はじめに現代はかつてないスピード化の時代だ。
瞬時にあらゆるものが手に入る。
それと同時に、仕事と情報の量もケタ違いにふくれあがって、もう息つくひまもない。
毎日Eメールの山に埋もれ、急き立てられながら、要求に応え続けている。
ストレスはたまる一方だ。
仕事は今や、ひっきりなしに押し寄せてくる〝波〟との戦いだ。
Eメールの〝波〟、データや依頼の〝波〟、電話や書類やメモやファイルの〝波〟……。
毎朝、受信トレイいっぱいのメールをかたづけても、帰るときにはまた満杯になっている。
おまけにどのメールも対応を求めていて、1日24時間ではとてもさばき切れない。
まるで、太い消火ホースから噴き出す水を、無理やり飲まされているようなものだ。
しかもその水の勢いを止める手立てはどこにも見当たらない。
もう神経はぼろぼろ、それなのにいつも空回り。
少し立ち止まってみれば、感じるはずだ。
こんな生き方でいいのだろうかと……。
押しよせる〝波〟の中でやすらぎを見つける情報や仕事の〝波〟に足をすくわれないようにするには、どうすればいいのだろう?森の奥深くの小屋で、隔離された状態で生きるしかないのだろうか?私はこう考えている。
両者の中間を目指してみてはどうだろう?つまり、大量の情報にアクセスできる環境を楽しみつつ、ホースから飲み込む量は自分で決める暮らし。
今までよりもずっとシンプル、それでいて、自分が望むことを達成できる人生。
そんな人生を手に入れるための解決策はひとつ。
自分が受け入れることに「制限を設ける」こと。
つまり、すべてをやるのではなく、大切なことだけに集中して、自分の時間を最高に効率よく使うことだ。
たとえばこんな毎日を想像してみてほしい。
余計なことにわずらわされずに仕事に集中できる、心おだやかなウィークデー。
ストレスの量は最低レベル。
今日のToDoリストの数は3つだけ。
しかも、その3つはどれも、これからのキャリアと人生を強力に後押ししてくれる。
こうした状況ならば「1度に何もかもやらなければ」とあせることなく、ゴールを確実に達成できる。
おとぎ話じゃあるまいし……、そう思うかもしれない。
しかし決して夢なんかじゃない。
私だって実現できた。
これから紹介する、ごくごくシンプルな方法で。
そのために必要なのは、まず「選択」することなのだ。
シンプル・イズ・ベスト人生はシンプルなほどいい。
余計な雑音を排除すれば、自分の好きなことを楽しめる。
仕事もシンプルなほど調子が出る。
文章だって、シンプルなほど力強く訴えかける。
余分な言葉をどんどん削っていけば、核となるアイデアを伝えるのに必要な言葉だけが残る。
「シンプル」には、いろんなとらえ方があるだろう。
化学製品はやめて自然の原料だけを使うようにするとか、ものを買うのをやめて自分で作るとか、そんなふうに考える人もいるかもしれない。
それもすばらしいことだと思う。
しかし、私が人生に求める「シンプル」とは、やることそのものを減らすことだ。
しっかりと選択をして、これまでよりも大きな結果を出すのだ。
こんなふうに人生をシンプルにするには、次の2つのステップがカギとなる。
[人生をシンプルにする2つのステップ]ステップ1大切なことを見極めるステップ2それ以外のものを取りのぞく本書の基本はつねに、この2つのステップだ。
「大切なこと」だけに集中して、それ以外は取り除いてシンプルにする─。
これだけであなたの毎日は楽しくなる。
ストレスだって減る。
それに意外だと思うかもしれないが、今までよりもずっと生産的になれる。
2年で私の人生は一変したつい2、3年前まで、私は大きな借金を抱えていた。
しかも仕事、仕事でほとんど家族の顔も見られない。
ストレスはピーク状態だった。
食事は脂ぎった塩分たっぷりのものばかり。
運動はしない。
タバコは吸う。
体重オーバーで、不健康。
仕事は少しも楽しくなくて、将来も見えてこない。
人生は複雑で、好きなことに割く時間などどこにもなかった。
そこであるとき、「人生をシンプルにしよう」と決意したのだ。
まずは、タバコをやめることに挑戦した。
それだけに集中し、全エネルギーを注いだ。
すると驚くべきことが起こった。
それまで何度も失敗していた禁煙に成功したのだ。
禁煙という大きな壁を突破したことで、私はがぜんやる気が出て、いろいろなゴールに挑戦してみた。
ただしやり方はいつも同じ。
「1度にひとつ」のゴールだけに集中するのだ。
すると、壁はどんどん崩れていった。
私はこれをワン・ゴール方式と呼んでいる。
あれもこれもいっぺんに手を出さずに、いつも「1度にひとつ」のゴールだけに集中する。
これがポイントだ。
〈ワン・ゴール方式で私が達成したこと〉1ジョギングを習慣にした。
2ヘルシーな食事をするようになった。
3計画的、生産的になった。
4マラソン大会に2回出場した。
5サイドビジネスで収入が倍になった。
6早起きの習慣を身につけた(毎朝4時に起きている)。
7菜食主義になった。
8トライアスロンを2大会完踏した。
9はじめたブログ(ZenHabits)が有名になった。
10借金をゼロにした。
11生まれてはじめて緊急時用の貯金ができた。
12人生をシンプルにした。
13家の中をきれいにかたづけた。
1420キロ近く痩せた。
15電子ブックを2冊出してベストセラーにした。
16小説の草稿を書き上げた。
17会社を辞めて、家で仕事をするようになった。
182つめにはじめたブログも人気が出た(ライター向けのブログWriteToDone)。
19本書を出版した。
6人の子供たちを育て、彼らのために時間をとりながら、私はこのリストを達成した。
このすべてを2年で実現するのは、大変そうに見えるかもしれないが、小さなステップに分けて、ひとつずつ取り組むことでいつのまにか達成できた。
私のブログ(ZenHabits)の大勢の読者から「1日はみんな同じ24時間なのに、どうしてそんなに多くのことを達成できたのか」と質問を受ける。
私の答えはこうだ。
「制限を設けて、本質に迫ることだけに集中したからだ」こうすれば必ず達成できるのだ。
人生をシンプルで生産的にする「6つの原則」本書のパートⅠ・原則編では、人生をシンプルで生産的にする「6つの原則」をとりあげている。
このルールは、あなたの人生をシンプルに変えると同時に、生産性を最大限に高めるカギとなるものだ。
この原則が本書全体を貫く基本的な考え方となっている。
原則1制限する原則2本質に迫ることだけを選ぶ原則3シンプルにする原則4集中する原則5習慣化する原則6小さくはじめるパートⅡは実践編だ。
仕事からプライベートまで、人生の大切な場面で「6つの原則」を実践するための具体的なテクニックを紹介している。
「減らすこと」で人生は変わる数や量を「増やすこと」を追いかけるのはもうやめて、制限を設けよう。
