農業ドローンで稼ぐ!脱サラして一夏で 500万円稼ぐ男性の秘密とは!? ■「一夏で 500万円稼ぐ農業ドローンオペレーター」脱サラして最先端ビジネス「ドローン」で稼ぐ 32歳男性の正体とは。九州・熊本県に「農業ドローン」で妻と 2人の子どもを養う男性がいる。農業ドローンオペレーター佐藤さんだ。佐藤さんの 1日の稼ぎは、多い日には 50万円にもなるという。農業ドローンを使った仕事とは、一体どのような稼業なのか。この日、佐藤さんの仕事に同行した。5月初頭、田植えが終わった田んぼで佐藤さんと待ち合わせした。時間は朝の 5時。佐藤さんは農業ドローンを積んだ軽トラックで現れた。「それでは、作業を始めますね。」ドローンを軽トラから下ろし、手際良く組み立てていく。粒状の農薬をドローンのタンクにザラザラと注ぎ、準備は完了だ。ブーンドローンが飛び上がった。タンクの底から農薬をバラバラと放出しながら、ドローンは田んぼの上を飛んでいく。田んぼの水面はポツポツと水しぶきをあげ、農薬が満遍なく入り込んでいく。ものの 10分で、約 1 ha( 100 m× 100 m)ほどの面積の散布飛行が終わった。これで作業料は約 3万円というから驚きだ。農薬は作業を依頼した農家さんが準備するので、農薬代はかからない。「次の現場に移動します。」佐藤さんは軽トラに乗り込み、 3分ほどの距離の次の作業現場に移動した。こうして佐藤さんは朝 5時から朝の 8時まで、計 6か所の現場を周り、この日だけで約 13万円を売り上げた。この日の仕事はこれで終わりだという。「明日も朝 5時から散布の仕事が入っています。それまでは、自由時間ですね。」佐藤さんは生き生きとした表情で、そう言って笑った。時間はまだ朝の 8時。世間は通勤、通学で慌ただしくなる時間だ。片や仕事を終え自由な 1日が始まると考えたら羨ましいように思える。何より、ドローンを飛ばしている佐藤さんは、まるで少年のように楽しそうだった。農業ドローンでの仕事とは一体どういうものなのか。今回は、最先端ビジネス「農業ドローン」で稼ぐ佐藤さんに話を伺った。
第 1章 農業ドローンでの仕事とは ■農業ドローンで、一体何をしているのか?農業ドローンでの仕事は、「農薬の空中散布」だ。ドローンが登場する前までは、人が農薬が入ったタンクを背負い、直接田んぼの中を歩き、農薬を散布していた。文章で書くと何気ないが、想像を絶するほどの重労働だという。農薬が入ったタンクは、散布装置のエンジンと合わせて、 20 kg近くにもなる。足元はぬかるんだ泥水だ。そして、炎天下のなか、農薬を吸い込まないようマスクをして、ひたすら田んぼの中を進み続ける。途中、農薬が切れれば、補充に戻る。 1ヘクタール( 1 ha)( 100 m× 100 m)の作業をするのに、健康な男性でも 3〜 4時間。高齢者だと丸一日かかるという。農業で生計を立てるには 10ヘクタールは必要なので、単純に一人で 10日はかかる作業量だ。しかも田んぼに入るのは 1回だけではない。農薬は、時期や作物の状態に合わせていろいろな種類を使用するため、シーズン中は何度も田んぼの中に入る必要がある。「毎年、多くの方が亡くなっています。」作業中に熱中症で倒れてしまうケースや、前のめりに転んでしまい、タンクの重みで起き上がれず、そのまま窒息してしまうケースもあるという。このように、農薬の散布は、非常に過酷で危険を伴う重労働なのだ。そこで脚光を浴びているのが、ドローンである。専用のドローンに農薬を搭載し、空中から農薬を散布すれば、 1ヘクタールあたり約 10分で作業が完了する。「一度ドローンを見てしまったら、もう通常の作業には戻れませんね。丸一日かかっていた作業が、 10分で終わってしまうのですから。何より、田んぼの中に入らなくていい、というところが最大のメリットです。早くて、楽なんです。」実際、ドローンを飛ばしていると、隣近所の農家が、「次はウチもやってくれ!」と声を掛けてくるそうだ。このように、農薬の空中散布は非常に効率的な農作業なのだ。
■なぜ農薬を散布するのか?素人質問で恐縮だが、こんな疑問を抱いてしまった。素人からすると、「農薬 =体に悪い」、「害悪だ」という印象がどうしてもある。近年の健康ブームや環境問題意識により、農薬を使用しない「有機栽培」が人気だと思うが、農薬の散布とは実際どうなのか?「農薬を使用しないなんて、農業の現場からすると、有り得ません。あっという間に虫や雑草だらけになってしまって、とても栽培なんてできません。」有機栽培は、「手間」「時間」「コスト」を掛けて、一つ一つ丁寧に管理すれば、可能だという。しかしそれでは採算は取れないし、規模が大きくなればなるほど不可能になってくる。そうなると、趣味の世界か、企業と専属契約をしているところでしか実現できない。農作物が育ちやすい環境というのは、当然ながら、雑草や昆虫にとっても過ごしやすい環境ということになる。対策をせずに放っておくと、あっという間にとんでもない無法地帯になってしまう。一つでもそんな農場があれば、周囲に雑草のタネや虫の卵が広がり、地域一帯が全滅してしまう。農薬が開発される前までの人類は、一日中、虫や雑草などと戦っていた。農薬が開発されたことで、人類は「無益な労働」から解放され、収穫量は何倍にも増えた。農薬がなかったら、人類は今ごろ食糧不足で苦しんでいたはずだ。なるほど、農業と農薬は、切っても切れない関係にあるのである。農業は、人が食べる食糧を作る行為だ。だから今後どんなに世界が変わろうとも「農業」がなくなることはない。ということは、農薬散布という仕事も無くならないはずだ。
■ドローンとは何か?ドローンじゃないとできないのか?ドローンとは、辞書の定義によると、「小型無人航空機」である。つまり、人が乗らない、空を飛ぶ機械のことである。なので、ヘリコプター型でも、飛行機型でも、どんな形でも「ドローン」と呼ぶことができるらしい。だが一般的にドローンと聞くと、プロペラが 4個以上ついた、四角い機械を想像する人が多いと思う。実はそのようなドローンは「マルチコプター」という、ドローンの中の一つのジャンルである。とはいえ、マルチコプターという言葉よりもドローンという言葉の方が浸透しているため、ここでも以後ドローンと呼んでいくことにする。ドローンで農薬を散布する前にも、空中散布の方法はあった。それは、無人ヘリコプターによる農薬散布である。いわゆるラジコンヘリコプターのことだ。無人ヘリは 1980年代に日本のヤマハが開発し、ドローンが登場する 2010年代までの約 30年間、空中散布の仕事を担った。だが無人ヘリは、エンジン付きの大型機械だ。農薬の空中散布作業は通行人との事故を避けるために早朝に実施することが多いのだが、多くの人が寝ている 4時や 5時に飛行するため、騒音による近隣住民とのトラブルが絶えない。