第 5章コーチ型マネジャーの時代
1そもそもコミュニケーションは大切か?自社のコミュニケーションに問題はない?こんなコミュニケーションが社員を疲弊させている自分のコミュニケーションには問題はない? 2いかにして変化を起こすか?人は変化したがらない習慣を活用する 3コーチ型マネジャーの時代コーチ型マネジャーは何をして、何をしないか?シャドーイングモデルとなるいいマネジャーは、そこまでやる! Make it FUN !あとがき本書に共感してくださった方に著者お勧めのブックリスト
第 5章 コーチ型マネジャーの時代
1 そもそもコミュニケーションは大切か?
自社のコミュニケーションに問題はない? 講演や研修のなかで、よく、「社内のコミュニケーションに満足していますか?」という質問をしてみます。
すると、毎回、手が挙がるのは一割以下、というのが、わたしの印象です。
また、「部下の話を聞くために時間をとっていますか?」とも聞いてみます。
こちらに手が挙がるのも、せいぜい一割です。
総じて、社内のコミュニケーションにあまり満足していないケースが多いように思います。
にもかかわらず、それが放置されているのは、なぜでしょうか? そもそも経営陣に、コミュニケーションが組織のパフォーマンスの向上の重要なファクターとなるという認識が欠如しているのでしょうか? たとえば、次にあげるのは、コミュニケーションと企業に関して、よく言われることの例です。
・コミュニケーションは個人の問題であり、組織の問題ではない。
・自社のコミュニケーションにはほとんど問題はない。
・コミュニケーションと生産性は直接、関係はない。
・コミュニケーションは、組織のスピードを遅くする。
・コミュニケーションは、ときに組織を混乱させる。
ときに浪費を生じさせる。
・コミュニケーションは空気のようなものである。
・コミュニケーションよりは、規則、予測、費用対効果、効率、ハイパフォーマンス、モチベーション、確実な収益、投資の回収、プラン、役割、経験、スキル、リーダーシップ、これらが優先する。
コミュニケーションは生産性に直結しています。
組織の活動のすべてに関係しています。
コミュニケーションを交わさないでは、業務は円滑に前に進まないし、部下の育成もかないません。
これは事実です。
それを否定する人はいません。
そんなことはわかっている、コミュニケーションは大事だとだれもが言います。
しかし、だからといって、自分や自社のコミュニケーションに目を向けて、改善を試みる人は、きわめて少ない、それが現実です。
こんなコミュニケーションが社員を疲弊させている 一方で、社内のコミュニケーション環境の悪さを訴える社員は少なくありません。
心理学者のアドラーは「人が仕事で失敗するのは、単に知識や経験が不足しているからではなく、その九〇%以上は、そこに関わりをつくり出せないからだ」と言っていますが、そのことに共感しない人はきわめて少ないと思われます。
次にあげるのは、悪いコミュニケーションとは、どのようなものかについて尋ねたアンケート結果からの抜粋です。
・相手を傷つけたり、へこますためのコミュニケーション。
・一方的、強制的、命令型、否定的、高圧的。
・指示の背景が不明など、納得しにくい対話。
・話の腰を折る、頭から否定する。
・笑顔がない、笑いがない。
・利己的、閉塞的、冷たい、機械的。
・話し手だけが納得してしまっている抽象的なコミュニケーション。
・ハラスメントを伴う(セクハラ、パワハラ等)。
・言いたいことが伝わってこない。
・言いっ放し、フォローがない。
・投げかけた問いに対する返事がない。
自分のコミュニケーションには問題はない? さて、あるコーチングの研修の数ヵ月後、研修を受けたマネジャーに対する三六〇度のフィードバック調査を実施しました。
質問の内容は、マネジャーのコミュニケーションの変化についてです。
当のマネジャーもわたしたちも、当然、部下たちからの「よくなりました!」という答えを期待していました。
ところが……。
「マネジャーのコミュニケーションはよくなったか」という質問に対して、たった三〇%の人たちしか「イエス」とは答えてくれませんでした。
ということは、残りの七〇%はあまり効果がなかったと評価している? さすがにこちらも落胆していますと、先方の研修担当者は言いました。
「たしかに、よくなったという人は三〇%でした」 「はあ」 「しかし、よくなったとは言えないが、ふつうになった、と答えている人たちが六〇%いるんです」 「ふつうになった、ですか?」 「はい、ふつうになったみたいです」 「それは、喜ばしいことなのでしょうか」 「もちろんです」 ほとんどの人が、自分のコミュニケーションには問題はないと考えています。
しかし、ほんとうのところ、まわりにどのような影響を与えているのか、まわりの人はどう思っているかについて、一度聞いてみる価値はあります。
〈三分間〉の中で。
「話しやすい?」 「聞かれている感じはする?」 「わたしの言い方にはどんな特徴がある?」 「わたしは今、どんな表情をしている?」
2 いかにして変化を起こすか?
