はじめにどの企業も悩む「若手が育たない」問題マネジャー人材がいない、リーダー候補が不足している。
いざマネジャーに昇格させても、なかなか思うように育たない。
以前よりも若手がより受け身になっている。
それどころか、そもそも自社に優秀な若手がいない。
さまざまな企業の人事担当者やマネジャーから、このような声を聞くことがあります。
「若手の意識が低く、マネジャー候補がなかなか出てこない」「新卒社員がやっと一人前になったと思ったら辞めてしまった」「20代社員とどう接していいかわからない。
彼らのやる気が見えない」一言でいえば「若手育成」に関する悩みです。
一方、さまざまな企業の若手社員からも、多くの悩み相談を受けます。
「もっと成長したいけれど、その機会が今の会社にはない」「新入社員の頃は研修も多く学ぶことが多かったが、入社2年目の今、リモートワークで『放置』されている。
自分のキャリアが描けないでいる」企業も若手も、本当は成長して成果を上げたいと思っています。
どちらも会社にとってプラスになることを考えているのに、どこかでボタンの掛け違いのようなことが起こっていて、有効な解決策が打てていないようなのです。
そこで、こうした「若手育成」に関する悩みを解決するための具体的なやり方について一冊にまとめたいと思いました。
若手育成において一番大切なことは何か私はサイバーエージェントの人事部門のトップとして16年の間、インターンシップの選考も入れれば、のべ6500人の若手と接してきました。
さまざまな若手社員を見てきましたが、共通して言えるのは、みんな成長意欲があるということです。
「うちの若手はやる気がなくて……」と言う企業の人事担当者にも、「内定者や新入社員はどうですか?」と聞くと、一様に「たしかに意欲は高いです」と答えます。
最初は全員、やる気があって意欲もある。
それが続かないことが問題なのです。
若手社員は全員、成長意欲がある。
この前提を押さえた上で、どうすれば若手が育つのか考えてみましょう。
「成長したいんです!」この言葉の裏にある、若手社員が本当に求めているものは何でしょうか?成長して高い報酬を得たいのでしょうか、昇進したいのでしょうか。
それも一つだと思いますが、あくまで副次的なものです。
若手が成長したいと思う理由は、自信を手にしたいからです。
つまり若手育成で最も大切なことは、自信を持たせることなのです。
「若い人は経験が足りないから、大きな仕事は任せられない」と言う上司がいますが、それは大きな誤解です。
本人に自信があれば、「やったことがないけれど挑戦したいです!」と堂々と上司に申し出るはずですから。
「今どきの若手は受け身だ」これも本当によく耳にする言葉ですが、責任感が強くまじめな若手ほど「失敗して上司やチームに迷惑をかけたらどうしよう」と慎重になり、「できます!」と即答できません。
自信がないから言い出せないのです。
例えば上司から「この新しいゲーム、急ぎで誰か一面クリアしてくれないかな?」と言われたら、ゲーム好きな若手は、そのゲームをやったことがなくても「やってみます」とすぐに手をあげるでしょう。
「このスマートフォンの設定、わかるかな?」と聞けば、「これですね」と躊躇せずに上司のスマホを操作するはずです。
上司よりも確実にできそうだという自信があるから、迷わず行動できるのです。
今、若手に必要なものは、やる気でも経験でもなく、自信なのです。
つまり、若手の「成長したいんです」という言葉は「自信がほしいんです」というメッセージなのです。
若手の言う「自信」とは、さまざまな言葉で言い換えられます。
・どんな組織やチーム、どんな人たちともやっていけるという「自信」・たとえ会社がなくなったとしても、自分で稼げるという「自信」・自分にしかできない仕事で、誰かのためになっているという「自信」・家族との時間を最優先しても、仕事はしっかりできているという「自信」「具体的にどういう自信か」については人それぞれです。
価値観が多様化する今、唯一言えることは、「自分という人間に自信を持ちたい」ということです。
今の若い人は「どんなスキルが身につくか」と焦っています。
だったら、新しいデジタルスキルを身につけさせれば解決するのでしょうか。
それも否定しませんが、中長期的に見てどうでしょうか。
スキルはやがて陳腐化します。
市場価値を高くし続けるために大切なのは、変化に対応できる人材になることです。
不
確実性の時代だからこそ求められる資質です。
自信さえあれば、やったことのない仕事にも果敢にチャレンジできます。
やはり必要なのは自信、それも根拠のある自信です。
根拠のある自信とは、成長した先に手にするものと言い換えられます。
話は変わりますが、「20代が成長できる企業ランキング2020」で、サイバーエージェントは4位に選ばれました(ダイヤモンド・オンライン記事より)。
同サイトの記事、社員による会社評価「働きがいのある企業2014」では、IT業界「20代の成長環境ランキング」で1位に選ばれたこともあります。
これらは就活・転職情報サイトや、社員のクチコミサイトでおこなわれた調査によるもので、「サイバーエージェントは若手が活躍しやすい会社」だと評価を受けています。
後述しますが、サイバーエージェントには「若手が育つ」しくみがあり、積極的に若手を抜擢しています。
給料や待遇だけでなく、自己成長できるかどうかで志望先を決める学生も増えているため、このような評価を受けるようになったのです。
私は「若手が自ら自信を手にすること」が若手育成のゴールだと考えます。
いきなり結論めいたことを書きますが、若手育成で一番大切なのは「『成長実感』という根拠のある自信をつけさせること」です。
そもそも自信とは、誰かが与えて実感できるものではありません。
自分で考え行動して得た経験を通してのみ、人は成長を実感します。
自信は自分で手にするしかないのです。
では企業は何もできないのかというと、そんなことはありません。
企業でできる唯一の手助けは、「若手が自分で成長できる『自走環境』を整えること」です。
これに尽きるのです。
若手が自ら急成長できるしくみを会社が提供する。
この「急成長できるしくみ」が、本書で紹介する「自走サイクル」です。
「育てる」のではなく「育つ」しくみをつくるこの本で紹介するのは、「若手が育つ」しくみです。
会社や上司が人を「育てる」のではなく、本人が自発的に「育つ」。
ここが重要です。
これからの若手育成は、成長環境をいかに会社や上司が整えられるかが大きなテーマになります。
働き方の選択肢も増えた今、社員一人ひとりの自由度が高まっています。
こういう時代において必要とされるマネジメントは、部下を細かくあれこれ管理するマイクロマネジメントではありません。
リモートワークが増え、個々の働き方や組織への貢