無人ヘリの騒音レベルは 20 mの距離で約 80 dbにもなる。これは電車が通る高架下や、パチンコ屋やゲームセンター内の音と同じレベルである。朝、家の中で寝ていたら、いきなり目の前を電車が通過するようなものだ。住人はビックリして飛び起きる。一方ドローンは、バッテリーを動力にしたモーター駆動だ。 20 mの距離で騒音レベルは約 60 dbである。これは自動車の車内と同じレベルだそうで、家の外で飛んでいてもほとんどの人は目を覚ますことはないだろう。ドローンを贔屓するわけではないが、実際に佐藤さんのドローンを見た時も、ドローンが離れていくと音はほとんど聞こえなくなった。エンジンのような機械音ではなく、「ブーン」というプロペラが風を切る風切り音しか聞こえないので、「風が強い日の風の音」というイメージで、不愉快感は全くなかった。静かでクリーン。これがドローンの特徴の一つだ。また、無人ヘリの重さは 100 kgを優に超えるため、運搬や積み下ろしなど、 3人以上で作業が必要だ。一方ドローンは約 15 kg。一人で十分取り扱いができる。何よりドローンの最大のメリットは、その安さにある。無人ヘリは、約 1200万円する。もちろんメンテナンス費用は修理代はこの価格に見合った金額になる。農家はこれを 7年リースで契約する。もしくは、購入は諦めて、作業料を払って、代行してもらうかだ。一方農業ドローンは、約 110万円で購入できる。維持費や修理費用も安い。これなら、中小規模の個人の農家でも十分手が届く。それでも中には「買うほどではない」「自分で操縦するには技術的に不安だ」という人がいて、代行で依頼する。これがまさに佐藤さんの仕事になるというわけだ。
■なぜドローンがいいのか?だがここで疑問が生まれる。「どうせ代行で人にやってもらうなら、無人ヘリでもドローンでも、どっちでもいい。」という話になりそうだ。しかし現実はやはりここでもドローンが選ばれる理由がある。「無人ヘリは、大規模散布を行うため、スケジュールで動いています。ですので、散布業者が決めた日程でしか散布をしてくれません。一方ドローンは、小回りが利くため、散布したい日にピンポイントで作業をすることができます。」農薬散布には、効果のあるタイミングというものが存在する。例えば田んぼに殺菌剤を散布するタイミングは、稲の穂の花が咲いた日がベストだという。いつ花が咲くかはその年によって前後するが、ドローンであれば、花が咲いたその日のうちに散布ができる。それが無人ヘリになると、地域ごとに散布日があらかじめ割り振られる。そのスケジュール通りに散布が行われるため、農薬の効果が最も高まる適期をハズしてしまうことがよくあるという。なぜスケジュールで運用されるかというと、無人ヘリは大型機械であり、大人数の作業員を動員する必要があるためだ。ヘリコプターを運ぶためのトラックはもちろん、通行人との事故を避けるために、作業中は監視員や交通整理の人間も必要になる。一方ドローンであれば、小型、軽量機械なので、一人でも作業が可能だ。これは農林水産省が提示している「農薬等の空中散布安全ガイドライン」でも、安全措置を講じれば一人で作業して良いことが明記されている。それにドローンであれば、小さい田んぼでも散布業務を請け負うことが可能だ。実際、佐藤さんに来る依頼も、小さい面積を複数箇所回るというような依頼が多い。これもまさにドローンが得意とするところだ。「これからは完全にドローンに移行していく時代の流れになっています。」実際、農林水産航空協会に登録されている無人ヘリコプターの数は、現在日本全国で約 3千機ある。一方農業ドローンの登録台数は、すでに 4千機を超えている。(農林水産省データベースより)すでに勢力図は変わってきているのだ。とはいえ、無人ヘリにはまだドローンにはない強みもある。無人ヘリはエンジンで飛ぶためパワフルで、何ヘクタールも続く広大な土地を一気に農薬散布するような大規模作業には向いている。だがこれも時間の問題だ。ドローンの性能が上がり、積載量や飛行時間が向上すれば、無人ヘリのメリットはなくなってしまうだろう。時代は完全にドローンの流れになっている。
■作業単価は?ここで気になるのがやはり作業単価だ。農薬の空中散布を依頼した場合、その散布代行料はいくらになるのだろうか。先に、面積の数え方をご紹介しておくと、農業の世界では、 1ヘクタール( 1 ha)( 100 m× 100 m)のことを「 1町」(いっちょう)と数える。そして、その十分の一の面積である、 10アール( 10 a)( 100 m× 10 m)のことを、「 1反」(いったん)と数える。農業の世界ではこの「町」「反」という単位で会話する。なので作業単価も「町」や「反」で料金が決まっている。「作業単価は、その地域によって、全く異なります。 1反あたり、 1000円〜 5000円です。平野などの平坦で散布作業が簡単な地域では、 1000円台になります。一方山間部など、散布飛行が難しい地域では、作物によっては 5000円を超えるところも出てきます。私が活動している熊本県での相場は、約 3000円です。」 1反とはどれくらいなのか。お米でいうと、約 500 kgが収穫できるイメージだ。出荷すると、約 13万円ほどの売り上げになる。そう考えると、 3000円でも必要経費と考えれば高くはない。専業農家だと、最低でも 10町は持っているという。 10町で売り上げが約 1300万円なので、そこから機械代や農薬代を引くと考えると、なるほど確かに最低でも 10町はないと生計を立てるのは厳しそうだ。 「1町( 10反)のドローンでのフライト所要時間は、約 10分です。 10町あっても、朝の数時間があれば十分終わります。」散布代行を 10町行った場合、それだけで作業料は 30万円になる。このようなお客さんを 4人抱えていて、年に違う農薬を 3回ずつ散布したとすれば、収入は 360万円となるイメージだ。「私はドローン散布専業で動いているので、年間のべ 200町ほど散布しています。人を雇ってチームで動いている人だと、 300町以上散布しているところもあります。」佐藤さんの単価で考えると、単純に 200町散布すれば 600万円の収入だ。ここからドローンのローンや税金などを払っていくが、それでもサラリーマンの平均年収以上は確実だ。繰り返すが、これは朝から晩まで働いて稼ぐ額ではない。早朝の 3時間、しかも夏の農薬散布シーズンのみの稼働で稼ぎ出すのだ。
