第6章「何を(What)」「どう(How)」すり合わせるか──個人レベル
なぜ、部下は今日も会社に出社しているのかライフスタイルボックスライフスタイルのすり合わせが今、新しい価値をもたらす5つのテーマを全肯定で受け止めるパーソナリティボックス対話型マネジャーは個を意識した関わりをするパーソナリティの相互理解が部下の能力を開花させる対話の積み重ねが言葉を超えた相互認識をもたらす弱みについてのすり合わせ例将来キャリアボックス「勘違い退職」という悲劇部下の将来を考え、現在を明確にする上司はアドバイザーではなく、カウンセラーのスタンスでキャリアを意識することで今の取り組みが変わる
第6章「何を(What)」「どう(How)」すり合わせるか──個人レベル
なぜ、部下は今日も会社に出社しているのか第1章でも触れたように、国内の少子化傾向や就業観の変化にともない、個人と組織の力関係は急速に逆転しつつあります。
その中で、働き方改革の後押しもあり、組織に個人の労働者が使われる、という状況から、個人が組織を活かして働くという価値観への転換が少しずつ広がり始めています。
部下育成という名目の元、これまでも上司が部下の個人的要素を知ることは重要視されてきました。
部下を成長させるために、個人の特性を知ることはとても大切です。
しかし、現在ではそれ以上に、「離職防止」という観点で個人を知ることはますます重要になっています。
個人が望むライフスタイルを自組織は提供できるのか、個人のパーソナリティが持つ強みを発揮できる環境が自組織にはあるのか、そして個人の将来キャリアを実現できる土壌が自組織にあるのか、このあたりがすり合わない状態が続くと、部下はより自分らしく働ける環境へと簡単に旅立ってしまうリスクが高まっています。
「すり合わせ9ボックス」における「個人レベル」を対話する焦点は、主としては部下の成長であり、そこに向けた対話を行うことが大切です。
ですが、マネジメントという視点から見れば、「部下が自社で働く意味はどこにあるのか」を、つねに握り続けるという軸も持っておくことが必要です。
加えて、個人レベルのテーマは、長期的な視点で、ゆくゆくは業務レベルや組織レベルのボックスにつなげていくという意識が大切です。
ライフスタイルボックスライフスタイルのすり合わせが今、新しい価値をもたらす社会は、個が尊重される時代になってきました。
「ダイバーシティ&インクルージョン」という概念が叫ばれ、個々の違いを受け入れ、認め合い、活かしていくことが重要になってきています。
その背景には、少子化やグローバル化、消費嗜好や価値観の多様化などがあります。
企業は、多様な人材を戦略的に受け入れて、市場の変化に対応しながら、創造的なものを生み出そうとしています。
そのような時代の変化の中で、マネジャーとして部下の人生全体の生き方や考え方など、ライフスタイルをすり合わせることは、これまでとは異なる意味合いを帯びてきました。
まず1つ目の意味は、「事業価値」です。
部下の趣味や好きなこと、人間関係、家族関係などを知ることで、たとえば、新しいサービスの開発につながることがあります。
変化の激しい時代の中で、新しい家族の形のニーズを捉えたサービスや好きなことを事業にするといったことが起こっています。
また、企業の厳しい採用状況の中、知り合いのリファラル(縁故)採用もかなりメジャーになっています。
このように、ライフスタイルのすり合わせが事業的に価値を生むようになってきています。
2つ目の意味は「リスク回避」です。
まず、部下本人の健康や家族の健康などを把握しておくことは最低限必要です。
さらにライフイベント(結婚、妊娠・出産、介護)などを知ることで、さまざまなマネジメント上のリスク回避につながります。
また、「どんなことに興味を持っているか?」「資格の勉強をしている」などは転職の可能性を示唆しているかもしれません。
さらに、副業などを行っている場合は、本業と競合していないかをチェックする意味でもすり合わせは必要です。
3つ目の意味は、「パーソナリティ理解」です。
これは次のボックスで詳細に説明しますが、現在は多様性を受け入れて、個々の強みなどのパーソナリティを活かす時代です。
しかし、パーソナリティは無意識に発揮されることが多く、把握するのは自分自身でも困難です。
そこで、家族関係や友人関係、好きなことの情報などのライフスタイルを知っておくことで、そこから話を深堀りしやすく、本人のパーソナリティ理解につながるのです。
このようにライフスタイルのすり合わせが、さまざまな意味を持つようになり重要性が増しています。
しかし、いずれにしてもすり合わせの際には、部下の成長にフォーカスを当てることが重要です。
