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CHAPTER4 トヨタ流片づけが「習慣化」する方法

目次

そうじも仕事のひとつ

トヨタでは、整理・整頓・清掃・清潔を仕事のひとつと考え、習慣的に行っている。「そうじも仕事」ととらえれば、片づいた状態を維持できる

片づいた状態をキープする3つの活動

整理・整頓により、オフィスや工場は片づいてキレイになっていきます。そのあとに、その状態を維持していくための日々の活動があります。それが、5Sのうち残りの3つです。

「清掃」(キレイにそうじする。日常的に使うものを汚れないようにする)「清潔」(整理・整頓。清掃の状態を維持する)「しつけ」(整理・整頓・清掃についてのルールを守らせる)この3つが行われないと、せっかくキレイに片づいた状態がすぐに崩れてしまいます。

整理・整頓をやっても元の状態に戻ってしまい、整理・整頓を延々とやり続けなければなりません。つまり、片づけが「習慣化」されないと、職場の整理・整頓は完成しないのです。

汚い場所は、ますます汚くなっていく

そのうちのひとつ、清掃についてまず見ていきましょう。清掃とは、「キレイにそうじすること」。整理・整頓されたとしても、毎日の仕事のなかで、ゴミが出たり、汚れがついたりします。

だから、それらを取り除き、キレイな状態を保つ「清掃」という活動が必要になります。清掃が行われないと、身のまわりをキレイにしようという意識がどんどん低下していきます。

「キレイなところほど、ゴミを捨てられない」と思いませんか。その反対に、いつたん汚れてくると、さらに汚れていきやすい。

クルマで走っていると、道路わきの草むらに缶やペツトボトルなどのゴミが捨てられている場所を見かけます。

信号待ちをしているクルマのドライバーが、ゴミが投げ捨てられているのを見て、「ここならみんな捨てているし、大文夫だな」と思って捨てていく。そうしてどんどんゴミが増えていきます。

一方、草がきっちり刈られていて、常にキレイにキープされている場所には、ゴミが捨てられることはありません。キレイな状態をキープしておくと、キレイなままになります。

誰かが汚してしまうと、みんなも汚し始めます。オフィスを清掃をする理由も、ここにあります。常にキレイにしておけば、ずつとキレイなままでキープすることができるのです。

何より、身のまわりがキレイになるのは気持ちいいので、仕事にもフレツシュな気分で取り組めます。

清掃を怠ると、規律を守ろうという意識がどんどん低下していきます。一度、汚くなれば、片づけをするモチベーションも低下してしまう恐れもあります。

それを防ぐためにも、そうじをするためのしくみをつくらなければなりません。

清掃のための「時間」はあるか

トヨタ以外のさまざまな現場では、そうじをするための時間がちゃんと与えられていないといったことがよくあります。そもそも、そうじが仕事の付加価値を高めるものだと思われていないのでしょう。

時間が与えられていなければ、なかなかそうじを進んでやる気にはなりません。就業時間内、たとえば朝9時から夕方5時までの間に、5分なり10分なりのそうじの時間がもうけられているかどうか。

日々の忙しい仕事のなかでは、意識して「清掃のための時間」をつくっていかなければ、清掃するという活動は根づいていきません。

「清掃は、仕事ではない。仕事の合間にやるもの」と考える人が多いですが、トョタでは、清掃は大切な業務の一部としてとらえています。

清掃は、散らかつたあとや汚れたあとにやるものではありません。日頃から習慣化するものなのです。

清掃時間を業務に組み込む

清掃を習慣にするには、集中的に行う時間をもうけるのも方法のひとつです。

会社や部署単位で「水曜日の午後5時〜5時30分は清掃をする」という具合に清掃タイムをつくるのが理想ですが、そのような習慣のない会社もありますし、清掃会社に任せきりの会社も多いのが現実でしょう。