■ 1年のスケジュールはどんな感じなのか?佐藤さんがメインで担当している作物は「稲」だそうだ。稲はまず田植えが終わった5月に除草剤を散布する。そして7月頃に、病気を防ぐために殺菌剤を散布した李、状況に応じて、除草剤も追加する。9月には、追肥といって、穂を大きくするために肥料を散布する。なので、1つの田んぼに、 4回はドローンを飛ばす計算になる。「5月から9月が忙しいですが、それ以外は、ぶっちゃけ暇ですね。」佐藤さんはそう言って微笑んだが、もちろん仕事を増やすことは可能だ。稲のほかにも、「麦」や「大豆」、「野菜」、「果樹」など、様々な作物があるので、需要はいくらでもあるという。特にこれから注目されるのはキャベツや白菜などの「葉物系の野菜」だという。それらの野菜には大量の農薬を使用するため、空中散布のニーズが非常に高い。現在は農薬散布機を地上で走行させているのが現状だが、車輪が通るラインは作物を植えられない。その部分だけで規模によるが数百万円の損失になっているという。また、土がぬかるんでいる雨の日の次の日は作業ができない。これではベストタイミングを逃してしまうこともある。他にも農業ドローンの活躍の場はある。ビニールハウスに洗浄液をかけて汚れを落としたり、遮光剤を散布して日射量を調整したりと、農業関連作業にも幅広く活用できるのだという。使い方次第で一年中仕事をすることもできるのだ。
第 2章 農業ドローンの購入方法 ■ドローンを始めたきっかけは。「私は実は、農家出身ではないんです。」佐藤さんは、前身は地元の食品メーカーに勤めるサラリーマンだったそうだ。元々独立願望があり、コンビニのフランチャイズや、学習塾経営、ガソリンスタンド経営など、様々な起業アイディアを探しているときに、「ドローンによる農薬散布業」を知った。「ドローンを買ってさえしまえば、あとは自分の体一つで稼ぐことができる。これだ!と思いましたね。」今、佐藤さんのように、農家ではない人間が農業ドローンで農薬散布業に参入するケースが増えているという。一般的には、農業ドローンというものは農家が自分で使う道具として購入する。だがそうするとそれを見た近所の農家が、「お金を出すからウチもやってくれないか。」と声をかけてくることが多いそうだ。しかし、ドローンを買った農家自身は自分の田んぼで手一杯で、他の人の田んぼに散布する余裕はない。そのため、多くの面積を農薬散布するとなると、結局は「散布専門」の人材が必要となってくる。このニーズに応えたのが、まさに農薬散布代行サービスなのである。
■農業ドローンはどこで手に入るのか?農業ドローンは、ドローンを製造しているメーカーの販売店で購入できる。形態としては、メーカー直営もあるし、農機具メーカーが販売代理店として登録しているケースもある。または、最近多いのが、ベンチャー企業による販売代理店だ。「ドローンを販売したい」と考えてメーカーと契約した企業である。なので、まずは「どのドローンが欲しいか」を決める必要がある。そして、そのドローンの販売店に注文すれば良い。農業ドローンのメーカーは、今日本で展開されているもので執筆時点で 13メーカーある。農業ドローンを販売するのには国の認可が必要なため、日本で販売されている農業ドローンのラインナップ情報は「農林水産省」のホームページから調べることができる。「残念ながら、日本のメーカーは、海外メーカーに遅れを取っています。」日本国内でも、中国メーカーの農業ドローンがシェア No. 1だ。単純に、安くて性能が良い。中国はドローン大国と呼ばれており、日本の技術の 10年先を行っていると言われている。佐藤さんが使っているドローンも、中国メーカーのドローンだ。「シェア No. 1を選んでおけば、間違いないと思いました。日本政府としては日本国内のドローンメーカーに伸びて欲しいでしょうから、外国製ドローンは排除の動きになっていますが、農業の現場ではそんな政治的な話は関係ありません。使えればいいんです。」佐藤さんもこの中国メーカーのドローンを購入すると決め、インターネットで販売店を探した。そして近所にある販売代理店で購入したという。ドローンは修理などのアフターサポートが大切なので、近場で買った方が間違はないのだそうだ。
■ドローンを飛ばすための資格とは?農業ドローンを飛ばすためには、オペレーターライセンスが必要だ。このライセンスは、ドローンの種類によって異なる。そのため、ほとんどはドローン販売店がライセンス講習会を実施している。なので、農業ドローン販売店で、「農業ドローン本体」と「ライセンス」をセットで購入するイメージだ。ライセンスを取れば、あとは好きなときにドローンを飛ばすことができる。だがこのオペレーターライセンスは、実は国家資格ではない。「このライセンスはあくまで民間資格であり、国が発行する免許証ではないんです。」というのも、結論から言うと、ドローンに「免許証」というものは存在しない。実は、ドローンは誰でも飛ばすことができる。ただし、飛ばして良い方法・ダメな方法。飛ばしていい場所・ダメな場所。というものが法律で定められている。その法律が、「航空法」だ。
■ドローンを飛ばす上で関係してくる法律とは?ドローンを飛ばす上で必ず考慮しなくてはいけない法律が、「航空法」だ。 2015年の首相官邸の上にドローンが着陸した事件を受けて、「航空法」が改正され、ドローンの飛行ルールが明記された。航空法では、「飛行禁止空域」(飛ばしてはダメな場所)と「飛行禁止方法」(飛ばしてはダメな方法)が定められている。よって「航空法」に触れない飛ばし方をする分には、許可も不要で、いつでもどこでも誰でも飛ばして良い。しかし「航空法に触れる飛ばし方」をする場合は、国土交通省の許可が必要になる。今回の農業ドローンは航空法にがっつり引っかかる。「危険物輸送」という、農薬を運搬する行為と、「物件投下」という農薬を散布する行為が、航空法で禁じられている行為だ。なので農業ドローンを飛ばすためには、この2つの承認を国に得る必要がある。これは「免許制度」ではない。あくまで「許可制」である。なので、「危険物輸送」と「物件投下」をするという許可申請を行い、承認が下りれば、農業ドローンを飛ばすことができるのだ。ただし、フライト前にいちいち許可を取るのは面倒である。そもそも許可が下りるまで数週間かかるので待ってられない。ここで役に立つのが「民間資格」である、「オペレーターライセンス」だ。各種ドローン団体が、ドローンオペレーターの育成を行っている。ここでライセンスを取得すれば、ドローン団体が代理で国にフライト許可を申請する。これにより、資格取得者はいつでもドローンを飛ばせるようになる。つまりまとめると、「農業ドローン」を飛ばすための「免許」は存在しない。飛ばす前に国の許可を取れば、誰でも飛ばして良い。ただし、いちいち許可を取るのは面倒だし、許可が下りない可能性もある。そこで、民間資格である「オペレーターライセンス」を取っておけば、いちいち国の許可を取ることなく、好きなときにドローンを飛ばせるようになる。そしてこの「オペレーターライセンス」は、あくまで民間資格なので、ドローンのメーカーによって管理団体が異なる。そのため、使いたいドローンに対応しているライセンスを取得する必要がある。車で言うと、免許証があれば、トヨタの車もホンダの車も運転できる。だが農業ドローンは、 Aメーカーのドローンは Aメーカーが発行するライセンス。 Bメーカーのドローンは Bメーカーが発行するライセンスが必要ということになる。現在の農業ドローンの業界は、以上のような構造になっている。(ただし、政府は 2022年にドローンを「免許制」にすると発表している。詳細は未定だが、車の免許証と同じようになるイメージだ。ただ、今ある民間資格はそのまま免許証として使える方向になっている。)いずれにせよ、ドローン購入時に販売店の指示に従ってそれに合ったライセンス講習を受講すれば問題はない。
