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第四章 貿易決済

目次

第四章 貿易決済

  • 1.売掛
  • 2.B/Lの危機(B/LCrisis)
  • 3.L/Cが開けない!
  • 4.契約破棄のリスク
  • 5.船積完了後の送金決済
  • 6.出荷後送金決済のリスク
  • 7.輸出代金の回収失敗
  • 8.全額前払条件での輸出契約

第四章 貿易決済

決済は、貿易で最もリスクの高い部分ですが、そのほとんどは、「既知のリスク」で、「既知のリスク」には、それに対応するリスクヘッジやリスク回避の方法のあるものと、リスクを解消する方法のないものがあります。

貿易決済で失敗することは、基本的にありません。

それは、リスクヘッジや、リスク回避の方法のあるものは、その方法を講じて取引を行い、リスクを解消する方法のない場合は、契約しない、取引しないこととします。

このやり方で実行すれば、貿易決済で失敗することなど、あり得ません。

代金回収に失敗したと言われるすべてのケースは、相手を信用して、自社をリスクに晒した場合に限られます。

相手を信用して、リスクを冒してはなりません。

貿易は、「信義則」を前提として行うものでありません。

相手を信用するかしないかという次元で考えるのでなく、リスクヘッジ(回避)をしながら行うのが、貿易です。

この基本を、踏み外さないようにしましょう。

1.売掛(1)問題海外バイヤーとの商談で、『当社は、日本の他社と、“月末締め翌月末の送金支払い”の決済条件で、契約しているので、御社ともこれでお願いしたい』と言われました。

さて、貴方が売主の立場なら、どうしますか?(2)ヒント日本の業者が、貿易の基本的な知識を欠いていることを見越して、国内取引の「売掛」による決済方法を提案してくる海外バイヤーが、少なくありません。

ちなみに、「売掛」は、売買当事者の何れもが、共通の民法・商法が施行されている環境にある「国内取引」では、どこの国でも普通に行われている決済方法で、「信義則」を大前提としています。

しかし、「貿易取引」では、「信義則」を前提にできないうえ、売買当事者に共通して適用される、民法・商法も存在していない取引環境です。

貿易では、「売掛」は異常な決済方法としか言えません。

なぜなら、海外の買主側が、商品代金を払わなければ、基本的に「取りに行く方法」はないからです。

国内取引では、いざとなれば「取りに行く方法」はあるのに、貿易にはありません。

もちろん、国際間でも、裁判や商事仲裁という紛争解決の方法は存在していますが、弁護士を立てて闘う必要があります。

通常の中堅・中小企業・零細事業者にとって、裁判や商事仲裁などの仕組みは、あってもないのと同じことです。

貿易で最もリスクが高いのは、輸出では「決済」、輸入では「品質と納期」です。

決済には、幾つかの方法があり、それぞれの決済方法は、リスクゼロではありませんが、決済方法によって、リスクの大小はありますし、リスクをヘッジできる「貿易保険」もあります。

こうしたことを、しっかりと学んで、対応するようにしましょう。

「問題」のような海外バイヤーの要求は、貿易に精通した方であれば、とうてい信じられない話ですが、現実に海外展開の支援機関が、商談会の際に作成している「海外バイヤーリスト」の決済方法欄には、堂々と“月末締め翌月末の送金支払い”や、“20日締め翌々月末の送金支払い”などと記載されています。

支援機関も、貿易の基本を知ったうえで、支援して欲しいものです。

さて、海外バイヤーから『当社は、日本の他社と、“月末締め翌月末の送金支払い”の決済条件で、契約しているので、御社ともこれでお願いしたい』と言われたら、どうしますか?これも、現実に直面する場面です。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158164)(3)回答例海外バイヤーが、「月末締め翌月末の送金支払い」の決済条件でお願いしたい」と言ったら、「それって、国内取引の決済方法ですよね?御社は、国内取引の決済方法で、貿易をやっているのですか!」と、皮肉交じりの発言をすることも、海外バイヤーに「貿易のことを知っているな!」と思わせる効果的な方法です。

