はじめに貿易の第一線で活躍するのに必要な、営業マンに必須の貿易知識をお伝えするために、2019年12月に『営業マンのための貿易実務』を、そして貿易と企業進出をするための“転ばぬ先の杖”として、2020年4月に、『海外展開の基本』を上梓したところ、幸いなことに、多くの方々に受け入れていただくことができました。
心から感謝申し上げます。
ただ、貿易に必要な知識は、未知の領域の新しいものが多いことから、実は曖昧に理解していたり、不正確に理解したりしていることが少なくありません。
そこで、主として、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』の「第Ⅰ部プロローグ」と「第Ⅲ部貿易の基礎知識」をお読みいただいた皆様に、営業マンとしての貿易実務を、より一層正確に、且つ深く、理解していただけるように、本書を企画した次第です。
本書には、「貿易の基礎知識」、「インコタームズ」、「貿易決済」など七つの分野に分けて、合計46の「問題」とそれに続く「ヒント」と「回答例」を掲載しています。
「問題」の多くは、貿易の第一線で取引していると、実際に経験するものを、数多く取り上げています。
この意味では、本書は、単に、貿易実務に対する理解度を測るだけでなく、貿易の第一線における応用の具体例として、活用することができます。
なお、それぞれの「ヒント」の最後に、「参考参照先」として、『海外展開の基本』、『営業マンのための貿易実務』の関連個所を表示しています。
POD(印刷本)版の関連個所は、第何頁かで表示しています。
各々の「問題」に対して、「熟考」したうえで、「ヒント」を参照しながら、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』の該当箇所を読み返し、「回答」を考えてください。
「熟考」と「読み返し」を経て、最後に「回答例」を参照することで、理解深化の効果が飛躍的に上がるはずです。
本書が、海外展開の第一線に立たれる皆様の、お役に立てることができれば、幸甚の至りです。
世界を舞台とした、皆様のご活躍を、心から楽しみにしています。
目次はじめに第一章 貿易の基礎知識1.物流の手配や通関手続きをしてくれる業者2.フォワーダーを探すには3.輸出を始めるには4.輸入は簡単だと聞いたのですが5.輸出するのは簡単だと聞いたのですが6.直接貿易と間接貿易7.ECommerceへの対応第二章 インコタームズ1.荷渡時期の保証問題(CPT契約の場合)2.荷渡時期の保証問題(DPU契約の場合)3.EXW契約とFCA契約4.地震・津波による被害5.コンテナ貨物のC&F契約6.CIP契約の保険7.DDP条件での留意点8.CNI条件での取引9.納品完了時点の合意10.輸入通関前の検疫検査費用第三章 貿易の商慣習1.相手の値ごろ感を探りたい2.オファーの値段は受けたというビッド
3.間違いのオファー4.有効期限切れ後のアクセプト5.最初のオファーをアクセプト6.契約の成立時点7.好条件のビッド8.値上げオファー9.売手市場10.契約書にサインしてないから第四章 貿易決済1.売掛2.B/Lの危機(B/LCrisis)3.L/Cが開けない!4.契約破棄のリスク5.船積完了後の送金決済6.出荷後送金決済のリスク7.輸出代金の回収失敗8.全額前払条件での輸出契約第五章 知的財産権のリスク1.冒認登録されていた商標2.D用語でのリスク3.育成者権第六章 契約書のリスク1.協議のうえ解決2.受発注書だけでの取引3.独占販売権の要求4.販売店契約なき事実上の独占販売権5.紛争処理条項
第七章 リスク防止のために1.しつこく追いかけるべきか?2.販売店同士の競合防止と並行輸入品対策3.輸入したマスクが、不良品だった!あとがき
第一章 貿易の基礎知識 本章では、貿易を支える基本的な要素とは何かを考えたうえで、貿易を行うための「手順」について、認識を深めます。
輸出も輸入も、それぞれ「手順」を踏んで、計画を立てて行います。
貿易実務の点では、輸入のほうが輸出よりも遥かに簡単ですが、輸入には輸出にない難しさがあって、単に輸入するだけであれば、難しくありませんが、それをビジネスとして成功させるには、それなりの能力を備えた企業が、工夫して取り組む必要があります。
直接貿易と間接貿易は、頭の中でそれらの違いを理解していても、実際の行動では、混同していて、経費だけを浪費しているケースが少なくありません。
直接貿易と間接貿易の「貿易形態」の違いをはっきりと認識して、直接貿易は直接貿易の、間接貿易は間接貿易のやり方をするようにしましょう。
コロナ禍を契機として、直接会って商談する必要のない、ECommerce(電子商取引)、ウェブ会議、デジタル展示会やテレワークアプリなどを使った海外取引が、注目を集めています。
ともすると、これらの手段を使えば、国内取引と同じ感覚で貿易できるかの錯覚にとらわれてしまい、貿易実務など要らないのではないかと、思う人が続出する危険性があります。
この問題についても、今一度、認識を深めておきましょう!
1.物流の手配や通関手続きをしてくれる業者(1)問題物流の手配や、通関手続きをしてくれる業者のことを、「海貨業者」と言っている貿易実務の本が多いのですが、実際に貿易をしている人の話を聞くと、「乙仲」や「フォワーダー」、と言っている人もいます。
どれが正しい呼び方なのでしょうか?(2)ヒント確かに、「海貨業者」、「フォワーダー」、「コンソリデーター」、「乙仲」……、貿易に関わる物流業者は、さまざまな呼び方がされていて、混乱します。
もともと、物流を担うそれぞれの業者が行っていた仕事の内容は、本来の「業種名」と一致していました。
「海貨業者」、は港湾内での船積、荷卸、艀輸送を手配する業者でした。
「フォワーダー」は、自らは運送手段を持っているキャリア(輸送業者)ではありませんが、キャリアを使って、運送を手配する業者(貨物利用運送事業者)を指す言葉です。
貨物利用運送事業者は、複数の荷主の貨物を集荷して、コンテナ単位に纏めて出荷するサービスを行っている「混載業者」でもあることから、混載業者を意味する「コンソリデーター」とも呼ばれています。
「乙仲」は、戦時立法で施行された海運組合法(1939~1947年)という法律で、「定期船貨物の取次ぎをする仲介業者」を「乙種仲立業」と呼んでいたことから、今でも「乙仲」は、輸送を手配する業者あるいは、代行して通関手続きをしてくれる業者の意味で使われています。
本来の出自から、さまざまな言い方がされてきたのですが、現在では、物流業界の自由化が進んだために、どの「業種名」も、現実に行っている仕事の一部でしかなくなってしまいました。
ですから、厳密に言うと、どの呼称をしても、その業者が行っている業務内容の一部しか、表現できていないのです。
これが、混乱の原因です。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(1)国際物流の基礎知識」(POD版P244)『営業マンのための貿易実務』:「第二章国際物流の基礎知識」-「1.物流業者の呼称」(POD版P3036)
(3)回答例 それでは、どのように物流業者を呼べば良いのでしょうか? それは、現実に貿易の現場で、慣習として、どのような言い方がされているかを基準にすれば良いのです。
海上輸送を手配する業者は、フォワーダーまたは乙仲、航空機輸送の場合は、コンソリデーターかフォワーダーですが、商社業界では、海上輸送、航空機輸送の何れも「乙仲」と言っています。
(貿易の現場での一般的な呼称)主たる輸送手段船舶航空機フォワーダーコンソリデーター乙仲(エアー)フォワーダー乙仲(商社業界)
2.フォワーダーを探すには(1)問題輸出貨物の数量が少ないので、単独ではコンテナに仕立てることができません。
混載で海外に輸送手配してくれる、フォワーダーを探したいのですが、どうすれば良いのでしょうか?(2)ヒント混載業者であるフォワーダーは、(社)国際フレートフォワーダーズ協会(JIFFA)に加盟しています。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(1)国際物流の基礎知識」(POD版P245)『営業マンのための貿易実務』:「第二章国際物流の基礎知識」-「(2)NVOCCと混載業者」(POD版P33)(3)回答例ウェブ上に、(社)国際フレートフォワーダーズ協会(JIFFA)のホームページがあります(https://www.jiffa.or.jp/member/map47.html)。
そこに、会員リストが掲載されていて、アイウエオ順でも、都道府県別でも、並べ替えて検索することができます。
お近くのフォワーダーの住所や電話番号などを調べて、コンタクトされては如何でしょうか。
3.輸出を始めるには(1)問題日本の国内市場は、人口が少しずつ減少していく傾向にあるので、将来的に、国内市場に大きな期待を掛けることはできないと思われます。
これからは、国内だけでなく、海外に目を向けて、広大な海外市場を新たなターゲットとして、輸出していく必要があると考えています。
ところが、周囲を見ると、幾人かの人は、輸出してみたものの、商品代金の回収に失敗して、苦労しているようです。
貿易は、今まで一度も経験がないので、一から学びながら、慎重にやっていきたいと考えています。
とりあえず、何から手をつければ良いのでしょうか?(2)ヒント 海外との取引も、国内取引と同じだと考えて、自己流で始めてしまって、いきなり失敗する人が多い中で、貿易の経験がないので、何から手をつければ良いのかということに、気づかれたことは、たいしたものです。
まさに、「知之為知之、不知為不知。
是知也」(之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らざると為す。
是れ知るなり~論語~)です。
「知る」ための第一歩は、輸出には「輸出の手順」があることを知ることです。
参考までに、『海外展開の基本』に掲載している、「輸出の手順」の一覧表を、次に掲げておきます。
(輸出の手順)
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第3章輸出の手順」(POD版P273308)(3)回答例基本的な輸出の手順は、輸出の目的を確認し、その能力の有無を、人材、資金、モノ(サービス)、海外情報の四つの側面から点検します。
海外情報は、支援機関を利用することで問題ありませんが、人材、資金、モノ(サービス)の能力については、自社でしっかりと確認しなければなりません。
通常、貿易未経験の企業に共通して足りない能力は、「人材」です。
貿易するには、貿易の知識と能力のある「貿易要員」が不可欠です。
貿易要員を自社で養成するか、外部から専門家を採用するか、あるいは商社を起用する方法もあります。
これが第一段階の「準備フェーズ」です。
次に、第二段階の「輸出事業計画フェーズ」に進みます。
ここでは、「輸出事業計画」を策定しますが、考慮しなければならない要素として、「輸出規制と相手国(地域)の輸入規制の確認」、「カントリーリスクの確認」および「市場性の確認」(売れるマーケットの有無・大小)があり、これらの要素を考慮して、輸出ターゲット国(地域)を絞り込みます。
そして、「直接貿易」でいくか、「間接貿易」でいくか、取引候補は、輸入卸売業者と想定するか、スーパーなどの小売業者とするか、あるいはピンポイントで、特定のユーザーを狙うかといった、「ビジネスストラクチャー」を考えます。
そのうえで、「輸出事業計画」を作って社内の承認を取得します。
次の第三段階は、承認された事業計画を実施していく「計画実施フェーズ」です。
直接貿易であれば「貿易要員」を置き、「海外マーケティングの準備」をしたうえで、「知財対策」を実施し、そして「取引先候補発掘」のために、展示会に参加したり、商談会に参加したりします。
多くの企業は、「手順」を踏まないで行動を起こすことが多いので、第一段階も、第二段階も、第三段階の貿易要員も置かず、海外マーケティングの準備もしないで、いきなり展示会に参加したり、商談会に参加したりしています。
これでは、無謀過ぎます。
成果が期待できないばかりか、企業が無自覚のうちに、自社をリスクに晒してしまって、危険な目に遭いかねません。
取引先候補が見つかれば、信用度を判断しながら、商談を行い、首尾よく事が運べば、契約に至ることができます。
契約ができれば、「第四段階」の「契約履行フェーズ」に移って、代金を確保し、保険を付保し、輸送を手配して、貨物を搬出し、輸出通関を経て船積みとなり、代金決済が完了します。
この「契約履行フェーズ」では、それぞれ銀行、保険会社、フォワーダー(乙仲)などの専門業者に依頼します。
「第四段階」の「契約履行フェーズ」で必要な貿易知識が、「契約してからの貿易実務」です。
この部分は、それぞれ専門の業者が控えていますから、ハードルはそう高くはありません。
問題は、「第一段階」から「第三段階」に至るまでの「契約までの貿易実務」です。
「契約までの貿易実務」を売物としているのが、商社なのです。
ですから、商社がやっている仕事を覚えなければ、「直接貿易」はできません。
「契約までの貿易実務」について、詳しく解説したのが、『営業マンのための貿易実務』(アマゾンで販売)なのです。
このように、輸出することを考えたら、真っ先にやることは、「輸出の手順」に沿って準備をし、行動を起こしていくことです。
詳しくは、『海外展開の基本』で解説しています。
4.輸入は簡単だと聞いたのですが(1)問題海外から輸入している人の話を聞いたら、「輸入するのは簡単だ」とのことでした。
輸入は、誰にでもできるのでしょうか?(2)ヒント輸入の場合でも、「輸入の手順」があって、その順番を踏みながら取り進める必要があります。
「輸出の手順」と、骨子の部分では、基本的に変わるところはありませんが、輸出では、自社をリスクに晒さないようにしながら、代金を確保することに腐心しますが、輸入では腐心するポイントが、輸出とは異なります。
この点も含めて、「(3)回答例」で解説します。
ここでは参考までに、「輸入の手順」の一覧表を掲げておきます。
基本的な枠組みは、輸出も輸入も同じですが、「輸入の手順」が、輸出と大きく異なっているのは、どの部分でしょうか?(輸入の手順)第一段階準備フェーズ目的の確認(自社戦略達成のための戦術として“輸入”を実現する)能力の点検(輸入能力で補強すべき弱点の有無を点検)人材資金モノ・サービス海外情報
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第4章輸入の手順」(POD版P309319)(3)回答例
輸入でも、主として、海外側と商談する場面で、「貿易の商慣習」、「インコタームズ」、「決済方法」、「物流リスクのヘッジ方法」や「契約書の基礎知識」など、ある程度の貿易知識と能力を持つ「貿易要員」が必要です。
しかし、輸入手続きの点では、インボイスやB/Lを含む船積書類は売主が手配したり作成したりして、買主側が作成する書類は、基本的にありませんし、輸入通関手続きは、フォワーダー(乙仲)にお願いすれば、ほとんど全部やってくれます。
ですから、輸入通関手続きの点で言えば、一般的に、「輸入は誰にでもできる」と言っても、間違いではありません。
ただ、輸入では、特に、新興国から輸入する場合は、品質と納期の管理をどうするかという、輸出では余り心配する必要のない問題があります。
これは、品質と納期の管理ができる仕組みを、買主側がしっかりと作って実施することによって、クリアすることができます。
敷衍すれば、この能力の有無が、輸入業者としての能力の有無だと言っても過言ではありません。
品質と納期の管理は、サプライヤーである海外の輸出業者の責任であるはずなのに、なぜ輸入業者である買主が行う必要があるのかと、異論が出るかも知れません。
それはそれでロジカルには、まったくの「正論」です。
しかし、その「正論」を押し通したところで、品質不良のものが着いたり、納期が遅れたりすれば、苦境に陥るのは、買主側です。
売主側にクレームして損害賠償請求をしても、相手がそれに応じてくれるかどうかは、保証の限りではありません。
「正論」で、品質不良や納期遅れの問題が、解決するわけではありません。
これに加え、輸入業者は、日本の製造責任を定めた国内法令上、国内製造品における製造業者と同じ立場に置かれます。
つまり、輸入業者は、輸入品に対して品質面で責任ある存在です。
「弊社は単なる輸入業者であって、品質責任は海外の製造企業にあって、弊社にはない」などという弁明は、道義的にはもちろんのこと、法的にも成立しないのです。
輸入業者は、法的にも品質責任を負う立場ですから、海外での品質管理は、責任を持ってしっかりと行わなければなりませんし、また、それが輸入商社としての能力なのです。
5.輸出するのは簡単だと聞いたのですが(1)問題「乙仲という業者がいて、そうした人達に頼めば、海外にモノを運んでくれるので、輸出するのは簡単なことだ」と言う人がいます。
確かに、モノを海外に運ぶのは、簡単そうです。
でも、輸出は、本当にそんなに簡単にできるのでしょうか?(2)ヒント、。
一つ目の要素は、輸出で言えば、モノを日本のどこから、海外のどこまで輸送するかで、これが「物流」です。
二つ目の要素は、カネの流れで、輸出なら、日本の売主が、海外の買主から、モノの代金を受領します。
これは「金流」です。
三つ目は、「商流」で、日本のどの会社が海外の誰と商取引をするかというビジネスの流れです。
貿易だけに限らず、商売は、商流が基本にあって、それに物流と金流が付随します。
付随すると言っても、商流だけでは、ビジネスは成立しませんし、商流が伴わない物流も、商流が伴わない金流もありません。
これら三者は、相互に密接な関連を持ちながら、ビジネスは遂行されますが、中核となるのは、商流です。
商流あっての、物流と金流です。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章貿易実務とは」(POD版P238272)(3)回答例「問題」の「乙仲という業者に頼めば、海外にモノを運んでくれる」のは、そのとおりです。
実際に、フォワーダー(乙仲)に依頼すれば、フォワーダーが、海外へのモノの輸送を手配してくれますから、簡単と言えば簡単です。
しかし、モノを海外に運ぶ前に、商流(誰が誰にどのように売り)を確定し、金流(代金支払いの方法)も確定させなければなりません。
「モノを海外に運ぶ」ことは、専門の業者に依頼すればできますが、貿易の最大のポイントは、
「如何にしてリスクを最小限にして取引を行うか」で、貿易では、この基本をしっかりと学んでおかないと、確実に失敗します。
「」、「、、」、、「」、。
輸出の難しい点は、貿易の各段階に潜むリスクに、自社を晒すことのないように、商談を行い、契約し、そして如何にして安全に輸出して、代金を確保するかにあります。
そのためには、それなりの専門知識と経験が必要です。
6.直接貿易と間接貿易(1)問題海外に自社製品を輸出したいと考えています。
貿易実務は難しそうなので、直接貿易は無理だと考えています。
商社にお願いして間接貿易で臨むつもりです。
たまたま、支援機関の方から、「海外バイヤーとの商談会があるので、参加しませんか?」という誘いがあったので、積極的に参加してみようと思います。
心当たりの商社にお話したら、「海外と契約できたら、海外にモノを運ぶのはやりますから」と言われたので、安心です。
さて、このやり方で問題ないのでしょうか?(2)ヒント 海外バイヤーが商談に出てくる目的は、何なのでしょうか?それは、間違いなく「売れそうなものがあれば、契約して買う」ことが目的です。
また、日本側の企業が、海外バイヤーとの商談会に参加する目的は、何なのでしょうか? 商品に対する評価を聞きたいとか、海外に売れそうかどうか、感触を知りたいということはあるかも知れませんが、やはり「海外バイヤーに売り込んで、契約してもらう」ことが、目的としてあるはずです。
このような意図を持った両者は、商談会で商談を行えるのでしょうか? また、間接貿易における「商社が果たすべき役割」とは、何なのでしょうか? 端的に言えば、「モノを海外に運ぶ」のが、商社の仕事なのでしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第一章貿易の形態」(POD版P221229)(3)回答例 この企業は、「貿易実務は難しそう」だから、「直接貿易は無理」、「間接貿易で臨む」と言いながら、実は、直接貿易の方法で、マーケティングしようとしています。
商社を起用して、間接貿易の方法で輸出するのであれば、商談会に参加して海外バイヤーと、商談するのは、商社の仕事です。
当該商社は、「海外と契約できたら、海外にモノを運ぶのはやりますから」と言っているとのことですが、「海外にモノを運ぶ」のは、フォワーダー(乙仲)に頼めば、手配してくれます。
商社というのは、「海外で買ってくれそうな候補先を発掘し、商談をして、契約に持ち込み、海外側との契約を履行する」のが仕事です。
「海外にモノを運ぶ」だけの商社など要りません。
直接、フォワーダーに頼めばやってくれます。
もちろん、この企業が、商社をサポートするために、商談会に同席することは、問題ありませんし、時によっては、それは必要なことでしょう。
しかし、商社抜きで、商談会に参加するのは、基本的に「間接貿易と直接貿易のやり方」を混同しています。
海外バイヤーによっては、日本の流通事情に精通していて、日本に買い付けのための子会社を持っていたり、あるいはモノを集荷する機能を持つ日本のフォワーダー(乙仲)を指定していたりして、貿易の専門的な実務知識がなくても、国内取引と同じ感覚で商談できる相手も、いないではありません。
しかし、そうした海外バイヤーは、そう多くありません。