人は変化したがらない 多くの上司たちが、部下育成という名のもとに、思いどおりに動かない部下をなんとか変えようと試みます。
しかし、そもそも人は変化したがらないものなのです。
端から見たら、大きなチャンスだと思えるような変化でも、その変化を受け入れるかどうか、当の本人は、ずいぶん迷うものです。
なぜなら、新しい行動や変化を嫌うのは、理性ではなく、感情だからです。
頭ではわかっても、身体がついてきません。
一般に、変化のリスクは現状維持のリスクよりも大きいと考えられています。
人が変わるとしたら、変化するよりも現状維持のほうにより大きいリスクがあると判断したとき、または、変化による報酬がリスクに見合うか、それ以上のときです。
ところで、変わりたがらない部下を変化させようと、いまだに使われているのが、いわゆる「アメとムチ」です。
特定の行動に対して、個別のインセンティブを与えるわけです。
しかし、この方法は、決して長続きしません。
次に、用いられているのが、部下の問題点を探し出し、それについてフィードバックするという方法です。
フィードバックによって態度や行動の改善をうながすわけです。
しかし、これもなかなかうまくいきません。
なぜなら、人間の脳は、「否定されている」と認識すると自動的に警告が鳴り、守りに入ってしまうようにできているからです。
基本的に、批判や否定を受け入れない構造になっているのです。
この場合、フィードバックが決して否定ではなく、本人のためを思うものであっても、本人がそれを批判と受け止めれば、それは批判です。
ただちに、防衛の体制に入ります。
防衛の体制に入ってしまえば、すべてシャットアウト、それ以上のコミュニケーションは交わせないわけですから、変化もそこで止まります。
【3秒間ナレッジ】 31人は、変化しないことのリスクが変化することのリスクを上回ったときしか、変わろうとしない。
いずれにしろ、ちょっとやそっとでは、人は変わりません。
人が変わるためには、集中的、継続的、そして長期的な関わりが必要です。
〈三分間コーチ〉が社内に根付けば、緩やかではありますが、確実に変化が現れます。
習慣を活用する 変わらなければいけないのは、上司も同じです。
というよりも、変わらなければいけないのは上司なのです。
上司が変われば、部下も自然に変わります。
人が変わろうとするとき、これまでは、とどのつまりが、セルフコントロールや自己鍛錬に頼ってしまいがちでした。
そして、たいていの場合、うまくいきません。
それよりも、わたしが最近、注目しているのは、新しい〈習慣〉をつくりだすことです。
スキルを身につけさせるよりは、スキルを自分から習得したくなるような環境や習慣をつくってしまうことです。
では、そもそも、どのような環境にあれば、目標は達成されるのか、部下は育つのか? すると、そこには、例外なく、上司と部下がコミュニケーションを交わすという習慣、上司が部下について考えるという習慣があります。
その〈習慣〉を活用することで、特別な努力を強いることなく、自分が発生させようとする変化に対応できるようになります。
もちろん、新しい習慣を身につけるのは簡単なことではありません。
何のために部下について考え、部下とコミュニケーションするのか──その価値を、上司の一人ひとりが理解している必要があるでしょう。
さらに、〈継続〉です。
何であれ、新しい〈習慣〉を身につけるには、習慣化する行動を具体的に決め、その行動を毎日繰り返し行うことが必要です。
具体的には、ここまでで述べた、部下とコミュニケーションを交わす〈場面〉を事前に学習し、その〈場面〉で部下をコーチすることです。
このことが〈習慣〉化されることで、目標の達成、部下の育成の実現はより現実的になるでしょう。
部下との関わりに価値をおく理由はいくつかあります。
その代表的なものは、部下をうまくいかせることです。
部下がうまくいくということは、上司である自分自身が、また組織全体がうまくいくことです。
マネジャーは、自分をうまくいかせるためにも、部下をうまくいかせる必要があるのです。
3 コーチ型マネジャーの時代
コーチ型マネジャーは何をして、何をしないか? 相手の能力を問いかけによって引き出し、その目標達成をうながすのが、コーチングのおもな働きです。
