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第5章残業沼から抜け出す「ちょいスイッチABC」を実践!

5%社員が発言した言葉の中で印象的だったのは、「思考停止を避ける」というパワーワードでした。

期限に向かって一直線で、どんどん作業を進める5%社員からこの発言を聞いたのは意外でした。

繰り返しになりますが、5%社員は「考えずに作業を進めることは危険」だと認識しているのです。

「思考をはたらかせることはたしかに疲れるが、かといって手を動かす作業に集中してしまうと目的を見失ってしまう」と発言していました。

スキルの高い5%社員は、仕事に取りかかると、作業興奮に見舞われることを自己認識していました。

「相手の期待値を超える」という目標を忘れてしまい、作業をすること自体に興奮をしてしまうことがしばしばあるようです。

たしかに仕事がさくさくと進めば気持ちがいいですし、そのまま作業を続けたほうがテンションも高まります。

しかし5%社員は、そんな作業興奮を振り切るために意識的に作業を止めて、休憩をしていました。

この休憩の目的は、肉体と精神を休ませることではなく、「肉体を休ませることで、思考をはたらかせること」だとわかりました。

ちょっとした休憩でコーヒーを飲みに行ったり、部屋の中やオフィスで歩き回ったりして、作業興奮を一度抑えて、「何のために作業を進めているか」を考え直していたのです。

そして「今進めている作業の仕方が本当に正しいのか」「ほかにショートカットできる方法はないのか」「誰か協力者を巻き込むことはできないのか」ということを考えるのです。

作業に集中するときは、脳をはたらかせるようなエネルギーをあまり使わず、肉体的に疲れそうになったら休憩して、その間に思考を動かして、行動が本来の目的から逸れないように修正をしていることがわかりました。

これが、5%社員の「作業時間と思考時間を分ける」戦略で、作業の無駄を防ぐことで時短にもつながります。

5%社員の特徴的な習慣である「週1回15分の内省タイムを設ける」「45分で1回作業を区切る」「仕事中に10分程度の外出をする」などは、この戦略とつながっていることもわかり、その意味が腑に落ちました。

筋肉と脳のオンオフを交互に切り替えることで最大のパフォーマンスを生み出していたのです。

初動を早めることにこだわる5%社員は、インプットよりも先にアウトプットをすることもあるそうです。

一世一代の大勝負であればしっかりと準備をしますが、かすり傷ほどの失敗で済むようならば、「まずは今の自分にある情報でアウトプット」、そして「フィードバックを受けて足りないところを埋めていく」という戦略をとっていました。

情報収集から始めると作業興奮で作業時間が延びてしまうことを5%社員は知っているので、インプット作業で満足し、アウトプットが疎かになることを避けているのです。

また5%社員は、「アウトプットして資料をつくるのもインプットの一部」だと考えています。

アウトプットに対するフィードバックをインプットと兼ねていて、フィードバックから「資料の提出相手がどんな属性か」「どんな興味関心を持っているか」といった情報を収集し、資料に活かしていました。

たしかに、どのようなアウトプットが相手を刺激するのかがわかっていなければ、インプットに膨大な時間を費やしても徒労に終わります。

5%社員は「アウトプットは相手によって変える」とも断言していたので、相手がわからないならば、「まずはアウトプットして相手の反応を見る」というのは、とても合理的な戦略です。

すべてのビジネスパーソンがインプットの時間を制限することは難しいかもしれません。

しかしあくまでもアウトプットが目的のインプットという位置づけを正しく把握できれば、アウトプットに力を入れるべきであることがわかるでしょう。

また、インプットに時間をかければアウトプットの質が上がるとは限りませんが、事前のヒアリングや、途中で意見をもらうフィードフォワードを実行すれば、自分で調べるよりも有益な情報をインプットすることができるでしょう。

もしヒアリングやフィードフォワードができなければ、インプットよりも仮設設定に力を入れるといいでしょう。

5%社員は、このようなとき「資料の提出相手がどういう人で、どういう状態がどう変化すれば理解を得られ、思い通り行動してくれるのか」という仮説ストーリーの作成に時間をかけていました。

まとめると、5%社員から次のことが学べます。

・「インプット満足」から「アウトプット満足」へ転換できれば成果が出る・アウトプットするとアンテナが高くなり有益な情報に近づける・アウトプットは先にするべきで、その後に足りない部分をインプットする・情報収集が目的になってしまい、満足するのは危険このようにして5%社員は、すべての行動の目的を理解してから作業することに満足感を得ていました。

