第1章解決!「サンプル、商品の品質」での困った
01「送る」と言ったサンプルをなかなか送ってこない
02トライアルオーダーの商品がサンプルより劣っていた
03サンプルとはまったく違うものが届いた
04サンプル通りの作り直しを要求したいが…
05メールだけの商談で発注した商品に問題が…
06輸入した商品が日本人の体型に合わなかった
07輸入した木製品に割れが入ってしまった
08欠陥電気製品をつかんでしまった
09電気製品の一部が日本仕様になっていなかった
10商品の変質で、商品価値がゼロになってしまった
11相手の梱包が悪く、多くの商品が破損してしまった
第1章解決!「サンプル、商品の品質」での困った
01▼「送る」と言ったサンプルをなかなか送ってこない
展示会で熱い商談をして、展示会終了後に早急にサンプルを送ってくれることになった。
帰国後に何度も連絡を取るが、毎回、同じような定型の返事しか返ってこない……展示会では、輸出者は非常に多くの人間と応対する。
そのために相手を混同したり、話をした相手を忘れたりすることがおうおうにしてある。
たとえば、展示会終了後にサンプルを送ってもらう約束をしていたとしよう。
相手からは、力強く「分かりました、そうします」という約束をとりつけている。
あなたとしては、熱心な態度を示していたので、相手はきちんとサンプルを送ってくれるものと思っている。
しかし、いつまで待ってもサンプルが到着しないのである。
メールを送ると、毎回同じ返事が来る。
こんな感じで。
「お問い合わせをいただき、ありがとうございました」。
これは自動応答のメールなのだ。
これは意外によくあることなのである。
なかなかサンプルを送ってこない場合、3つの可能性が考えられる。
第1の可能性……相手が受注書、もしくは商談記録を紛失してしまっている相手は受けたオーダーを確認できないため、返事ができなくなっているのである。
だから、「何か要求しているようだから、とにかく定型のヒナ型を返信しておけ」となるのだ。
第2の可能性……文化の違い。
具体的には、相手国は日本より時間の流れが遅い私たち日本人にとっての「早急」と、相手の「早急」とのとらえ方の違いである。
たとえば、インド人にとって「早急」とは1週間以内といった話もある。
2~3日待ってもサンプルが届かないと、日本人は、何度も催促をしたりする。
向こうは、「何で同じFAXを何度もよこすんだ。
ちゃんと準備している」といった具合にだ。
第3の可能性……ブースにいた人間とは違う人間が輸出担当者になっている場合と、ブースにいたのが通訳の場合担当者が違う場合、相手の引継ぎが悪いとサンプルの件がうまく伝わらない。
伝え忘れということもある。
例をあげよう。
イタリアでのことである。
興味があって私はブースの担当者らしき人物に話しかけた。
彼は英語を話せないらしく、しきりに誰かを呼んでいる。
呼んでいるほうを見ると、うら若き女性がいるではないか。
早速私は、商談に入って無事商談は済んだ。
だが、日本に帰り、もらった名刺に連絡したものの一向に返事がない。
何度も連絡をとりやっと相手から返事がきた。
そしてなかなか連絡がこない理由がわかった。
もらった名刺は、彼女のものではなかったのだ。
最初に話しかけた担当者らしき人物のものであった。
相手をしてくれた彼女は、そのとき限りのアルバイトだったのだ。
道理で返事が来ないわけである。
相手が英語を読めないせいで、とんだ遠回りをさせられてしまった。
海外の展示会では、学生アルバイトの通訳がブースで説明するようなケースもあるのだ。
商談をしようと名刺を出すと、通訳も名刺を出して来る。
差し出された名刺には、「セールスマネジャー」とか「エクスポートマネジャー」と印刷されているが、それは自分の名刺ではない。
通訳は、会社のそうしたポジションにいる人間の名刺を出しているのだ。
相手がどういう立場の人間で、商談すべき相手かどうかを知るにはどうすればいいのか?そのコツを伝授しよう。
名刺をもらった時、必ずこう確認するのだ。
「これはあなたの名刺ですか?」――返事が「違います」であればその相手との商談は打ち切り、責任のある相手を探す。
「自分の名刺です」であれば、商談に入ればよい。
【POINT】事後▼希望のサンプルの品名と数量、それに輸送方法をメールでこちらから再度送る。