献の仕方も多様化している中でマネジャーに求められているのは、必要に応じて適切なタイミングで支援(サポート)をおこなうことです。
なぜならば、これさえできれば若手は自ら育つからです。
つまり、若手が自走する環境づくりが、これからの若手育成のカギであり、マネジャーに求められる仕事でもあります。
いきなり結論を書いてしまいますが、社員が自らの判断で積極的に仕事を進める、「自分」で「走っていける」環境(自走環境)をつくる。
自走環境こそが「若手が育つ」しくみであり、この本の目指すところです。
本書では、「若手が育つ」しくみ、「若手が育つ」フレームワークをお伝えし、若手はもちろんのこと、年齢や経験に関係なく、誰もが加速度的に「(勝手に)育つ」方法をシェアします。
なぜ300人もの20代未経験マネジャーが育っているのか人事担当者の集まる会などでよく聞かれることがあります。
「御社の若手が優秀なのはなぜですか?」「20代の若手マネジャーをどのように育成しているのですか?」「なぜ300人ものマネジャー経験者がいるのですか?」現在、サイバーエージェントの社員は、新卒採用と中途採用で入社する割合は半々くらいで、そのほとんどが20代。
そのため、若手社員が多い会社と言われます。
例えば、ヘッドハンティングの会社から子会社社長をピンポイントで採用する、といったことはありません。
マネジャーになる人間は、ほぼ100%生え抜き社員です。
しかも、年齢やマネジャー経験は問いません。
入社2年目で子会社社長、20代で本社の取締役、内定者にいきなり子会社を任せる大抜擢をおこなった例もあります。
この「抜擢」こそが、若手が急成長する理由である、と言っても過言ではありません。
「抜擢」するから若手が育つ。
こう言い換えてもいいでしょう。
実際、「サイバーエージェントは、若手の抜擢人事を積極的におこなっている」といった形で、メディアで取り上げていただくこともあります。
しかし、「抜擢人事」という言葉だけ聞いてしまうと、次のような懸念を覚える方もいるのではないでしょうか。
「そもそも優秀な若手がたくさん入社するから、若手の登用が可能なのだろう」「サイバーエージェントだから、抜擢人事ができるのだろう」この言葉の裏には「自社では無理」というニュアンスが隠されています。
たしかに、サイバーエージェントでは抜擢人事をおこなっていますが、それは能力が高くてリーダーシップのある若手人材が豊富だからできるのではありません。
ほとんどの企業は教育が先だと考え、教育という名のもとに研修をしますが、その後に抜擢をおこなうことは、ほとんどないでしょう。
これは企業が「育てる」スタンスです。
それよりも、まず抜擢する。
つまり、先に「抜擢」があるのです。
いわば若手が自力で「育つ」スタンスです。
もちろん「育てる」スタンスでも人は育つと思いますが、教育が先だと時間がかかりますし、どうしても本人たちは受け身になりがちです。
一方の「育つ」スタンスの場合、抜擢→自走の順番で「人が育つ」という考えなので、より速いスピードでより多くの人材育成が実現します。
ここが大きな違いです。
本書で紹介する「若手が勝手に育つしくみ」は、・普通の若手が優秀なリーダーに成長するためのしくみ(フレーム)です。
それゆえ、はじめから優秀である必要はないのです。
しかも、・誰もが成長するしくみです。
そこには年齢も経験も能力も関係ありません。
「若手が勝手に育つしくみ」があるから、サイバーエージェントでは未経験の学生でも、マネジャー登用ができるというわけです。
このフレームは驚くほどシンプルなものですので、皆さんの会社やチームでも、再現性があります。
昇進や異動なども不要、日常業務の中でも「若手が勝手に育つしくみ」は活用できるからです。
さっそく、これまであまり語ることのなかった、サイバーエージェントで実践している、「若手が勝手に育つしくみ」の全体像について説明したいと思います。
マネジャー、リーダー、メンター、トレーナー、OJT担当者へ「環境が人を育てる」これは、サイバーエージェントの社長の藤田晋の言葉です。
「誰かをマネジャーに抜擢すると、その人はマネジャーの仕事を一生懸命やるようになり、結果として人が育つ。
だから(経営は)『人が育つ環境』をつくらなきゃダメだ」藤田はこのように話しては、「人が育つ環境をつくろう」といつも私に話しています。
創業して約20年の東証一部上場企業であるサイバーエージェントには、グループ従業員が6000人以上います。
グループ会社は120社近くあり、300人以上の子会社などのマネジメント経験者がいます。
その中には、入社8年目、29歳で全社のトップ8人になった人間もいますし、内定者でいきなり子会社社長となった人間もいます。
当然ですが、私一人で300人もの人間を育てることなどできません。
しかし、300人が「自ら育つ」ための環境を整えることはできます。
なぜ私が人事のトップとして、さまざまな失敗と成功を繰り返しながら、メンバーの「自走環境」を整えることにこだわり続けているのか。
それは、社員の自走環境を整えることが、「人事」の仕事の根幹をなすものだと考えているからです。
人事という仕事は、社員が動いてくれないと意味がありません。
例えば新しい有給休暇制度を設計し、導入したとしても、それだけでは仕事をしたことになりません。
新しい制度を社員一人ひとりが自発的に利用することで、組織の活性化や生産性向上を実現し、それが全社の成果につながってはじめて、仕事をしたと言えます。
そのため、社員にどうやったら動いてもらえるかを常に考えています。
社員一人ひとりが、強制ではなく前向きに主体的に動いてくれることが、ものすごく大事になってくるのです。
この発想が、「自走環境」を整えることにつながっています。
例えば、「人事制度は、説明できないものはやるな」と言われています。
そこで人事が陥りがちな罠として、「説明責任」を果たそうと、膨大なマニュアルをつくってしまうこと。
これでは細かすぎて、現場では運用できません。
説明できるからといって、細かすぎるものはダメなのです。
だから、できる限りシンプルな「フレーム」だけつくって、その枠組みだけ守ってくれたら、あとはどうぞ自由にやってくださいという形で人事制度をつくる。
つまり、「現場にとって使いやすいかどうか」が、人事制度では重要なポイントです。
人事のトップとして、どうやって社員一人ひとりが自発的に動くかを考え抜いてきました。
そんな私だからこそ、どうやって社員一人ひとりが自分で育つか、という発想で人材
育成も考えていたと言えるのかもしれません。
多くの会社、そしてビジネスパーソンの皆さんが抱えている「若手を育てる」という問題を一緒になって考え、一つのヒントが出せればと思い、執筆に至りました。
・人材育成について悩みの尽きないマネジャーやリーダーはもちろんですが、・はじめて「育成」に関わるメンターやトレーナー、OJT担当者たちにも活用していただけるよう、現場で今すぐ使える「フレームワーク」としてまとめました。