ただ、「月末締め翌月末の送金支払い」の決済条件であっても、決済のリスクを、㈱日本貿易保険の「貿易保険」にリスクヘッジできるのであれば、一向に構いません。

決済方法は、「月末締め翌月末の送金支払い」ですと伝えると、㈱日本貿易保険には、笑われてしまうかも知れませんが、貿易保険を引き受けてくれるのであれば、決済リスクを心配しないで、「月末締め翌月末の送金支払い」で輸出販売して構いません。

もし、㈱日本貿易保険が、その相手に対して、その決済条件では、「貿易保険」のお引き受けはでき兼ねるのであれば、取引すること自体を止めます。

貨物代金を取りはぐれた場合、ほとんどの事業者にとって、相手に無理やり支払わせる方法は、事実上ないからです。

貿易は、リスクを張って行うものではありません。

もちろん、海外バイヤーとは、「月末締め翌月末の送金支払い」でなく、もう少しまともな決済方法、例えば、「商品代金の30%は契約後10日以内に送金支払い、残金70%は船積完了次第送金支払、100%入金確認後にB/Lを送付」や、「商品代金の40%は契約後10日以内に送金支払、残金60%は、船積み後1ヵ月以内に送金支払」のような条件で商談するようにします。

リスクのある決済方法の場合は、貿易保険にリスクヘッジできるのであれば、契約しますが、リスクヘッジできないのであれば、契約は止めます。

決済では、絶対にリスクを冒してはなりません。

2.B/Lの危機(B/LCrisis)(1)問題台湾向け輸出で、船積みして数日で、貨物が基隆港に到着しました。

貨物は港に到着しても、L/C決済で、B/Lは銀行経由なので、まだ買主の手元に届いていません。

貨物を引き取るのに不可欠なB/Lがなくては、買主は、輸入手続きを始めることができませんし、港頭倉庫でのフリータイムの保管期間が過ぎると、倉庫代が発生してしまいます。

こうした状況で、台湾側から、『倉庫代を売手が負担するか、あるいは、船会社に保証状(LetterofGuarantee:L/G)を出して、“B/L無しで貨物を引き取って良い”旨、船会社に指示するか、どちらかを選択せよ!』と言ってきました。

さて、どのように回答すべきでしょうか?(2)ヒントこの「問題」は、貨物の方がB/Lより早く着いてしまうために、買主が大慌てする状況に追い込まれる「B/Lの危機(B/L」Crisis)。

の典型です、近隣諸国との貿易では。

このよ、そしてが良、「こり」問題、のような要請を、相手を信用して、それに、貨物はまうと、先に引き取られ、決済はディスクレがあるという理由で不払い(Unpaid)に。

れてしまい考え方の一つとして、インコタームズのどの定型取引条件を使って契約していたかにより、売主から買主への危険負担の移転がいつ、どこで行われたのかで、反駁できるかも知れません。

もう一つは、このような場合、売主側が対応するのでなく、買主側だけで問題解決をすることができる方法があります。

それをお勧めすることで、対応することができます。

*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「4.信用状決済のリスクとそのヘッジ方法」-「(3)B/Lの危機への対応」(POD版P173174)(3)回答例①インコタームズの定型取引条件における危険負担

インコタームズの定型取引条件のうち、FCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等の定型取引条件を使って契約していたのであれば、貨物の引渡しは、日本において完了済みです。

売主が意図的に船積書類の送達を遅らせるようなことをしない限り、引渡し後の貨物に、港頭倉庫での保管料が発生しても、それは、買主のリスクで買主が負担すべき費用です。

売主がそれを負担する理由はまったくありません。

Dで始まる用語のうちのDDP契約では、売主が輸入通関を行って、輸入関税も売主が負担したうえで、予め合意した指定地点に輸送され、そこで売主が買主に貨物を引き渡すまでは、すべて売主が費用と危険を負担しますから、港頭での倉庫代が発生しても、それは売主負担となります。