ライフスタイルのすり合わせがなぜ部下の成長につながるかとい
うと、継続的なその人の人生における成長を考えたときに、たとえばライフイベント(結婚、出産、介護等)やライフワークなどを把握していることで、それらを考慮したマネジメントができるからです。
また、健康についてすり合わせておくことは、成長における土台になります。
何もマネジャーは興味本位で聞くわけではないのです。
5つのテーマを全肯定で受け止めるそれでは具体的に上司として把握、すり合わせたいライフスタイルについて見ていきます。
もちろん、紹介する項目のすべてを満遍なくすり合わせる必要はありません。
部下とのコミュニケーションの中で、必要なタイミングで必要なテーマを話していけばいいのです。
部下の生き方や興味のある事柄というのは、上司にとってもさまざまな刺激を与えてくれるはずです。
とくに激しく変化している時代にあっては、その変化を部下の方がおそらくよく知っているし、順応しているケースも多いでしょう。
ですから、ライフスタイルの対話は、上司にとって「教えてもらう」ということがしやすい、自然に聞き手に回りやすいボックスといえます。
1健康部下の健康については、定期的にすり合わせましょう。
最低限、心と身体が健康であるよう管理するのがマネジャーの役割だと思って接してください。
具体的には、「最近、眠れているかどうか?」を確認することが重要です。
そこにストレス過多の早期症状が現れます。
また、普段見ていて気にかかることがあれば、言葉にして伝えましょう。
たとえば「さっき咳してたけど大丈夫?」「昨日の会議で元気なさそうだったけど大丈夫?」など少し過剰なくらいに気にかけているメッセージを伝えてください。
しかし、健康上のことを聞くのは、ある線を越えるとコンプライアンスに引っかかるのではないかと、心配になってしまうものです。
部下も、ある程度信頼関係がないと言えないこともあるでしょう。
無理やりストレートに「持病はありますか?」などと聞いても、心的距離は遠くなるばかりです。
まだ距離を感じる間柄であれば、「最近調子はどう?」、あるいは「健康上のことで何か私が知っておいた方がいいことはありますか?」という言い方で、話す主導権を部下に渡して優しく聞いてみてください。
加えて、健康を支える運動や食事をテーマに、お互いの健康法などを紹介し合うのもおすすめです。
2興味・関心趣味やはまっていることなどの興味・関心事は、継続的に話せるテーマです。
また、「同じ小説家の本をよく読む」「同じサッカーチームのファンだ」など、共通の関心事が持てていたならば、親近感も湧きます。
さらに、たとえば英語学習など、独自に勉強していることや自己研鑽を積んでいることなどを知っていると、業務へのつながりや将来キャリアへの紐づけも行うことができます。
ほかにも、若い世代が部下であれば、今の時代の変化について知るきっかけにもなり、上司としては刺激をもらうことができるでしょう。
しかし、そのように部下の関心事に興味を持てればいいのですが、そうはいっても「野球の話は聞きたくない」など関心を持てないこともあるでしょう。
私が普段心がけているのは、自分の関心を相手の話している内容よりも、動機に向けるということです。
たとえば、地下アイドルにはまっている方がいました。
私はまったく興味が持てなかったのですが、「彼を熱狂させる動機は何だろうか?」ということにフォーカスしてお互い盛り上がりました。
つまり、地下アイドルが人を熱狂させる動機を知ることで、事業アイデアやマーケティング手法を思いつくかもしれませんし、地下アイドルが彼を熱狂させる動機を知ることは、そのまま彼のパーソナリティを知ることになります。
たとえば、地下アイドルが好きなのは、あまりメジャーなものは好きではなく「知る人ぞ知る」という信条があるという人物理解につながります。
そういうことを覚えておくと、仕事でもあまり目立つポジションではなく、縁の下の力持ちの仕事に配置を考慮するなど応用することもできるのです。
このように、個人の成長にフォーカスを当てながら対話していくことがポ
イントです。
3悩みごと部下が悩んでいて、話したいこと全般のテーマです。
「何か仕事以外でも困っていることとかない?大丈夫?」このように大きく質問してみて、あとは部下の判断に任せるのがよいでしょう。
人間の悩みは大きく大別すると5つだといわれています。
1つ目が人間関係について、2つ目が健康について、3つ目が将来について、4つ目が仕事について、そして5つ目がお金についてです。
この項目の多くは9ボックスのほかのボックスでも扱います。
