第4章有利な輸入契約の結び方
独占販売権の取り方の秘密
独占販売権のメリット、デメリットとは
貿易条件(トレードタームズ)とは
輸送、保険、通関はすべてプロに丸投げすればいい
相手の送ってくる契約書には、無条件でサインしてはいけない
契約書のベースは裏面にある──裏面約款を書く時の注意点
契約書の表面には、具体的な数量、期日を書く──表面約款の書き方
契約書にナーバスになりすぎる必要はない
●ビジネスコラムなぜ人は、笑顔に弱いのか?笑顔を戦略的に使え!(赤ちゃんの笑いの正体は何か!?)
第4章有利な輸入契約の結び方
独占販売権の取り方の秘密
独占販売権というと、個人で獲得するのはたいへんと感じられるかもしれない。しかし、この権利の獲得なくしては輸入ビジネスのうまみはない。また、前章までにお話しした通り、決して獲得は難しいものではない。
要は、交渉のやり方次第なのである。相手からすると、自分の商品を売ってくれるのなら、大会社だろうと、個人だろうと誰でも良いのだ。
さて、独占販売権の契約の方法には主に次の2つがある。
- ①メーカーのすべての商品を独占的に輸入・販売する権利
- ②あなたが選んだ商品、アイデアを出した商品を独占的に輸入・販売する権利
本当に小さなメーカーが相手ならともかく、個人で輸入ビジネスを展開しようとするあなたがこの権利を獲得するのなら、②の権利の獲得から始めることが無難である。
最初は、小さな権利の方が大きな責任を持たずに済むし、メーカー側もあなたに権利を与えやすい。それではあなたが独占販売権を獲得するコツはどこにあるのだろうか?これも2つの状況に合わせた方法が2点ある。
①メーカー側に、日本への輸出実績がない場合
②メーカー側に、日本への輸出実績がある場合
あなたにとっての狙い目は①である。
小さなメーカーや、新しく立ち上げたメーカーは、日本の輸入業者とのかかわりがまったくないことが多い。これはやりやすい。当然、多くのメーカーにとって、日本市場への輸出は魅力的だ。
誰もライバルがいないということであれば、あなたが独占販売権を獲得しやすくなることは言うまでもない。また、その会社のトップと直接話せるケースが多く、信頼関係でビジネスができる可能性がある。
この場合、どういう交渉になるかというと、こうである。メーカーは1年や2年と期間を区切って、あなたに独占販売権を与えようとする。
売り上げが良ければ延長を望んでくるし、悪ければあなたに長期の独占販売権を与え続けたくない、というのは理屈として当然だろう。そこであなたは、できるだけ長い契約を望み、メーカーは、できるだけ短い契約を望むだろう。ここが最初の攻防になる。
あなたが「自分と契約すればいかに有利か」ということを熱心に説けば、彼らにとって日本への窓口はあなたしかいないのだから、あなたに有利な独占販売契約を結べる可能性があるのだ。
「あなたの商品を東京の展示会に出品します」これは独占販売権を獲得するうえでの決め台詞になる。中には、東京の展示会(見本市)に出品した経験のあるメーカーもあるかもしれない。だが大抵の場合、上手くいっていない。
日本市場は独特かつ複雑であり、買い手の目も厳しいからだ。海外のサプライヤーにとって外国の展示会に出品することは、たいへんな予算とエネルギーを必要とする。
言葉の問題もあり、小さなメーカーであれば出したくてもなかなか日本まで行けないのが現状だ。それを日本人であるあなたが勝手にやってくれるというのだから、メーカー側にとってはこれほど魅力的で、これほどありがたいオファーはない。
しかし、メーカーの代理人としてあなたが日本で展示会に出品するとなると、独占販売権が必要になってくる。当然、向こうもそれはわかっている。日本に輸出実績がないメーカーであれば、先の決め台詞で落ちる確率は非常に高い。
メーカーとしては、あなたがいかに日本で商品を売ってくれるか──自分の商品を買ってくれるのかが最大の関心事なのだが、来場者何万人の東京の大きな展示会に出品する、というだけで売れそうな気分になるのは必然である。
