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Chapter0 デイズニーは マニュアルをこう考える

目次

ウオルト・デイズニーの仕事観

ディズニーのマニュアルの本質

本編に入る前に、デイズニーのマニュアルの本質を解説するとともに、デイズニーランドの生みの親、ウオルト・デイズニーの仕事に対する考え方を紹介しておきます。

なぜなら、現在もディズニーランドで使われている、マニュアルや仕組みの大部分は、ウオルトが1955年にアメリカのカリフォルニア州アナハイムに、デイズニーランドを作ったときから積み重ねられてきた財産であり、彼の仕事観が色濃く反映されたものだからです。

つまり、本書で紹介する「ディズニーのマニュアル」とは、ウオルト・デイズニーの思想、仕事観と言えます。

これは、デイズニーにおけるさまざまな仕組みの根幹であり、本書の内容を理解するうえで大切な要素です。

デイズニーマニュアルの本質一1誰がやっても同じ結果になる

デイズニーのマニュアルの原点には、ウオルト・デイズニーが経験した、清掃に関する失敗が密接にかかわっています。

1955年7月15日、カリフォルニア州アナハイムにデイズニーランドがオープンしたとき、真新しいパークの清掃は外部の業者に委託されていました。

ところが、いくら細かな契約を結んでも外部の業者では、ウオルト・デイズニーの理想を実現することができませんでした。

たとえば、パーク内にある施設の窓拭き。

通常、清掃業者との契約では「どの窓を月に何回拭くか」という条件などを詰めてサインし、その業者の現場担当者が清掃を進めていきます。

しかし、そうした窓拭きは、ウオルト・デイズニーの求める理想とはまったく異なるものでした。

彼はデイズニーランドの構想を抱いたときから、「毎日が初演」であることを理念として掲げていたのです。

つまり、オープン初日でも、1年目でも、5年目でも、10年目でも、グストが訪れたその日が初演。パーク内がいつも真新しい状態に保たれていることを理想としていたということ。当然、窓は常にピカピカでなければならない。

グストがパークにやってきたとき、窓が汚れているなど、言語道断だったのです。

そこで、ウオルトは窓の汚れに気づくと、すぐに業者へ「拭き直してもらわなければ困る」と苦情を申し入れていました。

しかし、業者からしてみれば、風が吹き、ホコリが舞い、雨が降り、窓が汚れるのは仕方のないこと。契約どおり、次回の作業日まで動かないのが当然だったのです。

「何回掃除をするか」「どのように拭き上げたか」という契約を履行する業者と、「毎日が初演」を貫きたいウオルト。

平行線をたどったやりとりの末、彼は自らの失敗を受け止め、きれいなパークもショーの一部という価値観を共有しているキャストたちに清掃をまかせることを決断します。

とはいえ、彼らは清掃の専門家ではありません。

そこでウオルトは、清掃の素人集団でも「毎日が初演」という、自身の理想を実現することのできるマニュアルを構築したのです。

本編で詳しく解説しますが、そこには事細かな作業手順が簡潔に記され、パーク内の作業は、キャスト個人の能力に関係なく、「誰がいつやっても同じ結果が得られる」よう設計されています。

もちろん、これは清掃だけではありません。

キャストの着ているコスチューム、店舗に陳列されているぬいぐるみの並べ方、緊急時の対応など、デイズニーランドには、発生しうるありとあらゆる作業に対するマニュアルが存在します。

これらを書かれたとおりに実行するだけで、経験や能力にかかわらず、すべてのキャストが同じ結果を出せるのです。

だからこそ、2万人以上のキャストがいるにもかかわらず、厳しい基準を保ち続けることができるのです。

区∃ディズニーマニュアルの本質一2仕事は2つに分けて考える

また、ウォルトは、仕事を「Duty(作業)」と「MiSsiOn(役割)」という2種類に分けて考えていました。

「デューティー」とは、ディズニーランドで言えば、清掃作業や、レストランや店舗、各アトラクションでグストを案内するといった、「やるべきことo作業」のことです。

これが仕事の6割を占めています。

残り4割の「ミッション」とは、デイズニーの理念である「O〓①Fも,●0∽∽(ギブ・ハピネス)」=「グストに幸せを提供する」ことを実現するということです。

「役割」「仕事の本質」「本来の仕事」などと言い換えてもいいでしよう。

ウオルトは、6割の「デューテイー」を実行するだけで、誰もが、「毎日が初演」というこだわりや、「SCSE(安心。礼儀正しさ・ショー・効率)」という4つの行動基準を実現できる仕組みを作り上げました。

その仕組みのひとつがマニュアルです。ただし、ウオルトはこう言っています。

マニュアルに記されたことは、働く誰もができてあたり前のもの。デューテイーを完璧にこなしたことで『自分は仕事をした』と思つてはいけない」と。

つまり、与えられた作業をこなしただけでは、仕事になっていないと考えていたのです。

※「安全」と定義されている資料もありますが、ウォルト・ディズニーの残した資料を読み解くと、「安心」が本来の意味。

ゲストの不安を取り除き、やすらぎを感じる空間を作り出すために、安心を作り出すことを最優先するという意味で、「安全」はそのなかのひとつです。

 