■農業ドローン購入方法「まずは、販売店に連絡を取りました。そしたら、ライセンスを持っているかどうか聞かれます。持っていない場合は、講習会を案内されます。」ライセンス証は「免許証」ではないので必須ではない、と先述したが、現実問題、ライセンスを持っていない人はドローンの購入ができないという。安全のために、販売店にはドローンの販売を拒否する権利がある。佐藤さんはライセンスを持っていなかったため、講習会を受講した。受講料は、税込み 24万円ほどだったそうだ。カリキュラムは 5日間で、座学講習と実技講習があり、それぞれに試験もある。「航空法」や「農薬取締法」などの基本知識や、ドローンの操縦技術を習得する。講習会には 5人ほどが集まり、交代で一人 1台を使って、ベテランの指導員のもと、操縦訓練を行う。佐藤さんはドローンは全くの初心者だったそうだが、難なく操縦できたという。「最近のドローンは性能が良く、安定して飛んでくれます。特別な技術は不要です。」 5日間のカリキュラムを終え、試験に合格し、晴れてライセンスを取得した佐藤さん。その後、いよいよ注文した農業ドローンが納品された。「すぐに作業ができるセットを揃えるのに、だいたい 230万円ほど必要ですね。」ドローン機体本体だけだと、約 110万円で購入できるという。だが、そこにバッテリーや充電器などを付け加えていくと、合計 200万円ほどになる。ライセンス講習費用と合わせると、だいたい 230万円になる計算だ。実はドローンのバッテリーが高いという。大容量のリチウムイオンポリマーバッテリーを使用しているため、 1個につき税別で 7万円したそうだ。ドローンの弱点として、飛行時間の短さがある。そのため、こまめにバッテリーを交換する必要がある。佐藤さんは 1日で広い面積をカバーできるよう、 8本購入した。また、移動中にも充電ができるように、小型の発電機も購入したという。予算に応じてこのような周辺機器を増減させて導入コストを抑えることは可能だという。いずれにせよ、 230万円で仕事道具が揃うと考えれば、起業としては悪くない投資に思える。
■農業ドローンの維持費、コスパは?農業ドローンには「年次点検」が義務付けられている。費用はメーカーや販売店によってまちまちだが、佐藤さんのドローンの場合は基本料金で約 15万円かかるそうだ。それに加えて修理箇所があれば、プラスで料金が発生する。また、万が一のリスクに備えて保険も必要だ。対人・対物事故を補償する賠償責任保険は、車でいうところの自賠責保険であり、強制保険だ。佐藤さんのドローンの場合は無料で付帯しているという。一方、機体本体にかける動産保険は、任意保険となるが、年間で約 12万円かかる。保険内容としては、修理費用の 90%が補填されるものだ。これは多くの農機具に採用されているシステムという。農業ドローンもこの形式に沿っている。よって、年間維持費は、最低でも 30万円は見ておく必要がある。燃料代はかからないが、バッテリーを充電する電気代は別途発生する。最低でも毎年 10町(約 10 ha)の仕事をすればランニングコストは回収できる。
第 3章 農薬散布の仕事の始めかた ■届出は必要か?ドローンで仕事をするにあたって義務付けられている届出はない。繰り返しになるが、国交省に飛行許可を受けていれば、農業ドローンは誰でも飛ばして良い。オペレーターライセンスを持っていれば、向こう 1年間の許可を包括で取っている状態なので、いつでも飛ばせる。なので、販売店でライセンスを取りドローンを買ってしまえば、もういつでも仕事ができる。ただし、ビジネスをして、収益を得るという行為は、納税が必要になる。よって、個人事業主として開業するか、法人を設立するか、いずれかの方法で確定申告が必要になる。これは「農業ドローンだから」必要な申告というわけではなく、どのビジネスでも必要になる申告である。なので納税に関する詳しい話は今回は割愛させていただくこととする。佐藤さんは、個人事業主として開業届を出したそうだ。「個人事業主って、実は自称なんです。開業届を出さなくてもビジネスはできますが、開業届を役所に提出しておけば、納税の際に様々な制度が利用できるので節税ができます。」規模が拡大したら、「農業組合」を作ることもできる。
■仕事を獲得する方法仕事道具を揃えたとしても、肝心の「仕事」がなかったら意味がない。農家から散布の業務を依頼してもらう方法を佐藤さんに聞いた。「農家さんは、横のつながりが非常に強い、閉鎖的な世界です。ですから、「知らない人」には絶対に仕事は頼みません。」農家がドローンでの農薬散布を依頼する場合は、まずは絶対に知り合いに頼む。そして効果に満足したら、仲間に紹介する。こうして、口コミで評判が広まっていくという。なるほど確かに、農家からすれば育てた作物というのは大切な財産だ。知らない人に作業を頼み、万が一枯らされたりでもしたら、たまったものではない。それにドローンという新しい機械ともあれば、慎重になることは頷ける。「私は農家出身ではなかったので、まずは知り合いの知り合いを伝って農家さんとお会いしました。」佐藤さんはまずは知り合いのツテを辿って何とか農家と繋がりを持つことに成功した。そして佐藤さんは、「まずは無料」で農薬を散布したそうだ。「これから散布する予定の農薬を、よろしければドローンで散布しますよ。もしお気に召していただいたら、次回以降は有料となりますがぜひお声がけください。」こう言って農薬散布をあっという間に実践してみせる。農家がこれから数日かけて作業する予定だった仕事を半日で片付けてしまうのだから、インパクトは強烈だ。こうして、一度農家の心を掴んでしまえば、次の仕事も頼まれる。農家は閉鎖的な世界だが、その分一回懐に飛び込んでしまって気に入られれば、絶対に裏切られないという。「あとは、人の紹介で仕事が舞い込んできます。この形ができたらこっちのもんです。」