しかし、デスクまわりのそうじであれば、個人単位でもできます。清掃する時間をつくって、定期的にデスクまわりやパソコンの中身を片づけましよう。

たとえば、「始業時間から3分間は片づけタイム」「終業前の5分間は清掃タイム」「毎週金曜日の15分は清掃タイム」というように、日常業務のなかに組み込んでしまうのです。

個人的に片づけタイムをもうけて、日々の習慣にする。ほんの数分であれば、業務に支障が出ることはないので、心理的にも負担は少ないはずです。

職場や個人で清掃を習慣化し、整理・整頓された状態が維持できれば、わずかな清掃時間は十分に元がとれるのではないでしようか。

「そうじしないで済むしくみ」を考える

汚れるから、そうじをする。しかし、汚れなけれは、そうじの手間は大幅にはぶける。「そうじしないで済むしくみ」をつくるのも清掃のひとつである。

そもそも道具があるか

清掃のための「道具」はあるか、ということも重要です。

トレーナーの小笠原甲馬は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)がなかなか定着しない現場の指導に入ったことがあります。

そこで、気づいたのは、清掃のための「道具」が何もそろえられていないということでした。

「その職場では、5Sのための『時間』は与えられていたのですが、そのための『道具』が与えられていなかつた。だから、うまくいっていなかったんです」

その職場では、ほうきやぞうきんなどは用意されていましたが、洗剤関係が調っていませんでした。洗剤とひと口にいっても、床には床用、ガラスにはガラス用、設備には設備用のものがあります。

洗剤なしで、ぞうきんで拭くだけだとキレイにならない。専用の洗剤を使わないと2倍、3倍の時間がかかってしまいます。その職場で整理・整頓がなかなか定着しない理由はそこにありました。「時間は金なり」です。

だから、清掃をいかに効率的に行うかが大事。専用の洗剤をそろえておけば、短時間で終えることができ、続けやすくなるはずです。

清掃道具も「視える化」する

工場の部品やオフィスの文房具や備品のように、清掃道具についても、「視える化」することが大事なポイントとなります。多くの場合、清掃道具はロッカーの中にしまわれています。

たしかに、清掃道具はお客さまなどに見せるものではないので、隠しておきたいという気持ちになるのはわかります。

しかし、外から見えないようにしておくと、ほうきやモップが雑然としまわれることになります。これでは、汚い道具を使わなければならず、気持ちよく清掃できません。また、道具がなくなったり、傷んでいたりしてもわからないでしょう。

ですから、清掃道具についても、オープンにし、いつでも使えるように管理する必要があるのです。

お客さまの目につかないようなスペースで、なおかつ社員からはオープンになっているスペース。そんな場所を探して、清掃道具をまとめておくとよいでしょう。

たとえ清掃道具を置いていない会社であっても、自分のデスクまわりをすぐにそうじできるように、個人でぞうきんなど最低限の道具をそろえておくといいでしょう。

デスクから離れたロツカーなどに道具を入れておくと、どうしても億劫になってしまうので、できるだけデスクの近くに置いておくのがポイント。

たとえば、デスクの内側にハンガーなどでぞうきんやハンディモップなどをつるしておくと、気軽に清掃に取りかかることができます。

「清掃は点検なり」

トヨタには、「清掃は点検なり」という言葉があります。徹底的な清掃で異常が見つかるのです。

工場で清掃することのメリットは、「発生するゴミや小さな汚れのなかから異常を発見する」ことにもあります。だからこそ、時間や道具をしっかり確保し、清掃をしていくべきなのです。

たとえば清掃していて、床面にボルトが1つ落ちていたとします。それは一体、どこから落ちたのか。上を見て、左を見て、右を見てみる。設備のどこかが老朽化していて、そこからボルトが外れたのであれば、一人事となります。

