1マニュアルを徹底的に活用するマニュアルの「活用」の重要性については、これまで何度も説明してきました。
では、実際にどのように活用していくのか、どのように活用すれば成果が上がるのか、そのための考え方と方法について見ていきます。
1「活用」の基本的な考え方(1)マニュアルの活用とは膨大な時間・経費、エネルギーを費やして完成したマニュアルを、「生かすも殺すも」この活用次第、といえます。
成果を上げる、という視点で考えた場合、作成が1に対して、活用は9割にも匹敵します。
それほど「活用」が占める割合は大きいのです。
私はマニュアルの「活用」を次のように定義しています。
「習得と徹底」によって、基準を「定着」させることつまり、日常活動の中で、きちんと実行されている状態を実現することが重要です。
「必要な人は、読んでおいてね」では、決してないのです。
そのためには、さまざまなツールや仕組みが必要になります。
なぜなら、前述したように、マニュアルは、決して一人歩きをしないからです。
さらに、重要なことは、マニュアルを、徹底的に「使いきる」ということです。
単に「読んだ」というレベルではなく、しっかり身につかせる、「定着」させることが、最も大事なことです。
ある会社の人がこう述べたことがあります。
「マニュアルがボロボロになるまで使いきりました。
これは、私のバイブルです」感動して聞いたことを、今も鮮明に覚えています。
繰り返しますが、「活用」とは、「基準を定着させる」ことです。
(2)マニュアルの活用を促進させるためにマニュアルの活用を促進するためには、いくつかの注意点や取り組み事項があります。
この中には、作成段階から始まっていることもありますが、ここでもう一度確認し、さらに整理しておきましょう。
①個人の制作物にしないマニュアルは得てして、「○○さんが作ったもの」というレッテルを貼られがちです。
トップから直々に指示されたことであっても、それが会社全体で認知されていないと、「個人の制作物」になってしまいます。
「○○さんが作ったマニュアル」であれば、別に拘束されることはなく、「やりたい人がやればいい」「必要な人が読めばいい」という認識を持たれかねません。
また、作成を担当した人が、「とりあえずまとめてみましたので、使ってください」という謙虚(?)な態度をとったとしたら、なおさらです。
これでは、そのマニュアルが会社の仕事の基準として認識してもらえるはずがなく、マニュアルの価値・役割を十分に発揮することはできません。
マニュアルは、全員が厳守すべき、会社の仕事の基準であるということを、作成前や完成後にトップから全員に明確に伝えることが、絶対に必要です。
こうすることで、完成したマニュアルに“お墨つき”を与えることになります。
この「錦の御旗」があるかないかで、社員の受け止め方がまったく違ってきます。
さらに、「人事評価とも連動させる」といったことをつけ加えれば、決定的に変わってきます。
マニュアルに権威づけをすることが、活用を促進させる上で、非常に重要です。
②社内告知・啓蒙活動に取り組むマニュアルを作成していること、できたことを知らない人は意外と多いものです。
“知らせる”取り組みは、作成の段階から、全員を巻き込む活動にしていくためにも、早くから始めることが必要です。
社内報やイントラネット、各種会議などを利用して、作成の進捗状況や問題・課題を報告し、みんなの関心・注目を集めるようにします。
「マニュアル」の現状を全員で共有化する、ということです。
こうした取り組みをしっかりしておかないと、「何かやっているみたいだけど、自分には関係がない」「自分は何も聞いていない」「新人さん(だけ)が必要なんでしょ」などと自分事としてとらえない社員が必ず出てきます。
また、この活動は抵抗勢力の芽を早い段階で摘むことにもなります。
社内告知・啓蒙活動は、意図的・計画的に考えて取り組んでいきましょう。
③ベテラン社員から周知徹底するベテラン社員がそのマニュアルを使わなければ、新人は使わないということを肝に銘じておくべきです。
なぜなら、新人への影響力は、マニュアルよりベテラン社員のほうがはるかに強いからです。
ベテラン社員がマニュアル通りにやらなければ、新人はやるはずがありません。
従って、まずはベテラン社員への教育を先行させることが重要になります。
ベテラン社員に対して、作成したマニュアル、つまり、新しい仕事の基準、新しい仕事のやり方を徹底的に教え込まなければなりません。
ある会社では、その教育期間中は、「必ずマニュアルをそばにおいて作業をするように」と決め、上司が常にそれをチェックすることにしたそうです。
そうでもしなければ、「つい、今までのやり方で仕事をしてしまう」ことになるからです。
これまでなじんだやり方を変えるということは、並大抵のことではありません。
ここでも強制力を徹底することが大事になります。
ベテラン社員への教育は、1カ月程度をかけるのが普通です。
また、ベテラン社員に対しては、新人に、マニュアルに対する否定的なことは、絶対に言わないということを約束してもらいます。
この重要性は、ここまでお読みになった方なら分かることだと思います。
マニュアルの活用がうまく軌道に乗るかは、このベテラン社員の認識・対応が大きく影響してきます。
ベテラン社員への対策は、非常に重要な取り組みです。
④“イベント”的活動にして、全員を巻き込むある会社では、各部署の取り組み状況やマニュアル習得計画の達成率などを「活用レポート」にして、全員に配付したり、掲示板に貼ったりしています。
マニュアルの活用情報を共有することで、相互に良い刺激となる取り組みになっています。
また、ある会社では、マニュアルをもとにした「技能コンテスト」「技能テスト」に、全社を挙げて取り組んでいます。
これにはトップ自らも参加して盛り上げに一役買っているそうです。