■農薬散布業務で注意すべき点とは農家が農薬散布で最も懸念する事項が、「本当に効くのか?」ということだそうだ。ドローンでの農薬散布は「高濃度少量散布」が特徴だ。人がタンクを背負って散布する農薬とは、濃度や種類が異なる。そのため、初めて見る農家は「本当に効くのか?」と心配になるという。確実に農薬の効果を出すためのコツや注意点がある。「まず、雨の日や湿度の高い日は農薬が流れてしまうので、農薬散布はできません。」天気が悪い日の農薬散布はタブーだという。液体タイプの農薬の場合、農作物に付着して、乾燥して初めて効果が出る。そのため農薬が乾く前に雨が降ってしまうと効果が出ない。粒剤タイプの農薬の場合は、水に濡れると溶けてベトベトになってしまうため、ドローンの散布装置が故障してしまう。「また、田んぼによっても、雑草が生えやすいところと生えにくいところがあります。ですので農家さんにしっかりとヒアリングすることが大切です。」「特に水が流れてくる水口(みなくち)周辺は、農薬が流されてしまいがちなので、濃いめに散布することがコツです。」このような技術やコツも、農家としっかりと話をすれば糸口が見えてくるという。「やはり農業のことは農家さんに聞くのが一番です。」佐藤さんも農家にアドバイスをもらいながら、日々勉強中の身だという。これも農家出身ではない佐藤さんならではの努力だ。もう一つ、農家が心配することというと、農薬のドリフト(飛び散り)だという。隣の土地の別の作物に全く関係ない農薬をかけてしまうと、損害賠償問題に繋がることもある。これはドローンを飛ばす操縦技術はもちろんだが、天気予報から風速を予想したり現場の風を読んだりする知識も必要になってくる。こういう点も合わせて、経験を積む必要はある。
■農業ドローンを操縦することは難しいのか?「ヘリコプターに比べると、めちゃめちゃ簡単です。」ドローンは、「空飛ぶコンピューター」と言われることがある。それくらい、高性能なセンサーの塊だ。佐藤さんがしようしているモデルでは、ジャイロセンサーや、障害物検知レーダー、自動ブレーキ機能も搭載されている。風の強さを計算して瞬時にバランスを保ったり、 GPS機能によりその場にホバリングし続けることができる。要するに、操縦をやめれば、ドローンは空中でその場で止まる。勝手に飛んでいってしまったり、墜落してしまうことはない。ラジコンヘリコプターではこうはいかない。風が吹くままに機体が流されてしまうので、風に合わせて繊細な操縦が要求される。お正月に遊ぶ「凧」を飛ばしているイメージに近い。「車の運転と同じで、慣れてしまえば、あとは無意識的に感覚で飛ばせるようになります。」これがドローンが世界的に普及した所以でもあるだろう。
■農業ドローンで散布できる農薬とは?全ての農薬が散布できるわけではない。農薬というものは、農薬取締法に基づき、農林水産省の厳格な試験をクリアしたものだけが販売されている。その中でも、ドローンに適していると認められたものだけが、ドローンで使える農薬だ。具体的にいうと、農薬ボトルのラベルの「使用方法」のところに、「無人航空機による散布」もしくは「無人ヘリコプターによる散布」と記載されてあるものだけが、ドローンで散布できる農薬だ。これは農林水産省のホームページで一覧を見るか、農薬メーカーのホームページを見ることで調べることもできる。農薬の購入方法は、農家向けホームセンターや、農協、個人の肥料店などで入手することができる。とはいえ、散布代行の場合は、農家自身が使って欲しい農薬をあらかじめ持参しているケースがほとんどだという。もし農薬も用意して欲しいと頼まれた場合は、別途請求するか、散布代行料に含めればよい。ちなみに農薬を購入することに、必要な資格などはない。誰でも購入することができる。
第 4章 農業ドローンビジネスの展望 ■農業ドローンの汎用性は?今回は「稲」の農薬散布を中心に行なっている佐藤さんに話を伺った。だが、稲の他にも、需要がある作物は存在する。佐藤さんもすでに「稲」以外にも狙いがあるという。「今後注目を集めるのは、野菜です。野菜の栽培には大量の農薬を必要とするので、ドローンによる空中散布は非常にニーズがあります。しかし、現時点で、野菜に使えるドローン用の農薬がほとんど販売されていません。今農薬メーカーが開発を進めているところであり、もう少しで国の販売許可も下りるそうです。」「野菜は1つ1つの単価が高いので、農業の中でも非常に儲かるジャンルです。ですから、農業ドローンが使えるようになったら、とてつもないビッグビジネスになりますよ。」野菜以外でいうと、果樹もこれから注目を集めるはずだという。みかん畑やぶどう畑などだ。樹木自体が背が高いし、地形も高低差があり、そもそも地上で農薬散布作業することに向いていない作物なのだ。まさにドローンの得意ジャンルである。これもドローン用の登録農薬が増えれば、需要は爆発的に伸びると考えられている。林業でも活躍が期待されている。松の木や杉の木に防虫剤を散布するニーズもある。他には、ビニールハウスの遮光剤も散布できるし、ゴルフ場の芝に着色剤を散布することも可能だ。太陽光パネルに洗浄液をかける仕事もあるそうだ。そして驚きなのが、実は、農業以外でも農業ドローンは使用できるという。「今、新型コロナウイルスの影響で、消毒液の散布に需要があります。」農薬の代わりに、消毒液を入れて、空中散布飛行するのである。これは農薬散布のライセンスがあれば、法律上問題なく行える行為である。中国では、街中をドローンで消毒して回ることがすでに行われている。日本でも、特定の敷地内や、スタジアムの観客席などを消毒することに農業ドローンが使われているのだ。アイディア次第で無限の可能性を秘めている機械であることは間違いない。
■農業ドローンで稼ぐためには佐藤さんは夏の間だけ稼働し、シーズンオフは自由に過ごすライフスタイルを送っている。だが、もっと稼ぎたいと考えた場合は、どうすれば良いのだろうか。まずは、対象作物を増やすことだ。様々な農家さんと繋がりを持って、シーズンが異なる様々な作物に対して仕事を請け負えば、長い期間仕事を絶やすことがない。もしくは、行商のように転々と作業エリアを変えればいいという。農薬の散布シーズンは、地域によって異なる。桜の開花前線を想像していただきたいのだが、暖かい地域から、寒い地域に向かって、植物は成長する。なので、県を跨いで散布業務を請負っていけば、長い期間仕事ができる。いずれにせよ人と人とのネットワークが大切だ。なので SNSも大きな宣伝効果を持つ。 「SNSで見ました、という問い合わせは結構いただきます。」特に反響が大きいのが「フェイスブック」だという。フェイスブックは本名で投稿するため信頼性が高いということと、利用者の年齢層が比較的高く、農家の目に留まりやすい点がメリットなのだそうだ。あとは、潜在的なニーズを掘り起こすことも大切な活動だ。やはりまだ農業ドローンは全ての農家には浸透していない。私たちは今、当たり前のようにスマホを使っている。だがスマホが出始めた当初は「要らない。携帯電話で十分だ。」と思っていたのではないだろうか。農業ドローンも同様に、「手作業で出来るのだから、必要ない。」と思っている農家もまだ多いという。そのようなお客を開拓していくだけでも大きな仕事につながるはずだ。