それ以外でたとえば、1on1のときによく恋愛相談をするという方がいらっしゃいました。
毎回、少し恋愛相談コーナーがあり、そこが一番盛り上がるのだそうです。
対話は生きものなので、関係性やタイミングや流れによって話す内容も変わってくると思いますが、悩みを部下が話してくれたのだとすると、それは信頼されている証拠です。
真摯に受け止めて、しっかりと話を聞き切って、上司自身の体験や考えも話しながら相互理解を深めていきましょう。
いずれにしても、悩みというのは人間を大きくしてくれる糧になりますので、部下の成長にフォーカスしながら、寄り添う姿勢で臨んでください。
4家族や交友関係家族に関することは、部下としても上司に知っておいてほしいケースも多いでしょう。
たとえば、家族の誰かが病気をしたときには、働き方を考慮してほしい場面もあると思います。
これは必要に迫られたケースですが、もっと関係が進んでいれば、「実は家族がある持病を抱えていて、それが発症した際は最悪休ませてもらうこともあるかもしれない」というレベルまで事前に対話でき、ことが起こったときの流れもスムーズにいくはずです。
このように、お互いに開示が進むほど、安心感が生まれます。
同様に、仕事以外でどんな交友関係があるのかわかっていると、人としての部下を深く理解することができます。
たとえば、「高校時代のクラスの友人とは一緒に旅行に行ったり、羽目を外したりする関係性で、大学時代のゼミの友人とはキャリアや将来について相談することが多い」などということを、雑談している中から見出します。
こういったことを把握していると、「今、部下がどんな状態なのか」「どんなことを考えているか」を知るきっかけになります。
もちろん、刑事の取り調べのように根掘り葉掘り聞くわけではありませんが、少し意図的に踏み込むこともできます。
「奥さんとの関係性はうまくいってるの?」このようなことを聞ける間柄ならいいですが、今は問題になるケースでもあります。
基本的に、センシティブな内容に踏み込むときには、大雑把な質問を投げて、非言語の反応
に注視します。
「家の方は順調?」こう聞いてみて、言葉に詰まるようでしたら、少し言葉を足してもいいかもしれません。
基本的には相手のペースに任せますが、少しこちらからも質問して、反応をよく観察しましょう。
このとき、「差し支えなければ」「もし話した方が良さそうなら」などのクッションとなる言葉を差しはさむといいでしょう。
また、聞くばかりではなく、上司自身がオープンに家族の話をしていくことも呼び水になりますので、自己開示からまずはスタートするのもおすすめです。
いずれにしても、部下の周囲の状況を少しずつ知ることにより、部下に対する関心が自然に深まっていくことが一番大事なことだと考えます。
5ライフワーク・副業この項目は新しいテーマなので、少々紙幅を取って説明します。
ライフワークとは定義はさまざまありますが、ここでは「報酬がなくてもやりたいと思える取り組み」を指します。
これは、趣味とも異なります。
趣味は専門性を究めることではなく、余暇の楽しみです。
たとえば、温泉を余暇の楽しみとして趣味にしている人がいます。
一方、温泉をライフワークにしている人には、テーマがあります。
日本、はては世界各地に出かけて、その効能や泉質の違いなどを体験して調査する人もいます。
そして、今の時代、このライフワークだったものが副業や事業になるケースが増えています。
温泉でいえば、温泉ソムリエという有償の資格が存在して2万人近い認定者がいます。
このように、いずれ副業や事業につながるかもしれない部下のライフワークについて知っておくことは、今後非常に重要になります。
このような状況下、2018年1月に厚生労働省が「モデル就業規則」にて、副業を「原則禁止」から「原則容認」としました。
また、2027年までには副業・兼業は自由に行うことができる社会を目指しています。
政府は、従業員を1つの企業だけに縛るのではなく、働き方を多様化して、自分の身は自分で守れるようにすべきと考えているのです。
まだ先と見るか、カウントダウンが始まっていると見るかは人それぞれですが、先進的な会社では副業解禁の動きが周知の通り始まっています。
世の流れは、副業・兼業している従業員が当たり前になる方向に向かいつつあります。
これを行う企業側の意図としては、本業に相乗効果のある副業をしてもらうことで、従業員の能力向上につなげたい。
もしくは、副業を行う中で、社外の人脈や情報やネットワークを有してもらってイノベーションを起こすなど、企業と従業員双方にメリットとなるようにしたい、という思惑があります。
