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第五章時間密度を高める「チリツモ」技術

目次

成果を前提にした「チリツモ」効果

この章では、私が日常の行動の中で実践している、時間密度を高めるためのテクニック的なことについてお話ししたいと思います。

本書の冒頭で、五分、一〇分を節約するテクニックだけを知っていても、大きな成果は出せないとお話ししました。

しかし、その「チリツモ効果」はやはり無視できません。

また、ここでご紹介するのは、単にかかる時間を減らす「節約」ではなく、あくまで「投資」、すなわち「時間資産」を増やして「成果」を上げることを前提にしたテクニックです。

読者の方も、ぜひそのことを意識しながら採り入れてほしいと思います。

一冊一万円の雑誌でも全部を読むな

まずは雑誌の読み方です。前著『レバレッジ・リーディング』にも書きましたが、本と並んで、ビジネス誌も私の重要な情報源です。

たとえば私は、ずっと前から「日経ビジネス」を定期講読しています。かなりボリュームがあるので、全部を読もうとすると相当の時間がかかります。

せっかくお金を払って買ったのだし、勉強になるからと、全部を読まなければもったいないという人がいます。

しかし、雑誌の中には、自分とはまったく関係のない記事もあります。それまで読むのは、逆に時間と労力がもったいないと思います。

私は一冊のうちの何十ページも読むこともありますが、号によっては数ページしか読みません。お金は貯めることも稼ぐこともできますが、時間は取り返しがつきません。

一〇〇〇円の雑誌を、もったいないからと全部読んで、二時間かかったとします。でも必要なところだけ読むのであれば、一〇分で済む。それによって得られる一時間五〇分は、一〇〇〇円では買えません。

たとえ一冊が一万円の雑誌であっても同じことです。ただし、そのような読み方には自分にとって必要な情報だけを見分ける選択力が求められます。

特に雑誌は、とりあげるテーマが本のようにピンポイントではないので、記事の取捨選択がより重要になります。

私は、具体的には、目次に目を通したあと、ページをざっと繰って、タイトルとサブタイトルだけ流して読みます。

そのとき、気になるページの端を折っておくか、あるいはそのページを切り取っておくかします。これにかかる時間はほんの数分です。そして、選んだ記事を読むのは隙間時間と決めています。日常の生活には、必ず隙間時間が存在します。

電車やタクシーに乗っている間の移動時間のみならず、待ち合わせで相手がちょっと遅れる場合もあるでしょう。

そのような場合のために、読みたい記事を持ち歩いていれば、わずかな時間でもムダに過ごさずに済みます。わざわざそのための時間を設けなくても、雑誌を読むのは大体それでカバーできます。

新聞についても同じです。私は日本経済新聞と朝日新聞を取っていますが、もちろん全部読むことはありません。全体にざっと目を通した上で、限られたところだけを読むようにしています。

