第5章代金決済・通関・保険の仕組み
相手への代金決済は送金が一番簡単
通関書類の入手方法
通関は通関業者にすべて任せる
スムーズに通関する裏技
商品の早期引き取り方法──サレンダー
物流に関しては輸入から配送まですべてプロに委託する
あなたの商品に最適な輸送手段とは
商品によっては温度調整機能付コンテナを選択する
パッケージへの指示は「細かく」「くどいくらいに」
航空便を利用するケースとは
海上保険は、なぜ必要なのか
海上保険は日本の保険会社に頼むべき
PL保険には絶対に入ること
●ビジネスコラム最も手ごわい相手は、微笑みかけてくる相手だ!
第5章代金決済・通関・保険の仕組み
相手への代金決済は送金が一番簡単
契約書を交わし、メーカーに商品を発注する時点で、当然のことながらあなたは商品に対する支払いをしなくてはならない。一番簡単な決済の方法は、銀行から送金することである。
自分の取引銀行から相手の海外の口座に直接代金を支払う──個人で輸入ビジネスをするにあたっては、この最もシンプルで安上がりな決済方法をお薦めする。
送金で決済する場合、少額のオーダーであれば全額前払いを要求されることもあるが、決して全額払ってはいけない。こんなことは滅多にないだろうが、お金だけ払って連絡が取れなくなったら、たいへんな損失だ。
送金で決済する場合、できれば前払いで30%、船積み後、もしくは入荷後に70%を送金するという条件で交渉するべきである。最初から大金を送ることは、資金的にも厳しいだろうし、万が一の時の保険にもなる。
前払いの送金のタイミングは、お客様の納期と深く関連する。いつ納品しなければならないのか?そこから逆算する必要があるのだ。
例えば、納期が120日後だと仮定してみよう。
メーカーが、生産に要する期間(リードタイム)が60日、輸出通関まで7日間、ヨーロッパからならば船積みから日本到着まで35日間、そして通関から納品まで10日間かかると見る。
すると60日+7日+35日+10=112日になる。ということは、すぐにでも送金し、商品を生産してもらわなくては間に合わない計算だ。せっかく注文をもらっても、納期に間に合わなければビジネスにはならないであろう。
送金依頼書のサンプルは次に掲載しているので、参考にしていただきたい。
それでは後払いの分の送金のタイミングはいつになるのだろうか?現実的には、日本の港に到着した段階ではなく、船積みした時点で送金を要求されるケースが多い。
でも、本当に船積みしたかどうかわからないじゃないか、とお思いになるかもしれないが、船積みするとメーカーは船会社から証拠の書類をもらえる。
この書類はB/L(船荷証券)と呼ばれる。そしてこのB/Lを持っている者のみが、最終的に荷物を受け取ることができるのだ。
メーカー側は、船積みした時点で、確実な船積みの証拠としてのB/LのコピーをFAXにて先にあなたに送る。そして、「B/Lのコピーを送るので残りの70%の送金をお願いします」と要求されるのだ。
最初の取引では、このB/Lのコピーが届いた時点で送金するべきである。そのメーカーと取引を繰り返していくうちに、「今度は商品が港に着いてからの送金にしてほしい」と交渉する。
話し合いでどんどん変えていくことができるのだが、まずはB/Lのコピーが届いたら後払い分を送金するとだけ覚えておいてほしい。
ちなみに、取引銀行が輸入者に代わって支払いを確約する、L/C(信用状)という支払い方法もある。
一言で表現すると、何かあった時に銀行があなたの代わりに代金を支払うことを確約するシステムである。
決済トラブルが予防できるというメリットはあるが、個人で信用状を使うのは容易ではないし、メーカーとあなたが手数料を負担しなくてはならないというデメリットもある。
個人で輸入ビジネスを始めようとするあなたは、L/Cという支払い方法があることを頭に入れておくだけで十分であろう。
通関書類の入手方法
あなたが発掘し、契約した商品がいよいよ日本の港に到着したとする。しかし、海外から輸入した商品は、すぐには国内に持ち込めない。通関があるからだ。
でも、大丈夫、ここであなたがエネルギーを使う必要は一切ない。通関のプロである通関士に任せてしまえるからである。あるいは、通関業者まで兼ねたフォワーダーに頼んでもいい。
通関は、自分でできないこともないが、現実的には手続きが複雑で、専門的な知識も必要になる。煩雑な事務手続きは、できるだけ専門家に任せてしまうことが、費用対効果の側面からも望ましいのだ。
しかし、通関業者に通関を任せるにあたって、あなたは必要な書類をいくつか用意しなくてはならない。それが次に挙げる書類である。