この提案をした後に独占販売権の話を振れば、私の経験上、ほぼ間違いなく話はまとまることが多いのだ。
輸入ビジネスを始めたばかりで、英語ができない人でも、この方法でいくつも独占販売権を手にしているのだ。
でも、見本市の現場でそんなたいへんな交渉をしなくてはならないの?あなたはこんなふうに不安に思うだろう。
そんな語学力もないし、独占販売権の契約交渉なんてしたこともないのだからできっこない、と。
初心者のあなたはそこまでする必要はない。
現場では顔合わせと値段を聞き、サンプルを送ってもらう手はずを整えるだけでいいのである。
さらに、日本への輸出実績と、独占販売権の可能性を聞いておくのがベターだが、やるのはそこまで。
詳しい話はメールでやり取りしましょう、というだけで十分なのだ。
それでも現場でどのように話せば良いのかがわからない、不安だという方は、「展示会での英語によるFACETOFACEの商談15ステップ」〔*〕を参考にしていただきたい。
それでは次に、②のケースを説明しよう。
すでに日本へ輸出実績がある場合はどうか?この場合、独占販売権を獲得することは非常に難しい。
なぜなら、先に契約を結んでいる輸入業者があり、メーカーはあなたに自分の商品を一括して任せることができないからである。
あくまで、数ある業者の中のひとつとして扱われ、価格や仕入れ数の競争になってしまうだろう。本書を読んでくださっている多くの読者にとって、このケースは最初にトライすべきではないかもしれない。
ただし、やり方によってはこの②のメーカーは、あなたにとって非常に有利でやりやすい取引先となる可能性がある。それは、あなたの企画・アイデアによる商品を特注生産させ、それらの商品についてだけ独占販売権を得るのだ。
サンプルを仕入れ、お客様の反応、アドバイスを基に、これまでにないオリジナルな商品を作る。あなたのアイデアだから、メーカーも同意せざるをえない。
これで他業者との競争を避け、自由に価格設定できる権利も持てるのだ。そして、もうひとつメリットがある。日本市場の品質基準を彼らは理解しているので、パッケージ、包装等の重要性について詳しく説明する必要がない。
第5章で詳しく述べるが、日本人ほどパッケージにこだわる民族はいないのである。このことをくどくど説明し指示する手間が省けるのは、あなたにとっては大助かりなのである。
日本市場を理解しているメーカーにオリジナル商品を発注して独占的に輸入する。これが②のメーカーに対する時に、あなたが取るべきベストな方法である。
独占販売権のメリット、デメリットとは
それでは独占販売権をあなたが獲得した際、どんなメリットがあるのかを挙げてみよう。
①自由に価格設定ができるうえ、値崩れしないあなたが輸入している商品は、他社が販売していない。当然、自分の決めた値段を他業者が崩しようがないのである。
②商品の知名度アップが、自分の会社の知名度アップにそのままつながるもしも独占販売権を獲得しないで商品を輸入した場合、広告をすればするほど、それが他業者の商品の広告になってしまうことがある。
ところが独占販売権を獲得していれば、商品の知名度アップが、そのままあなたの会社、あるいはあなたの名前の知名度アップにつながるのである。
知名度が上がることで、あなたの会社は社会において信頼を勝ち取り、今後の輸入ビジネスもスムーズに展開する。
独占販売権って良いことばかりなんですね?あなたはこんなふうに感じるだろう。
実際、メリットは計り知れないし、この権利なくして個人で輸入ビジネスを継続的に展開することは困難だと断言してよい。第一、自分で価格設定ができなければ、輸入ビジネス特有の醍醐味、うまみがなくなってしまうからだ。
しかし、独占販売権を手にしたからには、当然、メーカーに対するあなたの責任は大きくなる。場合によっては、ギャランティ(売上保証)を課せられることもある。