ゴムのカスなどが落ちていたら、どう考えればいいでしょうか。設備のどこかのベルトが摩耗して劣化している可能性もあります。

それにいちはやく気づき、摩耗したベルトの交換などの処置を早急に行えれば、設備の故障を未然に防ぐことができます。

これは工場にかぎったことではありません。

日常的にオフィスやデスクまわりの片づけやそうじをすることで、「提出し忘れた書類」「処理していない仕事」が見つかることがあります。

たとえば、パソコンの中身の片づけをすれば、「メールの返信し忘れ」「締め切りが迫った書類作成」などに気づき、ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。

清掃は、いつもと違った状況に気づき、問題を発見していくチャンスです。さまざまな面で清掃は大事ですから、その労力を惜しむべきではありません。

「そぅじしないで済む」のが理想

清掃のなかには、清掃をしないで済むしくみを考えることも含まれます。

たとえば、鉛筆削り器を考えてみましょう。鉛筆をナイフで削ると、削リカスが出る。だから削り終わったあとは、削リカスをキレイに集めて捨てるというそうじが必要になります。

しかし、鉛筆削り器は、削リカスを集めるケースがついている。鉛筆を削ったときに、削リカスは自動的にそのケースの中にたまっていきます。ケースがいっぱいになったら、それを外してゴミ箱に捨てるだけ。つまり、そうじする手間をはぶくしかけが加えられているのです。

オフイスでいえば、シュレッダーのゴミを片づけるときに、必ず細断された紙くずが、いくらか床に散乱してしまうとしましょう。

そういうときは、それが散乱しない方法を考えるのです。このときのポイントは、紙くずを散乱させずにうまくやっている人を探すこと。その人のやり方を職場の標準として、自分たちも見習うことです。

うまくやる人を「特別」とは考えずに、みんなができるように標準化していくのです。職場の標準を上げていくことで、職場の清掃や片づけのレベルが上がっていきます。

清掃というと、すぐに「そうじ」を思い浮かべてしまいがちです。しかし、このように「そもそもそうじをしなくて済むしくみ」を考えることも、清掃のひとつなのです。

人によって「キレイ」は違う。

だから点検を!同じものを見ても、Aさんは「キレイ」だと思つても、Bさんは「汚い」と思うかもしれない。その差を埋めるのは、客観的な判断基準である。

「キレイ」「汚い」の感性の違いを埋めていく

次は、5Sの「清潔」について見ていきましよう。これは「整理・整頓・清掃の状態を維持する活動」のことです。

片づけがせっかくうまくいっても、時間の経過とともにだんだんと散らかってしまいます。うまくつくられたしくみであっても元に戻ってしまっては、それまでの苦労が水の泡です。

しかし、現実には、忙しい毎日のなかで忘れ去られ、省みられないことがしばしば起きます。そうならないために「清潔」を維持する活動を行うのです。

そこで「チェックシート」というツールを使うと、うまく進めやすくなります。特にオフィス全体で整理・整頓。清掃をやっていくときに、どうしても「人によって感性が違う」といった問題にぶつかります。

ある人は「うちの職場はいまのままで十分キレイだ」と言う。別の人は「うちの職場は何でこんなに汚いんだ」と言う。これではバラバラになってしまって前に進みません。

そこで、みんなでチェックシートをつくります。チェックシートにまとめることで、お互いの感性の差を埋められます。

たとえば、「床面をチェックしよう」とするだけでは、漠然としすぎ、一人ひとりの感性の差が出やすくなります。誰がチェックするかによって判断基準が異なってきて、ばらつきが生まれます。

ばらつきが出てくると、「整理・整頓。清掃の状態を維持する」活動がむずかしくなってきます。

そうではなくて、「床面のどこをどのようにチェックするのか」などのチェック項目をつくり上げ、誰がチェックしても同じ行動がとれるようにするのです。

私たちが現場の指導に入るときは、その現場の人たちみんなを集めて、「どこをどのようにチェックするのか」を話し合ってもらっています。

全員で意見を出し合い、考え合い、具体的な項目に落とし込んでいくことで、感性の違いを乗り越えていけるようになるのです。

片づけができているか自己チェックする

個人で片づけを実行するときにも、チェックシートは役立ちます。たとえば、デスクまわりのチェツクポイントをシートにまとめて、一つひとつ確認していくのです。

項目がたくさんあると、チェックするのがたいへんなので、必要最低限のものがあれば十分。ただし、ポイントは、次のように誰がやっても同じ判断ができるような基準とすることです。

