第2章売上OSが利益OSに変わる!売上最小化、利益最大化の法則
1売上と利益をセットで管理する思考法
売上は上がっても利益が上がらない理由創業から20年の歳月が流れた。
北の達人コーポレーションは、売上約100億円、営業利益は約29億円(2020年2月期)となった。
多くの会社の利益率が3%程度なのに対し、当社は29%となっている。
従業員数が少ないから一人あたり利益率は高い。
東京証券取引所(東証)一部上場企業従業員の平均人数は約7300名。
一人あたり利益は約303万円(2019年12月〜2020年11月決算)。
当社の従業員は125名なので一人あたり利益は2332万円(2020年2月期)。
東証一部上場企業平均と比較して一人あたり約7・7倍の利益を上げていることになる。
多くの人は売上が100億円になったことに注目する。
しかし、私は利益29億円に意味があると思っている。
一般的に、売上は多ければ多いほどいいといわれる。
だから多くの経営者は売上を最大化しようとする。
経営者は自分の会社を大きく見せたい。
大きく見えるポイントは売上と従業員数だ。
売上を上げることは悪いことではない。
売上が上がり、利益も上がれば問題ない。
しかし、売上が上がれば、単純に利益も上がるわけではない。
利益をグロスで見ると、黒字でも、受注ごと、商品ごとでは赤字が含まれているケースがある。
売上を追いかける会社は、一つの受注、一つの商品が赤字でも、別の受注で大きく黒字になれば、全体として採算が合うと考える。
しかし、そもそも赤字の受注がなければどうなるか。
赤字の商品を扱わなければどうなるか。
受注しないから売上は下がる。
だが、利益は増える。
2000年頃、ほとんどのネット通販は売上が上がっても利益が出ていなかった。
利益は後からついてくると考えられていたからだ。
ところが、ネットビジネスはスピードが速い。
赤字を出しながら市場シェアを獲得し、後で資金回収するビジネスモデルが通用しない。
たとえば、広告投資をしてシェア拡大を狙ったとしよう。
広告を出せば一瞬だけ売上は上がるが、大きな経費のため赤字になる。
その後、広告をやめ、トップシェアの利を活かして投資分を回収しようとする。
しかし、その段階で競合が参入し、一気に市場を取られる。
投資分を回収できないまま倒産する。
そんな会社を何社も見てきた。
ネットビジネスではマメに利益を回収すべきだ。
その考えは今でも変わらない。
変化の激しい今の時代、先行投資期に売上が上がっても、回収期には市場がガラッと変わり、利益が回収できないケースが多発している。
だからこそ売上と利益をセットで管理する経営方式が必要だ。
私は創業時から、売上を商品ごとに個別に見て、どの商品の売上がどれだけ利益に結びつくかを考えていた。
商品ごとに原価、売れるまでの手間、経費が異なるからだ。
同じ利益なら売上は少ないほうがいい図表4を見てほしい。
A社売上100億円-原価&販管費97億円=利益(営業利益)3億円*営業利益率3%B社売上10億円-原価&販管費7億円=利益(営業利益)3億円*営業利益率30%一般的には、売上が多いほうが「いい会社」とされる。
だから、A社のほうがよいと思うだろう。
だが、A社もB社も利益は同じ3億円だ。
注目したいのは、3億円の利益を出すために、どれだけのコストがかかったか。
右の式で言えば、原価&販管費の部分だ。
利益(営業利益)は以下のように算出される。
利益(営業利益)=売上-原価-販売管理費(販管費)営業利益3億円を上げるのに、A社は原価と販管費を97億円使った。
B社は7億円を使った。
よって約14倍のコスト差がある。
B社のほうが圧倒的に効率的だ。
代表的な販管費について、図表5にまとめた。
売上が少ないほうが経営が圧倒的に安定する理由A社に勤める人は「同じ利益でも、うちのほうが売上が多い」と言い、B社に勤める人は「同じ利益でも、うちのほうが効率的だ」と言うだろう。
この議論は平行線をたどることが多い。
だが、企業の安定性を比べたらB社が圧勝する。