ギャランティを課せられた時には、「この数字を1年間のターゲット(目標)にしよう」と言って回避することだ。ターゲットであれば、ギャランティと違って、売上目標を達成しなくてもノーペナルティだからである。
ギャランティにしてしまうと、達成できない場合ペナルティを払わなくてはならなくなるであろう。だからと言って、ギャランティを課せられたらどうしよう、などと不安になる必要はない。
わざわざ日本で自分の商品を売ってくれるという業者に対して、最初からシビアにギャランティを課すことは稀だし、結局のところ、人間対人間。
あなたが知恵と努力を惜しまないことを示せば、「共に売っていこう」という雰囲気になるものなのだ。あなたが独占販売権を獲得した商品が大当たりしたらどうなるだろう?利益はすべてあなたのものになる。
こんなにフェアで、こんなに夢のあるビジネスはなかなかない。あなたの嗅覚、才覚次第で、ビッグチャンスを摑むことが可能なのだから。輸入ビジネスは宝探しゲーム。
チャンスが目の前にあまた転がっているからこそ、最高に面白いのである。
貿易条件(トレードタームズ)とは
さて、海外で発掘した商品の独占販売権を獲得し、サンプルを仕入れて日本国内にお客様を見つけたら、注文数の商品をメーカーに発注し、輸送して仕入れなくてはならない。
ここで知っておかなければならないのは、商品を海外から輸送する際には、貿易条件(トレードタームズ)という商取引の国際ルールがあることだ。貿易条件なんて難しそうだ、と思うかもしれないが、決してそんなことはない。
今は、フォワーダーという専門の業者に輸送から保険に至るまで一括して任せることができるので、あなたはそれほど手を煩わせる必要はないし、多くの知識もいらないからだ。あなたが面倒に思うことは、すべて専門家(プロ)に任せてしまえばいいのである。
しかし、輸入ビジネスを始めるからには、この貿易条件とは何かくらいは知っておいた方がいいだろう。海外取引には、国内取引にはないルールがある。国が違えばルールや取り決めが異なるのは当然だ。
しかし、当事者同士がそれぞれに自国のルールを主張すれば、スムーズな取引はできないし、貿易業もやりにくくなる。そこで、国際商業会議所が国際ルールを決めた。
それがインコタームズと呼ばれているもので、現在は2010年度に制定されたインコタームズ2010が使われている。インコタームズで決められていることは、貿易の「取引条件」である。
具体的には貨物(商品)のリスクの負担の範囲と費用負担の範囲を決めたものだ。
簡単に言うと、あなたが海外から商品を輸入するにあたって、海外の工場で作られた商品の送料をどの地点から持ち、保険料を含めたリスクをどの地点から背負うか、という取り決めだ。
この貿易条件で定められている代表的な項目を箇条書きにすると、次の4つになる。
- 1.価格条件(建値条件)
- 2.引渡しの場所
- 3.危険(リスク)の移転時期
- 4.輸入業者と輸出業者の費用分担の分岐点
これらの貿易条件をインコタームズでは2クラス11種類に分類し、輸入する側と輸出する側がどういった条件でコストを負担するかが非常にわかりやすくなっている。
次頁にそれらをまとめた表と図を用意したので、参考にしていただきたい。
しかし、11種類の条件を覚える必要はない。
現実的に必要な次の4種類の貿易条件を費用負担(価格条件)の側面に絞って説明しよう。
①工場渡し価格(ExWORKS価格、EXW価格)
海外のメーカーの工場であなたが商品を引き取る場合の価格条件である。あなたが指定した国際貨物運送業者が工場に引き取りに行き、引き取った段階でリスクと費用はあなた持ちになる。
例えば、指定の国際貨物運送業者が、船上等で事故を起こしてあなたの商品に損害が出た場合は、この条件だとあなたの損失となる。
ただし、3000円~の保険ですべてのリスクを回避できるのでそれほど心配する必要はない。この工場渡し価格は、ヨーロッパとの取引で提示されることが多い条件である。
