第4章リモート輸入ビジネスの「商談・契約」の仕方
1「顔見せ」で相手の信頼を得る
オンラインでも「顔見せ」が大事
コロナショックを機に、輸入ビジネスでもオンライン化が一気に進みました。つい最近までは考えられなかったことが、次から次に可能になっています。
昔は手紙のやりとりが主でしたが、 FAXへと変わり、さらにはメール、そして、今はオンラインとなっています。私が輸入ビジネスを始めた頃は手紙が主流で、 1回のやりとりに2週間近くも要していました。
それが今や、オンラインによってリアルタイムで取引ができてしまうのですから、このスピード感はうれしくもあり、少し寂しさも覚えます。
コロナ禍でオンライン展示会が広がり、海外の展示会に足を運ばずとも商品が発掘できるようになったことで、気軽に参入しやすくなったといえます。
オンラインで商品を確認し、オンラインで注文。基本的にはメールでやりとりを行い、必要であればオンライン会議システムで顔を合わせて商談する。
英語が苦手だとしても、メールベースであれば、じっくりと文面を翻訳したり、文面をつくったりしながら、商売ができてしまいます。
ただし、メールだけのやりとりは「こちらの情熱を伝えづらい」というデメリットもありますし、信頼を得にくい一面もあります。
英語力に不安があっても、メールでコンタクトを取った後は、オンライン会議システムを使って、顔を見せあって話しましょう。
顔を見て話すことで、相手が抱く信頼も増します。ビジネスは、人が主体です。
お互いに「相手はどんな人なのかな」とおそるおそる探りを入れながら商談を進めるより、相手がどんな人なのか、どんな気持ちでビジネスをしているのかがわかっていたほうが、信頼関係を築きやすくなるのです。
「世間話なし」で本題に入れる
オンライン商談の特徴は、「いきなり本題に入れる」ことです。オンライン商談ではお互い、時間に対するコスト感覚が発生するせいか「簡潔に話をして結論に至ろう」という心理が働きます。
そのため、「ただの世間話」で終わってしまうことが少なく、 1回の商談ごとに何かしらの結果がついてきます。合理性を重んじる欧米人との商談では、オンラインで 1回顔合わせしただけで、だいたいの取引内容、契約内容が固まってしまうことも少なくありません。
商談では、まず、商品への愛情を伝え、「何をなぜ輸入したいのか」「どのような形でビジネスをしたいのか」をメインに話すことで、初回の商談からスピーディなやりとりをすることが可能になります。
オンラインでは文章だけのやりとりになりがちです。ただ、その文章の先には「人」がいることを意識しながら、商談、交渉をしていくことが重要です。
たまには顔を合わせて話をしましょう。これだけでも相手からの信用は自然と上がっていくのです。
2「契約書」はよく読んでからサインする
サインした後で文句を言っても遅い 海外、とくに欧米は契約社会であり、何事も契約を軸に話が進みます。
一方日本では、一部の大企業は別として、まだまだ、事前に契約書を交わしての取引が習慣となっていないため、契約書に疎い人が多いのが実情です。
しかし、輸入ビジネスは、海外のメーカーを相手にするわけですから、契約書が重要になります。
ひとたび契約書にサインした後「こんな契約はおかしい。不当だ」と騒いでも、時すでに遅し。契約書に則った取引条件で進められてしまいます。
契約書に書いてあることを覆すような主張は受け入れられません。それが契約であり、契約書なのです。輸入ビジネスをするうえで、契約書について、基本的なことは知っておきましょう。
契約書は納得したうえでサインする
契約書は、輸入者(あなた)と輸出者(メーカー)、どちらがつくるものなのか、という質問をよく受けますが、どちらがつくっても構いません。
ただし、自分に有利な条件を提示しやすくなるため、できるだけ自分でつくったほうがいいでしょう(詳細は後述します)。
しかし実際は、「先方が送ってきた契約書にサインする」ケースが圧倒的に多いのです。さらに、「契約は形だけ」という日本の商習慣から、契約書をよく読まずにサインしてしまう人が少なくありません。
契約書は、つくり手に有利なように書かれているのが基本です。契約書をよく読まないままにサインしてしまうと、あとでとんでもない目に遭う場合があります。
相手先が契約書を作成する場合は、必ず、記載されている内容は正しいか、不利なものになっていないか、さらに書かれていないことはないかを確認し、相手と交渉して納得のいく契約書に仕上げてから、サインをし、ビジネスを進めましょう。
契約書を作成する際に重要なのは、「落としどころ」を探ることです。
意見がぶつからなければそのまま契約しても問題はないのですが、双方の意見がぶつかった場合は自らの譲れない部分と譲歩できる部分の線引きはハッキリとさせておきましょう。