  • 床にモノが置かれていないか。
  • 未処理の書類がデスク上に置かれていないか。
  • 1週間以上使われていないモノがデスクまわりに置かれていないか。
  • 文房具やフアイルは決められた場所に戻されているか。
  • パソコンのデスクトップ上のフオルダが3列を超えていないか

「デスクの上が片づいているか」など、あいまいな表現だと、ついつい評価が甘くなってしまいます。チェックの頻度は、1週間に1度など定期的に行うのが理想です。

清掃を業務の一部として組み込み、定期的に清掃をしている人は、清掃と一緒にチェックも済ませてしまえばいいでしよう。

定期的な「赤札作戦」も有効

第2章で「いらないもの」を明らかにする「赤札作戦」について述べましたが、3ヵ月や半年に1回という頻度で、定期的に赤札作戦を実行することも、清潔を保つ方法として有効です。

「いらないもの」が増えたり、関係者が異動・退職などでいなくなると、赤札作戦をやっても、判断がつきにくくなります。

つまり、実施期間が延びれば延びるほど、赤札作戦の実施は困難を極めるのです。

短いサイクルで赤札作戦を実施すれば、赤札を貼られないように「いらないもの」を置かなくなりますし、清潔を保つことを常に意識するようになります。

「決めたことができない」のはリーダーの責任

職場全体で片づけに取り組むときは、リーダーの存在が大きな役割を担う。トヨタでは、「しつけ」こそ片づけを継続させる根本だと考えている。

「やれ!」だけでは人は動かない

整理・整頓・清掃。清潔がいかに大切かわかっていても、なかなかそれを実行に移せず、オフィスや工場に定着しないことがしばしば起きます。

特に職場全体で片づけに取り組む場合は、一人ひとりが高い意識で取り組まなければいけません。だから、いちばん最後に、それを徹底して守らせる「しつけ」が必要になります。

さまざまな現場を指導してきているトレーナーの藤原健二が直面するのは、次のような場面です。

「いろんな現場でそこのリーダーの方から、『うちは5Sのルールを決めたんだけど、なかなか社員が実行できない。どこが悪いんでしょうか』とよく聞かれます。

そうしたとき、私はちょっと間を置いて『あなたの仕事は何ですか。そのルールを徹底して続けさせていくのが、あなたの仕事ではないのですか』と言う。すると、その方はたいてい言葉に詰まってしまう。あとの言葉が出こなくなるのです」会社や工場の社員には、日々のやらなければならない仕事があります。

それをきっちりやりつつ、整理・整頓・清掃・清潔を進めていかなければなりません。

だから、ともすると、日々の作業に追われ、せつかく決めたルールがいつしか守られなくなりがちです。

そこで、そのルールがしっかり守られているかどうかのチェック機能が必要となり、現場のリーダーたちの力量が問われてくることになります。

「決めたことをやらせる」のが、現場のリーダーの仕事なのです。部下が教えても実行できないのは、教えるほうの責任です。

3回言ってもできないなら、10回言う。10回言ってもできないなら、20回言う。それが「しつけ」なのです。

「現場任せ」のリーダーは片づけを習慣化できない

リーダーが「整理・整頓は現場の仕事」という姿勢でいる職場は、絶対に片づけが習慣化しません。

「整理・整頓は大事だ。だから、現場で徹底してくれ」と言っても、現場の従業員のなかには、「整理・整頓は仕事ではない」と思っている人もいます。

「整理・整頓は仕事の一部である」とリーダーやトップが理解していないと、絶対に職場全体に浸透しません。

職場の片づけを習慣化できるどうかは、リーダーの手腕にかかつているといっても過言ではありません。ただし、ただ「やれ―」と言うだけでは、人は動きません。

悪いところ、欠点となっているところを現場のリーダーがどんどん指摘するだけでは、部下はたまったものではありません。うまくいかないことには、その理由が絶対にあるはずです。