特に受注書や商談記録を紛失してしまっている場合、この方法を取れば相手も理解でき、効果的である。
その際、期限を切って依頼することを忘れてはならない。
02▼トライアルオーダーの商品がサンプルより劣っていた
サンプルを事前に入手。
「これなら行ける」とトライアルオーダーしたが、到着した商品はサンプルより品質が劣るものだった……輸入ビジネスで一番多い問題は、品質に関するものだ。
顧客との商談はサンプルがベースで進んでいる。
そのサンプルでOKも出ている。
輸入者は、サンプルより品質が高い商品が来ることを望んでいる訳ではない。
同じ品質のものが届けばいいのである。
しかし、サンプルがいいからと期待してオーダーすると、圧倒的に品質の劣るものが送られてくるケースが少なくないのが現状である。
現物の品質がサンプルより劣るとなると、納品時に影響が出るのは当然である。
大幅値引きを要求される可能性もあるし、最悪の場合はキャンセルすらあり得る。
まさにひやひやものである。
サンプルより品質の劣る商品が届いた経験は私にも数知れずある。
ある時の相手とのやり取りをご紹介しておこう。
実話である。
「サンプルと現物が違う。
サンプルより悪いじゃないか」「ミスター大須賀、私の目には一緒ですよ」「なに言ってるんだ、まったく違うよ」「ミスター大須賀、だいたい一緒でしょ」「だいたい一緒じゃ、困るんだ。
まったく同じじゃないとビジネスにならないだろう」「そんな細かいこと言われても。
アメリカ人はそんなこと言わない」めちゃくちゃな論法である。
腹がたって仕方がなかった。
もちろんお客様から、納品後、大目玉をくったのは言うまでもない。
【POINT】事前▼サンプルを入手して品質を確認したら、契約書に「品質は入手したサンプル通り」という一項を入れておくこと。
この一項があれば、輸入者は強い態度が取れる。
事後▼前もって入手していたサンプルと届いた商品を並べ、写真に収める。
その写真をメールに添付して相手に送って納得させ、交換もしくは返金、もしくは値引きを要求する。
03▼サンプルとはまったく違うものが届いた
サンプルの出来に満足して待っていると、トライアルオーダーで似ても似つかない商品が送られて来た……サンプルと現物との問題では、届いた商品がサンプルより品質が劣っていたといったケースが圧倒的に多い。
輸入ビジネスでは、これはもう日常茶飯事と言ってもよいものだ。
そうしたケース以外に、届いた商品がサンプルとはまったく似ても似つかないものだったということも起こり得る。
このケースもまた、覚悟しなければならない。
こんなことが起こるとは、私たち日本人にとって信じられないことだ。
しかし、輸入ビジネスの現実では「アンビリーバブルなこと」も起こるのだ。
なぜ、サンプルと現物とでこんな違いが起こるのか?その秘密は、サンプルと現物の作られ方にある。
ここまで明かす本はないと思うが、読者のために公開しよう。
たとえば陶器の場合を挙げよう。
陶器のサンプルを作る場合、モールドを使う。
モールドとは「型」のことである。
ピンとこないであろうか。
いわゆるひな形である。
展示会に出品するサンプルは丁寧に作ったモールドを使う。
その理由は、もちろん商談をまとめたいためである。
展示会用のモールドで作られたサンプルは、実によく出来ている。
「これなら商品になる」とトライアルオーダーを出す。
ここから信じられないことが起きるのである。
なんと展示会用サンプルとは違うモールドを使って商品を作るのだ。
違うモールドを使えば、違うものができる。
これは当たり前のことだ。
なぜ、違うモールドで平然と商品を作り、送ってくるのか?故意に輸入者を困らせようとしているのか、だまそうとしているのか?輸出者がそう考えているとは思わないが、そう思えても仕方がないではないか。
もっともその時の輸出者の弁解は、サンプル用のモールドを紛失したとのことであったが……。
【POINT】事前▼こうしたケースに備えるために、やはり契約書に「契約段階で入手したサンプル通りの品質、形状のものを送ること」を明示しておくことが肝心である。
事後▼前もって保存しておいたサンプルと照合して、その度合いによって交換、返品と返金、値引き等でカバーする。
前項と同じである。
04▼サンプル通りに作り直しを要求したいが…
