MENU

第七章 リスク防止のために

目次

第七章 リスク防止のために

  • 1.しつこく追いかけるべきか?
  • 2.販売店同士の競合防止と並行輸入品対策
  • 3.輸入したマスクが、不良品だった!あとがき

第七章 リスク防止のために

貿易には、さまざまなリスクが潜んでいます。

『営業マンのための貿易実務』の「第十一章」貿易、ではる22種類のリスク。

本章では、現実に遭遇することの多いケースの中から、「しつこく追いかけるべきか?」、「販売店同士の競合防止と並行輸入品対策」と「輸入したマスクが、不良品だった!」を取り上げます。

1.しつこく追いかけるべきか?(1)問題海外展示会に出展しました。

ブースに来訪してくれて、実際にテーブルを囲みながら、情報交換をし、「後日、連絡を取り合う」ことを約した人達、約50人を対象として、いわゆる「ThanksMail」を送りました。

メールには、「ご多用の中、展示会では、弊ブースを訪問いただき、ありがとうございます。

引き続き、詳細を詰めて、具体的な商談を進めたい」と記載してあります。

ところが、返事が返ってきたのは5人だけで、あとの人からは、「なしのつぶて」でした。

返事がない人には、しつこく追いかけて、熱意を示すほうが良いとアドバイスする専門家もいますが、如何したものでしょうか?(2)ヒント展示会などで会ってお話をすると、とても興味のありそうな態度で応じてくれる人が多いのですが、相当程度の「お世辞」や「外面の良さ」があるケースが、少なくありません。

海外の人達は、結構「今を生きる」考えの人が多いので、過去のこととなった展示会のことに、興味を失っているのかも知れません。

食品の展示会などでは、通常、来訪者に、サンプルを少量試食してもらいますから、多くの人がブースに集まります。

とても盛況だったという印象を持つことが多いのですが、試食の時に、人が集まるのは当然のことで、むしろ、人が集まらなかったら、大変な不人気商品だと言うことになります。

その意味では、展示会での「盛況ぶり」は、割り引いて考えたほうが良いのかも知れません。

さて、「問題」のメールに対して「なしのつぶて」だった人には、取引上、どのようなリスクがあるのでしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第三章輸出の手順」-「3.第三段階~計画実施フェーズ~」-「(5)信用度判断と商談・契約」(POD版P311319)および「第四章輸入の手順」-「3.第三段階~計画実施フェーズ~」-「(6)商談を通じ信用度判断・契約」(POD版P301)『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「1.コミュニケーションリスク」(POD版P318)(3)回答例

基本的には、返事がない人を、しつこく追いかける必要はありません。

円滑にコミュニケーションできることは、信頼できる相手としての条件ですし、また、ビジネスを着実に進める上での前提条件です。

コミュニケーションの基本動作ができない人と取引すると、大変な苦労を強いられるだけでなく、自社をリスクに晒すこともあり得ます。

メールに対する返事の有無は、コミュニケーションリスクがあるかどうかを知ることができる、貴重なリトマス試験紙です。

返事の来ない相手を、しつこく追いかけて返事を取る甲斐などありません。

2.販売店同士の競合防止と並行輸入品対策(1)問題東南アジアのある国の企業三社と、販売店契約を結んで、弊社の商品を売ってもらっています。

一応、それぞれの販売領域は、重ならないようにしているのですが、実際には、販売領域を越えて販売されることがあって、販売店同士の競合が起きています。

そのため、ともすれば、値下げ競争になることがあって、困っています。

それに加え、並行輸入品も輸入されていて、正規ルートよりも安い値段で販売されています。

販売店契約書に、「販売領域を守らない場合の罰則規定」と「再販売価格」を明記することで、販売店同士の競合を防止したいのですが、如何でしょうか? また、平行輸入品は、弊社が登録している商標権を盾に、輸入差し止め請求することはできないものでしょうか?(2)ヒント 主要な国には、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」など、消費者にとって、不当な取引を防止するための法令が、整備されています。

貴社が販売店を指定している国で、どのような法律が施行されているかを、調べてみる必要があるものの、 基本的な考え方としては、販売する側の都合でなく、「消費者が購入できる自由」が保証されるかどうかです。

消費者が購入したいと思った時に、購入の選択肢を狭めるような手段や方法は、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」などの関連法令が施行されていれば、違法行為として処罰される恐れがあるでしょう。