①インボイス(送り状、仕入れ書、納品・請求書)②パッキングリスト(梱包明細書)③運送書類(B/L=船荷証券、空輸の場合はAWB=航空貨物輸送状)※原本④保険証券⑤原産地証明書(フォームA)※原本この中で、B/L(船荷証券)と原産地証明書(フォームA)は原本である必要がある。
それではそれぞれの書類の入手方法を説明しよう。
〔*〕に掲載してあるサンプルも参考にしていただきたい。
①インボイス(送り状、仕入れ書、納品・請求書)
あなた(輸入業者)に対してメーカー側が発行する納品書兼請求書である。
実際の現場では、このインボイスは契約の段階であなたに向けて発行される。このインボイスを確認してから、送金をする。また、フォワーダーに運送を依頼する際にも、このインボイスが必要になる。非常に重要な書類と言えよう。
②パッキングリスト(梱包明細書)
貨物がどのように梱包されているのか。梱包の数はいくつなのか。梱包の番号と内容、大きさと重量はどうなっているのか。梱包の外装に書かれたマーク(荷印)はどんなものなのか。以上のことが記載されている書類である。
これもあなたが要求すれば輸出側が発行し、あなたの元に送られてくる。
③運送書類(B/L、AWB)
船便輸送の場合のB/L(船荷証券)は、輸入にまつわる書類で最も重要なものである。なぜなら、これがないとあなたは大切な商品を受け取ることができないからだ。航空便の場合の航空貨物輸送状はAWBと言う。B/Lに関して簡単に説明しよう。メーカー(輸出業者)があなたの商品を船積みすると、船会社はメーカーに対してこのB/Lを発行する。言わば、確かに受け取りましたよ、という「貨物受領書」だ。そしてこのB/Lは、船会社が運送を引き受けたことを示す「運送契約書」でもある。さらに重要なのは、このB/Lを所持している者のみが、船から貨物の引き渡しを請求できることである。つまり、メーカーが一旦、船会社から預かったB/Lは、最終的に受け取る相手に送られる。そう、あなたである。
このB/Lを「これは私の貨物ですよ」と証明書として提示することで初めて、あなたは商品を港から引き取ることができるのだ。
しかし、実際的にはB/Lの原本はメーカーからすぐに送られてこないのだ。
なぜならB/Lは手形、小切手と同様に「有価証券」でもあるからだ。
商品と同等の価値があるものとされているのである。
まずはコピーが送られて「確かに船積みしました。後払いの分の振り込みをお願いします」と、請求される。
前払い30%、後払い70%の契約であれば、あなたが残りの70%の代金を送金して、初めて原本が郵送されてくるのである。
急ぎであれば、あなたは振り込み証明書のコピーをメーカーにFAXすると、B/Lの原本が送られてくるという話になるのだ。
ちょっと難しいであろうか。
要は、B/Lは商品そのものである。
メーカーが船に積み込んだ段階で、B/Lのコピーが送られてくれば、あなたは商品の代金を全額払う必要がある。
そしてあなたはB/Lの原本を手にすることで、初めてその商品の正式な受け取り人になれるのである。
④保険証券
無保険での輸入は絶対に避けること。日本の保険会社と「包括予定保険契約」を結び、毎回手配しなくても自動的に保険が掛かるようにしておくことをお勧めする。
保険について詳しくは後述するが、「包括予定保険契約」とは、あなたが将来輸入するであろう全貨物について、もれなく保険を掛けることをあらかじめ保険会社との間で協定しておくことである。
私はこのシステムを使って事務の簡素化を図っている。
フォワーダーや通関業者に頼めば手配してくれる。
⑤原産地証明書(フォームA)
原産地証明書は、「一般特恵制度原産地証明書様式A」、略してフォームAと呼ばれるもので、原産地の税関又は権限を有する商工会議所等が発給したものである。
なぜこの書類なのか?それは特恵関税を受けることができるからだ。
特恵関税とは、先進国が開発途上国から輸入する際に関税率を引き下げる、もしくは無税にするもので、開発途上国の支援を目的としている。
英語表記を略してGSPとも言う。
つまり、あなたが特定の開発途上国から商品を輸入する場合、この原産地証明書があれば関税を無料にしたり、引き下げたりしてもらえるのだ。
通関に際してこの書類は必ず必要なものではないが、免税になるのだから、要求しよう。あなたの商品の原産地が開発途上国であるならば、原産地証明書をメーカーに別途郵送してもらうのが得策である。
ただし、これは「特恵関税用の原産地証明書を作って送ってほしい」とお願いしないと、送ってくることはないから要注意だ。どうだろう。