さらに、毎週月曜日の午前中を「マニュアル活用デー」と決めて、マニュアルの勉強会や振り返りに活用している会社もあります。
会社の状況にあわせて、また社員のアイデアを集めることで、さまざまで活発な活用方法が考えられることでしょう。
このように、嫌でも取り組まなければならない環境を作り出し、具体的な取り組みを通して「マニュアル」を身近なものにしていくのです。
マニュアルが身近な存在として認知されているとしたら、それは最も上手にマニュアルが「活用」されているという、何よりの証になります。
いかに会社全体を巻き込んで進めるかが、「活用」を左右する大きな要因です。
⑤業務改善活動と連動させるマニュアルに対する反発や意見の中には、業務改善につながる内容が多いものです。
マニュアルの導入と併せて、業務改善活動を進めることが必要です。
すでに業務改善に取り組んでいるなら、それと連動させる。
そうでないなら、これを機会に業務改善に取り組んでいくということです。
マニュアルと業務改善は、コインの裏表の関係です。
同時に取り組むことで、問題意識や改善意識を養うこともできます。
これは否応なく現場力(現場での問題解決力)を鍛えることになります。
相乗効果が上がります。
⑥改訂を共有化し、仕組みにするマニュアルの導入は、時として「寝た子を起こす」ことになります。
これまで表立っては問題が出ていなかった会社に、「会社の仕事の基準だから全員厳守」などと物騒な掛け声がかかると、状況が一変する場合があります。
なぜなら、今までのやり方を否定するということにもなるからです。
そして、その多くは“反発”という形で吹き出してきます。
マニュアルが、これまで眠っていた“問題”に火をつけてしまったのです。
しかし実は、この状況は歓迎すべきことなのです。
今まで隠れていた、見えなかった問題が顕在化してきたということは、マニュアルの改善や業務の改善につながる絶好の機会になるのです。
「このやり方じゃできませんよ」「この項目を入れるなら、○○も入れなきゃダメだと思います」などと言われたら、「ありがとうございます。
ぜひ、提案してください」と応じることです。
気づいたことや修正点などは、どんどん提案してもらう。
反発も一つの意見です。
意見である以上、それを尊重し、また発言した人はそれに責任を持たなければなりません。
こうした反発の多くは、「マニュアルは、固定したもの」という捉え方からきています。
しかし、「マニュアルは、現在進行形である」という捉え方で考えると、その反発を受け入れるのはそれほど難しいことではありません。
それは、改訂することで解決するからです。
「改訂版で対応する」ということは、反発のハードルを下げることになります。
反発や意見を出しやすく、言いやすくさせるからです。
さらに言えば、自分の提案が採用されることにもなりますから、感情的な反発から建設的な意見へと変わっていくことが往々にしてあります。
そして、そこには責任というものが出てきます。
「気づいたことをどんどん言ってください。
改訂版で対応しますから」マニュアルを改訂する、それも定期的に改訂する、ということを知らせる、全員がそのことを共有化する。
つまり、改訂を仕組みにすることは、「活用」の促進にとって、非常に大きな意味があります。
⑦人事(評価)制度に組み込む人事制度の評価項目に取り入れることで、活用の度合いは格段に上がります。
具体的に言えば、マニュアル通りの作業をしなければ、その業務の評価をマイナス評定にする、ということです。
こうなると、真剣に取り組まざるを得なくなります。
ある会社では、評価基準表に、「マニュアル通りに○○ができる」という言葉が頻繁に登場してきます。
マニュアルが活用されていないことに業を煮やしたトップが、「仕事がマニュアル通りにできなければ、評価はマイナスになります」と宣言したのです。
マニュアルは、人事評価制度と連動させると絶大な効果が期待できるものです。
マニュアルで習得した知識や技能が正当に評価されることは、学ぶ側にとってもやる気の向上につながります。
また、この取り組みは、マニュアルに対するトップの明確な意志を会社全体に知らせるうえでも、非常に有効です。
《マニュアルの活用を促進するポイント》①個人の制作物にしない②社内告知・啓蒙活動に取り組む③ベテラン社員から周知徹底する④“イベント”的活動にして、全員を巻き込む⑤業務改善活動と連動させる⑥改訂を共有化し、仕組みにする⑦人事(評価)制度に組み込む2「活用」の基本ステップ《活用の基本ステップ》①ステップ1:マニュアル勉強会の実施②ステップ2:現場での実習③ステップ3:マニュアルの徹底④ステップ4:気づき・改善点の収集(1)ステップ1:マニュアル勉強会の実施マニュアルの活用は、マニュアル勉強会から始まります。
この勉強会は、仕事をする人が業務のノウハウを学ぶだけではなく、マニュアルの役割や重要性を理解し共有する場としての位置づけです。
したがって、勉強会はこの理解・確認から始めます。
この捉え方が違っていると、後々問題が出てきますので、最初にしっかり確認しておくことが大切です。
勉強会の参加者は、あまり大人数にしないようにします。
内容や対象者の総数にもよりますが、2~3人程度で実施すると効果的です。
時間は、30分から長くても2~3時間程度で収まるように計画します。
時間よりも回数を多くしたほうが良いでしょう。
長くなりそうな場合は区切りの良いところでいったん終了し、次回に持ち越します。
マニュアルの内容は、一つひとつ声に出して読み合わせをします。
声に出すことで、より理解が深まります。
座学での読み合わせ終了後、内容によっては、勉強会の場で実際に練習することも必要です。
また、質問はどんどん受けるようにします。
重要なことは、「教える」ことではなく、「理解したかどうか」を確認することです。
マニュアル勉強会の主な内容は、以下の通りです。
