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第11章人材は潜在能力で見極める クラウディオ・フェルナンデス=アラオスエゴンゼンダー・インターナショナルシニアアドバイザー

目次

第11章人材は潜在能力で見極める クラウディオ・フェルナンデス=アラオスエゴンゼンダー・インターナショナルシニアアドバイザー

エグゼクティブサーチの成功例と失敗例人材発掘「第4の時代」へトップ人材の争奪戦を激化させる3つの圧力採用プロセスを改善するデキる社員の転職を防ぐ4つの〝T〟ちょうどよい負荷を与える

第11章人材は潜在能力で見極める クラウディオ・フェルナンデス=アラオスエゴンゼンダー・インターナショナルシニアアドバイザー

エグゼクティブサーチの成功例と失敗例数年前、同族経営の家電販売会社のために新しいCEOを見つけるよう頼まれたことがある。

その会社は経営をプロフェッショナルに任せて事業を拡大しようと考えたのだ。

私は退任することになるCEO、そして取締役会とも密接に協力し、同社のCEO職に求められるコンピテンシーを細部まで明らかにして、それから候補者選びを始めた。

最終的に選ばれた男性はすべての条件を満たしていた。

プロフェッショナルを育てる一流の学校を出て、業界トップクラスの数社で働いた後、世界的に最も称賛される企業の一社で某国担当マネジャーとして成功を収めていた。

それ以上に大きかった点は、我々が新CEOに必要だと考えたコンピテンシーのすべてにおいて、彼が要求基準を上回っていた点だ。

ところが、こうしたことすべてが役に立たなかった。

素晴らしい経歴を持ち、適性も申し分なかったにもかかわらず、新CEO氏は当時市場で起きていた技術面、競争面、規制面での巨大な変化に適応できなかった。

さえない業績が3年続いた後、彼は会社を去るよう言われた。

これと対照的なのが、筆者がエグゼクティブサーチの仕事を始めたばかりの頃のエピソードだ。

筆者の任務は、中南米南部のビール市場で当時圧倒的だったキンサが所有する小さなビール醸造所のプロジェクトマネジャーを探し出すことだった。

その頃の筆者は「コンピテンシー」などという言葉を聞いたことは一度もなく、職場の出張所はできたばかりでリサーチチームの支援もなかった(インターネットも普及前だった)。

しかも当時は、中南米南部でまともなビール醸造事業を営んでいるのはキンサだけだったので、同じ業界や関連業務できちんとした経験を積んだ人材プールも存在しなかった。

最終的に筆者が接触した候補者は、1981年にスタンフォード大学で学んでいた頃に知り合ったペドロ・アルゴルタだった。

彼はかの有名な1972年のアンデス山脈の飛行機墜落事故(ノンフィクションが何冊か出版され、映画『生きてこそ』〈原題Alive〉にもなった)の生存者であり、魅力的な候補者であることは間違いなかった。

とはいえ、消費財業界での経験が皆無のうえに醸造所のあるコリエンテス地方にも不案内、さらにはプロジェクトマネジャー職のカギとなるマーケティングや販売での業務経験もなかった。