ですから、プロのコーチは、たとえ問題解決をテーマにするときでも、クライアントに解決の方法をアドバイスしたり、解決を指示したりはしません。
コーチがするのは、その問題について、いろいろな視点をもたらすことです。
それによって、相手は、その問題と向き合い、その解決方法を見いだしていく。
あるいは、問題とのつき合い方を知っていきます。
そして、今求められているのは、こうした方法で部下を指導する〈コーチ型マネジャー〉です。
〈コーチ型マネジャー〉が行う部下育成は、従来の指示命令型のマネジャーのそれとは異なります。
教えるというより気づかせる。
やらせるのではなく自発的にやり出すのを待つ。
それが、基本です。
〈コーチ型マネジャー〉も、従来型のマネジャーと同様、部下の業務遂行、目標達成を導き、部下が業績を上げられるようにする責任を負いますが、それだけにとどまりません。
それと並行して、部下に、コミュニケーション、仕事の知識、スキル、リーダーシップ、問題対応、セルフコントロール、関係構築などの能力を身につけさせていきます。
目の前の問題や課題を解決させる過程を通じて、どのような能力を身につけていけば、今後も、これらの問題や課題を自律的に処理できるようになるかについて推察し、その能力を身につけさせていこうとするわけです。
つまり、部下が自発的に学び、創意工夫し、より早くより大きな目標を達成し、より遠くまでいける能力を身につけさせようとするのです。
そして、それは、今後、個人と組織の双方が成長する唯一の方法だと思います。
シャドーイング さて、英語の学習方法のひとつにシャドーイングというのがあります。
これは、「影のようについていくこと」という意味で、英文を見ないで、先生の音読のあと、〇・五秒後ぐらいからすぐについて繰り返すという方法です。
ここで大事なのは、できるだけ先生の発音、リズム、イントネーションなどをまねすることで、おもに、リスニングやスピーキングに効果的な訓練法だとされています。
これと同じように、今、技術の伝授を受ける若手が、ベテラン社員に影のようにはりつき、その一挙手一投足を見逃さずに学んでいくという技術の訓練法が、アメリカの製造現場で用いられています。
日本の造船会社でも、これと共通する手法を取り入れ、団塊の世代の技術者が、マンツーマンで若手の育成に取り組んでいるといいます。
これも〈コーチ型マネジャー〉が行う部下育成法のひとつです。
ある自動車販売会社で、店長の動きをずっとビデオに撮影し、それをあとで、店長といっしょに見ながら振り返りをする、というコーチングを実施したことがあります。
特にコメントはせずに、ただいっしょにビデオを見るだけだったのですが、ビデオを再生して一分もしないうちに、店長は、叫びました。
「うわ ーーーーーー、嫌な上司だねぇ ー。
こんなヤツの下にいたくない!」
モデルとなる 部下は、上司を見ながら、上司が部下を育成する姿勢やコミュニケーションのとり方などを自然に学んでいます。
無意識のうちに学んでいます。
そのとき、上司のあなたは、部下にとってのモデル、学ぶべき「ロールモデル」です。
特にコミュニケーションのとり方については、そのまま学習します。
また、視点を変える方法、問題のとらえ方、解釈の方法などについても、知らない間に、上司から学び、吸収し、そのまま使うようになります。
つまり、あなたが、部下に自分から学んでほしいと思っていることだけでなく、学ばないでほしいと思っていることも、あなたの意志とは関係なく、部下自身の意志とも関係なく、自然に受け継がれてしまうのです。
あなた自身のあり方、仕事の仕方、考え方、コミュニケーションの仕方は、あなたが、ことばで部下に教えたことよりも、ずっと大きな影響を部下に与えているのです。
どうか、そのことを覚えておいてください。
そして、ときどき、自分が部下に、どのような影響を与えているか、部下本人、また、ほかのスタッフに尋ねてみてください。
モデルは強い影響力を持ちます。
それだけに、学習効果を上げるときに、モデリングは有効な方法になります。
部下に学習させようとするとき、ともすれば、知ること、理解することの価値やだれかに先んじることを推す傾向があります。