成果につながるかわからないことに多くの時間を費やしても無駄になる可能性が高いと考えているからです。

5%社員は仕事の段取りが完璧です。

「いつまでに」「何を」「どの順番でやるか」を明確にして作業を進めます。

これから行う作業をどの手順で進めていくかをしっかりと計画しているのです。

期限内に仕事を終えるには、こうした計画書が必須となります。

5%社員に限らず、多くのビジネスパーソンが、仕事を始める前にスケジュールを見て力の入れ具合を計画しているでしょう。

しかし5%社員は、時間の使い方を計画するよりも、「企画すること」に力を入れていることがわかりました。

約1万人の5%社員のヒアリングデータを文字起こしし、AI分析したところ、「企画」という言葉が95%社員の2・7倍出てきたのです。

「企画」という言葉は、企画書の作成やイベントの企画といった文脈ではよく耳にしますが、時間の使い方に関するヒアリングで「企画」という言葉が頻出していたことは意外でした。

5%社員がしていた時間の企画とは、これから自分が「何を実現したいか」を考え、自分の求める「結果」「ねらい」「やりがい」「楽しさ」などを考えることです。

インプットよりもアウトプットを先に行う5%社員は、こうした意義や目的をはっきりとさせる傾向にあります。

たとえば、仕事を早く終えることを目的とするのではなく、「何のために早く終えるのか」を考え、そのための企画をつくります。

テンションが上がるような目的や、自分へのご褒美を先に企画して、そのうえで段取りを練っていたのです。

私自身、気がつくと作業時間の時短が目的になっていたときがあるので、5%社員のヒアリングに参加し、ハッと気づきを得ました。

もちろん時間内に仕事を終えて早く帰れたら自己満足につながりますが、それを継続するためには、目的が「早く仕事を終わらせる」だけでは不十分です。

5%社員は目的を明確にして、「早く仕事を終わらせる」を継続していたのです。

その主な目的は、「自分がコントロールできるゆとりのある時間を持つこと」でした。

たとえば子育てで忙しい5%社員は、仕事を早く切り上げて、落ち着いた喫茶店でコーヒーを飲みながら20分、読書をしてから、塾の送迎に向かっていました。

行政書士の資格試験に挑戦していた5%社員は、仕事と勉強の合間のちょっとした時間で大型家電店へ立ち寄ることを楽しみとしていました。

行列のできるラーメン屋さんに早く行って、なるべく並ばずに入店しようとしていた5%社員もいました。

こうしたわくわくするような時間を獲得するために、しっかりと段取りをつけていたのです。

業務に合わせて時間を計画すると、ただ仕事に振り回されてしまいがちです。

だから、5%社員のように、・なぜ時間を効率的に使わなくてはいけないのか・効率的に使うと自分にどういうベネフィットがあるのかということを腹落ちさせて、時間を企画する意識を持つことが大切です。

