失敗がなければ成長もない
誰しも失敗はしたくないものですが、ほとんどのチャレンジには失敗がつきものです。
失敗はするものである。
これが「自走サイクル」の中に「失敗」が組み込まれている理由です。
ビジネスにおいてはなおさらで、一度も失敗せずに成功したという経営者の話は聞いたことがありません。
むしろ、成長企業の経営者は最初から失敗ありきで物事を考えています。
「失敗は成功の母」というように、一つひとつの失敗は成功するために不可欠な要素なのです。
サイバーエージェント社長の藤田は、入社式で300人の新入社員に対し、失敗の重要性について話をしています。
ここにその一部を引用しましょう(2019年入社式)。
(新入社員の)皆さんには「NoPain,NoGain」という言葉を贈りたいと思います。
楽をして得られるものは何もなく、仕事で辛いことがあったり、大変なことが起こるほど、自身にとってのキャリアアップであり、成長につながります。
私(藤田)自身も45歳までキャリアを積んできていますが、一つの武器は逆境においてもメンタルが強いということ。
「もともとメンタルが強かったのか」とよく聞かれるのですが、まったくそんなわけではありません。
非常に辛い目に遭うと、それ以上に辛いことが起きない限りは、それ以下は平気になってくるんですね。
要はメンタルが鍛えられているということ。
「NoPain,NoGain」という言葉を辛いときに思い出し、自分の成長の糧になっていると思ってもらいたいです。
社会人の一歩を踏み出す入社式で、藤田はあえて「私も失敗を通じて成長している」という話をし、この先の長いキャリアにおいて自己成長のための失敗を恐れないでほしいというメッセージを発信したのです。
イノベーションを起こすには必ずリスクがつきまといます。
成功の裏には、多くの失敗の積み重ねがあるのです。
失敗という言葉をネガティブにとらえてしまうと、イノベーションは起こりません。
抜擢する側もされる側も「失敗は成長のために必要なもの」という共通認識を持つことが大切です。
そうすれば、リスクを取ってチャレンジすることがもっと身近になります。
本章では失敗について扱いますが、読み進めるうちにこの2文字に対するネガティブなイメージは消えていくと思います。
抜擢に失敗してしまったら
話が戻って恐縮ですが、第1章で紹介した「自走サイクル」の最初のステップ、「抜擢」について補足させてください。
抜擢を積極的におこなうサイバーエージェントでも、失敗は珍しくありません。
例えば、若手を子会社社長に抜擢するところまではよかったものの、半年くらいで本人が「ちょっとこのプロジェクトは難しい気がします」と、成果が出る前に白旗を揚げてしまうケース。
本来はそこで軌道修正すればいいのに、「本人のプライドが高すぎる」「完璧主義から抜け出せない」などの理由でそれができないというケースはゼロではありません。
まだその事業が成功したとも失敗したとも決まっていないのに、「この事業モデルはうまくいかない」と決めつけてしまうと、成長も成果も中途半端なところで止まってしまいます。
この場合の責任は、抜擢された本人にはありません。
責任は抜擢した側(上司や人事部)にあります。
つまり、自分たちの「抜擢の失敗」を認めないといけません。
ただサイバーエージェントの場合は、こうした「抜擢の失敗」はありえるものだという前提で抜擢しています。
失敗は失敗だけれど、それは織り込みずみ、というスタンスです。
必要以上に、上司も部下も、責めを負う必要はありません。
本人の適性を考慮するやり方であれば、「最初から軌道修正できる人を選ぶ」「プライドが高すぎない人を選ぶ」「簡単にあきらめない人(前に「逃げなそう」と表現しました)を選ぶ」といった判断基準もありますが、それ以外の人はダメというわけではありません。
実際にはそれ以外の人でも成果を上げることがありますし、適性の評価がそもそも間違っていることだってありえます。
「抜擢に失敗したくない」という抜擢側の気持ちもわかります。
抜擢に失敗すると、「どうして実績も上げていない若手をそんな立場でやらせたんだ」と、責任を追及されないとも限りません。
若手社員を抜擢する人事担当者や、部下を抜擢する上司は、批判を受けて社内評価を下げてしまうこともあるでしょう。
しかしそれが常態化すると、誰も社内で抜擢したがらなくなります。
失敗して評価を落とすより、抜擢をおこなわずに自分の今の立場を維持したいと考える人もいるでしょう。
ただこれでは成果と成長の上限に蓋をしてしまい、個人も組織も衰退していくばかりです。
冷静に考えると、抜擢に失敗するリスクは一時的なものに過ぎません。
それよりも抜擢しないことによるリスクがこれからは大きくなることを念頭に置くべきです。
抜擢への評価も、「抜擢しないこと」が抜擢することよりも高くなってしまわないよう、注意が必要でしょう。
それよりも大切なのは、「抜擢して失敗した後に、何をするか」です。
決断も失敗するのが当たり前
第3章で紹介した「自走サイクル」の2つ目のステップ、「決断」についても同様のことが言えます。
抜擢されたメンバーが失敗するのは、決断するときです。
