第2部IS022000の要求事項とその解説
■第2部の目的と構成第2部では本規格について解説する。
本規格を理解する上で最も重要な点は、ISOマネジメントシステムの上位構造(HLS:High level structure)が採用されたことである。
HLSには“共通の用語”、“共通の章構成”及び“共通の要求事項”の三つが含まれており、IS09001及びIS014001においては、すでに2015年の改訂で採用されている。
各種のISOマネジメントシステムの要求事項をこのような共通の概念で構成することの目的は、複数のマネジメントシステムを統合して運用する場合の便宜性を増すことにある。
ISOでは、全てのマネジメントシステムにこのHLSを採用すると決定しており、IS022000の今回の改訂もこの方針に基づいたものとなっている。
HLSにある“共通の用語”とは、マネジメントシステムで普遍的に使われる用語を定めたものである。“3用語及び定義”に定義される45の用語のうち、20が共通の用語である。“共通の章構成”は、規格の全体が箇条1から箇条10で構成されていることを意味する。
このうち箇条4から箇条10が要求事項となり、この中にシステムのPDCAが組み込まれていることが“序文”の図1(本書では35ページ参照)で示されている。図の形式は異なるが、IS09001やIS014001にも同様のPDCAが図示されている。
“共通の要求事項”は、箇条4以降の各箇条の要求事項の中に組み込まれている。箇条4から箇条7と箇条9、箇条10に多く見られる普遍的な要求事項がそれである。
しかし、食品安全マネジメントシステム(FSMS)を確立し、運用するに当たっては、特にそれを意識する必要はない。本書においても、共通の要求事項を特別のものとした解説は行っていない。以降では、規格からの引用は枠内に記載し、それぞれの解説は“=規格解説”(箇条3は“=用語解説”)として記述している。
また、箇条4から箇条10までの解説では、・“:・規格解説”で各要求事項に対して説明するとともに、より理解を深めるために、関連する事項を“=具体的な考え方”として必要に応じて記述している
序文
序文0-1
一般食品安全マネジメントシステム(FSMS)の採用は、食品安全のパフォーマンス全体を改善するのに役立ち得る、組織の戦略上の決定である。
組織は、この規格に基づいてFSMSを実施することで、次のような便益を得る可能性がある。
a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした安全な食品並びに製品及びサービスを一貫して提供できる。
b)組織の目標に関連したリスクに取り組む。
c)規定されたFSMS要求事項への適合を実証できる。この規格は、Plan‐Do‐Check‐Act(PDCA)サイクル(0。3。2参照)及びリスクに基づく考え方(0。3。3参照)を組み込んだ、プロセスアプローチ(0。3参照)を用いている。
組織は、プロセスアプローチによって、組織のプロセス及びそれらの相互作用を計画することができる。
組織は、PDCAサイクルによって、組織のプロセスに適切な資源を与え、マネジメントすることを確実にし、かつ、改善の機会を明確にし、取り組むことを確実にすることができる。
組織は、リスクに基づく考え方によって、自らのプロセス及びFSMSが、計画した結果からかい(乖)離を引き起こす可能性のある要因を明確にすることができ、また、好ましくない影響を予防又は最小限に抑えるための管理を実施することができる。
この規格では、次のような表現形式を用いている。―“~しなければならない。
“(shan)は、要求事項を示し、一“~することが望ましい。
“(should)は、推奨を示し
―“~してもよい。
“(may)は、許容を示し、一“~することができる。”、“~できる。”、“~し得る。
“など(can)は、可能性又は実現能力を示す。
“注記”は、この規格の要求事項の内容を理解するための、又は明解にするための手引である。
=規格解説“0。1-般”の第1段落は、ISOマネジメントシステムの上位構造(HLS)と共通である。次のような便宜を得るa)、b)、c)の記載も同様である。ただし、IS09001:2015の序文“0。1-般”に見られる“b)顧客満足を向上させる機会を増やす。
“という文言はない。
なぜならば、食品安全に対する顧客満足は満たされていなければならないからである。食品安全マネジメントシステム(FSMS)では“顧客満足の向上”という概念はない。食品安全に不足があれば、顧客は当然、不満足だからである。
したがってFSMSでは、食品安全に不足がある場合、満たされている状態に戻す、すなわち、まず更新することが必要で、その上で継続的なFSMSの改善が求められることになる。
“shall”以下の表現形式も他のISOマネジメントシステム規格(IS09001やIS014001)と同様である。なお、本規格の日本語訳では“確実”という用語がしばしば登場する。原文は“ensure”である。