貿易では、値段はインコタームズの定型取引条件を使って決めますが、間接貿易で輸出するからということで、最低限の貿易知識さえないまま、海外バイヤーと商談して、どうやって値段を決められるのでしょうか? 商談会に商社抜きで参加したところで、成果が得られないのは、自明の理です。
知ってのとおり、貿易の形態には、直接貿易と間接貿易の二つの方法があり、直接貿易では、自社が、海外側との折衝の最前線に立ちますから、貿易実務の知識は、必須事項です。
間接貿易では、必ずしも貿易知識は必要ありませんが、海外側との折衝の最前線に立つのは商社です。
商社を起用する企業は、商社の仕事を背後から支援する立場です。
こうした「直接貿易と間接貿易の違い」を明確に区別できず、両者を混同しているために、空回りばかりしていて、成果を出せないでいる事業者が、実は少なくないのです。
直接貿易、間接貿易の相違は、貿易の最も基本的なことです。
注意しましょう。
7.ECommerceへの対応(1)問題EC(ElectronicCommerce:ECommerce:電子商取引)のサイトを運営している業者から、サイトに商品を掲載すれば、世界を対象に販売できるようになるので、一度載せてみてはどうか、というアプローチがありました。
毎月一定額の料金が掛かるようですが、ECを利用したビジネスで、注意すべき点はありますか?(2)ヒントまず、ECサイトには、一般の個人を販売ターゲットとして想定している「BtoC」サイトと、特定の業者を販売ターゲットとしている「BtoB」サイトの二種類があります。
当該ECサイトが、そのどちらを販売対象としているか、貴社の狙いと合致するかどうかを確認します。
「BtoC」サイトであっても、「BtoB」サイトであっても、取引する際、考えるべき、最重要ポイントは、「自社をリスクに晒さないで取引するには、どうすべきか?」です。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第一章貿易の形態」-「11.越境EC」(POD版P233234)(3)回答例「BtoC」サイトの場合は、個人が販売対象ですから、先に代金を振り込みか、カード(クレディットカードまたはデイビッドカード)などで払ってもらい、入金を確認してから、商品を発送することで、代金回収のリスクを負わないで済みます。
運営業者が「BtoC」サイトと謳っていても、専門の業者から、引き合いがきて、結果として「BtoB」の取引に発展することもあります。
その場合には、次に説明する「BtoB」の取引方法で行うようにしましょう。
「BtoB」サイトの場合、相手が業者で、取引数量も取引金額も大きくなりますので、必ずしも、全額前払いで取引できるとは限りません。
「BtoB」のEC取引に対する考え方として、「ECサイトは、単にウェブ上の常設展示会に過ぎない」ことを認識しておきましょう。
つまり、ウェブ上の常設展示会が縁で、引き合いがくる点だけが、通常の貿易と異なっているだけで、引き合いがきて以降は、通常の貿易と同じく、商談を行い、契約が成立すれば、契約書を交わし、契約を履行していきます。
つまり、引き合いがきてからの商談以降の部分は、通常の貿易とまったく同じことになります。
やはり「貿易実務」の知識、特に、貿易のさまざまなリスクをヘッジしたり、回避したりして取り進める、営業マンのための「貿易実務」は、必要不可欠です。
ECビジネスだからと言って、貿易実務の知識がなくても、取引できるのではありません。
この点は、ご注意ください。
第二章 インコタームズ「」、、、、。
、、、。
、、、。
売主にとって国内取引の定型取引条件であるEXWは、FCAと混同して使われがちです。
注意しましょう。
日本は、自然災害の多い国です。
普段から、貿易貨物が被災しても、売主または買主が損失を被らないような定型取引条件を使って契約することを習慣づけておきましょう。
陸路続きの国同士の企業の取引が多い欧米では、買主の負担が最も軽い、買主にとっては国内取引である、DDP条件での取引が増えています。
そのため、日本との取引でも、DDP条件を要求してくることがあります。
、。
インコタームズの定型取引条件にはありませんが、CNI条件での取引が、一部の業者の間で定着しています。
CNI条件での取引についても、認識を深めておきます。
また、インコタームズは、任意の規則ですから、貿易当事者の合意で、その一部を変更して使うことができます。
貿易の基本的な知識がないと、相手からの要求で、引き渡しや費用負担など、自社に不利な内容への変更に、同意してしまいがちです。
インコタームズの定型取引条件の定義は、しっかりと覚えておきましょう。
1.荷渡時期の保証問題(CPT契約の場合)(1)問題「CPTSanFranciscoCFSUS$500perpiece」、荷渡時期(TimeofDelivery)を「October,20XX」の条件で、米国の業者と、輸出契約をしました。
米国側から、『日本側がサンフランシスコまでの運送賃を負担しているのだから、10月中にサンフランシスコ港に貨物が到着することを保障せよ!』と要求してきました。
さて、貴方は、どう回答しますか?(2)ヒント貿易をしていると、海外側から、この種の要求が出てくることが、良くあります。
「CPTSanFranciscoCFS」(サンフランシスコのコンテナフレートステーションまでの運賃込み)の価格で契約し、尚且つ、荷渡時期を「20XX年10月」で取り決めたわけですから、米国側の言い分に理があると思って、「はい! 10月のうちにサンフランシスコのコンテナフレートステーション(CFS)で、貨物を引き渡します」と返事してしまいそうです。
しかし、インコタームズのCFS条件では、貨物はいつ、どこで、売主から買主に引き渡されるのでしょうか?「インコタームズ2020」の定型取引条件は、全部で11ありますが、それらは、到着ベースの定型取引条件(D用語)が、輸入国での引渡しとなりますが、その他のコンテナ・空輸用語も、在来船用語(ばら積み用語)も、すべて輸出国で引渡しが行われます。
国内取引では、買主または買主の代理人(買主手配の運送人など)が、貨物を実際に目で見て、引渡しが行われます。
しかし、貿易では、買主が貨物を見ていないのに、Dで始まる定型取引条件を除けば、他はすべて、輸出国で、売主から買主に貨物が引き渡されます。
貿易では、Dで始まる定型取引条件の場合は、輸入国での貨物の引渡時点まで、売主が輸送費を負担しますが、それ以外の定型取引条件では、貨物の引渡しが輸出国で行われますから、貨物の輸送費を輸入国まで負担する定型取引条件の場合は、貨物が売主から買主に引き渡された後も、輸入国までの輸送費は、売主が負担しますから、両者の売主から買主への分岐点は、不一致となります。
次に掲げる「リスクと輸送費用負担の分岐点」のリストは、リスクの分岐点と輸送費用を負担する分岐点が、一致しているのか、あるいは一致していないのかを、各定型取引条件毎に表示しています。
今一度、インコタームズの「引渡地」と「輸送費の負担」について、正確に理解しておきましょう!*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(2)インコタームズ」(POD版P246251)『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「1.インコタームズの定型取引条件で決まること」-「(2)貨物の引渡地点が決まる」および「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(3)CPT(輸送費込み)~CarriagePaidto~」(POD版P7172)(3)回答例 次のように、米国側に回答しては如何でしょうか?「インコタームズのCPTの定義では、確かに、売主が仕向地の合意された地点または特定の地点までの輸送費を負担しますが、それとは別に、売主から買主への貨物の引渡しは、『売主が自ら契約した運送人に、貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時』に行われます。
従って、貨物が買主に引き渡された後のサンフランシスコCFSへの到着時期については、売主が通常の運送人を手配している限り、売主は保障する義務を負いません。
もちろ
ん、できる限り、買主側のご要望にそうように、努力はしますが、確約はできませんので、ご理解のほどをお願いします。
」 なお、契約書には、念のため、「この契約書は、国際商業会議所が定める最新のインコタームズにより解釈されるものとする」の条項を入れておくことを、お勧めします。
2.荷渡時期の保証問題(DPU契約の場合)(1)問題「DPUSanFranciscoCYUS$500perpiece」、荷渡時期を「September,20XX」で輸出契約をしました。
米国側から、「9月中に、サンフランシスコ港のコンテナヤード(CY)に、貨物が到着することを保障せよ!」と要求がありました。
これに対し、貴方はどのように回答しますか?(2)ヒント DPUでは、売主は、輸入国の仕向地または仕向地内で、合意した特定の場所があれば、そこで輸送手段から貨物を荷降ろしして引き渡しますが、合意された場所がなければ、売主は仕向地または仕向地における場所を任意で決めることができます。
そこまでの費用もリスクも、売主が負担します。
仕向地が、輸入通関後の地点である場合、輸入通関のために貨物を留め置いた時から、輸入通関後に輸送が再開されるまでの間の費用とリスク負担は、買主に帰属します。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(2)インコタームズ」(POD版P246251)『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「1.インコタームズの定型取引条件で決まること」-「(2)貨物の引渡地点が決まる」および「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(6)DPU(荷卸込持込渡し)~DeliveredatPlaceUnloaded~」(POD版P7778)(3)回答例契約で、「September,20XX」を荷渡時期とすることで合意したのであれば、売主は、その期限までに輸入国の予め合意した場所で、あるいは荷渡場所が決まっていなければ、契約に定められた場所の中で、売主が決める任意の場所で荷渡しする必要があります。
従って、米国側への回答は、次のようになります。
:「インコタームズ2020におけるDPUの定義のとおり、『September,20XX』中に、SanFranciscoCYで、貨物をお引き渡しするように、輸送手配をしますので、宜しくお願い申し上げます。
」 輸送費用を売主が負担する点では、CPT契約も、DPU契約も同じですから、大した違いはないのではないかと考えて、DPU契約に、安易に応じないようにしましょう。
荷卸費用の負担は、CPT契約では、売主が締結する運送契約に荷卸費用が含まれていれば、売主が負担し、含まれていなければ、買主が負担します。
一方、DPU契約では、売主が仕向地での荷卸費用を負担するという、微妙な違いがあり
ます。
しかし、両者のもっと大きな違いは、リスクの分岐点(引渡地点)が、CPTでは輸出国であるのに対し、DPUでは輸入国で、売主から買主に貨物が引き渡されることです。
つまり、CPT契約は、国際間の取引が「水際」で行われるのに対し、DPUでは、売主が「買主の国内」で貨物の引渡しが行われます。
輸出商品の知的財産権を巡って、輸入国の第三者が訴訟を起こした場合、CPT契約では、売主が輸送を手配していても、買主が輸出国で貨物の引渡しを受けて、買主が輸入国に持ち込むのですから、売主は、契約に特段の条項がない限り、訴えられる対象となることは避けることができます。
しかし、DPU契約の場合、売主が輸入国で貨物を買主に引き渡しますから、輸入国の国内法が適用され、売主は無傷でいられない可能性があるのです。
CPT契約とDPU契約とでは、輸送費用などの負担は、似通っていますが、損害保険を付保する側や、引渡地点が異なります。
Dで始まる定型取引条件(到着ベースの用語)のほうが、売主が負担するリスク区間が長くなる点で、特に注意が必要です。
(CPT契約とDPU契約の違い)
3.EXW契約とFCA契約(1)問題EXWで契約した場合、輸出された商品の仕入れに関わる消費税の還付請求は、できるのでしょうか? (2)ヒント この「問題」は、ひとえにEXWでの契約が、輸出取引なのか、あるいは国内取引なのかにかかっています。
消費税の還付手続きには、輸出許可書などの輸出したことを証明する書類が必要です。
EXW契約では、買主が必要とすれば、売主は輸出国における輸出許可を取得するための助力は、提供しても構いませんが、売主が輸出者となるわけではありません。
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-(2)インコタームズ(POD版P246251)『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「1.インコタームズの定型取引条件で決まること」-「(2)貨物の引渡地点が決まる」および「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(1)EXW(工場渡し)~Ex.Works~」および「(2)FCA(運送人渡し)~FreeCarrier~」(POD版P6570)(3)回答例インコタームズでは、EXW契約の場合、「売主は、輸出通関または物品が通過する第三国内の通関を行う義務はない」と明確に規定しています。
買主が輸出することを企図するのであれば、買主自らが、輸出国の輸出許可を取得しなければなりません。
日本では、関税法によって、海外の買主側が、税関事務管理人として、日本のフォワーダーを任命し、委託を受けた日本のフォワーダーが、買主の名義で輸出通関手続きを行うことができます。
この場合、輸出許可書などの輸出を証明する書類は、買主に帰属しますから、EXWは、買主にとっては、インコタームズに定める「定型取引条件」であっても、売主にとっては「国内取引用語」以外の何物でもありません。
EXWでは、売主が消費税還付の請求を、起こすことはできません。
FCA契約であれば、売主は輸出通関義務を負いますから、売主が輸出手続きを行う必要があるのなら、EXWでなく、FCA契約にすべきです。
しかし、売主も買主も、EXWでは売主に輸出通関義務がないことを知らないで、お互いに、売主が輸出許可を取得するものだと思い込んで、EXW条件で契約すれば、当然、売主が輸出通関手続きを行いますから、輸出許可書などの関連する書類は、売主に対して発行され、売主に帰属します。
この場合、売主が消費税課税業者であれば、消費税の還付請求を行うことができます。
消費税の還付は、消費税非課税業者の場合、還付請求することができません。
4.地震・津波による被害(1)問題コンテナが、港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時に、大地震が発生、続いて津波に襲われて、コンテナそのものが、津波にさらわれたり、残ったコンテナも、横転したり、水に濡れてしまい、輸出できなくなってしまいました。
輸出貨物が、このような自然災害に遭った場合、売主と買主には、どのような損害が生じるのでしょうか?(2)ヒント これは、自然災害の多い日本では、現実に、ここ半世紀の間だけでも、何回も現実に起きてきた問題です。
本「問題」に対する正解を導き出す基本的な考え方は、第一に、売買契約の当事者が、11あるインコタームズの定型取引条件のうち、どの定型取引条件を使って契約していたかを考えます。
使っていた定型取引条件によって、売主が危険負担していた時の事故なのか、あるいは買主が危険負担していた時の事故なのかが決まります。
第二に、危険負担中であった当事者が、どのような損害保険を付保していたかによって、損害が保険で救済されるかどうかが決まります。
次の「売主・買主が掛けるべき保険」を参照して、考えてみてください。
(売主・買主が掛けるべき保険)
*参考参照先:『海外展開の基本』:「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(2)インコタームズ」(POD版P246251)および「(4)物流リスク」(POD版P253255)『営業マンのための貿易実務』:「第五章物流リスク」-「1.貿易物流におけるさまざまなリスク」(POD版P117120)(3)回答例①EXWで契約していた場合 売主は、工場(倉庫)で買主に貨物を引き渡しますから、それ以降の港での船積み待ちは、買主がリスクを負担しています。
買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますので、それが、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)のどれを掛けていたかによって、保険で救済されるかどうかが、決まります。
ICC(C)を掛けていただけであれば、自然災害免責ですから、買主が被った損失はカバーされません。
ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していたのであれば、保険で救済されます。
②FCAまたはCPTで契約していた場合 港で船積み待ちしていたということは、すでにコンテナ内に、貨物が積み込まれた状態で、被災したことになりますから、貨物は、売主から買主に引き渡し済みです。
売主は、貨物を買主に引き渡し済みですから、商品代金を買主から受領する権利があります。
ただ、権利はあっても、決済条件が、仕向地に着荷後に送金して決済されることになっていたり、L/C決済でディスクレが生じたりすると、買主が貨物代金の支払いを拒否することは、あり得ることです。
インコタームズの定義からすると、ロジカルには、売主は貨物代金を受け取る権利があるとしても、商事仲裁で相手と闘うに見合う取引額であれば別ですが、現実には、そこまではできないということであれば、売主は、貨物代金を受領することができないこともあり得ることになります。
ですから、インコタームズの規則に忠実なだけでは、売主のリスクは、必ずしも万全とは限りませんが、インコタームズの規則に忠実でなければ、決済条件のリスク以前に、使用するインコタームズの定型取引条件によるリスクを回避することができません。
当然ですが、常に最善の定型取引条件を選択して契約する必要があります。
また、損傷した貨物の処分に関しては、フォワーダーは、どの定型取引条件で契約していたかに関わらず、荷主(輸出者)に対して、貨物の処分と処分費用の負担を求めてきます。
売主が、こうした費用を立て替えて支払っても、買主が立替金の清算に応じなければ、結果的に、売主がその費用を負担することになってしまいます。
このリスクは、避けようがありません。
買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますので、それが、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)のどれを掛けていたかによります。
ICC(C)を掛けていただけであれば、保険会社は自然災害を免責としていますから、買主が被った損失はカバーされません。
ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していたのであれば、保険で救済されます。
③CIP、DAP、DPU、DDP契約の場合 CIP、DAP、DPU、DDP契約であれば、売主が外航貨物海上保険を掛けますから、売主が、ICC(A)かICC(B)を掛けていたか、あるいはICC(C)で、自然災害をカバーする特別約款を追加付保していれば、貨物の滅失棄損による損害は、保険でカバーされることになります。
前述の貨物の処分費用は、依然として懸案の問題として残りますが、貨物の損傷による損害は、保険でカバーされますから、売主にも買主にも発生しません。
契約の履行義務に関しては、契約書の不可抗力条項の規定次第となりますから、契約書では、必ず自然災害は不可抗力の事態であることを明確にしておき、事後の措置は、その不可抗力条項の規定に従って取り進めます。
④FAS契約の場合FASは、通常、バラ積み貨物の場合で使われる定型取引条件ですから、コンテナ貨物の場合は、FASでの契約はほとんどないものと思われますが、仮にFASで契約したとしても、本「問題」では、「港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時」に、被災したので、貨物は、まだ売主のリスク下にあり、売主が掛ける保険は、国内運送保険なので、自然災害はカバーされません。
貨物の滅失・損傷による損失は、売主自身が負担することになります。
買主は、船側以降のリスクを負担します。
そのため、買主は、通常、外航貨物海上保険を掛けますが、本「問題」の場合、買主が付保した外航貨物海上保険は、被災した時点では、まだ保険が開始されていないので、買主が掛けた外航貨物海上保険を当てにすることはできません。
被災後の対応は、契約書の不可抗力条項の規定に従って、取り進めることになります。
➄FOB、CFR契約の場合バラ積貨物用語であるFOBやCFRを、コンテナ貨物の取引に使うことはお勧めできませんが、現実には、多くの「貿易のプロ」を自称する人達が、コンテナ貨物の取引であるにも関わらず、バラ積貨物用語を使って取引しています。
これは、コンテナ・空輸用語が誕生する以前から、貿易に携わっていた人達が、古い貿易知識のまま、アップデートしないで、後輩達に「惰性で」、伝えてきたことに、その一因があります。
