レバレッジ・スケジューリングの三本柱
この章からは、時間投資の考え方に基づいた時間の使い方、すなわち「レバレッジ・スケジューリング」についてお話しします。
「レバレッジ・スケジューリング」の柱になるのは、「俯瞰逆算スケジュール」と「時間割」、そして「タスクリスト」の三つです。
まず「俯瞰逆算スケジュール」です。スケジューリングに欠かせないものと言えば、真っ先に思い浮かぶのが「手帳」。
しかし私は、ふつうの紙の手帳は使っていません。
代わりに愛用しているのがPDA(携帯情報端末、いわゆる電子手帳)と、一般的には壁にかけて使うA4サイズのカレンダー。
カレンダーは、絵や写真のついていない、一カ月ごとにめくるスタイルで、一日ごとに書き込めるスペースがあるものを使います。
「俯瞰逆算スケジュール」のポイントは、予定全体を俯瞰すること(「俯瞰」とは高いところから全体を見下ろすという意味です)。そして、成果を上げるためのタスクを逆算して考えることです。
ではこのカレンダーを使ってどのようにスケジュールを立てているのか、順番に説明していきます。
俯瞰し、ゴールから逆算する
私は、スケジュールは、俯瞰逆算スケジュールのような能動的な「アクティブ・スケジュール」と、受動的な「パッシブ・スケジュール」の二つに分けられると考えています。
「パッシブ・スケジュール」は順行型で、常に時間に追われている人のスケジューリングです。
見開き一週間、もしくは二週間の手帳に書いてあるのは、アポイントメントやミーティング、仕事の締め切りなど。予定が生じたら、それを手帳に書き込むというスタイルです。
そして出勤すると、とりあえずその日の予定だけ確認し、特に段取りを考えることもなく、目の前の仕事に手をつけていきます。
時間が余ったら、人に会ったり読書にあてたりしたいと思っているのですが、日々の予定に追われて、なかなかその時間ができません。
たまにアポイントメントやミーティングの予定が入っていないときがあっても、何をしたらいいか分からず、ただダラダラ過ごしてしまったり、同僚に誘われるまま飲みに行ったりしてしまいます。
では、「アクティブ・スケジュール」とはどういうものか。
「アクティブ・スケジュール」とは逆算型、多くの仕事量をこなして成果を上げつつ、プライベートを楽しみ余裕もある人たちのスケジューリングです。
アクティブ・スケジュールに必要なのは、まず明確なゴール設定です。
〇月〇日に新規事業を立ち上げる、売上を二〇%アップする、新規顧客を獲得する、本を出版する、といった成果につながる重要な課題をだいたい三カ月先まで見通します。
そして、私の場合は、これをカレンダーに書き込みます。
その上で目標達成のためにやらなければいけないことを、何段階かのステップに割り振り、ほかの予定とのバランスをとりながらスケジュールに落とし込んでいきます。
具体的には、目標が売り上げアップであれば、目標の数字をクリアするには何社から注文をとる必要があるか、そのためには〇日までに何社にアプローチする必要があるのか、そのためにはどんなリストや資料が必要か、リストや資料はいつまでにそろえる必要があるのか、と考えていくわけです。
このような作業は、三カ月先、ないし半年先まで見通して俯瞰逆算するから可能であり、明日のことは今日の仕事が終わったら、来週のことは今週の仕事が終わったら考えるという順行型では難しいでしょう。
今日何をすべきか、明日何をすべきかは、すべてゴールから逆算することで決まります。
もちろん周囲の人とのからみで、自分ではコントロールできないアポイントメントやミーティングも生じますが、成果を上げるために何を優先すべきなのかがはっきり分かっているため、不必要に振り回されることもありません。
また、締め切りを忘れていて、直前になってドタバタするということもありません。
卑近な例としてお話しすると、仕事とは関係ありませんが、私は二カ月に一度ぐらいのペースでマスターズという水泳の大会に出場しています。
この大会でタイムを上げるために、俯瞰逆算でスケジュールを組んでいます。大会に向けては、チームによるトレーニングが週二回あります。またそれとは別に、個人でトレーニングも行っています。
そこで、どの段階でどういうトレーニングをするか、どういうふうに体をつくっていくか、そのために今日はどういうトレーニングをすればいいかを逆算して考えているのです。
カレンダーこそベストのスケジュール帳
このような俯瞰逆算スケジュールを管理するのに便利なのが、カレンダーです。カレンダーなら、常に一カ月分を丸ごと俯瞰でき、数カ月先の予定を確認するのも簡単です。
将来のゴールから今日まで、どれぐらいの時間があるのかを、量としてビジュアルに把握することもできます。書き込みもできます。使いはじめると、これほど便利なものはありません。
これに対して、ふつうの手帳だと、一度に見渡せるのは一週間ないし二週間なので、俯瞰逆算には向きません。「木を見て森を見ず」の諺のように、直近の予定しか目に入らないからです。
たとえば数週間先の予定を書き込んでおいたものの、目先の日程に追われて忘れてしまい、直前になって手帳を見て慌てた、といった経験はないでしょうか。