これらの意図を実現するためにも、従業員の副業や兼業について話をすることは今後、必要なことになるでしょう。
とはいえ、副業は基本プライベート情報(家族構成、出身)などと近しい情報ですので、部
下にとっては、プライベート時間への会社の踏み込みとして、ハラスメントと捉えることもあるかもしれません。
逆に部下のメリットとしては、会社の方針に反することをしていないと共有することで、安全な副業・兼業実施が可能になります。
また、上司が副業を認めてくれた場合、本業と副業のバランスをトータルで理解してマネジメントしてくれることがメリットになります。
部下に話をしてもらうためにも、上司のスタンスとしては、基本的にはすべてに対して肯定的に理解を示して対応しましょう。
また、上司自身もライフワークを持ち、上司からも話をすると部下も話しやすいでしょう。
そうして、部下が話をしてくれたならば、ライフワークや副業をきっかけに、以下のようにさまざまな話を展開することが可能になります。
①部下の価値観や考え方を深く理解することで、上司や組織との接点が把握できる②能力開発・強みの発掘などのパーソナリティの向上に寄与する③将来キャリアを考える重要な材料になる④ライフワークでの考えや能力を、今の業務につなげて成果を出しやすくするこうした話は、しっかりと対話する場を設けないとなかなかしづらいと思います。
ですから、意図的に話をできる場を設けてすり合わせてみてください。
仕事も大事ですが、人生において大事にしているものを受け入れて、自分の生き方を尊重してくれる会社や上司に、人は深い愛着を持つでしょう。
このように、部下の成長に意識を向けながら、意図を持ってライフスタイルをすり合わせていきましょう。
ライフスタイルは部下の長期的、持続的成長における土台になるボックスです。
上司としては、少し踏み込みづらかったり、耳の痛い話を聞くこともあるかもしれません。
ですが、ここを部下としっかりとすり合わせることができたならば、信頼関係が育まれ、何をするにもやりやすくなるでしょう。
スタンスとして部下の言動すべてに同意するわけではありませんが、全肯定で受け止めて、そこから対話を始めてみてください。
パーソナリティボックス対話型マネジャーは個を意識した関わりをするパーソナリティとは、一般的にその人の持ち味を指します。
個性、人柄、人格、個人の素質と環境との相互作用から形成され、人間の行動を規定するものです。
非常に潜在的で内面的なものの印象です。
一方で、その語源はラテン語の「ペルソナ」で、仮面を意味します。
これは仮面のように、そのときそのときで外から求められる期待に応えることであり、表面的に見える顕在化された個の特徴ともいえます。
このようにパーソナリティという言葉は、ときに内面のことであり、ときに外面のことも指す非常に多義的な言葉なのですが、ここでは以下のように定義します。
「先天的、後天的なものを含む、結果を出すために人が独自に保有している信念・能力・性格・思考・感情・行動についての特定パターン」少々長いですが、このパターンが強み・弱み、コンピテンシー(行動特性)などと表現されます。
要するに、その人が意識的、もしくは無意識的に保有している思考・感情・言動の傾向やパターンです。
このパターンを自覚できると、同じ失敗を繰り返さないリスク管理や、再現性を持った成果の創出、意図的な成長に向けてのチャレンジが行えます。
たとえば、あるマネジャーは、営業をしている部下と対話していて、どうやら分析と決断に長けているという認識を持ったそうです。
なぜかというと、物事を曖昧にするのが嫌いで、そのために徹底的に調べ、白黒をはっきりさせることを好む傾向を対話の中から見出したからです。
それから、調査系の仕事を任せるようになったら、素晴らしいパフォーマンスを上げるようになり、本人も自信がついて好循環が回るようになったそうです。
このように、部下のパーソナリティを理解した関わり方をすることで、強みを引き出したり、伸ばしたりすることができます。
つまり、個を意識したうえでの関わりができるようになることが、対話型マネジャーの考えるべきことなのです。
パーソナリティの相互理解が部下の能力を開花させるパーソナリティについて対話をする目的は、パーソナリティの相互理解による成長促進です。
部下自身が自分の強みや弱みを自覚して、業務の中で発揮できる(もしくは表出しない)ように支援することで、成果とともにやりがいへとつなげていくことができます。
たとえば、部下が仕事を抱え込みがちで、それがボトルネックになってある業務が滞っ
てしまい、周囲からもクレームが出てしまったとします。
これはパーソナリティが問題を引き起こしたケースです。