ちなみに、読み終わった雑誌は、必要なページを切りとるかメモした後、容赦なく捨てます。

読み終わったら即座に捨てるようにしているのですが、定期的に読んでいるものだけでも何誌かあるので、気をつけていてもすぐにたまってしまいます。

そこで、前にもお話ししたように、一週間に一回、雑誌を捨てる日をスケジュールに組み込んでいます。

読もうと思って切り取ったページも、大雑把なカテゴリーに分け、クリアファイルに放り込んでおくだけ。

隙間時間に読んだら、基本的には捨ててしまいます。必要な情報だけは簡単にメモしておき、記事そのものを整理してファイリングしたりはしません。

名刺のベストな整理法は「捨てる」こと

雑誌にかぎらず、私は、究極の整理法は「捨てる」ことだと考えています。私にとって、掃除や整理の目的は、「探しものをする時間をなくす」ことに尽きます。

資料の山を探す、引き出しを探す等々、ほとんどの「探しもの」は、要らないものの中に必要なものが紛れこんでしまうことから生じます。

だとすれば、その一番の解決策は、要らないものを捨てること。

しかも「捨てる」のに時間はかかりません。

したがって、私は名刺も整理せずに捨てます。

毎日のランチ、ディナーその他、日々いろいろな人に会っていると、名刺はどんどんたまっていきます。

以前、ローロデックス(回転式のホルダー)を使っていたこともあるのですが、いちいちホルダーに入れるのが面倒くさく、すぐにいっぱいになってしまうので、やめました。

今はデスクのわきに、金融関係、仕事関係、メディア関係、友人関係、それに飲食関係など、大雑把なジャンルに分け、剥き出しで積んであるだけです。

山が積み上がってきたら、捨てる。

あまり大きな声では言えませんが、ざっと見て、顔が思い浮かばなければ、その名刺は捨てます。

その中に重要な人の名刺があったとしても、本当に重要なら必ずまたどこかで会えると思っています。

また、先方が私を必要としているのなら、先方から連絡してくれるでしょう。

実際、このやり方にしてからずいぶん経ちますが、トラブルが生じたことは一度もありません。

ノートPCより便利な「リモートメール」

雑誌の切抜きを読むのに加えて、外出中の隙間時間によくするのは、メールのチェックです。

これには、携帯電話向けの「リモートメール」というサービスが絶対おすすめです。

私は出かけるときにはノートPCも携帯していますが、PCはどうしても立ち上げに時間がかかるし、いつでもどこでも広げられるわけではありません。

「リモートメール」は、fonfun(旧ネットビレッジ)という会社が展開している、PC宛のメールを携帯電話でチェックできるサービスです。

料金は月額二一〇円。

PC宛のメールを携帯に転送して読んでいる人も多いと思いますが、それとの一番大きな違いは、携帯からサーバーにアクセスすると、メールの件名だけが表示される仕組みになっているので、必要なメールだけ受信できるという点です。

