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第6章 独占の法則

二つの会社が顧客の心の中に同じ言葉を植えつけることはできない。

自分の競合会社が顧客の心の中にある言葉を植えつけていたり、あるポジションを 占めている場合に、その同じ言葉を植えつけようと試みるのは無駄である。 すでに述べたように、ボルボは「安全」という言葉を占有している。メルセデスベ ンツやゼネラル・モーターズなど多くの自動車メーカーが、安全性を主体にしたマー ケティングキャンペーンを実施しようと試みてきた。しかしボルボ以外は、顧客の心 の中に安全というメッセージを投げ入れることに成功していない。 アタリ社の事例は、強固な地歩を築き上げている競合会社を敵に回して、ホームコ ンピュータ市場に参入しようとした試みが、不毛であったことを物語っている。ゲー ムコンピュータと呼ばれる別の分野でなら、あるいは成功していたかもしれない。な ぜなら、この場合、 コンピュータゲームの開発者というアタリの知名を利用すること ができたであろうから。しかしともかく、ホームコンピュータの市場はアップル、 コ モドールその他の会社に握られていたのである。 こうした悲惨な失敗の事例がいくつもあるのに、多くの会社が「独占の法則」を犯 し続けている。いったん固まった大衆の心を変えることなどぜきはしない。実をいう

と、あなた方がよくやる間違いは、競合相手の商品コンセプトの重要度を高めること によって、相手の立場をいっそう強国にしてしまうことなのだ。 宅配便会社のフェデラル・エクスプレスは従来の「翌日配送」というコンセプトか ら撤退し、DHLの「ワールドワイド」というコンセプトを奪おうと試みている。こ れまでフェデラル・エクスプレスの封筒には「翌日配送」を強調する「オーバーナイ ト・レター」の文字が刷り込まにていたものだ。いまではこれが「フェデックス・レ ター」に代わっている。また同社の広告も、「間違いなく翌日配達して欲しいときに は」という呼び掛けを止めている。最近フェデラル・エクスプレスの広告に登場する 言葉は「ワールドワイド」である。 この事例は極めて重大な疑間を提起する。果たしてフェデラル・エクスプレスは 「ワールドワイド」という言葉を植えつけることがぞきるだろうか。おそらくできな いだろう。すぜに他の会社、DHLワールドワイド・エクスプレスが占有している言 葉だからだ。同社のコンセプトは「世界のより多くの地域により早く」である。フェ デラル・エクスプレスが成功するには、DHLに対抗して焦点を絞り込む方法を見い出さなければならない。それには、顧客の心に同じ言葉を植えつけようとするのでは だめなのである。 他社の言葉に狙いを定めた、もう一つの大々的マーケティング努力の事例が、バニ ーランド広告の中に見られる。もっとはっきり言えば、電池メーカーのデュラセル社 から「長持ちする」というコンセプトを奪おうとしている、 エバーレディー社のピン クの兎を使った広告がそれだ。自社製品のエナジャイザーが、長持ちすることを強調 するために多くの兎を広告に登場させているのだが、どれほど多くの兎を登場させて も、デュラセル社は、相変わらず「長持ちする」という言葉を占有できることだろう。 顧客の心の中に真っ先に飛び込んだのはデュラセル社だったし、 コンセプトを先取り したのもデュラセル社だったのだから。会社名のデュラという部分も、「長持ち」と いうコンセプトを伝えている。 マーケティング担当者たちをこの危険な誘惑に追いやるものは、多くの場合、リサ ーチと呼ばれる例の素晴らしい仕掛けだ。大勢のリサーチャーが雇われ、見込客対象 のグループインタビューが実施され、質問票が作成される。そして戻ってくる分厚い

報告書はといえば、顧客が商品やサービスに求める属性の希望ソストだ。その結果、 人々が求めるものがかくかくのものであるなら、われわれはそれを提供すべきだとい うことになる。 みんながバッテリーを使う上で直面する最大の問題点は何だろうか。それは肝心な 時にだめになってしまうことだ。ではバッテリーに望まれる一番の属性は何か。いう までもなく長持ちすることだ。長持ちすることが人々の求めるものであるなら、広告 で訴えるべきはまさにそのことぜあろう。ところが、これが間違いなのである。 リサーチャーというものは、あるアイデアをどこか他の会社がすでに占有している 場合でも、その事実を決して告げはしない。それどころか、大々的なマーケティング キャンペーンを実施するようクライアントを促すのである。その論拠は、十分に金を 投入すれば、そのアイデアを自分のものにできるというのである。ところが、これま た間違った考えなのだ。 何年か前、バーガーキング社が、この危険な坂道を下り始め、結局、元のところに 戻れなかった。市場調査によれば、ファーストフードに最も望まれる属性は「早いサ

―ビス(ファースト)」であった(何とも当たり前の話だ)。そこぞバーガーキング社 は意気盛んなマーケッターたちの言う通りにやってみた。同社は広告代理店に向かっ て、「世間が早いサービスを望んでいるのなら、わが社の広告でも″サービスが早い″ ことを訴えてもらいたい」と注文をつけたのである。 このソサーチで見過ごされていたのは、 マクドナルド社がすでに、アメリカで一番 サービスの早いハンバーガーチェーンであるとの認知を得ていたことであった。「フ ァースト」という言葉はマクドナルド社が占有していたのだ。バーガーキング社はこ れにひるむことなく、「早くて最高の食事を」というスローガンの下に、キャンペー ンに打ってでた。このキャンペーンは、たちまちのうちに惨めな失敗に終わった。広 告代理店はお払い箱になり、 マネジャーはクビになり、会社は売りに出され、業績の 下降が続いた。 多くの人たちが、「独占の法則」を破ったことに対する代価を支払わされたのであ る。

 

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