②本船渡し価格(FOB価格)
①の工場渡し価格に、メーカーが工場から輸出港(空港)まで運ぶ運賃・通関・船積み費用を含んだ価格条件である。リスクと費用の分岐点は、船積み時点になる。
例えば、船積み後、不幸にもその船が沈んだとしたら、それはあなたのリスクになる。もちろん、これは安価(3000円~)な海上保険で対応できる。アジアとの取引で多い条件である。日本の保険会社で保険をかけられるので、私はこのFOB価格を主にセレクトしている。
③運賃込み価格(CFR価格)
②の本船渡し価格(FOB価格)に、現地港(空港)からあなたの指定する港(空港)までの運賃を加えた価格である。C&Fとも言う。
ただし、FOBと同じく、船積みした時点で商品のリスクはあなたが負うことになる。日本では、CFRは輸入の時によく利用される。これはFOBと同じく、万が一の時交渉のしやすい日本の保険会社に保険を頼みたいと思っている人が多いからである。
④運賃・保険料込み価格(CIF価格)
③の運賃込み価格(CFR価格)に、海上保険(航空保険)の保険料を加えた価格である。リスクと保険料、運賃以外の細かな費用の分岐点は、①~③同様、船積み時点になる。アメリカとの取引で比較的多い条件である。
日本では、輸出の際に使われることが多い。
お薦めは、②のFOBか、③のCFR。CIFは、個人的には、あまり推奨しない。海外の保険会社と交渉するのは、やっかいな作業になるからだ。
そういった観点から見ると、CIFを提示された場合は、「日本の保険に入りたいからFOBでお願いします」とこちらの条件をメーカーに提示すればいい。
メーカー側にとっては、どちらでもあまり問題にすることはないのだから……。貿易条件なんてやっぱり難しそうだ、と思ったそこのあなた。大丈夫。
これから説明していくが、輸送や通関などはすべてプロに一任できるのが、今の輸入ビジネスの世界だ。
輸送、保険、通関はすべてプロに丸投げすればいい
でも、具体的には、どうやって契約した商品を日本に輸入すればいいの?初めて輸入ビジネスに参入した方なら、チンプンカンプンに違いない。
貿易条件というのがあるのはなんとなくわかったけれど、いったい、誰にどうやって頼めば、自分の商品を運んでくれるのかわからない、というのが本音だろう。
大丈夫、問題ない。ここで先ほども述べた、国際運送人であるフォワーダー(海貨業者)の登場である。
メーカー側と貿易条件を取り決め、インボイス(請求書)があなたの元に届く。
そこで次にあなたがすべきは、この請求書をフォワーダーに渡し、「この商品を持って来てください」とお願いするだけのことなのだ。
フォワーダーとは、荷主から貨物を預かり、他の業者の運送手段(船舶、航空、鉄道、貨物自動車など)を利用して運送を引き受ける専門の事業者である。
一般的には貨物利用運送事業者のうち国際輸送を取り扱う専門業者を指す。インターネット検索で「フォワーダー」と打ち込んでみてほしい。フォワーダー業務を営む会社はずらりと出てくるし、小規模の輸入ビジネスにも対応してくれる。
つまりあなたは、日本のフォワーダーに、面倒な海外からの輸送、保険のすべてを一括して任せてしまえるのである。費用のすべては一旦、フォワーダーが立替払いしてくれ、後から一括して代金を払うという形が多い。
保険会社や運送会社に連絡を取って、交渉し、それぞれに支払うなんて面倒なことは、あなたはしなくてもいいのである。少し、ほっとしたのではないだろうか?また、通関はどうなっているの?こんな疑問も出てくるだろう。基本的に、関税等を納税する通関業者と荷物を運ぶフォワーダーは別会社である。
しかし、今は、通関まですべてフォワーダーがやってくれるケースが多いのだ。さらに今は、通関後の国内発送まですべてやってくれる業者もある。保険についても相談に乗ってくれる。
要は、海外からこちらに商品がやってくるまでのプロセスをあなたは丸投げできるのだ。通関については、第5章で詳しく述べているのでそちらを参考にしていただきたい。