すると、時間に対して当事者意識を持つことができ、集中して仕事を継続することができるのです。

私は、突出した成果をたたき出す5%社員に対して「ものすごく高いゴールを設定し、それに向けてひたすら頑張る」というイメージを持っていました。

しかし、彼らは与えられたゴールよりも若干高い目標を自ら掲げているものの、「大成功を目指すことはない」ということがヒアリングで判明しました。

意外と臆病な人が多い5%社員は、一か八かの勝負はリスクだと考え、着実に仕事の段取りをしていました。

大成功を目指すのではなく、「大失敗を避ける戦略」で物事を考えているのです。

挑戦を奨励する企業は増えていますが、1回や2回ならまだしも、3回も4回も同じ失敗をしてしまったら、新たに挑戦する機会をもらえなくなってしまいます。

5%社員はそのことも理解し、また、大失敗したときにかかるリカバリーの時間もリスクだと捉えています。

ハイリスク・ハイリターンのほうが効率がいいように思えますが、ハイリスクを避けることを重視しているのです。

また、ローリスク・ハイリターンは、一か八かの賭けや、妄想だと考えています。

そこで5%社員は、ハイリスク・ハイリターンではなく、「ローリスク・ミドルリターン」を目指します。

失敗確率を下げながら、そこそこの成果を出すことを継続させることに最も力を入れていたのです。

その具体的なアクションでは、第3章でお伝えした3つの心構え(こちら参照)を元に、前項で紹介した「時間の使い方の企画」をしています(こちら参照)。

目的から時間使い方を企画した後に、着実な段取りをし、そして作業を始めて、肉体や精神が疲れたり、気持ちが萎えてしまったりすることを避けています。

そして、不要な作業興奮に襲われないように、あえて作業途中で手を止めたり、途中で休憩を入れたりしているのです。

ほかのことに気が回らないように机の周りを片づけるのもその理由からです。

5%社員は、「ミドルリターンを着実に積み重ねれば、ハイリターンに変わっていく」と考えているのです。

一方、95%社員は、ローリスク・ハイリターンやハイリスク・ハイリターンを目指して、途中であきらめたり、くじけてしまったりすることが多いと話していました。

変化の激しい時代、ローリスク・ハイリターンなどでは成果の確度がうまく図れません。

ローリスク・ローリターンやローリスク・ミドルリターンを積み重ねることで、大失敗を避けながら成功に近づいていく仕事の仕方が合っているのだと思います。

5%社員のタスク管理のポイントは「細分化」です。

たとえば、試作品をつくるときは「要件を定義→基本設計書の作成→設計図面の作成→13項目で品質チェック→営業部門と企画部門にヒアリング→説明資料の作成→操作マニュアルの作成→本部長のレビューを受ける→改良工数を試算→部長の稟議をとる……」というように完成までのプロセスを細分化しています。