また、締め切りが一カ月後の仕事の場合、ただ締め切りを気にしているだけでは、他の仕事のアポイントメントがどんどん入ってしまい、結局直前になっても時間がとれず、「徹夜しても終わらない」という事態に陥りがちです。
でも、カレンダーを使って俯瞰逆算していれば、ほかにたくさん仕事を抱えていても、全体のスケジュールの中からその仕事にあてられる時間を見つけ出し、あらかじめ「天引き」して割り振っておくことができます。
カレンダーの唯一の難点は、持ち運びに不便なところですが、そもそも携帯用につくられたものではないので、仕方がありません。二つ折りにできるようになるだけで、便利さはかなりアップすると思います。
いつかどこかが、手帳のように持ち運びしやすいカレンダーを商品化してくれることを願っているのですが……。
カレンダーを使っているかどうかは知りませんが、数々のベストセラーを生み出している作家の石田衣良さんも、スケジューリングは月単位で行っているそうです。小説を書く際も、まず全体像のフローチャートのようなものをつくり、逆算で構想を練るとか。
このことを知って、俯瞰逆算スケジュールは、成果至上主義で、なおかつ大量の仕事をこなしていく人にとっては不可欠な方法であることを、さらに強く確信しました。
「課題」がなければ「成果」もない
私はよく、社員に「君の課題は何だ?」と聞くことがあります。ここでいう「課題」とは、前述の「ゴール」と同じ意味です。課題があってこそ、なんとかしよう、より良くしようという頑張りもききます。
実際、課題をしっかり持っている社員は成長も速い、というのが私の実感です。
このような質問をすると、ずらずらと「問題点」を挙げてくる社員もいるのですが、私は「課題」とは、「問題点」のようなネガティブなものではなく、ポジティブなものだと考えています。
どうすれば今よりよくなるかを考えることが課題であって、「課題」と「成果」とは表裏一体の関係にあります。
たとえば、週五時間かかっていた仕事を一時間で終わらせるのも「課題」だし、英語を話せるようになるというのも「課題」です。
あるいはマネージャーになって部下のモチベーションを高めるにはどうすればいいか、独立起業するには何が必要か、仕事上で必要なキーパーソンに会うにはどういうアプローチをすればいいか、といったことも同様です。
何を課題(ゴール)とするかは人それぞれですが、俯瞰逆算スケジュールのすべては課題(ゴール)のクリア(達成)のために存在します。課題を設定し、俯瞰逆算して、スケジュールに乗せること。そこまでできれば、あとはそれを日々実行していくのみ。
それは、成果を上げるための、最も確実で、最もシンプルな、黄金のルールなのです。
「ランチ」「ディナー」も三カ月戦略で
カレンダーとは別に、もう少し詳細な予定表もあります。カレンダーに書き込むのは三カ月先、半年先を見越して設定した大局的なゴールが中心で、日々の細かい予定は、PDAに入力します。
そして、これもカレンダーと同じ一カ月単位の表示にして、A4のコピー用紙にプリントアウトしています。
本当はすべて一元化できるのが理想的なのですが、ゴールから俯瞰逆算して戦略を練るにはやはりカレンダーが便利で、細かい予定やパターン化した予定の書き込み・予定の変更を管理するのはやはりコンピュータが便利なので、このような形になりました。
手書きとデータ入力の使い分けについては、あとでまた少しお話しします。PDAの内容も月単位でプリントアウトしているのは、俯瞰逆算できるようにするためです。
たとえば、初めての人・旧知の人を問わず、人と会うことは、私の仕事の一部であり、重要な自己投資でもあります。
ただ、私は一年の半分程度を海外で過ごしているので、日本にいて人に会える時間は自ずと限られてきます。
そこで、私は平日の午前一一時半から午後一時半までをランチ、午後七時から一一時までをディナーとして、人に会う時間と決めています。
そして、スケジュール帳にあらかじめ「ランチ」「ディナー」の時間をブロックしておきます。
誰と会うのかが決まったら、「ランチ」「ディナー」というタイトルの代わりに、会う人の名前を入れます。
このようにしておくと、ペーパーさえ見れば、向こう三カ月のうちに、あと何日分空いているか、つまりあと何人と会えるかが明確になります。
そして、このタイミングで会っておかなくてはいけない人は誰なのかを考えながら、さらにその欄を埋めていくことができるのです。
このような見通しが立っていないと、今日はちょっと時間が空いたから会社の人間と飲みに行こう、となってしまう。
もちろんそのような親交を深めるための会食は楽しく大切なことなので、私もまったくしないわけではありません。しかし、場当たり的では、将来リターンを生んでくれる時間資産にはなりません。
準備期間一年弱で大学に現役合格
私が俯瞰逆算でスケジュールを考えるようになったのは、高校時代からです。きっかけは大学入試でした。
当時、私が通っていたのは、現役で大学に進学する人がほとんどいないような高校でした。その中でも私の成績はきわめて悪く、下から数えて数番目。
自他ともに認める落ちこぼれです。そんな私が、急に大学に行きたいと思い立ったのは高三の春。ただし親からは、現役で入れなければ即就職しろと厳命されました。