輸入ビジネスは物販である。大事なのは、売れるモノを見つけることと、実際に売ることだ。あなたはその2つだけにエネルギーを注ぐべきなのである。
その間にある面倒なことは、すべてプロに任せればいい。輸入ビジネスと言うと、この輸送やら、保険やら、通関やらを心配して、尻込みしてしまう人が多い。
だが、これだけ面倒なことを一括してやってくれる業者が存在するとなれば、話はまったく別だろう。
私が、輸入ビジネスは海外の免税ショップで買い物をするのと同じ、と言ったニュアンスがだんだんわかってきていただけたのではないだろうか?一見、面倒くさそうに見える──この偏見が、逆に言うとこれだけうまみのある輸入ビジネスの世界でライバルが増えない理由であり、本書を手にしたあなたにとってみれば、最高の追い風になっているのである。
相手の送ってくる契約書には、無条件でサインしてはいけない
商品を仕入れるにあたっては、メーカーと正式な契約を交わすことになる。本来、この契約書は、輸入する側、もしくはメーカー(サプライヤー)のどちらが作成しても良いことになっている。
輸入ビジネス初心者のあなたは、契約書の作成どころか、契約内容もよくわからないことだろう。当然、相手が送ってきた英語の契約書をよく読みもせずにサインをすることになる──しかし、ここでサインしてはいけない。
メーカーが作った契約書は、メーカーの都合で書かれている。これに無闇にサインをすると、不利益を被る場合があるからだ。契約書にサインしなかったら、輸入できないし、相手も不愉快に思うのでは?あなたはそんなふうに思うだろう。
しかし、輸入ビジネスの世界では、これは当たり前の前哨戦なのだ。あなたはあなたで自分に有利な契約書を自分で作成し、メーカーに送るのである。
でも相手はどう思うだろう?彼らが作った契約書については何も答えず、いきなり我々の契約書を送ったりして。ちょっぴり不安だ。
そんなふうに思われるかもしれないが、実は、欧米社会ではこれがビジネスの当たり前の段取りなのだ。むしろ、「こいつ、やるな」と相手から一目おかれることになる。
欧米人にとって、交渉は物事を成立させる際の正当なステップ。お互いに要求を出し合い、譲歩を重ねながら合意に持っていく。これが、彼らの物の考え方だ。我々日本人とは、根本的に違うのである。契約書作成にあたっては、価格、品質条件、納期を守らせる旨の記載は不可欠である。
しかし相手の契約書には絶対にこれが書いてない。この3つをプラスして送り返すのが、輸入ビジネスの契約書作成のツボなのだ。くれぐれもここを忘れてはいけない。
我々日本人は、我々が考える以上に几帳面でまじめで正確で勤勉な国民だ。だからこの国で過ごしていると、すべての約束は守られて当然と思いがちだ。しかしこれは、まったく特異な例と言える。
結論を言おう。
納期は守られないものと心しておかなければならない。その上で、事前にどういう対策をたてておくかが大切だ。
メーカーの契約書には、納期の遅れがあった場合でも免責になる、材料が値上がりしたら価格は変えられるなどと、堂々と書いてあることがある。
こういう項目は、絶対に承服できない。だからこそあなたは、納期を守り、価格変更はできない、という契約書を絶対に作らねばならない。
するとメーカーは新たな契約書を再び送ってくるだろう。お互いに都合の良いものを出し合う──これを「書式の戦い」と言う。
お互いに妥協し合いつつ、早く売りたい、早く買いたいという力関係で、最終的に折衷案が出され、ほどよいラインでサインをするのが普通なのである。
英語の契約書なんて難しくて作れそうもない、とあなたは考えるかもしれない。これもまた、誤解である。もちろん、契約を代行してくれる業者もあるが、あなたが思うほど難しくない。
ぜひ、最初の段階でチャレンジしておくことをお勧めする。一度作ってしまえば、後はそれをベースに使い回せば非常に楽である。
