この章では、GTDの基礎となる、5つのステップを見ていこう。
常にさまざまな事態が生じ、対応に追われる中で、ゆつたりとリラックスしつつも日の前の仕事に完全に集中している状態を作るには、5つのステップが必要となる。
どんな仕事をしていようとも、どの国にいようとも、このステップを順序どおりこなしていくことで、あらゆる状況や 後化に正しく対応できるようになるだろう。
大事なのは、統合的にこのステップを実践していかなくてはならない点だ。「整理する」「優先度を判断する」といった単純な作業を個別に行うだけでは十分ではない。
すべてのステップを順番にこなした結果として、物事が整理され、優先度が明らかになるのだ。 GTDの5つのステップとは、次のようなものである。
- ①気になるすべてのことを「把握する」。
- ② それぞれが何を意味するか、どのような対応をすべきかを
- ③ ②のステップによって明らかになった内容を「整理する」。
- ④ 行動の選択肢を「更新する」。
- ⑤ 何をするべきかを「選択する」。
この手順を踏んでいけば、日常生活をスムーズに進めていくうえで対処が必要なすべてのことを、「水平的な視点」で管理していくことができるようになる。
また、この手順は、何かをうまく管理して生産的に進めようとするときに誰もが自然に実践している方法でもある。
たとえば、友人に夕飯を作ってあげたかったとしよう。しかし帰宅してみるとキッチンが散らかり放題だったとしたらどうだろう。
まずは、そこにあるべきでないも の、正しく置かれていないものをすべて認識する(把握する)。次に、どれをとっておいて、ど れを捨てるかを判断する(見極める)。そして、冷蔵庫やゴミ箱、シンクなどの正しい場所にし まう(整理する)。それからレシピを見て、どの材料と道具があるかを確認する(更新する)。そして、フライパンでバターを溶かして料理を始める(行動を選択する)。
原理は明快だし、誰もが仕事でこうしたことを行なっているだろう。ただ私の知る限り、ほとんどの人はそれぞれのステップをかなりいい加減に行なっている。この場合、効果は全体の中でもっとも非効率なステップのレベルに抑えられてしまう。
あなたにとって必要なのは、すべてのステップを総合的に高いレベルでこなしていくことである。
ほとんどの人が仕事や人生において、十分にコントロールがとれない状態を経験しているはずだ。そこへ現代社会のストレスが加わって、さらに大きな問題が生じている。今この瞬間にも急速な変化が起きていて、人生と仕事はますます複雑化してきている。
散らかったキツチンを片付けるだけでいいなら何とラクなことだろう。しかし変化の早い現代においては、小さなやり残しからストレスがどんどんと積み重なっていき、やがて手に負えないような大きな問題となってしまうのだ。
1通のメールを読み忘れた、1件の約束を忘れた、 一つの決断を後回しにした……、 そうした些細なことがとんでもない結末を招く危険もある。
やらなければならないことはけっして減らないし、対応すべき物事は次々と舞い込んでくる。あなたに必要なのは、こうした状況をコントロールしていくための、システマチックな思考プロセスなのだ。
大部分の人は、①「把握する」ステップでかなりのの取りこぼしをしている。気になることのほとんどが、頭の中に残ってしまっているのだ。
できること、やらなければならないこと、やったほうがいいこと、やる義務のあることは膨大な数にのぼり、どこに書き留めたはずでも、すべてを把握しきれていない状態だ。
一方、物事をだいぶ把握しているという人でも、その意味するところをきちんと② 「見極める」ことができていなかったり、それについてどのような行動をとるかを判断できてないかったりする。
会議のメモが乱雑に会議のメモが乱雑に置かれていたり、付箋紙に走り書きしたTo Doリストがパソコンのモニターに貼り付けられているだけ、といった具合だ。
そのときどきで作られたリストが適切な対応をされないまま散らまっており、心の中はまったく整理されていない状態だ。
こういったリストそのものが、安心感どころかさらなるストレスを生み出しかねないと知っておくべきだろう。
また、とるべき行動を判断できていたとしても、それを体系的に③ 「整理する」ことをせずに埋もれさせてしまっている人もいる。
上司と話し合わなくてはならないと判断していても、その ことが頭の片隅にあるだけで、必要なときに取り出せるような信頼できるシステムに整理されていないのだ。
さらにうまく整理ができていても、その具体的な行動を定期的に確認し、④「更新する」ことができていないケースもある。
①から③のステップによってできたTODOリスト、計画、各種のチェックリストがありながら、最新の状態に保てていないために有効活用ができていないの だ。
そして、これらのステップが確実に行なわれていないと、ある時点で行動を起こそうとしたときに、最善の行動を⑤ 「選択する」ことができなくなってしまう。
そうした行動は「これこそが今やらなければならないことだ」という確信ではなくて、「とりあえずこれでいいんだよな ……」という希望でしかない。
そうなると「今やるべきことに取り組めていないのではないか」 「やりたいことがしたいのにいつも時間がない」という不安に常につきまとわれることになる。
ストレスなく生産性を発揮していくためには、GTDの5つのステップの働きを理解し、最適なレベルで機能させるためのテクニックとツールを取り入れていく必要がある。
なお、これらのステップは一度に行なう必要はない。私の場合、気になることをとりあえず把握しておいて具体的な行動はあとで考えたいときもあるし、会議でメモしたことの見極めだけにとどめておきたいこともある。長い旅行から帰ってきて、道中で把握し、見極めておいたことを整理することもある。もしくは、仕事のすべてを見直して更新したいときもあるし、 一部だけしかしたくないときもある。
多くの人が整理術で失敗するのは、これらのステップをいつぺんに終わらせようとするからである。