「守らない」のではなく、「守れない」合理的な理由があるケースも少なくありません。

その理由が何かを部下に聞いていかないといけないのです。ここでいきなり怒ってはダメ。「どうしてそうなつたか」「何かやりにくいところがあるのではないか」と聞き出していくことが必要です。

それは些細な理由かもしれませんが、合理的な理由である場合は、改善をして、守れる状況にする必要があります。そうでなければ、どんなルールも続くわけがありません。

「百聞は一見にしかず」には続きがある

片づけのルールを守るのは、現場の従業員だけではありません。経営層や部長、課長などのリーダー層もまた、例外なくルールを守る必要があります。

そうしなければ、守らない上司を見て、「ああ、守らなくてもよいのだ」と感じる部下が出てくるからです。リーダーは、ルールを守るだけでなく、率先して活動しなければなりません。

たとえば、ゴミが床に落ちていれば、リーダー自らゴミを拾う。「あれをやれ」「これをやれ」と指示するだけでは、説得力がありませんし、従業員は真剣に取り組みません。

「百聞は一見にしかず」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これには続きがあります。

百見は一考にしかず(いくらたくさん見ても、考えなければ前に進まない)百考は一行にしかず(どんなに考えても「行動」を起こさなければ前には進まない)百行は一果にしかず(どんなに行動をしても、成果を残さなければ成長しない)リーダーが率先して取り組む姿勢を見せなければ、部下はついてきません。

逆に、リーダーが本気で取り組む姿勢を見せれば、片づけの習慣が職場に浸透していきます。リーダーは、部下にルールを守らせるのも重要な仕事です。

トヨタの指導方法の基本は、「現地・現物」。いかなる指導も机上ではなく、徹底して現場で行うのが原則です。片づけを徹底させるときも、現地。現物でないと意味がありません。

つまり、報告書を読んで「あそこの在庫を整理しなさい」、数日たってから「この間、あそこが汚れていた」と言うのでは、部下も納得しません。

リーダーの本気度がモチベーションを高める

トレーナーの岩月恒久が指導に入ったある製造業の会社では、整理・整頓の徹底により、工場内にあったうちの8割くらいのモノを捨てた結果、半日かかっていた作業時間が、何と45%も低減しました。

以前の工場内は、フォークリフトがギリギリ入るような通路でしたが、大型バスが入るくらいにまでスペースが生まれたのです。その会社が成功した秘訣のひとつは、工場長のリーダーシップにあります。工場長が従業員と一緒になって清掃をするなど共に汗を流し、率先垂範の姿勢を見せたのです。

パフォーマンスで中途半端に実行したら、逆効果ですが、職場をよくしたいという気持ちが入っていれば、リーダーが先頭に立って整理・整頓を行うことは、従業員のモチベーションを高めることになります。

このとき工場長が、従業員にこんなことを語りかけました。

「奥さんや子ども、家族を連れて来られるようなキレイな職場にしよう」このひと言で、従業員のやる気に火がつき、整理・整頓に勢いがついたのはいうまでもありません。

その後、実際に従業員の家族を工場に呼んで、バーベキューパーティーをしたといいます。リーダーが率先して整理・整頓に携わることで、片づけの習慣は持続するのです。

「原理」「原則」を教えないと定着しない

トョタでは、「三現主義」という考え方を大切にしています。

三現主義とは、「現場」「現物」「現実」の3つの「現」を重視し、机上ではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識したうえで、問題の解決を図らなければならないという考え方です。