私がこれまで300人以上のマネジャー「抜擢」に携わり、彼らとともに試行錯誤を繰り返しながら得たノウハウをすべて公開したいと思います。
コロナ危機を経験し、より柔軟かつ危機にもスピーディーに対応できる組織が求められています。
変化に強い、危機に強い組織にするためには、自らの頭で考え、意思決定できる「自走する若手」が欠かせません。
これからの時代の「人材育成の教科書」として、本書が皆さんのお役に立てることを願っています。
2021年11月サイバーエージェント人事統括曽山哲人
目次若手育成の教科書はじめにどの企業も悩む「若手が育たない」問題若手育成において一番大切なことは何か「育てる」のではなく「育つ」しくみをつくるなぜ300人もの20代未経験マネジャーが育っているのかマネジャー、リーダー、メンター、トレーナー、OJT担当者へ目次第1部抜擢前若手から「やりたいです」と言える空気をつくる
第1章「言わせて、やらせる。
」で人は育つ
そもそも何のための若手育成か若手が勝手に育つ「自走サイクル」基本ルールは「言わせて、やらせる。
」なぜマイクロマネジメントではダメなのか「育て上手」と「育て下手」を決定的に分ける差若手の成長に「意思表明」が欠かせない理由「意思表明」のメリットを伝えるには普段から「自分の言葉」で話させる「インプット→アウトプット会話」で激変する「主体的に動いて」を解決する2つのアクション「自分の言葉で話す」という決断経験「やりたいです」と言える空気づくりコラム自分で自分を成長させる「セルフ抜擢」第2部抜擢「自走スイッチ」を入れると若手は勝手に育つ
抜擢—
そもそも何のための若手育成かまずはどうやって人が成長していけるのか、第1章で「若手が自ら育つしくみ」について、全体像を把握していただければと思います。
その前に、なぜ若手を育てる必要があるのかについて理解しておく必要があります。
そもそもなぜ、若手育成が大切なのでしょうか?「優秀な人に辞めてもらいたくないから」「特に若い人は成長を求めているから」「魅力的な会社であると社員に感じてほしいから」このように話す人事担当者の方がほとんどです。
もちろん、そういう気持ちもあると思いますが、どれも本質的ではありません。
私は次のように考えています。
成果を上げるために、育成がある。
先ほどの「辞めてもらいたくないから」といった理由では、「育成のための育成」に陥りがち。
「わが社は若手を育てていますよ感」には要注意です。
あくまで会社の業績や未来の社会的インパクトなど、成果を上げることから逆算して考えると、人の才能を活かすほうが良い、だから人材育成は不可欠だというロジックなのです。
もっとシンプルに言い換えれば、育成とは、人が育つことによって業績が上がるものでなければ、会社にとっても個人にとっても意味がないのです。
どんなに優秀であってもマネジャー一人で大きな成果を上げることはできませんが、マネジャーが自走環境を整えることで、メンバー一人ひとりが自走すれば、とてつもない成果を上げることは可能です。
研修などで、資格などのポータブルスキル習得ばかり教えても、人は成長しませんし、資格を取っただけでは業績も上がりません(業務に直接関わる資格は別です)。
この「成果を上げるものか」という視点は、若手育成を考える際に、多くの人事担当者が抜けがちです。
「若手が喜ぶから育成する」といった考えはいったん捨てましょう。
また、この後説明します「抜擢」も、「成果を上げるため」と考えれば、やらないという選択肢はないはずです。
安心していただきたいのは、本書で紹介するのはいたってシンプルな「しくみ」であるということ。
フレームなので再現性があり、すぐに現場で活用できます。
「うちの会社には無理かな」と現段階では思っている方も、読み進めていくうちに「すぐやってみよう」となるはずです。
さっそく見ていきましょう。
若手が勝手に育つ「自走サイクル」本書のテーマは「若手が育つ」です。
「若手を育てる」ではありません。
一人ひとりが仕事を通じて自ら成長し、成果を上げることが本書のゴールです。
これを「自走」と呼びます。
一人ひとりが「自走」できる組織は、これからの時代、非常に強い組織と言えるでしょう。
では、若手一人ひとりが「自走」するために、マネジャーやメンター、トレーナーができることは何でしょうか。
それは、「はじめに」でお伝えしたとおり、メンバーが自ら育つための「自走環境」を整えることです。
「自走環境」を整えるためには、人が育つ「しくみ」を用意することです。
本書では、若手が育つしくみを「自走サイクル」と呼びます。
「自走サイクル」は、次の4つで構成されています。
1.抜擢:期待をかけられることで、「自走スイッチ」がONになる2.決断:覚悟を決める。
意思決定によって、自らの「決断経験」を増やしていく3.失敗:成長において欠かせないもの。
必要不可欠なプロセスと理解する4.学習:失敗を次の経験に活かすための内省。
次のステージのための準備をするこの4ステップが一つのサイクルとなっています。
そして、このサイクルを回せば回すほど、「経験」が「経験値」として昇華され、本人の中に蓄積され、早く確実に成長していくというわけです。
それぞれの要素については後で説明しますが、ここで押さえておきたいのは、「自走サイクル」という一連の流れであるということと、このサイクルを回していくことが重要だということ。
このサイクルをいかに速く、かつ、何回も回していけるかで、人の成長スピードは変わっていきます。
また、この流れの特徴として、1〜3が4につながるという点です。
「研修などを通じて、4の『学習』機会だけは与えている」という企業の人事担当者の方の話をよく耳にします。
たしかにそれも大切なことだと思います。
しかし、サイバーエージェントでは、1の抜擢や3の失敗なども人が育つために不可欠なもので、一連の流れと考えています。
1〜3のハードルを下げることで機会を増やし、その結果として学習効果が非常に上がるというイメージです。
「成長には失敗が前提条件だったのですね!」と、先ほどのような企業の人事担当者の方
は驚き、納得されます。
「自走サイクル」という一連の流れであることを理解すると、「成長には失敗が欠かせない」ものだと腹に落ちたそうです。
「はじめに」で「『抜擢』こそが、若手が急成長する理由」とお伝えしましたが、正確に言えば「抜擢」は、「自走サイクル」の最初のステップです。
その先にある、「決断」や「失敗」「学習」というプロセスを経ることで、若手は急成長します。
まずは「自走サイクル」の第一歩として、「抜擢」する。
そこから自走サイクルを回していき、経験値を上げていくことで、結果的にマネジャーとして成長していき、成果も上がっていく。