もちろん、そんな成績では合格するはずもありませんから、「これはまずい」と必死に勉強法を考えるようになったのです。受験まで、残された時間は一年弱。
としたら、基礎学力をつけ、苦手科目の穴をつぶして……などとじっくりやっていく余裕はなく、「合格に必要なことだけをやる」しか方法はありません。
そこでとったのが、「合格ラインに達するためには、一月までにこの問題集を終わらせる必要がある」「そのためには一二月までにこの参考書を終わらせる必要がある」「とすれば今日はこの範囲までやっておく必要がある」という逆算思考だったのです。
スケジューリングにカレンダーを使い始めたのも、このときからでした。
受験生には出張も会食もないので、受験日までのすべての計画を一つのカレンダーに書き込むことで足りました。こうして、一年弱の勉強で現役合格という成果を上げることができたわけです。
もしこのとき、逆算で考えず、たとえば「心を入れ替えて今日から授業をしっかり聞く」とか「教科書を一から覚える」という方向にエネルギーを注いでいたら、きっと進学はあきらめざるを得なかったと思います。
その後、大学を卒業し、企業に就職してからは、仕事の段取りを覚えたり、ルーチンワークをこなしたりするのにエネルギーを割かれ、さすがに俯瞰逆算はできませんでした。
ふたたびカレンダーを活用しはじめたのは、膨大な課題をこなさなくてはならなくなったアメリカ留学時からです。
それ以降、自分で事業を立ち上げた現在まで、カレンダーは俯瞰逆算スケジュールの必須アイテムとして、手放せません。
個人の「事業計画」をなぜ持たないのか
ここまでの俯瞰逆算スケジュールの説明を読んで、「そんなこと、会社でやってるよ」と思う人がいるでしょう。たしかにそのとおりなのです。
プロジェクトを立ち上げるときには、そこには必ず期限なり、納期なり、なんらかのゴールが存在します。
そこに向けて、チームとして計画を立て、準備を進めていくのは、プロジェクト・マネジメントの常識です。
一年後、三年後の売り上げ目標などを定めた、いわゆる事業計画も、企業であれば必ずつくります。
こうした数値目標から現在やるべきことを逆算し、それをクリアしていかなければ、業績を伸ばしていくことはできません。
その意味では、企業で働いたことがある人であれば、なんらかの形で、俯瞰逆算でスケジューリングしていくことを経験しているはずなのです。ところが、こと個人レベルになると、この発想ができなくなる人が意外と多い。
「あなた自身の三年計画は?」と尋ねても、「そんなこと、考えたこともない」という人がほとんどです。しかし、ここで紹介した方法は、けっして難しい方法ではありません。
特殊なスキルやノウハウも必要ありません。会社やプロジェクトで逆算を行っているのは、それがないとうまくいかないから。
ならば、それを個人のレベルでも徹底的に当てはめてみればいい。それだけのことです。
最近は手帳の使い方に関する本や雑誌の特集がよくありますが、そこに登場する方々に共通しているのは、まず「夢に日付をつける」とか「ビジョンを掲げる」など、目標設定を明確にしていることです。
成功している人は、皆、それぞれのやり方で、将来のゴールから逆算して、今何をすべきかを決めるというスケジューリングを実践しています。
ただ、ここまで読んで「よし、自分も」と思っても、ふだん使っている手帳が順行型のものだと、俯瞰逆算の発想はなかなか身につきません。
日常の仕事にしろ会食にしろ、目先の予定しか見えていないと、それだけで毎日が流されてしまい、時間の使い方を「投資」として考えるという意識も働きにくくなります。
そういう事態を防ぐためにも、まずは、月単位でスケジュールを管理することを強くおすすめします。
レバレッジ資格試験必勝法
ここで実例として、私が実際にワインアドバイザーの資格を取ったときのことをお話ししましょう。現在、私は日本ソムリエ協会認定の「ワインアドバイザー」の資格を持っています。
平均的な勉強期間は半年程度と言われていますが、私はこの試験に準備期間一カ月という短期で合格することができました。
そもそも私がこの資格を取ろうと思ったのは、単純にワインに詳しくなりたいという好奇心や、人と話すときの話題として便利ということもありましたが、一番は、投資先に飲食関連の業界があるので、ワインについても知っておくべきだと判断したからです。
とはいえ、試験勉強のために日常の仕事に支障をきたすわけにはいきません。そこでまず、試験日をゴールにして、逆算でスケジュールをつくりました。
○日のこの時間帯はフランスのシャンパーニュ地方をマスターし、翌日の○時からはボルドーを完璧に覚えるといった具合に綿密な計画を立てたのです。
このスケジュールをつくったのは試験日のおよそ一カ月前。集中的に勉強したのはわずか二週間です。
ふつうは最低でも半年間の勉強が必要と言われているので、無謀と言えば無謀なスケジュールです。
ここでポイントになるのが、知識のインプットや暗記にとりかかる前に、何をどの程度まで勉強したらよいのかという勉強法の検討に、十分な時間をかけたということです。
このような試験は、指定テキストはかなりボリュームのあることが多いのですが、実際に出題される範囲は限られています。