“確実”はHLSや本規格において定義されている用語ではないが、主観的な確信ではなく、客観的な根拠に基づいて実施することが求められる。
ISOマネジメントシステム規格のキーワードの一つである。
0。
2FSMSの原則0。2FSMSの原則食品安全は、消費(消費者による摂取)時に食品安全ハザードが存在することに関連する。食品安全ハザードは、フードチェーンのどの段階においても発生し得る。
したがって、フードチェーンを通して適切な管理が不可欠である。食品安全は、フードチェーン内の全ての関係者の協力を通じて確保されるものである。この規格は、一般に認識されている次の主要素を組み合わせたFSMSに対する要求事項を規定している。―相互コミュニケーションーシステムマネジメントー前提条件プログラムーハザード分析及び重要管理点(HACCP)原則更に、この規格は、ISOマネジメントシステム規格に共通の原則に基づいているマネジメントの原則とは、次の事項をいう。一顧客重視―リーダーシップー人々の積極的参加一プロセスアプローチー改善―客観的事実に基づく意思決定一関係性管理=規格解説“0。2FSMSの原則”の第1段落は、IS022000:2005(以下、“旧規格”という)の序文の第1段落と同様である。
続く四つの要素も旧規格を踏襲している。
相互コミュニケーションCnteract市ecommunication)が重要であることは旧規格から強調されてきた。1日規格における序文の記載は次のとおりである。
“相互コミュニケーションとは一方通行ではなく、フードチェーン内の上流と下流の両方の組織間のコミュニケーションを意味する。明確にされたハザード及び管理手段についての顧客及び供給者の要求事項(例えば、これらの要求事項の実現可能性及び必要性並びに最終製品へのそれらの影響)を明らかにする上で手助けとなる。”IS022000:2018(以下“本規格”という)ではこの記載はないが、相互コミュニケーションの重要性に変わりはない。コミュニケーションについては、“7。4コミュニケーション”で“7。4。2外部コミュニケーション”と“7。4。3内部コミュニケーション”とに分けて規定している。
第2段落は、HLSに沿ったISOマネジメントシステム規格に共通の“マネジメントの原則”を示している。これらの原則は規格要求事項全体を貫いている。
0。3プロセスアプローチ0。3。1-般0。3プロセスアプローチ0。3。1-般この規格は、適用される要求事項を満たしつつ、安全な製品及びサービスの生産を増強するため、FSMSを構築し、実施し、その有効性を改善する際に、プロセスアプローチを採用する。
システムとして相互に関連するプロセスを理解し、マネジメントすることは、組織が効果的かつ効率的に意図した結果を達成する上で役立つ。プロセスアプローチは、組織の食品安全方針及び戦略的方向性に従って意図した結果を達成するために、プロセス及びその相互作用を体系的に定義し、マネジメントすることに関わる。PDCAサイクルを、機会の利用及び望ましくない結果の防止を目指すリスクに基づく考え方に全体的な焦点を当てて用いることで、プロセス及びシステム全体をマネジメントすることができる。フードチェーン内における組織の役割及び位置を認識することは、フードチェーン全体における効果的な相互コミュニケーションを確保するために不可欠である。=規格解説プロセスアプローチは、ISOマネジメントシステム規格共通の原則の一つであり、HLSに従っている。
“プロセス”(3。36)は“インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。”と定義されている。
“インプット”と“アウトプット”とぃう語句は、IS09000:1994(JISZ9000:1994)以来長く用いられてきた用語である。
IS09000:2015の“プロセス”(3。4。1)の定義の注記2には“プロセスヘのインプットは、通常、他のプロセスからのアウトブットであり、また、プロセスからのアウトプットは、通常、他のプロセスヘのインプットである。
”としている。
また注記3では“連続した二つ又はそれ以上の相互に関連するプロセスを、一つのプロセスと呼ぶこともあり得る。
“としている。
本規格において、アウトプットの一例は“製品”(3。37)である。
また、本規格の骨格の一つであるHACCPは、いくつかのプロセスから構成されているプロセスである。
さらに本規格は、複数のプロセスから構成されており、それぞれのプロセスの関連において、相互コミュニケーションが重要であることから、最後の段落は旧規格の相互コミュニケーションの記載を用いている。
0。3。2Plan…Do―Check―Actサイクル0。3。2Plan‐Do―Check―ActサイクリレPDCAサイクルは、次のように簡潔に説明できる。Plan:システム及びそのプロセスの目標を設定し、結果を出すために必要な資源を用意し、リスク及び機会を特定し、取り組む。Do:計画されたことを実行する。