このようなしくみがあるからこそ、能力や経験を問わず、誰でも安心して、抜擢できるというわけです。
それぞれのステップについては、第2章以後で詳しく説明します。
基本ルールは「言わせて、やらせる。
」「若手が育つ」しくみには、次の基本ルールがあります。
それは、言わせて、やらせる。
です。
「抜擢」とは、この「言わせて、やらせる。
」を実践することです。
冒頭で紹介した「自走サイクル」を回せれば、加速度的かつ飛躍的に人は成長しますが、基本ルールである「言わせて、やらせる。
」を実践するだけでも、人は育ちます。
特に若手は大きく変化します。
この基本ルールを、もう少し詳しく説明しましょう。
言わせて、やらせる。
2つのステップで構成されています。
まずは「言わせる」。
メンバーから、「やりたいです」「やらせてください」「やります!」といった、意思表明の言葉を引き出します。
意思表明をさせた後に、今度は上司や先輩、トレーナーが、「よしわかった、任せるよ」「OK、よろしく頼むね」「ありがとう。
よろしくお願いします!」といった具合で、きちんと言葉で承認する。
「言わせて、やらせる。
」は、言い換えると宣言→承認であり、これこそが、若手が育つ基本ルールなのです。
重要なのは、上司・部下(リーダー・メンバー)の双方が、それぞれの責任を負うということ。
上司には「あなたにこの仕事(役割)を任せた」という承認に対する責任が、
部下には「この仕事(役割)を自らの意思でおこなう」という宣言に対する責任が、それぞれに生じるということです。
このステップがないと、さまざまな問題が生じます。
この後お伝えする「抜擢エラー」も、上司もしくは部下、あるいは双方の責任感不足によって生じます。
まずはこの基本ルールを頭に入れておきましょう。
なぜマイクロマネジメントではダメなのか言わせて、やらせる。
「人が育つ」しくみの基本ルールは、これだけです。
本書では、この基本ルールを含め「抜擢」という言葉で表現しています。
「言わせて、やらせる。
」で若手は育つ。
そして、「抜擢」で若手は急成長する。
これが本書で一番伝えたいことです。
「抜擢」とは何かについては、後ほど詳しく説明します。
まずは「言わせて、やらせる。
」とは何か、ここで簡単にお伝えします。
例えば、営業部の若手社員のAさんの目標が「1000万円の売上を半期で達成する」だとします。
上司はまず、Aさんに質問します。
「(目標達成するために)どういうふうに進めようか?」「どのお客様に、どういう順番でアプローチしていこうか?」こんなふうに問いかけるのです。
あくまで上司がやることは、投げかけです。
それに対し「こんなふうに進めようと思っています」と、Aさん本人に考えを言ってもらう。
そしてAさんが自ら言ったことを「それいいね!」と上司が承認する。
これが「言わせて、やらせる。
」自走環境です。
旧来型マイクロマネジメントは、「いつまでにあそことあそこ、○件アプローチしなさい」などと、こと細かに上司が部下に指示をしてしまいます。
具体的に「こうしなさい」と上司が部下に指導する。
残念ながら、これでは人は育ちません。
それどころか、上司からあれこれ言われることで、やる気もどんどん低下し、やがて自分の頭で考えることをやめてしまい、上司に言われるとおりにしか動かない、受け身の人間になってしまいます。
マイクロマネジメントは、細かければ細かいほど、部下は思考停止に陥ってしまいます。
そして、「面倒だ」「何もしたくない」と縮こまってしまい、パフォーマンスも下がってしまうのです。
一方、「言わせて、やらせる。
」であれば、若手は自分の頭で考えて話しますし、主体的に動きます。
この「自分で考えて、自分で動く」という自走環境でサイクルを回していくことで、人はとてつもないスピードで成長します。
自走環境に慣れてくると、「もっと(自分から)やっていこう」というスタンスを生みやすくなります。
上司はどんどん質問を投げかけ、部下の「言葉」に「いいね!」を増やしていく。
部下は自ら言ったこと、自らやったことで成果が出ると、「自分でやった」という手応えを覚え、自信が出てきます。
そうなると、さらに自走していく。
自走環境で、個人のパフォーマンスが上がるのです。
とはいえ、いきなり部下が自発的に何かをするとは思えない、と疑う読者の方もいるかもしれません。
ご安心ください。
「言わせて、やらせる。
」の促し方、具体的なやり方については、この後で詳しく説明します。
「育て上手」と「育て下手」を決定的に分ける差もう一つ、大切なことをお伝えします。
本書では、若手育成のゴールは「若手が自信を手にすること」と、「はじめに」でお伝えしました。
「育て上手」とそうでない人を決定的に分ける差は、まさにここです。
若手に「自信を持たせる」ことができるかどうか。
育て下手な人はダメ出しばかりで自信を削っていきます。
「君はこれだけしていればいい」と自分のやり方を押し付ける人も同様。
若手は萎縮してしまいます。
これでは自信などつくことはありません。
思いつきや気まぐれで仕事を振るのもNGです。
忙しい職場で起こりがちなのは「そういえば、これやって」「あれもお願い」と矢継ぎ早にあれこれ仕事を若手に振ってしまうこと。
「OJTで仕事をやりながら覚えてくれればいい」というのがこのタイプの上司の主張ですが、部下からすれば仕事の全体像が見えず、数をこなしても仕事を理解したという実感がわきません。
そのため、「この仕事は責任を持って自分がやれる」という自信が持てず、いつまでも不安なままです。
では懇切丁寧に事細かにやり方を教えてくれたらどうでしょう。
実はこれが最も多い「育て下手」。
若手に教えすぎてしまう上司です。
何もかも手取り足取り、手順も完璧に指導する。
一見パーフェクトに見えますが、これでは若手は成長しません。
何もかも教わることで、思考停止になってしまうからです。
教えられた業務は完璧にできたとしても、それで若手は自信がついたかというと、むしろ逆に自信を失ってしまうことさえあります。
これはとても危険です。
「自分は未熟でダメだから、教わらないとできない」「○○さんがいなければ、私はまだまだ何もできない」教えすぎ上司の下で、このような劣等感を覚える若手は少なくありません。
これではいつまでたっても自信は芽生えませんし、若手は成長しません。
では、ほめるだけではどうでしょう。
これも、残念ながら自信を持たせられるとは言い切れません。
たしかに、最初はほめることだけでも効果的です。
しかし、ほめるだけでは限界があります。
ただ単に「仕事ができるようになったこと」と、「自分の成長を実感して自信を持つこと」は別だからです。
逆に言えば、自信を持って仕事ができるようになれば、ほめられることにさほど関心がなくなり、自発的に仕事に取り組むようになります。
育て上手な上司は、若手に自ら考えさせたり経験させたりして、何かあったときだけサポートします。