それがすべてのカギとなる。
本書では、各章で「増やすこと」をやめて焦点を絞り込む方法、その対象に集中する方法、その集中力を使って仕事もプライベートもパワフルに変えていく方法を紹介している。
「増やすこと」をやめるのは、仕事に限らない。
情報や約束ごとの量を減らしていくコツもぜひ参考にしてほしい。
余分なものをどんどん減らしていけば、ストレスも減って、生産性が高まる。
余分なものを減らしてシンプルにする─たったそれだけのことに、途方もない底力が潜んでいる。
あなたにもきっと実感できるはずだ。
その力を使って、人生のゴールをひとつひとつ達成していこう。
いつもおだやかな心で仕事に集中できる、そんな環境作りのコツなども紹介しているので参考にしてほしい。
「増やすこと」を追い求める生き方をやめ「減らすこと」に取り組めば、人生が変わる。
それが本書のコンセプトだ。
しかし、決して抽象的な本ではない。
実際に使えるテクニックを数々紹介している。
ぜひともあなたの毎日に活かしてほしい。
はじめに押しよせる〝波〟の中でやすらぎを見つけるシンプル・イズ・ベスト2年で私の人生は一変した人生をシンプルで生産的にする「6つの原則」「減らすこと」で人生は変わるパートⅠ・原則編「減らすことの威力」を俳句に学ぶもっともインパクトがあることを選ぶ人生のあらゆる場面で制限する[減らす原則1]制限する制限ある生き方のメリット一度にひとつずつ変える制限値を決め、習慣化する[減らす原則2]本質に迫ることだけを選ぶ生産性だけ上げても意味はない「本質に迫ること」を見極める9つの質問さまざまな場面で9つの質問をする[減らす原則3]シンプルにする[減らす原則4]集中する集中で人生改善シングルタスクに集中する「今」に集中する[減らす原則5]習慣化する「習慣化チャレンジ」はなぜうまくいくのか?習慣化チャレンジのルール12の基本習慣からはじめよう[減らす原則6]小さくはじめる小さくはじめると成功する理由「いつでも、なんでも」はじめてみようパートⅡ・実践編[減らすテクニック1]シンプル・ゴール「ワン・ゴール」方式[減らすテクニック2]シンプル・プロジェクト達成に集中するプロジェクト・リストが思い通りにできないときに[減らすテクニック3]シンプル・タスクもっとも重要なタスクMostImportantTask(MIT)スモール・タスク[減らすテクニック4]シンプル時間管理時間管理が苦手な人はオープン・スケジュールでいこう意識的に「フロー」に入る自分の優先順位を知るタスクを減らすバッチ処理でまとめてかたづけるシンプル時間管理のツール[減らすテクニック5]シンプル・Eメール〝受信トレイ〟を最小限に減らすEメールの処理時間を減らす入ってくるメールを減らす受信トレイを空にする書く量を減らす[減らすテクニック6]シンプル・インターネットインターネットの使用状況を自覚する目的を持って計画的に使う「オフライン」で仕事するインターネット依存症を克服する[減らすテクニック7]シンプル・ファイリングシンプルなファイル・システムを作る家の中の書類整理に応用する[減らすテクニック8]シンプル・コミットメントリストアップするショート・リストにする大切ではないものを減らす「ノー」と言う好きなことをする時間を作る人生をシンプルにする[減らすテクニック9]シンプル・ルーチン「朝ルーチン」の力「朝ルーチン」を選ぶ「夜ルーチン」で明日へのスーパーチャージ「夜ルーチン」の基本例習慣化のコツ[減らすテクニック10]シンプル・デスクすっきりとしたデスクの効用最初の一歩を踏み出すには本質に迫ることだけに絞る「すっきり」を保つコツ家の中もシンプルにシンプル・ホームを維持するコツ
[減らすテクニック11]シンプル健康管理健康管理はなぜ難しいのかシンプル健康管理プランステップ1エクササイズを習慣にするステップ2食事管理に少しずつ取り組むステップ3じわじわとレベルを上げながら継続するエクササイズのモチベーションを高める方法30[減らし続けるために]モチベーションをどう保つかモチベーションとは?スタート地点でモチベーションを高める8つの方法つらいときにモチベーションを維持する20の方法
[さあ、減らすことを始めよう]やることを減らすとなぜ成果が上がるのか?私たちは今、「増やすこと」を求める時代に生きている。
もっとお金を稼いで、もっと大きな家に住んで、もっといい車に乗って、もっとハイテク製品を買って、もっと買って、もっと作って、もっと働いて……。
毎日はかつてないほど目まぐるしい。
しかし、こんな人生を続けていたら、必ずどこかで限界が来る。
1日はだれにとっても24時間。
それを超えることなんてどうしたってできない。
それなのに、世の中にはそんな限界を「挑戦」だと受けとめる風潮がある。
「1日にもっと詰め込むにはどうすればいいだろう?」「もっとうまく時間管理をして、もっと能率を上げるコツを勉強したら、もっとたくさん仕事をこなせるようになるだろうか?」しかし、「増やすこと」を追求しても、最高の結果が得られるとは限らない。
問題はここだ。
「数え切れないほどの仕事をこなした」ことは「意味あることを成し遂げた」こととはイコールではない。
それどころか、「数をこなせば、そのうちどれかが大きく当たるぞ!」と行き当たりばったりのギャンブルをするようなものだ。
ここで試しに、ふたりの新聞記者を例にとってみよう。
ひとりは、毎週大量に何本もの記事を書くことを目指すタイプ。
もうひとりは、週にたった1本だけ。
数を追う記者のほうは、ありとあらゆる情報にざっと目を通し、ちょっとでもネタになりそうなものなら拾ってきて短時間で原稿を書き上げる。
しかし、通りいっぺんの記事に、読者からの反応は特にない。
それでも編集長は記者の仕事量に満足して、彼をほめたたえる。
一方、週に1本だけと決めた記者は「なんとしてもこれを当てなければ」と心に誓う。
まず初日は、じっくりと半日かけて情報収集とブレインストーミングだ。
読む人をうならせるインパクトの強い題材を精選する。
賞が狙える記事になりそうだ。
次の2日間はリサーチに費やし、残り2日で原稿をまとめる。
事実確認にも念を入れた。
すると、どうなるだろう?週に1本だけと決めた記者の記事は読者に愛され、その週で最高の記事となり、賞まで獲得する。
そして昇進だ。
彼の力量は広く知れ渡り、人々の記憶にも長く残る。
1本の記事をきっかけにして、キャリアを築いていけるのだ。
「減らすことの威力」を俳句に学ぶ俳句は、ご存知の通り5・7・5の17文字だけで自然を詠む。
俳人はその制限の中ですべてを表現しなくてはならない。
伝えたいことがあればあるほど大変な作業になる。
俳人には2つの選択肢がある。
短い時間でそれらしい言葉をさっと並べるか。