メンバーの決断もまた、失敗するのが当たり前です。
しかし先ほどのマネジャーによる抜擢の失敗と同様、メンバーも「失敗して当たり前」という意識を最初は持ちにくいものです。
経験が浅いメンバーは特に失敗を恐れやすく、決断に余計な時間をかけてしまいます。
そうなると当然、決断のサイクルを回すまでにも時間がかかり、決断の質はいつになっても上がらないままです。
ですので、事前に「(決断は)失敗してもいいんだ」というメッセージを伝えましょう。
マネジャーがメンバーの提案などについて「ああ、これは失敗する可能性のほうが高いだろうな」と思ったときは、どうすればいいのでしょうか。
あえて見て見ぬふりをして、失敗させていいのでしょうか。
おすすめは、対話の中でシミュレーションさせることです。
メンバーが「Aという方法でやってみたいと思います」と決断したとします。
マネジャーはそこで「Aでは失敗するからBにしたほうがいい」などと答えやアドバイスを告げるのではなく、質問を投げかけるのです。
「Aという方法でやってみた場合、どんな状況が起こりうるかな?」うまくいった・いかない、両方のパターンを考えさせるのです。
より具体的に、「Aの方法でやってみた場合の、流れをシミュレーションしてみよう」とか、「もしAで進めると、クライアントからこんな要求がくるかも。
そのときどうする?」などと、メンバーと一緒に予行演習をするのもいいでしょう。
自分で考えるのがまだ苦手な若手や、失敗することを極端に恐れるタイプのメンバーには特におすすめです。
こうしたシミュレーションをおこなうことで、自分の頭で理解し、いくつかの選択肢がある状態で決断できるので、メンバーが自信を持って動けるからです。
また、マネジャーとの対話を経て決断すると、この先何か起こったときにも、すみやかにマネジャーに相談できるという安心感がメンバーに生まれます。
このようにメンバーが自信を持って決断するためのサポートは、どんどんおこなっていきましょう。
第3章で述べたように、まずは決断を経験すること、そしてスピードにこだわるべきことです。
仮に間違ってしまっても、「決断→認識→内省」の決断サイクルを回しながら決
断の質を高めていけばいいのです。
中には、「そう言われても決断の責任は自分にあるし……」と思ってしまうメンバーもいることでしょう。
決断という言葉を「自分が責任者になること」と定義したように、責任感が強い人ほど、そのように考えるのは自然なことかもしれません。
しかし決断の失敗で責任を取る必要はありません。
代わりに、「自走サイクル」の失敗の次のステップである「学習」に進めばいいのです。
「責任を取ってリーダーを辞めたいと思います」で終わらせてしまっては、せっかく抜擢した企業にとっても大きな損失です。
本人とチームの「自走サイクル」が止まってしまうのですから、両者の成長もそこでストップしてしまいます。
若手社員に望むことは成功でも失敗でもなく、成長です。
それも早くて大きな成長です。
成長を第一に考えれば、決断の失敗は成長の種と考えることができます。
私の好きな本『ビジョナリー・カンパニー』の中に、次のような言葉があります。
「大量のものを試して、うまくいったものを残す」失敗していいから、可能性のあるアイデアを大量に試し、そこから成功したものだけを残していけばいい、という考えです。
「曽山さんも失敗するんですね」と言われることがありますが、私自身、過去にさまざまな失敗を経験しています。
2003年の人事制度改革をおこなった際は、7、8個の施策をおこないましたが、今でも残っているものは「新事業プランコンテスト」と「社内異動のキャリアチャレンジ制度」の2つだけです。
この失敗については「新R25」や私の動画でもお話ししています。
失敗があったからこそ成功できたと言えるので、包み隠さず「しくじりエピソード」を披露しています。
もっといえば、サイバーエージェントという会社そのものが、大量の失敗によって、それ以上に大きなチャレンジの機会を手にしています。
2011年、サイバーエージェントは、会社全体をパソコンからスマホ向けサービスに大きく舵を切りました。
当時は「スマホ変革」と呼ばれ、2年で100個のスマホサービスを開発し、広告営業の部門から200名弱を新規事業のスマホサービスに抜擢や異動を強制的におこないました。
実は、アプリ自体は、今も生き残っているものはほとんどありません。
それだけ見れば大失敗です。
しかし、その中でヒットしたアプリが誕生し、「スマホ変革」以前は会社全体の1、2
割程度の売上だったものの、スマホ部門の売上は80%以上になりました。
人材も含め、大量にリソースを投下したからこそ、大きな結果をもたらしました。
失敗なくして成功なし、と言えるでしょう。
この「変革」という経験が、2016年のABEMAで大いに生きているのです。
当時、スマホサービスの開発に関わった人がABEMAに関わることになり、スマホのときの失敗者たちが「次こそは」と大きなチャレンジをしています。
会社としては、2011年に、すでにパソコンからスマホへ「主戦場をずらしてチャレンジする」という大きな経験値を得ていますので、ABEMAへのシフトはスマホのときよりはスムーズかつスピーディーでした。