そこでまず、過去にどういう分野からどういう出題があったかを、徹底的に研究しました。これによって、集中的に勉強すべき部分とやらなくてもいい部分が明確になりました。
さらに、このような試験はだいたい六〇%できれば合格とされています。そこで、一〇%程度余裕を持たせて、七〇%程度を得点できる方法も徹底的に研究しました。
試験まで時間が少ししかないとなれば、勉強の計画を立てる時間も惜しい、すぐにテキストを読み始めなければ……と思いがちなのですが、そうやって見切り発車してしまうと、たいていの場合、試験日までに最後まで終わりません。
反対に、勉強以外の、ゴールに向けての最短距離を探すことに時間を投資すれば、実際の勉強にかかる時間を効率化し、合格という大きな成果を上げることができます。これがまさに「時間にレバレッジをかける」ということなのです。
時間家計簿でダラダラ時間をチェック
俯瞰逆算スケジュールと並ぶ、レバレッジ・スケジューリングのもう一つの大きな柱は、一日の「時間割」づくりです。時間割づくりのためにまず必要なのは、自分の時間分析。
家計簿をつけるように、自分がどういうことにどれだけの時間を使っているのかを時間家計簿をつけてチェックしてみるのです。家計簿をつけると、お金の出入りが分かります。
実は私は、昔から自分で家計簿をつけていました。
男が家計簿をつけるなんてとバカにされたこともありますが、「収入のうち、公共料金や食費などの固定費はどのぐらいなのか」「貯蓄や娯楽にあてられるのはどのぐらいなのか」「自己投資にどれぐらいお金をかけているか」など、記録に残すことで、重要なことが見えてきます。
これを、時間にも応用しようというわけです。
といっても、自分の一日の行動を五分刻みで記録するような面倒な作業は必要ありません。具体的にはまず、時間の使い方を、大きく四つのカテゴリーに分類します。
一つ目は自己投資である「インプット」の時間。この内容は人によって変わってきますが、私の場合は、人に会う時間、読書の時間などがこれにあたります。
二つ目は仕事をしている「アウトプット」の時間、
三つ目は食事や風呂や睡眠などの「生活」の時間、
そして四つ目は自由に使う「プライベート」の時間です。
そして、一日二四時間を、三〇分~一時間単位ぐらいで、四つのカテゴリーに分類して記録するのです。
これを一カ月程度続けてみると、自分の生活と仕事のパターンの大枠が見えてきます。そうすると、まず気がつくのは、何をしていたのかよく分からない「不明時間」の多さでしょう。
日頃忙しくて、プライベートの時間がないことに不満を持っている人でもそうです。
「不明時間」のほとんどは、大しておもしろくないと思いながらダラダラとテレビを見てしまった、ネットを見ていた、誰かと無駄話をしていた、うたた寝をしていた、などの非生産的な時間のはずです。
そこに気がついて、そういう部分を有効に使わないといけないな、と意識するようになるだけでも、時間家計簿をつけた意味があります。
成果を数値化して時間の「厚み」を分析
一カ月分の時間家計簿ができたら、これを「成果」の観点から評価します。対象になるのは、主に「インプット」と「アウトプット」の時間です。
これを、「成果につながっている」「成果につながるはずなのに、それだけの成果が上がっていない」「そもそもやる必要のないムダなこと」のどれにあたるのかを評価するのです。
このとき、一カ月に読んだ本の数、新しく会った人の数、一つ一つの仕事にかかった時間などを数値化してみると、とても役に立ちます。
時間家計簿を見ると、「インプットの時間が少なく、不明時間が多すぎる」「プライベートの時間が少ないと思っていたが、時間量としてはけっして少なくない」など、自分の時間の使い方の問題点がクリアになります。
それにより、四つのカテゴリーをどう配分したらいいのかという、今後の時間の使い方の指針が見えてきます。
数値化した成果をベースにして、自分なりの「ノルマ」を決めることもできます。ただし、ここで注意してほしいのは、記録を残すこと自体に労力をかけるのは本末転倒だということです。
厳密に「何時何分から何時何分まで○○した」などと書く必要がないのはもちろんのこと、フォーマットなども不要です。目的は、あくまでも自分が時間を効率的に使うための分析です。
大雑把な時間とその内訳(読んだ本の書名や仕事の内容など)が、自分で分かるようにメモしてあれば十分です。
一日分の時間家計簿をつけるのにかかる時間はせいぜい二~三分。
それすら面倒くさいと思う人もいるかもしれませんが、一度自分の時間を分析しておけば、ムダなことをやらなくて済むようになり、もっと面倒くさいことから解放されます。
すなわち、この作業も、ノーリスクで確実に儲けることができる、やらないほうが損をする「時間投資」なのです。
「インプット」の時間をまず天引きせよ
そして、これらの作業の仕上げとして行うのが、自分だけの「時間割」づくりです。前述の「インプット」「アウトプット」「生活」「プライベート」の四つのカテゴリーに基づいて、毎日○時から○時までは○○の時間、と自分の生活をパターン化してしまうわけです。
ポイントは、まず「インプット」の時間を「天引き」することです。
会社員の場合、仕事時間である「アウトプット」は、ある種の拘束時間として半ば強制的に埋まってしまいます。