自分の思いを伝えるのにもっともふさわしい「本質に迫る言葉」を厳選するか。
たった17文字という制限の中で、もっとも力強い一句を生み出すのは、後者のほうだ。
重要なのは「本質に迫ること」だけを選び出すこと──それが俳句の教訓。
この教訓は、「人生をシンプルで生産的にする6つの原則」のうち、最初の2つにあたる。
[原則1]制限する何ごとも制限しよう。
制限することで「本質に迫ること」を厳選することができる[原則2]本質に迫ることだけを選ぶ時間とエネルギーを最大限活用し、小さな元手で大きなインパクトを生み出せるこの2つは、本書の柱となる原則だ。
ここから先は、いわばその解説と言ってもいい。
実際にあなたの人生にどう当てはめていけばいいのか、具体例も挙げている。
ぜひ参考にしてほしい。
もっともインパクトがあることを選ぶ職場では、だれもが「週30本の記者」になりかねない。
大量の仕事をさばけば、まわりから賞賛される。
自分にまわってきたどんな仕事でもやろうとする人が、働き者として好かれるのだ。
しかし、それ以外の選択肢もある。
やることを絞り込んでインパクトのある仕事をするという選択だ。
では、そもそも「インパクトのある仕事」とはなんだろう?これにはさまざまなとらえ方があるはずだ。
たとえば、・自分の力を認めてもらえるもの(しかも一時的ではなく、長期的に)。
・長期的に見て、収入に大きくプラスになるもの。
・会社への貢献度が高いもの(収益、ブランド、新分野の開拓など)。
・大きな昇進や転職のきっかけになるもの。
・人生の重要な転機になるもの。
・社会や人類に貢献するもの。
これらはほんの一例に過ぎない。
「まだほかにも思いつくよ」と言う人もいるだろう。
では、実際にどんなタスクやプロジェクトが、あなたにとって「インパクトがある」のか?それを見極める効果的な方法を2つ挙げてみよう。
方法①リストを検討する自分自身の目標リストやToDoリストを見ながら、次のように自問しよう。
「これには、今週や今月だけで終わらない長期的インパクトがあるだろうか?」「自分のキャリアや人生をどう変えてくれるだろうか?」「人生の目標や夢に向かって前進させてくれるだろうか?」「その目標は、そもそもどれだけ重要なものだろうか?」以上の質問に答えていけば、長い目で見て一番インパクトのある取り組みを見極めることができる。
慣れれば実に簡単だ。
数分あれば検討できるようになる。
方法②ゴールから考えるまず「この1年で達成したいと心から思うことは何か?」を考えてみよう。
次に、そのゴールを基点にしてやることを選ぶ。
この方法で選んだことなら、実行するたびに「自分は着実にゴールへ向かっているのだ」と実感できる。
つまり、いつも間違いなく「もっともインパクトがあること」に取り組んでいることになる。
選んだことはどれも、長期的なゴールに直接つながっているものなのだから。
2つのうち、どちらの方法を使うべきか?それはあなたしだいだ。
両方を合わせて使ったってかまわない。
そのほうがいいとも私は思う。
目標と関係がないことをしなければならない場合は、だれにだってある。
そうしたことすべてを書き出していれば、ToDoリストはずいぶん長くなっているはずだ。
ちょっと油断すれば、ゴールに関連のある重要な取り組みが、関連のないこまごまとしたタスクの中に埋もれてあっという間にわからなくなってしまう。
だからこそ、①リストの中身をきちんと検討して、あるいは②ゴールを考えて、もっともインパクトがある取り組みを見極めることがカギとなる。
「とりあえず片っ端からやる」のはやめて、あなたの人生に意味のあることかどうかをまず考えよう。
人生のあらゆる場面で制限する「制限して、選択を強いる」という俳句の教訓は、ToDoリストに限らず人生のどんな場面にも応用できる。
普段の生活の中で「やることが多すぎてもう手に負えない」「もっとシンプルにやりたい」そう感じる場面があれば、そこに制限を設けてみよう。
Eメールが山のように来る?だったら制限。
メールをチェックするのは日に2回。
それぞれ5通だけ返信する。
そうすれば、どうしても効率的にならざるを得ない。
重要なメールだけを書くようになる。
プロジェクトの数が多すぎる?3つに絞ろう。
家の中がものだらけ?200アイテムまでに抑えよう。
と、こんな具合だ。
それぞれの具体的な方法については、実践編で紹介する。
俳句の教えを実行に移せば、あなたの毎日はきっとパワフルに充実していくはずだ。
この原則編では、まず次の3つの質問について考えてみるといいだろう。
質問①やることが多すぎると感じるのはどんな場面だろう?質問②何をシンプルにしたいだろう?質問③ものや情報、仕事などを制限する心の準備はできているだろうか?これらの質問は、何があなたの人生に絶対必要で、何がそうでないかについて考えるきっかけになってくれる。
詳しくは、次の章で見ていこう。
[減らす原則1]制限する私たちの時間や場所には限りがある。
そこに何もかも詰め込もうとするのは、小さな箱の中に図書館の本を全部押し込めようとするようなものだ。
できるはずがない。
あっという間に箱がぼろぼろになってしまう。
それなのに、私たちは制限のない生き方をやめられない。
まるで限度額を決めずにとめどなく買い物を続けているようなものだ。
欲しくもないものや、なんの必要もないものがどんどん家の中にあふれかえっていく。
制限のない生き方は、たったコップ1杯の赤い水を大海に注ぐようなもの。
赤い水はあっという間に薄まって「無」となってしまう。
しかし、焦点を絞り込んだシンプルな生き方なら、大海をドラム缶くらいにまで小さくすることができる。
制限のない生き方は、3日ごとに1試合を投げ切る投手のようなもの。
できるだけ速く、多く投げ続けていたら、そのうちスピードは落ちてくる。
へたをすると、いずれ投げることさえできなくなるかもしれない。
しかし、3日ごとに1イニングだけなら、エネルギー全開で、そのたびに打者を打ち取れるかもしれない。
制限のない生き方は、1本のシャベルで広い畑を隅から隅まで耕そうとするようなもの。
制限を設けて集中する生き方なら、ここだと決めた場所を掘り進んで湧き水を見つけることができる。
制限のない生き方は弱い。
しかし、制限して集中すれば本当の力が出せるのだ。
制限ある生き方のメリット目まぐるしいだけで効率の悪い「制限のない」生き方から、集中力とエネルギーにあふれる「制限のある」生き方に変えられたら、これほどすばらしいことはない。
何をするにも制限すれば、数々のメリットがある。
以下はほんの一例だ。
メリット①制限すれば、ものごとがシンプルになる自分の人生をコントロールしやすくなって、ストレスが減る。