PCのアドレスを使って、返信や新規メールの送信ができるのも便利です。

添付ファイルの中も見ることができます。

もっぱらメールチェックのためにノートPCを持ち歩いているという人であれば、このサービスで十分代用できます。

また、一日中外回りの日でも、メールをチェックするために、いったん会社に戻るといったことも不要になります。

有名なサービスなのであえてお話しするまでもないと思っていましたが、知人に話してみると案外知らない人が多いので紹介してみました。

詳しい利用方法や申し込みは、「リモートメール」で検索すればすぐ分かります。

テレビはリアルタイムで見るな

テレビにも、投資効果の高い見方とそうでない見方があります。

基本的に、私はテレビをリアルタイムでは見ません。

見ると決めている番組はいくつかありますが、それらはすべてHDレコーダーに録画しておいて、不要なシーンをカットしながら、一・五倍速で見ます。

たとえば朝は、マーケット情報をチェックしたいので、テレビ東京の「Newsモーニングサテライト」を見ています。

しかし一時間の番組の中には、当然ながら、私には興味のない話題や情報があります。

CMの時間もあります。

必要なところだけを見ようと思っていても、テレビというものは、つけていると、ついダラダラと見てしまいがちです。

たとえほかのことをしながらでも、朝のクリアな頭を、一時間もテレビに向けるのはもったいない。

でもこれを録画して、直後に必要な箇所だけを一・五倍速で見れば、わずか一〇分程度で済みます。

朝の貴重な時間帯に、五〇分の時間資産を生み出せるわけです。

また、私はドラマの類は見ないことに決めています。

話題になったものだけ、情報収集の意味で、録画したものを駆け足で見る程度です。

けっして嫌いではないのですが、連続ドラマなどの場合、必要なところだけ抜き出して見るというわけにはいかず、時間の消費量が半端ではありません。

おもしろい内容なら、なおさらです。

その意味では、自分の意志の弱さを知っているので、近づかないようにしている、と言うのが正確なのかもしれません。

私は、テレビ自体は、とても有益なメディアだと思っています。

情報が集約され、しかもビジュアルで表現されるので、短時間で最低限のことを理解するには最適です。

たとえば経済に関することなど、本や新聞では理解できなかったものが、テレビで分かったりすることもあります。

ただテレビで問題なのは、時間の使い方が受動的になってしまうということです。

リアルタイムで、ズルズルと見てしまうのは完全に「パッシブ・ウォッチング」です。

しかし、録画して、見るべき部分を取捨選択できるようにすれば、自分で時間をコントロールできる「アクティブ・ウォッチング」に変えることができます。

これは、本を重要なところに絞って読む「レバレッジ・リーディング」の方法論をテレビに応用した「レバレッジ・ウォッチング」と言ってもいいでしょう。

機器のマニュアルは必ず読む

携帯電話、パソコン、デジカメ、MP3プレーヤー等々、私たちの生活はさまざまな機器に囲まれています。

機器にはそれぞれ、マニュアルがついています。

そんなマニュアルをいちいち読むことこそ、ムダな時間の使い方の最たるものと考える人は多いでしょう。

しかし私は、こうした機器のマニュアルを、必ず全部読むことにしています。

携帯電話を買い替えれば、あの分厚いマニュアルも一通り目を通します。

なぜ、そんな「面倒くさい」ことをするのか。

それは第一に、使える機能があるのに使わないのは、買うのに要したお金がもったいないだけでなく、時間資産の点でも損失だと思うからです。

たとえば、携帯電話のリダイヤル機能。

マニュアルなど読まなくても、誰もが当たり前のように使える機能ですが、もしこれが、マニュアルを読まなければ分からない機能だったとしたらどうでしょう。

いちいち何ステップも要して相手の電話番号を探し出さなくてはいけなくなりますから、知っている人と比べて、大変な時間の負債をかかえることになります。

これは極端な例だとしても、知らないことで多くの時間をロスしている機能は、ほかにもたくさんあります。

マニュアルを読む理由の第二は、使っているうちに機能を知りたくなり、あらためてマニュアルを読むことのほうがはるかに面倒だからです。

機能を使いたいと思ったそのときに、いちいちマニュアルを参照していたのでは、それだけでストレスがたまります。

また、機器を買ってしばらく時間が経っていたら、マニュアルがどこかにいってしまっていて、探すのに時間がかかるかもしれません。

つまりマニュアルを読んでおかないと、それよりもはるかに面倒くさいことが、その機器を使っている間中、続く可能性があるわけです。

マニュアルを全部読むと言っても、一字一句読むわけではなく、基本は雑誌の読み方と同じ。

全体の見出しや小見出しをザッと見て、使いたいと思う機能のページの端を折っておく。

そして、その場で一度、実際に試してみる。

そうすれば、もう次からは使えるようになります。

こういうものは、一度操作してみればだいたい忘れないものです。

使っているうちにもっと詳しく知りたくなっても、一度目を通してチェックしてあるので、調べたい箇所はすぐ見つかります。

この一連の作業にかかる時間はせいぜい一時間程度。

この投資を惜しんだことでかかえる時間の負債は、一時間どころではありません。

だとしたら、読んだほうが絶対に得ではないでしょうか。

電車に乗らないという生き方

私は最近、ほとんど電車に乗りません。

ちょっとした移動には、もっぱらタクシーを利用することにしています。

その理由はやはり、時間です。

電車に乗るには、まず駅まで歩く必要があります。

それに電車の到着までにも時間がかかる。

乗車中も、混んでいれば何もできません。

空いていればiPodを聞いたり、本や雑誌を読むぐらいのことはできます。

座れれば、メモを書いたり、ノートPCを広げることもできなくはありませんが、スペースが狭いし、隣の人に見られてしまうおそれがある。

携帯電話で通話することもできません。

その点、タクシーなら、これらのことがすべてできます。

人に聞かれたくない難しい商談も可能です。

一人になってものを考えたいときや、ちょっと疲れを取りたいときにも向いています。

もちろんコストがかかることですし、価値観の問題でもあるのですが、私は会社員だったころからこのように考え、神奈川県内の自宅から会社のある品川まで、タクシーで通勤していたこともあります。