しかし、この場合にも、パーソナリティの相互理解があると、解決への合意が速くなります。
上司「また出たね。
○○さんの業務好き過ぎて離さないこのパターン」部下「はい。
そうですね。
やっぱり抱え込みグセが出てきますね」上司「これ、そろそろ変えていきたいね」部下「そうですね。
僕もそろそろ真剣に変えていきたいと思います」このように、部下のパーソナリティについてお互いの認識がすり合っていると、自分の変化に対してオープンでいられ、新たな能力獲得へとつながっていきます。
そして、それがパフォーマンス向上に役立つのです。
一方、パーソナリティがすり合っていないと、部下は無自覚に何度も同じ間違いを繰り返し、上司はその部下に対して「ダメなやつ」というレッテルを貼ってしまう恐れがあります。
また、部下の業務がうまくいっている場合にも、部下のどんなパーソナリティや能力が作用していたかを自覚できると、その後も再現性を持って業務を回していけます。
さらに、部下の強みをお互いに理解していると、先述の分析と決断に長けた部下の事例のように、それを活かせる場を発見でき、能力をさらに開花させることが可能になります。
このように、パーソナリティのすり合わせが、部下をさらなる成長へと導いていくのです。
しかし、強みのパーソナリティは、本人にとっては当たり前のこと過ぎて、自己認識していないことがよくあります。
ですから、効果的に強みの認識をすり合わせるためには、日頃から「これが強みだね」と伝えてあげることが大切です。
また、客観視するためには、各種診断を用いることも効果的です。
1人で受けてもいいですが、チームメンバーで受けるのも比較対象ができたり、補完し合う意識の醸成につながるのでおすすめします。
パーソナリティを知るための理論やツール(診断テストなど)はさまざまあります。
個々の説明は省きますが、以下のようなものを活用しながら、強みや弱み、傾向パターンについて、すり合わせていくことは非常に有効です。
パーソナリティを知るための理論やツールと主な運営元エニアグラム/NPO法人日本エニアグラム学会エゴグラム(交流分析)/NPO法人日本交流分析協会MBTI/一般社団法人日本MBTI協会DiSCⓇ/HRD株式会社ストレングスファインダーⓇ/ギャラップ株式会社FFS(FiveFactors&Stress)理論/株式会社ヒューマンロジック研究所ハーマンモデル/ハーマン・インターナショナル・グループ
対話の積み重ねが言葉を超えた相互認識をもたらす診断系のツールもぜひ取り入れていただきたいとは思いますが、コストをかけずとも、上司としてまずは押さえておくべきパーソナリティを3つに絞ってお伝えします。
①強みと弱み【質問例】「人と比べて労力が少なくできてしまうことってどんなこと(業務・分野)だと思う?」「自分がすごく注意しないとうまくできないことってどんなこと(業務・分野)かな?」②モチベーション・スイッチ(大事にしていること)【質問例】「どんなことを言われるとモチベーションが湧くの?」「自分の中からエネルギーが湧いてくるときってどういうとき?」③コンピテンシー(成果を継続的に上げられる行動特性)【質問例】「この半期で意識して行っていくコンピテンシーってどんなことがあるかな?」「発揮できるようになってきたコンピテンシーって何があるだろう?」ここでのポイントは、1つひとつを明確にすることよりも、こういったことをテーマに部下と2人で、「あーだこーだ」と継続的に話していく中で、その積み重ねにより相互認識が取れていくことです。
対話を重ねると相互認識が言葉を超えたものになっていきます。
ややもすると、パーソナリティは言葉にし過ぎると、決めつけや固定化を助長して、誤解にもつながります。
「あなたの弱みはこれだね。
わかった」などと、言葉に束縛されないことも大事なのです。
ですから、継続的に話をして、変化があったらそれも楽しみながら対話していってください。
弱みについてのすり合わせ例それでは実際、どのようにパーソナリティのすり合わせを行っていくかを紹介します。
今回は、考えることが得意で、行動が遅くなってしまう部下のケースです。
このボックスの対話のポイントも、基本は「しゃべってもらうスキル」を活用しながら掘り下げていくことです。
とくに、第2章の結果をつくる人間の認知行動モデルを参照して、思考レベル、信念レベルのパターンをすり合わせましょう。
最後は、目的を確認してチャレンジングな行動計画を後押しできればベストです。
部下「納期までに終わらないタスクがどうしても出てくるんです」───(顕在化
している問題事象の共有)上司「そうだね。