また、新たに貿易を始めようとする人が、フォワーダーや銀行の人達に、「皆さんは、どのインコタームズの定型取引条件を使っているのでしょうか?」と質問をして、「ほとんどの人は、FOBやCFR、CIFを使っていますよ」と教えられて、バラ積用語を使って輸出を始めるようになったことも、一因にあります。
フォワーダーや銀行の人達は、インコタームズの違いによる、ビジネスにおけるリスクに対して、一般的に、敏感とは言い難いですから、そのように答えるのでしょうが、貿易を行う当事者にとっては、ある意味では「死活問題」なのです。
上記のような問題点はあるものの、FOB、CFR契約では、売主は、内航貨物海上保険(輸出FOB保険)を付保します。
これは国内保険ですので、自然災害に対しては免責です。
FOB、CFR契約では、売主から買主に貨物のリスクが移転するのは、「本船船上に貨物が置かれた時」ですから、「港のコンテナヤード(CY)で、船積み待ちをしている時」に被災したのであれば、売主にリスクがあったことは明らかです。
売主は、FCAやCPTで契約しておけば、保険で救済されたかもしれないのに、FOB、CFRで契約したために、貨物の損害は自ら負担しなければならないのです。
それでも、「ほとんどの人は、FOBやCFR、CIFを使っていますよ」と教えられて、貴方は、バラ積用語を使って輸出を始めるのですか?⑥CIF契約の場合CIFもバラ積貨物用語ですから、コンテナ貨物の取引であれば、CIPの使用をお勧めします。
CIF契約であっても、売主から買主へのリスク移転は、FOBやCFRと同様に、「本船船上に貨物が置かれた時」です。
売主が付保する外航貨物海上保険が始まる起点は、日本が海外から輸入する貨物の場合は、通常、「貨物のリスクが買主に移った時」ですが、日本から輸出する場合、損害保険会社と相談して、「工場(倉庫)から出荷した時」を保険の起点とすることができます。
このように保険の起点を「工場(倉庫)から出荷した時」としておけば、「問題」のケースであっても、自然災害に起因する貨物の損傷・滅失などの損害は、保険でカバーされます。
もちろん、ICC(C)であれば自然災害をカバーする特約を付けるか、あるいはICC(A)、ICC(B)でなければなりません。
買主には、被災による直接的な損害は生じませんが、事故後の対応は、契約書の不可抗力条項の規定に従って、取り進めます。
以上のように、インコタームズのどの定型取引条件を使って契約するかは、重要な問題です。
付保する保険を売主がコントロールできるという意味で、コンテナ貨物を輸出する場合、ベストはCIP、バラ積貨物を輸出する場合は、CIFということになります。
もちろん、コンテナ貨物を輸出するのに、在来船用語(バラ積用語)を使用しないようにしましょう。
在来船用語での引渡時点は、コンテナ・空輸用語よりも、遅くなって、売主のリスク範囲が広くなってしまうからです。
5.コンテナ貨物のC&F契約(1)問題台湾のバイヤーと輸出商談中です。
弊社はCPTで契約したいのですが、先方は、「CPTでやったことがなく、今まで他社とはC&Fでやってきているので、C&Fでお願いしたい」と言っています。
貨物は、コンテナで輸送されます。
(2)ヒントこれ種のやりとりが行われることは、現実に良くありますので、どのように対応するかを知っておきましょう。
1990年に改定された「インコタームズ1990」で、C&Fは、CFR(CostandFreight)と表記するように変更されました。
それまで、インコタームズの中で、唯一「&」という記号を使った定型取引条件であったC&F(CostandFreight:運賃込み)は、コンピューターの普及と輸出入手続きのEDI(ElectronicDataInterchange:電子データ交換)化が進行する中で、「&」を使わない「CFR」と表記するように改められたのです。
それから、30年以上も経っているのに、いまだにC&Fを使っていて、しかもC&Fを使うことを、堂々と要求する人が、いまだに居ることには、驚かざるを得ません。
世界の貿易業者が、如何に「惰性」に任せたまま、新しいインコタームズの知識にアップグレードされていないかが、良く分かる事例です。
C&FとCFRは、「運賃込み」(CostandFreight)ですが、実は、C&FとCFRとでは、リスクの移転時点が異なります。
CFRでのリスクの移転時点は、「インコタームズ2000」以降は、「本船船上に貨物が置かれた時」です。
それ以前のインコタームズでは、「本船の欄干上を貨物が通過した時」が、売主から買主への貨物の引渡時点、つまりリスクの移転時点でした。
ですから、C&Fで契約すれば、「本船の欄干上を貨物が通過した時」がリスクの移転時期ですし、CFRで契約すれば、「本船船上に貨物が置かれた時」に、リスクが売主から買主に移るのです。
契約書に「この契約は、最新のインコタームズによって解釈される」の文言を入れてあって、C&Fで契約すれば、最新のインコタームズである「インコタームズ2020」には、C&Fという定型取引条件はありませんから、意味不明な契約になってしまいます。
契約書に「この契約は、最新のインコタームズによって解釈される」の文言がない場合のC&F契約は、「インコタームズ1980」に定めるC&Fの定義で解釈されるため、リスクは「本船の欄干上を貨物が通過した時」に移転することになります。
また、もう一つ、輸出する立場から問題視しなければならないのは、C&Fにせよ、CFRにせよ、これらは、バラ積貨物の取引に使う用語です。
1970年代に、コンテナ輸送方式が世界的に普及したことに伴って、輸出国では、最初に陸上を輸送、次に船に積まれて海上輸送、輸入国に到着すると陸上輸送というように、複数の輸送手段を使って、国際間を一貫輸送する「複合一貫輸送」が普及しました。
そこで、「インコタームズ1980」では、新たに「コンテナ・空輸貨物」などで輸送される貨物の取引に使う定型取引条件を創設して、旧来の定型取引条件は、在来船に積載して輸送する「バラ積み貨物」の取引に使用する定型取引条件として位置づけました。
その後、若干の表記方法の変遷を経て、最新版の「インコタームズ2020」では、コンテナ・空輸用語と、在来船用語(バラ積み用語)は、次頁に掲げる一覧表のように、明確に区別されています。
輸出においては、「在来船用語」(バラ積み用語)を使った場合と、「コンテナ・空輸用語」を使った場合とでは、売主から買主への貨物の引渡時点が、後になります。
つまり、売主の危険負担の範囲が広くなることで、売主のリスクが増えます。
ですから、売主は、コンテナ貨物の輸出取引では、必ず「コンテナ・空輸用語」を使って契約するようにしなければなりません。
ただ、このことを海外の買主側に素直に説明すると、買主としては、危険負担の範囲がより少ない「在来船用語」(バラ積み用語)を使うことに固執するかも知れません。
海外側に対して、どのように説明して、説得すれば良いのでしょうか?下記は、最新のインコタームズの一覧表です。
(インコタームズ2020の定型取引条件)
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章 インコタームズ」-「6.定型取引条件の誤用例と慣習的な使用例」(POD版P9294)および「第五章物流リスク」-「1.貿易物流におけるさまざまなリスク」-「(1)自然災害のリスク」(POD版P117119)および「3.損害保険の種類」(POD版P122131)(3)回答例
次のように説得してみては如何でしょうか?「ご存じかと思いますが、インコタームズは、貿易環境の変化に合わせて、ほぼ10年に一度、改定されてきています。
C&Fという定型取引条件は、今から30年以上も前に、CFRと表記するように変更になっていますし、当時のC&Fと、現在のCFRとでは、その定義も変更されています。
それともう一つ、今から40年以上も前に、インコタームズの定型取引条件は、コンテナ・航空機で運ぶ貨物の取引に使う定型取引条件が作られ、それ以前に使われていた定型取引条件は、在来船で運ぶ貨物の取引に使う定型取引条件として位置づけられたのです。
インコタームズは、時代の変化に合うように改定されてきていますから、やはり、最新のインコタームズの定型取引条件を使って取引するのが、お互いにとって必要なことではないかと思います。
最新のインコタームズは2020年版で、C&Fに相当するコンテナ貨物の取引に使える定型取引条件は、CPTとなります。
是非、最新のインコタームズに沿って、CPTで契約交渉を取り進めたいと思いますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
」
6.CIP契約の保険(1)問題CIP条件で、輸出契約をしました。
船積直前になって、買主側から、「保険は、ICC(A),(War&S.R.C.C.)Strikes,Riots,」and。
さて、どのように対応すれば良いでしょうか?(2)ヒントCIPとCIFの二つの定型取引条件は、売主が、売主の費用で保険を掛ける義務を、買主に対して負う定型取引条件です。
これら以外の定型取引条件を使って取引しても、売主と買主は、それぞれ、自らにリスクがある区間については、必ず損害保険を掛けるのが、貿易の常識ですが、それは、相手方に対して保険付保の義務を負っているのではなく、自らが自らのために自発的に保険を掛けるので、売主が、買主のためにも保険を掛けるCIP・CIFとは、意味合いが異なります。
損害保険は、国内での輸送リスクに対応する「国内の運送保険」と、国際間の輸送リスクに対応する、「協会貨物約款」(InstituteCargoClauses:。
ICC)とに分か、後者の保険は。
日本の損保会社は、新協会約款と呼ばれるICC(2009)を「基本約款」として採用し、『外航貨物海上保険』(損保会社によって「貨物海上保険」)の保険名称で、船舶輸送用のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)と、空輸貨物用のICC(AIR)として商品化しています。
船舶輸送用の外航貨物海上保険の三つのうち、最もカバー範囲の広いのはICC(A)で、次にICC(B)が続きます。
ICC(C)はカバー範囲が最も狭い保険です。
ICC(A)は、その昔、「AllRisks」と呼ばれていた保険に相当するものです。
これらの基本約款の他に、特別約款として、戦争約款(WarClauses)とストライキ約款(Strikes,Riots,andCivilCommotion:)。
、。
()、。
さて、「問題」の海外の買主は、その世界最強となる保険を掛けるように、売主に要求してきましたが、実は、インコタームズでは、CIP、CIF契約の場合に、売主が掛ける義務を負う保険について、明文規定を設けています。
契約交渉の時に、買主側が保険の種類について要求してくる場合、売主としては、それを輸出販売価格に織り込むことができるのであれば、インコタームズの規定如何に関わらず、買主の要請を受け入れることは、まったく問題はありません。
しかし、本件の場合のように、契約後に、突然、最大範囲の保険付保を求めてきた場合、インコタームズの規定範囲を超えて、応じる必要はありません。
さて、どのように相手方に対して説明すれば良いのでしょうか?
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(4)CIP(輸送費保険料込み)~Carriage,InsurancePaidto~」(POD版P7375)(3)回答例CIP契約の場合、最新の「インコタームズ2020」では、別途合意または慣習になっていない限り、売主はICC(A)を付保する義務を負います。
買主が戦争保険やストライキ保険を要求する場合、売主は買主の費用で、それ(ら)を付保することは構わないとしています。
「インコタームズ2010」では、CIP契約で売主が買主に対して負う保険付保義務は、最小限の保険であるICC(C)を掛ければ良かったのですが、CIP契約では、工業製品がコンテナや空輸で輸送されるケースが多いことから、水濡れと自然災害による損失も補償対象となるICC(A)を付保することに変更されました。
CIF契約の場合、インコタームズでは、付保する外航貨物海上保険の種類は、別途合意または慣習がなければ、ICC(C)を付保することで、売主の買主に対する保険付保義務が履行されたとみなします。
買主がICC(C)以上のカバー範囲の保険を要求する場合、例えば、ICC(A)やICC(B)、あるいは、戦争保険やストライキ保険を要求するのであれば、売主は、買主の費用で、それ(ら)を付保しなければなりません。
以上のインコタームズの規定を買主側に説明するとともに、どうしてもWar&S.R.C.C.(Strikes,Riots,andCivilCommotion)を掛けるのであれば、それは買主の費用負担になることで、納得していただきましょう。
7.DDP条件での留意点(1)問題米国の業者が、DDPChicago条件での取引を要求してきました。
DDPで契約する場合、物流リスクは、どのように回避すれば良いのでしょうか?(2)ヒント欧米では、買主にとって、最も便利な定型取引条件である「Dベース用語」での取引が増えてきているようです。
そうした一般的な背景から、日本の業者に対しても、Dベースでの取引を希望する欧米業者が出てきています。
とりわけ、DDP(関税込持込渡)は、輸入通関も売主が行うため、買主は契約した後、ただ貨物の到着を待っていれば良いという便利さがあります。
ただ、売主がリスク負担する区間が最大になるということは、それだけ事故に遭遇するリスクも大きくなるのは自明の理です。
現に、DDPで輸出契約し、輸入国で輸入通関した後、トラック輸送中に交通事故に遭って、貨物が破損してしまったケースも起きています。
ここでは、如何にして、貿易貨物の輸送リスクをゼロにできるかを、基本に立ち戻って、思い起こしてみましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(7)DDP(関税込持込渡し)~DeliveredDutyPaid~」(POD版P7980)(3)回答例売主の工場(倉庫)を起点とし、買主と合意したシカゴの特定の地点で、貨物を買主に引き渡すまでの区間に対して、外航貨物海上保険のICC(A)を付保したうえで、出荷します。
戦争保険、またはストライキ保険を付保する必要があるか否かは、その必要のある状況があれば、必ず付保するようにします。
DDP条件で契約しておきながら、外航貨物海上保険を掛けないで出荷したために、米国で輸入通関した後の陸上輸送中に、貨物を積載したトラックが、交通事故に遭ってしまい、貨物は全損、買主からは、契約違反でクレームを受けるという、泣き面にハチ状態に陥ったケースがあったことから、「貿易の基本」の原点を思い起こしていただくために、本「問題」を設けたものです。
8.CNI条件での取引(1)問題ある東南アジアの国の業者から、「CNI(またはC&I)で、輸入したい」という要請がありました。
CNIとは、「CostandInsurance」の略で、FCAまたはFOBに、売主が保険を掛ける義務を負うことがポイントです。
買主が、買主の国の保険会社に保険を掛けても、なかなか賠償してくれないので、日本側で日本の保険会社に付保して欲しいのだとの説明でした。
さて、CNIでの契約要請がきた時、どのように対処すれば良いのでしょうか?(2)ヒント確かに、外国の保険会社の支払い振りは、日本の保険会社と比べると、だいぶ違うようです。
日本の保険会社は、一般的に、審査が早く、支払うべきものは、迅速に支払ってくれます。
新興国のバイヤーが日本から買い付ける場合や、日本企業で新興国に進出している子会社向けに、輸出を行っている企業では、新興国の保険会社では心もとないということで、CNIによる取引が、広く普及している実態があるようです。
CNIを使うことの問題点は、インコタームズで定められている定型取引条件ではないので、用語の定義が不明瞭なことです。
もちろん、取引当事者同士が、同一の定義で、認識できていれば、現実に、厄介な問題が生じることはないのですが、それでは、CNIのCとは「Cost」の略だとしても、実態として「FOB+Insurance」なのか、あるいは「」、。
、、。
しかし、一方では、日本の保険会社に、損害保険を掛けて欲しいという海外側の要望には、ビジネスを円滑にスピーディに行いたいという、切実なものがあることも事実です。
以上のことを考慮に入れて、インコタームズの定型取引条件を使って、実質的にCNIを企図する形にするには、どうすれば良いかを考えてみましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章 インコタームズ」-「5.定型取引条件の誤用例と慣習的な使用例」-「(2)慣習的に使われている定型取引条件」(POD版P9596)(3)回答例
コンテナまたは航空機で輸送する貨物の取引であれば、定型取引条件として、FCAを使います。
また、在来船で運ぶバラ積みの貨物であれば、FOBを使います。
そして、その何れの場合でも、価格条件のRemarkとして、「InsuranceshallbeeffectedbySelleratSeller’saccount.」と記載します。
できれば、付保する保険の種類を、例えば次のように明記すると良いでしょう。
「Insurance,ICC(A)」こうすることによって、定型取引条件の定義が、インコタームズによって明確になり、尚且つ売主の日本側がどの種類の保険を掛ける義務を負うかも、明確になります。
9.納品完了時点の合意(1)問題ある日本の輸出業者は、CPT条件で、輸出商談をしたのですが、納品と代金支払いについて、海外の買主側が、「買主が、貨物の輸入通関を行い、実際に着いた貨物を見て検品したうえで、問題がなければ、納品完了とし、納品完了後5営業日以内に、貨物代金を売主の銀行口座に送金して支払う」という条件を提示してきたので、合理的な考え方だと思って、これを受諾しました。
仮に、着荷した貨物を、買主が検品し、品質不良を理由として、一方的に値引きされ、値引き後の残金を支払ってきた場合、㈱日本貿易保険の貿易保険にリスクヘッジしてあれば、値引きされた金額は、貿易保険でカバーされるのでしょうか?(2)ヒントこれは、国内取引のやり方で、貿易しようとする誤った考えに基づくものです。
国内取引の「納品」は、貿易では「貨物の引渡し」に該当します。
CPT条件では、売主から買主への貨物の引渡しは、インコタームズの定義によれば、本来、いつ、どこで行われるのでしょうか?また、貨物を検品したうえで、貨物代金の支払いが行われるというビジネスの構図ですが、この構図によって、売主は貨物代金回収のリスクに晒されます。
それでは、貨物代金回収のリスクを、解消または減少させるには、どうすれば良いのでしょうか?*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(3)CPT(輸送費込み)~CarriagePaidto~」(POD版P7172)および「第十章 契約書の基礎知識」-「8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)」-「(3)検査と品質保証(Inspection&Warranty)」(POD版P267272)(3)回答例 CPT条件では、売主から買主への貨物の引渡しは、売主が自ら契約した運送人に、輸出国で貨物を引き渡した時、または貨物の物理的な占有を、運送人に移した時に行われます。
これが、「納品完了時点」です。
国内取引では、買主または買主の代理人が、実際に貨物を見たうえで、納品が行われるのが普通です。
しかし、貿易では、Dベースの定型取引条件を除いて、通常、買主が貨物を見たくても見ることができない、輸出国で、貨物は買主に引き渡されます。
しかし、インコタームズは法令ではありません。
貿易当事者同士が、インコタームズが定める定型取引条件の定義と異なる合意をすることを、妨げるものではありませんので、海外の買主側が、「買主が、貨物の輸入通関を行い、実際に着いた貨物を見て検品したうえで、問題がなければ、納品完了」とすることで、合意すれば、それが有効になってしまいます。
また、貿易では、貨物代金の決済と、数量の不足や品質の瑕疵によるクレームとは、相関関係を持たせません。
つまり、貨物が、売主から買主に荷渡しされれば、買主は、貨物代金を100%売主に支払います。
数量の不足や品質の瑕疵があれば、買主はクレームの形で、売主に問題を提起し、売主と買主との協議などを通じて、クレーム自体が妥当か否かを含め、仮に妥当なクレームであれば、代替品を供給するか、クレーム品の残存価額を査定したうえで、売主は買主に、その差額を貨物代金の決済とは絡めないで、別途、賠償してクレームを解決します。
これは、貿易の基本です。
貨物代金の一部を、貨物が着いてから、検品したうえで支払う方法も、一部では行われていますが、この方法の問題点は、「価格の最終決定権を買主が持つ」ことになる、売主にとって、極めて不利な取引条件です。
貿易保険がカバーするのは、通常、カントリーリスクなどによる非常リスクと、売主側に起因しない一定期間以上の代金不払いなどの信用リスクの二つです。
買主が、品質不良を理由として、一部代金を払ってこない場合は、信用リスクではありませんから、㈱日本貿易保険の貿易保険で、カバーすることは期待できません。
それでは、どうすれば良いのかと言うと、やはり、貿易の基本に立ち戻って、契約することです。
つまり、貨物代金は、100%支払ってもらうこと、品質クレームなどがあれば、それは貨物代金の支払いとは関連付けないで、クレーム請求を起こして協議し、クレームが金銭支払いで妥結すれば、別途、売主から買主に送金して解決することです。
貨物の船積みと貨物代金支払のタイミング次第では、貿易保険に付保して、代金回収リスクに備えます。
国内取引の常識で、貿易しないようにしましょう!