当時の私の自宅から会社までは、電車だと、三本を乗り継いで約一時間かかりました。

しかも朝のラッシュ時は、まったく身動きがとれないほどの混雑です。

私が、新卒として初めて出社した日、挨拶で最初に言ったのは「満員電車に乗らずに済む人生にしたい」ということでした。

それほどに私は満員電車が嫌いでした。

そこで私は、まず空いている早朝の始発電車で、座って途中の駅まで行き、そこから会社までタクシーを使いました。

片道二〇〇〇円程度で、帰りも利用したので往復約四〇〇〇円。

もちろん自腹です。

経済的にはきわめて厳しかったのですが、それでも通勤時間に本を読んだりレポートを書いたり、通勤中にストレスをためないことでオフィスでの仕事に集中できるメリットを考えれば、けっしてもったいないとは思いませんでした。

私にとっては、きわめてハイリターンな時間投資だったのです。

特急電車の三〇分より各駅停車の四五分

まだキャリアの浅いビジネスパーソンなど、そう簡単にタクシーには乗れないとしても、同じような発想は電車でも可能です。

たとえば始発駅から乗るなら、三〇分早めに家を出て何本か電車を待ち、確実に座るという手があります。

混雑した車内と違ってホームなら、立っていても本や新聞が読めます。

特急や急行ではなく、あえて比較的空いている各駅停車に乗るのもいいでしょう。

特急に乗ってすし詰め状態で立っているだけの三〇分は、何も生み出さない「消費」ですが、各停に乗り、何かをしながら過ごせる四五分は、資産を生み出す「投資」です。

タイムマネジメントにおいて重要なのは、時間を節約することではなく、時間密度を高めることなのだということが、ここからも分かると思います。

「三〇分の自分時差」が生む大きな付加価値

「三〇分早め」が有効なのは朝の通勤だけではありません。

たとえば、前にも触れましたが、私は昼食の時間を一一時半からと決めています。

都心のランチタイムは、通勤電車に負けず劣らず、どの店も混雑するものです。

特に一二時を回ったとたん、席に着くまで並ばされるし、料理が出てくるまでも待たされます。

店内は騒がしいし、ほかに待っている人がいれば急かされる気分にもなります。

店の人も、客をさばくのに手一杯で、当然サービスの質は落ちます。

これに対して、三〇分前に行けば、待たされることもないし、ゆっくり食べることもできます。

店の人の対応も丁寧です。

ランチの時間をリフレッシュして気持ちよく過ごせるかどうかで、午後の仕事へのモチベーションが大きく違ってきます。

私のように、人と会って話をするのが目的のランチであれば、なおさらです。

ほかにもジムに行く、飛行機にチェックインするなど、みんなが行動を始める三〇分前にアクションをおこす「自分時差」は、とても大きな付加価値をもたらしてくれます。

都心に住むという生き方

通勤のストレスをなくすには、たしかに三〇分早く出るのも、タクシーを使うのも有効です。

しかし究極的になくすには、通勤自体をなくすという手があります。

つまり会社の近くに住む。

会社が都心にあるなら、都心に住むということです。

現在、私は都心にあるオフィスのすぐ近くに住んでいますが、このメリットははかりしれません。

単に通勤がないだけではなく、いろいろな情報が入ってきやすいし、人に誘われればすぐに出かけることもできます。

それだけチャンスを得やすいということです。

もちろん、ライフスタイルは人それぞれです。

会社からは遠くても、郊外の、より広いスペースが確保できるところに住むというのも、一つの選択です。

しかし、仕事に付随する時間密度を高めるという一点だけに絞って考えれば、職住隣接が断然有利です。

会食の機会なども利用して、アクティブに自己投資をしていきたい人にとって、都心の刺激はきわめて魅力的です。

会社員だったころ、通勤にタクシーを使ってももったいないと思わなかったとお話ししましたが、唯一反省するとしたら、それだけコストをかけるのだったら、もっと早くに都心に引っ越していればよかったということです。