ほとんどの人は時間がないために、そのときどきで大事に思える事柄だけについて優先順位をつけて整理し、リストを作って満足してしまう。しかし、それだけでは十分ではない。
そのときには大事とは思えないがやらなくてはいけないこと、たとえば秘書の誕生日に何をするかなどについても具体的な行動を定めなければいけない。
そうしないと、それらが「気になること」となってあなたのエネルギーを奪いつづけることになる。そうなってしまうと、日々の生活や仕事で重要なことに集中できなくなってしまうのだ。
ここでは、5つのステップがどういったものか、その概念をざっと説明していく。各ステップを着実に実践していく方法は4章から8章までで解説していくつもりだ。
そこではより具体的な実践例なども豊富に紹介していく。
「把握する」
日々のこまごまとした「気になること」から来るストレスから解放されるには、やらなければならないこと、あるいは判断しなければならないことの「すべて」を完全に把握し、それらについて取るべき行動を近いうちに必ず見直すのだという安心感を手に入れる必要がある。
「気になること」のすべてを集める
「漏れ」なくすべてを把握していくためには、あなたがやるべきだと思っている大小さまざまなことープライベートでも仕事でも緊急性のあることもそうでないことも、なにかを変えなければならないと思っていることのすべて― を集めなくてはならない。
実のところ、「気になること」の多くは、本書を読んでいる間にも自然に集まってきているはずだ。
自宅には小包や封書が届いているだろうし、職場ではそれらに加え、仕事上のメールも 次々と舞い込んできているはずだ。それだけではない。何とかしなくては……と思っている、もやもやとしたものが頭の中に常に溜まりつづけている。
これらはメールのようにはっきりとし た実体をもたないが、何らかの解決を必要としている「気になること」であるはずだ。また、 数々のアイデアが書かれたノートやメモもあるだろうし、引き出しの中には修理するか捨てるか しないといけない雑多なものが眠っているだろう。これらのすべてがあなたにとっての「気になること」になっているのである。
「何かをしないといけない」と思った瞬間から、それは一気になること」になる。やろうと決めていて手をつけられないでいること、やりかけになっていること、できることはすべてやったが終わったと実感できていないことも同様だ。
こういった「気になること」をうまく管理していくには、いったんそれらをすべて一時的な受け皿に保管しておくといい。GTDではその受け皿を「インボツクス」と呼ぶことにする。
インボックスに保管したものは、時間があるときに、その意味を考え、行動を起こす必要があるなら具体的に何をすべきなのかを考えると良いだろう。このインボックスは、次に説明していく「見極める」ステップによって定期的に空にし、「把握する」ツールとしての機能を維持していかなくてはならないことも覚えておこう。
「把握する」ためのツール
「気になること」のすべてを把握しておくには、アナログからデジタルまで、さまざまな種類のツールを使うことができる。次に挙げたものはいずれもあなたのインボックスとして機能するだろう。
- 書類受け
- 手帳やノート
- 電子機器のメモ帳・音声記録ツール
- メール、テキストメッセージ
◎ 書類受け
プラスチック、本、革、金属などさまざまな材質のトレイがあり、処理すべき書類、郵便物や 雑誌、会議のメモ、チケット、領収書、名刺などを入れる道具として、ごく一般的に使われている。
◎ 手帳やノート
ルーズリーフのファイルやバインダー、各種のカードやメモ帳などは、さまざまなアイデアや案件、TODOなどを書き留めておくことができる。どれでも使いやすいものを選んでかまわない。
◎ 電子機器のメモ帳・音声記録ツール
パソコンだけでなく、タブレツトやスマートフオン、そのほかにも各種のモバイル機器が日々 私たちの生活に登場してきている。これらを用いることで、あとでしなければならないことを忘れないように記録しておくことができる。
◎ メール、テキストメッセージ
メールソフトやテキストメッセージには、受信したメッセージやファイルを保管しておく場所があり、時間があるときに処理していくことができる。
「把握する」ステップをうまくやるコツ
インボツクスを用意しただけでうまく把握できるとは限らない。ほとんどの人は何らかのツールをすでにもっているが、うまく使いこなせていないか、ほとんど活用できていないケースが大半だ。
「把握する」ステップを効果的に行なうために気をつけなければならない三つのポイント を次に説明していこう。
- 1.すべての「気になること」を把握し、頭の外に出す。
- 2.インボックスの数は必要最小限にする。
- 3.インボックスは定期的に空にする。
すべてを頭の外に追い出す
頭の中ですべてのことを把握しておきたいという人は、インボックスを活用しようという気にならないだろう。
多くの人がこう考えてしまうのは、インボックスを単体でとらえ、一つの完成されたシステムの一部として見ていないからだ。
インボツクスに入れたところでそこにあるものがすべてではないし、常に頭の中にも考えていることがたくさんあるじゃないか― そんな不完全なシステムなら使うだけムダ、と考えているのである。
しかし今まで述べてきたように、頭の中に「気になること」を保管しておくことこそがムダなのである。
全てを頭の外に取り出してインボックスに集めることではじめて、効果的な整理システムが機能し始めるのだ。
「把握する」ためのツールは生活の一部にするべきものである。肌身離さず持ち歩き、自分にとって意味のありそうなことをすべて記録していく必要がある。
免許証やメガネのような必需品だと思ったほうがいいだろう。有用かもしれないことを絶対に書き漏らさないという安心感がもてれば、アイデアを豊富に生み出す余裕が生まれてくるからだ。
インボツクスの数は最小限にとどめる