メリット②制限すれば、集中力が発揮できる無駄に集中力が落ちることなく、限られたものだけにエネルギーを集中できる。
メリット③制限すれば、重要なことに的を絞れる「何もかも抱え込んで、人生にとって大切なことにまわす時間がない」という毎日にピリオドを打てる。
これはほとんどの人にとって劇的な人生の変化になるはずだ。
メリット④制限すれば、達成できる多くのことに手を出すと、重要なタスクやプロジェクトまで進まなくなる。
しかし、限られた数の重要なことだけに集中すれば、ずっと大きな結果を出せるようになる。
メリット⑤制限すれば、あなたの時間の大切さを示せるすべてを引き受けていると、「あの人はイエスと言う人なのだ」と受け取られる。
つまり、あなたの時間より、仕事を依頼する側の時間のほうが大切なのだと思われる。
しかし、断固とした制限は「私の時間や優先順位は大切なのだ」というメッセージになる。
そうすれば、まわりもそれに応えて、あなたの時間を大切にするようになる。
メリット⑥制限すれば、効率が高まるターゲットを絞り込めば、空回りがなくなる。
そして、持続的な影響力を持つような、本質に迫る重要な取り組みに、限られた時間とエネルギーを集中させることができる。
「本質に迫ること」ではないことを人生から減らしていこう。
一度にひとつずつ変える人生をまるごと変える必要なんてない。
そんなことが失敗に終わるのは目に見えている。
一度にあれもこれもやろうとするのは、本書のテーマとは正反対だ。
うまく制限を設けるには「一度に1場面」、それも成功の確率が高そうなところから手をつけよう。
では、実際にどこから始めるべきか?これには、だれにでも合う答えはない。
人生は人それぞれだ。
あなたにはあなたに合ったポイントが必ずある。
2~3分時間をとって、毎日の生活について考えてみてほしい。
何に時間をとられすぎたり、やることが多すぎたりして困っているだろう?シンプルにしたいのはどんなことだろう?以下に少し例を挙げてみよう。
・Eメールの処理・毎日のルーチン業務の処理・電話の時間・進行中のプロジェクトの数・いつも読んでいるブログの数・インターネットに費やしている時間・デスクの上にあるものの数
まずはこのあたりを出発点にして、制限してみよう。
ほかのことにはあとからゆっくりと挑戦すればいい。
とにかく「1度に1場面」に変えることに集中して、それがルーチン化するまで、つまり、制限に違和感を覚えなくなるまで続けよう。
制限値を決め、習慣化するなんにでも、最初に「制限値」を決めるときは手探り状態だ。
どの値が自分に一番合っているのかは、実際に試してみないとわからない。
まずは、これまでの経験や理想をもとにはじき出してみよう。
たとえばメールチェックの回数を制限する場合、今まで何年もメールをチェックしてきた経験を踏まえたうえで、合理的な数を選ぼう。
今、あなたが1日に10~15回チェックをしていて、ほかの仕事がはかどらなくて困っているとしよう。
それなら1日1~5回に抑えてみてはどうだろう?もしかすると、1日2回(朝1回と、退社前に1回)がちょうどいいかもしれない。
制限値が決まったら、次は「実地テスト」で実際に試してみる。
決めた回数でなんとかやっていけそうだろうか?それともコミュニケーションに大きな障害が出てしまっただろうか?あるいは、ぐっと仕事がはかどるようになっただろうか?最初の1週間はいわばテスト期間だ。
うまくいかなかったら、ほんの少し修正してみよう。
だれにでもうまくいく決まった数などないのだ。
1日2回が少なすぎたら、3回に増やしてみる。
逆に2回より減らしても問題がなさそうだったら、1回にしてみる。
試行錯誤しながら自分に合ったポイントを探して、それがルーチン化するまで続けよう。
しっかりと体になじんだら、どんな場面でもやり方は同じ。
ステップ①現在の回数を把握するそれを1日に何回やっているだろう?まず現在の「値」を把握して、それより低い、あなたが理想的だと思う制限値を決める。
ステップ②1週間試す1週間ほど試してみて、うまくいっているかどうか分析する。
ステップ③新たな値を試すしっくりこなかったら、新たな制限値を決めて、1週間ほど試してみる。
ステップ④繰り返して、続ける自分にぴったりの制限値が見つかったら、ルーチン化するまで続ける。
一度制限すると、その中で最善を尽くそうと努力するものだ。
「本質に迫ること」だけを選ぶようになり、思考も行動もシンプルになる。
それが「制限」の真の力だ。
限りがあるからこそ、「本質に迫ること」だけに集中できる。
これについては次章でさらに詳しく見ていこう。
[減らす原則2]本質に迫ることだけを選ぶここからは、まず原則2「本質に迫ることだけを選ぶ」を見て、そのあと原則3「シンプルにする」へ進んでいこう。
何ごとも「本質に迫ること」を厳選することで、シンプルにすることができる。
はじめにしっかりと選んでから、それ以外の余分な部分を減らす。
ただやみくもに減らすだけでは、大事なところまでそぎ落としてしまいかねない。
ではまず、「本質に迫ること」を見極めるにはどうすればいいだろう?肝心なのは、そこだ。
そのコツさえつかめば、あとは簡単だ。
昔こんな笑い話があった。
「なあ、木彫りの象って、どうやって作るんだ?」「そりゃあ簡単だ。
象らしくないところを全部削ればいいんだよ」なるほどその通り。
そのためにはまず、象の姿をしっかりと把握しておかないと。
生産性だけ上げても意味はない世間で紹介されている「生産性を上げるコツ」には、順序があべこべのものが少なくない。
何をすべきかを考えるより、とにかくなんでも手早く済ませることに終始している。
売りになっているのは、急ぎのタスクを一気にかたづけるワザや、洪水のように襲ってくる仕事や情報を次々とさばいていくテクニック。
しかし、そんなやり方では、飛び込んできたものを何もかもやるはめになってしまう。
これでは仕事や情報の洪水に足をとられてしまうだけ。
つまり、他人のニーズや気まぐれに翻弄されるだけなのだ。
そうならないためには、何をするにもまず「本質に迫ることはなんなのか」を自問すること。
どのEメールに返事をすべきか迷ったときも、タイトな予算で今月は何が買えるだろうかと悩んだときも、デスクの上や家の中をどうかたづけようかと途方にくれたときも、「本質に迫ることはなんなのか」をまず考えてみてほしい。
それでこそ、ものごとが正しい順序に整う。
馬は荷車の前に。
馬が後ろでは進めない。
いつも最初に「本質に迫ること」を見極めてから、ひとつひとつ達成していこう。
「本質に迫ること」を見極める9つの質問何をするときもまっ先に以下の9つの質問をして、「本質に迫ること」を見極めよう。
いったんコツをつかめば、無意識のうちにできるようになるはずだ。
