ナンバーツーの座を狙っているときの戦略は、ナンパーワンの在り方によつて決まる。
強さの中には弱さが同居している。いかにナンバーワンが強力であろうとも、ナン バーツーを目指すものにとっては形勢逆転のチャンスがあるものだ。 ちょうどレスラーが相手の力を利用するように、企業もまた、ナンバーワン企業の 強みを弱点へと転じるべきである。 あなたが梯子の上から二段目にしっかりした足場を築きたいのであれば、まずあなたの上段にいる会社を研究しなさい。その会社の強みはどこか。どうすればその強み は旧 を弱みに転じることができるか。あなたがしなければならないことは、ナンバーワンのエッセンスを見つけ出し、顧 客にそれと反対のものを提供することである。
これが、しばしば見られる伝統企業対新 興企業の図式である。 コカコーラは一〇〇年の伝統を誇る商品だ。コークの調合法を知っている人は、今 日まで世界に七人しかいない。アトランタ本社にある金庫の奥深くにしまわれている のだ。コカコーラは、歴史ある揺るぎない商品である。しかしペプシコーラは、対立の法則を使ってコカコーラのエッセンスを逆手にとり、ペプシを新しい世代の選択商 品とすることに成功した。いわゆるペプシ・ゼネレーションである。 ある特定の商品カテゴリーの顧客層をみると、およそ二種類の顧客に大別できる。 ナンバーワン商品を買いたがる層と、逆に買いたがらない層とである。ナンバーツー をうかがう会社は、後者に呼び掛けなければならない。 換言すれば、ナンバーワンの対極に位置することによって、ナンバーワン以外の全 ての企業からビジネス機会を奪うのである。もし旧世代がコークを飲み、ヤング世代 がペプシを飲むとすれば、 ロイヤル・クラウンコーラを飲む人は一人としていなくな る。 ところが、あまりにも多くのナンバーツーを目指すブランドがナンバーワンをまね ようとする。これはたいてい間違っている。あなたは自ら対抗馬として名乗りを上げ るべきなのだ。 雑誌「タイム」は幸麗な記事によって、名声を打ち立てた。そこで「ニューズウイ ーク」は発想を変え、「事実とオピニオンを分離する」ことによる率直な記事スタイ
ルを売りものにした。すなわち、オピニオンは論説ページに掲載し、 ニュース欄には 掲載しないのである。 時には相手に対して非情になることをためらってはならない。優れた洗日液である スコープは、競合ブランド、リステソンに「薬臭い息」というレツテルを貼った。 とはいっても、ただ相手を叩けばいいというわけではない。「対立の法則」は両刃 の剣なのである。あなたの顧客がすぐに気付きそうな弱点は、常に研いでおかなけれ ばならない(ソステリンをさっと嗅げば、あなたの日が病院のように臭ってくるのが 分かります)。と切り込んだ後は、返す剣で「スコープは、味がよく、殺菌力の強い 洗日液ぞす)とダメを押すのである。 洗口液の分野には、もう一つ、ナンバーワンをまねることの無益さを示す興味深い 事例がある。 一九六一年、ジョンソン&ジョンソン社は「科学的」効能を売りものに した洗口液、ミクリンを発売した。何力月かのうちに、ミクリンはナンバーツー・ブ ランドにのし上がった。ところが、その殺菌効果を謳った手法についていえば、リス テリンもまた、科学的効能をうたったブランドであった。そこで一九六五年、プロクター&ギャンブル社はスコープを発売するに当たって、これとは″反対の″ポジショ ンをとった。スコープはその後、ナンバーツーの洗口液となった。 一方、ジョンソ ン&ジョンソン社が市場からミクリンを撤退させた一九七八年には、そのシェアは一 パーセントにまで下落していた。 ベックスというビールがアメリカに進出したとき、問題が一つあった。ベックスは 最初の輸入ビールではなかったし(最初の輸入ビールはハイネケン)、最初のドイツ 製輸入ビールでもなかった(ローエンブロイが最初)。そこでベックスは、ローエン ブロイのポジショニングに手を加えることによって、この問題を解決した。「あなた 方は、 いままでアメリカで一番人気のあるドイツ製ビールを日にしてきました。今度 はドイツで一番人気のあるドイツ製ビールを味わってください」と。 今日ベックスはアメリカで二番目に売上げの多いヨーロツパ製ビールである(こと ビールとなると、アメリカ人は自分たちの日よりもドイツ人の日のほうを信用する)。 これは一番手の法則を覆し、顧客マインドの中の知覚を操作した珍しい事例である (この話はいまや語り草だ。というのもいまではローエンブロイはアメリカで醸造されているので)。 商品は古くなるにつれて、 マイナスの要素を生むことが多い。