インボックスの数は自分の管理能力を超えないよう、必要最小限にするのがポイントだ。気になることがいつどこで現れるかわからないので、どんな状況下でもそれを把握できるようにしておかないといけない。ただ、集める場所が多すぎると処理が煩雑になったり、定期的に集めたりすることが難しくなってくる。アナログ、デジタルを問わず、インボツクスを持ちすぎてしまうことはよくある。アナログ領 域では、手書きメモの類や、物理的な引き出し、書類受けがとくにネツクになりやすい。メモは 書類の山や引き出し、ノートの中に埋もれさせたりせず、1カ所に集めて処理していく必要がある。書類もあちこちに置くのではなくて、書類受けなどに集めないといけない。デジタル領域に おいては事態はより複雑だ。ソーシャルメディアが普及し、いくつものデバイスがインターネッ トに接続していて、どこにいてもメールやメッセージを送ることが可能になった。そのため、 チェックしたり処理したりする必要がある情報源がぐっと増えてしまったのだ。今や多くの人が 複数のメールアカウントをもち、最低でも一つのソーシャルメディアに参加し、複数のデジタルツールを使っている。
逆説的だがデジタル革命によって私たちの生活は「合理化」されるどころか処理せねばならない雑多な情報で溢れかえるようになり、多くの人が頭を悩まされることになってしまった。
仕事や生活がどんどん高度化している現代では、アイデアや情報を集めるツールと手帳をあらかじめ決めておくべきだ。自分の仕事や生活のスタイルにあわせて必要最低限のツールを選んでいこう。
インボックスは定期的に空にする
さまざまな情報やアイデアを集めたインボツクスは定期的に処理し、空にしておかなくてはならない。そうしないとインボツクスはすぐにあふれてしまい、その機能を果たさなくなる。
インボツクスを空にするというのは、集めたものについてそれらを「完了」させることではない。
そうではなくて、集めたもの一つひとつについて必要な判断を下し、取るべき行動を見極めるということである。
すぐに行動できないものについてどう対応すべきかはあとで述べていく。ここで重要なのは、インボックスに残しておいたり、戻したりしてはならないということだ。
中身が消えないインボックスは誰も始末しないゴミ箱や郵便箱のようなものだ。
デジタルかアナログかを問わず、インボックスに「気になること」が溜まり続けてします理由は、そこから出ていく流れを確保する、効果的な整理システムが構築されていないからだ。
イ ンボックスの中の「気になること」をすみやかに処理して整理する方法を知っていれば、そのときに行動が起こせない場合でも書類受けやメールの受信箱の中身を空にすることはできる。それが次の二つのステップ、「見極める」「整理する」である。
「見極める」
私が指導してきたほぼすべての人にとって、GTDの最大のメリットは次のようなことだ。すなわち、インボツクスの中にある一つひとつのものについて取るべき行動を明らかにし、それらを処理していく方法を身につけられるようになったことである。
あるグローバル企業の女性幹 部は、すべての「気になること」についての行動を明らかにしたあとに次のような感想をもらした。「カレンダーに会議の予定を書いておくと安心できるけど、それと同じね。仕事のあらゆる部分がはっきりしたおかげですごい解放感があるわ。」。
これは、覚えておくべき行動や情報をすべて明確にし、信頼できるシステムに預けることができたからだ。
メールや会議のメモ、思いついたアイデアなどのそれぞれについて、あなたが考えなければならないことは何だろうか。
多くの人が見逃しているが、これは極めて重要な質問だ。たいていの人が整理術で失敗するのは、この質問に答えられていないからである。思いついたアイデアはほとんどの場合、そのままでは行動に移すことができない。
望んでいる結果は何か、そしてそれを達成するために必要な具体的な行動は何かを必ず定義してあげる必要がある。
この手順の全体像ー「見極める」と「整理する」のステップが、フローチャートの中心に示されている。
これは何か?
一見間抜けなようでいて、「これは何か?」はとても重要な質問だ。「気になること」をインボツクスに集めたら、それぞれの意味するところを見極め、それについて何をしなければならないかを判断しなければならない。
これを怠るとすぐにシステムが機能しなくなる。役所や会 社から送られてくる難しそうな書類などが典型的な例だ。「これって何かする必要があるんだっけ?」と面倒くさがってそのままになってはいないだろうか。もしくは人事から送られてくる長々としたメールはどうだろう。これもどう処理してよいかわからなくてそのままになっていな いだろうか。
私がクライアントのところに出向くと、大量のメッセージや書類がデスクや引き出しに放置されていることが多い。これらはざっと目を通してその内容を判断するのを怠った結果だ。
このような事態を避け、きちんと一つひとつに向き合うために「これは何か?」という質問に答えていかなくてはならない。 そ れができてはじめて、次の質問に答えることができるようになる。
<行動を起こす必要があるか?>
「あなたはそれについて行動を起こす必要があるか?」というのが次の質問だ。答えはイエスかノーのいずれかである。 行動を起こす必要がないもの、つまり答えが「ノー」のものには三つの種類がある。
- 現時点では無価値で、もう必要のないもの(ゴミ)
- 今やる必要はないが、いつか行動する必要が出てくるかもしれないもの(いつかやる/多分やる)
- あとで必要になるかもしれない情報(資料)
これらをどう具体的に扱っていくかは後の章で見ていこう。ここでは、無用のものを捨てる「ゴミ箱」「いつかやる・多分やる」事項をおいておくファイルやカレンダー、「資料」となる情報を整理するファイリングシステムが必要だということだけ覚えてもらいたい。
行動を起こす必要があるものには、「スピーチの下書きを依頼するメール」「重大な新企画について部長と話したときのメモ」などがある。これらについては、次の二つについて判断しなければならない。
- 1求めている結果は何か。
- 2次にとるべき具体的な行動は何か。
求めている結果は何か?