ぶつかった場合は何度かの書面のやりとりで双方の主張をすり合わせを行います。一方的に不利な条件を飲む必要はありません。
ただこの間も「表面約款」と呼ばれる表面の契約内容で商品のやりとりはしておきましょう。
商品の到着日時や代金の支払い方法など、お互いが合意できる内容だけを盛り込んだもので、基本的にはこれだけでも取引が可能なのです。
現場で商品をやりとりし、ビジネスが始まってしまえば、「裏面約款」に関してはなし崩し的に条件が緩和したり、こちらが提案した条件のまま契約となったりします。
裏面約款でもめた際は、まず実際に取引をしてしまうこと、これが重要です。
3契約書は表と裏で決めることが違う
「表面約款」と「裏面約款」 いざ契約書をつくる場合、何を書けばいいのか、また、相手から契約書が送られてきた場合、どのようなポイントをチェックすればよいのか、知っておくことが必要です。
契約書は通常、表面に「個別条項」を記載し、裏面には「一般条項」を記載します。それぞれ「表面約款」「裏面約款」と呼ばれます。
表面約款(表面)には、商品の注文量、取り扱う商品名、商品の値段など、取引ごとに毎回変わるものについて記されます。裏面約款(裏面)には、不良品についての対処など、契約期間中、継続して有効となるものが記されます。
それぞれ押さえておきましょう。
「表面約款」の代表的な項目 表面約款に記される「個別条項」の代表的なものは、次の 10項目です(付録 9参照)。
1 商品名( Article) 商品名を簡潔に記します。
2 品質条件( Quality) 品質についてのトラブルは非常に多いため、「品質条件」は重要です。不良品などの対応のために、本オーダーの前に必ずサンプルを入手し、次のように記載しておきましょう。
「As per the samples submitted(提出されたサンプルどおり)」 こう記しておけば、サンプルと仕様が異なるものが届いた場合に確認することができます。
3 数量( Quantity) 商品の数量は、国際取引で使用される単位で記載します。
「本、個( PIECE = P C)」「台( SET)」「ダース( DOZEN = D Z)」「組( UNIT)」「長さ( METER = M/ YARD)」「重さ( METRIC TO N = KILOTON = MIT/ KILO GRAM = KG/ POUND = l b)
4 価格( Price) 事前に合意した商品の価格を指定の通貨で記載します。米ドル建てなら米ドル、ユーロ建てならユーロで表示します。
5 合計額( Total Amount) 今回の取引金額の合計を記載します。
6 貿易条件( Trade Terms) 貿易条件とは、インコタームズと呼ばれる世界共通の条件であり、アルファベット 3文字で表記されます。
輸送の際のリスクや費用の負担について、どちらがどこまで負うのかを取り決めた建値条件と呼ばれる条件を記します。その建値条件がどの種類かを表すもので、重要な項目の1つとなります。
7 支払条件( Payment) 電信送金( T/ T)など、どういった条件で、どのように支払うかを示すものです。具体的には、「 T/ Tで前金 30パーセント支払い、船積み後 70パーセント後払い」といったものが記載されます。
8 船積み日・出荷日( Shipment) 納期にも関連するため、日付は正確に指定しましょう。日本国内の取引ではほとんどの場合、事前に商談したうえで商品の納入日を決めており、国内での納期が遅れた場合、お客さまとの間でトラブルになるということがあり得ないわけではありません。その観点から、輸入の際の納期遅れについてはメーカー側に軽いペナルティ条項をつくっておくべきでしょう。
9 仕向け地( Destination) 貨物の仕向け地(到着地)がどこかを指定します。
10 荷印( Shipping Marks) 通関時の貨物の特定、船積書類との照合のために必要になります。
特定の決まりはないので、好きなデザインをし、あなたがメーカー側に指示したほうがわかりやすいでしょう。
とくに「 2 品質条件」と「 8 船積み日・出荷日」は綿密に確認しましょう。
トラブルになりやすい部分
契約を巡るトラブルになりやすいのは、大きく分けて次の2つです。
1 品質・数量に関するもの・品質不良……契約したものより品質が劣る・規格相違……契約したものと規格・仕様が違う
・量目不足……契約した数量より少ない・梱包不良……梱包が不完全なため、荷傷みが発生している 2 船積みに関するもの・船積相違……契約品以外のものが積まれている・船積遅延……契約した期日に船積みされていない 相手に品質・納期がいかに重要かを、繰り返し説明しておくことが大切です。
とくに品質に関しては、必ず事前にサンプルを入手しておきましょう。納期に関しては、定期的にメールなどで進捗状況を確認することをオススメします。また、「急な価格変更」と「納期の遅れ」もトラブルが起きやすいです。