それにもかかわらず、筆者には彼が成功するだろうという勘が働いた。

キンサも彼の雇用に合意し、その決断は賢明であったと後に証明される。

アルゴルタはあっという間にコリエンテス醸造所の所長に抜擢され、その後にキンサの中核であるキルメス醸造所のCEOになった。

さらに彼は、同族経営だったキンサを大規模かつ評価の高いコングロマリットへと変貌させる経営チームの中核メンバーにもなった。

このチームは、当時の中南米で最も素晴らしい経営チームの一つと見なされたのである。

あれほど適任に見えた家電販売会社のCEOが悲惨な失敗に終わったのはなぜか。

そして、明らかに不適格だったアルゴルタがこれほど見事な成功を収めたのはなぜか——。

その答えは〝潜在能力〟にある。

すなわち、日ごとに複雑さを増す職務内容と事業環境にしっかりと適応し、自分を成長させる能力のことだ。

アルゴルタにはその潜在能力があり、冒頭のCEOにはなかったのである。

筆者は30年にわたって役職者を評価・観察し、彼らの成果を左右する要因を研究してきた。

その結果、いまでは潜在能力こそがその人材の成否を予測するうえで最も頼れる判断材料だと考えている。

これはヒラの取締役から最高クラスの幹部、取締役に至るまであらゆるレベルに当てはまる。

筆者は潜在能力を持つ人々を見つける方法、そして企業がそのような人材を育成・採用するのに役に立つ方法も編み出した。

本論ではそれらの方法を公開する。

事業環境の不安定さと複雑さが増し、トップレベルのプロフェッショナルな人材をめぐる世界的な争奪戦が激しくなるにつれ、筆者は次のように確信するようになった。

組織およびそのリーダーは、筆者の言う「人材発掘の新時代」に移行しなければならない——。

それはお互いを評価する際に筋力や頭脳、経歴や手腕に基づくのではなく、潜在能力で判断するやり方である。

人材発掘「第4の時代」へ人材発掘の「最初の時代」は1000年続いた。

1000年の間、人間は肉体的特徴に基づいて選別された。

ピラミッドを築き、運河を掘り、戦争し、穀物を収穫する——。

いずれの場合も可能な限り元気で健康で力持ちの人々を選んだ。

これらの特徴は簡単にわかる。

そして、そのような評価基準がもはや適切でなくなってきているにもかかわらず、いまでも我々は無意識のうちにこれらの特徴を求めてしまう。

フォーチュン500企業のCEOの平均身長は、米国人全体よりも6・35センチメートル高い。

軍隊の指揮官や各国元首の統計を見ても同じ傾向がある。

筆者が生まれ育ったのは人材発掘の「第2の時代」であった。

人を選ぶのに知性と経験、そして過去の実績を重視する時代である。

20世紀の大半の時代、言語・分析・計算・理論の各面で頭の回転の速さを測るIQ(知能指数)が当然ながら採用プロセス(とりわけホワイトカラー)で重視された。

IQが不明の場合は学歴と筆記試験の成績が代用された。

また多くの仕事は標準化され専門化された。

多くの職種において、採用候補者がその仕事をこなせるかどうか、高い信頼度ではっきりと測れるようになった。

さらに大半の職種は会社や業界が違ってもだいたい似たようなものだし、仕事内容が毎年大きく変わるわけでもないため、過去の実績によってその人の今後の成果も十分に予測できると考えられた。

もし優れたエンジニアや会計士、弁護士、デザイナー、CEOを雇いたければ、最も能力が高く経験を積んだ人を探し出し、面接して採用することができるようになった。

筆者がエグゼクティブサーチの仕事をするようになった1980年代は、人材発掘の「第3の時代」の始まりだった。

その推進力となったのは、いまでもはびこる「コンピテンシー」主義である。

米国の心理学者、デイビッド・マクレランドは1973年の論文“TestingforCompetenceRatherthanfor‘Intelligence’”(「『知性』よりもコンピテンシーを見る」)において、労働者、とりわけマネジャーは、その仕事に求められる役割でどれだけ優れた成果を発揮できるか予測するための、具体的な特性とスキルによって評価されるべきだと提唱した。

こうした考え方は時代に合っていた。

というのも、技術革新および業界の垣根の消滅によって仕事内容の複雑さが増し、人材発掘において前職での経験と実績はそれほど当てにならなくなっていたからだ。

そこで筆者らは仕事をコンピテンシーの各要素に分解し、適切な要素の組み合わせを持つ候補者を求めるようになった。

またリーダー職に関しては、IQよりEQ(感情的知性)のほうが大事だとする研究結果も重視するようになり始めた。

そして現在、人材発掘の「第4の時代」が幕を開けようとしている。

この時代は「潜在能力」に着眼点を移さなければならない。

激しく変動し、不確実で、複雑で、不明瞭な(各形容詞の頭字語VUCA——Volatile,Uncertain,Complex,andAmbiguous——は軍事用語から転じてビジネス界の流行語となった)いまの環境において、コンピテンシーに頼った人材評価と人材登用は次第に不適切になりつつある。

ある人が今日は見事に特定の職務をこなせたとしても、その人に成功をもたらした要因は、明日になって競争環境が変わったり、会社の戦略が変更されたり、本人が管理または協力する社内のグループが変わったりしたら、もはや通用しなくなるかもしれない。

したがって問題となるのは、従業員やリーダー職が適切なスキルを持つかどうかではない。

新しいスキルを学ぶ潜在能力があるかどうか、である。

トップ人材の争奪戦を激化させる3つの圧力残念ながら、人の潜在能力を見極めるのはコンピテンシーよりはるかに難しい(とはいえ不可能ではない。

詳細は後述する)。

そのうえ、採用市場は遠からず歴史上最も厳しくなるであろう。

「厳しい」というのは採用される側ではなく、採用する側にとってである。

近年の米国および欧州の高い失業率をめぐる雑音によって重要なシグナルがかき消されてしまっているが、グローバル化、人口動態、人材育成システムという「3つの圧力」によって、この先幹部クラスの人材はかつてないほど稀少になるであろう。

2006年当時、筆者はいまのハーバード・ビジネス・スクール学長ニティン・ノーリアやエゴンゼンダーの同僚らとともにこの問題に関する共同研究を行った。

詳細なデータを集め、47社のCEOにインタビューした。

この47社は合計で時価総額2兆ドル、売上高は1兆ドル超、従業員数は300万人超で、主要な産業と地域を網羅し、揺るぎない評判としっかりした人材慣行のある成功企業ばかりであった。

それにもかかわらず、全社が深刻な人材難に直面しかかっていることが判明した。

それから8年を経た現在、状況は悪化していないまでもまったく改善していない。

以下では、順番に「3つの圧力」を詳細に見ていこう。

まずグローバル化によって企業は母国以外の市場へ進出せざるをえなくなり、そのために役立つ人材の争奪戦に巻き込まれる。

筆者らが2006年に研究対象とした主要なグローバル企業は、2012年までに総売上げに占める発展途上地域の比率が88%増加すると見込んでいた。

実際にその通りのことが起き、さらにIMFやその他の団体の現在の予測によると、いまから2016年までの世界の成長は、そのおよそ70%が新興国市場によってもたらされるとしている。