いっしょに、身近にいる「モデル」を探したり、「同化」してみたいと思わせる対象を探すことは少ないものです。
けれども人間は、もともと、「モデル」をまねることによって、スキルや態度を学ぶことを得意としています。
通常は、無意識のうちにモデルをまねていますが、モデルとなる人を話題にすることで、意識してモデルからさまざまなことを学び取ることができます。
それをもう少し有効に使いたいものです。
「どの部分をモデルとしたい?」 「まねてみたいところは?」 「どういう違いがある?」 上司が〈三分間コーチ〉として部下と接しているとき、部下は、知らず知らずのうちに、自分が部下を持ったときに、どのように接するかについて学んでいるものです。
部下と時間をとって話す、押しつけるのではなく会話するなど、そこで、部下自身も、部下育成の方法を学習しています。
そのことを忘れないでください。
いいマネジャーは、そこまでやる! 車のディーラーのある店長が、新しい店舗に赴任するとき、まずやるのは、部下たちの不平、不満を徹底的に聞くことだそうです。
ノートに、事細かに一つひとつていねいに書き取り、ログを残す。
そして、部下の言ったことを一つひとつ、しらみつぶしに確認し、打てる手を打ちます。
そうやって信頼感を勝ち取ったあと、次に、自分が彼らに何を期待しているのか、何をしてほしくて、何をしてほしくないかを伝えるのだそうです。
同じディーラーのもう一人の店長は、コーチングの研修を受けたあと、部下を徹底的に知っていこうと決めました。
そこで、十数人の部下の名前をノートに書き、毎日一人ひとりとどんな会話をしたかを書き留めていきました。
一週間つけてみると、会話が少ない部下やまったくことばも交わしていない部下がいることがわかり、次の週は、会話の少なかった部下に、朝いちばんに声をかけるようにしたそうです。
その結果、部下の行動が変わりました。
それまで疎遠になりがちだった部下から報告が増える、ベテランの部下が「若手の教育をします!」と言い始めるなど、急激に変化が現れたというのです。
また、別のマネジャー、ある事務機メーカーの営業部長のお話です。
ある朝、彼は、朝礼の最後に一人の部下の名前を呼びました。
「鈴木」 「何ですか?」 「今日は早く帰れよ」 「はあ、なんでですか?」 「今日はお前の誕生日だろう」 部下の誕生日を知っていることはやはり大切だと思います。
そして、部下の家族の誕生日も知っていたら、もっといい。
そこまで、やる必要はあるのだろうかって? 必要があるかどうかはわかりません。
ただ、いいマネジャーはそこまでやります。
そして、彼らの特徴は徹底しているというところにあります。
Make it FUN ! ドイツのマックス・デルブリュック分子医学研究センターのゲルト・ケンバーマン博士らのグループが行ったマウスを使った実験によれば、広いケージの中に、チューブなどの玩具を入れた豊かな環境でマウスを育てた場合と、そうしたものは置かない環境でマウスを育てた場合では、新生する神経細胞の量が五倍も違うそうです。
もちろん、多いのは、刺激の多い、豊かな環境で育てたマウスのほうです。
創造性は、既成概念を超えるところに生まれます。
では、既成概念は、どのように超えていくものなのでしょうか? このある意味、永遠のテーマともいえる課題に、わたしは、コーチングの実践の過程で得た、ひとつの仮説を持っています。
それは、 FUN、つまり、楽しさ、おもしろさです。
外から与えられる、おもしろさ、楽しさもあります。
けれども、それだけではなく、そこには、今、ここを、楽しくおもしろいものにしていく、という意味もあります。
実際、人が成長し、パフォーマンスを上げるとき、いつもそこには、楽しさとおもしろさがともないます。
部下との間に、そして、その場に、楽しさ、おもしろさをつくり出していける人、そのなかで、部下を育て、組織の成長に貢献する、それが、〈コーチ型マネジャー〉であり、これからのリーダーだと思います。
【3秒間ナレッジ】 32人は、楽しさのなかで成長する。
部下について考える時間。
部下と〈コーチング・カンバセーション〉を交わす時間。