もちろん賃貸にせよ持ち家にせよ、相場は郊外に比べれば高いですが、二倍もするわけではありません。

せいぜい数十%といったところでしょう。

それぐらいの投資なら、リターンのほうがはるかに大きくなると思います。

ただし、そのリターンも、職場の近くに住むことで生まれた時間資産を再投資して初めて得られるものです。

浮いた時間を、単に睡眠時間やお酒を飲む時間にあてたのでは、何の意味もありません。

どこに住むかということは人生の大きな選択であり、それによって仕事のスタイルも、得るものも、大きく変わってきます。

都心に住むにせよ、郊外に住むにせよ、そのことに常に自覚的であってほしいと思います。

メイン・オフィスはバスルーム

人にはそれぞれ、時間密度の高い場所、高い時間帯があります。

私の場合、それは朝のバスルームであり、タクシーの中であり、近所のスターバックスです。

会社員だった時代から、なぜか、オフィスのデスクでは、頭が冴えません。

自分のオフィスを持つようになった今でも、重要なことを考えたいときには、スタバに足が向いてしまいます。

私にとってとりわけ時間密度が高いのは、朝のバスルームです。

持ち込むものは、携帯電話、スケジュール帳、飲み物、それに本を五~一〇冊。

バスタブのフタをテーブル代わりに、頭をフル回転させます。

バスルームこそ、私のメイン・オフィスと言ってもいいかもしれません。

放送作家の小山薫堂さんが脳科学者の茂木健一郎さんとの雑誌の対談で語ったところによれば、小山さんにとっても風呂は特別な場所で、アイディアに煮詰まると、風呂に入ってシャワーを浴びるのだそうです。