MicrosoftToDoやTrelloなどのスケジュール・タスク管理ツールを使って進捗を管理していました。

実は、ここまでは95%社員と同じです。

5%社員は、さらに各プロセスの作業までも細分化していました。

「基本設計書の作成」では、「完成イメージの作成→それを実現するための検証作業→工数の試算」といった感じです。

このようにタスクを超細分化するのは、ちょっとした隙間時間に業務をこなすことが目的だそうです。

さまざまな人に頼りにされる5%社員は、よく話しかけられ、助けを求められます。

社内会議にも多く招待され、自分でコントロールできる時間が少ない状況です。

そのため、じっくり椅子に座って作業をすることがなかなかできません。

だから、移動時間や偶然空いた隙間時間を利用して作業ができるように、タスクを超細分化し、どんなタイミングでも仕事を進められるようにしているのです。

突然時間が空いたからといって、すぐに溜まっていた仕事をこなすのは難しいものです。

何をすべきか考えて、タスクの中から適当なものを選んで、進め方を考えているうちに、時間がどんどんなくなっていきます。

ただ単に「作業は隙間時間に開始しよう」と思っていても、いざ隙間時間ができたときにやるべきことが明確でないと、やらない理由を考えてしまい、初動が遅くなります。

5%社員がやる気をあてにしないのは、初動を早めるためでもあります。

何かあったらすぐに手をつけられる細かな業務をリストに入れておいて、やらない理由を考える前に作業を開始してしまうのです。

このように隙間時間を有効活用するためには、しっかりとした準備が必要です。

「何をやるか」の準備ができていなければ、隙間時間は隙間のままで終わってしまいます。

「エジソンは1万回の実験をあきらめずに行って電球を発明した」という史実は、間違った解釈をされがちです。

この史実の真意は、「同じ実験を1万回繰り返した」ではなく、「違う実験を1万回行った」です。

つまり、「9999回の実験をあきらめた」ということです。

あきめたからこそ、次の実験に移ることができたとも言えます。

エジソンが一つの実験にこだわっていたら、電球は発明されなかったでしょう。

5%社員は、「続けることの大切さ」と「あきらめることの大切さ」の両方を理解しています。

新しい挑戦をするときは、何かをやめてからスタートしているのです。

「過去のやり方に固執してしまうと初動が遅れてしまう」とも発言していました。

やめることを決めるのは簡単そうに思えますが、実際は簡単ではありません。

これまでの著作でもお伝えしたように、凝ったパワポ資料や、「メール見ました」という返信などは、やめても業務に影響がありませんが、なくならない習慣です。

では、5%社員がどうやって「やめること」を決めているのか。

個別ヒアリングから、4つの手法を見出しました。

①「トレードオフ」で考える5%社員は「何かを得ると何かを失う」という、トレードオフの考えを持っていました。

時間管理はプライオリティ・マネジメントなので、何にエネルギーを注入して、どこで手を抜くかが大切です。

5%社員は、最大のインパクトを残す成果を出すために、エネルギーをかけるポイントを見出し、そこに注力することで、有限の時間を最大活用しています。

「手の抜きどころを決める」という意味では、5%社員の時間術はずるいとも言えます。

しかし、こうしたずる賢い考え方が、やめる決断を後押ししてくれるのです。

また、これだけ変化の激しい時代にリスクをゼロにすることはできないので、「何かを失うと何かを得る」と考えることがより大切です。

失敗を避けて何も行動しないと安全ですが、新たな機会を見つけることはできなくなります。

デメリットよりもメリットが大きければ動くこと。

かすり傷程度のリスクであれば、前に出てチャンスを自らのものにしないといけません。

たとえば、軽快なセールストークで営業成績を伸ばしていた人が「ITは苦手だからオンライン営業はしない。

確実に成果を上げられる対面営業だけに注力する」をポリシーにすると、オンライン対応を望む顧客から受注するチャンスを逃してしまいます。

「やめること」「リスクに飛び込むこと」には、引き換えとなる「メリット」「チャンス」が隠れています。

それを見過ごさない判断ができれば、必ず成果がついてきます。

②解決策ではなく、「理想」を掲げる大量の仕事を片づけるための解決策は、「とにかく早く片づけること」と考えられがちです。

しかし目の前の解決だけを考えていると、同じ問題が繰り返されて、根本解決ができません。

それに加えて、意外なことに、仕事の時間をうまくコントロールしている5%社員は、仕事よりも家族の時間を優先していたり、自分の余暇を楽しみたいから早く仕事を終わらせていたりしました。

この結果について、該当する5%社員にヒアリングしたところ、「人生の優先順位を決めると、目の前の課題を根本解決しやすくなる」との返答があり、ハッとさせられました。

ミネソタ大学の名誉教授で、アメリカにおけるキャリア・カウンセリングの発展に貢献したサニー・ハンセン博士は人生の役割を、次の4つ(通称「4L」)に分けました。

「Labor(仕事)」「Love(愛)」「Learning(学習)」「Leisure(余暇)」人生の理想像を考えるときは、この4Lにどんな順番をつけるかが大切です。

「4Lの優先順位を決めることで、仕事の仕方も変わってくる」と発言する5%社員もいました。

仕事の中の優先順位ではなく、仕事を含めた人生の優先順位をぼんやりと考えることでエネルギーのかけ方が見えてくることもあります。

家族との「Love(愛)」を優先させるなら、残業しないように無駄な業務をやめることができます。

「Learning(学習)」を優先させるなら、目の前の小さな成功に固執することなく失敗を積み重ねて学習し、大きな成功に近づく戦略を考えられます。

このように考えれば、外部要因などに惑わされず、自分軸で「やめること」を決められるのではないでしょうか。

なお4Lの優先順位は、半年に1回の頻度で再考することをおすすめします。

③手段が目的になっていないかチェック実現したい理想が明確だと、目的につながらない手段はすぐに切り捨てることができます。

そこで、仕事と人生の優先順位が整理できたら、さらに重要な仕事を絞り込むために、手段と目的の切り分けをします。

とくに、やるべき仕事がいっぱいで、あっという間に時間がなくなってしまう人は、すぐにやるべき仕事が「目的なのか」「手段なのか」を切り分けて、力の入れ具合を計画してみましょう。