これに対して、「インプット」の時間は、時間投資の元手として最も重要であるにもかかわらず、意識していないと、すぐほかの時間に
侵食されてしまいます。
そこで、「インプット」の時間を最優先で決めて、次に、「アウトプット」「生活」、最後に「プライベート」の順で割り当てていきます。
念のために述べておきますが、順番が最後だからと言って、「プライベート」の時間を無理に削る必要はありません。
よくないのは、そのつもりではなかったのに、気づいたら自由時間になっていたというケースなのです。
またせっかく確保しておいても、「プライベート」は自由時間だからと言って、やることをまったく決めておかないと、ただなんとなくダラダラ過ごして、「不明時間」と変わらなくなってしまいます。
そうならないように、あらかじめ、映画を観に行く、趣味にあてる、ショッピングをする、家族と旅行をするなど、中身も決めておくといいと思います。
ちなみに現在の私の場合、平日の朝は五時(冬は六時)に起床し、入浴も含めて二~三時間の読書の後、新聞・テレビのチェック、そして一日のプランニングをします。
また午前中の二時間はジムで汗を流し、昼は必ず誰かとミーティングを兼ねたランチ。午後二時ごろから仕事を開始し、七時までには終了。翌日一日のプランニングを軽くイメージしてから、必ず誰かとディナーに出かけます。
そして帰宅は夜一〇~一一時ごろ。これが私の日常的な「時間割」です。
「時間割」をつくれば頭も体も勝手に動く
こうして時間家計簿から時間割をつくる作業は、一年に一度ぐらいのペースで試してみるといいと思います。
仕事としてやるべきこと、必要な自己投資、プライベートでやってみたいことなどは、時間がたつと変わってくるはずです。
一年に一度はそれらを棚卸しして、そのときどきの自分のゴールに向けた時間割をつくるのがいいと思います。
ただし、この時間割は、あまり厳密なものである必要はありません。三〇分~一時間単位で区切れば十分です。
細かく刻んでも、よほど自分を律することが得意な人でなければ、そのとおりに行動するのは無理でしょう。
長続きさせるためには、ある程度のバッファーを持たせることが必要です。
そもそも私が「時間割」をつくっているのも、自分が面倒くさがりで意志が弱く、放っておけばついダラダラとサボってしまう人間だからです。
子ども時代を思い起こしてみてください。
小学校、中学校と、みんな時間割にしたがって生活してきたはずです、好むと好まざるとにかかわらず、とりあえずチャイムが鳴れば席に着き、またチャイムが鳴れば教室を飛び出す。
「一時間目は算数」「二時間目は国語」などとやることが決められているので、嫌いな科目でもやるしかない。
それにより、飽きっぽい子どもや怠けやすい子どもも、それなりに規則正しい生活を送ることができます。
逆に「いつでも何でも自由に勉強していいよ」と言われれば、たいていの子はだらけてしまいます。
好きな勉強は一生懸命するけれど、嫌いな勉強は何もしない。勉強嫌いな子なら、ひたすら遊んでしまうかもしれません。同じことが大人についても言えます。
時間割とは、自分自身にアポイントメントを入れておくようなもの。
一度決めてしまえば、毎日「今日は何をやらなければいけないのか」と頭を使わなくても、自動的に体が動くようになります。
「何をするかは、その日ごとに自由に決めていい」ということだと、よほど自分をきちんとコントロールできる人でなければ、何をしたらいいのか迷ったり、ダラダラと過ごす時間が多くなってしまうのではないでしょうか。
デキる人は自分の「時間割」を持っている
私の知っているビジネスパーソンにも、「時間割」的なスタイルをとっている人はたくさんいます。また、優れた経営者の中にも、生活のパターンを決めている人は多いようです。
たとえば花王の後藤卓也会長は、次のように述べています。私は管理職になる前からずっと夜は一〇時に就寝し、朝は五時起床です。土日も五時に起床しています。
ウィークデーはパターンがだいたい決まっていて、七時半に出社し、八時半までの一時間はアポなしで平社員でも誰でも部屋にきていいよという時間にしています(略)。
(夜は)七時、八時までが自分の働く時間だという習慣になってしまうと、そのような割り振りで仕事をするようになってしまうのではないでしょうか。(『時間とムダの科学』大前研一ほか著/プレジデント社)
これは、ファーストリテイリングの柳井正会長兼CEOとの対談での発言なのですが、これを受けて、柳井会長もほぼ同じように生活をパターン化していると話しています。
起きる時間から出社する時間、さらに出社して何かを考える時間まで、後藤会長のタイムスケジュールを後ろに一時間スライドさせれば、そのまま柳井会長のタイムスケジュールになるとか。
時間割を決めて、ムダなことに頭も時間も割かない。そこから生まれた時間資産を、重要な経営判断にあてて、成果を上げる。これがお二人に共通するスタイルと言えます。「時間割」のメリットと活用法については、次章でさらに詳しくお話ししたいと思います。
毎朝の「タスクリスト」はゴールへの最短ルート
レバレッジ・スケジューリングの三つ目の柱が、毎朝つくる「タスクリスト」です。「時間割」は、いわば時間の予算組みのようなもの。