そうすることで若手の自立を促し、結果として若手は自信を持ちます。
よかれと思ってやっていたことが、若手にとって逆効果だったというのは起こりうることですので、しっかりポイントを押さえておきましょう。
若手の成長に「意思表明」が欠かせない理由「抜擢」は、ともすれば抜擢される側に「やらされた」感を抱かせてしまうことも。
そこを払拭するためにも、プロセスとして「言わせて、やらせる。
」ことが大事です。
もちろん強引に言わせるのはよくありません。
「北風と太陽」でいえば太陽のように、部下が自分の意思で自然と言えるようにすることが大切。
「上司から言わされた」という認識だと、先にお伝えしたとおり、他責になってしまうからです。
あるグローバル企業に勤める知人は、その会社で働き始めた頃、あることに驚いたと言います。
それは、十分なスキルがなく、その仕事ができる根拠もないのに、誰もそのようなことはお構いなしに「やりたいです」とバンバン手をあげることです。
そしてその会社では、実際にそういう人たちに、次々とチャンスが回ってくるのだそうです。
海外のビジネスパーソンに対し、「できる人」という印象をお持ちの人もいるかもしれません。
自分の意見をはっきりと言い、決断も速く、高いスキルも備えているのではないかと。
しかし隣の芝生は青く見えるように、実際はそうでないことも多々あります。
特に発言内容やスキルは、よくよく聞いてみると、日本のビジネスパーソンと比べてもレベルはそれほど高くはない、などということがあります。
でもそれは最初だけの話です。
できる根拠もないのに「やります」と言った人が、「やる」。
そうすると、だんだんとできるようになる。
言ってしまえば、それだけなのです。
本人が自ら抜擢を促し(セルフ抜擢と呼んでいます)、「自走サイクル」を回しているからです。
自分でたくさん決断し、失敗も経験しているので、短期間で爆発的な成長を遂げているのです。
最初の一歩である「意思表明」(宣言)が、いかに大事であるかがわかります。
この話で思い出す人間がいます。
サイバーエージェントの専務の石田裕子が新卒1、2年目ぐらいのときの話です。
営業部に所属していた石田の、当時の上司は私でした。
面談で彼女は「一番大きいクライアントを自分にやらせてほしい」と、何度も直談判してきたのです。
そこで「まずは分析をできるようにしよう」「お客様のところで一人で営業してみよう」などと、段階を踏んで仕事を任せるようにしました。
結果、マネジャーを任せられるくらいの大きな業績を、いろいろなクライアントに対し上げるようになり、現在はサイバーエージェントのトップ8人の一人として活躍しています。
石田に限らず、サイバーエージェントでMVPをとる若手に共通するのが活躍前に「意思表明」をしているという点です。
みんな入社してすぐに自分のやりたいことを口にしているのです。
例えば1年目でMVPをとったエンジニアのAさんは、入社してすぐに「マネジメントをやりたい」と先輩に話したところ、先輩から「Aさんの言うマネジメントって具体的にどんなこと?」と聞かれ、答えられませんでした。
そこから「自分が本当にやりたいこととは何か?」と具体的に考えるようになったそうです。
そして、ある動画コミュニティプラットフォームの開発チーム責任者に、1年目で抜擢されました。
もともと高いポテンシャルを持つ若手が「これをやりたい」と宣言したことで、宣言とは違う形で抜擢されるというのは、サイバーエージェントではよくあります。
「やりたい」と意思表明したからこそ、新しいチャンスに恵まれ、結果として活躍できたのです。
もちろん、優秀な人物であれば、成果を出し続け、やがて昇進することは自然なことでしょう。
しかし、優秀な人こそ、いち早く成長し、より大きな成果を上げてほしいと思いませんか。
石田やAさんのように自分から「やらせてほしい」と上司に言い続け、そこから「任せたよ」「やります」という意思表明(宣言)があったからこそ、早くに大きな仕事を手がける機会を手にすることができ、結果、急成長を遂げたのです。
意思表明の重要性を理解していただけたらうれしいです。
「意思表明」のメリットを伝えるには育成する側にとっては、「意思表明」がいかに大切かというのは十分理解できるはずです。
しかし、若手にとってはどうでしょうか?先ほどの石田のように、新卒1、2年目で「やらせてください!」と手をあげられる人はそう多くないのが現実です。
意思表明は勇気のいる行為です。
また、意思表明のデメリット(に思えること)もたくさんあります。
もしも失敗したら、周囲に迷惑がかかる、恥ずかしい、評価も下がりそう……。
そう考えると、意思表明はしないほうが安全だと考えるのも仕方がありません。
まじめで責任感がある人ほど、慎重に判断し、躊躇してしまうのです。
この大前提を押さえた上で、どうすればいいでしょうか。
「意思表明することのメリット」をしっかり伝えることです。
「あなたの成長のため」というのは間違いではありませんが、自ら「やります」とまだ言えない若手には響かない可能性があります。
今はまだ目の前の仕事をこなすのに精一杯で余裕がなく、成長どころではないという人も同様です。
そういう若手には、私は次のように伝えます。
「意思表明すると、周囲からのサポートが増えるよ」「こういうことをやりたいです」と意思表明したときに周囲からの応援が得られるようになる。
わからないことやできないことはサポートしてもらえる。
周囲の協力を得て仕事を進められるようになる。
すでにがんばっている人であれば、応援が増える。
これこそが「意思表明」の最大のメリットです。
今はまだ自信がないのなら、周りに助けてもらえばいい。
そのための意思表明なのだからと伝えれば、手をあげることへの心理的ハードルは下がるでしょう。
意思表明で周囲からの応援が増えるのは、若手に限りません。
サイバーエージェントの関連会社のeStream取締役・竹原康友は「1000万人を感動させるモノづくりをする」ことをビジョンに掲げ、明言しています。
彼のビジョンを記事で知った私はすぐに「応援します!」とメッセージを送りました。
このようなトップやリーダーの「こうしたい!」という意思表明は、メンバーからはもちろんのこと、周囲の人たちやユーザーからの応援も増やします。
逆に、周囲の協力が得られにくい状態をイメージしてください。
明確に意思表明をしなかったことで何が起こると思いますか?密かに一人でがんばっているものの、誰も見てくれていない。
実は新しいことにチャレンジしているのに、誰もそのことを知らない。
多くの組織で生じているのは、まさしくこの状態です。
リモートワークによるコミュニケーション不全も関係していると思いますが、がんばっている若手が「誰も関心を示してくれない」と感じる場面が増えてしまうと、孤独を覚え、がんばることやチャレンジすることそのものをやがてあきらめてしまいます。