あなたが作成しなくてはならない書類はひとつもないのにお気づきか?すべてメーカー側か、プロの輸送業者が手配してくれるのだ。これらの書類を準備したうえで、あなたの商品を日本に上陸させる事務は通関業者に任せよう。
通関は通関業者にすべて任せる
日本では法律で、海外からの輸入品は税金を納めてからではないと国内に入れてはいけないと定められている。
輸入ビジネスをするにあたり、最も大きな障害に見えるのが通関だろう。
しかし、フォワーダー、あるいは通関業者に前述の書類を渡して依頼すれば、輸入通関に関する煩雑なすべての作業をあなたの代わりにやってくれるのだ。
通関とは、つきつめると税金の申告・納税のことである。貿易に関する税金は、賦課税ではなく、申告税である。
つまり、これだけの商品を輸入したからこれだけの税金を払うということを自ら申告しなくてはならないのだ。ところが、これがあなたには非常に困難なことなのである。
関税は輸入品全部にかかるとは限らないし、モノによって税率も違う。またすべての輸入品には消費税がかかる。これらを合計した税額を算出しなくてはならない。
中でも一番たいへんなのは、その商品がどのジャンルに属するかという判断だ。マニュアルはあっても、通関業者の主観で決めている面もある。
税関との交渉になった時に、あなたではとても太刀打ちできないのである。通関は、車検と同じようにがんばれば自分でもできるかもしれない。
だが、たいへんな手間暇がかかる。
勉強のために通関をやってみたいというのなら別だが、あなたのエネルギーはそこに注がれるべきではあるまい。通関は、やはりプロに任せるべきなのだ。
スムーズに通関する裏技
通関は通関業者に任せるのがベストであると書いたが、スムーズに通関するために、あなたが事前にしておくべきことをお知らせしよう。
それが「日本輸出入者標準コード」を登録することである。この登録は「一般財団法人日本貿易関係手続簡易化協会」(電話03−3555−6034)で行われている。
輸入ビジネスを始めるなら、あなたもぜひ登録しておくといい。もちろん、通関業者に頼めば登録もしてくれる。費用は、新規で6600円。
3年間の有効期限後の更新料が3150円と安価である。その理由を語る前に、少しだけ通関の仕組みを話しておこう。あなたの商品は通関において、3つに区分される。
・区分1審査なし
・区分2書類審査
・区分3~区分5現品検査
この区分で、あなたの輸入した商品がどういう手順で通関されるかが決まるのだ。一見、そんなに差はないように見える。
しかし、区分1と区分3~区分5では天国と地獄ほどの差がある。
現品検査には、見本検査、一部指定検査、全部検査の3通りがある。不条理に感じられるかもしれないが、検査にかかる費用は全部あなた持ちになる。この費用がばかにならないのである。
検査費はそれほどではなくとも、コンテナを開ける費用や抜き取り後の積み込みの費用などが加算されると、コンテナ1本で十数万円支払うことにもなりかねない。
そしてこの区分3~区分5に回される可能性が高いのが、初めての輸入者で金額の高い商品を輸入しているケースなのである。
つまり輸入ビジネスを始めたばかりのあなたが、いきなり高価なものや珍しい商品を輸入すると、プロの通関業者に通関を任せたとしてもこの現品検査に回される可能性がある。
しかし、「日本輸出入者標準コード」を登録していると、私の経験上それだけで区分1か区分2に回される率が高くなる。
何ひとつ難しいことはないし、費用もリスクヘッジを考えると、さして高くもない。意外と知られていないが、ぜひお勧めしたい。
商品の早期引き取り方法──サレンダー
輸入ビジネスをしていると、商品だけが日本の港に先に到着し、書類がなかなか届かないケースが出てくる。例えば、アジア諸国から輸入する場合である。大概商品は2、3日で着いてしまう。
しかし、B/L等の書類が、船会社から輸出者に回ってくるまでに1週間ほどかかるのだ。すると貨物は港に着いたものの、B/Lがないので商品を引き取ることができないということが起きるのだ。
前述したように、B/Lの原本が手元になくては、あなたは商品を引き取ることができないシステムになっている。B/Lは商品引換券。あなたの手元に原本がなければ、輸送されてきた商品を引き取ることができないのだ。
おまけに港に貨物を無料で置いておけるフリータイムは10日間ほどと決まっている。その期間が過ぎると、港の倉庫に超過料金を支払わなくてはならない。
さらに最も重要なことは、輸入ビジネスで一番最悪な、納期が遅れてしまうことだ。品物を引き取って期日までに納品しなければ、お客様への信頼も失ってしまう。
これだけは絶対に避けたい。そんなことでドキドキソワソワしたくない、というのがあなたの本音だろう。私だって同じである。しかし、こんな最悪の事態を防ぐ方法がある。