質問①どんなことに価値を感じているのだろう?あなたが「これだけには思い入れがある」というものはなんだろう?これからどんな人になりたいだろう?人生のポリシーは?自分の価値観をしっかりと自覚できれば、それがすべての軸となる。
何を選ぶべきかが、そこから見えてくるはずだ。
質問②どんなゴールを目指しているのだろう?あなたが人生で成し遂げたいことはなんだろう?この1年でやりたいことは?それとも今月中なら?今日中なら?ゴールさえ定まっていれば、やるべきことや買うべきものに悩むことがあっても、それがゴール達成のために必要かどうかを考えればいい。
質問③心から好きなものはなんだろう?「これなしではやっていけない」と思うものはなんだろう?一番一緒にいたい人は?いつも夢中になれることはなんだろう?質問④何が大切なことなのだろう?趣旨は③と同じだ。
リストアップしてみよう。
あなたのキャリアや人生で、一番大切なことはなんだろう?いろいろな状況や場面で考えてみてほしい。
質問⑤もっともインパクトが大きいことはどれだろう?複数の中から選択するときは、あなたのキャリアや人生に「一番大きな変化を生み出すものはどれか」を考えてみよう。
たとえば、顧客に電話をかけるか、直接出向くか、手紙を書くかで迷ったら、それぞれがもたらすインパクトを具体的に考えてみるといい。
顧客に電話をすれば、ひとり当たり100ドルほど使ってくれそうだ。
直接出向いて契約をとれれば1万ドルのビジネスが見込める。
手紙は、読んでさえもらえないかもしれない……。
とすれば、直接出向くことを選ぶべきなのだ。
質問⑥長期的にインパクトがあることはどれだろう?影響力の大きさと長期的なメリットは、いつも一致するとは限らない。
先ほどの例でいくと、顧客のところに直接出向いて商談すれば、来週には1万ドル舞い込むかもしれない。
しかし、マーケティング・キャンペーンを展開すれば、1年後にその何十倍もの利益が出る可能性がある。
ただし、インパクトの大きさは必ずしも金額を基準にする必要はない。
あなたにとって価値あることを基準に考えてみよう。
質問⑦それは「必要なもの」?それとも「欲しいもの」?これは買い物に迷ったときに有効な手がかりになる。
あなたにとってそれは本当に必要だろうか?「ただ欲しいだけ」ではないだろうか?
大切なことさえはっきりすれば「ただ欲しいだけのもの」はリストから外していける。
何しろ大切ではないのだから。
質問⑧「」ない逆方向から考える手もある。
つまり、「本質に迫ること」ではないことをリストから消していくのだ。
たとえば、車を洗うことなんて、請求書の支払いをしたり、水道代をバカみたいにかさませる水漏れを直したりすることに比べたら、重要ではない。
大切ではないことを削っていけば、自然と大切なことだけがリストに残る。
質問⑨まだ減らせることはないだろうか?一気に「本質に迫ること」だけのリストを作るなんて、なかなかできることではない。
まず重要ではないものをいくらか減らして、残ったものをもう一度洗いなおしてみよう。
1~2週間後にまた見なおして、さらに減らす。
このプロセスを繰り返して、「よし!もうこれ以上減らすものはないぞ」というところまできたら完成だ。
さまざまな場面で9つの質問をする9つの質問は、何があなたにとって「本質に迫ること」なのかを把握するには、実にいい方法だ。
どんな場面にでも当てはめて考えることができる。
仕事、Eメール、家計のやりくり、人生の目標、さまざまな約束ごと、散らかり放題のデスクや家の中……。
対象がなんであろうと、つねに一番大切な最初のステップは「何が本質に迫ることなのか」を見極めることだ。
それでこそシンプルで効率的な生き方ができる。
ほんの数分でもいいから一度立ち止まって、今やっていることを広い視野から見つめなおしてみよう。
あなたにとって「本質に迫ること」とはなんだろうか?あなたは今「本質に迫ること」に集中しているだろうか?それ以外の「本質に迫ること」ではないことは減らしていけるだろうか?こんなふうに時間をとって考えてみれば、本当に大切なことが見えてきて、やりたいことに集中できるようになる。
大切なことに集中すれば、大切なことを達成できる。
どうでもいいことや、ゴールの達成につながらないことに割いていた時間を大切なことにまわせるようになる。
ではここからは、9つの質問をどんなふうに実際の場面に当てはめていけばいいのか、いくつか例を挙げてみよう。
★人生のコミットメントあなたの人生で本質に迫るコミットメントとはなんだろう?9つの質問(特に価値観、ゴール、心から好きなものに関する質問)をして見極めていこう。
★今年のゴール新年を迎えると、「あれをやろう」「これをやろう」といろんな欲が出てくる。
しかしあとで振り返ると、実際には思い通りになっていないことが多い。
その理由は、ゴールをたくさん設定しすぎることだ。
年にひとつか2つのゴールに減らして集中しよう。
9つの質問をすれば、どのゴールが重要なのかを見極められる。
重要度が低いゴールには、あとでとりかかればいい。
★プロジェクトやタスクToDoリストが長くなったら、シンプルに短くしよう。
9つの質問をすれば優先するべきものがわかる。
9つの質問のうち、ここで一番関連が深いのはゴールと影響力に関するものだ。
★Eメール返信の必要なEメールが20通あったら、9つの質問で重要な3~5通を選んで今日返信しよう。
それ以外は明日にすればいい。
大胆にいく勇気があるなら削除してしまおう。
★家計のやりくり「必要なもの」か「欲しいもの」かの区別も大切だが、ゴールと価値観についての質問も肝心だ。
ゴールと価値観に照らして出費を考えれば、「本質に迫ること」ではないことへの無駄づかいをぐっと抑えられる。
これでふところ具合も安心だ。
★散らかったデスクや家「必要なもの」か「欲しいもの」かの質問でいらないものを削り、見なおしを繰り返そう。
ガラクタが少しずつ減っていって、最後には本当に必要なもの、あなたが心から好きで実際に使っているものだけが残る。
★定期的な見なおし1回の質問で「本質に迫ること」だけに絞り込むなんて、まずできることではない。
価値観やゴールが変わることもあるし、制限に慣れ、ものの見方が変わることもある。
いったん「本質に迫ること」ではないことを減らしたら、あらためてチェックする日を決めてカレンダーに印をつけよう。
そうやって何度か見なおしを繰り返す。
減らすことだけにムキになってあせらずに、ぜひ過程を楽しみながらやってみてほしい。
いらないものを減らしてシンプルにするのは、人生を空っぽにするためではない。
本当にしたいことをするための余裕を持つためだ。
自分に欠かせないものはなんなのかをしっかりとつかんでから、シンプルを目指そう。