この会社ではもはや自分は認めてもらえないのだと解釈してしまい、転職を考える人も出てくるでしょう。
「うちの会社は優秀な若手から辞めてしまうんです」こんなふうに悩まれる人事担当者はたくさんいますが、そもそも優秀な若手と呼ばれる人が、今現在、社内で具体的にどんな仕事をしているかご存じでしょうか。
また、優秀な若手が、現場でどのような活躍や成長をし、上司や周囲の人からどのような評価を受けているのか、しっかり把握できているのでしょうか。
「なんとなく優秀だ(と聞いている)」程度の印象しか持っていないのであれば、危険信号です。
優秀な若手の離脱を生じさせないためにも、上司や先輩、リーダーやメンター、トレーナーの方たちは、「意思表明」の重要性について若手にしっかり伝える必要があるのです。
普段から「自分の言葉」で話させる「『言わせて、やらせる。
』たしかにそのとおりなんですが……」私の話にうなずいていた、ある会社の人事の方が、首をかしげながらこんな質問をしました。
「うちの社員は、みんな受け身なんですよ」「自分から『やりたいです』と手をあげるなんて、わが社では無理ですね。
サイバーエージェントだからできるのでは?」「若手に主体性を身につけてほしいのですが、どうすればいいのでしょう」サイバーエージェントにも受け身な人はいます。
会社として「本人の意思を尊重しよう」という風土はありますが、あくまで意思表明するかしないかは個人の自由であり、強制するものではありません。
だから、人事担当者の方の悩みも痛いほどわかります。
では、受け身の社員に自ら手をあげて「やりたい」と言わせるためには、どうすればいいのでしょうか。
それは、普段から「自分の言葉で話させる」ことです。
逆算して考えてみましょう。
自分で「やりたいです」と手をあげる(主体的に動く)ためには、自分の意見を言う、自ら発言する(主体的に話す)習慣が不可欠です。
「こうしたい」「こう考えている」と意見を言う習慣があれば、自然と「私がやりたいです」という発言も出てくるからです。
自分の意見を言うためには、まずは、自分の言葉で話す(自分の言葉を持つ)訓練が必要です。
例えば、「あなたは黙って聞いているだけでいいから」と、上司から言われている会議に参加するとしたら、その議題について真剣に考えるでしょうか。
おそらく聞いているフリはするでしょうけれど、決して意見を求められることはないので、多くの人はその議題について真剣に「考えること」を放棄してしまいます。
無自覚のうちに……。
そもそも自分の言葉で話す機会がない人がいきなり意見を求められても、「えっと」「あの〜」とすぐに言葉が出てこないでしょう。
そう、「発言する機会」がない、つまり「自分の言葉で話す機会がない」というのは、「自分の頭で考える機会さえない」かもしれないのです。
これでは若手が成長するはずもありません。
それゆえ、自分の言葉を持つために、自分の頭で考える習慣をつけるために、自分の言葉で話す機会を、上司が与える必要があるのです。
これが受け身脱却の第一歩です。
あなたの職場では、「受け身だ」と思う社員が、「自分の言葉で話す」機会はあるでしょうか。
まずは機会づくりからです。
どうやってその機会を与えれば自分の言葉で話す習慣がつくか、次の節で説明します。
とても簡単なのに効果絶大ですので、ぜひ実践してみていただければと思います。
「インプット→アウトプット会話」で激変する受け身社員脱却の第一歩として、自分の頭で考える習慣をつけるために、自分の言葉で話す機会を、上司が意識的につくることをおすすめします。
今まで受け身だった人がいきなり自分の意見を言うのはハードルが高いので、まずは「自分の口から言葉を発する」ことから始めるのです。
やり方は次のとおりです。
「インプット→アウトプット会話」をおこなうことです。
例をあげましょう。
例えば、私が「Aだよね」と言ったことを、部下にもう一度言ってもらう。
ただこれだけですが、絶大な効果を発揮します。
「やっぱりAですよね。
○○さんはどんなふうに解釈しましたか?」ほとんどの人は、結論がAだとしても「Aです」とそのままオウム返しに言うことはありません。
自分なりに解釈して、自分の言葉に置き換えて話します。
「そうですね、AというよりBですかね」「BやCもありかなと思ったんですが、予算と納期のバランスを考えると、Aがベストですよね」この、本人に言い返させるという作業には相当なパワーがあります。
人から聞いた話を、脳みそをフル活用して自分の言葉に言い換えるという「思考」と「編集」をおこなうからです。
この、自分の脳みそで考え、相手に伝わるよう言葉を編集するという行為が大事なのです。
上司:「わかった?」部下:「わかりました」これでは、部下は上司の話を聞いただけ。
たしかに、インプットはしています。
「相手の話を、敬意をもって聞く」というところまでは、ちゃんとできています。
しかし、これだけでは成長につながりません。
頭を使って何も生み出していないからです。
そこで、上司は部下に、自分の言葉で話させるための質問をするのです。
上司:「わかった?」部下:「わかりました」上司:「よかった。
ちなみに、どんなふうに理解したかな?」このように一回問いかけてあげるだけで、脳みそを使うアウトプット作業につながります。
これが「インプット→アウトプット会話」なのです。
「どういうふうに受け止めている?」「どういうふうに解釈した?」「次は何をすればいいと思った?」「誰かにそれをやってもらうとしたら、どう説明する?」などと、上司が話したことを自分なりに解釈し、ほかの誰かに伝えることができるか、理解できているのか、自分の言葉で話してもらうのです。
ダメな上司はインプット会話しかしていません。
「これをやれ」「はい」中には、「いいから黙ってやれ」という上司も……。
これでは思考停止状態に陥ってしまいます。
いつまでたっても、受け身社員は受け身のままでしょう。
ささいなことでも構いません。
その都度、自分の言葉で話させるよう投げかけることを習慣にしてください。
そうすれば、受け身だった人も、自然と自分の意見を言うようになり、そこから、「こういうことをやってみたいです」といった、意思表明が生まれるのです。
これが「言わせて、やらせる。
」の「言わせて」の土台です。
普段から、「インプット→アウトプット」会話ができるよう、インプット→アウトプット会話・変換リストを用意しました。
ぜひ活用してください。
「主体的に動いて」を解決する2つのアクション部下や若手メンバーが自分から手をあげるためには、所属する組織に心理的安全性(PsychologicalSafety)があることが不可欠です。