GTDでは「求めている結果」を「プロジェクト」と呼ぶことにしている。このプロジェクトのリストは、達成したりリストから意図的に外したりしない限り、常にシステムに残り続け、「解決していないこと」が何かを常に思い出させてくれる。
「プロジェクト」についてはあとで詳しく見ていくが、GTDでは一般的なプロジェクトという言葉とはすこし違った意味で用いられることに注意してほしい。
次にとるべき行動は何か?
「次にとるべき行動」とは、現状を望んでいる結果に近づけるために必要な、目に見える具体的な行動である。たとえば次のようなものである。
- フレツドに電話して、勧めてくれた修理屋の名前と電話番号を聞く。
- 予算会議で話し合う内容を書き出す。
- 導入予定のファイリングシステムのことをアンジェラに話す。
- 近所で開講されている水彩画教室についてインターネットで調べる。
これらはいずれも、やらなければならない物理的な行動のリマインダーであり、生産性を高める整理システムの核となる。

今すぐやる、誰かに任せる、あとでやる
「次にとるべき行動」がわかつたら、次の三つのどれかを判断する。
- 今すぐやる― 2分以内でできることならば、ただちに実行する。
- 誰かに任せる― 2分以上かかることは、自分がやるほうがよいかどうか考えてみる。答え がノーなら、ほかの人や部署に回す。
- あとでやる― 2分以上かかり、自分がやるべきことなら、「次にとるべき行動」リストに加え、適切なタイミングで見直せるようにする。
「整理する」
先に説明したように「見極める」のステップを踏むと、「気になること」が最終的に8種類のカテゴリー(フローチャートの外側にしめされているもの)に振り分けられる。
これらのカテゴリーがシステムの一環としてそろっていることにより、現在インボツクスにあるものや、日々加わってくる「気になること」を適切な場所に整理していくことができるようになる。
先に述べように、行動を起こす必要のないものは、「ゴミ箱」「いつかやる/多分やるリス卜」「資料」の三つに分類できる。
また、行動を起こす必要があるものについては、次に述べて いく「プロジェクトリスト」「プロジェクトの参考情報」「カレンダー」「次にとるべき行動リスト」「連絡待ちリスト」に振り分けられていく。
これらのカテゴリーは、なんらかのファイルやリストになっていなければならない。ここで言う「リスト」とは、確認することができる、何らかのリマインダーの集合体のことだ。
ノートやデ ジタルの管理ツールで箇条書きにしてもいいし、1枚ずつ紙に書いてフオルダに収めてもいい。
たとえばプロジェクトリストは、システム手帳のページに書いたり、デジタルツールのタスク機能に記録したりすることができる。「プロジェクトリスト」とラベルをつけた紙のフアイルに入れてもいいだろう。
プロジェクト
GTDでは、1年以内に達成可能で、複数の行動ステップが必要な「望んでいる結果」を「プロジェクト」と呼ぶことにしている。
一般的な意味では「プロジェクト」に当てはまらない小さなことも、G T D では「プロジェクトリスト」に含まれることに注意してはしい。私がG T Dの「プロジェクト」をこのように定義した理由は、ある物事が一つの行動ステップで完結しない場合、まだ完結していないという記録をどこかで持っていなくてはならないとわかっていたからだ。
そういった記録がなければ、これらは頭の中に「気になること」として残り続けてしまう。
期間を1年以内と定義したのは、週単位で進捗をチェックしなくてはいけないような仕事は1年以内に達成可能なものが多いからだ。
「プロジェクトリスト」とは、大小さまざまな「やる べきだけど済んでいないこと」のリストであると考えてもいいだろう。例としては次のようなも のだ。
- 新たなスタツフの採用
- 8月の休暇の取得
- 社員旅行の計画
- 本の出版
- パソコンのバージョンアツプ
- 遺言書の見直し
- 予算の最終決定 。
- 新しい製品ラインナップを決める 。
- 顧客管理ソフトについて勉強する 。
- 広報を雇う
- 『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌 の記事のコピーを手に入れる 。
- 庭に植物を植える 。
- ビデオプロジェクトのリソースを調査
- 来年の年次総会のスケジュール
- 労働契約を確定させる 。
- ベランダの照明を新しくする 。
- ダイエングテーブルを買い替える 。
- 娘の中学校の入学手続き
プロジェクトに関しては、重要度や優先度などを考える必要はない。定期的に確認してそれぞれに対して次にとるべき行動を見極められる状態になってさえいればいい。
プロジェクトとそのものを実行することはできない。実行できるのはプロジェクトを達成するためにとるべき具体的な行動の一つひとつである。
こうした行動を積み重ねていくと、徐々に望んでいる結果に現状が近づいていき、最終的には「それが完了した」と見なせるようになる。