あとは、それぞれの予算枠の中で、具体的に時間をどう使うかが重要になります。タスクリストのつくり方も、もちろん俯瞰逆算です。
必ず前述のカレンダーを見ながら、そこで設定したゴールをクリアするために、いつの時点で何をしなければならないか、そのためには今日、具体的に何をすべきかというところまで、落とし込みます。
また、私の場合、今はオフィスでの仕事時間は午後二時ごろから七時ごろまでと決めています。会社勤めの人に比べるとかなり短い、たった五時間ですから、できることは限られます。やるべきこととやらなくてもいいことの取捨選択も、タスクリストの重要な役割です。
私にとってタスクリストをつくる作業は、地図を見て目的地へ行くための最短ルートを探すようなものです。
毎朝、これをつくるのにかかる時間は、せいぜい五分程度ですが、これによってゴールに到達できるかどうかが決まるわけですから、きわめて重要な時間投資と言えます。
ただし、このタスクリスト自体は、コピー用紙への走り書きで、他人が見ても判読できないほどグチャグチャです。
毎日新しい紙に替えることもありますが、それも気分しだいで、前日のものに書き加えることもあります。終わったものは線を引いて消していきます。特にフォーマットも決めていません。
人に見せるものではないし、格好いいものにしようとすると、リストをつくることが面倒になってしまうからです。
自分が面倒くさがり屋であることは、これまで何度もお話ししてきましたが、私の周囲の経営者を見ても、成功している人は、実は、かなりの割合で面倒くさがり屋です。
一見、几帳面そうに見えても、本音ではできるだけラクをしたいと思っている。
「物事をできるだけ簡単に」という志向は、長続きして、大きな成果を上げるための大切な条件だと思います。
成果を生み出さない「ToDoリスト」
「これって、ToDoリストのことですよね。それなら自分もつくっています」と思う人も多いでしょう。
たしかに一般的に、その日一日にやるべきことを書き留めたリストは「ToDoリスト」と呼ばれることが多いようです。
私が「ToDo」ではなくあえて「タスク」と呼んでいるのは、「タスク」には「自ら選んでやる」という語感があるのに対し、「ToDo」だと「やらなければならない」「やらされていること」という語感が強くなるからです。
前述の「アクティブ」と「パッシブ」になぞらえて言えば、「タスク」が「アクティブ」、「ToDo」が「パッシブ」。
「タスクリスト」が、あくまで成果を出すための俯瞰逆算リストであるのに対し、「ToDoリスト」は、目先の仕事をこなすことに主眼を置いた、順行の積み上げ型リスト、というイメージです。
また「ToDoリスト」には、「A」「B」「C」といった優先順位をつけたほうがいい、とよく言われます。
しかし私がつくっている「タスクリスト」には、優先順位はついていません。最重要事項はどれかなどと、わざわざ考える必要はないと思うからです。
そもそも「タスクリスト」とは、「成果を上げるために、今、必要な仕事」のリストです。あえて優先順位をつけるなら、これらはすべてAランクです。
一方、BランクやCランクに位置づけされるのは、「今やらなくてもいい仕事」「やってもやらなくてもいい仕事」です。
俯瞰逆算スケジュールとは、すでにゴールが決まっていて、それに向けて何をやるかを考えるものです。
時間が無限にあるなら、思い浮かぶ仕事をすべてリストアップするのもいいかもしれません、しかし時間は限られています。
制限時間を意識していれば、成果につながらない仕事は最初から排除されます。リストの中身はすべてAランクにしかなりません。
逆に、厳しい言い方になりますが、ランク付けが必要なリストは、限られた時間の中で成果を上げるように取捨選択されていないリストと言えるのです。
ただし、「タスク」ではないけれど重要なことのために、「備忘リスト」はつくっています。
「ToDo」的なものや、ランチやディナーの店の予約、あるいは「電球を買う」など、些細でも忘れてはいけないことを書き出したものです。
このようなリストをつくるのは、「誰かに電話しなくちゃいけなかったんだけど」といったような、思い出す時間をカットするため。
読書用ライトの電球が切れているのに買い忘れて、読書しようとするたびにストレスがたまるのを避けるため。
言ってみれば一〇円玉貯金のような時間投資ですが、これらのチリツモ(塵も積もれば山となる)効果もバカになりません。
一枚のチェックリストの大きな投資効果
「タスクリスト」「備忘リスト」とともに、もうひとつ、よく活用しているのが「チェックリスト」です。
これは、第一章でお話しした、ルーチンワークの「仕組み化」の一環と言えます。
たとえば私は日本ファイナンシャルアカデミーという会社の社外取締役を務めていますが、ここでは、年に一〇〇回以上、一般の人たちが投資・会計・起業などについて学べるセミナーを開催しています。
開催までに行うことは、講師の選定・依頼、案内状の作成・送付など、どのセミナーでもほとんど共通しています。
これを毎回、「あれをやって、これをやって」と考えながら進めていたのでは、抜けが出る可能性が高くなります。毎回同じことをやっているのに、いちいち考えるのは時間のムダでもあります。