同時に世界中の発展途上国において、現地企業の間でも顧客のみならず人材の争奪戦が起きている。

たとえば中国を見てみよう。

国外市場の成長のおかげもあり、フォーチュン・グローバル500に占める中国企業は2003年のわずか8社からいまや88社になった。

中国有数のテレコム企業、華為技術には7万人を超える従業員がおり、そのうち45%はドイツ、スウェーデン、米国、フランス、イタリア、ロシア、イ

ンドを含む世界各地のR&Dセンターで働いている。

インド市場やブラジル市場を本拠地とする企業でも同様の例は見つかるだろう。

次に、人口動態が人材供給源に与える影響もまた明白である。

伸び盛りの上級管理職として最適なのは35歳から44歳までの年齢層だが、この層が占める比率は劇的に縮小中だ。

2006年の研究で筆者らが行った試算によれば、若いリーダー層はこの先30%減ると予測され、その一方で事業の成長が見込まれるため、この非常に大事な年齢層の上級管理職を選ぶための人材プールは規模が半分に減るだろうと結論した。

10年前、人口動態の変化に影響を受けていたのは主に米国と欧州だったが、2020年までにはロシア、カナダ、韓国、中国を含む他の多くの国において、労働市場への新規参入者数よりも退職者数のほうが多くなる。

3番目の圧力も大いに関連性があり、影響力も同等なのだが、あまり知られていない。

企業は将来のリーダーを生み出す人材育成システムをきちんと構築していないのだ。

プライスウォーターハウスクーパースが68カ国のCEOを対象に行った2014年のアンケート調査によれば、回答者の63%が将来あらゆる階層で基幹スキルが不足することを懸念している。

ボストンコンサルティンググループの独自調査によれば、企業幹部の56%は近い将来社内のシニアマネジャー職を担う人材が大幅に足りなくなると見ている。

ハーバード・ビジネス・スクール教授のボリス・グロイスバーグが、2013年に企業幹部向けセミナーの参加者を対象に行った調査でも、似たような結果が出ている。

自社の人材や組織について5段階評価(5が最高)で採点してもらったところ、現CEOへの評価は平均で4、現経営陣への評価は3・8だったのに対し、次世代リーダー育成システムに対する評価は3・2と低かった。

この調査では他の質問からも同様の問題点が浮かび上がった。

人事管理部門への評価はすべて3・3以下で、ジョブローテーションといった従業員育成に不可欠の施策については2・6という低スコアもあった。

換言すれば、「有望なリーダーを見つけて育てる」という仕事を自社できちんとできていると考える企業幹部は、ほとんどいなかったのである。

筆者の仕事仲間が最近実施した企業幹部対象のパネルインタビューでも、これらの見解は誰もが抱いているものだということが裏づけられた。

参加した823人のリーダーのうち、自社の育成システムが成果を生むだろうと考えている人はわずか22%、最高の人材に自社が魅力的だと思わせるのは簡単だと答えた人はわずか19%だった。

筆者の知る限り、多くの企業、とりわけ先進国市場に基盤を置く企業において、上級幹部の半数は今後2年のうちに定年退職の対象となる。

そして、そのような幹部の半数には、後を引き継ぐ意思または能力のある後継者がいない。

グロイスバーグいわく「企業はいまは痛みを感じていないかもしれない。

だが今後5年から10年の間に社員が退職や転職した後、次世代のリーダーはどこから現れると思っているのだろうか」。

グローバル化、人口動態、人材育成システムの3つの問題は、仮に個別に起きていたとしても、それぞれが今後10年間で未曾有の人材需要を生み出す要因となったことだろう。

グローバル化はかつてないほど急速に進んだ。

年配層と若年層の不均衡がここまで劇的だったことはない。

有望な後継者の育成システムに対する評価も、かつてないほど厳しい。

そしてアンケート調査をすると、人材育成の施策に対する評価は、筆者がいままで見てきた中で最も低いのである。

これらの要因をすべて加え合わせると、人材獲得競争は、大半の組織にとっておそらく克服不可能な巨大な問題として立ちはだかることになるだろう。

しかし、潜在能力を持つ人材の発掘方法を学び、そのような人材を巧みに引き留め、最高の人材がさらに能力を高められるような人材育成プログラムを開発する企業にとって、この状況は厳しいどころか並外れたチャンスをもたらすことになる。

採用プロセスを改善する最初の一歩は、自社にふさわしい人を採用することだ。

企業価値の創造者として近年最も印象的な人物の一人、アマゾン・ドットコムCEOのジェフ・ベゾスは、この点について1998年に次のように述べている。

「採用のハードルを高く設置してきたことは、いままでもこの先も(当社の)成功を生んだ圧倒的に最大の要因です」では、採用候補者を評価する際(そしていまの社員を再評価する際)に、どのようにして潜在能力を測ればいいのだろうか。