たしかに、その話がよく出てくるね」部下「ですね」上司「これ、なんでだろうね?他の仕事はできるのにね?不思議だね」───(不思議感)上司「これって、自分で分析するとどんな風になるかな?」部下「いろいろ考えちゃって、当初考えていた時間の見積もりが甘くなるというか……」上司「考えがいろいろ出てくるんだ。
たとえば、どんなことを考えるの?」───(思考が止まってしまったので、具体化により考えやすくする)部下「そのときによって違うんですけど……この前、優先順位を大事にしようと思って取り組んでたんです。
で、わからないことが出てきて、わからないからとりあえず後回しにしちゃったんですよね。
その方が速く進むと思ったんです。
それで、飛ばしたところがそのまま終わってなくて、結局周りに迷惑をかけてしまったんです」上司「なるほど、明確じゃないものを後回しにする傾向があるのかな?」───(整理の返し)部下「そうですね。
あ、あと、明確といえばゴールまでの道筋も見えないと走れないっていうのもありますね」上司「たしかに、そういうとこあるね。
さっきのと似てるね。
結局、見えてないと止まっちゃうと」部下「そうですね」上司「いいね。
道筋が見えていれば走れるということだね。
じゃあ逆に、道筋が見えてたのに終わらなかったってことはないってこと?」───(反転により肯定表現に切り替える)部下「いや、それでいうとありますね。
うーん、そのときはやりたいことから取り組んでしまってたと思います」上司「やりたいことからかー。
明確でやりやすいことからではなく?」部下「そうですね。
やりやすさというよりは、私はやっぱり好きなこととか興味あることにこだわるので、一見難しそうでも、そのとき興味あることを優先して考えちゃうことがありますね」上司「なるほど。
興味あることだったら、明確じゃなくても取り組む傾向があると。
そのときはどういうことだったの?」───(整理の返し)(中略)上司「今回の話で、タスクが期日通りに終わらない原因として、不明確なことがあると後回しにするパターンと、興味優先で動いちゃうっていうパターンが見出せたね。
これを自覚したうえで、今後どんなアクションが取れるかな?」───
(「意識していく」や「気をつけていく」という心がけで終わらせず、必ずアクションに転化)部下「そうですね。
不明確なことがあるときには、○○さんや関係者にすぐ聞きにいくようにします。
後でやるのではなく、先に聞くということで。
興味あることから着手してしまうのは、全体観を見たうえで問題なければそのまま強みにもなるので、いいのかなと思います。
わからないときに、興味のある方に逃げちゃってる部分もあると思うので、まずはわからないことをそのままにせずに、聞きに行く動きを徹底したいと思います」───(アクションの決定)上司「いいね。
わからないことは、すぐに聞きに動くということだね。
ちなみにこれを実行していくうえで障害とか妨げになることってあるかな?人とか自分自身の考えとかでもいいよ」───(イメージづけとリスクの想定)部下「わからないことの線引きですね。
そうはいっても何でもかんでも質問するのではなく、自分で調べたり考えたりする必要がありますので」上司「たしかにね。
どうしようか?線引き。
何かアイデアあるかな?」部下「じゃあ、聞きに行くときは『自分で一応検索して調べてみたんですけど』という言葉とセットにするというのはどうでしょうか?」上司「いいね。
最高だね!そうしよう。
実際にできるイメージはつくかな?」部下「はい、かなりイメージ湧きました」上司「いいね。
僕がサポートできることはあるかな?」───(支援の申し出)部下「次回、またその後の話を聞いてください」上司「OKです」このように、部下の弱みになるパーソナリティパターン(例では考え過ぎで行動が遅くなる)がすり合わされることで、今後うまくいかないときに、「あのパターンが出てるね」とお互いに前提がすり合い、建設的なHowにすぐに取り組めます。
さらに、「不明点を人に聞きに行く」という行動を意識づけることで、新たな能力が開発されます。
これにより、成果への達成可能性が高まる、スピードが速まるなど、パフォーマンスも向上していくのです。
将来キャリアボックス「勘違い退職」という悲劇「将来キャリア」ボックスでは、部下の考える将来キャリアを明確にするサポートを上司が行い、お互いに認識をすり合わせます。
それに、社内でのキャリアや現状の業務とをつなげて、不安の解消やパフォーマンス向上、成長加速を狙います。
実際、キャリアの話をする機会を設けている会社は多いと思います。
年に1~2回、キャリア面談がなされ今後の方向性を確認したりしています。