サンプルとトライアルオーダーで到着した商品を比べてビックリ、サンプルよりはるかに劣っている!さっそく輸出者にクレームを提起したが、「サンプル通りに作るのは可能だが、その分のコストがかかる」と言われてしまった……これもよくあるパターンで、こうした問題をできるだけ防ぐために契約書が重要なのである。
契約書には、「サンプル通りの商品でなければならない」という項目を必ず入れておく。
この一項が入っていれば、輸出者に強いクレームが提起できるのだ。
前章でもちょっと触れたが、契約書は輸出者と輸入者の双方が独自に都合のいいように作り、相手に送り付けてサインを求める。
輸入者が作る契約書には「契約したあとは、いかなる理由があっても、価格のアップは認めない」という条項を必ず入れる。
この一項が入っていないと、何を理由に価格アップを求められるか分からないのである。
輸入者としては当然の項目である。
一方の輸出者は「諸般の事情により、価格が上がることもあり得る」という一項を必ず入れる。
これも、輸出者としては当然である。
このままでは平行線をたどることになってしまう。
そこで、あなたは、削除してほしい部分を指摘して「その部分は認められない、削除してくれ」と申し出るのだ。
こちらの申し出が通るかどうかは交渉になるが、基本的に、相手は削除してくれるケースが多い。
相手がこちらの言い分を認めると、その部分を削除した新しい契約書を作ってくれるのだ。
【POINT】事前▼やはり、契約書に「サンプル通りに作る」という条項を忘れずに入れておくことが重要。
同時に、「契約後は、いかなる事情があろうとも、価格のアップは認めない」旨の条項を入れておく。
この条項は、輸出者が作る契約書にはまず絶対に入っていない条項であり、その意味でも、契約書は輸入サイド(あなた)で作成する必要がある。
事後▼サンプルと違って品質が劣るものであれば、その一点で交渉する。
価格アップは認めない方向であることは言うまでもない。
05▼メールだけの商談で発注した商品に問題が…
ビジネスマッチングサイトで見つけた相手と、メールのみの商談で契約した。
到着した商品の出来栄えが写真ほど良くなく、予定の販売価格で売れなかった……ビジネスマッチングサイトというのは、「海外からこういう商品を売り込みたいという情報を掲載するサイト」のことである。
代表的検索サイトには、次のようなものがある。
中国の製品・メーカー……http://www.alibaba.com/中国、香港の製品・メーカー……http://www.tradeeasy.com/香港の製品・メーカー……http://sourcing.tdctrade.com/韓国製品・メーカー……http://global.kita.net/台湾の製品・メーカー……http://www.trade.gov.tw/欧州全域の製品・メーカー……http://www.europages.com/この他にも、各国大使館、各国商工会議所が開いているサイト、ジェトロのサイト(http://www.jetro.go.jp/ttppj/)もある。
こうしたサイトの写真だけを見て、「この商品はこういう感じだろう」と日本の商品基準で判断してしまうと、相談のようなトラブルを経験することになる。
私の知る限りでも、こうしたトラブルを経験する人はかなり多い。
まず商品は現物を見ないと話にならないということを理解しなければならない。
特に、小口輸入の場合に要注意である。
小口輸入では「扱う商品数が少ないから、まあいいだろう」と油断するあまり、この過ちを犯すことが多いのだ。
【POINT】事前▼ビジネスマッチングサイトでの商品は玉石混交。
どんな場合でも、サンプルを取り寄せて商品を確認したうえで本発注をすべきである。
基本を忘れないこと。
事後▼ビジネスマッチングサイトでは、「実際のビジネスは自己責任でおこなってください」と必ず書かれている。
相手の信用情報などは輸入者側が行なわなければならないということだ。
サンプルの確認をせずに失敗したとしても、その損失は自分がかぶらなければならない。
06▼輸入した商品が日本人の体型に合わなかった
スペインからソファを輸入したが、座面(SH)が日本人には高すぎた。
普通の日本人では足が床に届かない……これは私のケースである。
解決策を先に紹介すると、ソファの木製の脚を切って販売した。
そもそもこの問題は、日本人と外国人(この場合はスペイン人)との体格差から生じている。