従って、DDP契約では、「問題」のような問題が起きることはありません。

しかし、DAPとDPU契約の場合は、合意した荷渡地点が、輸入通関前の地点であっても、あるいは輸入通関後の特定地点であっても、輸入通関手続きは、買主が行うことになっています。

輸入通関に必要な書類の一つであるB/Lがなければ、買主は、輸入手続きをすることができませんから、「問題」のような問題は起こり得ます。

日本で貨物が引き渡されるFCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等と違って、DAPとDPUは、輸入国で貨物を引き渡す前の時点で、貨物の引き取りができない「B/Lの危機」状態になることが考えられます。

しかし、B/Lが船積書類の一つとして、銀行経由で買主に送達されることに、売主が責めを負う余地のないのは、明らかなことです。

DAPとDPUの場合は、売主と買主の間で、FCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等の場合よりも、より揉める可能性はあるものの、基本的に「B/Lの危機」は、次の②の方法で、買主側が自己解決すべき事項です。

②買主側で自己解決する方法買主が、買主の取引銀行と連帯保証をした保証状(LetterofGuarantee:L/G)を、船会社に差し入れることによって、B/Lなしでも、買主は、貨物を船会社から引き取ることが可能です。

この方法は、B/Lが未着であっても、貨物を引き取ることができる、普通に行われている方法です。

この方法は、B/Lの危機を輸入側だけで解決できるだけでなく、輸出側では、ディスクレや、買主が着荷貨物に異議をとなえようとしても、貨物代金が100%支払われます。

売主にメリットがある方法です。

3.L/Cが開けない!(1)問題海外側との商談で、「L/Cを開けないので、出荷後の後払送金でお願いしたい」と言われました。

さて、この場合、貴方ならどう対応しますか?(2)ヒント「L/Cを開けない」背景には、何があるのでしょうか?通常、考えられることは、銀行が、「L/C開設に必要な、与信枠の設定に応じてくれない」のか、「設立間もない企業なので、銀行が与信審査をするために必要な、決算資料などの財務資料がまだない」のか、あるいは、銀行は、L/Cを開設する条件として、定期預金等の担保を要求することがありますから、「担保を提供するだけの十分な資産がない」などの理由が、考えられます。

何れの場合であっても、銀行は、その業者に対して、まだL/C開設の要求に応じられるだけの財務体力があると、判断できない状態にあると見て良いでしょう。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「③L/C決済」(POD版P258260)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「3.信用状付きの荷為替手形決済」(POD版P138139)および「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P167)(3)回答例L/C開設に必要な財務体力の見極めができていないと、銀行が判断している企業に対して、「出荷後の後払送金」などもってのほかです。

逆に「出荷前に全額前払送金」を要求して当然です。

あるいは、㈱日本貿易保険が、「出荷後の後払送金」の支払条件であっても、貿易保険を引き受けてくれるのであれば、決済リスクのヘッジができるわけですから、「出荷後の後払送金」で取引しても構いませんが、リスクヘッジできないのであれば、取引は止めておきます。

あるいは、D/P、D/A、送金などと、貿易保険へのリスクヘッジを組み合わせて、考えることが可能であれば、それを検討すべきでしょう。

なお、L/Cは、開設費用が割高なので、数十万円程度の取引で、L/C決済を支払手段とすることは、非現実的です。

4.契約破棄のリスク(1)問題L/C決済条件の輸出契約で、出荷準備をしていたら、突然相手方から“契約キャンセル!”の連絡がきました。

契約商品は特殊な規格なので、他に売りさばくのは容易ではありません。

製造は完了済みなので、最悪、製造コスト分がまるまる損失になるかも知れません。

L/Cはまだ開かれていませんので、契約キャンセルされても、どうにもならないことは分かっていますが、今後、こうしたことが、再現しないようにするには、どうしたら良いのでしょうか?(2)ヒント契約キャンセルされるリスクは、決済方法によって違ってきます。

