくありません。
「意欲はあったものの、日々の業務が忙しくて、なかなか作業が進められなかった」「思っていた内容にできなくて、結局完成しなかった」「なんとか形にはなったけど、最終的に使わなくなってしまった」そんな声を本当によく聞きます。
マニュアル作りを自社で行う際には、立ちはだかる壁が3つあります。
・第1の壁マニュアルに対する誤解がある・第2の壁マニュアル作成のスキルがない・第3の壁マニュアル作成の優先度が低い自社でマニュアル作成にトライした多くの会社はこの3つの壁に阻まれ、失敗に終わっているんです。
第1の壁マニュアルに対する誤解がある第一章で詳しく説明していますが、たとえば「マニュアルにすべての業務の内容を書くと、社員が自分で考えなくなるんじゃないか」とか、「マニュアルで自分たちを縛りつけて、僕らをロボットにするつもりなのか」などと、経営者側、社員側双方にマニュアルに対する誤解や偏見、勘違いがあるため、マニュアル作成や運用に積極的に取り組もうという気持ちになりません。
ですが、すでにここまで読んできたみなさんなら、たとえば「社員が考えなくなる」「思考停止する」という印象は完全な誤解であることはおわかりですよね。
マニュアルは「基本=型」を教えるものであって、決して応用力がつかなくなるものではない。
むしろ、応用するために知っておくべき基本が身につくツールなんですから。
第2の壁マニュアル作成のスキルがないみなさんの会社で、社長から「社内の業務マニュアルを作ってくれ」という指示があったとしましょう。
そうなると、自分たちでマニュアルを作る能力が求められるわけですが、はたして会社の中に、マニュアル作りに長けた人材がいるものでしょうか?求人の際に、「マニュアルをたくさん作ってきた人」や「言語化や体系化が得意な方」を募集している会社がどれだけあるでしょうか?僕はそうした求人を見たことがありません。
そんな求人をしているのは僕らの会社くらいなものです(笑)。
つまり、普通の会社で、マニュアルを作るスキルを意図的に取り入れている、というところはほとんどないと言えます。
ということは、やはり自分たちでマニュアルを作るということは、当然大変な作業になるわけです。
第3の壁マニュアル作成の優先度が低いマニュアルを作るにあたって、たいていの会社では「社内のマニュアルは自分たちで作るべき」と考えます。
しかし、マニュアル作成はお客様や取引先に直接関わる業務ではないため、優先度は間違いなく売上げ活動の二の次三の次に追いやられます。
その結果、「必要だけど緊急性はない」という位置づけに置かれて、「時間ができたらやろう」と後回しが重なり、スケジュールどおりに作業が進まない、ということになっていくわけです。
しかし、業務は日々変化しますので、時間がたつうちに、作成途中のマニュアルの内容はどんどん陳腐化してしまいます。
自分たちでマニュアル作りにチャレンジする場合には、きちんと期限を決め、ある程度スピード感を持って短期集中でやることが大切です。
いきなり完成形を目指す必要はありません。
マニュアルの必要性を感じたらすぐ始めて、まずは形にすることが重要なんです。
失敗につながる落とし穴も難なくクリア!マニュアル化には落とし穴がいっぱい!頑張って3つの壁を越えられたとしても、まだ安心はできません。
その先にも、マニュアル化を失敗に終わらせる落とし穴はいくつも開いています。
・マニュアルを完成できなかった・マニュアルの使用を徹底できない・マニュアル化に主体性がない「作るからには完璧でないといけない」とか、「マニュアルを作ればすべて解決する」といった思い込みが、落とし穴へと導きます。
知っていればその道はたどらないはず。
ぜひ押さえておきましょう。
マニュアルを完成できなかったたとえば、マニュアル作成の優先度を上げて、しっかり取り組んだにもかかわらず、結局マニュアルを形にすることができなかった、というケースがあります。
この場合、多くは「完璧主義」が敗因です。
「せっかくマニュアルを作るんだから、完璧なものを作ろう」と最初から完成形を想定し、100%の内容を目指してスタートします。
でも、目指す目標が高すぎるせいでうまくいかず、結局作るのをやめてしまったり、なんとか作ってはみたものの、目標のレベルにはほど遠く、使えるマニュアルにならなかった、というパターンですね。
