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第7章 梯子の法則

採用すべき戦略は、あなたが梯子のどの段にいるかによって決まる。

顧客の心を真っ先につかむことをマーケティングの第一目的とすべきなのはその通 りであるが、仮にその努力が失敗に終わっても、それで戦に敗れたというわけではな い。二番手、二番手のブランド用に使える戦略がいくつかあるのだ。 すべての商品が同じに作られているわけではない。顧客の心の中には、購買決定を するにあたって用いる序列尺度が存在する。 商品のカテゴリー毎に、顧客の心の中に商品の梯子が存在するのである。各々の梯 子段の上にブランド名が乗っかっている。レンタカー業界の場合を見てみよう。真っ 先に顧客の心の中に飛び込み、梯子の最上段を占めたのはハーツであった。エイビス が二番目に、続いてナショナルが二番目に飛び込んできた。 あなたのマーケティング戦略は、 いったいあなたが顧客の心の中に入っていったの は何番目だったのか、そしてその結果、梯子のどの段を占めているのかによって決ま る。もちろん高ければ高いほどいい。 たとえばエイビスの例を取り上げてみよう。何年にもわたって同社はサービスの質 の高さを広告してきた。「レンタカー会社の中で最高のサービス」というのがキャン

ペーンの謳い文句の一つだった。読者はこの広告を見て、首をかしげた。梯子の最上 段にいるわけでもないのに、どうやってこの会社は最高のレンタカーサービスを提供 できるのだろうか、と。 そこぞエイビスは、顧客の心の中の序列を上げるために適切な手を打った。梯子段 上の自社の位置を素直に認めたのである。「エイビスはレンタカー業界でナンバーツ ーに過ぎません。だからこそご利用いただきたいのです。わたしたちは一生懸命頑張 ります」と。 それまで一三年間エイビスは赤字続きだった。それがナンバーツーであることを自 ら認めたとたんに黒字、それも大幅な黒字に転じたのである。その直後、同社はIT Tに売却された。ITTではすぐさま広告テーマを「エイビスはナンバーワンになり ます」と、より積極的な内容に切り替えた。 いや、そんなことは無理だ、と顧客の側は考えた。なぜってあの会社が梯子の最上 段にいるとは、われわれのほうでは思っていないんだから。そして、そのことをはっ きりさせるために、彼らは受話器を取り上げて、 ハーツのほうに電話したのであった。

かくして、このキャンペーンは無残な失敗に終わった。 マーケティング関係者の中にはこのエイビスの事例を読み違えている者が多い。彼 らは同社が成功したのは、 一生懸命頑張った(つまり、よりよいサービスを提供し た)からだと考えている。ところが、これは全くの見当違いである。エイビスが成功 したのは、顧客の心の中で、自社をハーツのポジションと関連づけたからであった。 多くのマーケッターたちがエイビスと同じ過ちを犯している。例えば、 ロング・ア イランドのガーデン・シティーにあるアデルフィ大学は目下、(自分で勝手に) ハーバ ード大学になぞらえようとしている。ところが高校の最上級生たちに言わせると、ち ょっと待ってくれ、となる。アデルフィなんて、俺たちの大学の梯子にはないぜ。お 察しの通り、アデルフィは最優秀の高校生を吸引することには、あまり成功していな 顧客の心の中ではあれこれ選択が行なわれる。顧客は、どの情報を受入れ、どの情 報を斥けるかを決めるに当たって、自分なりの梯子を使う。 一般に心の中は、当該カ テゴリーにおける自己の商品の梯子に合致する新しいデータのみを受け入れる。ほかのものはすべて無視される。 クライスラー社が自社の車をホンダ車と対比させたとき、同社のプリムスやダッジ を購入するためにホンダのプレリュードやアコードを下取りに出す顧客はほとんどい なかった。ひところクライスラーの広告のキャッチフレーズはこうだつた。「中古の ダッジ●スピリットとホンダ・アコードの新車を比較するなんて、少々馬鹿げて見え たものです。結果を見るまでは」。この広告によると、 一〇〇人の人たちに七万マイ ル走ったダッジ・スピリットとホンダ・アコードの新車とを比較してもらったところ、 大多数(一〇〇人中五八人)が中古のダッジを選んだという。 馬鹿げた話である(だが、必ずしもありえないことではない)。 顧客の心の中にある、あなたの商品の梯子はどんな梯子だろうか。その梯子にはい くつ段があるのだろうか。段の数はあなたの商品が自己関与度の高い商品か、関与度 の低い商品かによって決まる。あなたが毎日用いる商品(たばこ、 コーラ、ビール、 歯磨き、シリアルなど)は関与度の高い商品で、傾向として梯子の段数が多い。めっ たに買わない商品(家具、芝刈り機、トランクなど)は、梯子の段数が概して少ない。

