意識や想像力を活用すれば、日の前の状況を変えていくことができる。これについては、さまざまな観点から研究が行なわれている。
「プラス思考」を勧める自己啓発本に始まり、最近では最新の神経生理学の知見に基づく書籍も出てきている。
私自身がこの分野で重視してきたのは、「実用性」だ。実際に物事を終わらせるのに役立つかどうかである。役立つとすれば、日々の仕事にどのように活用していくのがベストか。
その知識を活用し、より少ない努力で求めている結果を出していくことが本当に可能なのだろうか。答えはもちろんイエスだった。
必要なことに目を向け、スピーディにこなす
私はGTDの導入によって、さまざまな仕事の現場で驚くべき成果が上がるのを目の当たりにしてきた。
メールの処理、住宅の購入、会社の買収、会議、子どもとのコミュニケーションなど、あらゆることをGTDに基づいて進める習慣が身につくと、あなたの生産性は飛躍的に向上する。
私がGTDを指導したプロフェッショナルの多くは、仕事やキャリアがステップアップしたと感じており、新しい職に就いた人や、ライフスタイルを変えた人もいる。
GTDは、私たちがごく日常的にやっていることにおいて、確実に効果を発揮する。
滞っていることをすみやかに片付けて自分自身や他者に認められるようになった人の人生は、確実に前進していると言えるだろう。
GTDに強い興味をもっている人は、おそらくすでに何らかのステップアップに取り組んでおり、自分が1年後も同じ状態にあるとは最初から考えていないはずだ。
ただ、GTDなら、より早く、無理なくそこに到達することができる。そういう人たちは、その点に大きな魅力を感じるようだ。GTDを実践していれば、日々起きていることにすぐさま対応できるようになる。
また前向きな想像力を活用していくことを学び、日々発生するさまざまな問題を解決できるようにもなる。
見出しに用いた「スピーディ」という言葉は、誤解を招くかもしれない。
人によっては、GTDによって多忙な状況から抜け出し、もっと健全な、ゆったりとしたペースを取り戻せる場合もあるからだ。
どちらにしろ私が言いたいのは、GTDを実践すれば自分が望んでいる変化や結果に対して、意識を集中しながら取り組めるようになるということだ。
「娘と過ごす時間を増やす」という目標もまたプロジェクトの一つであり、「次にとるべき行動」を決める必要がある。
何かをしなければという曖味な意識だけで実際に何もしなければ、それが大きなストレスになっていく。
私のクライアントの中には、こういったことを書き出し、どんなプロジェクトかを見極めて、次にとるべき行動を明らかにしていくことこそが、人生の「済んでいないこと」だったという認識に至る人も多い。
これ自体もすばらしい成果だと私は考える。
望んでいる結果に目を向けることが重要
仕事や人生におけるさまざまなことを信頼できる整理システムに組み込むことで、自分や周囲の人に驚くような変化が起きてくる。このことはとくに強調しておきたい点だ。
前章で述べたように、「次にとるべき行動」を考えるようにすると、具体的な行動ステップと責任の所在が明らかになり、生産性と行動力がぐっと高まってくる。
また、求めている結果に集中し、そこに至るプロジェクトを見極める習慣を身につけた場合も、やはり同じことが起こってくる。この二つは相互に関連している。
望んでいる結果がはっきりしていなければ適切な行動を見極めることはできないし、具体的に何をするかがはっきりしていなければどんな結果になるかは曖味なままだ。どちらのアプローチでも結果を出すことはできる。
しかし、「気になること」を終わらせるには必ずどちらかをやらないといけない。
脳を最大限に活用する学習法を研究している私の友人スティーブン・スナイダーは、次のようなことを言っている。
「人生で起きる問題は二つしかない。一つは、求めている結果がわかっているのに、どうすればいいかがわからないこと。もう一つは、求めている結果が何かわからないことだ」
彼の言うことが正しいとすれば(私は正しいと思っているが)、解決法は次の二つしかない。
- とるべき行動をはっきりさせる
- 求めている結果をはっきりとイメージする
この二つは、陰と陽、右脳と左脳、創造と破壊、構想と実践などと同じ関係にある。つまりこれらは表裏一体なのだ。
私たちは人生のあらゆる側面において、まだ実現していないことをイメージできるという、すばらしい能力をもっている。
そうしたイメージをもつことで、現状をその世界に近づけるべく脳が働きはじめ、実際にとるべき行動を考えることができるのだ。
あなたの注意のアンテナに引っかかったことに意識を向けていこう。
「これは自分にとってどんな意味があるのか」「なぜここにあるのか」「これに関してどんなことが起こってほしいか(求めている結果は何か)」。「済んでいないことは何か」。
これらのすべてについて、それらが完了している状態をはっきりとイメージしなくてはいけない。
現状と望んでいる結果の間にギャツプがあることが明らかになったら、こう自問してみよう。「求めている結果をもたらすために、今何をしなければいけないか」「それには何が必要か」。つまり、「次にとるべき行動」を考えるのである。