プロジェクトのリストは望んでいる結果を掲げたものの集合体で、その目的は、次に取るべき行動を見渡せるようにすることである。
行動の種類によっては、プロジェクトをさらにサブカテゴリに分ける必要が出てくるかもしれないが、まずはすべてを洗い出してリストにしておくと、使い勝手のよいシステムになることを覚えておこう。

プロジェクトの参考情報
ほとんどのプロジェクトには、テーマやトピックごとに整理しておきたい関連情報があるだろう。プロジェクトリストは単なる見出しに過ぎない。
プロジェクトの詳細や達成計画、必要となるかもしれない参考情報は、紙のフオルダやパソコンのフアイル、ノート、バインダーなどに整理しておくべきだ。
次にとるべき行動
GTDの核となるのが、「次にとるべき行動」である。これは「気になること」を完了させるための具体的な行動をまとめたものだ。
先に述べたように、それらは必ず具体的かつ物理的な行為でなければならない。
これらのうち2分以内にできる行動はその場で済ませてしまおう。そうすればそれらを覚えておく必要はない。
覚えておかないといけないのは、特定の時間や期日にやらないといけない行動(カレンダーに記入)、実行する機会ができたときにやるべき行動(次にとるべき行動リストに追加)、誰かに任せて完了の報告があるのを待っている行動(連絡待ちリストに追加)である。
カレンダー
リマインダーに記入すべき行動には2種類ある。1つは、ある特定の日や時間にやらなければならないこと、もう一つは時間があるときにやればいいことだ。カレンダーは前者の行動リマインダーとして使える。
カレンダーに記入する内容には次の3種類がある。
- 特定の時間にする行動
- 特定の日にする行動
- 特定の日に使える情報
特定の時間にする行動
言わば「アポ」のことだ。多くの場合、次にとるべき行動は「このプロジェクトに関する会議に参加すること」などだろう。こういった場合は、カレンダーに記入しておくだけで十分に用が足りる。
特定の日にする行動
ある特定の日にやらなければならないが、時間は決まっていない行動のことである。
たとえば、ミオコに送る予定の報告書に問題がないかどうか、金曜日に電話で確認する旨を伝えてあったとしよう。ミオコが報告書を手にするのは木曜日で、彼女は土曜日から海外出張の予定だ。そのため電話は金曜にしなくてはならない。ただし時間は特定されない。
これはカレンダーの「金曜日」の欄に記入しておくべきだ。特定の時間の行動と特定の日の行動の両方を書き込めるようになっているカレンダーを使うと便利だろう。
特定の日に使える情報
カレンダーは、ある特定の日に知りたい情報を記入しておく場合にも使える。約束の場所への行き方、家族やスタッフがその日に行う活動、興味のあるイベントなどがこれに当たる。
カレンダーに「ToDoリスト」を記さないこと
カレンダーに記入するのは先ほど述べた3種類の内容のみとし、ほかのことはいっさい記入するべきではない。これは従来の時間管理手法とは矛盾するかもしれない。
ほぼすべてのケースで、毎日のToDoリストがカギだということが教えられていたからだ。だが、TODOリストをカレンダーに記すのが好ましくないのには、次の二つの理由がある。
まず、インプットが絶えず入ってくる現代においては日々の仕事の優先順位がころころと変わってしまい、TODOの項目をあらかじめきっちり押さえておくのは事実上不可能だからだ。
参考までに「この日にこれをやろうかな」といったメモを持っておくのは確かに有用だが、いつでもそれが書き換えられるようにしておかないといけない。
カレンダーでTODOリストを維持しようとすると、どれかが完了しなかった時にはまた別の日に書き込まなくてはいけないので、士気も下がってしまうし、何よりも時間の無駄になる。
私が提唱する「次にとるべき行動リス卜」は、単なるToDoリストではなくて、時間にとらわれないすべての行動のリマインダーだ。したがって日常的に書き換える必要もない。
また、1日のTODOリストにその日でなくてもいい行動が書かれていると、その日でなくてはならない行動に集中できなくなってしまうのが、2番目の理由だ。
ミオコには金曜日でなく ては連絡できないのに、金曜日でなくてもいい電話連絡の予定がほかに5件入っていたとしたら、多忙な1日の中でミオコに電話できなくなってしまうかもしれない。
そして頭の中では「そうだ、ミオコには絶対に今日電話しなくちゃ」といった余計なタスクを抱え込むことになる。
これではシステムを有効活用しているとは言えない。カレンダーは「聖域」としたいものだ。
つまり、その日に必ずしなくてはならないことのみを書くようにしよう。書き換えてもよいのは、アポの変更のみである。
「次にとるべき行動リスト」
これまでに述べた以外の行動については「次にとるべき行動リスト」に書き込んでいこう。これらはカレンダーと共に、1日の行動をつかさどる重要なリストとなる。