図表6を見てほしい。
不景気やアクシデントなどによって、A社、B社ともに売上が10%下がったとしよう。
A社の売上は90億円、B社は9億円になる。
原価と販管費には、売上に連動して減るもの(変動費)、固定的にかかるので売上が下がっても減らないもの(固定費)がある。
ここでは変動費は、売上の50%としよう。
A社の変動費は50億円が45億円と10%下がる。
しかし、固定費は47億円で変わらず、原価と販管費の合計は97億円が92億円となる。
B社の変動費は5億円が4億5000万円と10%下がる。
しかし、固定費は2億円で変わらず、原価と販管費の合計は7億円が6億5000万円となる。
営業利益を算出すると、次のようになる。
A社売上90億円-原価&販管費92億円=営業利益マイナス2億円*営業利益率マイナス2・2%B社売上9億円-原価&販管費6億5000万円=営業利益2億5000万円*営業利益率27・8%B社は営業利益が2億5000万円になり、営業利益率は27・8%と高収益を維持できている。
一方のA社はなんと営業利益がマイナス2億円と赤字に転落した。
同じ利益であれば、売上が少ないほうがリスク耐性が高いということがおわかりいただけただろうか。
売上10倍は「リスク10倍」を意味する利益が同じ場合、売上が多いほうがリスクは大きい。
経営していると実感するが、想定外のアクシデントは常に起きる。
そしてアクシデント量は利益ではなく売上に比例する。
商品数、顧客数などが多いからだ。
売上10倍はリスク10倍を意味する。
私が経営において大事にしているのは、顧客満足度を高めることだ。
お客様に100%満足していただければ、永続的経営に近づく。
しかしながら、売上を上げたい一心でやみくもにお客様を増やすと、一人ひとりの顧客満足度を高める施策に力が注げない。
売上が上がり、仕事が増え、従業員が増え、会社の規模が大きくなる。
これは一般的によいこととされる。
だが、その分アクシデントも増え、管理の手間も増え、やりたいことに注力できなくなる。
規模が大きくなることは、必ずしもいいことばかりではない。
本業の販売活動から得た利益を表すのが「営業利益」だ。
営業利益に対して原価や販管費がどれくらいかかっているかを見ることで、企業がどのくらい適切に投資しているかを判断できる。
広告宣伝費を多くかければ売上は増えるが、営業利益は下がる。
だから原価や販管費をいくらかけてもいい、というわけではない。
営業利益に対して原価や販管費が高い場合、無駄なコストを払っている可能性が高い。
当社のようなネット通販の場合、広告費を無限に使えたら売上も無限に上がる。
売上100億円を達成したければ、広告投資を大量にすればいい。
だが、利益は上がらない。
だから、管理が重要だ。
現在は常時約5000本の広告を出稿しているが、そのパフォーマンスを毎朝確認している。
採算が合わない広告はやめ、採算が合う広告だけが残っていく。
2利益体質の会社をつくり史上初の4年連続上場メルマガ発行数は3倍なのに、売上は1・3倍のワケeコマース市場は2000年前後に日本に登場した。
そもそもネットでモノを買う人が少ない時代で、サイトに商品を掲載しておくだけでは売れなかった。
いかに興味がない人に興味を持ってもらい、買ってもらうかを業界全体で試行錯誤していた。
多くの会社がメールマガジン(以下、メルマガ)を発行し、企画やキャンペーンを工夫して売上を上げた。
たとえば、「発注担当者が50個仕入れるはずなのに、一桁間違って500個仕入れてしまいました。
30%引にするのでぜひ買ってください」とメルマガに書く。
その真偽はわからないが、イベント的に売れることがあった。
売れているサイトは毎日何らかの企画を考え、メルマガを発行した。
私も週1回メルマガを発行していた。
頻度としては少ないほうだった。
そこでメルマガの発行頻度を週1回から週3回に増やした。
目新しい商品を仕入れ、セールスポイントを文章化する。
業務は増加したが、売上増加を期待した。
だが売上は1・3倍にしかならなかった。