実は多くの企業には、昔ながらの「高い潜在能力者」向けプログラムがあり、しっかりと根付いている。

将来有望なマネジャーをこうしたプログラムに参加させ、駆け足で育成・出世させてきた。

しかし、こうしたプログラムの大半は〝成績優秀者〟だけを対象とするのが実態だ。

参加者は皆、過去に見事な実績を上げてきた人ばかりで、したがってこの先も優れた仕事をする見込みが最も高いと想定される人々である。

だが、VUCAという条件を考慮すると、この想定はもはや当てにならない。

筆者が教えている企業幹部向けプログラムの参加者に聞くと、「会社で潜在能力を評価する際には、経験的に正しさが証明されている手法を使わない」と報告する人が常に80%程度に上る。

たしかにこの種の能力を評価するのは、IQやいままでの実績を測るよりもはるかに難しい。

それどころか、多様なコンピテンシー要素の計測と比べてさえはるかに難しいと認めよう。

それでも計測は可能である。

しかも予測精度は85%程度になる。

この数字は過去20年以上にわたり開発・改良され続けてきたモデルを使ってエゴンゼンダーが評価した数千人の幹部社員のキャリアデータに基づいている。

筆者らが最初に見る潜在能力の指標は、しっかりとしたモチベーションだ。

(利己的でない)目標追求に向けてずば抜けた成果を上げてみせる、という堅い決意である。

高い潜在能力を持つ人は大きな野心を抱き、自分の足跡を残したいと願っているが、同時にみんなで協力して大きな目標を達成したいという夢を抱き、自分個人が目立たぬようとても謙虚であり、やることすべてに向上心を持って努力する。