10.輸入通関前の検疫検査費用(1)問題東南アジアのある国向けに、CPT条件で輸出契約をしたところ、買主から次の内容の要請がきました。
:「輸入港で、輸入通関前の貨物は外国貨物扱いです。
輸入通関手続きの前に、検疫検査が必要ですが、外国貨物なので、検疫検査費用は、売主の費用負担となります。
輸入通関が済むと内国貨物になるので、通関後に発生する費用は、弊社がすべて負担しています。
これは、貴社だけでなく、弊社が輸入するすべての貨物に共通して、この方法で対応していただいています」(2)ヒントまず、CPT条件では、貨物が、どこで売主から買主に引き渡されるかを確認してください。
そして、物品に関わる売主と買主の費用負担は、どの時点が分岐点となっているかも、合わせて確認してください。
この「問題」のヒントは、そこが原点です。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』:「第三章インコタームズ」-「3.「インコタームズ2020」に定められている11の定型取引条件」-「(3)CPT(輸送費込み)~CarriagePaidto~」(POD版P7172)および「第九章 輸出オファー価格の算定方法とオファーシート・価格表」-「1.輸出オファー価格の算定方法」(POD版P218227)(3)回答例 CPT条件では、貨物は、「売主が運送契約を締結した運送人に貨物を引き渡すことによって」、引渡しが行われます。
これは、必ず輸出国で行われます。
貨物に関わる費用は、輸出国での引渡時点を境として、それ以前は売主の費用負担、それ以降は買主の費用負担です。
従って、輸入港で発生する検疫検査費用は、明らかに買主が負担すべきもので、貨物が「外国貨物」なのか「内国貨物」なのかは、関係ありません。
CPT条件では、輸入国の予め合意した地点があれば、その地点まで、合意地点がなければ、仕向地内の任意の地点まで、売主が、運送人と運送契約を締結します。
当然ですが、運送契約に、輸入港で発生する検疫検査に関する費用は、運送契約に含まれるはずもありません。
輸入港での検疫検査費用は、買主の負担です。
第三章 貿易の商慣習「貿易の商慣習」は、貿易を行っている人に共通した「商談のスタイル」で、具体的には、「売主が買主に提示するオファー」、「買主が売主に提示するビッド」で、どちらも商売に必要な諸条件を「一括条件」(OnePackage)にして、相手に提示し、相手の諾否を問うものです。
オファーとビッドは、商談が続く限り、通常は、交互にやりとりされ、どちらかが相手の提示したオファーまたはビッドを、アクセプトした時点で、契約が成立します。
これが、ファームオファー、ファームビッドですが、これ以外にも、ファ-ムでない、オファー・ビッドなどがあります。
「貿易の商慣習」は、インコタームズと同様に、貿易を行うには欠かせないツールですから、「貿易の商慣習」に精通して使いこなせるようにしましょう。
1.相手の値ごろ感を探りたい(1)問題海外の企業から、メールで引き合いが来ました。
早速、値段を提示したいのですが、相手が、幾らぐらいで買うつもりなのか、相手の値ごろ感が、まったく分かりません。
いきなりファームオファーして、相手が受けてしまえば、安く売り過ぎたことになり、後悔するでしょう。
相手の値ごろ感を探ったうえで、オファーしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?(2)ヒント「貿易の商慣習」では、売主が買主に提示するオファーと、買主が売主に提示するビッドの二つがあります。
オファー・ビッドは、ファームオファー・ファームビッドと、サブコンオファー・サブコンビッドに大別されます。
提示して相手がアクセプト(受諾)すると、契約が成立するのが、ファームオファー・ファームビッドです。
相手がアクセプト(受諾)しても、提示した側が、それを確認(Confirm)しなければ、契約成立とならないのが、サブコンオファー・サブコンビッドです。
相手がアクセプト(受諾)しても、提示した側は、契約成立とするか、あるいは不成立とするかのオプションを持っています。
通常、売主のオファー、買主のビッドを、相手方がアクセプトしない場合、買主はビッドを、売主はオファーを返します。
その場合でも、価格、単価、数量、包装、船積時期、決済条件などの取引に必要な条件を、一括条件(OnePackage)で、相手に提示します。
つまり、提示した側は、相手方に対して、一括条件を、アクセプトするのかしないのかの二者択一を迫るのです。
「問題」の「値ごろ感を探る」には、どの種類のオファーをすれば良いのかを、考えてみてください。
(貿易商談のスタイル)
*参考参照先:『海外展開の基本』-「「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(3)貿易の商慣習」(POD版P252253)『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド(POD版P103104)(3)回答例サブコンでオファーした場合、相手がアクセプトしても、それを不確認(Unconfirm)とすることで、契約を流すことができます。
相手が、最初のサブコンオファーを、即アクセプトして、安く売り過ぎるリスクを、これによって回避することができます。
通常、サブコンオファーすると、買主はサブコンビッドを返してきます。
それを何回か繰り返すことによって、相手が考えている値ごろ感を把握することができるでしょう。
そして、お互いに、相手の値ごろ感が射程範囲内にあると見れば、サブコン条件付きのオファー、ビッドを、ファームオファー、ファームビッドに切り替えて、真剣勝負の商談に入るのです。
2.オファーの値段は受けたというビッド(1)問題日本のJ社は、香港H社に対して、次の内容のファームオファーを出しました。
品名;○○規格; △数量; 10M/T単価; CPT HongKong US$8,500 per M/T包装;、1カートン当たり20kg詰め(内包装。
kg にp.20フィートコンテナーに500ケース決済; 取り消し不能一覧払い信用状船積時期; 201X年XX月その他条件; 前契約と同じ。
有効期限;20XX年XX月XX日15:00(日本時間)。
H社から、有効期限内に、「価格はアクセプトしたので、その値段で数量を12MTにして欲しい!」という返事がメールで届きました。
さて、値段は、決まったと言えるのでしょうか? (2)ヒント オファーもビッドも、価格、単価、数量、包装、船積時期、決済条件などの取引に必要な条件を、一括条件(OnePackage)で、相手方に提示するものです。
一括条件ですから、その中の価格だけを取り出してアクセプトしても、それは一括条件としての提示条件全体をアクセプトしないという意味になります。
それでは、「価格はアクセプトしたので、その値段で数量を12MTにして欲しい!」という買主の返事は、「貿易の商慣習」の中で、どのように考えれば良いのでしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第4章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(3)貿易の商慣習」(POD版P252253)『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「2.貿易の商慣習とは?(POD版P99101)
(3)回答例一括条件としてのファームオファーであったわけですから、「値段だけアクセプト」しても、値段が契約になったわけではありません。
数量を10M/Tから12M/Tに変更することを要求した時点で、元のオファーはアクセプトされず、数量だけを12M/Tとし、価格を含む他の条件はすべて元のオファーのとおりとして、ビッドしたものと解釈されます。
ですから、値段はアクセプトしたと言っても、その値段で確定したわけではありません。
売主は、異なる価格で、再オファーしても良いのです。
3.間違いのオファー(1)問題日本のJ社は、海外側にファームオファーをメールで出しましたが、価格の表示を間違えてしまい、ゼロ一つ少ない数字になっていました。
その価格が間違いであることは、この業界の人なら、誰の目にも明らかです。
しかし、相手からは、有効期限内に「貴オファーをアクセプトする」という返事が、メールできてしまいました。
一大事です!、さあ(2)ヒント間違いは誰にでもあることで、貿易ビジネスをしていると、このようなミスが起きることは、十分あり得ることです。
しかし、「貿易の商慣習」は、「商慣習」と言いながらも、世界の貿易に従事している人達が遵守しなければならない「厳しい掟」でもあるのです。
将棋や囲碁で、一手指した後、相手の差し手を見て、「アッ!」さっきのちょっと待っ、が許されるのであれば。
勝負の世界は成立、ファームオファー「ファーム」ファ、とは。
「」貿易の、「習」待った。
商慣習として、厳しい掟はあるのですが、こちらも、ビジネスの相手も、生身の人間同士です。
さて、貴方だったら、まず、どう行動を起こしますか?*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」-「②ファームオファー・ファームビッドの発効と取り消し」(POD版P107)(3)回答例アクセプトのメールを読んだら、真っ先に相手方に電話します。
そして、正直に「ファ-ムオファーの値段は、メールの打ち間違いだった」ことを伝えて、詫びましょう。
たいていの場合は、「ゼロが一つ少ないから、打ち間違えたのだと思いましたよ」と笑いながら、許してくれるでしょう。
しかし、相手が「いいや! 貴方のファームオファーに対して、私は、アクセプトすることをメールで回答し、有効期限内に、そのメールが貴方のところに届いているのですから、契約はすでに成立済みです。
契約書を作成して署名したうえで、お送りください」と言われたら、「万事休す!」です。
成立した契約のとおりに、義務を履行しなければなりません。
国内取引の場合、間違いが歴然としているのであれば、免責となるのが普通ですが、貿易取引の場合は、規律性の高い「貿易の商慣習」がありますから、明らかな間違いによる不手際は、免責されるのであれば、それは、相手方が間違いを了解してくれる場合に限定されます。
ファームオファー、ファームビッドを出す時は、念には念を入れてチェックしましょう。
4.有効期限切れ後のアクセプト(1)問題日本のJ社は、9月3日に、米国のA社に対して、9月6日午前10時(日本時間)まで有効のファームオファーを出しました。
A社から、9月6日午前11時(日本時間)を過ぎて、「アクセプト!」の返事がきました。
さて、貴方なら、どのように返事をしますか?(2)ヒントまず、確認しなければならないのは、オファーしたモノと同じで、且つ販売できるモノが、まだあるかどうかです。
売るモノが、現にあるかないかで、米国のA社に対する回答内容は変わってきます。
まだ販売可能なモノがある場合、次に考えることは、元のオファー価格で売りたいのか、あるいは売りたくないのかです。
価格が相場で変動するような商品であれば、相場次第では、元のオファー価格ではもう売りたくないこともあるでしょうし、あるいは逆に、元のオファー価格であれば、是非売りたいと考えることもあるでしょう。
そうしたいろいろなケースを想定して、A社への対応を考えるようにしてみては如何でしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』-「「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(3)貿易の商慣習」(POD版P252253)『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」-「④ファームオファー・ファームビッドの失効」(POD版P109110)(3)回答例販売可能なモノが、すでにない場合は、「貴社のアクセプトのお返事が、オファーの有効期限が切れた後に、弊社に到着しましたので、残念ながら、契約成立となりませんでした。
現在、再オファーできる玉(販売可能な手持ちの貨物)がないので、ご了解のほどをお願い申し上げます」と伝えます。
もし、売るモノがまだあって、売りたいのですが、相場が上昇しているため、元のオファー価格では売りたくないのであれば、「アクセプトのご回答は、オファーの有効期限切れ後に到着したため、契約成立とならなかったこと」を伝え、さらに「元の価格で再オファーをしたいところですが、相場が上昇していることから、元の価格を維持することは困難なこと」を説明したうえで、「元のオファー価格よりも、〇%程度値上げした価格でお考えいただけるのであれば、X日以内に、ファームビッドをお願いしたい」と、返事をするのが良いでしょう。
値上げした価格でオファーすると、相手は気分の良いものではありません。
相手にファームビッドを求めるのであれば、気持ちのうえでの打撃を和らげること
ができますし、「X日以内に」と時間を区切ることで、実質的にオファーをしていることと同じになります。
もし、売るモノがまだあって、売りたいけれど、相場には変化がないか、あるいは下降気味なので、元のオファー価格で、是非、契約に応じたいのであれば、A社からのアクセプトの回答が、オファーの有効期限が過ぎてから着いたことに触れないで、「オファーをアクセプトいただき、ありがとうございます。
署名した契約書二部を郵送するので、二部とも署名のうえ、そのうちの一部を弊社に返送ください」と、伝えるのが、スマートな方法でしょう。
5.最初のオファーをアクセプト(1)問題日本のJ社は、米国のA社にファームオファーを提示しました。
これに対して、A社は、有効期限内に、オファー価格よりも安い価格で、ファームビッドしてきました。
J社は、相場が上がってきていることから、A社のビッドに対し、最初のオファー価格よりも高値のオファーを、A社に提示しました。
A社は、これに対し、「貴社の最初のオファーをアクセプトする!」と回答してきました。
さて、「最初のオファーをアクセプトする」ことは、「有り」なのでしょうか? J社の立場であれば、どのように対応するのが良いのでしょうか?(2)ヒント「貿易の商慣習」では、オファーやビッドは、有効期限が切れた時に失効します。
また、オファーやビッドに対して、相手方が、それぞれビッドやオファーを返した時点で、元のオファーやビッドは失効します。
この「問題」のケースですと、最初のオファーに対して、A社がビッドを返したことで、もともとのJ社のオファーは、失効していて、すでに存在していません。
その「すでに存在していないオファー」を「アクセプトした」とは、いったいどういうことなのでしょうか? 「貿易の商慣習」に沿って言えば、それは、A社がJ社の値上げした再オファーに対して、元のJ社の価格条件で、J社にビッドしてきたということになります。
さて、A社のビッドに対して、次は、J社として、「元の価格で売りたいのか、あるいは元の価格では売りたくないのか」です。
それによって、A社への返事は変わってくるでしょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」-「④ファームオファー・ファームビッドの失効」(POD版P109110)(3)回答例J社として、「元の価格で売りたい」のであれば、A社に対して「弊社の最初のオファー価格でビッドしていただき、ありがとうございます。
契約を確認しました」として、契約書送付の案内をすれば良いでしょう。
J社としては、相場が上昇しているので、元の価格で契約したくなければ、次のように返事をします:
「弊社の最初のオファーは、貴社がビッドを返した時点で失効していますので、最初のオファー価格での契約を確認することはできません。
弊社の再オファー価格の有効期限を、〇月X日15:00(日本時間)まで延長しますので、何卒ご検討のほどを宜しくお願い申し上げます。
」
6.契約の成立時点(1)問題日本のJ社は、9月4日に、米国A社に対して、9月6日10:00(日本時間)まで有効のファームオファーを、メールで提示しました。
A社から、9月6日10:01AM(日本時間)に、「オファーをアクセプトする!」というメールが着信しました。
メールの発信時間は、オファーの有効期限が切れる2分前の、9月6日09:58AM(日本時間)でした。
さて、契約は、成立したのでしょうか?(2)ヒント「」、、、、、、。
この「問題」は、より厳密に、「契約の成立時点」とは、アクセプトの回答を発した時なのか、または、アクセプトの回答が、相手側に届いた時なのかを問うものです。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第2章貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(3)貿易の商慣習」(POD版P252253)『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」(POD版P105)(3)回答例有効期限を明示したファームオファーやファームビッドに対して、相手方から有効期限内にアクセプトする旨の回答が、提示した側に到着すると、契約は、その時点で成立となります。
契約の成立は、回答が発出された時点でなく、到着した時点です。
より厳密に言えば、アクセプトの回答が、メールで行われた場合、オファー・ビッドを提示した本人が、それを見ていなくても、メールボックスに、そのメールが届いた時点で、契約は成立です。
郵送であれば、オファー・ビッドを提示した本人が所属する会社の郵便受けに、アクセプトを伝える郵便物が、投函された瞬間に、契約が成立します。
本人がそれを見たかどうかは、不問です。
7.好条件のビッド(1)問題米国のA社から、「1,188ケース(40フィートコンテナー1本分)を買いたい」という引き合いがきたので、9月6日10:00(日本時間)までの有効期限をつけて、ファームオファーしました。
これが決まれば、手持ちの玉(販売可能な手持ちの貨物)はもうありません。
ところが、オファーした直後に、米国のB社から、9月7日17:00(日本時間)までの有効期限で、1,188ケースのファームビッドがきました。
しかも値段は、A社にオファーした値段より、1割ほど高いではありませんか!さて、貴方が売手であれば、どう対応しますか?(2)ヒント有効期限付きのファームオファーやファームビッドは、その有効期限内は、一方的に取り消すことはできません。
相手が同意すれば、取り消すことはできますが、ファームオファーやファームビッドをしておきながら、相手先に対して、取り消しても良いかなどと尋ねること自体、信用に関わることです。
A社へのファームオファーを取り消すことは、事実上できないと考えるべきでしょう。
また、この「問題」では、A社にオファーしている玉以外に、オファー可能な玉はもうないとのことです。
B社からのビッドを受けてしまえば、その時点で、A社に対するオファーは、オファーの裏付けとなる玉がないのに、ファームオファーしているファームでない状態になってしまいます。
そうした状態にすることは、絶対に避けなければなりません。
こうした制約の中で、売手としては、B社に対して、どのように対応すれば良いかを、考えてみてください。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」-「①ファームオファー・ファームビッドでの有効期限」(POD版P106)(3)回答例A社に対するオファーを取り消すことができないのであれば、A社の返事を待つしかありません。
その間、B社に対しては、暫く時間がありますから、「ビッドしていただいたことに対する感謝」と、「ビッドの有効期限内に、ビッドに対する回答を必ずする」ことを伝えておきます。