2分以上かかり、誰かに任せることができないと判断した行動は、どこかで把握しておかないといけない。
「予算会議についてジム・スミスに電話する」「友人にメールして家族の近況報告を する」「年次営業総会のアイデアを書く」などは、このリストに記入しておきたい行動のリマイ ンダーだ。そして、このリストはいつでも見られるようにしておこう。
20 〜30個程度の行動しかなかったら一つの「次にとるべき行動リスト」にまとめればいいだろう。だがほとんどの人は50 〜150個のとるべき行動があるはずだ。
この場合は、「次の取るべき行動」をサブカテゴリに分けて整理していくといい。この辺りはとで詳しく見ていこう。
行動を起こす必要がないもの
行動を起こす必要のあるものと同様、行動を起こす必要のないものについても論理的な整理が必要だ。行動を起こす必要がないものは、「ゴミ箱」「いつかやる/多分やる」「資料」の三つのカテゴリーに分けられる。
「ゴミ箱」
読んで字のごとしで、今後何もする必要のないことや、資料価値のないものを捨てる場所だ。 これらのものがほかのカテゴリーにまぎれ込んでいると、システムの機能が著しく低下し、すっきりとした整理ができなくなる。
「いつかやる・多分やる」
すぐに行動する必要のないものには、「ゴミ箱」のほかに二つのカテゴリーがあるが、そのうちの一つは、とりあえず保留しておきたいことである。
ニユースレターの記事を読んで、いつかしてみたい企画が思い浮かんだとしよう。その場合は、将来の行動の選択肢として検討できるようにしておこう。あるいは地元の楽団の定期演奏会に関するパンフレツトが届いたとする。とても面白そうだが、演奏会が開かれるのは4カ月後だ。行くにしてもずっと先のことで、その日に出張している可能性もある。ただ、地元にいる場合はぜひとも行きたい。そんなときはどうすればよいだろうか。
このような「保留事項」の管理に有効なシステムは二つある。「いつかやる/多分やるリス卜」と「備忘録ファイル」だ。
「いつかやる/多分やるリスト」
将来の、ある時点でやりたくなる可能性のあることを常に最新の状態にしておくと、効率的な だけでなく、人生にも希望が湧いてくる。現時点ではどうにもできないが、忘れてしまいたくな いという物事を記しておこう。これらは定期的なリマインダーとして使うことができる。
「いつかやる/多分やるリスト」の例
- ・ボートを買う
- スペイン語の勉強
- キツチンの改修
- プールを造る
- ワインセラーを造る
- トスカーナヘ旅行
- 子どものための財団を設立
- ピアノを買う
- スキューバの資格をとる
- タンゴを習う
- ホームパーティをする
- 庭に池を造る
- 水彩画教室に通う
- 気球に乗る
- 個人のウェブページの作成
- 回想録を出版する
- 陶芸を習う
どれも「今はできないけれど、できればいいな、だから忘れたくない」という物事だ。こういったリストを定期的に確認していけば、人生を充実させていくことができる。このリストの確認は週次レビューの中に組み入れていこう。
また、「いつかやる/多分やる」と似ているものの、定期的に確認する必要はなくて、特定の活動をしたいときにのみ確認したい物事もあるだろう。たとえば、以下のようなリストが考えられる。
- 読みたい本
- 観たい映画
- 受講したいセミナー
- 飲んでみたいワイン
- 週末に行ってみたいところ
- チェックしたいウエブサイト
- 作ってみたい料理
- 子どもに勧めてみたいこと
こういったリストは、人生における創造的な活動を大きく広げてくれる。思いついたときにその場で簡単にリストが作れる整理ツールがあると非常に有益だ。
「備忘録フアイル」
保留しておくものには、ある特定の日付までは考えたくない、あるいは考える必要のないものがある。そうしたものに最適なのが備忘録ファイルだ。要は、ある特定の未来の日付に自分に届けるべき通知をまとめておくものである。
カレンダーもこの用途に用いることが可能だ。たとえば3月15日に、確定申告の期限が1カ月後だとメモしておく。あるいは9月12 日に、6週間後に市民会館でボリショイバレエ団の「白鳥 の湖」の公演があると書いておくわけである。 これらについては、第7章でさらに詳しく見ていく。
「資料」
あなたのアンテナに引っ掛かるものの中には、それについて行動する必要はなくても、用法として価値があるものも多いだろう。このような情報は必要なときに参照できるようにしておきたい。
近所のレストランの出前メニュー、業者のパンフレツトなどの紙の情報は保管しておくと便利である。お気に入りの飲食店リストやPTAの電話番号をバインダーやノートで保管したり、会社の合併に関する審査書類をキャビネットにまとめておいたりするわけだ。デジタルデータの場合は、クラウドのデータストレージやメールソフトのフォルダに保存しておこう。
「資料」の整理方法には、大きく分けて次の二つがある.