筆者らがまずモチベーションに注目する理由は、その不変性にある。

加えて、通常は本人が意識していない性質でもある。

完全に利己的な動機だけで動く人は、おそらくずっと変わらないだろう。

次に筆者らが見るのは以下の4つの性質だ。

筆者らの調査研究によれば、これらは間違いなく潜在能力を保証するといえる。

好奇心:新しい経験や知識を追い求め、率直な批判を聞きたがる。

何かを学び、自分を変えることに積極的。

洞察力:情報を集めて意味を読み取り、新たな可能性を見つける能力。

愛着心:感情と理論を駆使して説得力のあるビジョンを伝え、人々と関係を築くコツを知っている。

意志力:困難にもめげず高い目標を達成するために戦い、逆境を跳ね返す気力。

いまにして思えば、ペドロ・アルゴルタがキンサで成功した理由は、上記の性質をすべて持っていたからだとわかる。

特定のスキルとコンピテンシーの組み合わせを持っていたからではないのだ。

彼のこうした性質はアンデス山脈での痛ましい試練の時に際立った。

まず、決定的に重要ながら目立たない役目を果たすことでモチベーションを示した。

彼は、最終的に墜落地点から離れて救助を呼びに行くことになる探検チームの命を支えたのだ。

雪を溶かして彼らに飲ませ、亡くなった犠牲者の肉体を小さく切って乾燥させ、食べ物として提供した。

次に、絶望に打ち負かされるどころか墜落現場の周辺環境に好奇心を刺激され、氷から湧き出る小川に興味を抱いた。

その小川は東に向かって流れていた。

このことから彼は、死にかけているパイロットが飛行機の位置を間違って報告したのだという洞察を得た。

自分たちは山脈のチリ側ではなくアルゼンチン側にいるのだと、彼だけが見抜いたのだ。

そしてこの72日間で、アルゴルタの愛着心と意志力もはっきり示された。

死にゆく若い友人のアルトゥーロ・ノゲイラを手厚く看護し、足に負ったいくつもの骨折がもたらす痛みから彼の気を逸らそうと努めた。

他の生存者に対しても希望を失わないよう励まし、もし死んだら彼らの体を食糧にすることを皆に許すのは「愛の行為」であるとして、全員にそれを認めさせた。

キンサ(のグループ企業)でのCEO職はアンデス山脈での経験と似た部分はなかったものの、変わらぬアルゴルタの性質が仕事でも役立った。

彼のモチベーションの純粋さをおそらく最もよく示すエピソードは、キンサに来て10年目の出来事だろう。

戦略的にもっともな理由により、彼は自分が率いていたアグリビジネス・プロジェクトから会社は撤退すべきだと主張した。

すなわち自分を失職させる提案をしたのである。

また好奇心旺盛な経営幹部として、いつもわざわざ寄り道してはあらゆる階層の個人顧客や企業顧客、従業員と面談し、普通なら幹部にまで届かない人々の声に耳を傾けた。

こうして採用・支援したいくつかの画期的なマーケティング構想のおかげでキルメスの売上げは8倍に伸び、収益性も過去最高になった。

さらに彼は、採用および戦略の意思決定で優れた洞察力を発揮した。

後にキルメスとネスレの両方のCEOとなる人物を採用したのはその最たる例だ。

また、大胆にも中核ではない事業をすべて売り払い、その資金で地元のビール醸造事業を拡充することができた。

そして愛着心によって、キルメスの非効率で堕落したとさえいえる企業文化を刷新した。

彼は公開の会議には必ず上司と部下が連れ立って参加するようこだわったが、これが先例となって後にキンサ・グループ全社にこの動きが広がった。

最後に、キンサでアルゴルタの示した意志力は驚くべきものであった。

彼はそもそも醸造所の新設プロジェクトを率いるために雇われたのだが、採用直後にそのプロジェクトは資金を使い果たしてしまった。

しかし彼は辞職を考えるどころか金策に奔走した。

さらに数カ月後には通貨切り下げとハイパーインフレにより、アルゼンチン全体が激震に見舞われるが、それでも彼は一歩も引かなかった。

その15カ月後に新醸造所は稼働を始めた——。

では、会ったばかりの採用候補者、または既存の従業員が潜在能力を持つかどうか、どのように見分ければよいのだろうか。

それには、筆者がアルゴルタに対して行ったように、公私にわたる経歴をよく調べることだ。

本人と突っ込んだ話し合いやキャリア論議を交わし、さらに徹底的なリファレンスチェック(候補者の以前の上司や同僚へ人柄や仕事ぶりなどを確認する作業)を通して、その人物が上記のような性質を持つのか持たないのかを示す逸話を探し出す。

たとえば

失敗の後で軌道修正できるか——こうした兆候を探すのだ。

相手に次のような質問をするといい。

他人に反論された時、どのように反応しますか。

自分のチームを他人がどう評価しているか聞かせてもらうにはどうすればいいでしょう。

考え方や経験、個人としての成長の可能性を広げるために何をしますか。

組織内に学びの文化を育てるにはどうすればいいでしょう。

「いまは未知だが知らねばならないこと」を見つけ出すために、どのような手順を踏みますか。

必ず具体的なエピソードを尋ねるようにして、好奇心の程度を探る場合と同じように、綿密に相手のモチベーション、洞察力、愛着心、意志力を読み取ろう。

リファレンスチェックのため採用候補者をよく知る上司や同僚、部下から話を聞く時も、同じように細かい点まで聞き出すべきだ。

あなたがリーダーなら、こうしたインタビューのコツを組織全体に知らしめる必要がある。

研究によれば、優れた面接者による採用候補者の評価は入社後の仕事ぶりと高い精度で一致するのに対し、一部の面接者の意見はコイントスよりも精度が低い。

それにもかかわらず、ビジネススクールや雇用主から正しい評価テクニックを教えられたマネジャーはほとんどいない。

役職者向け人材管理プログラムの参加者に筆者が調査したところ、評価方法について会社から十分な研修を受けたと考える人は30%しかいなかった。

どうやら大半の組織は、デキの悪い採用候補者を支持してデキる候補者を根こそぎ追い払う権限を与えられた人々で満ちているらしい。

対照的に、雇用プロセスを重視する企業は成功確率を大いに高めることになる。

たとえばアマゾンは、社内に熱心なリクルーターが何百人もおり、人材評価の充実した訓練プログラムがあり、しかも多数の公認〝バー・レイザー〟(ハードルを上げる人)さえいる。

これは、社内に本職がありながらも人材評価のスキルを買われ、自分とは無関係の部門の採用面接にも同席する権利を与えられた社員のことだ。

自分一人の反対で採用候補者を落とす「拒否権」も与えられている。

ブラジルの鉱業グループ、通称「ヴァーレ」で知られるコンパニア・ヴァーレ・ド・リオドセも、ロジャー・アグネリがCEOを務めた2001年から2011年の間、エゴンゼンダーの協力を得て、アマゾンと同様のしっかりした人材評価手法を導入した。

アグネリの在籍中、上級管理職を選ぶ際は一つの例外もなく、社内外のすべての候補者について第三者の専門家による客観的評価を経たうえで決定した。

担当マネジャーは仮に候補者がその分野や部門での実務経験がなかったとしても、本人のモチベーション、好奇心、洞察力、愛着心、意志力の可能性を高く評価するよう奨励された。

「我々の長期的戦略と過酷な目標に情熱を感じて本気で取り組もうとする人でなければ、けっして採用されることはなかったでしょう」とアグネリは振り返る。

この方法で採用または昇進となった上級管理職は、世界中でざっと250人に上る。

そしてこの方法はきちんと成果をもたらした。

ヴァーレは、ブラジルおよび南米地域の同業他社を業績面で大きく引き離し、鉱業界のグローバルプレーヤーとなったのである。

デキる社員の転職を防ぐ4つの〝T〟真に潜在能力を持った人材を採用したり社内で見つけたりしたら、次は引き留めに全力を注ぐ必要がある。

何しろ逼迫した採用市場で同じ人材難に苦しむ競合は、喜んで彼らを誘惑するはずだ。

アグネリがヴァーレの仕事で最も誇りとするのは、自分の采配が生んだ巨大な収益や利益、株価上昇ではなく、社内で昇進するリーダーの質が向上した点だという。

「(私がCEOになって)5〜6年のうちに、社内の最高レベルの役職は皆、生え抜き社員が占めるようになりました」。

さらにアグネリは、優れたチームを生み出し、社内に引き留める能力こそが、あらゆる組織とその指導者にとって成功の〝カギ〟になると言う。

まさにその通りで、2011年にヴァーレの株式の61%を握るブラジル政府がその影響力を駆使してアグネリを早期の辞職に追い込むと、それから1年以内に執行役メンバー8人のうち7人が自発的に辞職する結果となり、ほどなく同社の時価総額はほぼ半減した。