メルマガを出す労力は3倍になったのに、売上は1・3倍にしかなっていない。
このとき、「売上さえ上がればいい」という考え方なら、こうすることもできた。
週1回売上1↓週3回売上1・3倍↓週7回売上1・5倍実際、この作戦を実施するネット通販は多かった。
だが、私は効率が悪いと思った。
周囲の流れに乗って、次から次へと企画やキャンペーンをやっていたら確かに売上は上がる。
でも、売上を上げるのにかかる手間やコストが増加して利益は少なくなる。
メルマガを出さなくても売れる仕組みを考えないと利益体質にはならない。
「多産多死」から「少産少死」の経営へ「売上最小化、利益最大化」を目指すには、まず「少産少死」の経営を徹底する。
商品・サービスを「少産少死」にすること。
商品は一生売り続けるつもりで開発する。
ダメになったら廃番にしようと考えず、ロングセラー前提で商品開発を行う。
この反対が「多産多死」の経営だ。
「多産多死」の経営は流行りの商品を次々に出す。
一つの商品に依存せず、いつも商品が入れ替わって売上が立つ仕組みになっている。
人は新しいものに興味を持ちやすい。
新しいだけで魅力的だ。
その点で勝負するには、常に新しいものをつくり続けなくてはいけない。
だから、「多産多死」の経営はコスト高になる。
販売形態によってもコストは大きく変わる。
当社は通販しかやっていない。
しかし売上を最大化するため、通販と店頭販売の両方をやる会社が多い。
こうした会社のほとんどは、どちらかが赤字になっている。
私なら黒字事業に特化し、赤字事業をやめる。
経営者の中には、「通販と店頭販売をやることで宣伝になる。
相乗効果がある」と言う人がいる。
しかし、利益率は低くなる。
両方やるとオペレーションも2種類必要になるから社員教育やノウハウの蓄積などにコストがかかり、利益を圧迫する。
なぜ利益が少なくなるのに、多くの会社が通販と店頭販売の同時展開をやめられないのか。
売上志向だからだ。
利益を起点に考えていないので、売上が上がることに手を出してしまう。
矢沢永吉に触発された「DtoC」×「サブスクリプション」モデル当社は「悩みを解決する商品」を開発し、お客様に届ける。
お客様に商品をきちんと使ってもらえるよう工夫した説明書もつける。
無料カウンセリング相談もやっている。
一回買ってくれたお客様とは一生おつき合いするつもりだ。
私自身、商品に対して責任を持って販売しようという気持ちは創業当初から強かった。
取扱商品をきちんと選び、わかりやすく説明し、お客様に心底満足していただきたい。
だが、商品数が増えると責任の量も増えていく。
北海道の特産品を扱っていたときには、「このまま商品数が増えていくと手に負えない」と感じていた。
そんな時期に、オリゴ糖でつくられた「便通を改善する」健康食品に出合い、これが爆発的に売れた。
詳しくは第4章で述べるが、その後も堅調に売れ続けた。
その頃読んでいた何かの本に、矢沢永吉さんの言葉が書かれていた。
それは「一回レコードを買ってくれたお客様とは一生つき合っていく」という趣旨のセリフだった。
私も、うちの商品を一回買ってくれた人とは一生つき合うつもりでやっていこうと思った。
こうして「北の達人」の事業モデルが確立された。
ひと言で言えば、「DtoC」×「サブスクリプション」だ。
DtoCとは「DirecttoConsumer」の略で、自社ブランド商品を、ネットを活用して直接顧客に販売するビジネスモデルだ。
サブスクリプションは、アプリに対する毎月の課金をイメージする人が多いが、当社の場合、定期購入を指している。
取扱商品は、健康食品、化粧品など1か月で使い終わるものだ。
だからお客様に気に入ってもらえば、毎月購入していただける。
品質の高い商品でロングセラーを狙うビジネスモデルで、定期購入による売上比率は約7割と高い。
これが利益を生み出す源泉になっている。
利益は目的、売上はプロセス会社を利益体質に変えるには、利益目標を設定することだ。
無収入寿命でもいい。