そして、A社が、オファーをアクセプトすれば、B社に対して、「ビッドはアクセプトできない」と伝え、「次は、いつごろ商談に応じることができるようになるか」の見通しを付して、B社への回答とするのが良いでしょう。
A社が、オファーをアクセプトしないで、安値でビッドしてきた場合、A社に対しては、B社のビッド価格を上回る値段を呈示して、「7日15:00(日本時間)までに、この値段でビッドすれば、考慮可能」なことを伝えます。
A社が期限内にビッドできない場合、B社に対して、当日17:00までにB社に到着するように、「ビッドをアクセプトする」旨、回答して、契約を成立させます。
8.値上げオファー(1)問題米国のA社に、ファームオファーしたら、数日後、安値でのビッドが返ってきました。
しかし、当初オファーした時よりも、相場が1割ほど上がっているため、ビッドに対して、値上げして再オファーしたいところですが、相手は値下げを期待してビッドしてきたのに、元のオファーより高値で再オファーすれば、不愉快に思うのではないでしょうか!そう考えると、値上げオファーはしないほうが良いとも思うのですが、一方では、相場より安い値段では売りたくありません。
どうすれば良いのでしょうか?(2)ヒント貿易ビジネスでは、扱っている品目にもよりますが、確かにこのような場面もあります。
真っ先に考えなければならないのは、相手との「人間関係」です。
貿易は、値段等の取引条件さえ合えば、成立しそうな気がしますし、特にデジタル社会になってくると、そう考えがちですが、必ずしもそうとばかりは言えません。
取引関係を長い間、維持するには、商売の根底に「人と人との信頼関係」がなければ、取引は長続きするものではありません。
その点で言えば、この「問題」のように、商売人としてのドライな損得勘定と、相手との良好な人間関係の維持の板挟みになることは、正常なことです。
どちらに重きを置くかは、それぞれ判断が異なってくると思われますが、できる限り、穏便な形で両方が立つような方法は、あるのでしょうか?*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(2)ファームオファー・ファームビッド」-「④ファームオファー・ファームビッドの失効」(POD版P109110)(3)回答例この「問題」に対する絶対的な「正解」はないのかも知れませんし、幾つかの回答例があるのかも知れません。
相手の心証を害さないで、できるだけ今の相場に即した価格で売りたいのであれば、相手から返ってきた値下げのビッドに対して、いきなり値上げの再オファーで返すのでなく、とりあえず、ビッドに対しては、有効期限内に「アクセプトできない」旨の返事をするとともに、なぜアクセプトできないのかの理由を、現下の相場状況と当面の見通しも含めて、説得力のある形で、相手に説明してみては如何でしょうか。
ビッドに対する再オファーはしないで、状況説明の後、最新の状況を踏まえて、再ビッドするようにお願いすることで、いったん冷却期間を置くこともできます。
再ビッドがきたら、それを検討し、アクセプトできなければ、再オファーを提示して、再度本格的な商談の段階に進むことにすれば、比較的穏便な展開になるかも知れません。
時間的な制約もある中での商談ですから、必ずしも、このようには行かないかも知れませんが、ある意味では、ロジカルにきっぱりと割り切れない、人間関係という要素が絡む問題です。
その意味では、絶対的にこれが「正解」だという答えはないのかも知れませんし、幾つかの回答例が存在するかも知れません。
この「問題」が、一つの考える契機になればと思います。
いきなり、値上げオファーするよりも、インディケーションとしての価格を呈示して、そのレベルでのビッドを求めるほうが、穏便な方法であることを、覚えておきましょう。
9.売手市場(1)問題弊社の商品は、売手市場になっていて、海外からの引き合いが殺到しています。
ところが、商品の在庫数量は、限られていて、すべての引き合いに応じながら、個別に商談を進めて行く余裕は、人的にも時間的にもありません。
そうであっても、できるだけ、高値で、効率的に売り抜きたいのですが、何か良い方法はあるでしょうか?(2)ヒントこういう機会に恵まれることは滅多にないのですが、長い間商売をしていると、こういう時も、稀ですが、ない訳ではありません。
この「問題」に対する正解は、幾つか考えられます。
一つ目は、今までに築いてきた取引関係を考慮することによって、今後の関係強化に生かす方向で考える方法。
二つ目は、引き合いを寄せてくれた人達に、実質的な「入札」をお願いする方法。
三つ目は、自分が売りたいと考える値段で、一斉オファーする方法。
ただし、玉が足りないのに「空オファー」するのは許されません。
以上の三つの方法が、ヒントです。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「3.オファービッド」-「(3)先売り御免(OfferSubjecttoPriorSale)のオファー」(POD版P110111)(3)回答例「(2)ヒント」に記載した一つ目の方法は、今までに築いてきた取引関係を考慮することによって、今後の関係強化に生かす方向で考える方法でした。
従来取引関係にあった顧客をベースとして、今後関係を強化したいと考える重点顧客をリストアップし、その優先順位をつけたうえで、引き合いに対するオファーを、優先順位に従って提示していくことで、売り切る方法です。
この方法は、将来の取引関係強化を念頭に置いた、戦略的な販売方法と言えるでしょう。
二つ目の方法は、引き合いを寄せてくれた人達に、実質的な「入札」をお願いする方法でした。
具体的には、引き合いを寄せてくれた人達に、あるいは上記一つ目の方法と組み合わせて、優先順位の順番に従って、例えば上位20番目までの引き合い先に対して、「ファムビッド」をするように依頼します。
ビッド価格はマチマチになると思いますが、射程範囲内のビッド価格を出してきたところに対して、オファーをして、更なる商談を仕掛ければ良いのです。
三つ目は、引き合いを寄せてくれた人達に、あるいは上記一つ目の方法と組み合わせて、優先順位の順番に従って、例えば上位20番目までの引き合い先に対して、自分が売りたいと考える値段で、一斉オファーする方法です。
「貿易の商慣習」のオファー・ビッドの方法の中に、「先売り御免オファー」(OfferSubjecttoPriorSale)という方法があります。
これは、「先に売り切れてしまっても、売主は免責です(御免なさい!)」を前提条件として、ファームオファーする方法です。
通常のファームオファーだと、相手がアクセプトした段階で、契約が成立しますが、「先売り御免オファー」では、玉の裏付けがなくなった状態で、アクセプトの返事がきても、「先売り御免」で、契約は成立とせず、売主は御免を決め込むことができます。
この方法であれば、玉不足なのに「空オファー」したと、責められることはありません。
長い間、貿易をしていても、売主側が圧倒的に優位に立つ好環境は、滅多にないものですが、仮に、このような時がくれば、「先売り御免オファー」の方法があることを、思い起こしていただければと思います。
10.契約書にサインしてないから(1)問題日本のJ社は、マレーシアM社との商談で、J社の再々オファーをM社がアクセプトして、契約が成立しました。
ところが、翌日、M社は「契約書はまだ作っていないし、サインもしていないから、契約は正式には成立していない」、「昨日のオファーアクセプトを取り消す!」と言ってきました。
長い間、貿易をしていると、新規に貿易に参入してくる業者は絶えずいるわけで、そうした人達は、「貿易の商慣習」といった、貿易の基本的な素養さえ、身につけていないことがあります。
このようなことは、現実に起こり得ますから、このような事態に直面した時に、どのように対処すべきか、知っておく必要があります。
貴方が、J社の立場なら、M社に対して、どのように対応しますか?(2)ヒント世界を相手に商売するのが貿易ですが、商売の世界は、それぞれ専門の領域ごとに分かれていますから、意外と「それぞれの世間は狭い」ものです。
たいていの場合、同業他社のことは知っていますし、面識のある者同士のことも少なくないでしょう。
M社には、厳しく抗議するのは当然ですが、それだけでは、相手が逃げ切る可能性があります。
二度とこうしたことを起こせないように、「狭い業界」であることを利用する方法を考えましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第四章貿易の商慣習」-「5.貿易の商慣習の規範性」(POD版P115116)(3)回答例M社に対しては、当然のことですが、次のように、電話とメールで猛抗議をします:「貿易では、契約書に署名した時に契約が成立するのではなく、『貿易の商慣習』に従って、オファー・ビッドを行い、それを提示された側が、アクセプトの回答をして、その回答が提示した側に到達した時に、契約が成立します。
契約
が成立したその後で、契約書を作成して、当事者双方が契約書にサインします。
これが『貿易の商慣習』で、現在では、『ウィーン売買条約』(国際物品売買契約に関わる国際連合条約)にも、明記されています。
貿易を行う者は、誰でも、この程度のことは知っています。
しかし、貴方は、『貿易の商慣習』に従わず、契約が成立しているにも関わらず、契約書に署名していないことを理由に、契約を否定しておられます。
貴方には、速やかに、貿易の基本に立ち戻るようにお願いします。
本件契約は、すでに昨日成立していますから、お送りする契約書にサインして、一部を返送してください。
なお、どうしても、契約したことを認めないのであれば、御社の社長に、書状で、貴方と御社に対する厳重なクレームを提起し、同時に、弊社が知っている限りの日本を始めとする同業他社に、貴方と御社が『貿易の商慣習』に反した行為をされ、その後も不誠実な態度を改めようとしていないことを、広くこの業界に喧伝して、貴方と御社との商談に際しては、十分に注意をするように、通知させていただきます。
悪しからず!」この方法の効果は、覿面です。
もちろん、こうした企業との取引は、リスクが高いですから、以後、当社とは「出入禁止」とします。
結果的には、今回の契約はなかったことにすることも、止むを得ないでしょう。
不信感を抱いての契約履行は、精神上も宜しくありません。
第四章 貿易決済 決済は、貿易で最もリスクの高い部分ですが、そのほとんどは、「既知のリスク」で、「既知のリスク」には、それに対応するリスクヘッジやリスク回避の方法のあるものと、リスクを解消する方法のないものがあります。
貿易決済で失敗することは、基本的にありません。
それは、リスクヘッジや、リスク回避の方法のあるものは、その方法を講じて取引を行い、リスクを解消する方法のない場合は、契約しない、取引しないこととします。
このやり方で実行すれば、貿易決済で失敗することなど、あり得ません。
代金回収に失敗したと言われるすべてのケースは、相手を信用して、自社をリスクに晒した場合に限られます。
相手を信用して、リスクを冒してはなりません。
貿易は、「信義則」を前提として行うものでありません。
相手を信用するかしないかという次元で考えるのでなく、リスクヘッジ(回避)をしながら行うのが、貿易です。
この基本を、踏み外さないようにしましょう。
1.売掛(1)問題海外バイヤーとの商談で、『当社は、日本の他社と、“月末締め翌月末の送金支払い”の決済条件で、契約しているので、御社ともこれでお願いしたい』と言われました。
さて、貴方が売主の立場なら、どうしますか?(2)ヒント日本の業者が、貿易の基本的な知識を欠いていることを見越して、国内取引の「売掛」による決済方法を提案してくる海外バイヤーが、少なくありません。
ちなみに、「売掛」は、売買当事者の何れもが、共通の民法・商法が施行されている環境にある「国内取引」では、どこの国でも普通に行われている決済方法で、「信義則」を大前提としています。
しかし、「貿易取引」では、「信義則」を前提にできないうえ、売買当事者に共通して適用される、民法・商法も存在していない取引環境です。
貿易では、「売掛」は異常な決済方法としか言えません。
なぜなら、海外の買主側が、商品代金を払わなければ、基本的に「取りに行く方法」はないからです。
国内取引では、いざとなれば「取りに行く方法」はあるのに、貿易にはありません。
もちろん、国際間でも、裁判や商事仲裁という紛争解決の方法は存在していますが、弁護士を立てて闘う必要があります。
通常の中堅・中小企業・零細事業者にとって、裁判や商事仲裁などの仕組みは、あってもないのと同じことです。
貿易で最もリスクが高いのは、輸出では「決済」、輸入では「品質と納期」です。
決済には、幾つかの方法があり、それぞれの決済方法は、リスクゼロではありませんが、決済方法によって、リスクの大小はありますし、リスクをヘッジできる「貿易保険」もあります。
こうしたことを、しっかりと学んで、対応するようにしましょう。
「問題」のような海外バイヤーの要求は、貿易に精通した方であれば、とうてい信じられない話ですが、現実に海外展開の支援機関が、商談会の際に作成している「海外バイヤーリスト」の決済方法欄には、堂々と“月末締め翌月末の送金支払い”や、“20日締め翌々月末の送金支払い”などと記載されています。
支援機関も、貿易の基本を知ったうえで、支援して欲しいものです。
さて、海外バイヤーから『当社は、日本の他社と、“月末締め翌月末の送金支払い”の決済条件で、契約しているので、御社ともこれでお願いしたい』と言われたら、どうしますか?これも、現実に直面する場面です。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158164)(3)回答例海外バイヤーが、「月末締め翌月末の送金支払い」の決済条件でお願いしたい」と言ったら、「それって、国内取引の決済方法ですよね?御社は、国内取引の決済方法で、貿易をやっているのですか!」と、皮肉交じりの発言をすることも、海外バイヤーに「貿易のことを知っているな!」と思わせる効果的な方法です。
ただ、「月末締め翌月末の送金支払い」の決済条件であっても、決済のリスクを、㈱日本貿易保険の「貿易保険」にリスクヘッジできるのであれば、一向に構いません。
決済方法は、「月末締め翌月末の送金支払い」ですと伝えると、㈱日本貿易保険には、笑われてしまうかも知れませんが、貿易保険を引き受けてくれるのであれば、決済リスクを心配しないで、「月末締め翌月末の送金支払い」で輸出販売して構いません。
もし、㈱日本貿易保険が、その相手に対して、その決済条件では、「貿易保険」のお引き受けはでき兼ねるのであれば、取引すること自体を止めます。
貨物代金を取りはぐれた場合、ほとんどの事業者にとって、相手に無理やり支払わせる方法は、事実上ないからです。
貿易は、リスクを張って行うものではありません。
もちろん、海外バイヤーとは、「月末締め翌月末の送金支払い」でなく、もう少しまともな決済方法、例えば、「商品代金の30%は契約後10日以内に送金支払い、残金70%は船積完了次第送金支払、100%入金確認後にB/Lを送付」や、「商品代金の40%は契約後10日以内に送金支払、残金60%は、船積み後1ヵ月以内に送金支払」のような条件で商談するようにします。
リスクのある決済方法の場合は、貿易保険にリスクヘッジできるのであれば、契約しますが、リスクヘッジできないのであれば、契約は止めます。
決済では、絶対にリスクを冒してはなりません。
2.B/Lの危機(B/LCrisis)(1)問題台湾向け輸出で、船積みして数日で、貨物が基隆港に到着しました。
貨物は港に到着しても、L/C決済で、B/Lは銀行経由なので、まだ買主の手元に届いていません。
貨物を引き取るのに不可欠なB/Lがなくては、買主は、輸入手続きを始めることができませんし、港頭倉庫でのフリータイムの保管期間が過ぎると、倉庫代が発生してしまいます。
こうした状況で、台湾側から、『倉庫代を売手が負担するか、あるいは、船会社に保証状(LetterofGuarantee:L/G)を出して、“B/L無しで貨物を引き取って良い”旨、船会社に指示するか、どちらかを選択せよ!』と言ってきました。
さて、どのように回答すべきでしょうか?(2)ヒントこの「問題」は、貨物の方がB/Lより早く着いてしまうために、買主が大慌てする状況に追い込まれる「B/Lの危機(B/L」Crisis)。
の典型です、近隣諸国との貿易では。
このよ、そしてが良、「こり」問題、のような要請を、相手を信用して、それに、貨物はまうと、先に引き取られ、決済はディスクレがあるという理由で不払い(Unpaid)に。
れてしまい考え方の一つとして、インコタームズのどの定型取引条件を使って契約していたかにより、売主から買主への危険負担の移転がいつ、どこで行われたのかで、反駁できるかも知れません。
もう一つは、このような場合、売主側が対応するのでなく、買主側だけで問題解決をすることができる方法があります。
それをお勧めすることで、対応することができます。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「4.信用状決済のリスクとそのヘッジ方法」-「(3)B/Lの危機への対応」(POD版P173174)(3)回答例①インコタームズの定型取引条件における危険負担
インコタームズの定型取引条件のうち、FCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等の定型取引条件を使って契約していたのであれば、貨物の引渡しは、日本において完了済みです。
売主が意図的に船積書類の送達を遅らせるようなことをしない限り、引渡し後の貨物に、港頭倉庫での保管料が発生しても、それは、買主のリスクで買主が負担すべき費用です。
売主がそれを負担する理由はまったくありません。
Dで始まる用語のうちのDDP契約では、売主が輸入通関を行って、輸入関税も売主が負担したうえで、予め合意した指定地点に輸送され、そこで売主が買主に貨物を引き渡すまでは、すべて売主が費用と危険を負担しますから、港頭での倉庫代が発生しても、それは売主負担となります。
従って、DDP契約では、「問題」のような問題が起きることはありません。
しかし、DAPとDPU契約の場合は、合意した荷渡地点が、輸入通関前の地点であっても、あるいは輸入通関後の特定地点であっても、輸入通関手続きは、買主が行うことになっています。
輸入通関に必要な書類の一つであるB/Lがなければ、買主は、輸入手続きをすることができませんから、「問題」のような問題は起こり得ます。
日本で貨物が引き渡されるFCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等と違って、DAPとDPUは、輸入国で貨物を引き渡す前の時点で、貨物の引き取りができない「B/Lの危機」状態になることが考えられます。
しかし、B/Lが船積書類の一つとして、銀行経由で買主に送達されることに、売主が責めを負う余地のないのは、明らかなことです。
DAPとDPUの場合は、売主と買主の間で、FCA、CPT、CIP、FOB、CFR、CIF等の場合よりも、より揉める可能性はあるものの、基本的に「B/Lの危機」は、次の②の方法で、買主側が自己解決すべき事項です。
②買主側で自己解決する方法買主が、買主の取引銀行と連帯保証をした保証状(LetterofGuarantee:L/G)を、船会社に差し入れることによって、B/Lなしでも、買主は、貨物を船会社から引き取ることが可能です。
この方法は、B/Lが未着であっても、貨物を引き取ることができる、普通に行われている方法です。