ブラジル経済とコモディティへの過剰な期待が醒めてきたことも、たしかに一因だろう。

だが、ヴァーレの最大の競合相手であるリオ・ティントとBHPビリトン(の時価総額)が、同じ期間にはるかに少ない落ち込みで済んだことを考慮すると、やはりヴァーレが傑出した経営チームを失った点に投資家が反応したと見られる。

アグネリの率いたヴァーレを見習い、その後の同社のような凋落を避けるにはどうすればいいのか——。

それには、高い潜在能力を持つ社員が会社に何を一番求めているかを考えればよい。

ダニエル・H・ピンクが『モチベーション3・0』で説明したように、大半の人(特に知識労働者)は3つの基本的要素によって活力を得る。

自分の人生を自由に決める「自律性」、何かに熟達したいという欲求、すなわち「マスタリー」、そして自分を超える何かに役立つ仕事をしたいという「目的」である。

たしかに給料も大事だ。

すべての社員、とりわけ期待される成長株なら、自分の貢献や努力が報酬に反映されることを望み、似たような仕事をしている人と同水準であるのが当然と考える。

とはいえ筆者の経験によれば、不当に安い給料がモチベーションを下げるのは間違いないものの、給料が一定レベルを超えると、その重要性は多くの人が思うよりはるかに小さくなる。

弊社を通して採用され、新しい職場で実績を上げながらも3年以内に再び転職した人々を筆者がよく調べた結果、その85%はより高い職位に引き抜かれており、潜在能力を持つ有能な人材であったことが証明された。

だが、転職の一番の理由として給料アップを挙げたのは、彼らのうちわずか4%しかいなかった。

転職理由として給料より多かったのは、上司への不満、会社の支援不足、成長機会の喪失であった。

したがって、自社のスター社員にはそれなりの給料、できれば平均より多く払うことを勧める。

しかしそれだけでなく、4つの〝T〟について自治権を与えよう。

その4つとは、「タスク」(何をするか)、「タイム」(いつするか)、「チーム」(誰と一緒にするか)、「テクニック」(いかにそれをするか)である。

困難だが達成可能な課題を与え、集中できる環境を整えることで、4つの〝T〟を体得させるのだ。

そして彼らスター社員には、チームや組織、社会にとって大きな課題に取り組ませるとよい。

ジェフ・ベゾスを筆頭にアマゾンのリーダーは皆この点が非常に巧い。

アグネリおよび彼のヴァーレ時代の経営チームも、やはり上手だった。

しかしアグネリがヴァーレを去った後、同社はそれまでと同じように社内のリーダーのやる気を引き出す環境を維持できず、スター社員の多くは転職の道を選ぶことになった。

ちょうどよい負荷を与える最後の仕上げとして、潜在能力を持つと見抜いたスター社員には、間違いなく本来の力を発揮させなければならない。

そのためには居心地のよいぬるま湯から彼らを追いやり、成長機会を与える必要がある。

33カ国で営業するANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)の人事部門最高幹部のジョナサン・ハーベイはこの点を次のように説明する。

「役職者を育てて、いずれ指導的立場に就かせるために当社がいつも最大限に力を入れているのは、いかにしてちょうどよい苦しさを与える役割やプロジェクトを本人に課すか、という点です。

なぜなら、学びの大半はちょうどよい苦しさの中で生まれるからです。

本人の限界を超えた重荷は課したくありません。

しかし我々は、広角レンズで世界を見ることができるバランスの取れた価値重視のリーダーがほしいのです。

そして人々は、ほどよく苦しむ仕事を課されることで、まさにそのようなリーダーに育つのです」高い潜在能力を持つ人材を苦しめないとどうなるか、その好例として筆者はよく日本を取り上げる。

2008年、筆者はエゴンゼンダー東京オフィスの荒巻健太郎とともに日本の上級役職者を採点した。

彼らの潜在能力(いまより大きな役割と責任を引き受ける能力について、前述の指標を用いて我々コンサルタントが客観評価した)と、実際のコンピテンシー(章末「潜在能力以外の人材評価ポイント」に掲げたリーダーに必要な8つのコンピテンシーについて、筆者らコンサルタントが客観評価した)を対比して点数化したのだ。

これらの数値を筆者らのデータベースにある世界中の上級役職者の平均点数と比較したところ、何とも不思議な点が一つあることがわかった。

日本のプロフェッショナルは潜在能力で世界平均を上回っていたのに、実際のコンピテンシーは世界平均を下回っていたのである。

〝素材〟は素晴らしいのに〝最終製品〟は低品質というわけだ。

問題は日本の人材育成プロセスにある欠陥であった。

そしてその欠陥はいまでも解決されていない。

すなわち、日本文化の一部である強い職業倫理、さらには教育機関のおかげもあり、日本のプロフェッショナルはマネジャーとしてのスタート地点では有利な場所に立つことになる。