にもかかわらず起こる最大の悲劇が、上辺のすり合わせによって起こる「勘違い退職」です。
深いすり合わせができていないことから、本当はやれる余地があるのに、部下はやりたいことは自社ではできないと勝手に勘違いをして、転職してしまうケースです。
これは、上司にとっても会社にとっても、また部下にとっても非常に悔しいことです。
たとえば、以前こんなケースがありました。
ある会社で、早く管理職に出世したいNさんという方がいらっしゃいました。
小さなチームでもいいので、キャリアステップとして早くマネジメント業務を経験したかったのです。
しかし、Nさんの上司Sさんは7年間役職が変わらずそのポジションにいて、組織が硬直化していました。
そんな状況に対してSさんの上司の事業部長は、新しくできる部門にSさんを異動させ、Sさんの後釜としてNさんをマネジャーにしようと考えていました。
しかし、ちょうどそのタイミングで、Nさんは業を煮やして新しい会社を決めて転職してしまったのです。
退職の意思を事業部長に告げたときには、引き返せない状態になっていました。
Nさんは、会社のことがとても好きだっただけに、とても残念で悔しい気持ちでした。
「だったら、早く言ってよ」という気持ちでした。
会社は、Nさんがマネジャーになりたい意向を聞けていなかったわけではありませんでした。
ですが、その温度感は確実にNさんと上司であるSさんですり合っていませんでした。
もし、もう少しNさんの温度感がSさんに伝わって対話する機会があれば、事業部長との話ももっと早くできていたかもしれません。
このように、組織の中での意思疎通がかみ合わずに、勘違いや行き違いによる離職が起こること以上に悔しいことはありません。
それを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
部下の将来を考え、現在を明確にする次の図62のように、先に行けばいくほど可能性は末広がりになっていきます。
若ければ若いほど可能性に満ち溢れている分ワクワクする人もいれば、不確実性が高く、不安に
なる人もいます。
つまり、個々で将来のとらえ方は変わりますので、実際にどのように考えているのか、まずは10年以上先のキャリアを確認していきます。
ここでのポイントは、将来キャリアを社内に限定して考えないことです。
まずは、部下個人としての将来の可能性を、最大限見出していくことに全力を尽くします。
言い方を変えると、心の中では、5年後10年後はもはや会社にいるかどうかはわからない前提で対話を進めていきます。
次に、個人の考えを尊重しつつも、会社のスタンスや会社の将来の可能性を示し、すり合わせを行っていきます。
そして、10年後というかなり先の話から、だんだん下がって2~3年後くらいの想像のつくレベルの話をしていきます。
2~3年で自社で経験しておきたい業務や働きたい部門、身につけるべき能力などを洗い出します。
さらに、2~3年以内に経験したい業務や部門で仕事ができるようになるために、今の業務ですべきことへとつなげていきます。
このような経緯を経て、結果として今の業務に集中して取り組めるようになることが大事です。
部下「10年後には、新規事業開発をやっていきたいと思っています。
対象としては、企業向けというよりは、一般消費者向けの事業をやってみたいです。
うちの会社の事業は企業向けばかりですよね」上司「たしかに、うちの会社の今見えてる世界ではそうだね。
ただ、会社の方針を見ていったときに、消費者層の中でも、たとえば富裕層向けとかは可能性があるんじゃないかと思うよ。
それは、○○くんが成長していって、新しい事業として先頭を切ってやっていく可能性はあるよね。
その辺の将来可能性について僕も□□部長と話してみるよ」上司「ちなみに、新規事業開発ができる人になるために、今の業務のどんなところを積み上げていくといいと思う?」───(将来と現在をつなげていく質問)部下「いろいろあると思いますが、今担当しているクライアント先のことをもっと理解したいと思いました。
単に自社サービスを提供するだけではなく、クライアントの事業について深く理解していくことで、事業のことももっと知れますし、契約ももっと取れると思います」上司「それはグッドアイデアだね」部下「はい。
それで、3年後くらいには企画開発部で仕事したいな、と思います」上司「いいと思うよ。
そこにつながるために今できることって何か考えてる?」部下「そこがまだわかっていないので、今度企画開発部の先輩にヒアリングしにいきたいと思います」上司「いいね。