①マニュアルの役割や重要性を確認する②1作業(項目)ごとに、マニュアルに沿って目的から順に読み合わせをする③補足説明をする(体験談を入れるなど)④質疑応答⑤理解を確認する
(2)ステップ2:現場での実習勉強会終了後、現場に移動します(勉強会と別の日でも問題ありません)。
マニュアル通りに、一度現場で実習します。
その後、マニュアル通りにできるまで繰り返し練習させます。
この「現場での実習」は、内容によって大きく変わります。
しかし、重要なことは、マニュアルに書かれていることをまずしっかりと覚えてもらうことです。
現場で起こるさまざまなケースをむやみに説明することは、参加者の混乱をまねくばかりです。
基本(型)を習得させること、これが現場での実習の一番の目的です。
(3)ステップ3:マニュアルの徹底現場での実習後、1週間以内に「習得確認シート」や「理解度テスト」を活用して、マニュアルの習得度合いを評価します。
評価結果が良くない場合は、マニュアルに戻って内容を再確認し、「勉強会の実施→現場での実習」を繰り返し、基本(型)を徹底的に習得してもらいます。
ここで、「マニュアルの徹底」で活用するツールについて説明します。
①習得確認シート「習得確認シート」の目的は、明確な習得の確認と評価反映による意欲の向上です。
勉強会での学習とこのシートなどでの評価を一体のものとして考えます。
「習得確認シート」は、業務ごとに作成するのが基本ですが、その内容の質や量によって、たとえば、章(大項目)や中項目ごとにまとめて作成することも可能です。
つまり、複数の業務を1枚のシートにまとめるということです。
また、1つのシートにチェック項目は20問以内を目安にします。
チェック項目があまり多いと、時間がかかりすぎるからです。
このチェックは、自己チェックだけで済ませるのではなく、上司(トレーナー)にもチェックしてもらうことで、「自分ではできていると思っていたが、ほかの人から見ればそうではなかった」という気づきにつながります。
この「自分で気づいて、自分でマニュアルを再確認する」ことが非常に大切です。
いずれにしても、合格させることが目的ではなく、この評価によって必要なことを確実に習得してもらうことが最大の目的であることを忘れないようにしましょう。
以下に、チェック項目づくりの注意点や書き方について整理しておきます。
チェック項目づくりの注意点は次の3つです。
①評価(習得確認)が明確にできる点を項目にする【例】正確に○○の操作(対応)ができる②必ずマニュアルに書いてあることを項目にする・応用編的な内容・項目にしない③作業の重要度・難易度、ミス・トラブルの発生頻度などを踏まえ、優先順位をつけて作成する・最初から全業務のシートを作るのではなく、徐々に増やしていくチェック項目の書き方・まとめ方のポイントは以下の4つです。
①ポジティブ(肯定的)な表現にする(否定形は使わない)②迷わずにチェックできるように、具体的に記述する③1項目に1つの内容にする(あれもこれも入れない)④知識は、「理解している」「説明できる」などと表現するなお、上司ともに全項目が「0」で合格、という基準にします。
②理解度テスト「理解度テスト」は、知識の理解度を確認するために活用します。
これも「習得確認シート」と同じように、あくまで習得確認が目的です。
できなかったところをマニュアルに戻って再確認してもらい、確実な理解や習得につなげます。
この「理解度テスト」は、マニュアルのテーマや内容によって、その量や回数は大きく変わります。
「理解度テスト」は、A4サイズ1~2枚程度で作ります。
出題方式は選択方式などにして、あまり難しくないようにします。
テストの時間は、1回15分から20分程度。
必要に応じて、回数を増やします。
「習得確認シート」で取り上げた項目を、知識に置き換えて出題することも可能です。
重要な項目は、出題方式を変えて繰り返し出題し、より早く確実に習得させるようにします。
また、テスト終了後に解答を配付し、自己採点方式にするのが良いでしょう。
間違った問題を、マニュアルに戻って自分で再確認するのが狙いです。
基本的には、「満点」で合格です。
出題は、次に示す5つの方式が主なものです。
完全記述方式や穴埋め問題は、暗記していないと解答できないので、この方式で出題するときは、十分検討することが必要です。
【出題方式の種類】①完全記述方式【例】○○作業の心構えを、3つ書きなさい。
②穴埋め問題(一部記述問題)【例】適切な語句を□内に記入しなさい。
③選択問題【例】適切な語句を下記から選び、その番号を記入しなさい。
④○×問題【例】次の文章を読み、正しいと思うものには○、間違っていると思うものには×を記入しなさい。
⑤並べ替え問題【例】~の基本ステップを、正しい順番に並べ替えなさい。
次に、評価方法について説明します。
主な評価方法は、次の4つがあります。
評価項目によって、それぞれの評価方法を取り入れて評価していきます。
(4)ステップ4:気づき・改善点の収集
以下の各プロセスで、気づいた点や改善点などをメモしておきます。
「マニュアル勉強会の実施」「現場での実習」「マニュアルの徹底」また、対象者の意見・提案もできる限り収集します。
今回作成したマニュアルは、次のマニュアルにつながるタタキ台です。
このタタキ台があることで、マニュアルを改善するための意見・提案が収集しやすくなります。
さらに、こうした取り組みの中で、対象者の参画意識を養うこともできます。
ただし、すべての意見・提案が採用されるわけではありません。
くわしくは、次の「マニュアルの改訂」で説明します。
3「マニュアル活用報告会」の開催マニュアル活用の基本ステップに沿って取り組んだ2~3カ月後に、「マニュアル活用報告会」を実施します。
マニュアルの捉え方や重要性、今後の問題・課題について社内で共通の理解を得るうえで、幹部の出席は、非常に重要になります。