契約書のサンプルを掲載しておくので、これから述べる具体的な契約書の書き方を参考に、作成にチャレンジしていただきたい。
大丈夫。
わからないことがあったら、ジェトロやミプロ(一般財団法人対日貿易投資交流促進協会)といった国の関係機関に無料で相談できるチャンスもある。
もちろん、私のセミナーにお越しいただければ直接教えもできる。もはや、誰でも個人で輸入ビジネスができる時代なのだ。
契約書のベースは裏面にある──裏面約款を書く時の注意点
契約書を自分で作成する場合、契約書の裏面に今後の取引の基本的な条件を記すことになる。これを裏面約款と呼ぶ。
ここにはトラブルが起きやすい3つの条項を盛り込む必要がある。
- ①価格に関する調整禁止(NoAdjustment)
- ②船積み期間の厳守(Shipment)
- ③契約不履行の場合の輸出者責任
当然、これらはメーカー側の作った契約書には含まれていない。
相手は少しでも不利な条件を自ら書き記したりしないのだ。輸入ビジネスでトラブルが起きやすいのは、サンプルとの品質の違い、急な価格変更、納期の遅れの3つである。
あなたにとって契約書は、これを事前に防止するのが最大の目的となる。とりわけ、納期の遅れに関しては軽いペナルティを課しておいた方がよいだろう。かなりの確率で大幅な納期の遅れは防げるからである。
私はかつて、1ヶ月の納期の遅れを体験したことがある。あれは、今考えてもドキドキしてしまうような経験だった。散々待たされたお客様から私は、完全に見捨てられてしまったのだ。
それはこうである。中国のメーカーと取引した時のこと。高度経済成長を続ける中国は、電力の供給が、需要に追い付かず頻繁に停電になる。その停電のおかげで、商品の完成まで2週間程度の遅れが発生したのだ。
やっとの思いで商品が出来上がった。しかしここから悲劇は続く。おまけに、上海では記録的な荒天が続いた。コンテナを積んでは、降し、やっと出発したと思ったら荒波でまた上海に船が戻ったとかなんとか……。
結局2~3日で到着するはずのものが、さらに2週間かかってしまったのだ。あの時のお客様のあきれ顔は忘れられない。誰もこんな話が本当だと思わないからだ。
そう、輸入ビジネス業をしていると、面白いこと、ワクワクすることは無数にあるが、反面、このような思いも寄らぬトラブルに見舞われることもある。
外国には政情不安定な地域もあるし、戦争もある。だからこそ、いざという時にしっかりした契約書があると、大きな損失を免れることができるのだ。
裏面約款の記載内容に関しては、英語と翻訳された文書の2つを巻末に掲載してあるので、ぜひ参考にしていただきたい。ほとんどパクっていただいてもけっこうである。
契約書の表面には、具体的な数量、期日を書く──表面約款の書き方
さて、契約書の表面(表面約款)には何を書くのか?商品の取引における数量、船積み日等の具体的な数字である。つまり、裏面の契約条件は基本として変わらないものであり、表面は毎回書き換えられる。それが契約書だ。
さて、表面約款の代表的な記載項目は次の通りである。表面の英語の記載内容に関してはサンプル〔*〕を参照していただきたい。
1.品名(Article)品名を簡潔に記載する。
品名が多い場合は、別紙のOrderSheet(オーダーシート・注文書)を添付したので参照するようにと指示する。
この場合、次のように記載する。
「AspertheattachedOrderSheet(添付の注文書通り)」
2.品質条件(Quality)品質そのものの条件に関しては、「Asperthesamplessubmitted(提出されたサンプル通り)」と記載することを勧める。これは品質がメーカーの担当者の主観で左右されることが多いからである。本格輸入の前に必ずサンプルを入手しておくことが大事である。
3.数量(Quantity)国際取引で使用される単位で記入する。代表的なものは次の通り。
・本、個(PIECE=PC)
・台(SET)