「問題」のL/C決済であれば、L/Cは開設した側が一方的に取り消すことはできません(Irrevocable)ので、買主は、L/Cが開設されてしまえば、契約をキャンセルすることができなくなります。

もちろん、開設したL/Cのとおりに、売主が書類を揃えることができない場合は、ディスクレとなって、買主が支払いに同意しなければ、代金は支払われず、売主は船積みした貨物を引き戻したり、値引き交渉をしたりして、何とか貨物を引き取ってもらうことになり兼ねません。

ですから、L/Cが開設されても、契約キャンセルは絶対にないとは言えませんが、少なくとも、L/Cが開設されていない状態の時よりも、契約キャンセルされにくいことは確かです。

「問題」のケースでは、L/C決済の取り決めであるにも関わらず、L/Cが開設されていないのに、作ってしまっていたことに、問題があります。

この「問題」点をクリアできるL/Cの開設条件を考えてみましょう。

*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』―「第十一章貿易における22種類のリスク」ー「7.ロング・ショートのリスク」(POD版P340)および「第七章決済リスク」-「3.信用状付きの荷為替手形決済」(POD版P138)(3)回答例 当然のことですが、契約キャンセルは、明らかに契約違反であるため、速やかにL/Cを開設して、契約を履行するように、相手方に申し入れなければなりません。

しかし、それでも、相手が要求に対応しない場合は、止むを得ませんが、“泣き寝入り”するしか、方法はないでしょう。

その代わり、二度と同じようなことが起きないように、今回のことから、教訓を汲み取るべきです。

同じようなことが起きないようにするには、契約での船積時期の設定を、「L/Cが到着した後、〇〇日以内」とします。

「〇〇日」は、L/Cが到着してから、売主が生産(調達)を手配し、さらに船積みまでに必要な日数を加算して、その日数を、「〇〇日」とします。

つまり、「〇〇日」は、L/C到着から船積みまでの「リードタイム」です。

このようにすると、L/Cが到着していない状態で、迫りくる船積時期を遵守するために、生産(調達)手配を余儀なくされ、最終的に契約破棄されてしまったり、船積時期直前までL/Cが開設されなかったりして、契約破棄のリスクに晒されながら、生産(調達)手配をせざるを得なくなる事態を避けることができます。

L/Cが開設されてこなければ、売主は生産(調達)手配などのアクションを起こしませんから、その状態で契約を破棄されても、実損が生じることはありません。

貨物代金の一部を前払いで送金してもらう条件の場合でも、前払金が入金してから、生産(調達)手配して、船積みをするのに必要なリードタイムが経過した後に、船積みするように、船積時期を設定します。

ただし、前払送金は、生産(調達)コストをカバーするだけの金額にするようにします。

生産(調達)コスト以下の金額であれば、不足分の金額が、契約キャンセルのリスクに晒されることになります。

5.船積完了後の送金決済(1)問題 輸出商談で、相手方は、契約成立後10日以内に、貨物代金の50%を送金するが、残り50%は貨物の船積みが完了した時点で送金すると主張しています。

この条件で取引する場合、どのようなリスク回避策が考えられるでしょうか?(2)ヒント 買主は、「貨物代金の残金50%は、船積完了時点で送金する」とのことですが、これだけでは、残金50%の送金支払は、何の保証もありません。

買主が、確実に残金50%を送金せざるを得ないようにするには、どのようにすれば良いかを、考えてみましょう。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例「売主は、船積みが終わった段階で、買主にその旨を通知し、買主は、船積みが完了した通知を受け取り次第、貨物代金の残金50%を買主に送金して支払う」としたうえで、さらに「買主は、入金を確認後、直ちにOriginal」B/L、と主に送付する。