ところが実際に働き始めると、彼らの成長は阻止されてしまうのだ。

日本では伝統的に、一つの会社の一つの事業部だけで育った人が一歩ずつ出世の階段を上ってリーダーとなる。

通常、あるリーダー職の候補者として最年長になるまではそのポストを得られないため、それまでは控えめに出番を待っているのである。

つい最近も、東京に本社のある世界的な巨大複合企業から当社が依頼を受け、その企業を率いる上位十数人のシニアリーダーを評価する機会があった。

全員が50代半ばから後半の年齢だった。

その企業は複数の業界と市場を股にかけて業務を行っており、本来ならば役職者の育成にはうってつけの環境であるはずだ。

ところが、評価対象である十数人のシニアリーダーのうち、複数の事業分野で働いた経験があるのはわずか1人だけ。

日本以外の国で働いた期間は平均でわずか1年間。

英語スキルも皆非常に低かった。

このため、現職CEOの後継者としてふさわしい候補者は一人もいない、という結果になった。

残念なのは、誰もが就職

時には好調なスタートを切っていたことである。

彼らは工学を修め、R&Dや製品戦略・マーケティングで平均20年以上のキャリアを積んでいる。

しかし、その間に彼らの潜在能力が活かされることはなかったのだ。

高い潜在能力を持つ人材に、ただまっすぐな階段を上らせ、徐々に大きな仕事、予算、スタッフを与えれば、成長はし続けるだろう。

だがその成長は加速しない。

一方、複雑かつ困難で毎回内容の異なるやっかいな仕事を与えていけば、加速度的に成長することになる。

筆者らは最近、世界各国823人の役職者にアンケートを実施し、キャリアを振り返って何が自分の潜在能力を解放するのに役立ったかを答えてもらった。

回答者の71%が挙げた一番の答えは「無理しないとこなせない仕事」であった。

「ジョブローテーション」と「個人的メンター」が同率で2位だった。

では、組織内の人々に彼らが必要とする「無理しないとこなせない仕事」と「ジョブローテーション」を確実に与えるにはどうすればいいのだろうか。

ここでまた先ほどのANZを取り上げよう。

同社はアジア全域に事業を拡大した2007年から2010年にかけて大量の人員を採用し、それに引き続いてリーダー養成課程も見直すと決めた。

この取り組みの中心となったのは、同行が「ビジネスクリティカル(事業に欠かせない)職」と呼ぶポストだ。

これは同行の戦略的課題の実現に重大な貢献をするポスト、持つ人の少ない貴重なスキルセットを必要とするポスト、担当者いかんで成果が大きく上下するポスト、空席になると事業自体の継続や業績の勢いが大きなリスクにさらされるポスト、である。

ANZはマネジャー職の社員全員について必ず潜在能力を査定し、そのスコアが高い人から上記の「ビジネスクリティカル職」に就かせるようにした。

ほかにも人材育成の新基軸として「ゼネラリスト銀行員プログラム」が導入された。

毎年10〜15人の参加者に2年間のジョブローテーションの機会を与え、企業向け金融、商業銀行、リテールの各銀行業務やリスク管理、業務部門を経験させ、産業と企業について幅広い知識を身につけさせる。

その後で参加者は腰を据えた仕事に取り組み、特定の地域や文化、商品、または顧客対応などの経験を積むことに集中する。

さらに、銀行管理の枠組みを確実に理解するため、全員が必ず内部監査部門も経験する。

このプログラムは15年間続ける予定で、一国を担当するCEOを生み出すことを最終目標としている。

このようにきちんとした制度を導入したことにより、すでに目に見える成果が実りつつあるようだ。

3年前にはANZの上級管理職ポストの70%が社外からの採用だったのに対し、いまではその割合は20%未満になっている。

社内アンケート調査によれば、「従業員エンゲージメント」(会社への愛着心)は64%から72%へと上昇し、顧客サービスと品質に対する従業員の熱意で測る「前年同期比の業務卓越性」(パフォーマンス・エクセレンス)は68%から78%へと跳ね上がっている。

さらに同行は別の面でも恩恵を得た。

定評のあるグリニッジ・アソシエーツの顧客調査でアジア太平洋地域の国際銀行として2年連続で第4位に選ばれたのである(2008年には12位だった)。

***地政学的要因、事業環境、産業動向、そして仕事内容があまりに急速に変化しているため、成功に必要なのはどの種のコンピテンシーになるのか、わずか数年先のことさえ予測できない。

したがってなるべく潜在能力が高い人材を見つけ、育てることが不可欠だ。

次のような性質を持った人材を探せばよい。

困難な目標を達成しようと自分を高めることに強いモチベーションを抱きつつも、自己利益よりグループを優先する謙虚さを兼ね備える人。

飽くなき好奇心を原動力に、新しい考え方や方向性を探求する人。

他人が気づかない関連性を見抜ける鋭い洞察力を持つ人。

自分の仕事や周囲の人々に強い愛着心を抱く人。

挫折や障害を乗り越える強い意志力を持つ人——。

もちろん、知性、経験、実績、そして各種のコンピテンシー(とりわけリーダーシップに関するもの)といった要素を無視していいわけではない。

しかし、採用時には上記のような潜在能力を重視すること、そして組織のあらゆる階層において、潜在能力を持つ人材を巧みに会社に引き留めたり、社内で育成したりすることが、いまや最優先すべき課題なのである。