Check:プロセス並びにその結果としての製品及びサービスをモニターし、(関連する場合は)測定し、モニタリング、測定及び検証活動からの情報及びデータを分析し及び評価し、その結果を報告する。Act:必要に応じて、パフォーマンスを改善するための処置をとる。この規格では、図1に示すように、プロセスアプローチは二つのレベルでPDCAサイクルのコンセプトを用いている。
最初のレベルは、FSMSの全体の枠組みを対象としている(箇条4~箇条7及び箇条9、箇条10)。
他方のレベル(運用の計画及び管理)は、箇条8に記述するように、食品安全システム内での運用プロセスを対象としている。
したがって、二つのレベルの間でのコミュニケーションがきわめて重要である
=規格解説PDCAサイクルはISOマネジメントシステム規格共通の原則の一つである。
簡潔な記載はIS09001:2015と同様である。
本規格は、マネジメントシステム全体のPDCAサイクルとHACCPシステムのPDCAサイクルの二つから構成されている。
二重のPDCAサイクルをわかりやすく示すために図1が作成されている。
同図において、“運用の計画及び管理”と題した部分は、HACCPシステムのPDCAサイクルとして箇条8に規定されている。本規格がコーデックス委員会(FAO/WHO食品合同規格委員会)の“HACCP適用の7原則12手順”を重要な骨格に位置付けていることは周知のとおりである。
しかし、HACCP適用のプロセス(7原則12手順)を通じて得られるのは“HACCPプラン”という文書であり、それ単独でPDCAサイクルは回らない。
そこで本規格
ではHACCPシステムの計画及び運用を次のように規定している。
すなわちFSMSの原則の要素である“前提条件プログラム”(3。35)を主なインプットとして、プロセスである“ハザード分析”(8。5。2)を実施し、アウトプットとして“重要な食品安全ハザード”(3。40)を決める。
その上で重要な食品安全“ハザード管理プラン”(8。5。4)の策定プロセスによって、アウトプットである“妥当性確認”(3。44)されたHACCPプラン及び′/′又はOPRPプランが得られる。
このアウトプットにはモニタリングや検証の計画も含まれる。ハザード管理プラン(Plan)どおりに運用(Do)するということは、プランどおりにモニタリングや検証を行うことである。一方、包括的なFSMSのPDCAサイクルは、箇条8(Do)を含む、箇条4から箇条7(Plan)、箇条9(Check)、箇条10(Act)を通じて達成される。
0。
3。3リスクに基づく考え方0。3。3。1-般0。3。3リスクに基づく考え方0。
3。3。1-般リスクに基づく考え方は、有効なFSMSを達成するために必須である。この規格では、リスクに基づく考え方は、0。3。2のプロセスアプローチで記述したように組織(0。3。
3。2参照)及び運用(0。3。3。3参照)の二つのレベルで取り上げる。=規格解説リスクに基づく考え方もISOマネジメントシステム規格共通の原則の一つである。
HACCPシステムは本来リスクに基づく考え方の一手法である。
一般的な概念では管理できるのはリスクであり、ハザード(例えば、地震、津波)は直接、管理できない。しかし、HACCPは食品安全ハザードを管理することを求めており、食品安全分野に特有の概念である。
さらに“リスク”の定義(3。39)が難しいことに加え、食品分野では各国政府が行っているリスク分析(リスク評価及びリスクマネジメント、リスクコミュニケーションから構成される)における“リスク”と、HACCPで使う“ハザード”が使い分けられている。そのため、HLSに従う本規格で求める“リスク”の概念がわかりにくくなることが懸念され、TC34/SC17ノWG8でも議論に時間を要した。
しかし、食品安全ハザードを管理する組織にとっては、システムを構築し、運用し、維持し、改善することは、リスクマネジメントに他ならないため、“組織のリスクマネジメント”と“ハザード分析―運用のプロセス”として、次のO。3。3。2と0。3。3。3に分けて記載することにした。0。
3。3。2組織のリスクマネジメント0。3。3。2組織のリスクマネジメントリスクとは、不確かさの影響であり、そうした不確かさは、好ましい影響又は好ましくない影響をもち得る。
組織のリスクマネジメントにおいては、あるリスクから生じる好ましい方向へのかい(乖)離は、機会を提供し得るが、リスクの好ましい影響の全てが機会をもたらすとは限らない。組織は、この規格の要求事項に適合するために、組織のリスクヘの取組みを計画し、実施する(箇条6)。リスクヘの取組みによって、FSMSの有効性の向上、改善された結果の達成、及び好ましくない影響の防止のための基礎が確立する。=規格解説“リスク及び機会”について本規格では、“リスク”は“不確かさの影響。”と“3用語及び定義”の3。39で定義しているが、“機会”は定義しなかった。