この方法は、B/Lの危機を輸入側だけで解決できるだけでなく、輸出側では、ディスクレや、買主が着荷貨物に異議をとなえようとしても、貨物代金が100%支払われます。
売主にメリットがある方法です。
3.L/Cが開けない!(1)問題海外側との商談で、「L/Cを開けないので、出荷後の後払送金でお願いしたい」と言われました。
さて、この場合、貴方ならどう対応しますか?(2)ヒント「L/Cを開けない」背景には、何があるのでしょうか?通常、考えられることは、銀行が、「L/C開設に必要な、与信枠の設定に応じてくれない」のか、「設立間もない企業なので、銀行が与信審査をするために必要な、決算資料などの財務資料がまだない」のか、あるいは、銀行は、L/Cを開設する条件として、定期預金等の担保を要求することがありますから、「担保を提供するだけの十分な資産がない」などの理由が、考えられます。
何れの場合であっても、銀行は、その業者に対して、まだL/C開設の要求に応じられるだけの財務体力があると、判断できない状態にあると見て良いでしょう。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「③L/C決済」(POD版P258260)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「3.信用状付きの荷為替手形決済」(POD版P138139)および「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P167)(3)回答例L/C開設に必要な財務体力の見極めができていないと、銀行が判断している企業に対して、「出荷後の後払送金」などもってのほかです。
逆に「出荷前に全額前払送金」を要求して当然です。
あるいは、㈱日本貿易保険が、「出荷後の後払送金」の支払条件であっても、貿易保険を引き受けてくれるのであれば、決済リスクのヘッジができるわけですから、「出荷後の後払送金」で取引しても構いませんが、リスクヘッジできないのであれば、取引は止めておきます。
あるいは、D/P、D/A、送金などと、貿易保険へのリスクヘッジを組み合わせて、考えることが可能であれば、それを検討すべきでしょう。
なお、L/Cは、開設費用が割高なので、数十万円程度の取引で、L/C決済を支払手段とすることは、非現実的です。
4.契約破棄のリスク(1)問題L/C決済条件の輸出契約で、出荷準備をしていたら、突然相手方から“契約キャンセル!”の連絡がきました。
契約商品は特殊な規格なので、他に売りさばくのは容易ではありません。
製造は完了済みなので、最悪、製造コスト分がまるまる損失になるかも知れません。
L/Cはまだ開かれていませんので、契約キャンセルされても、どうにもならないことは分かっていますが、今後、こうしたことが、再現しないようにするには、どうしたら良いのでしょうか?(2)ヒント契約キャンセルされるリスクは、決済方法によって違ってきます。
「問題」のL/C決済であれば、L/Cは開設した側が一方的に取り消すことはできません(Irrevocable)ので、買主は、L/Cが開設されてしまえば、契約をキャンセルすることができなくなります。
もちろん、開設したL/Cのとおりに、売主が書類を揃えることができない場合は、ディスクレとなって、買主が支払いに同意しなければ、代金は支払われず、売主は船積みした貨物を引き戻したり、値引き交渉をしたりして、何とか貨物を引き取ってもらうことになり兼ねません。
ですから、L/Cが開設されても、契約キャンセルは絶対にないとは言えませんが、少なくとも、L/Cが開設されていない状態の時よりも、契約キャンセルされにくいことは確かです。
「問題」のケースでは、L/C決済の取り決めであるにも関わらず、L/Cが開設されていないのに、作ってしまっていたことに、問題があります。
この「問題」点をクリアできるL/Cの開設条件を考えてみましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』―「第十一章貿易における22種類のリスク」ー「7.ロング・ショートのリスク」(POD版P340)および「第七章決済リスク」-「3.信用状付きの荷為替手形決済」(POD版P138)(3)回答例 当然のことですが、契約キャンセルは、明らかに契約違反であるため、速やかにL/Cを開設して、契約を履行するように、相手方に申し入れなければなりません。
しかし、それでも、相手が要求に対応しない場合は、止むを得ませんが、“泣き寝入り”するしか、方法はないでしょう。
その代わり、二度と同じようなことが起きないように、今回のことから、教訓を汲み取るべきです。
同じようなことが起きないようにするには、契約での船積時期の設定を、「L/Cが到着した後、〇〇日以内」とします。
「〇〇日」は、L/Cが到着してから、売主が生産(調達)を手配し、さらに船積みまでに必要な日数を加算して、その日数を、「〇〇日」とします。
つまり、「〇〇日」は、L/C到着から船積みまでの「リードタイム」です。
このようにすると、L/Cが到着していない状態で、迫りくる船積時期を遵守するために、生産(調達)手配を余儀なくされ、最終的に契約破棄されてしまったり、船積時期直前までL/Cが開設されなかったりして、契約破棄のリスクに晒されながら、生産(調達)手配をせざるを得なくなる事態を避けることができます。
L/Cが開設されてこなければ、売主は生産(調達)手配などのアクションを起こしませんから、その状態で契約を破棄されても、実損が生じることはありません。
貨物代金の一部を前払いで送金してもらう条件の場合でも、前払金が入金してから、生産(調達)手配して、船積みをするのに必要なリードタイムが経過した後に、船積みするように、船積時期を設定します。
ただし、前払送金は、生産(調達)コストをカバーするだけの金額にするようにします。
生産(調達)コスト以下の金額であれば、不足分の金額が、契約キャンセルのリスクに晒されることになります。
5.船積完了後の送金決済(1)問題 輸出商談で、相手方は、契約成立後10日以内に、貨物代金の50%を送金するが、残り50%は貨物の船積みが完了した時点で送金すると主張しています。
この条件で取引する場合、どのようなリスク回避策が考えられるでしょうか?(2)ヒント 買主は、「貨物代金の残金50%は、船積完了時点で送金する」とのことですが、これだけでは、残金50%の送金支払は、何の保証もありません。
買主が、確実に残金50%を送金せざるを得ないようにするには、どのようにすれば良いかを、考えてみましょう。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例「売主は、船積みが終わった段階で、買主にその旨を通知し、買主は、船積みが完了した通知を受け取り次第、貨物代金の残金50%を買主に送金して支払う」としたうえで、さらに「買主は、入金を確認後、直ちにOriginal」B/L、と主に送付する。
船会社は、買主がB/Lを呈示しない限り、貨物を引き渡しません。
B/Lは有価証券で、貨物と等価価値のあるもので、船会社が、B/Lの呈示がないのに。
貨物を渡してしまい、その後で、別の業者がB/Lを持ってくれば、貨物はもうありませんから、その場合、船会社は損害賠償の責務が生じます。
船会社にとって、B/Lと引き換えに貨物を引き渡すのは、鉄則中の鉄則です。
従って、買主がB/Lを入手できなければ、貨物の引き取りができないことになります。
貨物代金の残金50%は、買主が貨物を必要とする限り、必ず送金せざるを得ませんから、この方法によって、買主の売主に対する残金の送金が動機づけられるのです。
B/Lは、L/C、D/P、D/A決済であれば、銀行を経由して、買主に送達されますが、送金決済の場合は、銀行を経由しないで、売主から買主に直送されるのが普通です。
直送手段は、DHLやEMSといったAir、Courier、Serviceを利用します、が航空機が事故に、B/Lが紛失した場合はありませんし。
B/Lの再発、かなり、ですからる難点があります、通常は、三通あるオリジナルB/Lのうちの二通、先に送付し、残りの一通は翌日送るとい。
6.出荷後送金決済のリスク(1)問題輸出商談で、相手方は、「契約成立後10日以内に、貨物代金の70%を送金し、残額の30%は、貨物が到着してからすぐ送金する」と主張しています。
この条件で取引する場合、どのようなリスク回避策が考えられますか?(2)ヒント 貨物代金の70%は、契約成立後10日以内に送金してくるとのことなので、この部分は問題ないでしょう。
問題は、残金の30%が、貨物到着後の送金になることです。
恐らく、買主は着荷した貨物を見て、問題がなければ送金するけれども、品質に問題があったりすれば、減額して送金するつもりなのでしょう。
貿易における取引は、売主と買主が合意して、取引価格を確定して行うものです。
「問題」のケースでは、取引価格は「70%~100%」の範囲内に収まることは確実ですが、最終的な価格決定権が、買主にあることは明白です。
これは、合意した取引価格で取引するという貿易の大原則を逸脱しています。
貿易では、取り決めた貨物代金は、契約のとおりに、100%支払い、品質不良などの問題が生じた際は、別途、買主がクレームを提起して、双方が話し合って、解決策を決めます。
これが、貿易の基本のやり方です。
「問題」の方法は、この貿易の大原則から逸脱しています。
ところが、現実の貿易取引では、「問題」のような要求が買主から出されることは珍しくありません。
いくら「貿易の大原則」を説いたところで、最終的には、決済条件を決められてしまうことは、相手との力関係次第では、避けられないかも知れません。
残金30%の部分を貿易保険にリスクヘッジできれば良いのですが、貿易保険が補償対象とするリスクは、「信用リスク」ですから、「品質リスク」は対象外です。
他に手立てを講じなければなりません。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(5)貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例
契約書に「相殺の禁止」条項と「支払遅延の延滞金利」条項を入れるようにします。
相殺を禁止することにより、商品の契約代金とクレーム金を相殺して清算することができないようにします。
そして、買主が、支払期日までに商品代金を支払わなかった場合、支払期日から実際の支払日までの未払金額に対して、年率25.0%で計算した延滞金または適用される法で許容される最大利率の、何れか低い利率で計算した支払遅延利息を、売主に支払うこととします。
この二つの条項によって、残金30%をクレーム金と絡めて、買主が勝手に処理することができなくなりますし、残金30%の送金が遅延すれば、支払遅延の金利が加算されるので、買主は、期限どおりに支払わざるを得なくなります。
この二つの条項を入れることに、買主が逡巡するのであれば、「売主は、船積みが完了したことを買主に通知し、買主は直ちに貨物代金の残金30%を買主に送金して支払うものとする。
買主は、入金を確認した後、直ちにB/Lを買主に送付する」とします。
貨物が着荷してからの送金ではなく、「船積完了次第、残金30%を送金する」ことを、買主に提案します。
船会社は、B/Lの呈示がない限り、貨物を引き渡さないので、B/Lが担保となって、買主は、売主に送金してくるでしょう。
買主は、貨物を必要とする限り、船積み後、すぐに送金してこざるを得ません。
7.輸出代金の回収失敗(1)問題貨物が輸入港に到着してから1ヵ月以内に、貨物代金を送金して支払う条件で、輸出契約(総額約5百万円)をして、貨物を輸出しました。
しかし、相手方は、貨物が到着して3ヵ月になるのに、まだ送金してきません。
裁判所に訴えようと思っています。
(2)ヒント誰でも、すぐ思いつく方法は、裁判を起こすことです。
しかし、日本で裁判を起こして勝訴しても、海外の国で強制執行してもらえるかどうか、国によっては、日本の裁判結果を受け入れることを拒否して、強制執行してくれない国も少なくありません。
それでは、相手国で裁判を起こしたらどうでしょうか。
相手国で勝訴すれば、強制執行可能です。
ただし、「相手方の資産が残っていれば」の条件が付きます。
しかも、裁判には弁護士費用だけで、数百万円か、長引く裁判になれば、更に一桁上の費用が必要になるでしょう。
一般的には、係争金額が1億円に満たなければ、確実にコスト倒れになると言われています。
軽送金額500万円では、裁判は、非現実的です。
裁判が無理であれば、商事仲裁はどうでしょうか? 商事仲裁の場合、仲裁裁定が出れば、海外の該当国で強制執行できる仕組みになっています。
しかし、現実には、強制執行が拒絶されるケ-スも出ています。
しかも、商事仲裁といえども、弁護士費用と仲裁員の費用が掛かりますから、やはり軽送金額が1億円に満たなければ、確実にコスト倒れになります。
敗訴でもすれば、損の上塗りになって、目も当てられません。
それでは、いったいどうすれば良いのでしょうか?*参考参照先:貿易決済の方法とリスク」-「①送金決済」(POD版P256257)『営業マンのための貿易実務』-「第七章決済リスク」-「2.送金決済のリスクとそのヘッジ方法」(POD版P158163)(3)回答例
最も損失を抑えられる方法は、「泣き寝入り」です。
「泣き寝入り」する限り、商品代金以外に、一円たりとも損が出ませんから、これが最も安価な解決法です。
要は、貿易の決済では、「取りはぐれるような、決済方法では契約しない」ことです。
これさえ守っていれば、取りはぐれないのですから、安全に貿易を行うのは、実に簡単なことではありませんか!良くありがちなのは、商売欲しさに、前のめりになって、イチかバチかで、自社をリスクに晒す形の契約をしてしまうことです。
気迫や、やる気、気概などは、もちろん大切なことですが、そのために、リスク観念を忘れてしまっては、元も子もありません。
「泣き寝入り」が一番の正解だとは言え、以下のことは覚えておいて損はないでしょう。
それは、相手が自ら支払う気持ちになった場合、未回収の代金が回収できるかもしれないということです。
代金が回収できる唯一の可能性のある方法は、「相手に支払っても良いという気持ちになってもらう」ことです。
そのためには、裁判や商事仲裁などと、腕を振り揚げるようなことは、絶対にご法度です。
逆に、より親密になって、将来のビジネスの夢を語り合い、夢の実現には、今目の前にある、未払代金が障害であることを、分かってもらうのです。
この方法で、未回収代金の大半を回収できた業者もあります。
回収できなければ、損の上塗りになる可能性はありますが、喧嘩腰になるのでなく、逆に親密になることによって、解決できれば、万々歳です。
8.全額前払条件での輸出契約(1)問題海外の商社から、「貴社のHPを拝見したところ、貴社の商品は、我が国の市場で、確実に売れると思われるので、商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールが飛び込んできました。
早速、その会社を訪問して、商談をした結果、弊社売上の一年分に相当する大量契約が成立しました。
しかも、支払条件は全額前払いで決着です。
当日、その商社は、契約成立を祝し、自社の顧客を招いて宴会を主催しました。
宴会の席上、その商社から、宴会費用と顧客への土産物購入費用を負担するように求められたので、即座に快諾し、求めに応じて、宴会代と土産物代として、3,000米ドルの現金を手渡しました。
翌日、契約書を手に、日本に凱旋帰国をしましたが、数日して、その商社から「支払条件が、全額前払いなので、銀行からの送金を円滑に行うため、弊社社長の個人口座に、3,000米ドルを振り込んで欲しい」とのメールが来ました。
この段階で、「ひょっとすると、騙されたかも!」と、不安を感じたのですが、それから数日すると、電話もメールも通じなくなってしまい、やっと、騙されていたことに気づいたのです。
これは、現実に起きた事例ですが、貴方がこれと同じようなことに遭遇して、宴会の席上で、宴会費用と顧客への土産物代の負担を求められたとしたら、どうしますか?(2)ヒントまず、「商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールがきて、すぐにその会社を訪問して商談したことは、問題なかったのでしょうか?通常、輸出する際には、商標などの知的財産権について、輸出(予定)先国での類似商標、同一商標などの登録状況を調査したうえで、売り込みを掛けます。
「問題」では、知財権について調査した形跡はないようです。
これが、第一の問題点です。
第二に、支払条件が「全額前払い」で合意したとのことですが、これは、買主にとって、リスクが最大化する決済方法です。
この決済方法で契約できたことに、疑問は抱かなかったのでしょうか?第三に、宴会代と顧客への土産物代を、全額負担することについて、疑問を抱かなかったのでしょうか?、宴席は、宴席を主催した側が。
100%費用を負担するものです、友達同士の関係では、割り勘はないです、まして主催者側が、招待した側に宴席費。
あり、またこ、顧客はど、その商社の、土産物代は。
ただ、高信頼性社会に生まれ、育った我々は、契約成立というおめでたい雰囲気の中で、費用負担を求められれば、何の疑問も抱かないで、「はい!」了解!、と返事してしまうことは。
もう少し、日本と海外との基本的な相違点について、意識を持っていれば、詐欺にひっかからずに、済んだかも知れません。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第二章 日本と海外との違い」(POD版P4150)および「第十一章」-「」11.対価確保前にモノやサービスを提供するリスク(3)回答例まず、「商談のため、早急にご来訪願いたい」というメールがきて、すぐにその会社を訪問して商談したことは、正しい対処の仕方ではありませんでした。
新しい取引先候補に対しては、事前に、ウェブでHPをチェックしたり、㈱日本貿易保険の「海外商社名簿」で格付されている企業かどうかを調べたり、あるいは信用調書を取り寄せたりして、その企業に対する販売与信枠を設定するのが、最初に取るべき手順です。
「問題」の企業は、これらの手順をすべて飛ばして、相手先を往訪してしまいました。
輸出する際には、商標などの知的財産権について、輸出(予定)先国での類似商標、同一商標などの登録状況を調査するのが普通です。
これをしないで輸出すれば、輸出した途端に、訴訟沙汰に巻き込まれたり、輸出できなくなったりするかも知れません。
「問題」では、知財調査をしなかったようで、この手順も飛ばしてしまったようです。
また、「全額前払い」の支払条件は、買主にとって、最大限のリスクを背負い込む決済方法です。
リスク観念が強い、海外の企業が、この決済方法で契約に応じたことに、疑問を持つべきでした。
初対面の初取引で、この決済条件で契約ができることなど、あり得ないことです。
宴会代と顧客への土産物代を、日本側が、全額負担することは理不尽でしょう。
顧客は、その商社の顧客であって、日本側の直接的な顧客ではありませんし、宴会費用は、宴会に招待した側が負担すべきもので、招待された日本側が負担するのは筋がとおりません。
仮に、宴会代と顧客への土産物代を、日本側が負担することに同意したとしても、その場で現金で手渡すのでなく、「弊社が負担することは快諾しますが、この場では、いったん貴社のほうで建て替えておいてください。
すべての契約が、円滑に履行完了した段階で、日本から送金してお支払いします」と回答すべきでした。
日本側が負担することは、快諾していますから、相手に対して礼を失することにはならないでしょう。