トレーナーの中島輝雄は、この三現主義を一歩進めた「五現主義」をモットーとしています。

「残りの2つは、『原理』と『原則』。簡単に言うと『なぜそうなっているのか』と『基本的な判断基準』のことで、これらを認識していないと、『作業を何のためにするのか』という視点が抜けてしまいます。

すると、表面的な問題解決にしかならず、本当の意味での問題解決につながりません。整理・整頓や清掃も同じ。

『何のためにするのか』という目的がわかっていないと、一時的な活動で終わってしまって、継続できません」たとえば、車体をつくるときは、鉄板同士を溶接でくっつける。

そのときに生じた細かな鉄粉が設備の中に入って悪さをすることがあります。また、これが床に落ちていれば、すべりやすくなり、人が転ぶ危険性もあります。

だから、清掃をしないと設備が止まったり、すべつてケガをしたりする恐れがあるわけです。そうした物事の流れや関連性を教えてあげないと、従業員のなかに、本当の意味での清掃の重要性は定着しません。

単純に「キレイにしなさい」と声高に叫んでいるだけでは、積極的に取り組むようにはならないのです。

たとえば、車体をつくるときは、鉄板同士を溶接でくっつける。そのときに生じた細かな鉄粉が設備の中に入って悪さをすることがあります。

また、これが床に落ちていれば、すべりやすくなり、人が転ぶ危険性もあります。だから、清掃をしないと設備が止まったり、すべつてケガをしたりする恐れがあるわけです。

そうした物事の流れや関連性を教えてあげないと、従業員のなかに、本当の意味での清掃の重要性は定着しません。

単純に「キレイにしなさい」と声高に叫んでいるだけでは、積極的に取り組むようにはならないのです。

「かつて5Sコンクルールで賞をとった会社を指導したことがあります。しかし、実際に現場に入ってみたら、まったく徹底されていなかつた。一時的にイベントとして一生懸命5Sに取り組んでも、それは表面的なもので終わってしまいます。こういう職場は山ほどあるんです。

『何のために片づけをするか』という目的が浸透していない会社では、すぐに元のように、乱雑な職場に戻ってしまいます

職場に片づけの習慣を定着させようと思えば、リーダーが中心となって、片づけをする目的を伝えなければいけないのです。

「片づけると楽になる」と実感する

「片づけるのはたいへん」という心理的な壁を取り払うには、効果を体感するのが手っ取り早い。まずは、一部でも片づけてみることが大事。

成果を実感するのが先決

片づけを習慣化するには、その効果を実感することが重要です。岩月恒久は、指導先企業の研修で整理・整頓の大切さを教えるために、次の方法を用いています。

シャープペンシルやボールペン、ホテキスなど文房具をいっぱいに詰め込んだ筆箱を用意し、研修生に「この中から赤ペンを取り出してください」「ホチキスを取り出してください」という指示を出します。

しかし、筆箱の中には赤ペンやホテキスが複数入っており、なかにはインク切れした赤ペンや、針の入っていないホチキスも紛れ込ませてあります。

すると、多くの人は、すぐに目的の文房具を取り出せません。インク切れの赤ペンなどを選べば、さらに時間がかかります。運が悪いと数十秒かかることもあります。

そのあとに、これらの文房具が1つずつ入った筆箱を渡し、同じことをしてもらいます。すると、赤ペンもホテキスも1つしかないから迷いようがありません。わずか数秒ですぐに取り出せます。

「研修では、実際の企業現場で話ができないので、筆箱を整理されていない引き出しと見立てて、説明するんです。

余計なものが入っていない筆箱のほうが、圧倒的に時間が短縮できることを実感すると、多くの人は整理・整頓の効果を『なるほど』と体感することになります」「片づけると楽になる」ということを実感すると、人は片づけを習慣化しやすくなるのです。