[減らす原則3]シンプルにする減らすことは、実際にはそれほど楽ではない。
ただ、慣れればやりやすくなる。
たとえば、あなたがToDoリストの中から「本質に迫ること」を3つ選び出したとしよう。
長いリストをシンプルにするには、その3つ以外をできるだけ減らしてしまいたい。
まずは、「本質に迫ること」でないものに線を引いて消していこう。
次に、ほかの人にまわせるものがあればまわす。
あとに残るのは「自分でやらなければいけないが、特に今日やる必要はない」ものだろう。
その通り、あとまわしにすればいい。
困るのは、人から「本質に迫ること」とは思えない仕事を頼まれたときだ。
この場合、あなたは「ノー」と言うことを覚えなければならない。
これについては「シンプル・コミットメント」の章で詳しく話そう。
今はただ、本質に迫ることに集中するためには「ノー」と言うことが欠かせないと知っておいてほしい。
シンプルに生きていくためにはそんな覚悟が必要だ。
「ノー」は慣れてくれば言いやすくなる。
「本質に迫ることに集中していれば、長い目で見て自分のためになる」という確信が持てるようになればなるほど、言いやすくなる。
しかも、きちんと「ノー」が言えるようになると、まわりの人はあなたを正直な人間だと見てくれるようになる。
仕事を抱えすぎてあたふたすることなく、いつも自分に何ができるかをしっかりとわかっている人だということが伝わるからだ。
すると、人はあなたの時間を大切にしてくれる。
あなた自身が自分の時間を大切にしていればこそ、それがかなうのだ。
[減らす原則4]集中する「集中」は最強のツールだ。
ターゲットを絞って集中すれば、望みの結果を効果的に達成できる。
ひとつに集中して達成しよう。
マルチタスクであちこちに手を広げるより、シングルタスクで「今はこれ!」と決めたことに集中したほうが生産性は高まる。
今この瞬間に集中し、不安とストレスを減らそう。
集中で人生改善まずは、集中のいろんな使い方について考えてみよう。
★ゴールに集中する目標を達成したいときも、新しい習慣を身につけたいときも、カギとなるのは集中だ。
自制心でもなければ、ごほうびでも、意志の力でも、モチベーションでさえもない。
ゴールに集中し続けることができれば、成功率がぐっと高くなり、集中できなければ、成功は遠のいていく。
集中力とはそういうものだ。
仕組みは実にシンプルだ。
★「今」に集中する現在に集中すると、ストレスが減り、人生の一瞬一瞬をめいっぱい楽しめ、能率も上がるなど、多くのメリットがある。
過去や未来に気をとられずに現在に集中するのは簡単なことではない。
練習が必要だ。
これに関しては後ほどく見ていこう。
★目の前の取り組みに集中するまわりの世界が見えなくなるほど我を忘れて集中したことはあるだろうか?時間が過ぎるのを忘れるほど没頭する、これがいわゆる「フロー」と呼ばれる状態だ。
これは幸せになるためには欠かせない要素だ。
仕事でも趣味でも、「フロー」に入れることがあれば、幸せは手に入ったようなもの。
人が楽しめるのは、ただ機械的に何かをしているときではない。
無我夢中で打ち込んでいるときだ。
だから最初のステップは、熱くなれることを見つけること。
そして集中の邪魔になるものをまわりから取りのぞき、「今はこれだ」と決めたことに没頭しよう。
★ポジティブな考えに集中するこれも大切なスキルだ。
まずは自分がネガティブな考えを持ってしまっていることに気づくこと。
そして、それをポジティブな考えと入れ替えよう。
私はこれを禁煙とジョギングに挑戦したときに学んだ。
挑戦中には「もうやめたい」と思うことが何度もある。
そんなネガティブな気持ちは早いうちに捕まえておかないと、どんどんふくらみ続け、あなたがギブアップするまで止まらない。
だからこそポジティブな考えに集中しよう。
「ほかの人にできたんだから自分にだってできる!」と考えてみたりするといい。
達成できたときのすがすがしい気分を想像するのも役に立つ。
どんな状況にもプラス面を見出す姿勢は大切だ。
私自身の経験から言っても、そうしたほうが幸せになれる。
与えられたものに感謝する気持ちも忘れないでいてほしい。
シングルタスクに集中する私たちはマルチタスクの時代に生きている。
2つのプロジェクトを同時進行している最中に、上司はあなたのデスクに新たな仕事をまた2つ置いていく。
電話の最中に、Eメールが3通舞い込む。
「そうだ、今日は5時に退社して、帰り道に夕食の買い物をしていかないと」と思っていたら、携帯電話が鳴り出した。
通りかかった同僚はあなたにリサーチを頼んでいく。
ふとRSSリーダーを見れば、未読記事が100を超えている……。
これまで私たちは、ハイスピードで1度にたくさんのタスクをこなす術を学んできた。
それがインターネットの時代にふさわしいスキルだとされてきた。
なんでもハイテクで瞬時にアクセスできる現代、私たちは情報やタスクの洪水に襲われてもがき続け、どんどん時間を奪われていく。
しかし私たちの体は、そんな洪水の中でいつまでも耐えられるようにはできていない。
あっという間に溺れてしまう。
だからこそ、私は「シングルタスク」を強く勧める。
1度にひとつのタスクに集中して、できるだけシンプルに働けば、心の健康を壊さずに生産性を高めることができる。
マルチタスクではそうはいかない。
その理由をいくつか挙げてみよう。
[マルチタスクがうまくいかない理由]1タスクごとにギアチェンジを繰り返さなければならず、かえって効率が悪い。
2マルチタスクは複雑だ。
ストレスの原因になって、間違いも増える。
3それでなくても世の中は混沌としているのに、さらにパニックを起こすもとになる。
マルチタスクはやめにしよう。
これからはシングルタスク。
やり方は以下の通りだ。
ポイント①朝一番にもっとも重要なタスクをかたづけるもっとも重要なタスク(MIT)が終わるまで、ほかのものにいっさい手をつけない。
終わったら、ごほうびにほんの少し休憩をとって、次のMITへ。
午前中に2つか3つ達成できれば、午後からの時間はオマケをもらったようなものだ。
ポイント②集中の邪魔になるものをすべて取りのぞくEメールは受信しない。
できればインターネットの接続ごと切ってしまおう。
携帯電話も切る。
できればデスクの電話にも出ない。
ほかのことは心配せずに、目の前のタスクひとつだけに集中して、達成しよう。
ポイント③気が散ったらゆっくり深呼吸して集中しなおすどうしてもメールをチェックしたくなったり、ほかのタスクと切り替えたくなったりしたら、いったん手を止めよう。
そしてゆっくりと深呼吸。
もう一度集中しなおして、目の前のタスクに戻ろう。
ポイント④割り込んできた仕事は、とりあえず棚上げするがんばっている最中にほかの書類が舞い込んできたら、書類受けへ。