「第2の壁」でも説明したように、たいていはマニュアル作成のスキルがないんですから、いきなり完璧なものを作れるはずはありません。
せっかくマニュアルの必要性を理解できているのに、自分たちでハードルを上げてしまい、自滅してしまう……。
残念なことです。
マニュアルの使用を徹底できないとりあえずマニュアルができたとしても、運用がうまくいかないということもよくあります。
うまくいかない理由として、「マニュアルが使いづらい」というケースが目立ちます。
「文字が読みにくい」「ファイルの使い勝手が悪い」などの物理的な問題だったり、「わかりにくい」「内容が不十分で使えない」などの中身の問題だったりします。
でも、たとえ理想的なマニュアルになっていないとしても、作ったからには、まずはそのマニュアルをベースに業務を見直して、その結果をマニュアルに反映させる。
そして、人を教育するときにも必ずそのマニュアルを使う、ということを徹底する必要があります。
マニュアルを使ったり使わなかったり、という中途半端な状態を作らないようにしなければなりません。
「使ってみたけど、どうにも使いにくい。
だからもうマニュアルは使わないで、口頭で説明してしまおう」こうなってしまうと、業務はいつまでも属人的なままで、マニュアルは形骸化し、いつしか使われなくなる運命が待っています。
マニュアル化に主体性がないマニュアルは作ったら終わり、ではありません。
むしろ、作った後の更新(運用)のほうが大切です。
時々、「マニュアルって更新してもいいんですか?」と聞かれることがあります。
更新していいんです。
マニュアルは“アンタッチャブル”なものではありません。
会社は日々進化し、現場のノウハウも日々更新されて、より進化していくはずです。
ですから、マニュアルは日々更新することを前提にして作るべきなんです。
ところが、その更新においてネックになるのが、日常業務の多忙さによって、マニュアルの更新業務がおろそかになることです。
マニュアル作成時には、部署が一丸となって、あるいはマニュアル作成チームを編成するなどして、なんとかマニュアルを形にすることができました。
問題はその後です。
多くの場合、マニュアルの管理・運用までを視野に入れず、「気がついた人が更新しよう」という程度のゆるさで使い始めます。
当然ですが、みなさん通常業務で手一杯ですから、マニュアルの更新作業を買って出るような奇特な人はそうはいないでしょう。
そうやって、マニュアルの更新作業は宙に浮いたままになり、放置されたマニュアルはどんどん業務の内容と食い違っていき、やがて使われなくなってしまうのです。
このケースの問題点は、マニュアルを更新する責任者を決めていないことです。
マニュアルの運用は、「気がついた人が更新する」という“他力本願”な運用方法では、うまくいくはずがありません。
正解は、マニュアル化をきちんと業務の一環として位置づけ、マニュアルの責任者を決めて、その責任者がマニュアルの面倒を見るようにすること。
主体性のないマニュアル化は、いつか破綻してしまうということを覚えておきましょう。
「なんだかいろいろ気をつけなきゃならないことがあって、マニュアル化って大変だなあ」と思われ方もいるかもしれません。
でも、難しく考えることはないんです。
なぜマニュアルを作るのか。
それは会社の成長のため、そして、マニュアルを作り、それを使っていく社員のみなさんが幸せになるためにあるものです。
このことさえしっかり理解していれば、どんな壁も落とし穴も怖くはありません。
成長する会社の武器として、社員一人ひとりが輝けるような就業環境作りのツールとして、マニュアルをどんどん活用していってほしいと思います。
テレワークを成功に導くマニュアル化のカギとは?2019年12月、中国湖北省武漢市で発症が確認された新型コロナウイルス。
その後、世界中に感染が広まり、この原稿を書いている現在も、感染者数は恐ろしい勢いで増加しつづけています。
日本国内の感染者も日を追うごとに数を増し、感染防止の観点から、政府や自治体はテレワークの実施を推奨、支援する動きを見せています。
この流れから、2・1にもテレワークについての問い合わせをいただくことが多くなってきています。