GTDは新しいテクノロジーでも新発明でもない。私たちが行なうべき目に見えにくいことを、はっきりと見える形に置き換えるだけのことだ。
このように物事を認識し、意識的にGTDの原理を活用することで、より素晴らしい成果を導き出すことができるのだ。
人生や仕事は、意識的な行動が積み重なったものだ。ただし、どの程度意識的な行動かはあなたの選択による。
そのときの状況に単に対応すべくあまり意識せずに行動するか、それとも何に集中すべきかについて強く意識して行動するか、である。
もしあなたがまわりに流されることなく、豊かで創造的な人生を歩みたいた偲,、P階μば、GTDの方法論を学び、日々実践していこう。
GTDにおける最大の課題は、2つの柱である、「それをやっているとはどういうことか(とるべき行動)」「それを「やり終えた」とはどういう意味か(求める結果)」の視点を実践することだ。
これは必ずしも簡単なことではない。だが、困難なくして学習や成長はありえないのだ。
日々の営みにおいて、入ってきたことのすべてを、あらゆるレベルにおいて整理していくと、意識の深い部分で変化が起こり、驚くような効果が表れてくる。
生産性がぐっと高まり、イメージを明確に描きつつ、それらを実現していけるようになるのだ。
日常のさまざまなことをさばいていく達人になろう
私のクライアントが引き出しを空にしたり、大量のメールや頭の中や周囲に溜まったさまざまなものを処理したりするのには何時間もかかることが多い。
そんなとき、相手からはよく「退屈ではありませんか」と尋ねられる。
彼らは溜まっているものの多さに恐縮しつつ、こんなのに付き合わされるのは大変だろうと私に気を遣つてくれているのだ。だが、実際はまったく逆である。
私自身も意外に思うが、人といっしょに行なう作業で、これほど充実した気分になれるものはない。効果的に作業を終えてしまえば驚くような解放感と安心感に浸れることを、私は知っているからだ。
彼らは適切なサポートの元で集中力を働かせ、「見極め」と「整理」をするためのシステムを確立していかなければならない。
そうした作業を見ていると、彼らにとってよい影響を与えるであろう行動パターンが根付いていっているのだな、と実感することができる。
そして数時間後には、上司や共同経営者、配偶者、子どもたちとの関係が大きく変わり、自分自身のとらえ方にも変化が出てくる。
そしてその状態が、何日も、何年も続いていくのである(もちろんGTDを続けていればの話だ)。そのことがわかっているので、私は退屈などしない。むしろ、もっともやりがいのある仕事の一つだと思っている。
あらゆるレベルで求めている結果を管理する
私が教えているのは、どこに目を向けるべきなのかということだ。私が発するごくシンプルな質問によって、自らの創造性や知恵が引き出され、日の前の状況が改善したり、仕事の突破口を見つけられたというケースも多い。
私の指導を受けた人が、急に賢くなるわけではない。ただ、必要なところに知性を集中させ、生産的に活用しただけのことだ。
このように必要なところに集中していくと、ほかの手法では得られないメリットがもたらされる。
人生のあらゆるレベルにおいて効率が高まり、よりよい成果を上げられるようになるのだ。人生においては、長期的な展望や目標、価値観やビジョンが必要である。
その一方で、買い物リストや住所録など、より日常的なこともさまざまなツールで管理していかないといけない。
しかし、この二つに平等に目を向け、うまく結び付けている人はほとんどいないのが実情だ。
「これは自分にとってどんな意味があるのか」「これに関してどんなことが起こってはしいのか」「そのために必要な次の行動は何か」。
私たちはあらゆるプロジェクトに関して、遅かれ早かれこうしたことを考える必要がある。
このような考え方ができるようになり、それをサポートするさまざまなツールを手に入れたとき、あなたは信じられないような力を発揮することができるようになるはずだ。
ナチュラルプランニングで何が変わるか
先に紹介したナチュラルプランニング(99ページ)を実践すると、あらゆる状況を、より総合的な視点で見渡すことができるようになる。
自分がしているあらゆることの目的を考えるのは健全なことであり、成熟した人間の証である。
ビジョンをもち、成功のイメージを描いたうえでそこに至る方法を考えられるようになれば、それは強力な推進力となる。
一見役に立ちそうにないものも含めてすべてのアイデアを出し、集めておくことで、創造性をフルに活用できるようにもなるはずだ。
また、それらのアイデアやさまざまな情報を要素や順序、優先度で整理して求めるべき結果のために役立てていかなければならない。
そして、次にとるべき具体的な行動を考え、実行し、プロジェクトを現実レベルで進展させていく必要がある。それによって生産性が高まっていくのだ。
適切なタイミングとバランスの元にこれらの要素を組み合わせていく能力こそが、新たな時代を迎えた今、プロフェッショナルに求められている資質だと私は思っている。
しかし、実際にはほとんどの人がこの対極にいるのが現実だ。
ナチュラルプランニングモデルは脳にとって「ナチュラル」ではあるものの、意識せずに生じるものではないからである。