この作業では、仕事を「目的そのもの」「目的を達成するための手段」「目的につながらない手段」、この3つに切り分けます。

さらに時間ダイエットするためには、「目的を達成するための手段」をコンパクトにして、目的に直結する仕事へ最大のエネルギーをかけます。

また、目的達成のための手段を行っているとき、漫然と目の前の作業にあけくれるだけではいけません。

目的達成を意識しながら進めて、行動のブレをなくすことが大切です。

これは、漫然と散歩をしているだけでは山の頂上にたどり着けないのと同じです。

山の頂上を見据えてあとどれくらいで到着するのか、そのためにはどういう配分で体力を使えばいいのか戦略を立てることで、頂上へとたどり着けます。

「仕事の目的(頂上)」を意識すれば、成果への道が自然とひらけてきます。

④外円を捨て内円にフォーカス5%社員は、自分でコントロールできないこと(外円)にエネルギーを費やしません。

国の法律や会社の就業規則、社会情勢や自分の上司を変えることはできないので、そこにエネルギーやストレスをかけません。

「ライバルの足を引っ張ることや、意図的に上司を困らせたりするのはエネルギーと時間の浪費だ」「上司に対する愚痴は仕事後の居酒屋ですればいい」と発言していました。

あくまで自分が影響を与えることができる範囲(内円)にフォーカスし、その中で、時間の使い方を工夫するのです。

この内円と外円の整理をすれば、自分がインパクトを与えられない外円に対する行動をやめることができます。

4つのルールに沿って、「やめる基準」をつくることができれば、やめることを習慣にでき、新たな行動を増やしていけます。

そして、決めたゴールに向かうまっすぐな道を歩んでいけるのです。

自分基準で業務の棚卸をしたら、初動早く一直線に仕事をこなす5%社員は、集中した短時間の作業を積み重ねることの大切さを深く理解しています。

しかしこの「一直線」というのは、「周りを見ずにひたすら努力し続けること」ではありません。

目標達成を常に意識し、手段を目的化しないための心構えです。

また、最短距離で目標を達成するために回り道することもあります。

「小さな失敗を続けた先に大きな成功がある」と理解している5%社員は、あえて苦手な業務に取り組んでみたり、専門外の知識を取得して、自分の業務に活かせないかを考えたりもします。

5%社員が突出した成果を出すのは、このように「行動すること・しないこと」をはっきりとさせているからです。

意義・目的を腹落ちさせてから行動するので、目標に向けて実直に行動を継続できます。

しかし彼らの判断が必ずしも正しいわけではありません。

認識違いから誤って必要のない作業を始めてしまったり、作業してみたら意図するものではなかったりすることは多々あります。

こうした判断ミスがあることも理解している5%社員は、だからこそ初動を早めて行動量を増やし、意味のない作業を途中で取り除きます。

この認識違いを確認したり、行動を修正したりするためには、チェックポイントとなる5%社員共通の「やめる基準」がありました。

5%社員は、行動量が多いものの、時間を無駄に過ごすことを嫌うので、必要ないものをやめる基準がはっきりしているのです。

たとえば、5%社員は、平均して年に48・2冊も本を読みます。

その中に、途中で読むのをやめた本は含まれていません。

書店で本を購入する際は、タイトルと著者のプロフィール、目次と序章あたりを軽く見てから購入するかどうかを決めます。

しかし、そうして購入した本でも途中で読むのをやめるそうです。

ウェブセミナーには、平均して月に2・4回参加していますが、途中退席することがよくあるそうです。

やめる基準は、行動する前から決まっていて、読書とセミナーのやめる基準はこちらです。

・読書は、見当違いの内容が3回出てきたら読むのをやめる・ウェブセミナーは、自分に関係ない製品のスペック紹介が始まったら、途中退席やめる基準は、無駄なことに時間を費やさない効果と、さらに初動を早める効果もあるそうです。

途中でやめたり、軌道修正したりする基準とチェックポイントがあれば、行動を開始するときの精神的なハードルが下がります。

何かを始めるときに、不安や懸念がゼロであることは滅多になく、それがなかなか行動できない原因になったりします。

しかし、やめる基準が明確なら、迷わずにスタートダッシュがきれます。

たしかに、引き返すことができない選択肢を選ぶのには時間がかかりますが、「進んでも間違えれば引き返せばいい」「引き返すことができる」と思える基準があれば、選択に悩む時間が減ります。

こうして5%社員は行動量を増やしながら初動を早め、「やめる基準」で失敗を防ぎながら、確実にゴールに到達していたのです。

5%社員はやたらメモを取ります。

忘れるはずのないような、ちょっとしたことでもメモを取っていました。

ヒアリングでその理由を尋ねたら、手を動かしながらメモを取ることで記憶の定着を高めようとしていたのです。

このように筋肉を動かしながら学習することは、「シンクロマッスル学習」と呼ばれ、運動で脳を活性化させ、記憶力アップにつながることが科学的に証明されています。

米国アトランタのジョージア工科大学は、20分の筋トレで記憶力が10%向上した実験結果を発表しています。

また、スウェーデンの医科大学のカロリンスカ研究所に在籍したアンダース・ハンセンの自著『一流の頭脳』(御舩由美子訳、サンマーク出版)には、・座って学習したときよりも動きながら学習したほうが記憶の定着率は高く、記憶量も増える・運動すれば、集中力に加え、記憶力や創造性、ストレスへの抵抗力も高まるという旨の運動による学習効果が解説されています。