この二つの時間は連動して機能します。
部下を有能にして、会社全体を成長させます。
また、部下について考え、コーチする上司も有能にします。
会社という身体に、コミュニケーションという神経が通い、シナプスが増え、みんなが有能になる。
〈三分間コーチ〉、すなわち〈コーチ型マネジャー〉の存在によって、会社全体が有能になっていくでしょう。
あとがき わたしが、はじめてアメリカからコーチングという新しい人材育成手法を我が国に紹介してから、十数年が経ちました。
当初は、コーチといえば、スポーツコーチ。
自己紹介すると、高知県の団体だと思われたというスタッフもいる状況でした。
それが今、コーチングは、もはや一般的なことばとなり、内外を問わず、ヒューマン・リソース・マネジメント系の本を開けば、リーダーやマネジャーは当然、コーチングのスキルを持っているという前提のもとに、さまざまな人材開発のための手法や思想が述べられています。
こうしたなかで、コーチングのいちばんの進化形であり、現在考えうるもっとも効果的で持続可能なマネジメント手法として、この〈三分間コーチ〉を本書でご紹介できることをたいへんうれしく思います。
さて、この〈三分間コーチ〉の源流は、二〇〇三年から自社内で実験的に始めた試みにあります。
当初は、毎朝朝礼のあとにコーチたちがお互いに、コーチとクライアント役に分かれて、交互に五分間ずつのコーチングを行っていました。
おもに、その日の予定を確認したり、目標の確認、ビジョンを明確にする、未完了になっていることを棚卸しするなど、業務の遂行に関することをテーマにしたものでした。
最初の一、二ヵ月は、特に大きな変化は見られませんでした。
しかし、半年、一年と経つうちに、随所に変化が見られるようになってきたのです。
・仕事に対する優先順位がはっきりする。
・午前中の使い方が変わった。
・目標に対する意識が高まる。
・朝、コーチングを受けることで、集中が高まる。
・何から手をつけるかがはっきりする、そこで時間を無駄にしない。
・行動に対する迷いがなくなる。
・コーチングのスキルが上がる。
・案件について話していて、そのまま営業につながった。
・立ち話でここまでクリアになるかと思った。
・朝から、考えて出社するようになった。
今日やる仕事の内容を、自分のことばで話す機会がある、ただそれだけのことで仕事の質も量も増大しました。
その結果、会社全体のパフォーマンスは、目に見えて上がっていきました。
人に自分のやっていることを、話せるようになるためには、自分がそれについて十分理解していなければなりません。
話すことを通して、自分の業務についての理解も、自然と深まったからなのでしょう。
さらに、お互いの状態を知ることで、協力的な関係も築かれました。
朝の五分間のコーチングによって、もともと明るかった会社がさらに明るく、風通しがよくなったように思います。
その後、このコーチングの効果を上げるために、いくつかの手法を導入してみました。
たとえば、今日やることをカードに書いて、帰り際に、それがどれだけ実行されたかを確認する、時間を延長する、コーチに対する評価システムを導入する等々。
ところが、その結果、コーチングの雰囲気は重くなりました。
重くなると、毎日のコーチングは、すこしずつ敬遠されるようになってしまい、とうとう一時中断することになってしまいました。
そして、次に再開したのは一年以上も経ってからでした。
けれども、再開後は、どんどん進化していきました。
時間を決めず、気がついたら、すぐその場でコーチング、というのも、その中から生まれました。
そうしているうちに、五分もいらない、三分でもできる、場合によっては一分でもできる、ということになりました。
そして、本書でご紹介したような形へと、さらに、進化していったのです。
さて、再開の理由は、一人のスタッフから「五分間コーチング、またやりましょうよ」という声があがったからでした。
そのスタッフはわたしに言いました。
「最初のころ、やっていて、話すことが楽しかった」と。
「会話することは楽しい」 そのことばが心に残りました。
そこに、たったひとつの正しい答えを求めてしまうとき、会話はつまらないものになってしまいます。