この話を受けて茂木さんは、シャワーを浴びている間は外界から情報が遮断されているので、脳がクリエイ

ティブに研ぎ澄まされるのではないかと答えています。

私の場合も、泳いでいると新しいアイディアが浮かびやすいのは、そのせいかもしれません。

ただ、プールでは、アイディアが浮かんだ瞬間にメモを取れないのが、最大の難点ではあります。

SBIホールディングスCEOの北尾吉孝さんは、読書家としてもよく知られていますが、北尾さんが本を読むのは、もっぱら夜、自宅で、だそうです。

一方私は、夜はすぐ眠くなってしまい、まったく本は読めません。

誰でも、こういう場所や時間はあるはずなので、そのような場所や時間を見つけて、それぞれの「時間割」に組み込むことをおすすめします。

生活のパターンとしてインプットされれば、習慣づけの効果でますます頭が活性化され、時間密度が高まってくるはずです。

エピローグ

人生という時間投資すべては「ハワイに住む」ことからの俯瞰逆算

私の大学生のころからの人生の目標は「ハワイに住む」ことでした。

今日の自分の生活はすべて、そこからの俯瞰逆算で成り立っていると言っても過言ではありません。

ハワイに住むとはいっても、現実から逃避するように日本とハワイを行ったり来たりするのはイヤ。

現役をリタイアしてから移り住むのもイヤ。

現地で職を見つけるのは難しいから、日本でビジネスの基盤を確立する必要がある。

でもサラリーマンになってしまったら行くのは難しい。

住むところも仕事も自分ですべてコントロールするには、起業するしかない。

でも、自分には起業するためのスキルも資金もない。

英語もできない……。

大学生だった当時、ハワイに住むことは、はるか彼方のゴールでした。

しかし、未来と現在とのギャップが明確だったからこそ、自分に何が足りないのか、何をすべきなのかがよく見えてきました。

そこで私は卒業後、外資系企業に就職しました。

外資だったら、若いうちから責任ある仕事を任せてくれるので早くスキルを身につけられるし、海外とのやりとりを通じて英語もマスターできると思ったからです。

そして三年間で五〇〇万円を貯め、アメリカのビジネススクールへ留学。

MBAを取得しました。

物事にはうまくいくための原理原則がある

MBAを目指したのは、突き詰めれば私が面倒くさがり屋だからです。

何度もお話ししてきたように、私は「コツコツ積み上げる」ことが苦手です。

何をするときでも常に、「どこかに近道はないか」「要領よく終わらせる方法はないか」ということに頭が向きます。

実際、世の中には、うまくいくための原理原則が少なからず存在します。

だったら最初にそれを学んだほうがいい。

それを教えてくれるのがビジネススクールだと考えたのです。

もちろん、ビジネススクールで学ぶだけで、すべて確実にうまくいくわけではありません。

しかし、ビジネススクールに行けば、マーケティングや経営について、体系立った原理原則を身につけることができます。

また実際に、どういうやり方だと成功し、どういうやり方だと失敗したのかという先例も、豊富なケーススタディとして学べます。

それらを知っていれば、自分でビジネスを始めるとき、あらかじめいくつかのオプションを想定することができます。

それを一つ一つ試していけばいいので、ゼロから闇雲に試行錯誤するのに比べて、はるかにゴールへの近道です。

もし、そういう知識を持たず、すべてを自分の経験から学んでいこうとすると、膨大な手間と時間とコストがかかるでしょう。

実際、ビジネススクールに行ったおかげで、その後の起業への道が大幅に短縮できたと思っています。

MBAを取得したことは、私の人生においては、きわめて大きな時間投資だったのです。

デキる先輩の営業に押しかけ同行

留学する前、三年間の会社員時代にも、得るものはたくさんありました。

とりわけデキる先輩社員たちの仕事ぶりを直接目にすることができたのは、まさに会社勤めの特権でした。

三年間で私が担当していたのは営業です。

当然、最初からそう簡単に成績が上がるはずがありません。

そこで考えたのが、先輩社員の中で、とんでもなく成果を上げている人のやり方をそのまま真似れば手っとり早い、ということです。

そこで、自分と同じセクションかどうかに関係なく、「これは」と思う先輩がいれば、その人の営業に同行させてもらい、ノウハウをメモして自分なりにアレンジする、といったことをよくしていました。

同行するのが難しければ、ストレートに「どうやってるんですか」と聞く方法もあります。

一人ではなく複数の人に聞くことで、うまくいくための王道のノウハウをピックアップすることができますし、自分に合うやり方をアレンジすることもできます。

会社にいれば、真似すべき成功例は周囲にたくさんあります。

いったん独立起業してしまうと、周囲に真似をする対象を見つけるのはなかなか難しくなります。

スポーツの世界でも、すぐれた選手の技術や練習法などをチェックして、真似たり盗んだりするのは、基本中の基本です。

よく言われることですが、そもそも「学ぶ」の語源は「真似る」にあります。

よほどの天才でないかぎり、自分でゼロから始めるのと、すぐれた先輩のやり方を学んで、そこからスタートするのとでは、時間効率が圧倒的に違います。

真似するなら自分に似たタイプの人を

ところが、遠慮してしまうのか、プライドが邪魔するのか、会社勤めをしながら、この特権を生かしていない人が多い。

実にもったいないことだと思います。

もちろん、相手の都合や意向を尊重しなければならないのは言うまでもありませんが、聞かれて悪い気がする人はめったにいません。

成功している人というのは、概して自分のノウハウを人に教えたいと思っているものです。

また、人に教えるには、その人の中にある暗黙知的なノウハウが、ある程度体系立っている必要があります。

その意味では、聞かれる側にとっても、自分の仕事を見直す機会となり、メリットがあることなのです。

基本的には遠慮せずにどんどん聞いてみればいいと思います。

特に若い人なら、今のうちに聞けるだけ聞いておいたほうがいい。

年齢が上がるほど、聞きにくくなるからです。

私自身もいろいろアドバイスを求められることがありますが、基本的にはすべて応じるようにしています。

それは、今まで自分が多くの方に助けてもらったことの恩返しであり、自分にとっても楽しいことだからです。

ただし、人からアドバイスを受ける際に、自分と性格やスタイルがまったく違う人の話は、あまり参考にならないということは、気をつけておいたほうがいいと思います。

私の場合、真面目で勤勉なコツコツ型の成功者のノウハウは、それがどんなにすばらしいものであっても、絶対に真似できないのが分かっています。

私にとって最も参考になるのは、サボり癖があって面倒くさがり屋だけれど、成功を収めた人の話です。

人に直接、話を聞く場合だけでなく、ビジネス書などを読む場合にも、そのことを念頭におけば、どのノウハウを採り入れたらいいのかの判断がスピードアップし、成果が上がるのも速くなります。