多くの人は昨日の続きの仕事をやって、いつかゴールにたどり着くと考える。
だが、今までと同じように歩いてもゴールにはたどり着かない。
目的地を設定するから軌道修正も可能になる。
同じことを続けていいのか、仕事の優先順位ややり方を変える必要はないのか、徹底的に自分に問う必要がある。
だから、利益目標の設定を毎月、見直す。
利益につながらない仕事を見つけたらやめる。
このときグロスで利益を見るだけでは足りない。
業務ごとに利益を管理する。
業務ごとに採算が合っているかを見て、合っていないところはすべて切る。
多くの人が「そうすると、売上が下がってしまうのではないか」と言うが、そもそも売上を求めなくていい。
コストは、何でも削減すればいいわけではない。
適切な投資はするべきだ。
ただし、施策と利益との関連性は常に数字で評価する。
当社は、第3章で紹介する5段階利益管理でそれを行う。
これを怠って施策を楽観的に評価するとすぐ赤字になる。
「この広告を打つことで、いつか利益が上がるだろう」と期限も根拠もないことを言ってはいけない。
売上と利益は対比するものではない。
利益が絶対の目的であり、売上はそのプロセスだ。
東証一部上場に売上と従業員数は関係ない私はかつて「東証一部に上場するには大企業でないと無理だ」と勝手に思い込んでいた。
ところが上場基準を見ると、売上と従業員数の基準はなかった。
当社は利益重視の経営で、4年連続上場した。
これは史上初のことだった。
2012年札幌証券取引所新興市場「アンビシャス」上場2013年札幌証券取引所本則市場(通常市場)上場2014年東京証券取引所(東証)二部上場2015年東京証券取引所(東証)一部上場第1章で触れたとおり、私はリョーマという学生企業にいた。
創業者の真田哲弥さんは現在東証一部のKLab株式会社の会長、もう一人の創業者の西山裕之さんは同じく東証一部のGMOインターネット株式会社の副社長だ。
私がアンビシャスに上場したとき、リョーマの同窓会があった。
西山さんは以前、GMOインターネットの子会社「GMOアドパートナーズ」の社長をしていて、会社設立後364日でジャスダック市場(当時ナスダックジャパン)に上場した。
当時、会社設立後史上最短での上場記録だった。
真田さんはマザーズに上場してから8か月後に東証一部に上場した。
これも当時、史上最短記録だった。
先輩2人が上場記録を持っていたので、私も記録をつくりたいと思っていた。
だが、売上や規模を増やそうとしたことはない。
一般的に企業は、まず売上を最大化させ、コストを削減しながら利益を出そうとする。
当社の発想はそれとは真逆のアプローチだ。
利益目標が先にあって、その目標を達成する最小の売上目標を考えているのだ。
3新入社員に社長がしている「」お金を儲けることは不道徳か会社を利益体質にするには、社長が利益の大切さを繰り返し語る必要がある。
社員を利益志向にするためだ。
お金に関する考え方は人それぞれ違う。
なかにはお金を儲けることが不道徳なことだと考えている人もいる。
利益とは何か、利益を上げることにはどんな社会的意義があるのか、日常の仕事と利益はどう関係しているか、共通認識を持つ必要がある。
これから紹介するストーリーは、利益に対する「北の達人」の考え方を示したものだ。
新卒社員、中途入社社員には私が直接研修を行っている。
中途入社社員の中には、前職で「売上を上げろ」という教育を徹底的に受けた人も多い。
そこで売上とは何か、利益とは何かを改めて考えてもらう。
この話は、経営者向けの講演でもすることがある。
基礎的な話だが、研修の実況中継だと思って読んでほしい。
稼いでいる会社は多くの人に役立っているAさんは自分でつくった鍬で畑を耕していた。
あるとき、隣の畑を耕すBさんを見て驚いた。
Bさんの鍬は特別仕様でつくられていて、同じ時間で2倍の仕事がこなせる。
Aさんは、「ぜひその鍬と同じものをつくってくれ」と頼んだ。
Bさんは、「いいけど、あなたの鍬をつくっていると、私が作物をつくる時間がなくなる。
鍬をつくる時間分に相当する作物を分けてくれたら引き受けるよ」と言った。