- (1)トビックや分野ごとに整理する
- (2) 「一般資料」としてまとめる
(1)は、分別方法が自明であるものだ。たとえば、裁判に関する書類や、社員の報酬に関する機密情報などがこれにあたる。
これらは関連するものをまとめて1つのフォルダやキャビネットに保管しておくといいだろう。
(2)の「一般資料」には、既定のカテゴリーに属さないもろもろの情報を入れられるようにしておこう。キツチン用品のマニュアルだとか、最近の海外出張で使い残した、いつか使えるかもしれない外貨もそうだろう。
「一般資料」の受け皿がなければ、これらの雑多な情報は整理システムの大きなボトルネツクになってしまう。
簡単かつ迅速に(そして楽しく)ファイリングができなければ、整理せずに放置してしまう可能性が高くなる。これについては第7章で詳しく見て いこヽつ。
「更新する」
「ミルクが切れた」とメモしておいても、それをきちんと保管して、必要なときに思い出せなければ役には立たない。「ご無沙汰している友人に電話する」というメモも、電話ができるときに 思い出せなければ意味がない。
いつ何を確認し、「更新する」べきか
私の提唱する通りに整理システムを構築できたなら、あとはそのシステムを維持していくための確認作業が必要だ。
確認する頻度がいちばん高いのは、特定の日にやるべき行動が書かれたカレンダーだろう。いつ何をやらなければならないかを把握できていると、臨機応変な対応がしやすくなる。
会議、電話連絡、その日が期限の報告書の作成など、カレンダーに記入されている行動が完了したら、ほかにやらねばばならないことは何かを確認する習慣をつけておくとよい。
たいていの場合、「次にとるべき行動リスト」を次にみることになる。このリストには、1日の中で時間が取れたらすべきことが書かれている。随時確認して更新していこう。
「プロジェクトリスト」「連絡待ちリスト」「いつかやる/多分やるリスト」は、忘れない程度の頻度で確認し、更新していけばよい。
成功するには週次レビューが重要
頭が「これは覚えておかなくては」というムダな努力をしなくても済むように、行動が必要か もしれないことはすべて適切な頻度で確認し、更新していかなくてはならない。そのときどきで 自分が何をすべきかについて自信をもって判断していくには
すこし上のレベルの視点から低的に仕切り直す必要がある。私自身の経験、そして私が指導してきた多くの人たちの経験からす ると、そのためのカギを握るのが週次レビユーだ。
週次レビユーでは、次のことを行なっていく。
- やらなければならないことを把握し、どうすべきかを見極める。
- システム全体を見渡す。
- リストを更新する。
- すべてのものについて、済んだものは処分し、情報を更新する。
多くの人は整理システムを統合的に導入していないせいで、こうした見直すステップの効果も限定的になってしまっている。見直したとしても、全体が見渡せていないからだ。
統合的なプローチなしには「何かを見逃しているのかもしれない……」という不安がかすかに残ってしまう。システムが完全であればあるほど、信頼して物事を預けることができる。
そして信頼できればできるほど、そのシステムを維持したくなる。週次レビューはこの基準を維持するための重要なカギなのだ。
休暇に入る前の週は仕事が捗ると感じるものだが、もうすぐ休めるという理由からではない。ある程度の期間、仕事を離れる前の週には、やらなければならないことの全てを洗い出して、それらについての処理をしたり、意味を明らかにして整理することができるからだ。
こうしておくことで気になることから解放され、リラックスしながら海なりゴルフなりスキーなりを存分に楽しむことができる。1年に一度のまとまった休暇のときだけではなくて、1週間に一度これを実践し、そのときすべきことに集中できるようにしてはどうだろうか。
「選択する」
ここまで行なってきたワークフローはすべて、行動を「選択する」ためにある。ここまで説明したことをきちんとやっていてはじめて、目の前になる選択肢から最善のものを選ぶことができるようになる。
たとえば月曜の午前10 時33分、サンデイーに電話をかけようか、提案書を提出し てしまおうか、メールチェックを済ませてしまおうかといつたことを、あなたは思いつきで選んでいるはずだ。
けれども事前に「把握する」「見極める」「整理する」「更新する」を済ませてあれば、こうした選択に対して自信をもつことができる。
「う―ん、とりあえずこれかな……」で はなくて、「これだ―」と確信がもてるようになり、作業の効率も飛躍的に向上していくことに なる。
行動を選択するための三つのモデル
たとえば、とくになんの理由もなく、やるべきことに手をつけられていない状況があったとしよう。
あなたの前にはたくさんのやるべきことが書かれたリストがある。ではどれをやってどれをやらないか、自信をもって選択するにはどうすればよいのだろう。答えは「直感」を信じることだ。
ただし、そうするには、気になることすべてについて「把握する」「更新する」のプロセスが終わっていることが前提条件である。これらが終わっていれば直観力が冴えてきて、知的かつ合理的に仕事や価値観に基づいて判断を下すことができるようになる。
実際に行動を選択するにあたって役立つ三つのモデルをここで紹介しよう。マリオに電話するべきか、学校にいる息子にメールするべきか、秘書と雑談でもするべきか――どれを選択するべきかという答えを導き出すものではないが、選択肢をシステマチツクに整理するために役立つモデルだ。またこれらは、今までの時間管理術や優先度による整理術ではあまり取り上げてこられ なかった手法でもある。
4つの基準で現在の行動を選ぶモデル
水曜日の午後3時22 分。何をすべきか、どうやって決めたらよいだろう? これを判断するに は、次の四つの基準について順番に考えていくとよい。
- そのときの状況
- 使える時間
- 使えるエネルギー
- 優先度
そのときの状況
ある時点で何ができるかという制約は必ずついてくる。どこにいてもできる行動(ペンと紙を使ってプロジェクトに関するアイデアを書き出す、など)もあるが、多くの行動はある特定の場所(自宅、会社)やツール(電話、パソコン)などの条件がそろわないと実行できない。こういった制約が、そのときに何ができるかを振り分ける第一の要因だ。
使える時間
入っている次の予定などを考慮しなくてはならないだろう。あと5分で会議が始まるならば、5分以上かかることには対応することができない。
使えるエネルギー