この2つを守らせるためには、次の3つを契約書に盛り込んでください。
- 価格に関する調整禁止( No Adjustment)
- 船積期間の厳守( Shipment)
- 契約不履行の場合の輸出者責任
この3つは、相手方のつくった契約書には当然含まれていません。自分で契約書を作成できない場合は、この3つの項目を盛り込んでもらうよう交渉しましょう。
調整に時間がかかるときは「表面約款」のみで合意を
ほかにも、出荷する前に直してほしい点など、商品に関する指示がある場合は必ず契約書に盛り込みましょう。いくら口頭やメールで念を押しても、契約書に明記されていなければ、合意がなかったことと同じにされてしまいます。
たとえば、電化製品を輸入する際には「日本仕様のプラグに交換する」など、指示は明確に記します。
もし、このことが契約書に記されていないと、メーカーから欧米仕様のプラグのまま納品されても、変更の対応がされないこともありえるということです。
輸出者・輸入者がそれぞれ自分に有利なように契約書を修正し、その契約書を相手に送って相手がサインするのを待つことになります。
このままお互いに自分の立場を貫けば、永遠に取引は始まりません。そのようなときは、「表面約款」のみでひとまず合意するように提案しましょう。
表面約款には「商品の到着日時」「代金支払いの方法」など、どちらも合意できた内容だけを書きます。裏面に書かれている、まだ合意できない一般条項についてはサインしないでおき、ひとまず表面約款だけで合意を取り付けるのです。
表面約款だけで取引をスタートさせ、裏面約款については修正を繰り返しながらお互いに妥協点や着地点を模索していく形でビジネスを行います。
実際にビジネスが始まってしまえば、裏面約款についてはそのままで取引する場合がほとんどです。
大手の企業や世界的規模の企業のように取引金額も大きく、かつ長期間にわたる取引関係が考えられる場合は別ですが、お互いが中小企業の場合は、契約関係のやりとりに時間をかけすぎることによって商機を失うということにもなりかねません。
実際、なし崩し的にオーダーベースで始めることも多くあります。結果、そのままの流れで裏面約款にサインをせずに取引が続くことになります。
取引している間に、メーカーとの関係性や条件もだんだん定まってきたら、そのタイミングで合意点を決めるのが得策です。その頃には「商品が日本で売れるかどうか」もある程度見えてきているはずです。
今後もメーカーと取引を継続する場合、裏面約款もきちんと精査して結べばいいとするのが実務的です。
4不利な提案は「有利な条件」に変える
どちらかが「ちょっとだけ有利」になるよう交渉を終える
欧米人は「公平さ」を重要視します。売り手、買い手のどちらの立場であっても、「公平さ」は重要なポイントです。「お客さまは神さまです」に代表される「買い手優位」は日本独自のものであり、海外の人々には理解しがたいものなのです。
「どちらかが一方的にリスクを負う」という発想は存在しません。国際ビジネスにおいては、売り手と買い手の関係は五分五分であることがスタンダードとされています。
相手が必要とする商品やサービスを提供し、その結果として正当な対価を得る、という感覚が当たり前なのです。一方的に相手へ要求を突きつけすぎないことが重要です。
相手と長く取引関係を続けるためには、交渉後に「相手と自分はほとんど差のない商談だったな」という印象を持ってもらうのがベストです。
ただし、条件がなかなか折り合わないときは、メーカー側がちょっとだけ有利に終わる交渉があってもよいでしょう。それが相手のプライドを守ることにつながり、次回の商談に気分よく臨んでもらえます。
そして次の契約時に、こちらがちょっとだけ有利な条件を提案してみるのです。「一方的に要求を突きつけても、得られるものは少ない」と覚えておきましょう。
相手に気づいてもらう もし、不利な条件を突きつけられたときは、相手の話をよく聞き、意向を確認しましょう。そして、相手の立場を尊重したうえで、「もしもあなたがこちらの立場だったらどうか」と、尋ねてみましょう。
「自分が相手の立場だったらどう思うか」を考えてもらうのです。
そうすることで、不利な条件による不利益に先方自身に気づいてもらい、条件を修正してもらうのです。お互い、理解しあうことで、よりよい関係を築くことになります。交渉において重要なことです。
5わからないときはとりあえず「 NO!」
すぐに「 YES」を言うのは危険
海外と日本とでは文化も商習慣も違います。そのため、思ってもみない条件を提案してくることがあります。判断がつかないとき、わからないときは、とりあえず「 NO」と言うことです。私が数々の商談を経験したうえで覚えた鉄則です。