他人の時間を尊重する欧米人

アメリカに留学していたとき、ちょっと驚いたことがあります。

クラスメイトの一人に、親しいドイツ人がいました。

ある日、私が教室に入ったら、彼は机に向かって一心不乱に本を読んでいる。

私はちょうど彼に用事があったので、軽く声をかけました。

しかし、彼は返事をしない。

聞こえなかったのかと思ってもう一度声をかけると、彼はジェスチャーで「今、忙しいから後にしてくれ」と示しました。

そのような場合、日本人だったら、たとえどんなに忙しくても返事ぐらいはするはずです。

無言でそんな仕草をしたら「失礼なやつ」と思われるだけ。

また、そもそも声をかけられて、「忙しいから後にしてくれ」などと言える人も少ないと思います。

小さな出来事ではありますが、自分の時間を守ろうとする彼の強い意志を感じて、私はちょっとしたカルチャーショックを覚えました。

彼にかぎらず、欧米の人は自分の時間をきわめて大事にするように思います。

自分の時間を邪魔されることに、徹底的に拒否反応を示します。

元インテルCEOのアンディ・グローブも、「社員に会社の備品を盗ませないのと同様に、同僚の時間を奪ってもなんとも思わないような社員をのさばらせてはいけない」と述べています(『ユダヤ人成功者たちに秘かに伝わる魔法のコトバ』スティーブ・モリヤマ著/ソフトバンククリエイティブ)。

相手の時間を邪魔することに鈍感な日本人

自分の時間を守る意識の強い人は、相手の時間も尊重しようとします。

逆に言えば、他人のペースに合わせてしまいがちな日本人は、相手の時間を邪魔することに対して、少し鈍感であるように思います。

たとえば、飲食ビジネスに関わるようになって分かったことですが、日本では、レストランを予約する電話を夜八時ぐらいにかけてくる人が多い。

レストラン側としては、もちろんサービス業なので、何時に電話がかかってこようがお客さんには丁寧に対応しなければなりません。

それにしても、夜八時と

いうのは、レストランにとって最も忙しい時間です。

そこに電話をかけてくるのは、やはり相手を尊重した行為とは言えません。

応対する側も、言葉や態度には出さないにしても、内心はいい印象を持たないでしょう。

レストラン側の事情も配慮して、まだ忙しくない夕方五時ごろに電話をすれば、相手も気持ちよく余裕を持って応対してくれるはずです。

単に予約だけではなく、どんな料理にするか、どんなワインを出すかといった相談もできるでしょう。

電話をかける時間をちょっとずらすだけでも、得られる情報や人間関係の深さは大きく変わってきます。

日頃からそういった配慮ができていれば、周囲の人の接し方も変わって、自分の時間も尊重してもらえるようになっていきます。

他人の時間を尊重することも、大事な時間投資と言えるのです。

もし「ルイ・ヴィトン」を知らなかったら

初めてルイ・ヴィトンのショップでバッグを買うとき、ルイ・ヴィトンがどういうブランドか、ある程度のイメージさえ持っていれば、ショップに行くのが初めてでも、値段とデザインを検討して、すぐ商品を選ぶことができます。

しかし、もしルイ・ヴィトンというブランドをまったく知らなかったら、まず店構えを見、値段を見て驚き、場合によっては他のブランドとも見比べて、やっと商品選びに入ることができます。

バッグ一つ買うのに、膨大な時間と労力がかかるわけです。

同じことは、人間関係についても言えます。

初めての人と会うとき、どちらも相手のことを知らなければ、自分がどういう人間かを説明するところから始めなければなりません。

どういう仕事をしていて、どういう実績を持ち、何をしようとしているのか。

それには、少なからず時間と労力がかかります。

限られた時間の中で会うわけですから、自己紹介だけで終わってしまうこともあるでしょう。

二度めに会うチャンスがあればいいのですが、そうでなければ、せっかくビジネスでうまく協力し合える部分があっても、そこまでたどりつかないまま、チャンスが埋もれてしまうことになります。

また、最初の出会いで互いの理解が不十分なまま、何かビジネスを共にすることになったら、仕事をしている間中、腹の探り合いが続いてしまうかもしれません。

これも大きな時間のロスです。

このとき、自分が今までにやってきた仕事や、新聞・雑誌などで紹介されたときの記事をあらかじめファイルなどにまとめておいて、それを相手に渡せば、最初の自己紹介にかかる時間はぐっと短くなり、しかも口頭で伝えるよりもずっと密度の濃い情報を伝達することができます。