自分の気力と体力も把握しておく必要がある。頭が冴えていないとできないこともあるし、身体的なエネルギーがないとできないこともある。一方、気力と体力をあまり必要としない行動も ある。
優先度
そのときの状況や使える時間、使えるエネルギーを考慮して絞り込まれた行動のうち、どれをするのがいちばん有益かを考えよう。
会社にいて、電話とパソコンが使えて、時間が1時間ほどあって、エネルギーのレベルは10 段階評価で7くらいだとしよう。この時間には、クライアントに電話するべきか、提案書を執筆 するべきか、メールを処理するべきか、妻にどうしているか電話するべきか。 ここで直感の出番である。何がいちばん重要か、直感を働かせて判断するには、残りの二つの モデルが役に立つ。
②日々の仕事を3つのカテゴリーで評価するモデル
やらなければならないこと、つまり広い意味での「仕事」には、次の三つの種類がある。
- あらかじめ決まっている仕事
- 予定外の仕事
- 仕事を見極めるための仕事
あらかじめ決まっている仕事
これは「次にとるべき行動リスト」と「カレンダー」に書かれている仕事だ。つまり、やらなければならないとすでに判断した仕事を指す。友人に電話をかけたり、ブレインストーミングのアイデアを文書にまとめたり、会議に出席したり、弁護士と話す内容を書き出したり、といったことである。
予定外の仕事
突然降りかかってきて、どうすべきか対応を迫られる仕事もある。たとえば、共同経営者があ なたの部屋に入ってきて、新製品について話し合いたいと言ってきたら、ほかのことはすべて後回しにしてでも話し合いをするべきだろう。断言してもいいが、予定外の仕事は常に生じるものだ。そういった仕事にもある程度の時間や労力を回せるようにしておこう。
仕事を見極めるための仕事
効果的に仕事をこなしていくために、あなたの整理システムを整備することも、「仕事」のうちの1つである。インボックスやメール、会議メモなどを処理し、具体的な行動ステップを判断し、必要ならばその場で片付けたり、ファイルに整理していくことになるだろう。
ここで述べた仕事の種類についても、今何をすべきかについて判断するときに考慮しておく 必要がある。そして最後に考えておきたいのが仕事の性質や目標を見極めていくための視点である。
③六つのレベルで仕事を評価するモデル
これまで述べてきたようなモデルも行動を選択する際の基準となるが、それだけでは十分でない場合も多い。何が優先されるかを本当の意味で理解するには、仕事の性質を理解しなければならない。
そのためには六つのレベルの視点を活用していく。建物の中から外を見るとき、何階か ら見るかによってその景色は違ってくるだろう。それと同じように、異なる視点から仕事を見渡 していくことで、その仕事が真に意味するところを見極めていくのだ。
- Horizonレベル5:人生の目的とその在り方
- Horizonレベル4:長期的な構想
- Horizonレベル3:1〜2年後の目標
- Horizonレベル2:重点的に取り組む分野
- Horizonレベル1:現在のプロジェクト
- 地面レベルー現在の行動
これらのレベルから仕事を再評価していくことで、その意味について理解を深めていくことができる。下のレベルから順に見ていこう。
地面レベルー現在の行動
まずはやらなくてはいけない行動について理解しておこう。かけなくてはならない電話、返信が必要なメール、済ませなければならない用事、上司や妻と相談しなくてはならない物事などののすべてである。
Horizonレベル1 現在のプロジェクト
現在の行動をなぜやろうと思ったのか。それはプロジェクトを完了させるためである。このレベルでは少し視点を上げて現在抱えているプロジェクトについても見渡しているといいだろう。
比較的短い期間に達成したい、求める結果がこれである。自宅に新しいパソコンを設置する、営業会議を企画する、本社の移転を済ませる、歯科医師を探すなどだ。
Horizonレベル2 重点的に取り組む分野
プロジェクトは、ある役割や責任があるから引き受けたり、興味があるから始めたりするわけだ。このように仕事でもプライベートでも重点的に取り組みたい分野があるだろう。
仕事では人材開発、市場調査、カスタマーサービス、資産管理などがそれにあたる。プライベートでは 健康、家族、家計、家庭環境、宗教関連などがあるはずだ。これらは、自分の行動を見直し、仕 事とプライベートにおけるバランスがうまくとれているかを評価する基準として使うことができる。
Horizonレベル3 1〜2年後の目標
仕事とプライベ―卜の様々な分野においてて1〜2年後に何を経験したいかということも、何をするべきかを明らかにする視点となる。仕事における目標を達成するには新たな責務を担ったりする必要が出てくるだろう。
プライベートにおいても1〜2年後に達成したいことがあるは ずだ。それらを考慮していくと、人生のある局面においてほかの事柄よりもある事柄を重視した くなることがあるはずだ。
Horizon レベル4:長期的な構想
3から5年後を見通す長期的な視点では、より大きな構想を扱っていく。会社の戦略、環境問題、キャリアやライフスタイルの変革などだ。
長期的なキャリア、生活の質の向上などもこのレ ベルで考慮していく。外部要因についても考えておこう。
テクノロジーの進化、市場や競合の動 向など、自分の職務や組織に影響を及ぼすさまざまな要因がある。このレベルでの判断により、 仕事の性質がさまざまな面で変わってくるはずだ
Horizonレベル5:人生の目的とその在り方
これは人生の全体像を眺める視点である。会社の存在意義は何だろう? 自分の存在意義はなんだろう。自分にとって何がなんでも大事なことはなんだろう。もっと大切な目的というは、仕事の本来あるべき姿を形作ってくれるものだ。
すべての目標、役割や責務、プロジエク ト、行動はここから導き出されるものであり、そこへ行きつくものでもある。
このような視点はすこし漠然としているかもしれないが、異なる視点で現状をとらえておくことで、今何をすべきかについてよりよい判断ができるようになるはずだ。
今までも、長期的な目標や価値観に目を向けて何をすべきか判断していたという人もいるかもしれない。
これはもちろん必要な視点ではあるが、やるべきことが複雑に絡み合う現代においてはそれだけでは十分ではない。
ここで述べたようなすべてのレベルを考慮することができれば、より総合的に物事をこな していくことができるようになり、今までに感じたことがないような安心感が得られることだろ う。
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