こうして物々交換が誕生した(図表7)。
やがてBさんの鍬は評判になった。
あるときCさん、Dさん、Eさんが作物を持ってBさんの家にやってきた。
「Bさん、この作物をあげるから、私たちにも特別仕様の鍬をつくってくれないか」Bさんは困った。
たくさんの作物をもらっても、食べる前にいたんでしまう。
するとCさんが、「それなら好きなときに私の作物と交換できる券をつくろう」と兌換券を渡した。
こうして通貨が誕生した(現実には金が価値を保証する金兌換券だが)。
兌換券1枚=特別仕様の鍬=鍬をつくる時間に相当する農作物3つが同じ価値になった。
図表8のとおり、モノやサービスの価値を置き換えたものがお金だ(ここでは兌換券)。
お金は人の役に立つともらえる。
価値とは、どれだけ他者の役に立つかということだ。
役に立つかどうか、価値があるかどうかは、お金を渡す側が決める。
「自分は相手の役に立っている」「一所懸命に働いている」と思っても、相手がそう思わなければお金を支払ってはくれない。
私があなたに唐突に「1万円ください」と言ったら断るだろう。
では、どんなケースなら1万円を私に渡すだろうか。
それは1万円分、あなたの役に立ったときだ。
つまり、金額分、相手の役に立たないとお金は絶対にもらえない。
Bさんは特別仕様の鍬をたくさんつくり、たくさんのお金をもらった。
人に役立つ度合がお金の量で、Bさんの社会への貢献度ということになる(図表9)。
では、毎日の仕事ではどうか。
様々な価値のある商品・サービスを提供する。
それに見合った対価をもらっている。
つまり、稼いでいる会社は多くの人の役に立っている(図表10)。
会社がどれくらい世の中に役立っているかを示す指標として、次のように言われることがある。
あってもなくてもいい会社(たまたま目に入ったから買っただけ)→年商5億円以下あると便利な会社→年商10億円以上なくなると困る会社→年商100億円以上だから多くの起業家は100億円以上の会社になることを目指すのだ。
そもそも利益とは何かさて、Bさんは鍬を提供し、役立った分の対価をもらった。
これが売上でお役立ち度の合計を数値化したものだ。
では利益とは何か。
売上の中で自分自身が生み出した付加価値分を数値化したものだ。
鍬はBさんがつくったが、鍬の材料の木や鉄を仕入れているから、すべて自分でつくったわけではない。
売上は、Bさんの鍬の価値の合計だが、利益はその中でBさん自身が生み出した付加価値分だ。
売上だけなら簡単に上げられる。
あなたが人の役に立ちたいと考え、Bさんから鍬を仕入れた。
1本1000円の鍬を10本仕入れ、1本1000円で10人に販売した。
Bさんから買っても、あなたから買っても、品質も値段も同じだ。
お客様はたまたま目についたあなたから買った。
売上は1万円だが利益はゼロだ。
売上1万円(1000円×10本)-原価1万円(1000円×10本)=利益0円売上は上がったが、あなたは世の中の役に立ったか。
企業の中には、売上100億円でも利益がほとんどないところもある。
仮に、100億円の売上目標を立てたとする。
100億円売り上げるために、図表11のように価格比較サイトの最安値で、あるメーカーの10万円のPCを、10万台仕入れた。
原価は100億円かかった。
そして、同じ価格比較サイトに出品し、同じ最安値の10万円で販売した。
お客様は品質も価格も同じ最安値だから、たまたま目についたほうを買う。
1台10万円で10万台仕入れたPCが、1台10万円で10万台売れ、売上100億円を達成したとする。
だが、利益はゼロだ。
売上100億円(10万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)=利益0円仕入れたものに付加価値が加わらなければ、売上が上がっても利益は出ない。
すでに世の中に役立っている商品を、そのまま仕入れて、そのままの値段で売ると、売上は上がるが、利益は上がらない。
それはあなた自身が世の中の役に立っていないことを示している。