トップ人材の潜在能力潜在能力を重視することで、組織のどの階層であろうと人材発掘は改善されうるが、とりわけ一番トップの人材を探す際にその効果が大きい。

若手のマネジャーを探す場合とは異なり、CEOや取締役を選ぼうとすると十分な資格と経験、コンピテンシーを持つ候補者が何人も見つかることが多いだろう。

だからこそ、候補者のモチベーション、好奇心、洞察力、愛着心、意志力を正確に評価することがいっそう重要となる。

CEO職については非常に早い段階から後継者選びを始める必要がある。

新CEOの着任と同時に始めるのが理想的だが、どんなに遅い場合でも、予想される退任時期の3〜4年前には着手すべきである。

エゴンゼンダーでは、企業のCEOが3〜4年よりはるかに長く現職に留まると予想される場合でさえ、後継者選びに手を貸している。

経営幹部レベルより2〜4ランク下の人々を対象に潜在能力を評価して、会社に引き留めて育成すべき人材を選ぶ。

その中からいずれ経営トップの座を争うようになる人材が何人か出ることが狙いだ。

筆者の知る傑出した取締役は、自分が音頭を取って、十分なコンピテンシーのある経営幹部をクビにしたことがいままでに2回ある。

幹部に十分な潜在能力がなかったというのが理由だ。

最高の成長機会でもある経営幹部ポストは、潜在能力のある人材にこそ与えたいと彼女は考えたのだ。

取締役の選任にも同様の縛りが必要だ。

弊社の英国オフィスは最近、名高い小売グループ、ジョン・ルイス・パートナーシップが2つの執行権のないディレクター職について候補者の1次選考を行うのに手を貸し、本文で解説した潜在能力の各要素、とりわけ「好奇心」を中核的な評価基準として用いた。

結局のところ、企業のリーダー格が学び、成長し、新たな環境に適応するための潜在能力を持たなければ、その能力を持つ伸び盛りの従業員やマネジャーから敬意を得ることはできないのだ。

潜在能力以外の人材評価ポイントいまや経営幹部を選ぶ際には潜在能力を決定的な評価基準とすべきであるが、そうは言っても、いままで長い時間をかけて得てきた人材評価の知恵をすべて捨て去るのは間違いであろう。

知性あなたの会社ではおそらく人材評価にIQテストは使っていないだろう。

しかし、相手の学歴や職歴、質問への答えなどから総合的な知性(分析、言語、計算、および理論による推論能力)を評価することも大切である。

天才を探す必要はない。

ほとんどの仕事は一定レベルの知性があれば十分であり、それを超える知性があっても成果にはほとんど影響しない。

それでもやはり採用相手には仕事に必要なだけの知性を求めるべきだ。

というのも、総合的な知性は長い時間をかけても劇的には向上しないからだ。

価値観価値観は決定的に重要である。

しかも、採用後に仕事を通して価値観を植え付けることはできない。

したがって、面接やリファレンスチェックの際には正直さや高潔さといった基本的事項だけを見るのでなく、相手が自社のコアバリューを共有できるか否かも探り出そう。

リーダーとしての技能シニアマネジャーを探す場合、いくつかのコンピテンシーは評価基準としてふさわしい(ただし、それだけでは十分ではない)。

役職や組織が違っても、優れたリーダーは共通して次の8つのコンピテンシーをある程度は備えている。

❶戦略志向広範で複雑、しかも分析的かつ概念的な考え方をする能力。

❷市場に対する洞察力市場を深く理解しており、それが事業にどのような影響を及ぼすか、きちんと把握している。

❸結果志向事業の主だった指標を目に見える形で改善するのだという強い意志。

❹顧客への影響力顧客サービスに情熱を持っている。

❺コラボレーションと巻き込み自分の指揮系統の外にいる人々まで含め、仕事仲間やパートナーと上手に共同作業できる能力。

❻組織の育成

トップレベルの人材を引っ張り込んだり育てたりして、自社の実力を高める能力。

❼チームリーダーシップきちんと各チームに目を配り、目標を与え、仕事のできるチームに育てる。

❽チェンジリーダーシップ組織を変革し、新しい目標に舵を切り直させる能力。

潜在能力を評価するのと同様、面接とリファレンスチェックによって上記のコンピテンシーを評価すべきだ。

採用候補者が以前、似たような環境でそれらの能力を発揮したかどうか確かめるのである。

【注】DanielH.Pink,Drive:TheSurprisingTruthAboutWhatMotivatesUs,RiverheadBooks,2009.邦訳は講談社、2010年。

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