・ダース(DOZEN=DZ)
・組(UNIT)
・長さ(METER=M/YARD)
・重さ(METRICTON=MTKILOTON=KT/KILOGRAM=KG/POUND=LB)
4.単価(Price)事前に合意した単価を記載する。円建てなら円、米ドル建てなら米ドルで表示する。
5.総額(TotalAmount)合計金額を記入する。
6.貿易条件(TradeTerms)これも重要な項目である。
先の表〔*〕の貿易条件の中で、どの種類の貿易条件をセレクトしているのかを明示する。
7.支払い条件(Payment)支払い方法を示している部分である。
前金30%、船積み後70%等と書く。
8.船積み日(TimeofShipment)納期は重要なポイントだ。正確に日付を記載する。
9.仕向け地(Destination)貨物の仕向け地がどこかを指定する。
例:東京。
10.梱包(Packing)梱包(パッケージ)について指定する。海外では包装など無頓着な場合が多いため注意が必要。
11.特別な指示(Specifications)日本のシステムに適応するように改良について指示する。
日本市場のニーズを伝え、それに対応してもらう場合には重要な事項となる。例えば、部品類にPSEマークかTマークを入れるよう指示するなど。
12.荷印(ShippingMarks)通関時の貨物の特定、船積み書類との照合のために必要なものである。
あなたが相手に対して指定した方がいい。この中で最も重要な項目は、「2.品質条件」と「8.船積み日」である。輸入ビジネスのトラブルは、この2つに集約されると言ってよい。
とりわけ、船積み日(納期)の遅れは、致命的な損害になりかねない。納期遅れに関しては前述のように軽いペナルティを盛り込む等記述して、決して遅らせないようにするべきだ。
特にアジア諸国と取引する際は、納期にルーズなメーカーが多いので、念を押すこと。品質条件に関しては、最もトラブルが発生しやすいので注意されたい。私たち日本人は、品質基準が世界一高い国に住んでいる。
これは外国からするとありえないほど優れた商品に囲まれていることを意味する。この意識の高さが、品質トラブルの最大の原因となる。私たちから見ると欠陥商品でも、外国のメーカーからすると、「問題なし」と判断するケースがたくさんあるのだ。
この食い違いから生まれるトラブルを避けるために、必ずサンプルを入手し、写真を撮っておくこと。そして品質条件に「Asperthesamplessubmitted(提出されたサンプル通り)」と明記することだ。
いざ、不良品が来た時に、比較した写真を添付してメールすれば、契約書に書いてある場合、こちらの言い分が通る。出荷する前に直してほしい点など、商品に関する指示がある場合は、必ず契約書に盛り込むこと。
いくら口頭やメールで約束しても、契約書に書いてなければ、知らぬ存ぜぬでスルーされてしまうこともあるからである。もし修正や追加事項などがあれば手書きで記入しても構わない。手書きの文字の方が印刷文字より優先されるので有効であるからである。
契約書のだいたいのイメージが浮かんだだろうか?結局のところ、納期を守らせることと、サンプル通りの商品を送ってもらうための契約なのだと理解できるだろう。
この2つが守られていれば、輸入それ自体に関しては大きな問題はない。契約書は一度、有料のテンプレートなり、サンプルをベースに作ってみること。後は、私が挙げた注意点をチェックして、自分に有利な契約書を作成してみよう。
契約書にナーバスになりすぎる必要はない
あなたが契約条件についてメーカーと幾度かやりとりを繰り返し、合意に至れば、お互いにサインすることになる。双方が契約書を出し合っても、最終的に契約書は1枚になる。
その合意した1枚の契約書にメーカーとあなたが連名でサインをして、初めて契約成立である。サインしたものをどうやって相手に送るか?昔はFAXにサインをして送ったものだが、今はPDFファイル等をメールで送るのが一般的だ。