マニュアル作成は会社(仕事)の基準づくりですから、他部門や会社全体を巻き込むことは必然といってもよいものです。
また、幹部からの積極的な評価をもらえるかどうかで、今後の活動の盛り上がりに大きな影響を与えます。
繰り返しますが、この「マニュアル活用報告会」は、マニュアルの活用を推進させていくうえで必須の取り組みだと言えます。
(1)目的「マニュアル活用報告会」は、どのような成果が上がったのか、今後の問題・課題などを社内で共有し、マニュアルの活用を推進させていくことが目的です。
また、頑張って取り組んできた人たち(部署やチーム)にとって、これまでの活動を振り返り、成果を確認する機会になります。
この「活用報告会」で自分たちの活動が評価されると、さらに積極的にマニュアルに関わっていくことにもつながります。
必ず実施したほうが良い、非常に重要な取り組みです。
(2)方法マニュアルの活動報告は、活動内容をパワーポイントなどで数枚にまとめ、15分程度で発表します。
できるだけ関わった全員が発表を担当するようにします。
事前に発表の練習をして、緊張感をもって本番に臨みます。
報告内容は、大きく4つの項目でまとめます。
①活用の取り組みどのような取り組みをしたかを、具体的に記述します。
たとえば、「毎週勉強会を実施」した場合は、毎週水曜日9時から30分間実施。
計10回、5時間内容:項目ごとの読み合わせとロールプレイの実施進め方:司会を持ち回りにして実施。
声に出して読み合わせをした。
などのように記述します。
順調に進んだ、「忙しくてできなかった」などの抽象的な表現ではなく、数値などを入れて具体的に記述します。
②具体的な成果
実際にマニュアルを活用してみて、どのような気づきや改善点があったかなどについて具体的に記述します。
たとえば、自己流で仕事をしていたことが分かった→具体例を入れる改善提案が多く出た→総数○件(修正○件、追加○件)+代表的な提案例を紹介するなどと、これもできるだけ数値を入れて記述します。
さらに、実際にマニュアルで教育を受けた人の生の声を列挙することも大切です。
最後に、マニュアルで得られた成果を記述します。
このとき、Before→Afterで比較することで成果を明確に表現するようにします。
たとえば、以下のようにまとめます。
作業時間…30分が20分に短縮→10分削減できた!このように、できるだけ数値で表すことが重要です。
③活用上の問題・課題実際に活用してみて、どのような問題・課題があったかを記述します。
このとき、その原因と対策などまで記述するようにします。
たとえば、次のように記述します。
勉強会をする時間が不足→早番と遅番があり、全員が集まった勉強会は難しかったが、引き継ぎ時間を20分延長することで対応できた。
④今後に向けての提案ここでは、積極的にマニュアルを活用するうえで必要と思われることや新しく作成したいマニュアルのテーマなどを提案します。
記述する内容については、以上の4項目を入れてまとめます。
この報告の全体が、“感想文”にならないように注意し、ここでも、活動の見える化・数値化をめざすことが必要です。
報告内容の項目例は以下の通りです。
1活用の取り組み2具体的な成果3活用上の問題・課題4今後に向けての提案(3)出席者社長はもちろん、会社の幹部、発表者の上司、他部門の幹部にも参加してもらうことが必要です。
「マニュアルの活用報告会」のプログラム例は次の通りです。
1作成リーダーの挨拶
マニュアル化に取り組んだ背景・目的2完成したマニュアルについての説明3マニュアルの活用報告4質疑応答5社長や幹部の挨拶(全体で、1時間程度)4マニュアルの「活用」を阻む抵抗勢力「作成」のところでも説明しましたが、この抵抗勢力、活用段階ではさらにパワーアップして登場してきます。
いざマニュアルが完成し、「全員厳守」という掛け声がかかると、この抵抗勢力との戦いが再燃します。
ところで、抵抗勢力というレッテルを貼っていますが、その抵抗の程度や内容はさまざまです。
また、本人にはそのような自覚が毛頭ない場合も少なくありません。
しかし、この人たちは結果として、次のような行動をとってしまいます。
「マニュアルを活用しない」「マニュアルに書いてあることを守らない」「マニュアル通りに仕事をしない」この行動は、「マニュアル活用」を大きく停滞させる原因になります。
こうした自覚に乏しい抵抗勢力への特徴について見てみます。
①使わない理由を言う「忙しくて、マニュアルを使う時間がない」「使い方がよく分からない」「内容が古い」「一度、読みました」「見る(使う)ように言っています」「自分は特に困っていないので……」活用状況について質問すると、このような回答をする人がいます。
マニュアルの役割・重要性を理解できていたら、このような反応はしないものです。
②根強い偏見・誤解を持っている「仕事は、人それぞれ」「マニュアルは、初心者(新人)が覚えるもの」「自分のやり方と違う(だから使わない)」「現実は、マニュアル通りにいかない」マニュアルに対する偏見・誤解は、本当に根深いものがあります。
特に、「習うより、慣れろ」で育ってきた人たちにとって、マニュアルで簡単に仕事を覚えることには、心理的抵抗感が強いようです。
③新しいものに対する反発や文句が多い「内容が実際と違う」「もっと良いやり方がある」「マニュアルはきれいごと(理想形)だ」「これをマニュアルにするくらいなら、こっちのほうが……」マニュアルを導入すると、多くの反発が起きます。
これまでそれなりに“穏やかに”仕事をしてきたのに、突然、「仕事の基準だ」、やれ「全員厳守だ」などと言われて、ビックリしてしまう。
マニュアルは、問題を顕在化させます。
これまで眠っていた、不満・不便、ムダ・ムラ・ムリなことが一斉に吹き出してくるのです。
④周囲にネガティブな考えを広める「マニュアルでは、モノが売れない」「カタチより、心が重要」「仕事は、個性やオリジナリティが大事」こうしたことを、特に初心者(新人)に対して話す先輩社員がいます。