そこで私たちは事前に何をやるべきかチェックリストをつくり、それを見ながら仕事を進めることにしています。
当日までにすべきことはもちろん、終わったあとのフォローまで含めたリストをつくり、全部の工程をチェックしたら、その仕事は終わりというわけです。
チェックリストさえあれば、担当者が変わった場合の引き継ぎも簡単です。
リストを見ればすべきことは全部書いてあるので、新しい担当者は、一から覚えたり、考えたりする必要がありません。
またリストには単にやるべきことをリストアップするだけでなく、それぞれの仕事を何月何日までに済ませるかも、開催日の日付から逆算して入れています。
こうしたセミナー開催のノウハウをつくり上げるまでには、多大な時間と労力が費やされています。
チェックリストをつくるとは、それを「仕組み化」し、再現性を持たせることなのです。
これにより、ゼロから段取りを考えたり、大事なことを抜かしてしまってやり直したりする時間がなくなり、多くの時間資産が生まれます。
その時間を「もっとセミナーの内容をよくする方法はないか」と付加価値を高めるために使う、すなわち再投資することで、より大きな成果を得ることができるのです。紙にしてたった一枚のことですが、その投資効果は絶大です。
出張の荷造りもチェックリストで効率化
チェックリストは、会社での仕事に役立つだけではありません。たとえば私は、出張時のチェックリストをつくることで、出張の準備を大幅に効率化することができました。
私は毎月最低一回は海外に出張があり、そのたびに荷造りが必要になります。誰でも経験があるでしょうが、荷造りというのは、けっこう面倒な作業です。
必要なものを、思いつくままにカバンやトランクに詰めていくと、家の中をあちこち動き回らなければなりません。
また、後になって入れ忘れに気がついて、いったん詰めたものを取り出し、また詰め替えるなどということも、よくありました。
それではあまりに非効率で時間のムダだと気づいたので、荷造り用のチェックリストをつくることにしたのです。
資料やパソコン回りなど仕事道具はもちろんのこと、二日間の出張ならTシャツは何枚、靴下は何足といったこともリスト化してあります。
ものを取りにいく動線が短くなるよう、どの順番で揃えるのが最も効率的かも考え、全部チェックし終われば、荷造りが自動的に完了するようにしました。
このチェックリストをつくるまでは、下手をすれば二~三時間もかかっていた荷造りが、三〇分足らずでできるようになりました。
ちょっとしたことですが、回数が重なれば大きな投資効果となります。
小さなこともリストにして習慣づけ
ほかにも、日常生活で習慣化したいことは、どんなことでもチェックリストにしています。
「やろうと思っていたけれど忘れてしまった」ことを思い出したり、後になってやり直したりすることは、とても時間のロスだからです。
たとえば、しばらく前につくったリストには、「判断は楽しいか楽しくないかで決める」「時間とコストを比較して、費用対効果を考える」「仕組み化ができているか」といったビジネスに関係することから、「仕事を終えたら、机の上を片づける」「水回りをきれいに洗う」「食器はすぐに洗う」「脱いだ靴は揃える」といった子どもの躾のようなことまで書いてあります。
こういうことが常にできている人にとっては、くだらない内容に見えるかもしれませんが、私の場合、紙に書いておかないと、すぐに忘れてしまいます。
いつでも見られる形にしておきさえすれば、忘れてしまってストレスをためたり、「自分は最近たるんでるんじゃないか」などと、あいまいに悩むこともなくなります。
リストさえ見れば、できているかできていないかは即座に判断できます。できていればOK。できていなければ、習慣になるまでリストを見返します。
ここに挙げた項目はずいぶん昔につくったもので、毎日見返していましたから、紙はもうボロボロです。
さすがに最近は毎日見なくても、かなり実践できるようになりましたが、それでもときどき見返して、忘れていることがないか、チェックするようにしています。
パソコンと手書きをどう使い分けるか
私が実践している「レバレッジ・スケジューリング」では、パソコンやPDAとカレンダー、手書きのメモを併用しているので、どうやって使い分けているのか、どうしてパソコンに一元化しないのかと、よく尋ねられます。
これにはあまり深い理由はなく、どの方法が最も効率的かを実際に試してみて、パソコンが便利なものはパソコン、手書きが便利なものは手書きで行っているだけのことです。
たしかに、すべての情報管理をパソコンに一元化したほうが、整然として格好いいかもしれませんが、パッと思いついたことをその場でメモするなどの作業は、パソコンより手書きのほうが便利です。
以前は、タスクリストをパソコンに入力していたこともあったのですが、パソコンで管理するだけのメリットがないと分かったので、やめてしまいました。
また、三カ月先、半年先のゴールから俯瞰逆算して戦略を練る作業には、カレンダーが一番便利なことも前にお話ししました。
逆に、パターン化したルーチンワークや、定期的な予定の管理は、パソコンで行うのが便利です。