「サレンダー」という手法を使うのだ。サレンダーとは、簡単に言うと、B/Lなしで貨物を引き取ることができる方法のことだ。
えーっ!貨物を引き取る際には、B/Lは必ず必要になるのでは?と、あなたは疑問に思うだろう。原則はそうである。
しかし現実的には、B/Lが届かないケースの方が多いのである。だからこれは、正式な方法ではないが、現場では日常的に行われているのだ。
俗に言う「B/Lの元地回収」というやつである。もともと、B/Lは船会社がメーカーに発行する書類だ。メーカーが貨物の船積みをすると、船会社が貨物を引き受けた証明書としてメーカーにB/Lの原本を手渡す。
その原本があなたに送られてきて、あなたは日本で商品引換券のB/Lで貨物を受け取ることができるという仕組みになっている。
船会社が発行したB/Lは、最終的に船会社に戻るわけである。しかし、サレンダーは、B/Lを船会社が輸出者に渡さないのだ。原本を渡さないで、コピーだけ渡す。コピーに「サレンダー」という判が押されている。
つまり最初から輸出地でB/Lを回収してしまうのだ。サレンダーは、船積み時点で全額を送金してしまえば、どのメーカーでもだいたい対応してくれる。
メーカーに「サレンダーで行きましょう」とお願いすればいいだけである。正式なやり方ではないが、ごく普通に行われている。アジア等の近隣の国から輸入する場合は、サレンダーで輸入できることを念頭に置いておくべきだろう。
物流に関しては輸入から配送まですべてプロに委託する
さて、あなたが輸入した商品を港から引き取ったとする。モノにもよるが、おそらく自宅に置いておけるような量ではないだろう。だからといって、到着したらすぐに問屋や小売店、日本のメーカーのお客様に発送できるわけではない。
そこで当然、倉庫を借りる必要が出てくる。ええっ?自分で倉庫を探して借りなくてはならないの?いや、そんな面倒なことをする必要もない。
フォワーダーや通関業者の多くは、自分の貸し倉庫を港の側に持っているのだ。しかも、受注があると発送してくれるサービスもあり、小口の配送までフォローしてくれる。彼らはプロなので、梱包も出荷も手馴れたものだ。
つまり、フォワーダーに頼めば、輸入ビジネスの中間行程である輸送から通関・配送までをあなたの代わりに一括してやってくれるのである。
あなたは商品発掘と買い手探しにだけ力を注げばいいし、それが可能だと私が繰り返し述べてきたのは、彼らの存在があるからなのだ。
私は常々、「商品を自宅に置くとか、デリバリーを自分でやるとか考えない方がいい」とアドバイスしている。私自身、自社倉庫から商品を配送していたこともあるが、梱包・配送は実にたいへんな作業であった。
日々梱包・配送のルーティンワークに追われていると、自分が何を職業にしているのかわからなくなってくる。個人で輸入ビジネスをする際、この配送業務が負担になる。
商品が売れれば売れるほどつらくなるなんて、何か矛盾しているように思えないだろうか?物流に関してはプロに委託する。
個人で輸入ビジネスを始めるあなたは、貸し倉庫まで持っているフォワーダーに運送業を頼むべきなのだ──それが私の結論である。
ただし、安定した輸入ビジネスを展開していくために運送業者は1社に限定するのではなく、地域別、商品の種類別に合わせて、複数の業者と契約した方がベターである。
ヨーロッパに強いフォワーダー、アジアに強いフォワーダー等、国や商品別で、それぞれの業者の得意分野があるからである。もちろん、輸入ビジネスをこれから始めようとするあなたは、まず信頼できる1社を見つけることが先決だ。
あなたの商品に最適な輸送手段とは
船による運送のトラブルで一番多いのは、商品の破損である。壊れやすい物を輸入する場合に破損を極力避けるためには、コンテナでの混載を避けることである。
自分の貨物だけではなく、他の輸入業者の貨物と混載になると、輸出時と輸入時に2回、貨物の中身を開けられ、チェックされる。人の手が入るわけだから、当然、破損や傷みが起こりやすくなるのだ。
船便による輸送は1ヶ月間に及ぶこともある。あなたの商品の量にもよるが、経験上、輸入する商品の積載量がコンテナの半分くらいになるのだったらコンテナを1本借り切って運ぶことをお勧めしている。
コンテナを開けることなく通関できる場合が多いからだ。これをヤード通関と言う。これだとメーカーからあなたの手元まで直接輸送されてくるので、盗難等に遭う可能性もほとんどない。
依頼する場合、実務上はフォワーダーに、「混載ではなく、フルコン(フルコンテナ)で手配してください」と頼めばいいのだ。