「何で変えないといけないの?」

もうひとつ例を紹介しましょう。トョタの機械部で活躍したあと、トレーナーを務める土屋仁志は、ある小売業の倉庫業務の改善に取り組みました。

40〜50人のパートさんが働く倉庫では、トラックで入庫した商品を、袋に詰め直して出荷するのが仕事。

しかし、商品が倉庫のあちらこちらに置いてあり、わざわざ遠くまでとりに行ったり、2階と1階を何度も行き来するような状況でした。

パートの女性たちに「なぜ、もっと近くに置かないのですか?」と尋ねても、「だって、置く場所がないから」と答えるばかりで、特に問題だと感じていないようでした。

しかし、ムダが多いせいで生産性が落ちているのはあきらかでした。

「『近くに必要なものをそろえれば、もっと楽に作業ができますよ』と私が言っても、みなさんピンとこないようでした。

それどころか、『これまでこのやり方でやってきたのに、何で変えないといけないの?』という反発の声も聞こえてきました。

これまでの状態が当たり前だと思っているのですから、それもしかたありません。だから、まずは整理・整頓の効果を体感してもらうことを優先したのです」

作業時間が大幅に短縮!

まずは使わないものはすべて撤去し、ムダに積んであったダンボールもどかしてもらいました。そして「いるもの」は作業場の近くにまとめて置くようにしたのです。すると、どうなつたと思いますか?

「作業が早くできるし、移動も少なくて楽になりました―」とパートのみなさんが喜んでくれたのです。

それからは、パートさんも積極的に5Sの活動に取り組んでくれるようになり、倉庫業務の改善はスムーズに進んでいきました。整理・整頓の効果は数字にもあらわれました。

それまで15時半が定時で、ときには18時まで残業していることもあったのに、14時半にはすべての作業が終わるようになったのです。

つまり、作業効率が上がっただけでなく、残業代のコストまでカットできたのです。

片づけを習慣化するには、最初に整理・整頓の効果を実感してもらうことが肝要です。効果を肌身で感じられれば、積極的に行動を起こすようになっていきます。

リーダーが片づけの習慣を定着させようと思えば、まずはカンタンにできる個所や負担の少ない場所から手をつけてみる。

そこで効果を実感させてから、本格的に整理・整頓に取り組めば、習慣化はスムーズに進むでしょう。

スペースごとに片づけると効果を実感じやすい

これらのことは、もちろんオフィスでも、個人の片づけでもいえることです。

デスクまわりが「いるもの」ばかりになり、「必要なもの」を「必要なとき」に取り出せるようになれば、すぐに片づけの効果を実感できるはずです。

ただし、すべてを一気に片づけようと力が入ると、片づけるものがいっぱいで、途中で挫折する可能性があります。

そもそも、「これはたいへんだ」と片づけに手をつけられない人もいるかもしれません。ですから、まずはデスクまわりの一部だけを片づける。そこで、片づけの効果を実感してから、ほかのスペースも順次、片づけていきます。たとえば、まずは「書類の山」を片づける。

これがうまくいったら、次は「デスクの上」、次は「引き出しの中」というように、部分ごとに処理していくのです。

このように少しずつ効果を体感しながら取り組むと、「もっといろいろなところを片づけたい」という衝動にかられるはずです。

「きび団子」を用意する

片づけの習慣をオフィス全体に広げるには、スタッフが前向きに取り組むためのしかけが必要になる。そのひとつが、「きび団子」である。

「片づけるとどんな利益があるか」を示してあげる

「片づけは面倒くさいもの」というイメージがあります。だから、頭ごなしに「きちんと片づけろ。そうじしろ」と言っても、部下は「やらされている」という感覚にしかなりません。