「契約を交わしただけで、まだ一円たりとも儲けになっていない段階で、先に支払うことはリスクである」というリスク認識に立つべきでした。
第五章 知的財産権のリスク通常のモノの貿易で、知的財産権のリスクが顕在化するのは、商標が冒認登録されてしまい、その商標を付した商品の輸出ができなくなるケースが、比較的多いと思われます。
海外に、売れるかどうか分からない段階で、商標登録の費用を出すわけにはいかないという声を良く耳にします。
しかし、一方では、売れ始めてから商標登録しようとすると、手遅れになる恐れもあります。
新しいことを始めようとする際、先に必要なカネを使うことで、その分を取り返そうと頑張る気持ちになるものです。
そのくらいの気概は、持って海外展開に臨んで欲しいものです。
D用語での取引は、知財権がらみのトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
このことに気づいている人は、まだ、多くないようです。
また、食品の取引をしている人は、育成者権を侵害しないように注意しましょう。
1.冒認登録されていた商標(1)問題弊社は、中小企業です。
海外のある国に、自社の商品を輸出しようとして、その国での知財登録状況を、弁理士に調査してもらったところ、弊社商品の商標が、すでにその国の企業によって、勝手に登録されていることが分かりました。
冒認登録するとは、許せないことだと思いますし、できれば裁判を起こして闘いたいと思ったのですが、裁判をするほどの人的余裕も金銭面での余裕もありません。
どうすれば良いのでしょうか?(2)ヒント 確かに、冒認登録は、道義的に許すことはできませんが、法的には、その国の国内法に従って、冒認登録者が登録申請をして、認められたものですから、その国では、冒認登録した業者が、正当な商標権者です。
貴社が先に登録申請をしなかった点で、貴社に落度があることは明らかです。
商標権は、それを作成した人のものでなく、先に登録した人のものであることを、認識しておきましょう。
商標を冒認登録した企業(または個人)に対して、作った人(または企業)に、自然発生的に誕生する「著作権」を盾に、商標権者の権利取消を訴えて闘う方法もあります。
現に、冒認登録に対して著作権を盾に、権利取消の訴訟を起こし、数年もの歳月は費やしましたが、最終的に勝訴したケースもあります。
しかし、貴社の場合、裁判で闘う人的余裕も、金銭的な余裕もないとのことなので、他の方法を考えるしかありません。
商標権を買い取ることも、選択肢の一つですが、恐らく、かなり著名な企業の商品でない限り、買取コストを回収するに見合うだけの輸出は、量的にも金額的にも、期待できないでしょう。
それでは、他にどのような選択肢があるのでしょうか?中小企業が持つ商標と、大企業が持つ商標の特徴を考えれば、回答が見えてきます。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識 」-「第二章 貿易実務とは」-「4.契約までの貿易実務の概要」-「(6)知的財産権とリスク」(POD版P260262)『営業マンのための貿易実務』-「3.インコタームズ2020に定められている11の定型取引条件」-「小口輸送サービスに使うインコタームズの定型取引条件」(POD版P86)および「第八章 知的財産権とリスク」(POD版P193218)(3)回答例 大企業が持つ商標は、多くの人に知られていて、大企業が他の商標に変更することは、考えられないことです。
従って、大企業の場合、商標が冒認登録されていれば、それを冒認登録者から買い取るか、訴訟を起こして、冒認登録業者の権利を取り消させるかの、選択肢しかありません。
ところが、中小企業が持つ商標は、一般的に、余り広く知られていないという特徴があります。
それは、残念なことですが、しかし、中小企業の商標は、それほど有名でない代わりに、別の商標を使う選択肢を採ることが、容易にできるというメリットがあります。
お勧めなのは、国内で使っている商標はそのまま使うとして、輸出用には別の商標を作って、日本国内と輸出を予定している国で、商標出願し、その商標を輸出用とすることです。
インバウンドの外国人観光客などに、商品をアピールするのであれば、国内向けの商品は、国内ブランドと海外向けブランドの、両方をプリントした「ダブルブランド」とすることも効果的な方法です。
海外展開企業にとって、知的財産権の侵害は、頭の痛い問題です。
そして、その解決を図るために、さまざまな支援策が特許庁の予算で講じられています。
しかし、そうした支援を受けても、これで万全だとは言い切ることができません。
他のリスクは、ほぼ完璧にシャットアウトできても、知財リスクだけは、海外展開企業に共通する悩みです。
大企業でさえ、知財専門の部署を置いて、対策を講じているところが、少なくないのですが、「モグラ叩き」状態で、次から次へと出てくるモグラを、叩き続けるしかないようです。
中小企業の場合、大企業のような体制は組めませんし、ある程度、割り切って構えるのは、止むを得ないことかも知れません。
2.D用語でのリスク(1)問題EXW、FCA、CPT、CIPやFAS、FOB、FCR、CIFの定型取引条件は、すべて輸出国で、貨物が、売主から買主に引き渡され、DAP、DPU、DDPでは、輸入国で、貨物が、売主から買主に引き渡されることを学びました。
輸出国で引き渡される場合と、輸入国で引き渡される場合では、単に引き渡しの場所が違うだけと、理解して良いのでしょうか?(2)ヒント知財権に関する法令は、パリ条約、ヘーグ条約、世界貿易機関(WTO)や世界知的所有権機関(WIPO)などの国際的な枠組みに沿って、各国がそれぞれ自国の国内法で、関連法令を制定しています。
貨物が、輸出国で引き渡されるのか、あるいは輸入国で引き渡されるのかは、売主と買主が行う引渡行為に、輸出国の法令が適用されるのか、あるいは輸入国の法令が適用されるのかの違いがあります。
第三者から、輸入国において、知財権の侵害で訴訟が起こされた場合を、想定してみてください。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第八章 知的財産権とリスク」-「2.知的財産権の種類」-「(3)商標は重要なマーケティングのツール」(POD版P204)(3)回答例「第二章インコタームズ」の「2.荷渡時期の保証問題(DPU契約の場合)」で言及したように、Dで始まる用語(DAP・DPU・DDP)の場合、売主が輸入国で貨物を買主に引き渡しますから、売主から買主への引渡行為は、輸入国で行われます。
仮に、輸出した商品の商標が、輸入国の第三者によってすでに登録されていて、その第三者が、輸入国で訴訟に訴えた場合、輸入業者だけでなく、その商品を輸入国で、買主に引き渡した売主も、訴えられる対象にされる可能性があるのです。
つまり、D用語で契約すると、売主も、訴訟に引き込まれるリスクがあるのです。
輸出国で貨物が買主に引き渡される定型取引条件を使って契約していれば、貨物は輸出国で売主から買主に引き渡され、輸入国に貨物を持ち込んだのは、買主ということになって、この場合は、輸入国での訴訟に、売主が、直接的に巻き
添えを喰うリスクは避けることができます。
売主が輸入国までの輸送費を負担していても、それと貨物の引渡地点とは相関関係にないのが、インコタームズの定義です。
Dで始まる定型取引条件(到着ベースの用語)を使うことは、単に、引渡場所が輸入国である以上のリスクを内包していることがありますから、注意が必要です。
この意味で、D用語を使って契約することは、お勧めできません。
3.育成者権(1)問題「」「」、「」、。
こうした流れに乗って、東南アジアで、日本の「コシヒカリ」や、「ツヤヒメ」といったブランド米を栽培して、現地の和食を提供するレストラン向けに、売り込むことを考えています。
弊社は、ベンチャー企業で、海外展開したことはありません。
海外ということで、特に気をつける点は、あるでしょうか?(2)ヒント 日本の輸出規制に該当しないかを、調べる必要があります。
特に、食品がらみの案件ですから、「種苗法」に定める「育成者権」の規制を受けるかどうか、受けるのであれば、どのような対処法があり得るかを、考えてみましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第八章 知的財産権とリスク」-「2.知的財産権の種類」-「(5)食品業者は育成者権に注意」(POD版P213)(3)回答例、種苗法に基づいて登録、海外に持ち出すことも、海外で栽培することも、そしてその収穫物を輸入することも、植物育成者権を持っ。
いる権利者の同意なく行えば食品業界で、海外とビジネスをしている人は、他人が保有している育成者権を、侵害しないようにしましょう。
違反すると、懲役、罰金などが科されることがあります。
「問題」のビジネスを実現するには、「コシヒカリ」や、「ツヤヒメ」を海外に持ち出す必要がありますが、「コシヒカリ」だけでも、数十種類も種苗登録されていて、それぞれ権利者が異なります。
まず、海外に持ち出したい品種を決めて、育成権者の同意を得る必要があります。
しかし、単に「海外に持っていきたいので、同意願いたい」と申し入れても、育成権者にとって、何のメリットもなければ、断られて当然です。
ですから、ビジネスパートナーとして一緒に組むとか、一定の報酬が入るような仕組みを考えて提案すれば、応じる可能性があるかも知れません。
何れにしても、育成権者の同意がなければ、このビジネスは一歩も前に進まないことだけは確かです。
法令に違反すれば、マスコミなどで報道されて、社会的な制裁を受けることになります。
そうなれば、ベンチャー企業は、ひとたまりもありません。
海外展開ということで、未知の事柄があるかもしれないと、気づかれたことは、幸いでした。
まだやったことのない、海外展開だから、知らないことがあるのかもしれないと、謙虚に考えることで、リスクを冒さずに済んだ格好のケースでした。
第六章 契約書のリスク契約書は、とっつきにくいものだとか、契約書は、弁護士の専門領域で、特別な意味の言葉が数多く出てくるので、素人には無理だといった誤解をしている人が大勢います。
実は、そうではありません。
契約当事者が、契約書の内容に対して、同じ理解をしていれば、理解違いに起因するトラブルは起きないわけで、そのために、難解な言葉を使う必要はありません。
平易な、お互いに共通した理解のできる、用語を使えば良いのです。
もちろん、国際ビジネスには、国内ビジネスにない契約の条項がありますし、どうしても入れておかなければならない条項もあります。
契約書の基本は、学ぶ必要がありますが、恐れるに足りません。
契約書は、貿易をするのに、不可欠なもので、商談の集大成が契約書です。
ですから、契約書の基本を、知識として身につけておけば、商談を有利に展開することができるのです。
契約書は、営業マンが覚えておかなければならない、貿易の重要な基礎知識の一つです。
1.協議のうえ解決(1)問題輸出の主な取引条件が合意に達したので、契約書の各条項を詰める交渉をしています。
叩き台として使っている契約書(案)では、「船積み後一年以内に、買主が、商品に製造または引渡し以前に生じたと判断する瑕疵を発見した場合、買主は、売主に対してクレームを提起することができる。
クレームが提起されれば、売主と買主の双方は、直ちに協議のうえ解決する」となっています。
非常に、穏当な書き方で、特に問題ないと思いますが、如何でしょうか?(2)ヒント国際取引では、「協議のうえ解決する」は、「解決する方法を決めてない」ことを意味します。
「決めてない」ことを明記する意味は、あるのでしょうか? 「決めてない」などと書いたところで、意味があることとは思えません。
国内取引の契約書では、「当事者間で問題が起これば、速やかに協議のうえ解決する」という文言は、ごく普通に目にします。
それは、国内取引では、お互いに、相手が信頼に沿った行動を期待する「信義則」が、取引の大前提になっているからです。
単に、字面の上だけでなく、問題が起きてもそれを解決するための、民法や商法、裁判所といった、契約当事者に共通のビジネスインフラが整っていて、「信義則」による取引を支えているのです。
ところが、国際取引では、当事者に共通のビジネスインフラは、皆無とは言いませんが、国内ビジネスのインフラと比べれば、まだまだ雲泥の差です。
国際取引は、相手が信頼に背いた行動をするかもしれないことを前提として、その場合は、どうするかを契約書に盛り込む必要があります。
取引の大前提が違うのですから、契約書の書き方も、違って当然です。
それでは、「協議のうえ解決する」の代わりに、どう書けば良いのでしょうか?*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第九章 契約書の基礎知識」-「1.契約書とは?」-「(2)良い契約書とは?」-「②契約違反しにくい契約書作り」(POD版P235)(3)回答例
商品の瑕疵が原因で、買主が売主に対して、クレームを提起した場合、もちろんその瑕疵が、製造または引渡し以前に生じたものかどうかは、究明する必要があります。
そのうえで、売主の責に帰すことを確認した場合、「代替品を供給するのか」、「クレーム賠償金の形で金銭解決とするのか」、「当該商品を輸入した際に、買主が負担した関税や流通税は、どちらの負担とするのか」など、想定できる問題点について、それらの具体的な解決方法を、取り決めます。
単に、「協議のうえ解決する」と書くだけであれば、契約書に署名する段階では、お互いに揉めることはないでしょう。
ところが、契約交渉の時に、このように、問題が起きた場合の解決方法を、具体的に決めるとなると、交渉は、大揉めに揉めるかも知れません。
貿易では、先に大喧嘩して契約すれば、契約後は喧嘩の必要はありません。
しかし、「玉虫色で契約すれば、契約してから大喧嘩!」となるのは、約束されています。
交渉の時に、この箇所は双方の意見が一致しないから、どちらの見解にも解釈できるような玉虫色で書くのは、止むを得ないだろうと考えて契約すると、契約してから、必ずその部分で揉め事になります。
「協議のうえ解決する」と書くだけですと、実際には「協議しても解決できない」ことが、まま起こり得ます。
「協議のうえ解決する」で、問題を先送りにしないで、どうせ、喧嘩するなら、契約する前に思う存分やったうえで、契約しましょう。
2.受発注書だけでの取引(1)問題 長年に亘って、東アジアの国向けに、一回300万円程度のロットで、プラスチック原料を輸出してきました。
支払は、80%が前払送金、残額20%が、先方に着荷後、7営業日以内の送金支払条件で、正式の契約書は作らず、発注書と発注請書だけで、取引してきました。
今まで、何の問題も起きなかったのですが、もう船積みして2ヵ月にもなるのに、20%分の送金がありません。
送金を督促しても、「必ず払いますから」と言う返事がくるだけで埒があきません。
こういうことは、今回が初めてです。
どうすれば良いのでしょうか?(2)ヒント問題点の一つ目は、貨物代金の20%とはいえ、「代金回収リスク」を晒しながら、取引してきたことです。
問題点の二つ目は、もちろん、契約書を作っていなかったことです。
代金回収に失敗した場合、挽回策はなさそうですが、今後の貿易のやり方を考える契機にしましょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第九章 契約書の基礎知識」-「6.契約書の種類」-「(1)売買契約書」-「②基本契約書」(POD版P247)および「8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)」-「(1)個別契約書(IndividualContract)」(POD版P265)(3)回答例一回、300万円程度の取引なので、その20%は約60万円。
この金額では、裁判も商事仲裁も、全くの考慮の対象外です。
相手が払ってくれるように、辛抱強く督促するしか方法はなさそうです。
最悪、「泣き寝入り」も、止むを得ないと思われます。
本来であれば、リスクのある決済方法で取引する時は、㈱日本貿易保険の貿易保険にリスクをヘッジするのですが、保険求償をする際には、契約書のコピーが必要となります。
貿易保険を利用するためにも、契約書は作成しておくべきですし、保険云々の問題があってもなくても、契約書を交わして取引することは、「貿易の常識」です。
国内取引の常識の延長線上で、貿易しないように、しっかりと「貿易の基本」を習得して、取引するようにしてください。
3.独占販売権の要求(1)問題 香港の展示会で初めて出逢った香港企業と、「販売店契約」(DistributorshipAgreement)について商談中です。
その企業は、香港、マカオ、中国大陸とアセアン諸国を販売領域とする独占販売権を要求しています。
その香港企業と、まだ取引実績はありません。
さて、どう対応すれば良いでしょうか?(2)ヒント 独占販売権には、二つの種類の独占販売権があります。
どちらの種類の独占販売権を要求しているのかを確認しておきましょう。
独占販売権は、付与される側にとってみれば、「権利」ですから、ダメモトでも、ともかく要求してみる傾向にあります。
独占販売の権利を付与するのであれば、それに見合うだけの義務を課すべきです。
何を義務として課せば良いのでしょうか、考えてみましょう。
また、販売店契約では、販売領域を決めなければなりませんが、そのための前提条件は、何なのでしょうか? *参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第十章 契約書の基礎知識」-「9.販売店契約書(DistributorshipAgreement)と代理店契約書(AgencyAgreement)」-「(3)販売権・代理権の種類」-「①販売権」(POD版P301)および「(4)独占権の要求」(POD版P303)(3)回答例独占販売権には、販売権を付与する側の元売・メーカーが、販売領域内で販売活動することができない、「排他的独占販売権」(Exclusive)」と、販売権を付与する側の元売・メーカーも販売領域内で、販売活動を行うこと
ができる非排他的な「独占的販売権」(Sole)の二種類があります。
元売・メーカーが、ネット通販で販売したり、官公庁向けの取引だけは直接行ったりするのであれば、契約書にその旨を明記して、後者の「独占的販売権」を付与します。
その必要がなければ、「排他的独占販売権」でも構いません。
何れにしても、契約交渉の最初の段階で、どちらの独占権を対象として交渉するのかを、はっきりさせておきます。
独占販売権を要求する側は、権利だけを求めがちですが、当然、「権利に見合う義務」を賦課しなければ、公平とは言えません。
独占権に見合う相手方の義務は、元売・メーカーからの最少購入数量や購入金額とします。
それに未達の場合は、未達分について罰金(ペナルティー)を課したり、あるいは元売・メーカー側の一存で、独占販売権を撤回して、通常の販売権とする条件を、契約に盛り込みます。
また、その企業が要求する販売領域については、香港、マカオ、中国大陸とアセアン諸国において、販売力のあることが、大前提となります。
その企業は、要求する販売領域内で、どの程度の「販売力」あるいは、その裏付けとなる「販売の仕組み」を持っているのでしょうか? それを納得させる資料やデータを見て、その販売領域で妥当か否かを判断します。
なお、海外企業は、本「問題」のように、いきなり独占販売権を要求してくることが多いのですが、「権利に見合う義務を賦課する」条件を提示すると、途端に独占販売権の要求を引っ込めるケースが少なくありません。
要は、権利だけ確保しておけば良いという考え方が、突出しているのです。
以上のようなことを考えながら、交渉してみては如何でしょうか?