ディズニーマニュアルの本質一3マニュアルはミッションを実現するための道具

では、ウオルトの考える仕事とは何か。それは「ミッション」を実現するという役割を担うことです。

ディズニーランドという事業のミッションは「ギブ・ハピネス」にあります。すべてのグストに幸せを提供すること。ウォルトは本気で世界中の人に幸せを届けたいと考えた人でした。

そこで、ディズニーランドに採用された人は、社員もアルバイトも全員が、「ようこそディズニー・ファミリーヘ」という理念研修を受けます。

教わるのは「ギブ・ハピネス」について。じつに1日半にわたる研修でウオルトの考え、デイズニーランドの歴史などを学んでいきます。

つまり、ウォルトが定義し、求めているミッションとは、働く人たち一人ひとりが常にグストヘ「ギブ・ハピネス」を提供する使命を忘れないこと。

やつてあたり前の作業(デューティー)の先に、幸せを届けるという役割(ミッション)が待っている。その想いを持って働いてこそ「仕事をした」ということになるのです。

そして、そのためには誰もがデューティーをスムーズに行えるような簡潔なマニュアルが必要になる。このような設計思想で作られたのが、デイズニーのマニュアルなのです。

プロローグでもお伝えした、デイズニーのマニュアルに対する考え方は次のとおりでした。

  • 個人の能力に左右されずに「誰がやっても同じ結果になる」仕事のやり方
  • 組織にぶら下がる従業員をなくし、すべての人に、会社の求めるレベル以上の力を発揮させるためのもの。
  • 従業員がいきいき働き、自発的に動けるよう準備するための道具。
  • 社会経験のないアルバイト従業員にも「仕事の本質」を理解させるためのもの。
  • すべての従業員に「理念」を浸透させ、それを実現するためのもの

つまり、デイズニーのマニュアルは、作業(デューティー)が簡単に進むことで、考えることなくショーの準備が整い、キャストは、本来の仕事であるミッションの実現に力を注ぐことができる。

言わば、デューテイーを管理するマニュアルは、ミッションというデイズニーの理念を実現する余裕を生み出すための道具なのです。

ディズニーマニュアルの本質一4すべては「ギブ六ピネス」に帰結する

ここまでお伝えした考え方が、マニュアルに反映されているからこそ、デイズニーランドでは2万人以上のキャスト全員が、思考停止に陥ることなく、常に高いモチベーションを保ち、グストを迎えることができているのです。

キャストの多くは社員もアルバイトも関係なく、マニュアルで決められた作業はあたり前と捉え、それ以上の働きを見せようと、常にチャンスをうかがっています。

しかも、ミッションを実現するための働き方に関しては、内容を定めるマニュアルなどいっさいありません。目の前にいるグストにギブ・ハピネスするためには、何が最適か。

彼らは自分の頭で考え、行動しているのです。それができるのは、土台となるデューテイーを何も考えずに実行できるから。だからこそ、ミッションに取り組む余裕が生まれるのです。

言い方を変えれば、いい準備をしているから、魔法のようなサービスが実現されると表現してもいいでしよう。これがデイズニーのマニュアルや仕組みの本質です。

ウオルト・デイズニーがマニュアルを重要視したのは、それがギブ・ハピネスを支える土台となっていたからでした。

実現すべき理想があり、そのためにミッションがあり、ミッションを果たすためにデューテイーがあり、誰もが迷わずスムーズにデューテイーを行うことができるようにマニュアルを用意する。

一人ひとりのキャストが臨機応変に個性的なサービスを提供するためになくてはならないもの。それが、デイズニーにおけるマニュアルの位置づけなのです。

ディズニーのマニュアルはどんな職場にも導入できる

ただし、それはデイズニーランドでだけ実現されるディズニー・マジックではありません。

どのような業種、どのような職場でも「デューティー」と「ミッション」という考え方を持ち込むことで、働く人の意識を変えることができます。

そして、デューテイーの手順を細やかかつ簡潔に記したマニュアルを導入することによって、すばらしい成果を上げることが可能となります。これはそのまま私たちの仕事や職場にもあてはまります。

たとえば、今、あなたが担っている仕事のなかで求められている働きとは、どのようなものでしょうか。

そして、あなたのいる職場が目指している成果とはなんでしょう。

この場合、求められている働きが「デューティー」にあたり、目指している成果が「ミッション」となります。

そして、このデューティーとミッションという両輪を支えていくのが、デイズニー流のマニュアルや仕組みです。

序章の最後に、ウオルト・デイズニーの言葉を紹介したいと思います。

彼は一緒に働く人たちに対して、常に「なぜ、自分がこの仕事をしているのか?」を問いかけるよう求めていました。

「なぜ、この仕事があるのか?」「なぜ、たくさんの人がいるなかで、私がその仕事をしているのか?」「それを考え続けなさい」と。

あなたもぜひ、自分に問いかけてみてください。そのとき思い浮かんだイメージのなかに、取り組むべき役割=ミッションがあります。ミッションがあるからこそ、デューテイーとマニュアルの意味合いが深まっていく。

本書を読み進める間、ぜひ、ウオルトが大切にしたこの順番を忘れずにいてください。

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