船会社は、買主がB/Lを呈示しない限り、貨物を引き渡しません。

B/Lは有価証券で、貨物と等価価値のあるもので、船会社が、B/Lの呈示がないのに。

貨物を渡してしまい、その後で、別の業者がB/Lを持ってくれば、貨物はもうありませんから、その場合、船会社は損害賠償の責務が生じます。

船会社にとって、B/Lと引き換えに貨物を引き渡すのは、鉄則中の鉄則です。

従って、買主がB/Lを入手できなければ、貨物の引き取りができないことになります。

貨物代金の残金50%は、買主が貨物を必要とする限り、必ず送金せざるを得ませんから、この方法によって、買主の売主に対する残金の送金が動機づけられるのです。

B/Lは、L/C、D/P、D/A決済であれば、銀行を経由して、買主に送達されますが、送金決済の場合は、銀行を経由しないで、売主から買主に直送されるのが普通です。

直送手段は、DHLやEMSといったAir、Courier、Serviceを利用します、が航空機が事故に、B/Lが紛失した場合はありませんし。

B/Lの再発、かなり、ですからる難点があります、通常は、三通あるオリジナルB/Lのうちの二通、先に送付し、残りの一通は翌日送るとい。

6.出荷後送金決済のリスク(1)問題輸出商談で、相手方は、「契約成立後10日以内に、貨物代金の70%を送金し、残額の30%は、貨物が到着してからすぐ送金する」と主張しています。

この条件で取引する場合、どのようなリスク回避策が考えられますか?(2)ヒント 貨物代金の70%は、契約成立後10日以内に送金してくるとのことなので、この部分は問題ないでしょう。

問題は、残金の30%が、貨物到着後の送金になることです。

恐らく、買主は着荷した貨物を見て、問題がなければ送金するけれども、品質に問題があったりすれば、減額して送金するつもりなのでしょう。

貿易における取引は、売主と買主が合意して、取引価格を確定して行うものです。

「問題」のケースでは、取引価格は「70%~100%」の範囲内に収まることは確実ですが、最終的な価格決定権が、買主にあることは明白です。

これは、合意した取引価格で取引するという貿易の大原則を逸脱しています。

貿易では、取り決めた貨物代金は、契約のとおりに、100%支払い、品質不良などの問題が生じた際は、別途、買主がクレームを提起して、双方が話し合って、解決策を決めます。

これが、貿易の基本のやり方です。

「問題」の方法は、この貿易の大原則から逸脱しています。

ところが、現実の貿易取引では、「問題」のような要求が買主から出されることは珍しくありません。

いくら「貿易の大原則」を説いたところで、最終的には、決済条件を決められてしまうことは、相手との力関係次第では、避けられないかも知れません。

残金30%の部分を貿易保険にリスクヘッジできれば良いのですが、貿易保険が補償対象とするリスクは、「信用リスク」ですから、「品質リスク」は対象外です。

他に手立てを講じなければなりません。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例

契約書に「相殺の禁止」条項と「支払遅延の延滞金利」条項を入れるようにします。

相殺を禁止することにより、商品の契約代金とクレーム金を相殺して清算することができないようにします。

そして、買主が、支払期日までに商品代金を支払わなかった場合、支払期日から実際の支払日までの未払金額に対して、年率25.0%で計算した延滞金または適用される法で許容される最大利率の、何れか低い利率で計算した支払遅延利息を、売主に支払うこととします。

この二つの条項によって、残金30%をクレーム金と絡めて、買主が勝手に処理することができなくなりますし、残金30%の送金が遅延すれば、支払遅延の金利が加算されるので、買主は、期限どおりに支払わざるを得なくなります。

この二つの条項を入れることに、買主が逡巡するのであれば、「売主は、船積みが完了したことを買主に通知し、買主は直ちに貨物代金の残金30%を買主に送金して支払うものとする。