よくわかっていないのに安易に「 YES」と言ってしまうことで、あなた自身が理解できていない事柄が契約内容に盛り込まれてしまい、気づいた時には不利益が生じているといった事態が起きてしまうリスクを避けられるからです。
日本人は、相手の話を聞くとき、「はい」「 YES」「うんうん」といった相槌を打ちがちです。
それは、「相手の話を聞いていますよ」という合図であったり、「うんうん、それで」と相手の話を促したりするためのものですが、相手は、「自分の主張に完全に同意したという返事だ」と認識します。
そのため、「 YES」と言ったという前提で話がどんどん進んでしまうため、後で「そんな話は聞いていない」「それに同意した覚えはない」とあなたが主張しても「あのときは同意したのに、すぐ意見を変えるなんて信用ならない」と思われてしまいます。
あなたが損してしまうことになるのです。安易な「 YES」は絶対にやめましょう。
「NO」で相手の反応を見る
相手の言っていることが理解できない時は、「 NO」と突っぱね、相手の出方を見ましょう。
「NO」と言われることで、あなたにとって不利になりかねない話であった場合は、「『 NO』と言ってくるということは、厳しすぎたのかな」と、相手から別の提案をしてくれる場合もあるでしょうし、あなたにとって有利な条件の話であったなら、「悪くない話なのに、なぜ、こんな反応なのだろう?」と、相手は不思議そうな顔をするはずです。
海外との商談は、基本的に英語で行われます。英語での商談で最も危険なのは「わかったつもり」です。話がよくわからなかったり、判断に窮した場合は、「同意をしない」「うなずきを控える」こと。これが鉄則です。
相槌代わりの「 YES」は、後で取り返しのつかない事態を招く危険性があります。
オンラインなら「聞き返し」もしやすい
オンライン商談は、ネット環境によって、相手の言うことが聞き取れないことが多く出てきます。そういう時は、臆することなく聞き返しましょう。
ネット環境の影響で聞き取りにくくなることは、お互い理解のうえでオンライン商談をしています。聞き返すことは、決して失礼にはなりません。
聞き取れなかったら、即座に聞き返し、一つひとつ理解したうえで商談を進めるようにしましょう。また、聞くことはできたものの、意味がわからなかったときも、同様に聞き返しましょう。
相手は聞き取りにくかったのだろうと、教えてくれます。リモート輸入ビジネスにおいて、認識の相違や齟齬は、致命的なトラブルの種になることがあります。お互い理解しあいながら、商談を進めましょう。
英語が心配な場合は、はじめから通訳をつけましょう。日常会話とビジネス会話は違いますので、少しでも不安があるのであればプロに頼んだほうが安心です。
現地の展示会でアテンドしてもらうより価格が抑えられますし、最近は、オンラインに特化した、価格帯の安い通訳も増えていますので、活用するといいでしょう。
6「嫌な取引相手」はなるべく避ける
「B t o B」だからこそ、人間関係が重要になる B t o Bは基本的に「商売人同士」、いわばプロ同士の取引です。その商売形態上、商品よりももっと大事なことがあります。「人間関係」です。
ビジネスですから、消費者から起こるようなクレームなどは発生しないものの、交渉を重ねたり、手続きを行ったりするなかで、人間としての「性格の不一致」や「認識の違い」からトラブルになることがあります。
お互いに不信感を抱いたり、ギクシャクしたりと、取引自体がうまくいかなくなることも往々にしてあります。そのようなときは、取引を停止しましょう。
ただでさえ海外とのやりとりは、ちょっとしたことが原因ですれ違いや、齟齬が出てきてしまうものです。お互いを信頼しあい、真摯にやりとりすることが輸入ビジネスでは欠かせません。
どんなにほかの条件が魅力的だったとしても、不信感を抱いている相手とは、関係を続けようと頑張っても、長続きさせるのは難しいでしょう。
B t o Bという性質上、同じ取引相手となるべく長く付き合うことが望ましいもの。信頼できない相手、嫌な相手とのビジネスは深追いしないほうが賢明なのです。
「1回だけの取引でよい」と割り切るのも有効
ギクシャクした関係にならないようにするには、「必ず1度は担当者の顔を見ながら話す」ことに尽きます。
わざわざ現地まで出向かなくても、オンラインで話ができるのですから、面倒くさがらず、一度はミーティングをしましょう。顔を見て話すことで、相手のことがある程度わかるようになり、たいていのことは許容できるようになるものです。
「担当とは気が合わないけれど、商品がいいので、どうしてもあきらめきれない」という場合は、契約を継続し続けるのではなく、一度きりの取引とするのも手です。
一度、多めに仕入れて、クラウドファンディングなどで小売りをして儲け、それっきりの付き合いと割り切るとよいでしょう。
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