日本では印鑑を捺すのが普通だが、国際的にはローマ字名のサインだけでいい。中国人の中には、サインに印鑑を捺すケースもあるが、欧米には印鑑という概念自体がない。
でも、契約書を作るなんてやっぱり面倒だ──こんな感想を持つ人は多いかもしれない。有料の契約書作成代行業者もあるが、契約書の作成にあたって無料で相談したいのであれば、私がお薦めするのが前述した池袋にあるミプロだ。
ジェトロでも相談は受けてくれるが、ミプロは輸入に強い専門家が多数在籍している。基本的には国のサービスであるから、遠慮せずにアドバイスを求めていいのである。もちろん私の門をたたいてくれれば私も直接あなたの力になる。
契約書のテンプレートが欲しい方は、有料でダウンロードできるサイトがいくらでもある。何万円もするものではないし、一度手に入れれば使い回しもできる。
本書のサンプルを参考に作成し、わからなかったら専門家に聞く。これだけで契約書は十分だ。ナーバスになりすぎることはないし、ここにあまりエネルギーを注ぐ必要はない。
欧米社会が契約社会なのは事実だが、私の経験上、信頼関係ができていれば人間関係でなんとかなるものだ。
むしろ、契約書の文章で徹底的に縛らないとまともにビジネスができない相手であるのなら、組まない方が無難という考え方もできる。
繰り返すが、結局、人間対人間。契約書は何かあった時の歯止めにはなるが、ビジネスの根底にあるのは生きた人間同士の信頼関係なのだ。
●ビジネスコラムなぜ人は、笑顔に弱いのか?笑顔を戦略的に使え!(赤ちゃんの笑いの正体は何か!?)
なぜ人は、笑うのであろうか?面白いからに決まってるじゃん。そうそう、もちろんそれもあるであろう。では、ここであなたに質問がある。赤ちゃんについて考えてみようではないか。赤ちゃんがいつも笑っているのは周知の事実である。
では、なぜいつも笑っているか考えたことはあるだろうか?お母さんの顔が面白いから笑っている?そんな馬鹿なことはないであろう。
じゃあお母さんが、冗談を言って笑わせているのであろうか?これも考えにくい。
赤ちゃんの笑いの正体は……。私は、この現象をこう捉えている。笑いの正体は、ボンディングであると。
えっなになに、と思われたことであろう。聞きなれない言葉であるから。これは、日本語で言うと、つながり、きずな、連帯のことである。
赤ちゃんは、お母さんとつながりたいと感じて微笑んでいるのだ。わかりにくいであろうか。もう少し突っ込んでお話をしよう。
赤ちゃんは、本能的に知っているのだ。笑いによって自分がかわいがられ、そして手厚い保護を受けられることを。赤ちゃんは無力である。
お母さんの庇護がなければ生きてゆけないということを、遺伝子レベルで知っているのである。きずなを求めて笑っているのだ。
もう少し身近な例で説明しよう。
こんな光景を見たことはないであろうか。商人が、お客様の前で笑っている場面である。今ならさしずめショップの店員さんが、お客様の前で見せる所謂愛想笑いである。
あれを面白くて笑っている、と思う人はいないはずだ。まさに笑うことによって、ある商品に共感してもらおうと潜在的に思っているのである。
人は、その人に取り入りたい、共感してほしい、好かれたいと思う時に笑うのである。笑いの前では、どんな人も無力になってしまうことを細胞レベルで理解しているとしか考えられないのだ。
人は、自分に微笑みかけてくれる相手に表立って反論できなくなってしまう。これは心理学的にも証明されている事実なのである。今あなたは、笑いの正体を知った。
これを戦略的に使うかどうかは、あなたの判断にゆだねたい。逆に、微笑んで近づいてくる相手には、笑いに隠された要求は何かを考えることも必要になるだろう。
すべての場合が、なんらかの意図を持っているとは思いたくないが……。
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