買主は、入金を確認した後、直ちにB/Lを買主に送付する」とします。

貨物が着荷してからの送金ではなく、「船積完了次第、残金30%を送金する」ことを、買主に提案します。

船会社は、B/Lの呈示がない限り、貨物を引き渡さないので、B/Lが担保となって、買主は、売主に送金してくるでしょう。

買主は、貨物を必要とする限り、船積み後、すぐに送金してこざるを得ません。

7.輸出代金の回収失敗(1)問題貨物が輸入港に到着してから1ヵ月以内に、貨物代金を送金して支払う条件で、輸出契約(総額約5百万円)をして、貨物を輸出しました。

しかし、相手方は、貨物が到着して3ヵ月になるのに、まだ送金してきません。

裁判所に訴えようと思っています。

(2)ヒント誰でも、すぐ思いつく方法は、裁判を起こすことです。

しかし、日本で裁判を起こして勝訴しても、海外の国で強制執行してもらえるかどうか、国によっては、日本の裁判結果を受け入れることを拒否して、強制執行してくれない国も少なくありません。

それでは、相手国で裁判を起こしたらどうでしょうか。

相手国で勝訴すれば、強制執行可能です。

ただし、「相手方の資産が残っていれば」の条件が付きます。

しかも、裁判には弁護士費用だけで、数百万円か、長引く裁判になれば、更に一桁上の費用が必要になるでしょう。

一般的には、係争金額が1億円に満たなければ、確実にコスト倒れになると言われています。

軽送金額500万円では、裁判は、非現実的です。

裁判が無理であれば、商事仲裁はどうでしょうか? 商事仲裁の場合、仲裁裁定が出れば、海外の該当国で強制執行できる仕組みになっています。

しかし、現実には、強制執行が拒絶されるケ-スも出ています。

しかも、商事仲裁といえども、弁護士費用と仲裁員の費用が掛かりますから、やはり軽送金額が1億円に満たなければ、確実にコスト倒れになります。

敗訴でもすれば、損の上塗りになって、目も当てられません。

それでは、いったいどうすれば良いのでしょうか?*参考参照先:貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例

最も損失を抑えられる方法は、「泣き寝入り」です。

「泣き寝入り」する限り、商品代金以外に、一円たりとも損が出ませんから、これが最も安価な解決法です。

要は、貿易の決済では、「取りはぐれるような、決済方法では契約しない」ことです。

これさえ守っていれば、取りはぐれないのですから、安全に貿易を行うのは、実に簡単なことではありませんか!良くありがちなのは、商売欲しさに、前のめりになって、イチかバチかで、自社をリスクに晒す形の契約をしてしまうことです。

気迫や、やる気、気概などは、もちろん大切なことですが、そのために、リスク観念を忘れてしまっては、元も子もありません。

「泣き寝入り」が一番の正解だとは言え、以下のことは覚えておいて損はないでしょう。

それは、相手が自ら支払う気持ちになった場合、未回収の代金が回収できるかもしれないということです。

代金が回収できる唯一の可能性のある方法は、「相手に支払っても良いという気持ちになってもらう」ことです。

そのためには、裁判や商事仲裁などと、腕を振り揚げるようなことは、絶対にご法度です。

逆に、より親密になって、将来のビジネスの夢を語り合い、夢の実現には、今目の前にある、未払代金が障害であることを、分かってもらうのです。

この方法で、未回収代金の大半を回収できた業者もあります。

回収できなければ、損の上塗りになる可能性はありますが、喧嘩腰になるのでなく、逆に親密になることによって、解決できれば、万々歳です。

8.全額前払条件での輸出契約(1)問題海外の商社から、「貴社のHPを拝見したところ、貴社の商品は、我が国の市場で、確実に売れると思われるので、商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールが飛び込んできました。

早速、その会社を訪問して、商談をした結果、弊社売上の一年分に相当する大量契約が成立しました。

しかも、支払条件は全額前払いで決着です。

当日、その商社は、契約成立を祝し、自社の顧客を招いて宴会を主催しました。

宴会の席上、その商社から、宴会費用と顧客への土産物購入費用を負担するように求められたので、即座に快諾し、求めに応じて、宴会代と土産物代として、3,000米ドルの現金を手渡しました。