「業務がマニュアル化されていれば、テレワークもうまくいくんじゃないか」という考えからだと思いますが、「マニュアル化されていればOK」という単純な話ではありません。
もちろん、テレワークをうまく進めるために、マニュアル化は大いに役立ちます。
ただし、そこには「評価(人事評価)」がしっかり連動している必要があります。
テレワークでありがちなのが、経営者やマネジメント側が「今、コイツはサボっているんじゃないか」という懸念を抱くことです。
相手の働いている姿が見えないために不安が出てくるんでしょうが、問題はそこじゃない。
社員の評価につながる結果設定ができていないのが原因なんです。
その社員が、いつまでに、どんな成果をあげるべきか、到達点=結果を明確に設定していれば、「サボっているかどうか」という発想は出てきません。
それに、別にサボっててもいいじゃないですか。
期限内に、設定した結果が出せればいいんですから。
そして、この「結果で評価をするためにはどうしたらいいか」というところに、業務の標準化=マニュアル化が生きてくるわけです。
業務がしっかりとフロー化され、きちんとステップに分けられていれば、たとえば「どこのステップをいつまでにやる」という設定ができます。
それができているか、できていないかで、社員の進捗状況や仕事の進め方を判断し、その達成度によって社員を評価することができるわけです。
Zoomがあるからとか、クラウドを使っているからとか、テレワークはそんなツールの問題ではなく、マニュアル化×人事評価という体制がとれているかどうかが重要なんです。
必要に迫られて注目を集め始めたテレワークですが、そんなところからもマニュアル化の重要性が見えてきた気がします。
おわりに最後までお読みいただきまして、どうもありがとうございます。
本書は、私の記念すべき出版第一号です。
出版自体が人生の目標のひとつでもあったので、とても感慨深いものがあります。
ただ、お金を出せば誰でも本は出せます。
オンデマンド出版や電子書籍が一般的になった今では、さらにそのハードルは低くなり、どんな内容でも本は作れます。
でも、それは嫌でした。
自分がプロとして社会に広く伝える価値がある内容でないと、書きたくなかった。
今回、出版に踏み切るきっかけになったのが、内閣官房との仕事です。
昨年、行政における「『業務の抜本見直し推進チーム』アドバイザー」のオファーを頂戴したとき、「僕でいいんですか?」という思いと同時に、プロとしての自信も持つことができました。
それで、「今なら書ける」と思ったわけです。
本書のタイトル、『社長、僕らをロボットにする気ですか?』は以前から決めていたものでした。
株式会社2・1を創業し、さまざまなお客様の業務のマニュアル化を手伝う中で、僕が思っていた以上に、マニュアル化に関わるお客様の現場は殺伐としていました。
「忙しいのになんでやらなきゃいけないの?」「マニュアルなんて意味あるの?」などという心ない言葉をどれだけ僕らが受け止めてきたか。
そんな中、某社で実施したマニュアル導入説明会の質疑応答の際にいただいた言葉が、このタイトルです。
想像もしていなかった言葉でした。
ロボットにする気なんかあるわけないじゃないですか。
「そんなに嫌なんだ、マニュアル……」マニュアルへのネガティブなイメージがこんなに根深いのかと思った瞬間でした。
だからこそ、本を出すならこのタイトルにしたかった。
本書を皮切りに、これまで当社が培ってきた業務の可視化、マニュアル化、そして組織の仕組化のノウハウを社会に広く公開することで、マニュアルのイメージ回復はもちろん、多くの会社でマニュアルが見直され、みなさんが働きやすくなる職場が増えてほしいと願っています。
追伸この本を作るまでにお世話になった皆様へ。
マニュアルの大切さを教えてくださった、プルデンシャル生命保険伊東三六様、田中宏治様。
マニュアルの極意を教えてくださった、株式会社クオーレ工藤正彦様。
本書の出版を全面的に支援してくださった、ニンニンドットコム鈴木忍社長、マスターピース社の皆様。
そして、マニュアルのプロとしてたくさんの知見と経験を与えてくださった当社顧客の皆様と、当社スタッフのみんな。
なんとか、人生の目標がひとつ叶いました。
ありがとうございます。
株式会社2・1中山亮
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