■仕事を展開するにあたっての注意点「農業は良くも悪くも閉鎖的な世界です。ですので、お互いのテリトリーを侵さないことは大切です。」農家は誰に農薬散布をしてもらうか自由に選ぶ権利があるが、多くは「付き合い」で成り立っている。よって、「去年はこの人に散布してもらったが、今年はこの人に散布してもらう。来年はこの人。」などというように請負業者がコロコロ変わることは基本的にはないという。よって、付き合いがあるところに無理に首を突っ込むことはタブーなのだ。また、その地域によって作業単価の相場は決まっている。通常は、「過去の無人ヘリの散布料金」が判断基準になる。これは地元の農薬販売店や農協に聞けばわかる。なので、この相場から大きく外れない価格で仕事をすることも大切だという。「ウチはもっと安くやりますよ!」という値下げ合戦になってしまうと、お互いに疲弊してしまうからだ。また、やはりまだ農家の中には、農業ドローンではなく無人ヘリコプターに作業を依頼しているところもあるという。こういうところに無理にドローンを営業したりすると、快く思われない場面も出てきてしまう。いずれにせよ、目の前の一人一人のお客さんに尽くすことが大切なのだと、佐藤さんは言う。一回付き合いができれば、次回以降も仕事を依頼してくれる「固定客」になる可能性が高い。それがまた一人、また一人と増えていけば、十分に稼いでいける。
■農業ドローンは、どれくらいのペースで新型が出ているのか?佐藤さんが使っている中国メーカーのものだと、 1年に 1台は新型が発表されている。このペースは、今までの農業界では考えられなかったほどのスピード感だという。現在は農業も IT化の波に乗り、目まぐるしいスピードで、機械の改良、進化が進んでいる。新しい性能の農業ドローンが欲しい場合は、発売されるまで待ってみてもいい。もちろん、型落ちの農業ドローンが使えないということではないので、使いたいタイミングで手に入れれば問題はない。また、実は新型ドローンの情報をいち早く掴む方法があるという。「農業ドローンの多くは、日本で発売されるよりも 1年くらい先に、中国で発売が始まります。」なので、ドローンメーカーのホームページにアクセスして、下部の言語選択のところから「中国語版」のページに飛べば、世界最新のドローン情報をゲットできる。なかなか日本のニュース記事にはならない情報も多いので、このリサーチ方法は意外に役に立つ。
■スマート農業におけるドローンの活躍今回はドローンによる「農薬の空中散布」の話がテーマだったが、それ以外のドローンの農業への活用方法はあるのだろうか。まずは簡単な例で言うと、カメラ付きドローンで「田んぼの水まわり管理」が可能だ。田んぼは水の量の調整が肝心なのだが、「どれくらい水が入っているのか」「ちゃんと入っているのか」「奥の方はどうなっているのか」などということを確認するために、田んぼの周りを歩いて確認する必要がある。この確認作業をカメラ付きドローンで行ってしまえば、田んぼの周りを歩かなくても済む。よく大雨の時などのニュースで、「田んぼの様子を確認してくると言って出てったきり帰ってこない」「のちに遺体で発見された」という報道を目にしたことがあると思う。我々素人からすると、「なんでこんな時に田んぼなんて見に行ったんだ!」と思ってしまっていたかもしれないが、彼らは何も遊びや好奇心で見に行っているわけではなく、大切な作物を守るために仕事で見に行っていたのだ。カメラ付きドローンを使えばこのような事故も減らせるかもしれない。次に、センシングドローンがある。これは、マルチスペクトルカメラを搭載したドローンで、肉眼では見えない波長の光を捉えることができる。このドローンで農作物を撮影すると、作物の育成状況が判別できる。このデータを基に、農薬の散布量を自動で調整しながら、ドローンを自動航行させる技術は存在している。また、このカメラを使えば作物なのか、作物ではないのかもドローンが判別できるため、ピンポイントで農薬を散布させることも可能になる。他には、測量用ドローンで農場を 3 Dマッピングすることで、高低差のある果樹園や茶畑などの農場でも自動運転で散布することができる。「果樹である」ということも識別できるため、果樹から果樹の上を自動で移動させることもできる。現在はまだ「値段が高い」ということと「取り扱いが難しい」ということで現場での利用はまだ広がっていない。だが、佐藤さんのような「農業ドローン専門」の人間がこのようなドローンを活用して、農家一人一人にアプローチしていくことは可能なはずだ。
■これから農業ドローンビジネスを始めるにあたってこれから農業ドローンでビジネスを始めたいという人もいると思う。どのようにしてこのビジネスに取り組めば良いのか、今までの話を総合し、まとめてみた。まずは、どこで仕事をするかを考える必要がある。地元が田舎で農業地帯なのだとしたら話は早いが、例えば都会に住んでいて、実家も親戚も都会で農業とは無縁だとすれば、田舎に移住するなり活動拠点を構える必要が出てくる。いずれにせよ、農薬散布は北海道から沖縄まで全国どこにでもニーズはあるので、田舎ならどこにでも仕事はある。自治体によっては移住支援や起業支援などもあるので、それを活用できる地域を選ぶのも手だ。次に、どのドローンを使うかを決める。活動拠点の近くに販売代理店があることが望ましい。ドローンを決めたら、販売店に申し込み、ライセンスを取得しドローン本体も購入する。分割払いを活用できるところもあるので詳しくは問い合わせてみると良い。車も必要だ。ワゴンタイプの軽自動車か、軽トラが望ましい。大きい車だと現場を動き回るのに不便だ。道具を揃えたら、個人事業主として開業するか、法人を立ち上げて、仕事をする形を作る。このような手続きは儲かってからでも遅くないが、先に形を整えておけば経費計上もできるので後々有利になるし、仕事を獲得していく上での信頼につながる。そしたらいよいよ仕事を獲得する。知り合いがいればそこからネットワークを広げられるが、いない場合はドローンを買った販売店や地元の農薬・肥料販売店などから仕事を紹介してもらうのも一つの手だ。他には、 SNSの活用や地道な営業活動、無料でのデモ実践などを経て、お客さんを獲得する。今は仕事マッチングサービスもあるので活用してみてもいいかもしれない。いずれにせよ、お客さんを見つけて仕事を取ってこなくてはいけないというところは、他のビジネスの起業でも共通している部分であろう。一人でもお客さんが付いたら、目の前のお客さんに対して全力で仕事をすれば、次に繋がっていくはずだ。開業費用は約 200万円。車も買うとなると別途車両代も発生する。約 70町(約 70 ha)散布をすれば導入コストは回収可能だ。ドローンの年間維持費は約 30万円。最低でも 10町の仕事は毎年こなす必要がある。初期投資やランニングコストを回収したあとはいよいよ利益になっていく。「農業ドローンを飛ばすという、作業自体は簡単な仕事です。ですが、”仕事を取ってきて”、”食っていく”というところは、あくまでビジネスの”起業”なので、しっかりとした準備や覚悟が必要です。」独立、起業を考えている人は、「農業ドローンビジネス」を一つの選択肢に入れてみてはいかがだろうか。