多くの初心者(新人)にとって、マニュアルより先輩社員が言っていることのほうが、絶大な影響を与えます。
こうした先輩社員の発言や態度は、マニュアル活用の成否を左右すると言っても過言ではありません。
こうした「抵抗勢力」への対応は、基本的には「作成」のところで説明してきたことと同じです。
抵抗勢力になることは、損であることを気づいてもらう勝手な思い込みや言い訳を捨ててもらう排除するのではなく、巻き込んで解決する「活用」は、さまざまな取り組みを必要としています。
それらを上手に活用し、彼らを巻き込んで進めることで、抵抗勢力をマニュアル推進勢力に変える、ことが大切です。
ある小さな会社の社長が、高らかに宣言しました。
「これからマニュアルを使い切り、使い倒します!」「活用」とは、まさにトップの思い、そのものです。
「活用」を促進するためには、トップが上手に強制力を使い、強いリーダーシップを発揮することが、不可欠になります。
マニュアル活用の「旗」を、しっかり振り続けることが非常に重要です。
2マニュアルの改訂を繰り返すマニュアルの成果を上げ続けるためには、改訂が不可欠です。
現場の知恵や状況の変化を積極的にマニュアルに反映させていくことで、その精度はさらに上がっていきます。
マニュアルの基本サイクル(作成・活用・改訂)の最後のステップになる「改訂」について説明していきます。
1「改訂」の基本的な考え方(1)マニュアルの「改訂」とはマニュアルの「改訂」とは、作成した基準を変化に合わせて「進化」させることと定義しています。
前述したように、「マニュアルは、変化に対応しなければ、すぐ古くなる」のです。
ですから、マニュアルで成果を上げ続けていくためには、改訂は必須条件になります。
それも古くなったから改訂するということではなく、変化に対して積極的に改訂するという、「待ち」から「攻め」の改訂という考え方が必要です。
また、これまで何度も説明してきましたが「マニュアルは、意見を出させるタタキ台」としての役割を持っています。
意見や気づきなど現場で日々生み出される知恵やノウハウを引き出し反映させる効果的なツールでもあります。
これらは、マニュアルにとって最も重要な使命であり役割だといえます。
この使命・役割を遂行するためには、マニュアルを定期的に改訂する、つまり、改訂を仕組みにすることが必要になります。
改訂は、年に2回(春と秋など)定期的に行います。
重要なことは、年2回改訂するということを会社全体で共有しておくこと、そして、その時期が来たら全員に告知する、ということです。
このように改訂の仕組みを明確にすることで、「作成→活用→改訂」の基本サイクルが回り始めます。
2「改訂」のサイクルを回す改訂のサイクルを回す始めの一歩が、前述した「マニュアル活用報告会」です。
この「マニュアル活用報告会」の開催後に、1回目の改訂に取り組みます。
つまり、「マニュアル活用報告会」は、マニュアルの改訂において必須の取り組みになります。
「マニュアル活用報告会」では、活用のプロセスで気づいた点・修正などが多数報告されてきます。
これをもとに、早速「改訂」に取り組みます。
「マニュアル活用報告会」の前に作成したマニュアルは「初版」ですが、この「初版」というタタキ台を利用して、より多くの人たちの意見・提案を吸い上げます。
つまり、最初のマニュアルを活用することによって出された意見・提案を取り入れた、この1回目の改訂版こそが、本当の意味で初版といえるものになります。
マニュアルの初版と改訂版の流れは以下のとおりです。
マニュアルの初版・完成
活用2~3カ月間活用、意見・提案の収集マニュアル活用報告会1回目の改訂版づくり改訂版の発行・配付以後、定期改訂版づくり繰り返しますが、1回目の改訂は、「マニュアル活用報告会」の開催直後に行います。
その後は、年2回の定期改訂になります。
3「改訂」のルールを作る(1)ルールの基本マニュアルは、会社の基準です。
全員が厳守しなければならない仕事のルールです。
従って、さまざまな意見・提案を無原則に採用することはできません。
しかるべき部署や担当が、しっかり検討することが必要です。
また、現場で勝手に変更して「○○版」などのローカルルール(ある拠点・現場だけで通用するルール)の存在を許しては、会社公認のマニュアルの価値・評価を下げることになります。
会社が認めるマニュアルは1つです。
2つも3つも基準があるようでは、基準の意味がなくなります。
勝手に変更させない(変更しない)勝手に作らせない(作らない)これが、マニュアルの改訂に関わる原則です。
この2つを厳守しなければなりません。
「店舗ごとに創意工夫を発揮させる」、このことを奨励している会社があります。
基本姿勢としては問題ありませんが、ことマニュアルに関しては考えものです。
先に述べた2つの原則を厳守しなければ、ローカルルールが蔓延してしまうことになります。
店舗で生まれた創意工夫を、しかるべき機関が吸い上げ、迅速にマニュアルに反映させていく。
これが基本となる考えです。
(2)改訂のルール①「マニュアル改訂依頼書」で申請するマニュアル改訂の提案は、「マニュアル改訂依頼書」を使用して、正式に申請するようにします。
会社(仕事)の基準に対する提案です。
「こんなふうに変えたらどうかな」といったことを口頭で言われても困ります。
“感想や思いつき”を意見・提案の形にしてもらうことで、より具体的になり、また提案者としての自覚・責任が生まれます。
②改訂時期を明確にするマニュアルは、1年に2回を基準に定期的(例:3月・9月)に改訂します。
変更要請に対して、その都度対応するのは大変です。
時期を決めることで、その時期に向けてそれぞれの現場で、意見や提案の準備をしてもらいます。
また、この時期を会社全体で共有しておくことが大事です。