しかし、ナチュラルプランニングの考え方の一部でも実践することができれば、その人の生産性は大きく向上するだろう。
私は長年、GTDのコンサルテイングやセミナー、個人指導に取り組んできた。
これらの人々の反応を見る限り、ナチュラルプランニングを実践することで生産性が大きく高まることは間違いない。
人生のほぼあらゆることにブレインストーミングを活用する人々が増えていくのを見るのは、私にとっては大きな喜びだ。
重要な会議や話し合いにGTDを活用して大きな成果が上がったという話を企業の幹部たちから聞くと、GTDを勧めて本当によかったと思う。
これらはすべて、意識の自然(ナチュラル)な働きに逆らわずに物事を進めたほうが、きちんと結果を出していけるということを意味している。
ナチュラルプランニングの本質は、私たちがやらなければならないと感じていることのすべてに関して、「望んでいる結果」とそこに至るまでに「必要な行動」を見極めることにほかならない。
この二つの「見極め」を日々の生活でごく当たり前にできるようになれば、あなたの生産性は新たな次元に引き上げられるだろう。
さらに、プロジェクトのアイデアや展望、具体的な要素を明らかにするのに最も有効な手法であるブレインストーミングを実践することで、常にリラックスした状態で物事をこなしていけるようにもなる。
組織を前向きな体質に変える
組織の生産性を引き上げるのはそれほど難しいことではない。
クライアント企業からは、何人かのマネージャが多少なりともGTDを導入した結果、迅速かつ円滑に組織の歯車が回るようになったという話をよく聞く。
目標や望んでいる結果に関して、個々の活動、リソースの配分、コミュニケーション、方針、業務プロセスを前向きに見直すことが、あらゆる組織にとって急務となってきている。
現代企業が置かれている環境はますます厳しさを増しており、グローバル化や競争、技術の進歩、市場の変化、生産性や効率などの面で、激しいプレツシヤーにさらされている。
「この会議で出さなければならない結論は何か」「何のためにこの書類を書くのか」「この仕事の適任者は誰か」「このソフトで何をしたいのか」といつた根本的な問いかけを怠っている組織はいまだに多い。
名前だけ立派でやたらとしゃべりまくる会議はあちこちで開かれているが、「何のための会議か」や「成功したときにどんな状態になっているか」を考えなければ本当の成果は得られない。
これらを見極め、その視点で日々の仕事を進めていくことではじめて、最高の結果が得られるのだ。経営者からよく聞かされる生産性の問題には、メールや会議に関するものが多い。
メールも会議も多すぎて、戦略的に重要ではなさそうなことに時間が取られすぎているというのだ。
このようなコミュニケーションが生先生を奪い、エネルギーを消耗させてしまうことは容易に起こりうる。
はっきりした目的のない会議を開くと、不要なメールのやり取りが増え、そうなると会議の成果を明らかにする必要性が出てきて、そのためにまたメールが必要になるという具合だ。
メールも会議も組織運営には欠かせないものだが、目的や望んでいる結果がはっきりしていないと悪い影響を及ぼしかねない。
個人が被害者意識やグチのレベルから抜け出し、望んでいる結果と次にとるべき行動に目を向けられるようになったとき、その人の生産性はぐんと向上する。
それと同じことが組織でも徹底されるようになれば、組織の体質そのものが変わり、業績にも明らかな変化が出てくる。
そもそも考えなければならないことはほかにたくさんある。
消極的な態度や反発を減らし、あらゆるレベルにおいて求められている結果に目を向けられるようにしていくことが大切だ。
個人レベルで書類受けやメール、コミュニケーションなどをどのように扱っているかが、組織全体の体質や生み出される結果に反映される.誰かが何かを忘れたり、何かが舞い込んできた時点で行動を決めなかったり、責任の所在が曖味だったりすれば、それが組織の足枷となり、常にク尻に火が付いたク状態が続くことになる。
組織に所属する個人がGTDをきちんと実践すれば、まったくその逆のことが起こる。つまり、組織全体の成果が新たな水準に引き上げられるわけだ。
それで組織のあらゆる問題や摩擦が解消するわけではない。組織が存続する限り、問題がなくなるということはないだろう。
しかし、本書で解説したGTDが浸透していけば、より確かな視点でそれらの問題に取り組み、もっとも効率的なかたちで解決していくことができるようになるはずだ。
「どうしてGTDで組織の体質が変わるのですか」という質問をよく受けるが、GTDの手法は個人と同様に組織にも適用できると知っているからだ。
「気になること」を把握し、望んでいる結果と必要な行動を見極め、状況を定期的に見直して、人材や労力の適切な配分を常に考えていくことは、どのような組織でも取り入れられる重要な慣行だろう。
高い水準が求められる現代の組織では、GTDに精通し、生産的に仕事をこなせる人が必要だ。
GTDの手法がトップ主導で企業全体に取り入れられれば、測り知れないほど素晴らしい成果が生み出されることだろう。
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