だから、片づけを継続させるには、「どういうメリットがあるか」ということを根気強く伝える必要があります。

トヨタの現場でも、入社したばかりの従業員は、最初から整理・整頓の習慣が身についているわけではありません。

従業員のなかには、整理・整頓や清掃に真面目に取り組まない者も出てきます。

「片づけは、何のためにするのか」という目的を理解していない段階では、どうしても「やらされている」という域から出ることはありません。

トレーナーの中野勝雄は、「整理・整頓や清掃が自分の利益になることを伝えないと、自発的に取り組むようにはならない」と言います。

「生産性がどうの、品質がどうのと説明しても、なかなか最初はわかってもらえません。だから、『整理・整頓やそうじをがんばったら、自分が報われる』という視点から話してあげることがポイントです。

整理・整頓が徹底されれば、生産性が上がり、利益が出て、自分たちの給料に跳ね返ってくる。業務の効率がよくなれば、恋人とのデートや趣味にかけられる時間だって増える―‐。このように自分の利益につながるということを繰り返し伝えるのです。

実際に、整理・整頓を続けていけば、生産性や効率は確実にアップするので、整理。整頓の効果を肌で実感するはずです。ここまで来れば、もう大丈夫です」整理・整頓や清掃を継続させるには、こうしたリーダーの地道な説得も必要になるのです。

l00円の賞金が社員をやる気にさせる

片づけを習慣化させるには、整理・整頓によって得られた成果に報いることも大切です。

トレーナーの山口悦次が指導に入り、経営改革に成功したある企業では、従業員による改善提案が盛んに行われ、整理・整頓が従業員の創意工夫で、どんどん進化しています。

同社で、改善提案が積極的に行われる理由のひとつは、改善提案をしてくれた従業員に対して、100〜500円ほどの賞金を出すようにしたことにあります。

その代わり、改善をすることで、どのくらいの儲けやコストダウンにつながるか、その効果を具体的な数字で示すのが条件。

だから、「この在庫を整理したら、スペースコストが○万円削減できます」「この作業を改善したら、時間が○分、人件費にすると○円削減できます」といった利益に直結する提案が次々と挙がってくるようになっていったのです。

「もらえる金額はたいしたことはないけれど、自分たちの努力がお金という形になって戻ってくることが従業員をやる気にさせているんですね。

仲間同士でお金をためて、お菓子を買ったり、部署ごとにライバル意識を持って競い合うなど、前向きな改善案を提案しています。

百円ショップで整理・整頓に使えそうな収納箱を買ってきて、何万円ものコストダウンを達成する社員もあらわれる。

整理・整頓も一時的な活動ではなく、こうした制度として定着すると、常に改善が行われていく強い組織になつていきます」

リーダーは桃太郎たれ!

トヨタ時代に車体の製造を手がけていた山本義明も、成果に報いる大切さについてこう話します。「トヨタ在籍時代は、『指導者は桃太郎たれ』という話を上司からよく聞かされました。

桃太郎は鬼退治をしたが、1人だけではできなかった。キジ・サル・イヌの3匹の部下がいたからこそできた。キジは情報を集め、サルは知恵を使い、イヌは実践した。そして、彼らにがんばってもらうために、きび団子を与えた。

人間ですから、『やれ、やれ』ばかりではちっとも動きません。よくやってくれたのであれば、相手がちょっとでも喜んでくれることをやってあげる。

すると、その気になって、こちらが言わなくてもさらにどんどんやるようになります。きび団子の1つくらいは用意してあげないと」山本は、トヨタ時代のこのときの経験を生かした指導を行っています。

「『きび団子』を用意するといっても、何も金目のものである必要はありません。そういうものを用意しなさい、と指導することもありません。大事なのは、がんばつてくれた社員がちょっと喜んでくれることをしてあげるということです。

そうすると、『忙しくて手がまわらない』といった言い訳をすることがなくなり、気持ちが変わって、みんながどんどん動き始めます」

こうしたきび団子作戦は、工場にかぎらず、オフィスでも実行できる考え方です。

「社員の成果に報いる」というオフィス環境を実現できれば、それは片づけの習慣が根づいていく大きな原動力となるはずです。

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