ただし、緊急性のある事案が発生した場合は、その内容を「臨時便」「特別号」などとして配付し、定期改訂のときに、マニュアルの改訂版の中に組みましょう。
余談ですが、改訂は1年に2回ではなく、もっと多くしたほうが良いのです。
時代・状況が目まぐるしく変化する環境では、基本サイクル(作成・活用・改訂)を高速に回すことが求められています。
筆者もある会社のマニュアル改訂を年4回お手伝いしたことがあります。
しかし、担当部署(ほかの業務と兼務)の負担があまりに大きすぎて、中止になりました。
ですので、最低1年に2回は改訂してほしいという意味でご理解ください。
③改訂年月日、改訂履歴を明記するマニュアルは、いつ改訂された版であるかが、見てすぐに分かるように、改訂版を発行した年月日を明記します。
表紙のマニュアル名の下に明記するのが一般的です。
これは、最新版が常に現場に配付されるようにするうえでも必要です。
また、改訂履歴(改訂時期、改訂箇所、改訂内容など)を明記することで、マニュアル勉強会などでの活用がしやすくなります。
④新・旧マニュアルを共存させない新しい改訂版のマニュアルは、旧版のマニュアル配付先(部署)から旧版のマニュアルをすべて撤去(回収)した後に、配付します。
こうしなければ、「どれが改訂された最新のマニュアルか分からない」ということになってしまうからです。
⑤旧版マニュアルの撤去・廃棄の徹底同じ場所に新・旧マニュアルを共存させると混乱の元になります。
現場には、常に新しいマニュアルしか存在しないことが、大前提です。
したがって、現場に任せるのではなく、旧版のマニュアルの撤去や廃棄は、マニュアルの担当部署(担当者)が責任を持って、確実に行ないます。
マニュアルは、会社の知的財産であり、社外秘扱いです。
会社の貴重なノウハウが流出するようなことがあってはいけません。
新・旧マニュアルの配付手順は次のとおりです。
改訂版(最新版)を作成する旧版を現場から回収する新版を配付する旧版を廃棄する⑥マニュアル担当部署(担当者)を明確にするマニュアルの発行または改訂は、権限を与えられた部署または担当者が、「マニュアル管理台帳」をもとに管理します。
責任の所在を明らかにすることで、基本サイクル(作成・活用・改訂)が確実に回ります。
マニュアルの改訂ルールの例を紹介します。
1マニュアルの改訂は、「マニュアル改訂依頼書」に、その趣旨を明記して申請する。
2マニュアルは、定期的(例:3月、9月)に改訂する。
3改訂版には、改訂した年月日を記載し、その改訂履歴をつける。
4新しい改訂版は、旧版のマニュアルを配付先からすべて撤去(回収)した後に、配付する。
5旧版のマニュアルの撤去・廃棄は、担当部署または担当者が責任を持って、確実に行う。
6マニュアルの発行または改訂は、権限を与えられた部署または担当者が実施し、「マニュアル管理台帳」で管理する。
4「改訂」の進め方
(1)意見・提案などの収集現場の「声」の収集は、マニュアルの作成段階から始まっています。
しかし、一番多く収集できるのは、マニュアルを仕事の中で使ってみたとき、つまり活用段階です。
マニュアルという見える形になることで、会社(職場)にいろいろな問題を顕在化させます。
ただし、現場の声の収集といっても、「はい、分かりました。
すぐに提案します」と、簡単に出てくるものではありません。
マニュアルに基づいて仕事をするということが、“当たり前”になるまでは、半ば強制的に意見や提案を収集することも必要です。
「一人最低5個以上提案」といった数値目標を課して集めている会社もあります。
こうでもしなければ、マニュアルの改訂を自分の問題として捉えることができない人が多いということです。
マニュアルに対する意見・提案は、「マニュアル改訂依頼書」を配付して現場から収集します。
定型的なフォーマットになっていると意見が出やすいものです。
ただし、マニュアルを配付して最初の改訂をするときは、マニュアル勉強会や「活用報告会」などで出された意見などをもとに、マニュアルを作成した人がまとめる、という方法もあります。
重要なことは、現場の声を吸い上げるということです。
(2)意見・提案などへの対応マニュアルのテーマにもよりますが、「マニュアル改訂依頼書」によって集められた意見・提案は、膨大な数になることがあります。
これらの意見・提案を分類して、しっかり検討していかなければなりません。
意見・提案の分類は次のとおりです。
①修正──語句、用語などの修正・変更②追加──手順やポイント、説明文の追加③削除──項目や内容の削除④新規──同じテーマ(マニュアル)の新しい項目などの提案⑤その他──気づいた点、要望、別のテーマのマニュアルの提案など一つひとつの意見・提案内容を、改訂の評価基準に沿って検討していきます。
これらの作業は、マニュアルの作成・管理に関わる担当部署や担当者が行います。
改訂の評価基準は次のとおりです。
再現性があるかー誰がやっても、同じようにできるか(改訂前より)正確にできるか(改訂前より)早くできるか「会社(仕事)の基準」として、適切かどうか判断するこれらの評価基準を満たさない意見・提案は、採用しません。
このとき、改訂前とまったく正反対の提案や作業時間が大幅に違う提案などがあった場合は、現場で実際に検証して判断します。
また、新規の提案については、安易に採用・不採用の判断をするのではなく、実際にできることなのか、どのような効果が見込めるのか、などといった基準でしっかり検討することが必要です。
(3)改訂で気をつけることマニュアルの追加や新規では、提案した本人に原稿を書いてもらうことが大切です。
原稿のフォーマットを渡して、「第一稿」を書いてもらい、それを検討していきます。
これは、より多くの人をマニュアルづくりに巻き込むという意味でも重要なことです。
また、意見や提案をしてくれた人には感謝し、検討の結果を公表することで、マニュアルづくりを全員が参画する活動へとつなげていきます。