これはIS09001:2015と同様、“機会”は一般的な語句であることによる。しかし、“6計画”の6。1では“リスク及び機会への取組み”が求められているため、リスクと機会はセットで考える必要がある。ここでは“あるリスクから生じる好ましい方向へのかい(乖)離は、機会を提供し得るが、リスクの好ましい影響の全てが機会をもたらすとは限らない。”としているが、リスクから生じる好ましくない影響が機会を提供し得ることも考えられる。好ましくない影響があっても、それは何らかの機会となるはずである。
0。3。3。3ハザード分析一運用のプロセス0。3。3。3ハザード分析―運用のプロセス運用レベルでのHACCP原則に基づいたリスクに基づく考え方の概念は、この規格に暗黙的に示されている。
HACCPにおけるその後の一連の段階は、消費時点で食品が安全であることを確実にするための、ハザードを予防するか又はハザードを許容水準まで低減する必要な手段とみなすことができる(箇条8)。HACCPの適用における判断は科学に基づくものであることが望ましく、また偏りがなく、文書化することが望ましい。
文書化には、意思決定プロセスにおけるあらゆる主要な仮定を含めることが望ましい。=規格解説“0。3。2PDCAサイクル”では図1を使って二重のPDCAサイクルについて説明した(35ページ参照)。“0。3。3。3ハザード分析一運用のプロセス”では、ハザード分析とその運用のプロセスに不可欠な科学的。
合理的根拠について言及している。“ハザード分析”(8。5。2)は、“発生する起こりやすさ”(thelikelihoodofitsOccurrence)から考えられるハザードについて、それが顕在化したときに起こる“健康への悪影響の重大さ”(theseverityofitsadversehealthe“ects)を評価するプロセスである。
科学的・合理的根拠に基づかなければならない。とはいえ、完璧な情報・データを収集することは容易ではない。
HACCPは確率論的な思考から成り立っているので、文書化においては、意思決定のプロセスを明確にしておくため、収集した根拠や使用したデータを記録しておくことが望まれる。
PDCAサイクルを回したとき、議論の経過を含め、根拠情報・データを見直さなければならないことが多い。0。
4他のマネジメントシステム規格との関係0。4他のマネジメントシステム規格との関係この規格は、ISO上位構造(HLS)に基づき開発されたものである。HLSの目標は、ISOマネジメントシステム規格間の一致性を向上させることにある。
この規格は、
組織が、そのFSMSのアプローチを他のマネジメントシステム及び支援規格の要求事項に合わせたり、又は統合したりするために、PDCAサイクル及びリスクに基づく考え方と併せてプロセスアプローチを用いることができるようにしている。この規格は、FSMSsに関する中核的な原則及び枠組みであり、フードチェーン全体にわたる組織に対する具体的なFSMS要求事項を定めている。食品部門に特有の、食品安全に関連するその他の手引、仕様書及び/又は要求事項も、この枠組みと併用できる。
更に、ISOは関連ファミリー文書を開発している。
これらには、次が含まれる。一フードチェーンの特有な部門のための前提条件プログラム(ISO月iS22002シリーズ)一監査及び認証を行う機関に対する要求事項一トレーサビリテイISOはまた、組織がこの規格及び関連する規格をどのように実施するかに関する手引文書を提供する。情報は、ISOウェブサイトに掲載されている。=規格解説“0。4他のマネジメントシステム規格との関係”の第1段落はHLSに沿っているため、IS09001:2015と同様の記載となっている。
第2段落は本規格固有の記載である。
一フードチェーンの各部門に特有な前提条件プログラム(ISO/TS22002シリーズ)・ISO/TS22002-1:2009食品製造の前提条件プログラム・ISO/TS22002-2:2013ケータリングの前提条件プログラム・ISO/TS22002‐3:2011農業の前提条件プログラム・ISOrS22002‐4:2013食品用容器包装の製造の前提条件プログラム・ISO/TS22002‐6:2016飼料及び動物用食品の生産の前提条件プログラム・ISO/TS22002‐5輸送。
保管の前提条件プログラム*1-監査及び認証を行う機関に対する要求事項・ISO/TS22003:2013食品安全マネジメントシステムー食品安全マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項*2*12017年検討作業開始、2018年11月30日現在作業中Ⅲ22017年改訂作業開始、2018年11月30日現在作業中・IS022005:2007トレーサビリテイ*3の一般原則及び要求事項ここでいう“トレーサビリテイ”は、計測のトレーサビリティではない
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