*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「17.海外課税のリスク」-「(4)独占禁止法違反のリスク」(POD版P361)(3)回答例輸出先国で、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」などの関連法令が施行されていることを前提としますが、販売店契約書に、「販売領域を守らない場合の罰則規定」を入れると、販売領域が強制力を伴うものになって、消費者はその地域を販売領域とする業者(販売店)からしか、購入できなくなり、消費者にとっての選択枝を、一つに限定することになり兼ねません。

また、販売店契約書に「再販売価格」を明示すれば、輸出元の元売またはメーカーが、輸出先の国内での販売価格を指示したことになります。

これは、消費者の購買価格を、輸出元が決めていることになって、独占禁止法などの法令があれば、それに明確に違反することになります。

契約書上であれ、あるいは口頭であれ、「再販売価格」について、輸出元が触れることはご法度と、考えるべきでしょう。

平行輸入品は、輸出国の国内卸売業者が、海外に転売したり、あるいはネット販売や越境ECの方法が普及するにつれてますます増加する傾向にあります。

また、並行輸入品の価格は、販売店経由の正規ルートでの販売価格よりも、安価なケースが多いので、正規の販売店にとって、頭の痛い問題です。

しかし、多くの国では、並行輸入品が本物の商品であれば、「合法」としています。

並行輸入品は、商品そのものは偽造品でなく、正真正銘の本物ですから、その商品に付されている商標は、何ら、その国の知的財産権に関する法令に、違反するものではありません。

従って、輸入差し止めを請求することは不可能かと思われます。

残念ながら、「問題」で疑問に思われている点は、供給側の視線からのものです。

販売国における消費者保護の視線を考慮すれば、販売店契約における「販売領域」の問題や、「並行輸入品」の問題は、必ずしも、すっきりとした形にできないことを承知のうえ、対応するしか手はなさそうです。

3.輸入したマスクが、不良品だった!(1)問題 中国から、コンテナ単位で、マスクを輸入したのですが、マスクに虫の死骸がついていたり、ヒモが外れていたりで、販売先からは、返品の山です。

代金は、全額、前金の送金支払いでした。

儲かると思ったのに、裏切られました! 中国側には、これから、どのように対応していけば、良いのでしょうか?(2)ヒント 済んだことは仕方ありませんが、起きたことから教訓を汲み取るようにしましょう。

払った授業料が、無駄でなかったようにしなければなりません。

輸入品の通関手続きは、フォワーダーに一任するだけで、簡単に行うことができますが、輸入で難しいのは、「品質管理」と「納期管理」です。

中国の工場に、品質チェックをしに行って、「これは出荷不可」、「これは出荷Okay」と仕分けして、帰国したのですが、やがて到着した貨物は、全量が「これは出荷不可」に仕分けしたものだったという、笑うに笑えない、泣くにも泣けないことも起きています。

工場でのバンニングや、出荷まで見届けなければ、安心できないという例です。

輸入するのは、誰にでもできますが、輸入ビジネスを成功させるのは、誰にもできることではありません。

契約して代金を払っただけで、理想の品が予定どおりの間に到着することなど、先進国との取引であればあり得ても、新興国からの輸入では、一般的には、あり得ないことです。

「品質管理」や「納期管理」は、輸出側の責任で行うべきもので、輸入側が行うべきことではないと、「正論」を吐く人がいます。

「正論」を実行してみれば良いでしょう。

「正論」が正しかったかどうか、結果は、すぐ出ます! 参考参照先を熟読して、同じ過ちを繰り返さないようにしましょう。

*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第四章」-「」-「」(5)品質

 

『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「18.輸入ビジネスのリスク」(POD版P362365)(3)回答例 まず、起きてしまった事態については、輸出元の取引相手と、他の取引があったり、懇意の人脈があったりするのであれば、そちらとの絡め手で、責任を問うことができるでしょうが、そうした関係になければ、損失を穴埋めさせることは、ほとんど無理に等しいでしょう。

中国では、ビジネスチャンスがあれば、工場の能力をオーバーしてでも、注文はすべて受注するのが普通です。

受注した後で、下請け、孫請けと外注に出しますが、外注先での品質管理などは、通常しないと思ったほうが良いでしょう。

なぜなら、自社で作ったものでないものに、なぜ責任を負う必要があるのでしょうか?、と、必ず。

訳の分、恐らく言い訳をします、今回の事態の背後には。

文化的な背景が、日本とは違うのですから、それを前提とした取引の仕方をすべきでした。

貿易とは、異文化間での取引でもあるのです。

相手の国の文化を理解していなければ、商売のリスクが見えないのです。

今後のことに関しては、資金面、人材面、情報面、商品に対するノウハウ面などの各側面から、自社の能力を分析して、貴社に、輸入ビジネスを行う能力があるかどうかを、判断してください。