日本のソファの場合、座面の高さはだいたい40センチぐらいである。
それが日本での平均的仕様になるが、欧米人は身体が大きい場合が多い。
海外から輸入したソファなどの場合、座面の高さは45センチほどである。
するとどういうことが起きるか。
そうである。
普通の人が腰をかけると足が浮いてしまうのだ。
しかも、彼らは靴を履いたまま座る。
欧米人の文化では人前で靴を脱ぐことは、ないのであるから。
よほど親密でない限り。
対して日本は、室内では裸足かスリッパであろう。
そうしたライフスタイルの違いからも、座面の高さが違っているのだ。
座面の奥行きも日本の場合は狭いが、輸入品は深い。
であるから腰をかけると、なんとも座り心地が悪いのである。
私も、一応は座って座り心地を調べたはずであった。
座り心地は非常に良かったのである。
ただ足が床につくかつかないかはイメージとしてあまり湧かなかったのだ。
その時は靴も履いていたし、私もそう身長が低いほうではないので余計に気がつかなかったのだ。
しかし、日本に輸入したら、お客様から指摘を受けた。
「体格の良い人なら大丈夫でしょうが、普通の体格の日本人、特に女性は足が浮いてしまって座りづらいのです」その時に初めて、私は気がついたのだ。
プロとしてお恥ずかしい限りである。
【POINT】事前▼メーカー(輸出者)に、発注の段階で高さを指示すること。
事後▼ソファの脚が木製であれば、脚部を切って低くすれば解決する。
ごまかす訳ではなく、自分からマイナスの情報を明かす必要はない。
「困った」ということで頭を抱えず、「何か方法があるんじゃないか?」と考えるのだ。
たとえば、大柄な人向けのコーナーを作るとか、デパートのキングサイズコーナーで販売してもらうようにする。
「日本仕様では小さくて困っている方に朗報、欧米仕様のソファ」という打ち出し方もあるであろう。
07▼輸入した木製品に割れが入ってしまった
オランダから天然杢のテーブルを輸入したが、湿度の違いで天板に割れが入ってしまった。
商品価値がないものとあきらめるしかないのか……天然杢は、別名を「一枚板」とも「無垢板」とも言う。
問題の商品は、天板が一枚の板でできているテーブルである。
木製品の場合、湿度が変わると割れが入ることがあるのをご存じだろうか。
まず「木材は生もの」という感覚をもつ必要がある。
そのリスクを考えると扱わないことが一番なのだが、木製品には捨てがたい魅力があるのだ。
その魅力とは?ズバリ、利幅が取れることである。
木製品はハイリスク・ハイリターン商品ということだが、ヒビ割れなどの問題がどの程度の率で起きるのかということがポイントになる。
扱うのであれば、歩留まりを想定して、最初から採算に織り込んでおくとよい。
では、どれくらいの歩留まりを想定すればいいのか?私であれば、歩留まりをだいたい90%程度に想定する。
不良品、あるいは不良品になるリスクを10%見込むということだ。
値決めでは、90%の商品で商品価値を失った10%分の利益をカバーできる価格にするのだ。
もっとも不良品が10%というのは、中国からの輸入を想定しての数字である。
欧米などからの輸入では、2~3%程度と考えてよいだろう。
現実を見るともっとひどい商品もあるが、これ以上になると完全に商品ではない。
たとえば10個輸入して5個に問題があったような場合、その商品は欠陥商品と言うしかないだろう。
そうした商品自体の欠陥であれば、リスクも歩留まりも何もないのであるが。
最終的には私が扱ったオランダのひび割れ商品は廃棄処分にした。
業者に依頼して修理する手もあったが、修理にかかる費用が高い。
オランダに返送して修理するという話もあったが、輸送料金だけでもかなりの金額になってしまうのであきらめることにしたのである。
ちょっとしたひび割れ程度であれば、それを承知で購入するお客様がいないとも限らない。
しかし、そうした販売にも耐えられないほどのひび割れだった。
残った選択が廃棄処分だったわけで、今でも忘れられない悔しい思い出の一つである。
もうひとつ木製品で思い出したことがある。
日本で木製品を買う場合、「これは何の木ですか?」と、私たちは必ず材料を聞く。
応対に当たる人間は、「これは○○の木です」と答えてくれるのが普通である。
使われている木材名を聞き、値段やデザインも見比べたうえで買うか、買わないかを決める。