料金は極端に変わるわけではないし、ひとつのコンテナに自分の商品だけが入っているのなら、破損や紛失の可能性を減らすことができる。運送のプロセスはシンプルにして、極力アクシデントを避ける手段を取ることだ。
商品によっては温度調整機能付コンテナを選択する
輸入ビジネスを始めた頃の失敗談だが、イタリアから船便でキャンドルを輸入したところ、コンテナを開けてびっくりしたことがある。全部溶けていて、商品として使いものにならなくなっていたのだ。
なぜか?商品を輸送する船が赤道を通ったからである。実は、ヨーロッパから海上輸送されるコンテナは必然的に赤道を通る。コンテナの内部は熱くなり、キャンドルなどひとたまりもなかったのである。
輸入ビジネスをしていると、日常では絶対に思いもよらぬアクシデントに遭遇することがあり、これはその代表的な例だろう。赤道を通るなら、輸出メーカーがコンテナに積む時に気づいてくれればいいのに、とあなたは思うかもしれない。
しかし、ヨーロッパ人の多くが日本市場に魅力を感じていても、日本がどこにあるのか正確には知らなかったりするものだ。
日本は「ファーイースト(極東)」と呼ばれている。なぜ極東なのかおわかりか?世界標準の世界地図を見れば一目瞭然だ。
日本で売られている世界地図は日本が中心に描かれているが、世界標準の地図ではヨーロッパが中心にあり、日本は東の端に描かれている。
だから日本は「ファーイースト」なのである。日本が極東にあると知っているヨーロッパ人はまだいい方で、日本がどこにあるのかすら知らない輸出者もいるほどだ。
日本がどこにあるのか知らなかったらどうだろう?輸出者が日本への海上輸送では赤道直下を通ることなど想像もしないに違いない。
鉄板やアルミでできたコンテナが炎天下にさらされれば、内部は100度を超えるだろう。
高温に弱い商品は「リーファーコンテナ(温度調整ができるコンテナ)」を使うように指示しておく必要がある。
自分の輸入する商品は、自分で守らなくてはならない。もちろん、フォワーダーに商品の内容と高温のリスクを伝えておけば、あなたの商品は守られることだろう。
パッケージへの指示は「細かく」「くどいくらいに」
日本の場合、パッケージ(ギフトボックス)も商品の一部である。しかし、海外ではパッケージは「捨てるもの」という感覚があり、外国のメーカーもそれほど重視していない。
パステルカラーや、繊細な模様の入ったパッケージ等、外装に気をつかうのは、意外に思うかもしれないが、実は日本人だけなのである。
我々日本人は、誕生日の時など、リボンがついた美しい包装紙に包まれたプレゼントをもらうことが多いであろう。そして開ける時は、贈った人の目の前で包装紙を乱暴に破り捨てたりはしないであろう。
セロハンテープを1枚1枚はがし、破らないように丁寧に開けるのが礼儀というもの。
ところが、西洋人は違う。目の前で破り捨てるのである。これは、がさつだとか面倒くさがりだとかでやっているのではない。
「包装紙を急いで破って早く中身が見たいんだ」と、贈った人にアピールするため──つまり、プレゼントをもらって嬉しいと相手に思わせるための彼らのマナーなのである。
結果的に、彼らはパッケージに無頓着になる。
日本では、いくら商品が良くてもパッケージが段ボールで、中にエアパッキンやら新聞紙やらが詰め込まれているようなものは、商品にならない。
1つ1つ、美しい包装紙なり、パッケージなりに包まれていないと、「パッケージがぼろぼろだった」と返品を食らうことさえあるのだ。
これは唯一、日本市場だけで起こりうる問題である。我々日本人は実に繊細なのだ。そのため、メーカーが輸出する際に美しいパッケージに商品を1つ1つ詰めて送ることを指示しておく必要がある。
また、淡いパステルカラーのパッケージは汚れてしまうと使いものにならないので、パッケージがむき出しの状態でコンテナに載せないように契約書等で指示しておく必要もあるだろう。
だが、メーカーの中には「アメリカに輸出する時もそんなことはしていない」とか、「私たちはいつもこの梱包でしか送っていない」と突っぱねてくることもあるだろう。
ヨーロッパに限らず、中国、東南アジアのメーカーも例外ではない。そこで商品にふさわしいパッケージにしたいあなたに、絶好の殺し文句をお教えしよう。
「これは私が言っているのではない。あなたの気持ちもわかるけれど、日本のマーケットが言っていると思ってほしい。あなたは日本のマーケットと付き合いたいですか?これからも日本と付き合いたければ、その勉強と思ってほしい」ここまで言って対応しないようなメーカーとは、今後は付き合わない方がいい。
逆に、今のフレーズで納得するメーカーはやる気があり、長い付き合いも可能である。日本では、パッケージも商品価値を高める大事な要素であることを説明しておくこと。