心理的安全性とは、組織に属する一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言したり、行動したりすることが可能な状態を指します。
部下には主体的に動いてほしい。
安心して、自分の意見を口にしてほしい。
そのために上司や先輩、リーダー、トレーナーは何をすればいいのでしょうか。
私がアドバイスするのは、「見てるよ」サインを出すことです。
部下の承認欲求を満たす行動をとる、と言い換えてもいいでしょう。
では日常でどうやって「見てるよ」サインを出すのでしょうか。
例えば、社内のチャットツールに誰かがコメントしたら、「いいね!」スタンプを押して反応する。
時にはスタンプだけでなく、ねぎらいや感想など一言でもいいので返事をする。
部下が日報を書いているのであれば、コメントを添えて返す。
メールであれば「いいね、応援するよ」などと数文字でもいいので反応する。
「見てるよ感」を伝えるというのは、本人が発信しているものに対して、明確に反応することです。
特に効果的なのは、部下と話すことです。
私がおすすめするのは、「毎日5分の朝ミーティング」です。
午前10時から5分だけなど決まった時間に、昨日やった仕事や今日やる仕事について話してもらうのです。
オンライン会議でもいいでしょう。
それに対し「それはよかったね」「その動きはいいね」などと、ポジティブに反応するのです。
大げさにリアクションする必要はありません。
「話を聞きたいから、5分だけ時間がほしい」と、話を聞く機会をこちらからつくる。
これだけでも「見てるよ」サインは十分伝わるからです。
「見てるよ」サインを出すと、部下に安心感が生まれます(ただし、やりすぎは「監視」になってしまうので気をつけたいところです)。
安心感が生まれると、1個、2個と、新しいチャレンジをするようになります。
最初は質問に答えることすらできなかった新人が、上司がちゃんと反応し続けていたこ
とで少しずつ自信を持って話せるようになり、たった数週間でいくつものアイデアを出すようになり、翌月には「プロジェクトリーダーをやりたい」と名乗りを上げるまでに成長した。
こういった話はよく耳にします。
特に新入社員は、妙な先入観がないため、自分の意見を安心して言えるようになれば、ベテランでは思いつかないような切り口や発想で大胆な提案をすることもあります。
心理的安全性を高めるだけで、飛躍的に成長する人も出てきますので、ぜひとも意識的におこなっていただければと思います。
反応するコツは、ほめて、ほめて、ほめる。
先ほど「ほめるだけ」ではダメとお伝えしましたが、コミュニケーションの第一歩としては、何はともあれ、まずは相手をほめることです。
先ほどの「インプット→アウトプット会話」の中でも、「そのアイデアはおもしろいね」「理解が曖昧なところを、ちゃんと質問してくれたのはいいね」「すぐにできるし、ユーザーも喜ぶ改善提案だね。
素晴らしい!」こんなふうに、部下が自分の意見を口にしたら、まずほめる。
「ほめ」が先。
とにかくほめる。
ほめて、ほめて、ほめる。
ほめてくれたことで、「この人は自分のことを認めてくれているのだ」「この人は自分のことを見てくれているのだ」ということが伝わり、安心感と信頼感が生まれます。
ほめ方については、第2章でも詳しくお話ししますので、まずは「見てるよ」サインを出すことから実践してみてください。
「自分の言葉で話す」という決断経験自分の言葉で話させることには、ほかにも素晴らしい効果・効能があります。
まず、自分の思考や理解、解釈が入った発言は、基本的に忘れません。
しっかり覚えています。
これはミスの防止につながります。
例えば、Aという業務を部下にやってもらうときに、その仕事のプロセスを部下に話させます。
上司:「私が説明した今のAの業務だけど、どういう順番でやればいいと思う?」部下:「そうですね、まずは○○をやって、その次に△△をやって、その時点で一度チェックしていただいたほうが良いですよね。
締め切りは明日で大丈夫ですか?」このような会話ができれば、頼んだ仕事が途中で止まってしまったり、思わぬ方向に進んでしまったり、といったトラブルを未然に防げます。
「これやって」「わかりました」だけでは、上司からの命令ですが、こうすると部下は「自分の言葉で、自分に指示を出す」ことになるので、主体的に動くようになります。
加えて、「自分の言葉で話す」という行為そのものが、「こういう手順で私はAの業務をやります」と意思表明をしていますので、一つの「決断経験」をしたと言えます。
そう、先ほどお伝えした「自走サイクル」の1.抜擢:期待をかけられることで、「自走スイッチ」がONになる2.決断:覚悟を決める。
意思決定によって、自らの「決断経験」を増やしていくが、「インプット→アウトプット」会話で実現してしまうのです。
(その後の3.失敗と4.学習も、会話の中で回していくことはできます)この後の「自走サイクル」を実践する前に、ちょっとでも手応えを感じたいマネジャー、メンター、トレーナーの皆さん、ぜひともこの「自分の言葉で話させる」をやってみてください。
想像以上の部下の変化に驚くはずです。
「やりたいです」と言える空気づくり日本の多くの企業は「自分から手をあげる若手がいない」と言います。
抜擢で一番大切なのは本人のやる気ですが、会社の風土が変わらない限り、自分から手をあげる人はいないのも現実……。
悩ましい問題です。
そこで、まず着手すべきは、自分の手の届く範囲で「やりたいです」と言える空気をつくることです。
マンネリ社員になってしまう前に、「やりたいです」と自分から発信させることに意味があります。
いったんそのような経験をすれば、次からは「やりたいです」と手をあげることにも抵抗がなくなるでしょう。
限られた人材に活躍してもらうためにも、言わせる工夫が必要です。
言わせる「空気づくり」として、日々のコミュニケーションを意識的にポジティブなものにしていくことがポイントです。
最も大切なのは、いざ本人が「やりたいです」と申し出たら、「いいね」とその勇気を称賛することです。
すると別のメンバーも、「ここでは自分でやりたいと言えばそれが通るんだ」と思えるので、安心して「やりたいです」と言えます。
・いつでも「いいね!」と肯定から入る・「やりたい」と意思表明したことをほめる・失敗しても叱責しない・失敗で得たものは何か聞く(後述)・失敗した後に成功した人のストーリーを聞かせる・自分の失敗をオープンに話す・チームの失敗体験を共有する特に最後の2つは大切です。
失敗談を話すというのは、「ヒヤリハット」のような、事故防止や再発防止のための情報を共有することだけが目的ではありません。
特に、上司が積極的に自分の失敗を話すというのは、「上司のあの人も失敗したことがあるのだから、大丈夫だ」と感じられ、部下の心理的安全性の観点から、とても有効です。