一方、提案を「不採用」にした場合には、その理由を提案した本人に直接説明することが大切です。
そうしなければ、「せっかく提案をしたのに、何も言ってこない!」と不満を持たれて、“抵抗勢力”に回ってしまうことにもなりかねません。
このような連絡の配慮は、怠らないように注意します。
改訂で気をつけることは次のとおりです。
提案した本人に原稿を書いてもらう検討の結果を公表する
「不採用」の場合は、直接本人に説明するより多くの人を巻き込むことを、常に考える重要なことは、現場の声を吸い上げることを通して、より多くの人をマニュアルづくり(作成・活用・改訂)に巻き込んでいくことです。
こうした地道な取り組みが、会社における「マニュアル」の認知度を高め、「作成活用改訂」の基本サイクルを回す原動力になっていきます。
この認識と自覚を持って、マニュアルづくりに取り組むことが必要です。
3マニュアルが、人と組織を育てる第2章でも述べたように、マニュアルが果たす、貢献する役割の中で、「人材の育成」は最も成果が表れやすいものです。
「できない(知らない)人を、できるようにする」、それも頭の良さなどに関係なく、誰でも同じようにできるようになる。
このマニュアルの力を有効に活用することで、能力アップやさらに定着率の向上につなげることができます。
一冊のマニュアルが、その力を持っているのです。
一冊のマニュアルが、人を育て、人を戦力にする最新・最高のノウハウを、マニュアルで効率的・効果的に学ぶ。
マニュアルで、効率的・効果的に人を育てる。
マニュアルは、最高の育成ツール・仕組みなのです。
また、「小さな業務改善が、多くなりました」「マニュアルをもとにした、技能試験や実技のコンテストをするようになりました」「会議の進め方が変わりました」などといった報告を実際に受け取っています。
マニュアルを作成することを通して鍛えられるさまざまなスキルは、言うまでもなく、人を鍛え成長させます。
それは、仕事の質の向上や業務の効率化といった組織運営上のさまざまな問題の解決にもつながっていきます。
組織は人で構成されています。
その人が成長・変化したら、組織も成長・変化するのは至極当たり前のことです。
そして、組織の仕事のやり方が、最も良い仕事のやり方に変わっていくということは、マネジメントも変わっていかざるを得ないことを意味しています。
目標の提示、指示・命令の仕方、指導方法、改善意識など日常のさまざまな活動に影響が及んできます。
人の成長に合わせて、組織もまた成長していかなければならないのです。
一冊のマニュアルが、組織を変え、組織を育てるマニュアルには最も良い仕事のやり方が、基準としてまとめられています。
PDCAのサイクルでその精度が上がり、マニュアルの存在感も増がっていく。
いわゆる善循環の仕組みが機能し始めます。
従って、このサイクルを回し続けることで、マニュアルの成果をより大きなものにしていくことができるのです。
マニュアルのPDCAが、人を育て、会社を育てるこれまで述べてきたように、マニュアルのサイクルを回すことで、さまざまな成果が生み出されます。
マニュアルは、会社にとって必要な項目を最も良い仕事のやり方としてまとめ、それを会社の仕事の基準として習得させる仕組みです。
それは、最も良い(効率的・効果的)仕事のやり方が決まる最も効果的な教育ツールとして、人を育成できる成長した人材が、組織の力を強化するということにつながります。
会社の仕事が、最も良いやり方で行われている。
それも、全員に徹底している。
言葉にするのは簡単ですが、これはすごいことです。
なかなかできないことです。
しかし、一冊のマニュアルを切り口、突破口にして、可能にすることができます。
マニュアルの基本サイクルを回し続ける力、徹底する力。
その力は、会社経営のあらゆる分野での力として発揮されていきます。
「会社」も鍛えられるのです。
マニュアルを、会社(経営)の武器にする──まとめにかえてこれまで、「マニュアル」が貢献できること、その威力について見てきました。
その“捉え方”や“活かし方”によって、「マニュアル」は組織変革の重要なツールにもなれば、考える力を失わせて人間をダメにしてしまうものにもなるのです。
本当に“捉え方”というのは重要だと思います。
「マニュアル」を、成果を上げるツール、活動・仕組みとして、積極的に評価する。
これが筆者の立場です。
最後に、もう一度整理しておきましょう。
マニュアルが貢献する領域は次の3つです。
1人材育成(業務スキルの習得・向上)2業務改善(業務の見える化・効率化)3業績向上(ベクトル合わせ・一体感づくり)こうして見ると、「マニュアル」が活躍できる領域が広いということが分かります。
本書では、「成果」を上げるためには、従来の偏見・錯覚・誤解を取り除いて、もっと積極的に「マニュアル」を活用しようという立場で解説してきました。
それだけの価値・威力が、「マニュアル」にはあるからです。
特に、次の点については再度整理しておきたいと思います。
①「マニュアル」は、会社の基準全員が習得しなければならない決まりごと②「マニュアル」は、問題を顕在化させる気づきや問題点をあぶり出すツール③「マニュアル」は、タタキ台、検証のツール検証がしやすく、改善がしやすい現場の声や知恵を引き出しやすい④「マニュアル」は、現在進行形固定したものではなく、変化に対応するもの⑤「マニュアル」は、一連の活動・仕組み作成・活用・改訂のサイクルを回す現場のノウハウや知恵を取り入れて、進化させるそして、現場の重要性です。
あらゆる企業活動は、“現場”を抜きにしては考えられず、その取り組みはますます盛んになっていきます。
現場は、ノウハウ・知恵の宝庫です。
これをいかに効果的に吸い上げるかが、会社(経営)の腕の見せ所だともいえます。
個人の技能を、組織の力に!現場の知恵を、企業の財産に!