そういったパーソナルファイルを前もって相手に送っておけば、会ってすぐ本題に入ることもできます。

これらは言ってみれば、自分のブランドをつくっておく作業です。

時間投資の強力ツール「パーソナルブランディング」

そこで今、注目されているのが「パーソナルブランディング」という考え方です。

「パーソナルブランディング」とは、企業が自社の認知度や競合優位性を高めたりするのと同じことを、個人レベルで行うことです。

その核になるのは、新しさ・オリジナリティといった「差別化」、最高レベルの仕事をする「優位性」「信憑性」です。

パーソナルブランドは、具体的には、パーソナルファイルをつくるほか、本・メルマガ・ブログを書いたり、セミナーを開催したり、新聞・雑誌に寄稿するなどの情報発信を通じて築くことができます。

これらの活動によって「自分は誰か」「何をしているのか」「マーケットに対し、どんな価値を提供するのか」を伝えることができれば、ビジネスチャンスは格段に広がります。

具体的には、収入がアップすること、こちらから売り込みをしなくても安定して顧客が集まってくること、有益な人脈を引き寄せること、などが期待できるのです。

詳しくは、私が翻訳した『パーソナルブランディング』(ピーター・モントヤ著/東洋経済新報社)をぜひお読みいただきたいのですが、パーソナルブランディングは、短い時間で最大の成果を上げる、時間投資の非常に強力なツールと言えます。

他人のせいにしているかぎり変われない

自分では努力しているつもりなのに、思ったとおりの成果が上がらないと、「結局、上司がバカだから」とか「会社の仕組みがダメだから」などと他人のせいにする人がいます。

「時間がないからできない」も言い訳の常套句ですが、これも自分自身ではなく「時間」のせいにする考え方です。

しかし、こういう言い訳は「景気が悪いから会社の業績が上がらない」と言っているのと同じです。

どんなに景気が悪いときでも、すばらしい業績を上げる会社はいくらでもあります。

個人についても同様で、どんなにシビアな環境にあっても、成果を残す人はちゃんと残します。

「言い訳」は、単にみっともないだけではなく、何の解決にもつながりません。

物事がうまくいかない原因を他人のせいにしているかぎり、自分を変える力はけっしてつきません。

言い訳するのがクセになってしまうと、結局、状況だけがどんどん悪化し、ますます他者への恨みつらみが募ってくるという悪循環に陥ります。

たとえば部下に資料の作成を依頼して、それが締め切りどおりにできあがってこないと、当然ながら自分のスケジュールにも影響が出てきます。

そんなとき、「お前のせいでうまくいかない」と焦ってイライラする気持ちは分かります。

しかし、そこで部下を責めても、自分が失ってしまった時間を取り戻すことはできません。

依頼する段階でもっと明確な指示を出しておくとか、締め切りの数日前から状況を尋ねるなど、自分の行動によってしか、自分の時間を守ることはできないのです。

株式投資のようなお金の投資と同じで、時間投資も成果が上がるか否かは、一〇〇%自己責任です。

「会社員だから自分の思うとおりにならない」「忙しいからしかたない」と思っているかぎり、すなわち時間に対してパッシブなかぎり、けっして効率的に時間を使えるようにはなりません。

重要なのは、自分の時間は自分でコントロールするという意識。

時間に対してアクティブになって、「時間に追われずに成果を上げる生活」を実現してほしいと思います。

著者略歴本田直之ほんだなおゆきレバレッジコンサルティング(株)代表取締役社長。

日米のベンチャー企業に資本・経営参加し、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントを指導。

日本ファイナンシャルアカデミー取締役、コーポレートアドバイザーズアカウンティング取締役を兼務。

ハワイに拠点をかまえ、年の半分をハワイですごす。

著書にベストセラーとなった『レバレッジ・リーディング』、訳書に『パーソナルブランディング』(ともに東洋経済新報社)がある。

サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)。

(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。

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