輸入ビジネスを行う能力があれば、「輸入の手順」を踏んで、製造に立ち会う有効な体制を組んで、取り進めるようにしてください。

「」「」、、、、、、。

「」。

輸入業者が、責任を持って輸入ビジネスを行うのであれば、海外での品質管理を、しっかり行わなければなりません。

それができなければ、輸入商社としての能力はありません。

 

あとがき「貿易実務」を学んだと思って、貿易に乗り出したら、いきなり、足をすくわれて転倒する人が、少なくありません。

それは、主として「契約履行に必要な貿易実務」(貿易事務)を紐解いたり、あるいは「貿易事務」の解説をする研修会やセミナーに参加したりして、貿易実務を習得したつもりになる人が、少なくないからです。

こうした書物や研修会、セミナーなどに共通していることは、一般的な貿易知識を解説するだけで、貿易における「リスクヘッジ(回避)の視点」が、欠けている点です。

貿易取引をする人に必要なことは、単なる一般的な貿易知識だけでなく、貿易の各段階に潜む“リスク”を認識して、それを回避したり、排除したりしながら、契約に持ち込むノウハウです。

これは、実際に貿易の第一線で仕事をした人のみが、説明可能な知見です。

多くの貿易を行っている企業では、こうした貿易のノウハウは、企業内で先輩から後輩に口伝で伝えられたり、それぞれの営業マンが工夫したりして、伝承されているのが一般的です。

それは、新規に貿易に乗り出す人達が、身近に溢れている「貿易事務」の本を読んだり、あるいは「貿易事務」を解説する研修やセミナーに参加したりして、貿易に乗り出さざるを得ない状況を、作り出してきました。

それだけでなく、世界共通の貿易のツールである「インコタームズ」が、世界の物流や貿易事務のIT化などの貿易環境の変化に従って、ほぼ10年に一回更改されているにも関わらず、それを知らないまま、企業内で先輩から後輩に、古い貿易知識のまま、受け継がれるという弊害も顕著です。

多くの企業で、最新の貿易知識にアップデートされていないのですが、それで問題が起きないのであれば、一向に差し支えありません。

しかし、現実に、古いインコタームズの知識を、惰性的に使っていることで、多くの企業が思わぬリスクを負いながら、貿易をしています。

過日、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』を、アマゾンから上梓した動機は、こうした状況に危機感を抱いたからに他ありません。

しかし、貿易取引に必要な知識は、一冊の書籍を読み通しただけでは、どの程度、理解できているのかを、推し量ることができません。

そこで、本書では、貿易の第一線に立っていると、現実に遭遇することの多い、代表的な問題を中心に、「問題」として提示し、皆様に熟考していただいたうえで、回答例を提示することによって、理解度を自己測定するとともに、理解度の深化を図ることができるように企画しました。

本書をご活用いただき、皆様のそれぞれが、日本を代表するビジネスマンとして、世界を相手に活躍されることを、切に期待しています。

【著者紹介】太田光雄(おおた・みつお)◎――東中ビジコン・代表~「経営と貿易のコンサルタント」~大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)卒業。

住友商事株式会社にて、海外展開の戦略作り、中国・東南アジアとの貿易や駐在員事務所、現地法人、自社製造工場などの立ち上げから運営まで、34年間に亘って携わりました。

2004年、“東中ビジコン”を興し、コンサルティング・講演・執筆活動に専念。

中小企業の海外展開を支援する国際化支援の専門家として、貿易の基本、企業進出の手順、進出後の異文化環境における企業経営の方法、海外子会社を統括管理する手法や撤退方法などについて発信を続けています。

中国食品の安全性が問われた際は、NHK『視点・論点』・『ニュース深読み』・『クローズアップ現代』、『ガイアの夜明け』や数多くのニュース・ドキュメンタリー番組に出演しました。

営業マンのための貿易の基礎と実務 ~理解度を測定できる問題集~発行日 2020年7月15日著 者 太田光雄本作品の全て、または一部を、著作権者に無断で複製・転載・配信・送信、或いは内容を無断で改変する等の行為は、著作権法によって禁じられています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次