製薬業界にあっては、 とりわけその傾向が強い。 一人九九年に開発された商品であるアスピソンの場合を見 てみよう。アスピリンに関して何千回もの医学的研究が繰り返されれば、この商品に 何らかの欠陥が見つかることは避けられない。果たして一九五五年、ちようどタイン ノールの発売に時期を合わせるように、アスピリンによる胃の内出血が見つかった。 「胃の内出血」という大々的なパブリシティーによって、タイレノールはたちまちの うちに、代替品としての立場を固めることができた。「アスピリンの服用に適さない 何百万もの人たちのために」とタインノールの広告は謳い上げた。今日タイレノール はアスピリンの売上げを抜き、アメリカのドラッグストアにおいて、単一商品として は最大の売上げを記録している。 ウオッカのストリチナヤは、スミルノフ、サモワール、ウルフシュミットといった アメリカ製ウオッカに、「偽ロシア製ウオッカ」のレッテルを貼ることができた。こ れらのウオッカが、 ハートフォード(コネティカット州)、 スキンリー(ペンシルベ
ニア州)、 ローレンスバーグ(インディアナ州)といった地域で製造されていると指 摘するだけで、それが可能だった。ストリチナヤはレニングラード産なので、本場物 というわけだ。 競合相手に対するネガティブキャンペーンが効果を上げるためには、その中に真実 の響きがなければならない。ネガティブキャンペーンの古典的事例の一つに、陶器の ロイヤル・ドルトン・チャイナ社がアメリカの大手ライバル社に対して行なった広告 がある。そのキャッチフレーズはこうだった。「イングランドはストーク・オン・トレ ント産の陶器であるロイヤル・ドルトンを選びますか、 ニュージャージー州ポモナ産 の陶器であるレノックスを選びますか」。この広告は、大勢の人が、 レノックスは輸 入陶器だと考えている事実につけ込んだものだった。本当の産地がニュージャージー 州のポモナであるレノックスのポジショニングを割り引くことによって、 ロイヤル・ ドルトンは「本物のイギリス製陶器」としての立場を固めることができたのである。 というのは、 ニュージャージー州、ポモナのようないかにもみすぼらしく聞こえる場 所で、真っ白い、見事な陶器をこしらえている職人たちの姿は想像しにくいからだ
(この広告を見たイングランドの人たちは、大笑いしたという。ストーク・オン・トレ ントもポモナ同様にさえないところなのである)。 マーケティングとは多くの場合、正統性をめぐる戦いである。最初にわれこそ本物 なりのコンセプトをつかんだブランドが、多くは競合相手を偽物呼ばわりできるので ある。 ナンバーツーとして揺るぎない座を占めるブランドは、臆病であってはならない。 ナンバーワンヘの攻撃を止めれば、単にナンバーワンからだけでなく、その他大勢の ブランドからも二位の座をおびやかされることになりかねないのだ。近年起こったバ ーガーキングの悲劇を見るがよい。確かに、 ハンバーガー業界のこのナンバーツーに とって時期も悪かった。多数の経営陣が入れ替わり、新しいオーナーが乗り込み、広 告代理店の示威行進が続いた。いったい何が間違っていたのかを理解するのに、なに も歴史の検証といった大げさなものは必要ではない。 バーガーキングの経営が一番うまくいっていたのは、同社が攻勢をかけていた時期 だった。「お好みの物をどうぞ」のコンセプトで始まった同社のキャンペーンは、 マ
クドナルドの大量生産方式を槍玉に上げた。続いて、「揚げないで、あぶるだけ」と か「ホッパーはビッグマックより大きい」などのキャッチフレーズで、 マクドナルド に攻撃を加えた。このようなキャンペーンによって、バーガーキングはトップに対抗 するナンバーツーの地位を固めたのだった。 そうするうちに、バーガーキングはなぜか対立の法則を無視するようになった。弱 腰になり、 マクドナルドヘの攻撃を止めた。「忙しい時代のベストの食事」、「あなた のお好みに合ったサービス」、「作法を変えよう」といった月並みなプレゼンテーショ ンが続いた。はては、 マクドナルドの主要顧客層である子供への呼び掛けキャンペー ンを始める始末だった。 こんなやり方ぜは、ナンバーツーの座を確保し続けることは不可能である。バーガ ーキングの一店舗当たりの売上げは下がり、攻勢をかけていた当時の水準にはついに 戻らなかった。 バーガーキングは対抗作戦をとらないという過ちを犯したのである。
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