4.販売店契約なき事実上の独占販売権(1)問題 韓国の企業(K社)が、10数年に亘って、弊社の商品を輸入して販売してくれていますが、通常の売買契約書は、その都度作ってきているものの、販売店契約書は交わしたことがありません。
韓国では、この企業だけに弊社の商品を販売してきました。
今まで、韓国の他の企業から「当社にも販売して欲しい」というアプローチは、何社かからあったのですが、お断りして今に至っています。
他社からのアプローチについては、K社との宴席の場などで、雑談の中の話の一つとして、話したことが何度かありました。
最近になって、K社の販売数量が増えないことから、韓国の他社にも販売する意向であることを、お話ししたら、K社は、「独占販売権」があると主張して、猛反対されました。
弊社としては、K社と「独占販売契約書」などを交わしたことはなく、また、口頭でも、独占販売権を与えると言ったことはありません。
それでも、K社の主張は通るものなのでしょうか?(2)ヒント 契約は、契約書があってもなくても、事実上、その実態があって、それを実行しているという事実があれば、当事者の双方が、それを認め合って合意しているとみなされます。
「契約書があれば契約がある」、逆に言えば「契約書がなければ契約がない」と考えがちですが、そうではありません。
「合意があれば契約がある」、「合意がなければ契約はない」のであって、契約書の存在は、単に「合意があることを念のため文書化したもの」に過ぎません。
ですから、「独占販売契約書」があれば、もちろん独占販売権を付与したことの証左となりますが、「独占販売契約書」がなくても、その実態が存在してきたのであれば、独占販売権を付与してきたと見なされる可能性があるのです。
特に、宴会の席とはいえ、他社からのアプローチがあって、それを断ったことを、K社に説明したことが、幾度もあるのであれば、それを以って、K社が「独占販売権を与えられている」と理解するのは、当然のことかと思われます。
日本側が、実態として独占販売権を与えたと同じ状況を作り出し、それをK社に説明し、K社もそれを受け入れてきた事実は、否定しがたいものです。
以上の前提に立って、今後の善後策を考えると、どうなるでしょうか?契約書を作っていない場合、本「問題」のようなことが、実際に起きます。
「販売店契約」の基本を学んでおきましょう。
*参考参照先:
『営業マンのための貿易実務』-「第十章 契約書の基礎知識」-「9.販売店契約書(DistributorshipAgreement)と代理店契約書(AgencyAgreement)」(POD版P297310)(3)回答例 K社が独占販売権を主張し、日本側がそれを示唆するような発言をしてきたのであれば、K社への販売を止めたり、K社以外の会社に販売したりすることは、当面、できそうにありません。
しかし、将来に亘って、販売店契約書がないまま、流れに任せていくことも、得策ではありません。
そこで、正式に独占販売権を明記した「販売店契約書」を結ぶように、K社に提案して、販売店契約の交渉に入るようにしては、如何でしょうか? 販売店契約書に規定する販売領域は、取引の現状を追認するしかないと思われますが、独占販売権の種類が、「排他的独占販売権」なのか、それとも非排他的な「独占的販売権」なのかは明確にしなければなりません。
できれば、後者の販売権であることをK社に認めさせたいところです。
そのほか、「売主と販売店との関係が、単に売主と販売店の関係に過ぎず、販売店は売主の代理人ではないこと」は、販売店契約書に入れなければなりませんし、商標の使用に関しても決める必要があります。
また、K社に対して、「最低販売数量(金額)や、それに未達の場合の措置を含む、「権利に見合う義務」を認めさせなければなりません。
そして、最も重要なことは、販売店契約書は、有効期限を定め、有効期限満了の3ヵ月前から、契約更改の交渉を行うこと、あるいは、当事者双方が、事前に異議をとなえなければ更新可能という条件を盛り込むことを定めておきます。
有効期間満了前3ヵ月から開始する契約更改交渉は、最初の契約書では、不完全な条項や修正すべき条項が出てくることが多いため、最初の契約書は期限満了で終結させ、更改した契約書から、自動延長条項にする方法が、双方にとって望ましい契約書に近づける方法であるからです。
こうした内容で、販売店契約書を正式に締結することによって、販売店規約書がないにも関わらず、少なくとも、未来永劫に亘って独占販売権を主張される事態は、回避することができるでしょう。
5.紛争処理条項(1)問題中小企業や零細事業者の場合、企業の体力からして、裁判や仲裁で闘えないということであれば、契約交渉の時に、売主の国か、買主の国かで、意見が対立しがちな「紛争処理条項」など、契約書に盛り込む必要がない気がします。
「紛争処理条項」は、契約書に絶対に必要な条項なのでしょうか? どうせ裁判や仲裁に持ち込まないということであれば、「紛争処理条項」は、入れなくても良いのではないでしょうか?(2)ヒント確かに、中小企業や零細事業者の場合、裁判や仲裁で、取引相手と闘うことは、非現実的であることは、間違いありません。
それでは、「紛争処理条項」が契約書にない場合、どのようなことが起きるかを考えてみましょう。
商事仲裁に訴えるには、当事者同士が、どこの仲裁組織に委ねるか、あらかじめ合意していなければなりません。
紛争が起きてからだと、お互いに自国の仲裁組織に裁定を委ねようとします。
ですから、紛争が起きてから、仲裁場所を合意して決めることは、無理なので、契約交渉の時に、「あらかじめ」、どこの仲裁機関で仲裁するかを決めておくのです。
それでは、契約書に、「紛争解決条項」がない場合、相手がこちら側を訴えようとすると、どういうことが考えられるでしょうか?*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第十章 契約書の基礎知識」-「1.契約書とは?」-「(2)良い契約書とは?」(POD版P233)および「8.売買契約の一般条項(GeneralTerms&Conditions)」-「(14)紛争処理(DisputeSettlement)」(POD版P285)(3)回答例契約書に、「紛争解決条項」がない場合、相手方が、裁判に訴えることが考えられます。
訴える裁判所は、自国の裁判所のこともあるでしょうし、日本の裁判所である場合もあるでしょう。
日本の裁判所に訴えて勝訴すれば、日本で強制執行できますから、絶対に勝訴すると相手が思えば、日本で裁判を起こすこともあり得ま
す。
相手が自国の裁判所に訴えた場合、日本側がそれを無視すれば、日本側に不利な判断が下されるでしょう。
そして、その国の裁判結果に基づいて、日本が強制執行できることになっていれば、相手が自国で裁判をしても、強制執行されてしまいます。
相手が裁判に訴えられなくするには、「この契約に関わるすべての紛争は、商事仲裁によって解決する」と契約書に記載することです。
これによって、相手が裁判所に、紛争解決の判断を委ねようとしても、裁判所は、契約書には、「すべての紛争は、商事仲裁によって解決する」と書かれているとして、「門前払い」をしてくれます。
つまり、裁判を起こさせないようにするには、紛争解決の手段として、契約書に商事仲裁を書いておくのです。
これによって、裁判所への道は、シャットアウトできます。
従って、「紛争処理条項」として「商事仲裁条項」だけは、裁判を排除するために、入れておかなければなりません。
問題は、どこの仲裁機関で仲裁するかです。
ここで、相手が自国の仲裁機関に訴えることができれば、相手国で、仲裁を闘わざるを得なくなりますから、「仲裁は日本で行う」ことを、商談時の最重要の条項として交渉します。
実際に、仲裁で闘う場合、どの国の法令に依拠して契約を解釈するかを定める「準拠法」の国と、仲裁を行う国は、一致させておく必要があります。
と言うのは、例えば、準拠法の国が相手先の国で、仲裁を行う国が日本であれば、日本で仲裁を行う際に、相手国の民法や商法を、日本語に翻訳するだけで、数百万円の翻訳代が必要となります。
ですから、仲裁で実際に「闘う」のであれば、準拠法の国と仲裁国は同一国にしておく必要があるのです。
しかし、中小企業や零細事業者の場合、「闘う」ことはできませんから、準拠法の国は、相手の国、仲裁国は日本とするといった、「たすき掛け方式」で妥結するように持っていくのが、交渉のテクニックです。
(記載例~日本商事仲裁協会の推奨文言~)「この契約からまたはこの契約に関連して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、当事者相互の協議によって解決するものとする。
当事者相互の協議によっても解決することができない場合、日本国の社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、日本国東京都(または大阪府)において仲裁により解決する。
仲裁裁定は最終的なものであり、各当事者に対して法的拘束力を有する。
」
第七章 リスク防止のために 貿易には、さまざまなリスクが潜んでいます。
『営業マンのための貿易実務』の「第十一章」貿易、ではる22種類のリスク。
本章では、現実に遭遇することの多いケースの中から、「しつこく追いかけるべきか?」、「販売店同士の競合防止と並行輸入品対策」と「輸入したマスクが、不良品だった!」を取り上げます。
1.しつこく追いかけるべきか?(1)問題海外展示会に出展しました。
ブースに来訪してくれて、実際にテーブルを囲みながら、情報交換をし、「後日、連絡を取り合う」ことを約した人達、約50人を対象として、いわゆる「ThanksMail」を送りました。
メールには、「ご多用の中、展示会では、弊ブースを訪問いただき、ありがとうございます。
引き続き、詳細を詰めて、具体的な商談を進めたい」と記載してあります。
ところが、返事が返ってきたのは5人だけで、あとの人からは、「なしのつぶて」でした。
返事がない人には、しつこく追いかけて、熱意を示すほうが良いとアドバイスする専門家もいますが、如何したものでしょうか?(2)ヒント展示会などで会ってお話をすると、とても興味のありそうな態度で応じてくれる人が多いのですが、相当程度の「お世辞」や「外面の良さ」があるケースが、少なくありません。
海外の人達は、結構「今を生きる」考えの人が多いので、過去のこととなった展示会のことに、興味を失っているのかも知れません。
食品の展示会などでは、通常、来訪者に、サンプルを少量試食してもらいますから、多くの人がブースに集まります。
とても盛況だったという印象を持つことが多いのですが、試食の時に、人が集まるのは当然のことで、むしろ、人が集まらなかったら、大変な不人気商品だと言うことになります。
その意味では、展示会での「盛況ぶり」は、割り引いて考えたほうが良いのかも知れません。
さて、「問題」のメールに対して「なしのつぶて」だった人には、取引上、どのようなリスクがあるのでしょうか?*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第三章輸出の手順」-「3.第三段階~計画実施フェーズ~」-「(5)信用度判断と商談・契約」(POD版P311319)および「第四章輸入の手順」-「3.第三段階~計画実施フェーズ~」-「(6)商談を通じ信用度判断・契約」(POD版P301)『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「1.コミュニケーションリスク」(POD版P318)(3)回答例
基本的には、返事がない人を、しつこく追いかける必要はありません。
円滑にコミュニケーションできることは、信頼できる相手としての条件ですし、また、ビジネスを着実に進める上での前提条件です。
コミュニケーションの基本動作ができない人と取引すると、大変な苦労を強いられるだけでなく、自社をリスクに晒すこともあり得ます。
メールに対する返事の有無は、コミュニケーションリスクがあるかどうかを知ることができる、貴重なリトマス試験紙です。
返事の来ない相手を、しつこく追いかけて返事を取る甲斐などありません。
2.販売店同士の競合防止と並行輸入品対策(1)問題東南アジアのある国の企業三社と、販売店契約を結んで、弊社の商品を売ってもらっています。
一応、それぞれの販売領域は、重ならないようにしているのですが、実際には、販売領域を越えて販売されることがあって、販売店同士の競合が起きています。
そのため、ともすれば、値下げ競争になることがあって、困っています。
それに加え、並行輸入品も輸入されていて、正規ルートよりも安い値段で販売されています。
販売店契約書に、「販売領域を守らない場合の罰則規定」と「再販売価格」を明記することで、販売店同士の競合を防止したいのですが、如何でしょうか? また、平行輸入品は、弊社が登録している商標権を盾に、輸入差し止め請求することはできないものでしょうか?(2)ヒント 主要な国には、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」など、消費者にとって、不当な取引を防止するための法令が、整備されています。
貴社が販売店を指定している国で、どのような法律が施行されているかを、調べてみる必要があるものの、 基本的な考え方としては、販売する側の都合でなく、「消費者が購入できる自由」が保証されるかどうかです。
消費者が購入したいと思った時に、購入の選択肢を狭めるような手段や方法は、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」などの関連法令が施行されていれば、違法行為として処罰される恐れがあるでしょう。
*参考参照先:『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「17.海外課税のリスク」-「(4)独占禁止法違反のリスク」(POD版P361)(3)回答例輸出先国で、「独占禁止法」や「非公正取引防止法」などの関連法令が施行されていることを前提としますが、販売店契約書に、「販売領域を守らない場合の罰則規定」を入れると、販売領域が強制力を伴うものになって、消費者はその地域を販売領域とする業者(販売店)からしか、購入できなくなり、消費者にとっての選択枝を、一つに限定することになり兼ねません。
また、販売店契約書に「再販売価格」を明示すれば、輸出元の元売またはメーカーが、輸出先の国内での販売価格を指示したことになります。
これは、消費者の購買価格を、輸出元が決めていることになって、独占禁止法などの法令があれば、それに明確に違反することになります。
契約書上であれ、あるいは口頭であれ、「再販売価格」について、輸出元が触れることはご法度と、考えるべきでしょう。
平行輸入品は、輸出国の国内卸売業者が、海外に転売したり、あるいはネット販売や越境ECの方法が普及するにつれてますます増加する傾向にあります。
また、並行輸入品の価格は、販売店経由の正規ルートでの販売価格よりも、安価なケースが多いので、正規の販売店にとって、頭の痛い問題です。
しかし、多くの国では、並行輸入品が本物の商品であれば、「合法」としています。
並行輸入品は、商品そのものは偽造品でなく、正真正銘の本物ですから、その商品に付されている商標は、何ら、その国の知的財産権に関する法令に、違反するものではありません。
従って、輸入差し止めを請求することは不可能かと思われます。
残念ながら、「問題」で疑問に思われている点は、供給側の視線からのものです。
販売国における消費者保護の視線を考慮すれば、販売店契約における「販売領域」の問題や、「並行輸入品」の問題は、必ずしも、すっきりとした形にできないことを承知のうえ、対応するしか手はなさそうです。
3.輸入したマスクが、不良品だった!(1)問題 中国から、コンテナ単位で、マスクを輸入したのですが、マスクに虫の死骸がついていたり、ヒモが外れていたりで、販売先からは、返品の山です。
代金は、全額、前金の送金支払いでした。
儲かると思ったのに、裏切られました! 中国側には、これから、どのように対応していけば、良いのでしょうか?(2)ヒント 済んだことは仕方ありませんが、起きたことから教訓を汲み取るようにしましょう。
払った授業料が、無駄でなかったようにしなければなりません。
輸入品の通関手続きは、フォワーダーに一任するだけで、簡単に行うことができますが、輸入で難しいのは、「品質管理」と「納期管理」です。
中国の工場に、品質チェックをしに行って、「これは出荷不可」、「これは出荷Okay」と仕分けして、帰国したのですが、やがて到着した貨物は、全量が「これは出荷不可」に仕分けしたものだったという、笑うに笑えない、泣くにも泣けないことも起きています。
工場でのバンニングや、出荷まで見届けなければ、安心できないという例です。
輸入するのは、誰にでもできますが、輸入ビジネスを成功させるのは、誰にもできることではありません。
契約して代金を払っただけで、理想の品が予定どおりの間に到着することなど、先進国との取引であればあり得ても、新興国からの輸入では、一般的には、あり得ないことです。
「品質管理」や「納期管理」は、輸出側の責任で行うべきもので、輸入側が行うべきことではないと、「正論」を吐く人がいます。
「正論」を実行してみれば良いでしょう。
「正論」が正しかったかどうか、結果は、すぐ出ます! 参考参照先を熟読して、同じ過ちを繰り返さないようにしましょう。
*参考参照先:『海外展開の基本』-「第Ⅲ部貿易の基礎知識」-「第四章」-「」-「」(5)品質
『営業マンのための貿易実務』-「第十一章 貿易における22種類のリスク」-「18.輸入ビジネスのリスク」(POD版P362365)(3)回答例 まず、起きてしまった事態については、輸出元の取引相手と、他の取引があったり、懇意の人脈があったりするのであれば、そちらとの絡め手で、責任を問うことができるでしょうが、そうした関係になければ、損失を穴埋めさせることは、ほとんど無理に等しいでしょう。
中国では、ビジネスチャンスがあれば、工場の能力をオーバーしてでも、注文はすべて受注するのが普通です。
受注した後で、下請け、孫請けと外注に出しますが、外注先での品質管理などは、通常しないと思ったほうが良いでしょう。
なぜなら、自社で作ったものでないものに、なぜ責任を負う必要があるのでしょうか?、と、必ず。
訳の分、恐らく言い訳をします、今回の事態の背後には。
文化的な背景が、日本とは違うのですから、それを前提とした取引の仕方をすべきでした。
貿易とは、異文化間での取引でもあるのです。
相手の国の文化を理解していなければ、商売のリスクが見えないのです。
今後のことに関しては、資金面、人材面、情報面、商品に対するノウハウ面などの各側面から、自社の能力を分析して、貴社に、輸入ビジネスを行う能力があるかどうかを、判断してください。
輸入ビジネスを行う能力があれば、「輸入の手順」を踏んで、製造に立ち会う有効な体制を組んで、取り進めるようにしてください。
「」「」、、、、、、。
「」。
輸入業者が、責任を持って輸入ビジネスを行うのであれば、海外での品質管理を、しっかり行わなければなりません。
それができなければ、輸入商社としての能力はありません。
あとがき「貿易実務」を学んだと思って、貿易に乗り出したら、いきなり、足をすくわれて転倒する人が、少なくありません。
それは、主として「契約履行に必要な貿易実務」(貿易事務)を紐解いたり、あるいは「貿易事務」の解説をする研修会やセミナーに参加したりして、貿易実務を習得したつもりになる人が、少なくないからです。
こうした書物や研修会、セミナーなどに共通していることは、一般的な貿易知識を解説するだけで、貿易における「リスクヘッジ(回避)の視点」が、欠けている点です。
貿易取引をする人に必要なことは、単なる一般的な貿易知識だけでなく、貿易の各段階に潜む“リスク”を認識して、それを回避したり、排除したりしながら、契約に持ち込むノウハウです。
これは、実際に貿易の第一線で仕事をした人のみが、説明可能な知見です。
多くの貿易を行っている企業では、こうした貿易のノウハウは、企業内で先輩から後輩に口伝で伝えられたり、それぞれの営業マンが工夫したりして、伝承されているのが一般的です。
それは、新規に貿易に乗り出す人達が、身近に溢れている「貿易事務」の本を読んだり、あるいは「貿易事務」を解説する研修やセミナーに参加したりして、貿易に乗り出さざるを得ない状況を、作り出してきました。
それだけでなく、世界共通の貿易のツールである「インコタームズ」が、世界の物流や貿易事務のIT化などの貿易環境の変化に従って、ほぼ10年に一回更改されているにも関わらず、それを知らないまま、企業内で先輩から後輩に、古い貿易知識のまま、受け継がれるという弊害も顕著です。
多くの企業で、最新の貿易知識にアップデートされていないのですが、それで問題が起きないのであれば、一向に差し支えありません。
しかし、現実に、古いインコタームズの知識を、惰性的に使っていることで、多くの企業が思わぬリスクを負いながら、貿易をしています。
過日、『営業マンのための貿易実務』と『海外展開の基本』を、アマゾンから上梓した動機は、こうした状況に危機感を抱いたからに他ありません。
しかし、貿易取引に必要な知識は、一冊の書籍を読み通しただけでは、どの程度、理解できているのかを、推し量ることができません。
そこで、本書では、貿易の第一線に立っていると、現実に遭遇することの多い、代表的な問題を中心に、「問題」として提示し、皆様に熟考していただいたうえで、回答例を提示することによって、理解度を自己測定するとともに、理解度の深化を図ることができるように企画しました。
本書をご活用いただき、皆様のそれぞれが、日本を代表するビジネスマンとして、世界を相手に活躍されることを、切に期待しています。
【著者紹介】太田光雄(おおた・みつお)◎――東中ビジコン・代表~「経営と貿易のコンサルタント」~大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)卒業。
住友商事株式会社にて、海外展開の戦略作り、中国・東南アジアとの貿易や駐在員事務所、現地法人、自社製造工場などの立ち上げから運営まで、34年間に亘って携わりました。
2004年、“東中ビジコン”を興し、コンサルティング・講演・執筆活動に専念。
中小企業の海外展開を支援する国際化支援の専門家として、貿易の基本、企業進出の手順、進出後の異文化環境における企業経営の方法、海外子会社を統括管理する手法や撤退方法などについて発信を続けています。
中国食品の安全性が問われた際は、NHK『視点・論点』・『ニュース深読み』・『クローズアップ現代』、『ガイアの夜明け』や数多くのニュース・ドキュメンタリー番組に出演しました。
営業マンのための貿易の基礎と実務 ~理解度を測定できる問題集~発行日 2020年7月15日著 者 太田光雄本作品の全て、または一部を、著作権者に無断で複製・転載・配信・送信、或いは内容を無断で改変する等の行為は、著作権法によって禁じられています。
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