私の場合、アウトルックのスケジュール機能をPDAと連動させて使っているのですが、「毎週月曜日に入る打ち合わせ」「月末に必ず入る出張」「今週一週間、毎日しなければならない会議」といったものは、「定期的な予定」として設定することで簡単に入力できます。
毎週一回、必ずやる仕事を手書きにすると、一年では五〇回も書き込まなければなりません。パソコンを使えば、その分の時間を効率化できます。
人に会う予定も、誰といつ、どこで会ったかを入力しておけば、後日、「あの人に会ったのは、いつだったかな」と思ったときも、検索機能を使ってすぐに調べられます。
プライベートなスケジュール管理も同様です。私の家では猫を飼っていて、五日に一度、トイレシートと砂の交換をしています。
これを記憶だけに頼ると、「前に交換したのは三日前だっけ?四日前だっけ?」と忘れがちです。
しかし「定期的な予定」として一年分入力しておけば、パソコンを開けば自動的に交換する日が分かります。
つくりっぱなしにせず常に持ち歩く
要は、「パソコンでやるか」「手書きでやるか」の二者択一で、厳密に考えすぎないということです。
形式にこだわって一元化を優先すれば、どうしても面倒くさい作業を我慢してやらなければならないこともあり、それでは本末転倒です。
それよりも重要なのは、そこでつくったカレンダーや予定表、タスクリストなどを、つくりっぱなしにしないで、絶えず目で見て確認することです。
カレンダーや予定表を見れば、目標に向けた大きな流れの中で、現在の自分がどこまで近づいているかを確認することができます。
今後の自分のあり方をイメージしやすくなるし、こうすればいいというアイディアも浮かびやすくなります。
私はバスタイムには、数冊のビジネス書とともに、必ずカレンダーとタスクリストを持ち込みます。
また、パソコンで管理しているスケジュール表やチェックリストも必ずプリントアウトして持ち歩きます。
そして朝のプランニングのときだけではなく、ちょっとした時間の合間に絶えず目を通し、中味を意識に定着させるとともに、さらにもっと効率化できないかを常に考えるようにしています。
「リマインダー」機能で組織の時間を効率化
パソコンを使ったスケジュール管理に関連して言えば、提出物の締め切りの管理などは、ヤフーほか各社が提供している無料の「リマインダー」サービスが便利です。
「リマインダー」とは「思い出させること」の意味で、あらかじめ設定しておいた予定が近づくと、メールなどで通知してくれるサービスです。
「リマインダー」は、個人で使うほか、チームの予定管理にも便利です。
たとえば、社員に月一回、レポートを提出してもらうとき、あらかじめ日時を設定しておくと、自動的に各社員のパソコンに「今日が提出日」というメールが送られます。
これにより、提出を忘れていた社員も、「今日だった」と思い出しますし、こちらは催促をしないで済みます。
これだけでお互いの時間は、ずいぶん効率化できます。「リマインダー」には、ほかにもいろいろ活用法があります。
先に、日本ファイナンシャルアカデミーという会社では、セミナー開催の全工程をチェックリストにしているという話をしました。
その工程の中で特に重要な仕事の一つが、講師への講演依頼です。
日本ファイナンシャルアカデミーは、一般にはまだあまり知られていない会社なので、講師に講演を依頼しても、ほとんどの講師候補者は会社のことを知りません。
依頼する際には、まず会社の紹介から始める必要があります。
ところが、これを忘れてしまう社員が多い。社名だけ名乗って、いきなり講演の話を始めてしまうのです。
講演を引き受けてほしいという気持ちが先走っているためだと思うのですが、これでは、逆効果です。
そのため、会社ではある時期、社員に「ちゃんと会社について紹介するように」という指導を強化しました。
そうすると、最初のうちは徹底されるのですが、しばらくするとまた元に戻ってしまいます。
ミーティングのたびにチームのリーダーが、「ちゃんと紹介しているか」「紹介しなかった人は、次回からは紹介するように」と注意を促すようにもしてみたのですが、たとえ二~三分のことであっても、ミーティングの貴重な時間がそのようなルーチンで削られるのは、効率的でありません。
そこで、あれこれ試行錯誤した結果、現在ではヤフーの「リマインダー・メール」を使っています。
「初めての講師候補者に依頼する際には、まずこういうふうに、会社の説明から話を始めなさい」といったトーク・マニュアルのようなものをつくり、これを毎週月曜日、全社員に自動的に送るようにしたのです。
メールが届けば、そのたびに「そうだ、まず会社の紹介をするんだった」と意識づけられます。中身を読めば、どういうふうに紹介すべきかも分かる。
これを毎週繰り返しているうちに頭の中に刷り込まれ、会社紹介を忘れることはぐんと減りました。
そもそも社員が会社紹介をしないのは、「紹介なんてする必要ない」「したくない」と思っているからではなく、単なる「うっかり」です。
そういう社員に「忘れるな」と叱ったところで、あまり効果はありません。
お互いに労力を使うし、気分もよくありません。それよりも大事なのは、うっかり忘れない仕組みをつくることなのです。
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