できれば、日本のパッケージのサンプルを送り、納得のいくものを作ってもらうのもひとつの手段である。商品の梱包は、商品価値を損ねずに届くかどうかの大事なポイントだ。
最悪、日本で新たにパッケージを作って入れ直すことはできるが、コストはすべてあなた持ちになってしまう。そんな二度手間をするのは得策ではない。
パッケージに限らず、相手から「細かい」「くどい」と思われようと大事なポイントは指示するべきである。同時に、万が一のために余分のギフトボックスを積んでもらうのが現実的な対応である。
航空便を利用するケースとは
商品の輸送の手段としては、船便だけではなく航空便もある。航空便の長所は、とにかく早く着くことである。ヨーロッパからの船便なら1ヶ月かかってしまうところが、1日で到着する。
その分、運賃が高く、数倍で済めばいいが下手をすると10倍くらいになってしまうことがあるのだ。
輸入ビジネスの輸送の際、基本的に船便を使うケースが多いのは、大量の商品を一度に輸送できることに加え、運賃が圧倒的に安いからである。
しかし一方で、航空便に適した商品もある。
例えばアロマオイルやワイン、化粧品等、長期の輸送で品質が変わってしまう商品に関しては、航空便で運ぶ必要が出てくる。また高価な貴金属や、ブランド物のバッグ等、高価で軽い商品なら航空便で運ぶ方が安全だ。
また段ボール3つくらいの少量なら船便で1ヶ月かけて運んでもコストパフォーマンス的に意味がない。航空便を利用するべきだろう。
少量の輸送なら、国際スピード郵便(EMS)を利用することもできる。郵便物扱いになるので、商品はドアツードアで到着し、価格も非常にリーズナブルである。荷物追跡サービスも充実している。
ただし大きさ、重さ(30㎏まで)の制限があるので、注意しなくてはならない。また都合が良いことに、EMSは郵便物なので、通関は日本郵便がやってくれるのだ。通関業者に頼むこともない。少量の輸入品ならば、EMSを利用しよう。
それ以上の重さがある場合は国際宅配便を使用することになるが、かなり価格は高い。国にもよるが、EMSの倍くらいになってしまうので要注意だ。
手始めに少量の輸入から始めたいというのであれば、航空便、EMS等を使って小規模スピード重視の輸入ビジネスを体験してみてもよいかもしれない。
海上保険は、なぜ必要なのか
輸入業者にとって、海上保険(海上貨物保険)は本当に大切なものだ。私は、これに何度救われたかわからない。海上では、何が起きるかわからないからだ。
商品が途中で壊れることもあるし、なくなってしまうことさえある。公海上では、いまだに海賊さわぎがあるくらいだから、絶対に保険を掛けなければいけない。
また海上保険は、何かあった場合、品物の代金だけではなく、売却して得られるはずだった利益も保証してくれるのである(10%だが)。
海上保険の保険料は、あなたが思っているほど高くない。1万ドル以下の小規模な輸入なら、オールリスクをカバーできる保険でも3000円ほどで済むことが多いのだ。
フォワーダーや、通関業者に頼むこともできるし、普通に保険の会社に頼むこともできる。自分で手配するのはたいへんなので、私のお勧めは保険までやってくれるフォワーダーに運送、通関とセットで頼んでしまうことだ。
ただし、壊れやすい陶器やガラス製品等だと、少し保険料が割高になる。そして商品の種類によって価格が違うので、何種類も同時に輸入する場合は、一番壊れにくいものをメインの商品として申し込みすることが賢い保険の掛け方だ。
海上保険にも条件によって様々な種類があるが、お薦めは「オールリスクA/R条件」である。オールリスクの文字通り、すべての外部的な偶発原因によって起きた損害について、程度を問わずにカバーされる保険である。
損害内容には、沈没、火災、濡れ、衝突、強盗などがある。
しかし、次の場合はカバーされないことを知っておこう。
・被保険者がわざと与えた損害
・商品の梱包が不完全なために起きた損害
・航海の遅延による損害
・貨物固有の性質によって生じた損害(果物が腐る等)
・戦争およびストライキによる損害
さらに万全を期すためには、このオールリスク条件に特約保険の「戦争保険」と「ストライキ暴動保険」を掛けることをお勧めする。
これで運送におけるほとんどのトラブルに対応できることになる。戦争保険なんて必要なのか、とお思いになるかもしれないが、それは日本が平和だからである。
世界にはまだ政情不安定な国がたくさんあるし、海賊も依然として横行しているのだ。日本では海賊のマンガが流行っているが、世界には今もなお、現実に存在するのである。小さな金額をけちらずに、万全を期すことである。