では、図表12のように、このPCに10年保証をつけて11万円で販売したとしよう。
お客様が元のメーカーから買うと10万円だが、あなたの会社から買うと1万円高いものの10年保証がついている。
10年保証に価値を感じる人が10万人いたらこうなる。
売上110億円(11万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)=利益10億円一方で、10年保証に価値を感じない人、1万円は高いと感じる人が多ければ売上も利益も上がらない。
価値があるか、利益が適正かはお客様が決めるということを忘れてはならない。
年商100億円の会社でも利益を出さなければ存在価値はない。
売上に意味はない。
利益こそが会社のお役立ち度を示している。
利益はその会社が本当に役立っているかどうかのバロメーターなのだ。
利益を上げた会社は何をすべきか目標とする利益を十分に上げた会社は次に何をすべきか。
もっと世の中の人に喜んでもらうにはどうしたらいいか。
ある社員はこう言った。
「社長、必要な利益を十分上げたのだから、これからは無料にしましょう」すると注文が殺到する。
商品を渡せる人、渡せない人が出てしまう。
以前、有料で買ってくれたお客様は「不公平だ」と思うだろう。
お客様に対して失礼なことになる。
社員は考えを改めた。
「やっぱり有料で販売して利益を上げ、利益目標を超えた金額を寄付しましょう。
これこそが社会貢献ですよ」だが、いざ寄付しようとしたら、様々な団体があることに気づいた。
貧困や食料不足に苦しむ人たち、学校にいけない子どもたち、地震や豪雨で被災した人たち……世の中には困っている人がたくさんいる。
たまたまニュースなどで知った人や団体に寄付をすることになるが、それでいいのか。
世の中にはもっと困っている人がいるのではないか。
本当はすべての困っている人を把握し、優先順位をつけて援助できればいいが、自分の力では難しい。
では、どうしたらいいか。
そのために行政と税金という仕組みがある。
不案内の分野に寄付するのではなく、本業に専念して利益を生み、納税したほうが役に立つ。
日本の社会は、必要以上に利益が出た分は、税金という形で社会に還元される仕組みになっている。
行政は日本中から集めた情報をもとに、どこにどれだけのお金を分配すべきかを決める。
稼いだ利益は行政を通じ、日本全体がバランスよく、みんなが幸せになるよう適切なところに分配される。
「累進課税」では、利益を上げれば上げるほど税率が高くなる(図表13)。
生活に必要な最低限度の金額はどんな人でもあまり変わらない。
だから稼げば稼ぐほど税率が高くなるのは理解できる制度だ。
多く稼いだらそれに応じて納税し、社会に還元する。
だから世の中に役立つには、より多くの利益を上げることだ。
従業員一人あたり利益対決!「北の達人」vs「トヨタ」「NTT」「三菱UFJ」「KDDI」「三井住友」では、どっちが高い?企業は社会に役立つものを提供する。
役立った分だけ対価をもらう。
役立っていなければ対価はもらえない。
役立った分だけ利益が出る。
役立っていなければ利益は出ない。
そして出た利益を納税する。
税金は役所の人の給料になる。
そして役所の人が無償や安価の行政サービスを市民に提供してくれる。
では、非営利団体はどのように活動しているのか。
彼らの活動の一部は、補助金や助成金といった税金、企業からの寄付に支えられている。
あるとき「世の中の役に立ちたい」とボランティアをしている若者に出会った。
その人は当然、相手の人からは対価をもらっていない。
では、自分の生活はどうしていたか。
親からの仕送りで生活していた。
本当に世の中を支えているのはその若者ではなく、親ではないだろうか。
ボランティアは大切なことだが、非営利や無償サービスは本当に役立っているかどうかの判断が難しい。
有償なら、「お金を払ってどうしてもほしい」「お金がかかるならいらない」がはっきりするが、無償だと「タダならほしい」「絶対にほしいがお金がない」の区別がつきにくい。