また、効率を重視する5%社員ですが、意外にもノートや手帳はOneNoteやNotionなどのデジタルノートではなく、アナログが多数派でした。

その比率は95%社員とほぼ同じです。

しかし、その活用法に違いがありました。

それは、メモを取る姿を「コミュニケーション」にも活かしている点です。

彼らはメモを取るという行為だけでなく、メモを取っている姿を相手に見せることを意識的にやっていました。

メモを取る姿は、相手に「あなたの話を真剣に聞いています」という傾聴の印象を与えます。

しかし、オンライン会議でメモを取ると、キーボード音がうるさくて、場合によっては話し手の邪魔になります。

そこで5%社員は、紙の手帳に手書きでメモを取り、その姿を相手に見せて、聞く姿勢を示していました。

また、備忘録としてメモを取るだけでなく、しっかりと読み返して記憶を定着させることも徹底していました。

文字情報を得ながら頭を整理し、次の行動に役立てようとしていたのです。

さらに、情報から得られたインサイト(洞察)を相手に伝えることを目指し、内省によって改善点を抽出しようと試みてもいました。

こうして5%社員は、メモを単なる「インプットの手段」だけではなく、聞く姿勢を相手に見せるコミュニケーションにも活用し、そこから人を巻き込んで、メモを取ることの汎用性を高めていました。

5%社員は最短距離で仕事を完了させますが、アウトプットのクオリティが低いわけではありません。

仕事を受けるときに相手の期待値をしっかり確認し、途中段階で相手とのイメージが合っているか確認をしながら作業を進めていきます。

録音データを聞いて印象的だったのは、仕事を受けたとき、上司に期限や作成プロセスを何度もなんども確認する5%社員の姿でした。

その様子は、相手にとってはちょっと面倒くさいかな、と思うぐらいでした。

しかし彼らがそこまで確認するのには意図がありました。

5%社員は、「仕事を受けた時点では、相手の完成イメージが固まっていないことがあるので、質問を重ねることで、一緒にアウトプットのクオリティを高めていく共同作業をしている」と発言していました。

たしかに相手の完成イメージが曖昧であれば、いくら時間をかけても、相手の要望を満たすこと、完成品に了解を得ることは難しくなります。

最初に相手の意図をかけ違えると、作業自体が無駄になってしまうのです。

だから5%社員は、何度も質問しながら相手の期待値を具体化して、相手にも発言してもらうことで、仕事を共同作業に持っていっていました。

そうして相手の期待値が確認できたら、集中して作業を継続します。

その様子を言葉にすると、「必要なことがわかれば、完了まで一直線に作業」という進め方です。

それは、何度もなんども確認をしながら、コツコツと作業を進めていくのではなく、多少の誤字や変換ミスがあってもどんどん文章を入力していくようなイメージでした。

期待値を超え続ける5%社員の仕事のやり方は、作業が緻密でコツコツと積み重ねるイメージでしたが、意外にも雑で粗く、がんがんと推し進めていくスタイルでした。

もちろん粗いままでは相手の期待値を超えられませんから、最後の最後で確認と修正作業をまとめて行っていました。

このスタイルは、大変参考になり、私も執筆作業に活かしています。

以前は確認・修正作業をしながら文章を書き進めていましたが、5%社員がやっていたように、誤字や脱字があってもどんどん執筆を進めるスタイルに変更しました。

各章ごとに確認をしたり、オンラインアシスタントに代理で校正してもらったりすることで、執筆スピードが2倍~3倍に上がりました。

6年前に初めての書籍を出したときは、半年以上かけて1冊の本を執筆しましたが、今は一か月~二か月あれば執筆ができるようになりました。

5%社員がポリシーとしている「丁寧で遅い仕事をしない」は、多くのビジネスパーソンも真似ることができます。

私が主催するパワーポイント資料作成塾の生徒2万3000人も、「丁寧で遅い仕事をしない」というポリシーを実践し、「資料作成時間を約10%削減」など、続々と効果を上げています。