それより、「会話することは楽しい」というその思いが、真に、人の自発性や自律性を引き出すのだと思います。
「会話は楽しい」、その感じこそ、コーチングにおいて、もっとも大切なセンスです。
なお、本書で取り上げた事例は、わたしどものプログラムを受講された方から伺った話であり、また、随所にあげた項目は、クライアント企業の方々のご協力を得て、今回本書のためにリサーチして得たものです。
また、本書の執筆にあたっては、多くの方にご協力をいただきました。
特にディスカヴァーの干場さん、彼女は常に最高の「ライティングコーチ」であり続けてくれました。
また、鈴木さん、中島さん、斎藤さん、福島さん、稲場さん、青木さん、宮本さん、竹下さん、桜井さん、平野さん、本間さん、戸田さん、磯村さん、林さん、花木さん、谷口さんをはじめとする株式会社コーチ・トゥエンティワン、株式会社コーチ・エィのコーチ陣のみなさん、彼らは、わたしの原稿やアイデアにリアルタイムなフィードバックを通して参加してくれました。
そして、 CTP(コーチ・トレーニング・プログラム)受講者のみなさま、コーチング導入企業のみなさまにも感謝いたします。
みなさまの現場でのコーチング実践が、コーチングを日本のビジネスシーンに確実に定着させています。
この場を借りまして、コーチングに関わる、すべてのみなさまに感謝申し上げます。
二〇〇八年立春 伊藤 守
本書に共感してくださった方に著者お勧めのブックリストオルフェウス プロセス ハーヴェイ・セイフター&ピーター・エコノミー著 鈴木主税訳 角川書店戦略的質問 78 C・クラーク・エプスタイン著 コーチ・エィ監修 金井真弓訳 ディスカヴァーコーチング・マニュアル S・ソープ& J・クリフォード著 コーチ・トゥエンティワン監修 桜田直美訳 ディスカヴァー会話のマネジメント M・コノリー& R・リアノシェク著 コーチ・エィ監修 ディスカヴァー・クリエイティブ訳 ディスカヴァー場と共創 清水博編著 久米是志・三輪敬之・三宅美博共著 NTT出版ヒトデはクモよりなぜ強い オリ・ブラフマン&ロッド・ A・ベックストローム著 糸井恵訳 日経BP社したたかな生命 北野宏明・竹内薫著 ダイヤモンド社リーダーシップは教えられる シャロン・ダロッツ・パークス著 中瀬英樹訳 ランダムハウス講談社会話・言語・そして可能性 ハーレーン・アンダーソン著 野村直樹・青木義子・吉川悟訳 金剛出版ゆとりの法則 トム・デマルコ著 伊豆原弓訳 日経BP社格差社会スパイラル 山田昌弘・伊藤守著 大和書房脳は意外とおバカである コーデリア・ファイン著 渡会圭子訳 草思社小さなチームは組織を変える 伊藤守著 講談社出現する未来 ピーター・センゲ& C・オットー・シャーマー&ジョセフ・ジャウォースキー&ベティー・スー・フラワーズ著 野中郁次郎監訳 高遠裕子訳 講談社わかったつもり 西林克彦著 光文社ウィーン・フィル 音と響きの秘密 中野雄著 文芸春秋株式会社コーチ・トゥエンティワン 1997年に日本で初めてのコーチ養成機関として設立。
コーチ・トレーニング・プログラム( CTP)をはじめ、コーチングをマネジメントに取り入れるためのプログラム、トレーニング、ツールを企業向け、個人向けに開発、提供している。
各種プログラムの品質を高いレベルで保つべく、国際コーチ連盟( ICF)との協力や海外トップコーチとの強いリレーションも持っている。
http:// www. coach. co. jp/ 03 − 3237 − 9781株式会社コーチ・エィ 2001年に株式会社コーチ・トゥエンティワンから法人事業部が独立して設立された。
「組織のコミュニケーション戦略をデザインする」を事業戦略に掲げ、企業理念の浸透や組織風土改革、ダイバーシティー推進といった企業の発展的成長に関わるコミュニケーション分野をトータルに支援する。
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ISBN 978-4-88759-625-2 (C) 2008 Mamoru Itoh
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