第 5章 まとめ ■ドローンって何?「小型無人航空機」のこと全般を指す。ただ、「水中ドローン 」「水上ドローン」など、幅広い言葉で使われ始めている。 ■農業用ドローンって何?農薬を空中散布できるドローンのこと。 ■農業用ドローンはどこで買えるのか?ドローンメーカーの販売代理店で買える。 ■農業用ドローンを飛ばすための資格は?資格は必須ではない。飛行前に国交省に許可を取れば良い。資格(オペレーターライセンス)を持っていれば、向こう 1年間の飛行許可を得た状態になる。 ■オペレーターライセンスはどこでとるのか?ドローン販売店が開催している講習会に参加する。 ■農業ドローンってぶっちゃけいくら?メーカーにより、 50万円〜 300万円ほど。 ■農業ドローンの維持費は?メーカーによるが、年間 30万円〜 100万円ほど。 ■農業ドローンに車検はあるか?メーカーによるが、一般的には 1年に 1回が義務付けられている。法的な拘束力はなく、車検を受けないこと自体は違法行為ではない。ただし車検を受けていないと、機種によっては販売店はドローンにロックをかけることができるものもある。 ■ドローンはどんな作物に使えるのか?ドローン用の農薬が販売されている作物になら何でも使える。稲、麦、大豆が一番農薬の種類が豊富。キャベツ、白菜、ほうれん草などの葉物野菜はドローンのニーズはあるが農薬の販売待ちの状態。みかんやぶどうなどの果樹園や、茶畑、松の木などにも使える。 ■ドローンは難しい?
機械制御の性能が向上し、無人ヘリコプターよりは簡単。勝手に浮くので、基本的には誰でも操縦できる。自動運転機能もあり、自動農薬散布もできる。 ■コラム:農家は実は「お金持ち」!?もちろんピンキリだが、規模の大きいところは稼いでいると考えて間違いない。実はトラクターや田植え機など、農業器具は数千万円する。そもそも資金がないと農業はできない。国や自治体からの補助金も手厚い。年商「億」は決して珍しくない世界なのだ。自然災害で損をすることもあるが、逆に作物が高騰して儲かることもある。食品大手企業と専属契約しているところなどは、安定的に稼ぐことができる。
いかがだっただろうか。「農業ドローン」で稼ぐ佐藤さんの密着取材を通じて、そのビジネスの全貌を詳しく見ることができた。「ドローンは、あくまで”道具”です。どう使っていくかが重要です。」なるほど確かに、「ドローンが飛んで、すごい!」という考えでは遅すぎるようだ。「ドローンは飛んで当たり前。どう使うか、どう利用するか。」という段階であることは間違いない。もうすでに現場は動いている。日本中の畑、田んぼ、至る所にドローンが飛び交っている光景は、もう間近に迫っているのかもしれない。そのなかに、佐藤さんのドローンがきっと混じっていることだろう。
【追記】 2021年 5月某日。佐藤さんから「新情報がある」との連絡を受け、約 1年ぶりに佐藤さんのもとを訪れた。健康的に焼けた肌の佐藤さんは相変わらずの笑顔で出迎えてくれた。「農業用ドローンで今、激アツの仕事が誕生しました。それは、水稲の直播です!」水稲直播とは一体何なのだろうか。詳しく話を伺った。 ■水稲直播とは?「直播」は、「じかまき」「ちょくはん」「ちょくは」などと呼ばれる農業技術の一種である。その名の通り、「直接」「播く(まく)」という意味で、稲の種子を田んぼに直接播くことだという。「これは、稲作の常識を破壊する、革命的な技術です。」佐藤さんがそう熱く語るのも、理由があった。従来、お米の栽培は「田植え」をする。田植えというと、稲の幼苗を 1本 1本植えていく、あの誰もが想像できる「ザ・農業」ともいえる光景だ。この田植えが非常にコストがかかる作業なのだという。「田植えをしている風景はテレビや田舎などで誰もが目にしたことがある有名なシーンですが、実はその作業をするまでに、たくさんの労力とコストがかかっているのです。」実は、田植えまでの準備が大変なのだという。田植えをする前には、稲の種子を発芽させ、植えられる状態まで苗を育てる「育苗」が必要だ。この育苗は、田植えシーズン前に行うため、温度を保つためにビニールハウスの中で行う必要がある。よって、そのためにビニールハウスを確保しなくてはならないというコストが一つ。さらに、内部の温度を発芽に適切な気温に保つために、暖房が必要になるので、灯油などの燃料代が発生する。さらに、育苗するためには育苗箱が必要で、これは使い捨てになってしまう。稲の根が伸びるからだ。このコストも馬鹿にならない。その他にも種子の選別や消毒作業など、様々な労力が発生する。「ここまでして初めて、いよいよ田植えをしているのです。ですがそれだけではありません。田植え機って、めちゃめちゃ高いのです!」田植えは、まさか令和にもなって人が手で 1本 1本植えるはずはなく、趣味や農業体験ならともかく、通常は田植え機で行う。この田植え機が非常に高価なのだという。「もちろんメーカーや規模によりますが、人が乗り込むタイプになると 300万円以上するものもザラです。しかも、これは 1年で 1回、この田植えの時にしか役に立たない機械なのです。」当然、操縦は人が行う。大規模農家になればなるほど人件費も大きくなる。自動田植え機なるものも存在しているが、まだ広く普及するには程遠い。しかも、その操縦が難しいのだという。