翌日、契約書を手に、日本に凱旋帰国をしましたが、数日して、その商社から「支払条件が、全額前払いなので、銀行からの送金を円滑に行うため、弊社社長の個人口座に、3,000米ドルを振り込んで欲しい」とのメールが来ました。

この段階で、「ひょっとすると、騙されたかも!」と、不安を感じたのですが、それから数日すると、電話もメールも通じなくなってしまい、やっと、騙されていたことに気づいたのです。

これは、現実に起きた事例ですが、貴方がこれと同じようなことに遭遇して、宴会の席上で、宴会費用と顧客への土産物代の負担を求められたとしたら、どうしますか?(2)ヒントまず、「商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールがきて、すぐにその会社を訪問して商談したことは、問題なかったのでしょうか?通常、輸出する際には、商標などの知的財産権について、輸出(予定)先国での類似商標、同一商標などの登録状況を調査したうえで、売り込みを掛けます。

「問題」では、知財権について調査した形跡はないようです。

これが、第一の問題点です。

第二に、支払条件が「全額前払い」で合意したとのことですが、これは、買主にとって、リスクが最大化する決済方法です。

この決済方法で契約できたことに、疑問は抱かなかったのでしょうか?第三に、宴会代と顧客への土産物代を、全額負担することについて、疑問を抱かなかったのでしょうか?、宴席は、宴席を主催した側が。

100%費用を負担するものです、友達同士の関係では、割り勘はないです、まして主催者側が、招待した側に宴席費。

あり、またこ、顧客はど、その商社の、土産物代は。

ただ、高信頼性社会に生まれ、育った我々は、契約成立というおめでたい雰囲気の中で、費用負担を求められれば、何の疑問も抱かないで、「はい!」了解!、と返事してしまうことは。

もう少し、日本と海外との基本的な相違点について、意識を持っていれば、詐欺にひっかからずに、済んだかも知れません。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第二章 日本と海外との違い」(POD版P4150)および「第十一章」-「」11.対価確保前にモノやサービスを提供するリスク(3)回答例まず、「商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールがきて、すぐにその会社を訪問して商談したことは、正しい対処の仕方ではありませんでした。

新しい取引先候補に対しては、事前に、ウェブでHPをチェックしたり、㈱日本貿易保険の「海外商社名簿」で格付されている企業かどうかを調べたり、あるいは信用調書を取り寄せたりして、その企業に対する販売与信枠を設定するのが、最初に取るべき手順です。

「問題」の企業は、これらの手順をすべて飛ばして、相手先を往訪してしまいました。

輸出する際には、商標などの知的財産権について、輸出(予定)先国での類似商標、同一商標などの登録状況を調査するのが普通です。

これをしないで輸出すれば、輸出した途端に、訴訟沙汰に巻き込まれたり、輸出できなくなったりするかも知れません。

「問題」では、知財調査をしなかったようで、この手順も飛ばしてしまったようです。

また、「全額前払い」の支払条件は、買主にとって、最大限のリスクを背負い込む決済方法です。

リスク観念が強い、海外の企業が、この決済方法で契約に応じたことに、疑問を持つべきでした。

初対面の初取引で、この決済条件で契約ができることなど、あり得ないことです。

宴会代と顧客への土産物代を、日本側が、全額負担することは理不尽でしょう。

顧客は、その商社の顧客であって、日本側の直接的な顧客ではありませんし、宴会費用は、宴会に招待した側が負担すべきもので、招待された日本側が負担するのは筋がとおりません。

仮に、宴会代と顧客への土産物代を、日本側が負担することに同意したとしても、その場で現金で手渡すのでなく、「弊社が負担することは快諾しますが、この場では、いったん貴社のほうで建て替えておいてください。

すべての契約が、円滑に履行完了した段階で、日本から送金してお支払いします」と回答すべきでした。

日本側が負担することは、快諾していますから、相手に対して礼を失することにはならないでしょう。

「契約を交わしただけで、まだ一円たりとも儲けになっていない段階で、先に支払うことはリスクである」というリスク認識に立つべきでした。

 

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