悩みのない人はいないでしょう。

突出した成果を出している5%社員でも多くの悩みを抱えていました。

しかし、仕事中に悩んでしまうと、負の感情にエネルギーと時間が奪われます。

たとえば、期限が迫っている仕事に集中しなくてはいけないのに、過去の失敗を何度も考えてしまうことはよくあります。

過去の失敗を何回も思い出して考えることを「反芻思考」と言い、過去をくよくよ悩む反芻思考がうつ病の原因ともされています。

私自身も過去に二度うつ病になりましたが、そのときは、理不尽な指摘を寝る前に何度も考え思い出し、結果的に睡眠時間が短くなってうつ病を発症しました。

まさに反芻思考が原因でした。

悩みを持たないことは不可能です。

しかし、悩みのメカニズムを理解すれば、悩みが仕事の邪魔をするものにならないように抑えることができます。

では次に、5%社員がどのように悩みをかわしているのか、ヒアリングからわかったことを3つ紹介します。

①周りの目は幻想「自分で自分のことを客観的に見られます」と、自信を持って言える人はどれくらいいるでしょうか。

あまり多くはないはずです。

そのため「どう思われているか」という不安が膨らみ、「見下されたくない」「恥ずかしい思いをしたくない」など、ネガティブな思いや悩みを抱えてしまうのです。

これは、ある種の自己中心的な考え方で、厳しい言い方をすると、自意識過剰になって「自分がとても注目されている」と勘違いしている状態です。

しかし、世間や周りの人が、それほど特定の個人について、ずっと考えることはなく、自分が思うほど、周囲は自分を注目していません。

これがわかれば、「周りの目が気になる」という不安や悩みから解放されます。

5%社員は、ちゃんとこのことを心得ていました。

②未来は誰にもわからない、今に集中するこれだけ変化が激しいと、2年後や3年後、自分がどうなっているかなどわかりません。

豊富な資金と豊富な人員がある大企業ですら、未来を的確に予測することはできず、計画通りにいかないことだらけです。

ドイツのベンツやBMWは、創業当初、飛行機の製造・販売をしていましたが、第二次世界大戦が終わり、飛行機の売上が落ちたときに自動車産業に転換して成功しました。

ソフトバンクも当初は、ソフトウェアを再販する会社でした。

しかし今は、ビジョンファンドなどの投資会社に転換しています。

世界的大企業の事例からもわかるように、将来のことを考えても、何が起こるかわからないので、未来に不安を感じる時間は無駄だと考え、切り捨てましょう。

もちろん予測し得る準備はすべきですが、5%社員も「悩んだり心配したりする時間が活かされる可能性は低い」と発言していました。

5%社員は、長期的な目標など考えてもわからないから、今やることに集中することが最大の準備につながると、捉えているのです。

③得意なことに全精力を集中企業内の研修においては、「得意なことを伸ばす」より「不得意なことをカバーするものを習得させる」傾向にあります。

会社が求めるスキルレベルまで社員を成長させたい意図はわかります。

しかし、いくら頑張っても「苦手は克服できる」とは限りません。

時間をかけて苦手を克服できたとしても、得意なレベルまでもっていける可能性は低いのが現実です。

苦手克服のために時間を費やすなら、自分が得意なことに全精力を集中させて、他人よりも飛び抜けた成果を出すことのほうが、費用対効果が高いのです。

苦手なことに費やす時間を、どうやったら得意なことに振り分けられるか、しっかり企画しましょう。

苦手克服の努力をするときは、やめる基準を設け、これ以上の習得は不可能だと思ったら、得意なことにさらに時間をかけて、自身の希少性を高めましょう。

5%社員は、こうした工夫で、自分の強みを伸ばしていました。

そうして身につく希少性こそが市場での差別化要素になり、新ビジネスを生み出す原動力になるのです。

無駄な時間を過ごさないように、少しでも「無駄だ」と思えることがあると、どうにかしようと短気になる人がいます。

そういうタイプの人は、すべてのことがスムーズに進まないとイライラします。

とくに、自分ではなく他人の動作がゆっくりだと、「無駄だ」と思ってしまい、イライラする困った傾向があるようです。

この不機嫌な感情が他人に伝播すると、気まずさを生むだけで、「無駄をなくす」「時間の浪費を食い止める」という課題の根本的な解決にはつながりません。

さらに悪いことに、このイライラは悪循環のスタート地点になってしまうのです。

一度不愉快なことがあると、その感情は引きずられます。

そうして、また誰かが思い通りに動かないと、イライラが増長されます。

こうした感情のまま作業に集中し続けることはできません。

つまり、イライラは相手だけではなく、自分にも悪影響を及ぼすのです。

5%社員は、時間にシビアでせっかちだと思っていましたが、意外にもそうではありませんでした。