「ドロドロの道を、ハンドルを操作してまっすぐ進んでいきます。ハンドルが取られるので、一人前になるまでに時間がかかります。少しでも曲がってしまうと、稲の列がそのまま曲がって成長してしまうので、運転には神経を使います。」いかがだっただろうか。実は、あのほのぼのとした田舎景色の田植えは、実はこんなにも大変な農作業の一つだったのだ。ここで登場するのが、水田直播だ。これは田んぼに種子を直接播き、芽を伸ばす農業手法だ。「はじめからそうすれば良いのに。と思ったかもしれませんね。ですが直播は技術的にハードルが高く、今までなかなか実用化されなかったのです。」種を播くだけなのでは?と思うが、実はそう簡単な話ではないらしい。まず、単純に田んぼに種を播いても、当然水に浮いてしまい流れて行ってしまう。これではダメだ。では水を抜いた、泥の上に種を播くとする。すると今度は、スズメなどの鳥や虫などに食べられてしまうのだという。なるほど、単純に種子を播けばいいというものでもないらしい。「ここで新たに開発された技術が、鉄コーティングです。」鉄コーティングとは、種子を鉄粉でコーティングすることである。農家の間では「鉄コ」と略して読んだりする。直播前に、あらかじめ水稲の種子を鉄粉でコーティングしておく。そしてこの鉄でコーティングした種子を田んぼに播くのだ。これにより、種子は重くなり、水にしっかり沈む。また、堅いので鳥などの食害も受けない。やがて鉄は錆びて、芽が鉄の殻を突き破って伸びてくる、という寸法だ。「実は鉄コの技術自体は、 30年以上前からありました。ですが、どうやって播くかが問題だったのです。」結局、直播がしたい人はみんな、田植え機に鉄コ散布装置を取り付けて、田植え機で種まきをしていたという。結局田植え機が必要になるし、鉄コ散布装置だけでも 100万円以上してしまう。これでは直播のメリットはほとんどなかった。そう、ここで登場したのが、農業用ドローンある。「農業用ドローンに鉄コーティングの種子を積み、空中から直播を行うのです。」確かにドローンで空中散布を行えば、当然ドロドロの田んぼの中に入る必要はないし、作業もあっという間に終わる。直播は、まさにドローンに打って付けの作業だったのだ。「ただし、デメリットもあります。それは、収穫量が落ちることです。」きれいに列をなして稲を育てる従来の田植えと違い、直播はランダムに稲が伸びる。よって、成長のムラも生じるし、雑草被害などにも遭いやすい。そのため、トータルの収穫量は落ちてしまう。
それでも、トータルコストで見ると直播の方がコスパが高いそうだ。「だいたい、田植えと比べて直播は 2割程度の減収です。それでも、ビニールハウスや箱育苗のコストを考えると、十分元が取れるんです。ですから今、直播は非常にニーズが高まっています。」今までは農業用ドローンの仕事というと、農薬散布、肥料散布がメインだったが、これからは初夏の直播の仕事も増えそうだ。「作業単価は、農薬の散布と同じです。ドローンを飛ばすのは、電気代くらいしかかからないので、飛ばせば飛ばすだけ儲けに繋がります。飛ばす機会が増えることは、とてもいいことですね。」農業用ドローンは水田直播という、新たな道を切り開いたと言えるだろう。 ■鉄コの作り方ところで、種子を鉄コーティングする作業はどうやるのだろうか。「鉄コーティングはコツをつかめば個人でもできます。鉄コーティングキットも、 10数万円してしまいますが販売されているので、誰でも始めることができます。」ただ、素人が急に実践するには難しい。浸種し、脱水し、コーティングして、乾燥させて・・・、と手順が多い。これら全てを専用機械でやる場合は、その都度機械代がかかる。また、大量生産するには相応の機械も必要になってくるので、導入にハードルはある。佐藤さんは実際に何年も直播をしている農家さんにお願いして、鉄コーティングの仕方を教えてもらったという。そして現在はその農家さんから直接仕入れているそうだ。鉄コーティング種子は一般販売もしている。農家向けホームセンターや農業組合などで購入することができる。逆に言えば、作って、自分が販売することもできる。クオリティの高い鉄コ種子が作れるようになったら、欲しい人にキロ単位で販売するという商売も可能だ。 ■実際に散布に立ち会った実際に田んぼに直播をするとのことで、立ち合わせてもらえることになった。田んぼに到着すると、やはり新しい取り組みだからであろう、近所の農家さんも見物に集まっていた。田んぼ 1反当たりに、 2 kgの鉄コ種子を散布すると丁度いいという。これ以上多いと、ジャングル状態になってしまい、お米の品質は下がるし、刈り取りも難しくなる。まばらなほうが、むしろしっかりと稲が育ち、いいお米が出来上がるという。「ここは 3反だから、 6キロ投入します。」ドローンのタンクに、袋に小分けされている鉄コ種子をザラザラと注いでいく。こぼしてしまうともったいないということで、パイプで自作した漏斗をドローンのタンクに差し込み、種を勢いよく注いでいく。これも現場ならではの知恵だ。赤い錆となった鉄粉が舞い上がり、ドローンのタンクは赤茶色に染まっていく。錆が手についてしまうと、ドローンの機体やドローンのプロポ(コントローラー)も、触ったもの全てを汚してしまいそうだ。ゴム手袋は必須だ。「それでは、離陸します!」
佐藤さんの合図とともに、テイクオフだ。ブーンとドローンは飛び上がり、スタート位置に入るとタンク下部の散布装置から種子が勢いよく放出された。「おお!」と周囲からも歓声が上がる。パチャパチャパチャと水面に種が落ちていることが分かる。このように、ちょっと水を張っている状態の田んぼに散布することが正解だという。あっという間に作業は終わった。 10分もかかっていない。従来の田植えと比べると、 5倍、いや 10倍のスピードだ。畦道を歩き、田んぼの中を確認すると、水中に種がまんべんなく散らばっている様子が見える。直播は無事、大成功だ。ただ、ドローンは錆で赤褐色に汚れるので、掃除は大変そうである。このあとは、 3日ほどかけて、ゆっくり水を抜いていくらしい。そうすることで、鉄コーティングがうまい具合に錆びて、芽が出てくるのだという。ここから先の管理は農家さんの仕事になる。ただ直播すればいいというわけではなく、その後しっかり発芽するまでが大変だ。その点は農家さんも水稲直播農法の知識が必要になってくる。 ■直播の展望いかがだっただろうか。直播をすることで、田植え作業から解放される。これにより、農家さんは、田んぼに入らなくてはいけない回数はたった 2回だけになる。 1回目は、田んぼを平らに整地するレベラー作業で、 2回目は収穫のときだ。またこのレベラー作業も、田植え機をしっかり走らせるために行う作業なので、ドローンで直播をするなら場所によっては省略することも可能になる。そうなると、農家さんは 1回だけ田んぼに入れば良いことになる。種まき、農薬散布、肥料散布までドローンが一括して行えば、農家さんは楽ができるし、ドローン操縦者も仕事ができて儲かる。この直播は革命だ。ドローンが普及すればするほど、直播のニーズも高まることが予想される。間違いなく、直播は、これからの農業ドローンビジネスにおける激アツジャンルなのだ。今回は佐藤さんから非常に有益なお話を伺うことができた。楽しそうにドローンについて語る佐藤さんの笑顔が、農業ドローンの明るい未来を物語っている。完
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