用事を頼まれた場合なら、小さなノートか、パソコンのテキストファイルにちょっとメモしておく。
すぐに目の前のタスクに戻ろう。
ポイント⑤タスクを達成したらスケジュールを見なおすタスクを達成したら、書類受けやメモをチェック。
アクションが必要なものがあったらToDoリストに書き足して、スケジュールを組みなおそう。
メールなどは、前もって決めた時間や回数に合わせて定期的にチェックすればいい。
ポイント⑥中断するときは、すぐに再開できるようにしておくときにはあとまわしにできない仕事が降ってわいてくることもある。
そんな場合は、目の前のタスクがどこまで進んだかをきちんと覚えておいて(時間があればメモしておいて)、関係書類をひとまとめにして脇へどけよう。
「進行中」フォルダや、プロジェクト用のフォルダがあればその中へ。
そして急な仕事がかたづいたら、さっきのフォルダを取り出して、進行状況のメモを見ながらタスクの続きに戻ろう。
ポイント⑦リラックスして楽しもうときどき深呼吸したり、ストレッチしたり、軽く休憩をとることも忘れずに。
人生を楽しもう。
外へ出て自然を味わうのもいい。
心の健康を守ろう。
「今」に集中するこれはシングルタスクと似ているが、とても重要なことだ。
過去や未来ではなく「今」に集中すれば、生産的・効率的に、しかも落ち着いて地に足の着いた仕事ができる。
「今」に集中するには練習あるのみだ。
最初はすぐふらふらと気が散るかもしれない。
「メタ思考」に走ってしまうこともあるだろう。
つまり、「考えること」を考えてしまうのだ。
自分は正しく考えているだろうか、正しく考える方法はあるのだろうか……とあれこれ悩みはじめて、そのうちに「今」はどこかへ行ってしまう。
人間とはそんなものだ。
だれだって経験があるだろう。
うまくいかなくても自分を責める必要なんて少しもない。
とにかく練習だ。
朝でも、昼食をとるときでもいい。
夕方、散歩やジョギングをするときでもかまわない。
夕食後にお皿を洗うときだってできる。
機会さえあれば練習だ。
それでうまくなる。
必ずそうなる。
さっそく「今」に集中するための理想的な方法をいくつか挙げてみよう。
ポイント①食べるときは、ただ食べる1度にひとつのことだけをする。
これが「今」に集中するための、何よりの練習方法だ。
食べるときは、ただ食べる。
何を口に入れているのかきちんと意識しながら、味と歯ごたえを楽しもう。
何をするときにも、急がずに、ゆっくりと。
洗いものをするときも、シャワーを浴びるときも、車の運転をするときも、仕事をするときも、遊ぶときも、1度にあれこれ手を出さず、今やっているそのことだけをやろう。
ポイント②自分の思考を自覚する自分が何を考えているのか、きちんと自覚するのも大切なステップだ。
過去や未来のことはどうしたって考えてしまう。
それでかまわない。
それを考えているという自覚があればいい。
その「気づき」が変化をもたらしてくれる。
ポイント③おだやかでいる過去や未来のことを考えたからといって、自分を責めることはない。
無理に頭から押し出そうとしなくたっていい。
ただそんな考えを思い浮かべていることを自覚して、それがおだやかに消えていくのを待とう。
そしてまた現在に意識を戻せばいい。
ポイント④運動をするエクササイズ(運動)は私にとって瞑想のようなものだ。
ジョギングをするときは、ただ走る。
走ることそのものに、呼吸に、体に、現在だけに集中する。
ポイント⑤毎日のルーチンに集中するどんな日課でも瞑想にすることができる。
洗いものだって立派な瞑想になる。
ウォーキングだっていい。
歩くことだけに集中だ。
なんでも題材にしてみよう。
ポイント⑥メモやリマインダーを活用する冷蔵庫や、パソコンのデスクトップや、壁にメモを貼っておこう。
インターネットのリマインダー・サービスを使って、毎日メールで念を押してもらうのもいいだろう。
現在への集中から離れないでいられるようにしてくれるものなら、なんだっていい。
ポイント⑦「」ときにはうまくいかないこともある。
でも気にしない。
大切なのは続けることだ。
続ければ、必ずうまくなる。
「失敗」なんてない。
1日や2日飛ばしたって大丈夫。
途中でいやになったら、一度ゆっくりと深呼吸して「さあ、どうすればいい?」と自問しよう。
答えは「練習あるのみ」だ。
[減らす原則5]習慣化するシンプルに生きるための原則5は「習慣化すること」だ。
これはあなたが起こした前向きな変化を長続きさせること。
人生の改善には不可欠だ。
せっかくの努力を水の泡にしないためには、「増やすこと」をやめよう。
どんな習慣を身につけるときも、それが唯一の秘訣だ。
1度にひとつに集中して、あなたの全エネルギーをかけて30日間続けよう。
このテクニックは、その名も「習慣化チャレンジ」。
私のブログの読者にも大好評で、「新たな習慣を身につけるのに極めて効果的」との折り紙つきだ。
では、その方法を紹介していこう。
ステップ①チャレンジする習慣をひとつだけ選ぶあなたの人生にもっとも大きな影響を与えると思うものなら、どんな習慣でもいい。
選べるのは、1カ月にひとつの習慣だ。
ステップ②計画を書き出すゴール(たとえば「毎日エクササイズする」)のほかに、「引き金」も忘れずに書こう。
引き金とは、「行動を誘うきっかけ」になるものだ。
引き金には、すでにルーチンの一部になっているものを選ぶといい。
たとえば「歯を磨いたら、エクササイズをはじめる」といった具合だ。
この場合は、「歯を磨く」というルーチンを、エクササイズの引き金に選んだのである。
ステップ③ゴールを公表する新たな習慣に挑戦していることをできるだけ大勢に知らせよう。
ホームページやブログ、SNSなどがお勧めだ。
Eメールで同僚や家族や友人に知らせてもいい。
とにかくできるだけたくさんの人に公表しよう。
ステップ④毎日の成果を報告する挑戦を知らせた人たちに、毎日の成果を報告しよう。
ステップ⑤身についたことを祝おう!30日後、あなたは新たな習慣を身につけている。
もちろん、そのあともきちんと習慣になっているかどうか確かめる必要はあるかもしれない。
しかし、30日間ずっとがんばってきたのなら、もう十分に身についているはずだ。
「習慣化チャレンジ」はなぜうまくいくのか?この30日間の「習慣化チャレンジ」は、新たな習慣を身につけるのにかなり有効だ。
これまで大勢の人が成功しているのには数々の理由がある。
理由①専念するものを自分で決めるから自分自身で、ひとつのものに専念すると決め、目に見えるゴールを設定する。
そして、みんなに誓いを立てる──これだけでも大きな前進だ。
理由②報告するから毎日報告するとなると、きちんとやらずにいられない。
「今日もやったぞ!」とみんなに胸を張れるからだ。