その際、今の業務の延長でできることと、新たに行った方がいいこと、この2点についてぜひ聞いてきてほしいな」───(今の業務への集中と新たなモチベーション手段の獲得)部下「わかりました。
また次回ヒアリングして考えたことを共有させてください」
上司はアドバイザーではなく、カウンセラーのスタンスで部下のキャリアをすり合わせる際に、覚えておいてほしいポイントが2つあります。
1つ目は、上司はキャリアを上手に指南するアドバイザーではなく、まずはカウンセラーのように相談に乗るスタンスを意識してほしいということです。
なぜなら、うまくやろうという意識が強くなるとプレッシャーになり、キャリアの話に対して苦手意識を持ってしまうからです。
実際、マネジメント現場において、このような話を耳にします。
「将来がどうなるか自分でもわからないので、部下に教えることなどできない」「自分のスキルが足りず、うまく将来キャリアを描かせることができない」自分もわからないので教えることなどできないと悩んでしまうのです。
そのように、苦手意識を持ってキャリアの話を避けていると、部下はあるとき、方々から聞こえてくる情報に翻弄されてしまいます。
「どうやらA社に転職したら、年収が100万上がるらしい」などと自社と天秤にかけ始めるのです。
こういう状態のときに、相談に乗ることができる関係性や場が重要です。
このとき部下が望んでいるのは、「揺れている状態を肯定してもらい、安心したい」ということだからです。
やりたいことがわからない部下に対して、うまくキャリアを描いてもらえるようなスキルがあるに越したことはありませんが、それ以上に大事なのは将来の可能性を一緒に考えること、信頼関係を築くことなのです。
「私もそうだった」と、まずは肯定することの方が大事なのです。
そのうえで、一緒にアイデアを出し合って考えていくのです。
2つ目は、部下の将来キャリアを定期的(月1回~3ヵ月1回)に確認することです。
なぜなら、一度将来のキャリアを聞くと、「部下はこれがやりたいんだ」という固定観念が生まれ、しばらく話を聞こうとしない人が多いからです。
しかし、ここに落とし穴があります。
「人間のやりたいことはコロコロ変わることがある」のです。
1ヵ月経てば、さまざまな経験や出会いから、部下も見える世界が変わる可能性があります。
それまでキャリアを考えるうえで前提としていたものも変わるかもしれません。
ですから、3ヵ月前に将来キャリアの話をしていたとしても、繰り返し聞いてほしいのです。
「前回、新規事業をやりたいっていう話だったけど、あれから変化したことってあるかな?」──それで変わっていなければ、その確認が取れてお互いに安心感があります。
また、変化や進捗があればまたすり合わせることが可能です。
このように、定期的にキャリアについてもすり合わせを行わないと、急な部下の変化を理解できずに、突然の離職を招くなどということにもなりかねないのです。
キャリアを意識することで今の取り組みが変わる将来キャリアについて対話する一番の目的は、誤解を恐れずに言えば、将来像を明確に
することではありません。
それを材料に、今の業務や組織に意味を見出し、不安を解消して、今に充実感を得ることです。
ですから、極論を言うと、もし部下が「この会社では先が見えない、もしくは憧れる先輩がいない」など、会社にいる未来を悲観的に見ていたとしてもいいのです。
その現状を自分がどう変えていけるか?──自分のキャリアをつくっていくために、今自分は何をすべきかと考えられるように、上司はサポートしてほしいのです。
以前、キャリアについての相談を受けた人から、こんな話をうかがいました。
「将来のキャリアを上司に聞かれて、事業責任者として組織をつくれる人になっていきたいと答えました。
それを目指すためにどうするかという話をいろいろして、自分の中で業務の取り組みへの変化がありました。
それは、『業務をただこなす』という視点から、『業務というのは、お客様と周囲からの信頼を得るための手段』なのだと気づいたからです。
つまりキャリアを意識することで、普段の業務スタイルが変わってきました。
短期的な数字だけではなく、中長期のお客様や周囲との関係性を意識できるようになりました」このような意識で仕事を積み重ねていくと、信頼がさらに大きな仕事をもたらしてくれます。
すると、自分の裁量や業務のスケールも大きくなり、仕事がさらに面白くなってきます。
そして、そこから新たな将来キャリアが開けてくるのです。
このように、部下が真に自分からキャリアを築いていくための第一歩として、将来キャリアの対話を行っていってください。
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