これは、輸入業者にとっては、当たり前すぎる選択である。
ところがである。
木製品を扱っている中国の輸出者に、同じ質問をしたことがある。
「これは木です」「木は分かっているよ。
何の木なのか、木の種類が知りたいんだ」「木でいいじゃないですか、何でそんなことを気にするんだ?」「日本では、使われている木の種類によって値段が変わる。
木の種類はとても重要なんだ」「そうですか、何と言えばいいのかな?中国語では分かるけど、英語で何と言うのか分からない。
そちらで調べてくださいよ」調べてみると、答えは「雑木」だった。
雑木とは「名前がついていない木」だから、何と言えば良いのか分からないのだ。
おそらく、裏山などに生えている木を適当に伐採して使っているのだろう。
良く言えば一点ものの工芸品、悪く言えば素材も分からない製品。
とりあえず一つだけをサンプルとして輸入するとお客様が気に入り、大量のオーダーを頂いてしまった。
雑木を使っていることは明らかだったから、どんな商品が到着するのかハラハラものであった。
「まったく違う木を使った製品が届いたりすると困るな」こんな心配をしていると、不安は的中した。
追加オーダーで届いた商品は、使われている木が明らかに違う。
色合いもまったく違い、とうていお客様が満足するような代物ではなかった。
私は、大幅値引きを飲んで泣く泣く納品したのである。
感覚の違いの典型的な例である。
【POINT】事前▼基本的には、この種の木製品は扱わないことが一番。
扱うのであれば、こうしたケースは必ず起こり得ることを理解したうえで、輸入する覚悟が必要。
また、最初から、ある程度の歩留まりを見て採算に織り込んでおく必要がある。
事後▼修理はかなり高くつく。
ひび割れの程度によっては、廃棄処分しかない。
08▼欠陥電気製品をつかんでしまった
見てくれが良く、安い価格を提示されたため、ドライヤーを大量に発注した。
実は欠陥商品で、5~6回使うとショートしてしまう劣悪商品だった……電気製品で、こうしたパターンはよくある。
ここに挙げた例のように、見かけ上は良いが、5回ほど使うとショートしてしまうドライヤー。
しばらくすると映らなくなってしまうテレビなど、潜在的な欠陥を持っている商品があることを認識しなければならない。
輸入した商品の大部分でこうしたトラブルが起きたとしても、事実上、返品不可能である。
だから、デザインが気に入ったとか、多少価格が安いとか、1回使って大丈夫だったといったことだけで輸入してはいけない。
このケースでは、欠陥電気製品を輸入して何か事故が起こり、PL法(ProductLiabilityLaw=製造物責任法)に問われなかっただけでもよしとしなければならない。
輸入者は、PL法では製造者としての責任を問われるからである(PL法については「第4章12▼PL法(製造物責任法)対策を講じたいが…」参照)。
そこまでひどくはないが、仮に100台輸入して3台から不具合が見つかったと想定しよう。
日本の常識ではこのくらいの不良品率であっても欠陥商品扱いになる。
だが、海外からの輸入ではこれくらいの歩留まりであれば欠陥商品とは言いづらい感じなのである。
こうした場合、3台分の商品から得られる利益は、どうカバーしたらいいのか。
なにか良い方法がないか?それを伝授しよう。
「この前の製品には不具合な商品が3台混じっていた。
今回のオーダーで、その3台分を値引きしてほしい」もちろん同じ取引相手にしか通用しないが、3台分の代金を送金してもらうより、この方法のほうがはるかに現実的だ。
さらに、お互いの友好関係を維持しやすいのだ。
【POINT】事前▼まず電気製品はこうしたことが起こりがちであることを認識すること。
だからこそ、少量のトライアルオーダーをして一度様子を見るステップを忘れてはいけない。
そして、まさかの時に備え、PL保険(製造物責任保険)には必ず加入しておくこと。
事後▼「損切りはやむを得ない」と考え、自主回収するしか手はない。
「お客様にケガをさせなかっただけよかった」と思わなければならない。
09▼電気製品の一部が日本仕様になっていなかった
テーブルランプのコンセントが、日本仕様になっていなかった。
このままでは販売できないが、打つ手はないものか……テーブルランプには、コンセントがついているタイプが多いであろう。
そのコンセントだが、日本では差し込み口が違うのだ。