海上保険は日本の保険会社に頼むべき
海上保険に関しては、海外の保険会社ではなく、国内の保険会社に頼むに限る。端的に言って、海外の保険会社とやり取りするのはたいへんだからだ。
保険金が下りるまでに時間がかかるし、破損した商品の写真を送ったり、損傷の状態を説明したり、コミュニケーションだけでもひと苦労する。もちろん、日本のフォワーダーか通関業者を通せば、日本の保険会社に頼んでくれるので心配はない。
しかし、メーカーの中には自国の保険でなければ取引しないと言ってくるケースが稀にある。貿易条件で言えば、運賃・保険料込み価格(CIF価格)での契約を強要してくる。
つまり、メーカー側が保険料まで払うので、輸出国の保険会社の保険を掛けてください、というわけだ。こうした場合は、私も相手の指示に従う。
ただし、それとは別に、自分で日本の保険会社の海上保険にも入っておくのだ。二重に保険を掛けるわけだが、たかだか3000円程度。とりわけ壊れやすい商品を運ぶ際には万全を期すべきだ。
例えば、コーヒーカップを輸入するとする。
運送する過程で嵐に遭い、半分が破損して、損害が50万円出たらどうだろう?無保険なら丸々50万円の損失だが、3000円のオールリスク保険を掛けておき、認定されれば全額プラス利益分の10%が返ってくるのである。
また、ヨーロッパからの輸入の場合は、船便なら到着まで1ヶ月ほどかかる。保険に入っているといないとでは、精神衛生の観点からも大きな差が出てくるのがわかるだろう。
嵐に遭ったらどうしよう、盗難に遭ったらどうしよう、などとヤキモキする日々を過ごさねばならないとしたら、エネルギーの使い方を間違えていると言わざるをえない。
また、輸入ビジネスが軌道に乗ってきたら前述のように「包括予定保険契約」といって、今後、あなたが輸入する全貨物に自動的に保険が掛かるようにする契約もある。
これだと煩雑な手続きがいらないし、うっかり忘れてしまうこともないので頭に入れておいてほしい。保険会社に「包括予定保険契約にしてほしい」と言えばいいだけのことである。
まずは日本の保険会社のオールリスク海上保険に入っておくこと。くれぐれも無保険で輸入することだけは避けていただきたい。
PL保険には絶対に入ること
あなたが輸入ビジネスを始めるなら、海上保険の他にもうひとつ、保険に入る必要がある。それがPL保険(生産物賠償責任保険)である。PL保険とは、対人賠償である。
あなたが輸入した商品によって、それを使った方が怪我をしたり、財産を失ったりした場合の賠償責任保険である。本来ならメーカーが賠償しなくてはならないのだが、日本においては、輸入者がメーカーになる。
つまりあなたの輸入した商品で何かトラブルがあった場合、あなたが損害賠償をしなくてはならない。インンポーターなら、万が一に備えて、PL保険に加入するのは必須である。
インターネットなどで輸入ビジネスをやっている方々の多くは、このPL保険の存在さえ知らない場合が多い。また、仮に名前だけは知っていても、PL保険というと値段が高いイメージがあるのかほとんどの人が加入していない。
しかし、実際は年間数千円程度で加入できるのである。絶対に入っておくべきだ。仮にあなたが商品を10個海外から買って来て、1つは自分が使い、9つを他人に売ったとする。
しかし、どんなに小規模であっても、自分が仕入れた商品に関しては、あなたが日本での責任者になるのである。この怖さを知らないで輸入ビジネスをしている人が多く見られるが、実に危険なことをやっているな、と私は思うのだ。
PL保険への加入の仕方としては、通関業者に頼んでもいいし、インターネットで商工会議所のPL保険を調べ、そこから加入してもいい。
損害賠償を請求された場合、PL保険に入っていないと小さな会社なら倒産するほどのダメージを負う可能性もある。
私は生活関連商品を扱うことが多く、PL保険のお世話になることはほとんどなかったが、サプリメント等の口に入れるものや、直接、体に触れるダイエット器具等を輸入するなら、万が一のリスクも考える必要がある。
リスクのある商品はサンプルの段階で徹底的にチェックし、危険であれば改良を求めること。それ以前にリスクのある商品は輸入しないこと──その上でPL保険に加入しておくのである。
石橋は叩いて渡るのではなく、渡らない方が無難なのだ。輸入ビジネスは簡単で面白く、うまみがあるというのは本書で述べてきた通りだが、ビジネスには当然リスクも付きもの。
いざという時の備えを万全にしてこそ、あなたは伸び伸びと自分の感性を羽ばたかせることができるのである。
●ビジネスコラム最も手ごわい相手は、微笑みかけてくる相手だ!