人と人をつなぐ、現場と経営をつなぐものこれが「マニュアル」です。
「マニュアル」は、会社(経営)の武器として、十分にその期待に応えてくれるでしょう。
コラム現場に負担がかかる?──自発的VS強制的“やらされ感”ということが、「マニュアル」にはついて回ります。
「強制的にやらせたり押しつけても、効果はありません。
大事なことは、みんなが自発的に使いたいと思うかです」ある企業の人事教育の担当者が、筆者に言われたことです。
自発的に行動したり、何かを始めたりする。
そのほうが身につくし効果もあがる。
けだし、正論です。
確かに、自発的に行動を起こしてくれたり、提案などをしてくれたりしたら、こんなうれしいことはないと思います。
しかし、こちらが期待しているような“自発的”な行動が、そうそう出てくるものなのでしょうか。
もちろん、“出てくる”ように働きかけをすることは、非常に重要なことです。
ただ、ここで問題なのは、では出てくるまで待っているのか、ということです。
業務の効率化やサービスの改善など早急に手を打たなければならない問題課題は、どんな会社でも山積しています。
これを解決する手段、ツールとしての「マニュアル」の役割は非常に大きなものがあります。
「マニュアルを作りましょう。
みんな必要だと言っています」「わーい、マニュアルできたんだ!早速、使います」「マニュアル作成委員に選ばれて、ほんとにうれしいです」長いこと「マニュアル」に携わっていますが、こんな話は聞いたこともありません。
確かに、“強制的”という言葉はイメージが悪いですね。
上から一方的に押しつけられる、反対意見は言えない、自由が利かない、などなど。
それに引き換え“自発的”“自主的”といった言葉は、きれい、です。
しかし、「マニュアル」は、会社の基準、会社の仕事のルールがまとめられたものです。
これを徹底することは、会社にとって非常に重要なことです。
徹底するためには、習得できるまで何度でも繰り返し、まさに、「強制的」にでも守ってもらわなければなりません。
それだけ、「会社の基準」を守ってもらうということは大切なことです。
どうも“自発的”というきれいな言葉を使って、責任放棄、逃げの口実にしているような気がしてなりません。
「自発的に使いたい」なんていうことを待っていたら、それこそ日が暮れてしまう。
「会社の基準が徹底しない」ことによる、ムダ・ムラ・ムリ、そして、お客様の信頼や混乱といったことのほうがよっぽど切実で緊急な問題です。
「マニュアル」を強制的に作成し、それで、強制的に訓練する。
徹底するまで何度でも強制的に繰り返す。
必要な“強制力”もあるのではないでしょうか。
現場の負担、現場のやらされ感、といったことには十分配慮することは必要ですが、遠慮をすることで失うものがあることを忘れてはいけないのではないか。
軽々しく“自発的”という言葉を使わないで、もっと何が大切なのか必要なのかを考えてみることが大切です。
そうでなければ、本当にもったいないことになってしまいます。
おわりに「マニュアルは、使えば使うほど、味が出る」ある会社のトップが、独特の言い回しで話をしてくれたことがあります。
マニュアルを生業にしている私にとって、「マニュアル」を評価されることは、自分が褒められたようにうれしくなります。
30数年間マニュアルに関わってきて、マニュアルは本当にすごいものだ、そして、深いものだとあらためて思っています。
ですから、十分に評価されていない、活躍できていない「マニュアルの現状」は、非常に残念であり、もったいないことだと受けとめています。
この状況を打破するために一石を投じたい、これが本書執筆の大きな動機です。
「マニュアル」を活用して「成果」を上げる。
私にとってさまざまな会社でのマニュアルづくりは、このことの実現・達成を最大の狙い・目的として取り組んできました。
マニュアルで「成果」を上げるために、マニュアルの作り方、活用・改訂の仕方はどうあるべきか、どう捉えるべきか。
このことを“マニュアル屋”として日頃から追及・研鑽を積んできました。
本書は、この研鑽という「成果」のお披露目でもあります。
こんな自負をもって書き進めてきましたが、いかがでしたでしょうか?「マニュアルは、最新・最高のノウハウを集大成したものである」本文の中で、マニュアルをこう定義しました。
本書は、私の「マニュアル」ついての最新・最高のノウハウを集大成したものである、と自信をもっていうことができます。
本書の執筆にあたっては、多くの中小企業の経営者の方々にお世話になりました。
本書がさまざまな「成果」を期待されている、中小企業の経営者・幹部の皆様のお役に少しでも立つことができれば、望外の幸せです。
どうか1冊のマニュアルを、人と組織を育て、そして、変える、貴重な機会、きっかけにしていただきたいと心から願っております。
この原稿は、昨年から今年にかけて、最後は新型コロナウイルスで自粛期間中に書き上げたものです。
私自身の体調がすぐれなかったこともあり、何とか、やっと書き上げた、というのが偽らざる心境です。
そういう意味では、ささやかな達成感と満足感を感じています。
最後に、お忙しいなか仲介の労をとっていただき、また貴重なアドバイスをしていただいた日本人事経営研究室の山元浩二氏、内容づくりにおいてさまざまなご支援ご協力をいただいた武田秀之氏、本書の出版を快く引き受けてくださり、激励し続けていただいた日本実業出版社の山田聖子氏に、この場を借りてお礼申し上げます。
そして、長年私を支えてくれた、佐藤晃、工藤いづみの両氏に、あらためて深く感謝の言葉を贈ります。
2020年8月工藤正彦
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