そしてボルト数は100ボルトである。
これが問題になるのだ。
私の知る範囲では、100ボルトを使っているのは、日本と韓国しかない。
つまり大概の国の電化製品は、そのままの仕様では使えないのである。
あなたも海外で日本の家電製品を使えず困ったケースがおありであろう。
輸入ビジネスに慣れていないと、デザインばかりに気を取られて輸入し、こうした点をうっかり見逃してしまう。
製品が到着して初めて気づき、頭を抱えるのだ。
日本で使える仕様になっていないので、このままでは国内で販売できない。
「このテーブルランプは実際には使えません。
デザインがいいですから、部屋のインテリアとしてお使いください」お客様にこんなことは言えない。
ただし、対応は可能である。
プラグは電気屋に行けば手に入るし、それを付け替えれば日本仕様のプラグになるのだ。
私も社員総出で直したものである。
辛い作業であった。
輸入してしまった以上、何とか販売にこぎつけないと丸損になってしまうではないか。
不良在庫にしてしまうと、利益がゼロだけでは済まない。
貴重な資金を眠らせてしまうことになってしまう。
「これでは売れない」と嘆くのではなく、「売るために、何か方法はないか?」と考えるのだ。
起こってしまったことは、仕方ない。
これからどうするのかを、考えていくのである。
【POINT】事前▼まず重要なことは、この輸出者が日本と取引をしたことがあるかどうかである。
日本の業者と取引した経験があれば、少なくともこうしたことは起こらない。
この点を確認しておくこと。
また、日本仕様への変更を契約書に明記しておくこと。
契約書に明記されていれば、相手は契約を守るものである。
事後▼輸入後でも、日本用の仕様に変えることは可能である。
自社でやることもできるし、業者に依頼して変更してもらう方法もある。
10▼商品の変質で、商品価値がゼロになってしまった
イタリアからキャンドル(ローソク)を海上輸送で輸入したが、コンテナを開けてビックリ。
全部溶けてしまっていて、まったく商品にならない……輸入ビジネスを始めたばかりのころの私の失敗である。
意外に気づかずに似たような失敗をする初心者は少なくない。
普通の生活をしていると、こんなことが起こるとは夢にも思わないからである。
ローソクが溶けたのは、商品を輸送する船が赤道を通ったからだ。
ひとたまりもないであろう。
輸出者なら、船が赤道を通ることぐらい知らないのか?自分自身の無知を棚に上げてこんなことを思って悔しがったものである。
結論を言えば、知らないと考えておいたほうが良い。
日本が「ファーイースト(極東)」と呼ばれるのはご存じだろう。
日本で売られている世界地図では日本が中央に描かれ、ファーイーストはアメリカのほうである。
ではなぜ、日本がファーイーストと呼ばれるのか?この疑問は、世界標準の世界地図を見れば即座に氷解する。
世界標準の世界地図では中央にヨーロッパがあり、日本は東の端に描かれている。
だから、日本はファーイーストになるのだ。
ヨーロッパ人のなかで、日本は極東にあると知っていればまだ良いほうだ。
まず、日本がどこにあるかすら知らない輸出者も多いのだ。
私が初めてヨーロッパに行ったのは今から32年前、大学生時代のことである。
ロンドンからマドリッドに入り、トレド、セビーリャ、コルドバ、グラナダ、バレンシアと放浪の旅を続けた。
スペインでは、なぜか私のことを「チノチノ」と呼ぶのだ。
当時は分からなかったが、これは中国人を意味するスペイン語だった。
私のことを東洋人とは分かるが、日本人とは分からない。
その当時、日本人は田舎では珍しかったのだ。
中国人と間違えるのも無理はない。
「私は日本人だ。
日本から来た」「日本?日本って、どこにあるんだ?」今でも、怪訝そうな彼らの顔はハッキリ覚えている。
現代日本には、当時にも増して世界中の情報が洪水のように押し寄せてくる。
日本人ほど、世界情勢に通じている国民はいないのではないかと思う。
対して、現在でも、他の国々には自国以外の情報はそれほどあふれていないのだ。
日本がどこにあるかを知らなければ、どうだろう。
彼らが、日本への海上輸送では炎熱下の赤道を通ることなど思いもよらなかったとしても不思議はない。
コンテナは鉄板とかアルミでできている。
甲板上に船積みされているから、赤道を通過する際など、直射日光が当たってコンテナの内部は100度を超えるのだ。