多分に個人の自尊心にかかわる商品(自動車、腕時計、カメラ)も関与度の高い商 品で、購買の頻度は低いにもかかわらず、梯子の段数は多い。 購買の頻度が低く、不快な経験を伴いやすい商品は一般に梯子の段数が極めて少な い。自動車のバッテリー、タイヤ、生命保険などがこれに当たる。 これっぽちも喜びを伴わず、生涯で一度だけ購入する究極の商品の場合、その梯子 には段が一つもない。ベイツビル製棺桶の名を聞いたことがおありだろうか。おそら くないだろう。ところがこのブランドは市場の約五〇パーセントを占めているのであ る。 マーケットシェアと、顧客の心の中にある梯子段上のあなたの位置との間には、相 関関係がある。あなたは、あなたのすぐ下段にいるブランドの三倍のマーケットシエ アを持ち、すぐ上段にいるブランドの半分のマーケットシェアを持つというのが一般 的傾向だ。 例えば、初の日本製高級車はアキュラだった。二番目はレクサス、二番目がインフ ィニティである。最近のアメリカにおける年間売上げは、アキュラが一四万三七〇八台、 レクサスが七万一二〇六台、インフィニティが三万四八九〇台だった。この三つ のブランドの間の力関係は、ほぼ四対二対一である(アキュラーレクサスーインフィ ニティ間の戦争はまだ初期の段階にある。車がまだ新しく、大衆もマスコミも多大な 関心を寄せている。長期的に見れば、これらの車がもはや関心を呼ばなくなったとき、 別の新しい現象が起こるだろう。次章参照)。 マーケティング関係者はしばしば、あるカテゴリーにおける「トップスリー●ブラ ンド」の競争について、それがまるで対等な闘いであるかのように語る。そんなケー スはまずありえない。トップ。ブランドは常にナンバーツー・ブランドより優位に立 ち、ナンバーツー・ブランドは常にナンバースリー●ブランドを圧倒する。ベビーフ ード業界のトップスリーは、ガーバー、ビーチナット、 ハインツである。ビール業界 ではバドワイザー、ミラー、クアーズである。長距離電話サービス業界では、同じく AT&T、MCI、スプリントの三社である。 梯子の段数の上限はいくつであろうか。顧客の心の中には「七段の法則」なるもの が存在しているように思われる。特定のカテゴリーで記憶しているブランド名をすべ

て上げるように、だれかに言ってみるとよい。七つ以上の名前を上げられる人は、ほ とんどいないだろう。しかも、それが自己関与度の高いカテゴリーでもである。 ハーバード大学の心理学者、ジョージ・A ●ミラー博士によれば、平均的な人間の 頭脳は、 一時に七個以上のものを処理することはぞきないという。記憶すべきソスト の数として″七″が人気があるのはそのためである。七桁の電話番号、世界の七不思 議、セブン・カード・スタッド(ポーカーの一種)、白雪姫と七人の小人、癌の七大危 険シグナルなど。 時として、あなた自身の梯子、すなわち商品カテゴリーが小さ過ぎる場合がある。 小さな池の大きな魚になるよりも、大きな池の小さな魚になる方がベターであろう。 言い替えれば、小さな梯子でのナンバーワンよりも、大きな梯子でのナンバースリー の方がベターな場合もあるのだ。 レモンライムソーダの梯子の最上段は、セブンアップによって占められていた。 (二段目はスプライト)。しかしながらソフトドリンクの分野では、 レモンライムの梯 子よリコーラの梯子のほうがはるかに大きい(アメリカで消費されるソフトドリンク

のほぼ三分の二がコーラ系である)。そこでセブンアップでは「アンコーラ」と呼ば れるマーケティングキャンペーンによって、 コーラの梯子によじのぼったのだった。 紅茶がコーヒーの代役をつとめるように、セブンアップがコーラの代役となった。 この結果、セブンアップの売上げは、アメリカのソフトドリンク分野でナンバースリ ーの位置にまで上昇した。 不運にもセブンアップは近年、後述する法則の一つ(第12 章参照)を犯したために、 第二位の座を失った。 「梯子の法則」は単純ではあるが、 マーケティングの重要な課題を処理するのに役立 つ、強力な比喩的法則である。あらゆるマーケティング計画を手がける前に、次のこ とを自問してみるとよい。私たちは、顧客の心の中にある梯子のどの位置にいるのだ ろうか。最上段だろうか、二段目だろうか。いや、ひょっとして梯子に乗っかってす らいないのではないだろうか。 そのうえであなたのマーケティング計画が、梯子の上のあなたの位置に現実的に対 処できるようにしなさい。そのやり方については、後の章で述べることにする。

*梯子(uヽ…。r●&o「) 人は、心の中で商品やブランドに対する無意識または意識的な順序づけを行なっている。この順列。 順序で、それぞれの商品やブランドの位置関係を、梯子を想像することで明確にしようとするのが、 ラダーの考え方である。 梯子の各段には、それぞれのブランド・ネームがひとつずつ書かれており、各商品カテゴソーごとに 梯子の段数は異なる。 当然強い商品や、最初に人の心の中に入りこんだブランドは、梯子の上段を占め、下位のブランドは、 競合との戦いに勝ち、梯子の上段を奪うことを狙う。

 

 

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