「少しでもいいですから、なんとか月末までに払っていただけませんか?」私は、どきどきしながらそう言った。
「そう言われましても、私どもとしてはお支払いのお約束は来月の20日とお話ししたはずですが」「それは、存じています。
しかしまだ一度もお支払いを受けていないうちに思いもかけず500万を超える金額のお取引をいただいてしまいまし
た。
もちろんありがたいことなのですが」ギフトショーの後に彼は、私にアプローチをしてきた。ギフトショーが終わり、結果にちょっと失望していた時であった。
この展示会のために準備したサンプルが、納期遅れのために到着せず、旧来商品だけで展開せざるを得なくなったのである。
不振にあえいだ。そんな時である。1枚のFAXが流れてきたのは。そこには、こんな魅力的なことが書かれていた。
「御社の商品にとても興味があったが、お忙しそうにしてらっしゃったので、声をかけるのを遠慮させていただいた。ついては、カタログ一式を送付いただけないか」という旨のオファーである。
胸が高鳴った。やっぱり見てくれている人はいるものだ。そう思うと嬉しくなった。そして私は電話を取った。数日後、彼の会社を訪問した私は、その商談に満足した。
事前に信用調査会社でちょっと下調べをして、その結果はまずまず。問題はなさそうだと判断した。支払い条件が、ちょっと気になったが、それも調査の結果通り。良しとしなければならないと自分に言い聞かせた。
最初は、小口のほんの数万円のオーダーが、評判がいいという話で次第に大口になりついには売掛金が500万を超えてしまっていた。いくらなんでもちょっとおかしいと思い始めた。
早速先方の担当者にアポをとった。支払いの確認をするためであった。結局10万円を当月の30日までに支払うことで、とりあえずは合意した。私は、それでちょっと安心した。
ただし月末まで納品は、控えさせてくださいと念も押した。これで来月20日に残額の入金が済めば、間違いなくいいお客様になる。心が弾んだ。そしてその日が来た。
経理担当の社員から、20日の入金が確認されない旨の報告を受けた。ドキッとした。私は、電話に手をやった。そして……。典型的な取り込み詐欺である。まんまとやられた。ある種、鮮やかと言うほかはない。
当時、営業歴15年を誇っていた私がである。その日のことは、忘れない。家に帰って一人、泣いた。涙が止まらなかった。自分が情けなくて消えてしまいたかった。
それ以来、最初の取引から掛け売りをしたことはない。今でも彼の顔を忘れたことはない。にこやかで丁寧なとても感じのいい男に見えた。
私が、にこやかで丁寧な相手が手ごわいと感じる所以である。すべてのにこやかな相手がそうだと言うつもりは、もちろんない。
しかし私は、そういう相手の場合国内外を問わず、自分に再度言い聞かせることにしているのだ。その時の屈辱を。一般的に、交渉の相手として怖いのは、笑みを浮かべた相手である。
よく言うではないか。弱い犬ほどよく吠えるって。それと同じである。怖い顔をしてかみついてくる相手は、実際は気が弱く、打たれ弱いものである。
逆に穏やかでにこやかな相手は、手ごわい。何を言っても動じることなく冷静に対応することができるからである。こういった相手の場合、長期戦を覚悟して、こちらもゆったりにこやかに応対すべきである。
時間を気にした方が、負ける。後の予定を入れずにじっくり交渉すべきである。
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