これくらいの高温になると溶けやすいものは言わずもがな、そうでなくても何がしかのダメージをこうむって品質が変わってもおかしくはない。
くれぐれもご注意召されよ。
【POINT】事前▼あまり考えないことだが、ヨーロッパから海上輸送されるコンテナは赤道を通る。
その際、コンテナの内部は100度以上になるため、キャンドルなどは溶けてしまう。
高熱でも問題のないものは普通のコンテナでもよいが、溶けたり、変質したりすると商品価値がなくなるもの(ワイン、食品関連)は、契約書で「リーファーコンテナ(冷蔵庫付きのコンテナ)」を使うよう指示しておく。
リーファーコンテナでもリスクが考えられる場合、海上輸送はやめて空輸するケースも多い。
事後▼商品価値ゼロだから、打つ手はない。
いくら惜しくても、廃棄処分にするしか方法は残っていない。
11▼相手の梱包が悪く、多くの商品が破損してしまった
到着した商品を倉庫に搬入しようとコンテナを開けたら、90%以上の商品が破損していた。
さっそく保険会社に連絡すると、「輸出者の不完全梱包が原因で保険は不適用」との回答が返ってきた……これも私の事例だが、こうしたケースで思わぬ損害をこうむった人は少なくないはずである。
まさに「やっちまった」という感じである。
その商品とは、中国製のプランター(鉢カバー)であった。
ホームセンターなどで販売しているプランターはプラスチック製のものが多いが、それは陶器製だった。
コンテナを開けて商品を手に持った瞬間、ガラガラッと音がした。
「何だ、どうした?」社員の驚きの声。
プランターは大中小の3個が入れ子で、1セットになっていた。
その3個のプランターの間には汚れた薄いダンボール1枚がはさまれているだけで、緩衝材がまったく使われていないのだ。
あり得ないではないか。
輸入ビジネスを始めたばかりだった私は、輸出者はきちんと梱包して送ってくるものと思い込んでいた。
信じきっていたのだ。
海上輸送すると、当然、商品が積まれたコンテナは揺れる。
梱包とも言えないこんな梱包では、プランターが破損するのは当然である。
その梱包には唖然とした。
しかし万一の輸送リスクを考えて海上貨物保険に入っていた。
入っていたのは、「オールリスクA/R条件」である。
「この保険に入っていれば大丈夫。
すべてのリスクがカバーされる」当時の私は、こう思っていた。
ほっとした。
まさに地獄に仏である。
しかしこれからは、まったくしゃれにならない。
オールリスク保険と言えど、輸出者の不完全梱包は保険の対象にならない!私は、きちんと認識していなかった。
「大須賀さん、梱包状態が悪すぎます。
これは輸出者の不完全梱包で、保険の対象にはなりません」「オールリスクA/R条件は、オールリスクをカバーするって言ったでしょ?私は、しっかり聞きましたよ」「輸出者の不完全梱包は保険対象外です。
梱包条件を契約書に明記しなかったのですか?」輸出者の不完全梱包は保険対象外であることも知らなかったし、契約書に梱包条件も明記していなかった。
私は、黙るしかなかったのである。
唇をかんだ。
覚えておられるだろうか?相手の梱包不良以外にも、オールリスクA/R条件ではカバーされないトラブルがあった。
それらについては前章の「序章15▼商品の保険はどうなっているのか?」を参照してほしい。
結局、この件では80万円ほどの損害をこうむった。
この時はこれだけの損害ですんだが、高価な商品であればとんでもない損害になっていたであろう。
しかし、話はそれで終わらなかった。
売り物にならなくなった陶器製のプランターの処理が残ったのだ。
捨てる場所に困って業者に依頼して処理してもらったが、その処理費用も自己負担になってしまった。
こうした状況を「泣きっ面に蜂」と言う。
それ以降、梱包状態は、微に入り細にわたりチェックすることを忘れたことはない。
【POINT】事前▼商品梱包は見落としがちなポイントである。
契約前に、輸出者のカートン状況(どういう梱包状態で商品が輸出されるのか)をチェックしておくことでトラブルは防げる。
契約書にも梱包条件を明記しておけば、違反して保険対象外になった場合も先方に損害賠償請求ができる。
事後▼事前の防止策を講じていなかったのだから、あきらめるしかない。
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