5%社員は、どこか余裕があって、動作もゆっくりしています。

話し方も穏やかで、相手のペースに合わせてゆっくりとうなずき、ゆっくりと話していました。

その理由を5%社員に尋ねると、「せっかちになると、むしろ時間を浪費する」との返答があり、驚きました。

せっかちになりイライラすると、怒りでエネルギーを無駄に使ってしまい、冷静な判断ができないと考えていたのです。

誰にでも相手に早く動いてもらいたいときがあります。

そんなとき5%社員は、感情的に行動を強制することは決してしません。

相手の立場に立って、どうすればお互いにメリットがあるのかを考える。

そして、相手のハートに届くようにゆったりとしたペースで語りかける。

こうした丁寧な関わり方を積み上げていました。

精神的な余裕がなくなると、正しい判断ができません。

そのような状態に陥ると、本来必要のないことに作業や時間を費やしてしまうと、5%社員は心得ているのです。

5%社員が怒ったり泣いたり、感情的になることがないわけではありません。

しかし、自律神経を整えたり時間に余裕を持ったりすることで、できる限り感情をコントロールできるように努めていることがわかりました。

誰にでも、弱みや苦手があるものです。

5%社員にも必ず苦手なことがあります。

しかし苦手なことに悩み、自己否定をすると、「自分はなぜダメなのか」「こんな私は将来どうなるのか」といった不安の波にのまれてしまいます。

自分を肯定できないと悩みが加速し、作業のパフォーマンスにも影響を与えてしまいます。

5%社員は、「自分は劣っている」という間違った認識をリセットするように心がけていました。

そのために実践していたのが、「自分の判断を尊重する」「ポジティブな言葉を使う」です。

たとえば、「この仕事に準備が必要かどうか」「この業務を続けるかどうか」などで迷ったときは、正しさや会議などの議論に固執することなく、自分の感覚で判断するようにしていました。

また、うまくいかないときは、なるべくポジティブな言葉に言い換えるようにしていました。

部下に能力不足を感じたときは、「未熟で使えない」ではなく、「成長余力が山ほどある」と言い換えて、自分も相手も前向きに行動をできるようにしています。

それは自分自身に対しても同様です。

「劣っている」という妄想をポジティブな言葉に変換し、自分の背中を押すことで、行動力を高めているのです。

COLUMN5%社員はなぜ野球よりラグビーが好きなのか5%社員の特異性をデータ分析すると、ラグビー好きが多いことがわかりました。

「ラグビーが好き」と答える5%社員は、95%社員の4・2倍もいました。

95%社員から圧倒的な人気があるスポーツは、野球やサッカー、ゴルフでした。

なぜラグビーが好きなのか、もしくは、なぜ過去にラグビーをしたことがあるのかヒアリングしたところ、生まれ持った体の大きさという回答を除くと、「瞬時の判断」「仲間意識」というキーワードが頻出してきました。

相手の動きに合わせてステップを踏んで交わったり、タックルに行く際の判断を瞬時に行っていたりするのが面白いと言うのです。

たしかに、野球やゴルフよりも、ラグビーのほうが瞬時の判断を求められます。

5%社員は意思決定のスピードが速く、すぐ行動に移す俊敏さがあるので、そういった点に、ラグビーと自分の共通点や親和性を見出しているのかもしれません。

また、「仲間意識」や「フェア」というキーワードも多く出てきました。

「試合終了後の敵チームとの抱擁や、選手同士や審判との関係性もラグビーの魅力だ」と言う5%社員が多くいました。

私は、ラグビーのルールを詳しく知らなかったのですが、5%社員のラグビー熱に圧倒され、気がつくとラグビーに魅了されていました。

ラグビーでは、審判と選手が笑顔で会話するシーンがよく見られます。

審判の判定に説明を求め、会話をしていました。

ほかのスポーツでの審判と選手の関わりでは、抗議する姿ばかりなので、ラグビー特有の関わり方に驚きました。

ラグビーでは、審判は客観的な第三者ではなく、仲間の一員として参加しているという感覚だそうです。

対戦する敵も仲間であり、審判も仲間であるという感覚を持っているようです。

5%社員は、そうした同胞意識の中で切磋琢磨し合い、苦労と達成感を共有し合うことで、ゲーム関係者全体が一体となる雰囲気に惹かれていました。

5%社員は一見ドライで、目標に一直線のイメージがありますが、思った以上になごやかで、柔らかい雰囲気で周りの人を虜にしていきます。

承認よりも達成に満足感を抱き、「チームの中の個人」という位置づけで、期待以上の役割を果たすのが5%社員です。

偶然かもしれませんが、スポーツでこれらを体現できるのがラグビーなのです。

 

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