加えて、上司の人となりが伝わり、部下との距離が近づくという意味でも、失敗をオープンに話すことをおすすめします。
これからの上司は、成功自慢ではなく、失敗自慢をどんどんしていきましょう。
同様に、チーム全員で失敗談を話すのもおすすめです。
こちらも大変盛り上がります。
「誰もが同じことで悩んでいるんだな」「失敗したのは自分だけじゃないんだ」「みんな失敗している。
だから挑戦して(失敗して)もいいんだ」といった共感や安心を引き出すことができ、チームの一体感も生まれます。
リモート環境では、コミュニケーション不足から、メンバー間の心理的安全性は低くなりがちです。
だからこそ、今まで以上に意識的にオープンなコミュニケーションを心がける必要があり、失敗を話すことは、特に有効な手段と言えるでしょう。
失敗を話せる職場は、意見を言いやすい職場です。
意見を言いやすい職場からは、自然と「やりたい」と手をあげる人も出てきます。
言わせる「空気づくり」ができているか、ぜひ確認してみてください。
コラム自分で自分を成長させる「セルフ抜擢」自分で自分を急成長させたい。
そういう人は、自分自身で「言わせて、やらせる。
」を実践できる「セルフ抜擢」が早道です。
「私にやらせてください」「この仕事は、私がやります!」こんなふうに、自ら名乗り出ることで、チャンスをつかんで急成長していきたいもの。
しかし、なかなか手をあげることができない……という人も多いと思います。
それは恥ずかしいからではなく、「やりたいのかどうかが、自分でもよくわかっていない」がために、手をあげられない人も少なくありません。
まだ自分の仕事がイメージできていない新入社員だけでなく、読者の皆さんのような中間管理職の人たちも、実は自ら手をあげることは少なかったりします。
なぜなら中間管理職には「やらされ仕事」が多いから。
多忙でこれ以上仕事を抱えたくないという心理も働きますので、「この会社で何かやりたいことはあるか?」とあらためて聞かれても、「特にありません」など、曖昧な返事しかできません。
このような状況に思い当たるフシがあるという人は、危険信号です。
手をあげていないとすれば、管理職の皆さんも自身の成長が止まっているサインかもしれません。
成長が止まっている上司の姿を、若手は冷静に見ています。
「管理職になったら成長が止まってしまう会社」にいて大丈夫なのだろうか。
成長を放棄する上司の姿は、それだけで若手に不安をもたらします。
つまり、「人を育てる側」である中間管理職こそ成長が必要なのです。
そのような人たちこそ、「セルフ抜擢」が有効です。
次の質問を自身に投げかけるといいでしょう。
「1年後、私はどんなふうに大成功したいだろうか?」すると、具体的なイメージが思い浮かんできます。
「今やっている仕事の次のステップとして、こういうことで成果を上げたい」
さらに質問を続けます。
「今の担当業務の1年後の大成功をイメージしたら、どうなりたいだろうか?」「今の担当業務」で「1年後に」「大成功する」。
ここまで具体化すると、より鮮明に自分の成功イメージが浮かびます。
1年後という条件を加えて考えたことで、今の仕事の延長線上で将来のイメージが湧きやすくなったでしょう。
さっそく書き出します。
セルフ抜擢ですので、最後の1行は「宣言」で締めくくりましょう。
・営業している今のお客様の売上を倍増させる(2倍にする)・担当業務で「社内ナンバーワン」と言われるようになる・ユーザー数を10万人獲得するというのを1年後までに達成します!自分で上司になったつもりで「いいね!」とか大きく赤ペンで丸をつけて「承認」するのもいいでしょう。
あくまでセルフ抜擢ですので、発想は自由かつ大胆に、大きな目標を掲げてみます。
このセルフ抜擢の成功確率をグッと高める方法があります。
それは、周囲に宣言すること。
大胆な宣言をするわけですから、多少、勇気がいるかもしれません。
しかし、今の業務の大成功ですから、少なくともマイナスにはなりませんし、上司や部署の人に迷惑をかけるものでもありません。
リスクの少ないチャレンジです。
誰かに話すこと、つまり言語化することで、相手にも自分の脳にも記憶され、達成確率が上がります。
加えて、公言すると、必要なサポートが得られます。
セルフ抜擢という言葉から、一人でこっそりおこない孤軍奮闘するイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、勝手に宣言することで、思わぬ援軍がやってきます。
「有望なお客様を紹介するよ」「このプロモーションをやってみてはどうですか?」などと、知らずしらずのうちに、多くの情報やアイデアがあなたのもとに集まってきます。
周囲から応援される。
できたら評価される。
そして、また新たなセルフ抜擢をおこなう。
このループは、セルフ抜擢で宣言した人だけが得られる急成長ループです。
最初は、小さな抜擢でもいいでしょう。
小さなものでも回せれば22歳から始めて、30歳までの8年間で8抜擢できます。
大企業に勤めている人は、30歳では昇進の機会がないかもしれません。
そのような環境にいる人でも、8抜擢すれば、大きく成長できるのです。
セルフ抜擢で、自然と、次のような質問が思い浮かぶでしょう。
「1年後の大成功を実現するためには、どういうスキルや経験が必要だろう?」「○○の資格を取得したい」「△△の経験を積んでおきたい」こんなふうに逆算して、より具体的に考えることができます。
この、「1年後の大成功をイメージする」ことは、最初のマンネリに陥りやすい、入社2年目、3年目あたりの人たちには効果絶大です。
「1年後、どうなっていたいか」だと、「今のままでいい」「特にない」と答える人もいますが、「1年後の大成功」となると、おのずと次の挑戦と成長をイメージせざるをえなくなり、より具体的に「やりたいこと」「やるべきこと」が見えてくるのです。
時間を限定せずに聞くと、人は漠然と遠い先のことを聞かれているような気分になり、「何か壮大なことを言わないといけないのかな?」とプレッシャーを感じる人もいるようです。
一方、1年後すら遠くに感じられてイメージができないという人もいます。
その場合は、1年という区切りにこだわらず、半年後、3カ月後と時間軸を短くしてみてください。
短ければ短いほど、具体的にイメージしやすいと思います。
例えば、同じプロジェクトを数年続けている場合、「今のプロジェクトで培ったスキルを活かしてどんな大成功をしたいか?」「部署を異動して大成功するとしたら、どの部署がいいか?」と、自身の本音を聞き出しながら、逆算思考で成功をイメージできると思います。
1年後の大成功をイメージし、逆算思考で動こうとすれば、何をいつまでにセルフ抜擢すればいいのか、より具体的に見えてくるはずです。
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