ぐっとポジティブな気分になれるし、報告がごほうびにもなる。
理由③励ましを得られるからたとえば私自身、あるチャレンジ中に2~3日、体の調子が悪かったことがある。
そのとき「励ましてくれないか」とみんなに頼んだら、これでもかというほどやる気をもらえた。
おかげで無事にチャレンジに戻ることができた。
理由④刺激を得られるから仲間がたくさんいると、「ついていきたい」と思えるような先輩がどこかに必ずいるものだ。
ほかの人がうまくやっているのを見ると刺激される。
みんなにできるのなら、あなたにも必ずできる!とにかく、仲間を見つけることだけは強くお勧めする。
オンラインでもオフラインでも、あなたの挑戦を支えてくれるはずだ。
フォーラムやコミュニティはインターネット上にたくさんある。
きっとあなたの習慣を変える「てこ」の力になってくれるだろう。
習慣化チャレンジのルール「習慣化チャレンジ」を成功させるルールはごく限られている。
以下の点さえ守れば、何も身につかないまま30日を過ごすほうが難しいくらいだ。
ルール①1度にひとつだけこのルールは破るべからず。
1度にいくつも手を出せば成功は遠のく。
断言する。
私自身の経験から言っても、マルチチャレンジの成功率は0%。
シングルチャレンジなら50~80%。
残りのルールを守るかどうかで、この成功率は変わってくる。
ルール②達成しやすいゴールを選ぶ最初は毎日無理なくできそうなことからはじめよう。
無理なくどころか、「これならできる」と思うものよりさらに楽そうなものを選ぶのがいい。
毎日30分ならできると思ったら、10分を選ぶ。
あっさりとクリアできそうなものを選んでおくのが成功の秘訣だ。
ルール③目に見えるゴールを選ぶ
うまくいったかどうか、毎日はっきりとわかるものを選ぼう。
エクササイズを習慣にすることに決めたら、「毎日20分」などと時間を設定するといい。
ルール④いつも同じ時間に行うできればいつも同じ時間にチャレンジしよう。
たとえばエクササイズなら、毎朝7時とか毎晩6時にはじめる。
ランダムにやるよりもずっと習慣化しやすい。
ルール⑤毎日報告する2~3日おきの報告でもかまわないが、毎日報告したほうが成功率は高くなる。
これはシンプル・チャレンジのフォーラムで実証済みだ。
ルール⑥前向きな気持ちを忘れずに!ときには壁にぶつかることもある。
しかし「そんなものだ」とわきまえて、こだわりすぎずに前進だ。
シンプル・チャレンジの辞書に「かっこ悪い」なんて言葉はない。
12の基本習慣からはじめよう自分のためになると思えるものなら、どんな習慣を選んでもいい。
しかし「どれからはじめればいいか」と訊かれたら、次の「12の基本習慣」を勧める。
ひと月にひとつで1年分。
どれもあなたの人生を大きく変える入り口になるはずだ。
基本習慣①毎朝3つ、その日のもっとも重要なタスク(MIT)を決める。
基本習慣②シングルタスクを徹底する。
あれこれ切り替えない。
基本習慣③〝受信トレイ〟を空にする。
基本習慣④Eメールのチェックは1日に2回だけにする。
基本習慣⑤毎日5~10分エクササイズする。
基本習慣⑥インターネットの接続を切って仕事する。
基本習慣⑦毎朝のルーチンをこなす。
基本習慣⑧野菜とフルーツを毎日たくさん食べる。
基本習慣⑨デスクまわりを整理整頓する。
基本習慣⑩ショート・リストにない頼まれごとに「ノー」と言う。
基本習慣⑪1日15分、家の中をかたづける。
基本習慣⑫「Eメールの返事は5文まで」を守る。
[減らす原則6]小さくはじめるここまでで紹介した5つの原則さえ守れば、シンプルな生き方への脱皮は、まずまずうまくいく。
しかし、この原則をプラスすると、成功確率は最大限にまで高まるはずだ。
変化を起こそうというときには力が入る。
野心に燃えてつい大きくはじめてしまう。
しかし力が入りすぎると、力が抜けるのも早い。
1、2週間と経たないうちに脱落してしまう。
新年の抱負が実現しないのも、ほとんどこれが原因だ。
そんな問題を解決してくれるのが原則6「小さくはじめる」だ。
もっとできるとわかっていても、できる限り簡単なものを、ほんの少しからはじめる。
たとえば、早起きしようと決めたときは、私はほんの15分早く起きることからはじめた。
小さくはじめると成功する理由この原則は案外無視されがちだ。
真の大切さがなかなか理解されない。
ではまず、小さくはじめれば成功する主な理由から挙げてみよう。
理由①集中しやすいから集中こそ達成のカギだ。
1度にあれもこれもやろうとすると、集中力が欠けて効率が落ちる。
しかし、小さくはじめれば、一点集中できる。
そこだけに思う存分、力を発揮できるのだ。
理由②やる気とエネルギーが長続きするから自分がさばける量より少ないところからはじめれば、やる気もエネルギーも温存できる。
まるでダムにたっぷりと張られた水のようだ。
そんな蓄えがあれば、長い間ふんばれる。
理由③やりやすいから簡単であればあるほどいい。
最初は特にそうだ。
「どうもやりにくいな」と感じるものは失敗に終わる可能性が高い。
理由④成功が約束されているから小さな成功は大きな成功に比べたら満足感だって小さい。
しかし、それは最初だけの話。
1度小さく成功したら、そこから次の成功へと、どんどん進んでいける。
小さくても積み重なれば、いずれ大きな成功になる。
大きく失敗するより、はるかにいい。
理由⑤ゆっくりとした変化には持続力があるたとえば過激なダイエットで2カ月に20キロ落としたら、その達成感は並みのものではない。
ただ、リバウンドの可能性も高い。
結果的に以前より太ってしまう人だっている。
しかし、週に1キロ弱の減量なら、長い間維持できる。
これはダイエットの研究でも実証されていることだ。
変化はゆっくりと起こそう。
小さな変化を少しずつ重ねていこう。
1度に大きな変化を狙うより、ずっと習慣になりやすい。
「いつでも、なんでも」はじめてみようでは実際に、いつ、何から小さくはじめればいいのか?答えは「いつでも、なんでも」だ。
どんなゴールを目指すときも、どんなプロジェクトやタスクを実行するときも、とにかく小さくはじめよう。
以下はほんの一例だ。
・エクササイズ1日30分と言わず、5~10分からはじめよう。
・早起き1時間も2時間も早めるのはきつい。
15分早く起きることからはじめよう。
・集中これと決めたこと、1回に5~10分集中することからはじめよう。
・Eメール1日のチェック回数を2~3回少なめに制限することからはじめよう。
・ヘルシーな食事メニューを何かひとつだけ変えることからはじめよう。
・大プロジェクトプロジェクトの中の小さなタスクひとつからはじめよう。
・かたづけオフィスや家全体ではなく、引き出しひとつからはじめよう。
コメント