開発途上国で井戸を掘ったけれど、3か月くらいで井戸が壊れてしまい、誰も修理せず放置されてしまうケースが多々ある。
修理されないということは、そもそも必要度が低かったのかもしれない。
これでは自己満足になってしまう。
ただ、私は寄付を否定しているわけではない。
2018年9月6日に北海道で発生した「北海道胆振東部地震」の被災地支援のために、私財から1億円を寄付した。
被災直後、多くの社員の自宅は停電し、交通機関は全面停止、市内全域の大多数の信号も止まった。
宿泊難民が札幌駅にあふれ、コンビニの周りに長蛇の列ができていた。
その後、各関係者の懸命の努力によって都市部では復旧の見込が立ってきたが、人口の少ない地域では復旧・復興に長い期間を要するものと思われた。
北海道の企業として、全北海道の早期復興を願い、そうした地域に優先的に支援していきたいと考えた。
このような特別な場合を除くと、納税のほうが社会の役に立つ。
企業が利益を出して納税していかなければ、世の中は成り立たない。
なぜなら赤字企業はほとんど納税しないからだ(図表14)。
「北の達人」の利益は29億円だ。
世の中には当社よりも役立っている(利益を出している)会社はたくさんある。
だが、従業員一人あたり利益は2332万円(2020年2月期)で、図表15の営業利益上位大手5社よりも大きい。
法人税は利益に応じて課税されるので、従業員一人あたり法人納税額は大手より高く、当社の従業員は、大手企業の従業員よりも世の中に役立っていると言える。
従業員には「自分がこの国を支えているという自負を持ってほしい」と伝えている。
利益を上げ、支払った税金が社会のために使われる。
さらに言えば、税金を有効に使ってもらうために、信用できる政治家を選ぶ必要がある。
企業が利益を上げることは、お客様がお金を払いたいほど喜ぶ商品・サービスを提供し、お客様の役に立つことだ。
そして利益を納税という形で社会に還元し、社会全体の役に立つ。
企業はこの2つで社会に役立っている。
まとめると、売上は企業のお役立ち度の合計を数値化したもの。
利益とはその中で自社が生んだ付加価値分。
社会貢献とは稼ぐこと。
お金を稼ぐことは社会貢献。
だから利益が大事なのだ。
売上OSを「利益OS」にする以上が、利益に対する「北の達人」の考え方を示したストーリーだ。
これをつくった理由は2つある。
一つは新卒社員に「お金とは何か」を考えてもらうこと。
もう一つは中途入社の社員に、「なぜ利益が大事なのか」を考えてもらうこと。
新卒者は、この内容をすぐに理解してくれ、反対に、「世の中の会社はなぜ利益より売上を大事にするのでしょうか」と疑問を抱く。
また、「毎日の仕事の意味がわかりました」「世の中の役に立ちたいので、ボランティアをしようと思っていましたが、一所懸命、目の前の仕事をすればいいとわかりました」という感想もある。
中途入社の社員は、前職の影響で、売上重視の考えに染まっている人が多い。
だから私は、パソコンの基礎システムであるOS(OperatingSystem)になぞらえ、「今までのOSでは『北の達人』のやり方は理解できないでしょう」と話す。
売上をたくさん上げることが目的の行動と、利益をたくさん上げることが目的の行動ではまるで違う。
だから、売上OSから利益OSに入れ替え、そのうえでこれまで経験してきたものをアプリとして載せてほしいと伝えている。
また、日常業務で利益の大切さを忘れそうになった人がいたら、「売上は誰でも上げられるから意味ないと、最初に話しましたよね」と言っている。
この話を経営者向けの講演ですると、「自分たちが何のために利益を出すのか考えたことはなかった」「利益を出すことが社会貢献になるとは考えたこともなかった」と言う人が多い。
さて、利益の大切さの確認はここまで。
次章からは、いよいよ会社の施策と利益を連動させる5段階利益管理をお伝えしていこう。
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