こうした事例からも、決断の失敗は成功の1プロセスだととらえることができるでしょう。
成功の要素に必ず失敗がある。
そして成功の裏には大量の失敗があり、失敗と成功は表裏一体である。
だから失敗して当たり前なのです。
失敗を学びに変えていく方法については、第5章で説明したいと思います。
「失敗サイクル」を回して経験値に格上げさせる
失敗を失敗で終わらせないためには、そこで得た経験を「経験値」という自らの財産にしていくことが重要です。
第3章で「決断→認識→内省」という「決断サイクル」を回す数が増えるほど、決断の質が上がるというお話をしました。
失敗も同じで、「失敗→認識→内省」という「失敗サイクル」を回すことで、失敗経験を「経験値」に格上げさせることができるのです。
「失敗サイクル」は自分の失敗を失敗として認識することから始まります。
できれば直視したくない、つらく苦しい経験だからこそ、強烈に認識して受け止めることが大事なのです。
強烈に認識することで内省が進み、そこから学びが生まれます。
失敗から学んだことは、そのまま自分の財産になり、次への成功につながっていきます。
そして、失敗から学びを得た人間は確実に成長します。
失敗と向き合える人であれば問題ないのですが、はじめての挑戦で失敗したときなどは、ショックのあまり事実を受け入れられない人もいるでしょう。
このようなときは、マネジャーやメンター、トレーナーなど抜擢した側の人間の出番です。
経験を経験値にしていくというプロセスにおいて、失敗とちゃんと向き合えるよう、しっかりとサポートすることが抜擢した側の責務と言っても過言ではありません。
実は、失敗を経験した人は、次に活躍する可能性が非常に高い人でもあります。
ただし、活躍するポテンシャルがあるにもかかわらず、周囲の人たちがその可能性の芽を摘んでしまうおそれもあります。
具体的に、失敗サイクルを回す・回させる方法については、次節でお伝えします。
挑戦した敗者にこそセカンドチャンスを
失敗がいくら財産になるとわかっていても、人間ですから、失敗を受け止めるのに時間がかかることがあります。
「どうしてあんな失敗をしたんだろう」「もっとこうすればよかったんじゃないか」ここまでは失敗を振り返る意味でもいいことなのですが、「自分にはマネジャーは向いていないのではないか」「取り返しのつかないような失敗をしてしまった」と自信を完全に失ってしまうのは問題です。
人材のイノベーションが起こる前に、その人材がつぶれてしまいます。
そこで、「抜擢された人が挑戦に失敗してもやり直せる」というセーフティーネットを張っておく必要があります。
具体的には「セカンドチャンスを与える」ことです。
サイバーエージェントでは、「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」と、ミッションステートメントで明言しています。
言葉にすることで、セカンドチャンスは会社と社員の約束になります。
言葉にしておかないと、「本当にまたチャンスをもらえるのかな?」「相当有能な人じゃないと二度目のチャンスはないだろう」と疑心暗鬼になり、抜擢された人は決断することを恐れてしまうでしょう。
セカンドチャンスの約束をしていなければ、文化や風土にはなりません。
挑戦する人にとって、セカンドチャンスがあるかないかはとても重要です。
社長の藤田はネット媒体の取材で「ABEMAは三度目の挑戦」と語っています。
「創業したころからメディア企業になりたいと思っていて、最終的には動画が本命になるという思いがありました。
過去にもメールビジョン(2002年)やAmebaVision(2006年)など、何度も動画にチャレンジしてきましたが、(スマホ普及や動画サービスの浸透によって)『ここが勝負どころだ』と思い、AbemaTVに賭けたということです」(CNETJapan2016年4月29日)失敗はして当たり前、次のチャンスが来れば果敢に何度でも挑戦するという考え方が組織やチームに浸透すれば、メンバーも恐れずに決断を重ね、失敗しながら成長できるでしょう。
また、私は「新規事業を生み出す風土の3つのポイント」として次の3つを掲げていま
す。
1.提案しやすい風土2.障害を取り除くしかけ3.失敗を許容する文化1と2は抜擢の話につながるものですが、3はまさしくこの章でお伝えしたいこと、失敗したとしても再度チャレンジできる文化が会社にあることです。
新規事業は失敗の連続です。
そのようなプロジェクトに果敢に挑んでいく人材を生み出すためには、失敗を許容する、いやそれどころか歓迎するような風土が会社にあることが大切です。
失敗経験という貴重な「財産」をシェアする
第3章のコラムでスタートアップの経営者がブログに書いて内省すると書きました。
撤退したビジネスやマネジメントなどで失敗したことについて、ある程度時間が経ってから発信している経営者のブログやSNSをよく見かけます。
書く側にとっては言語化することで棚卸しができる、社員に間接的にメッセージを届けられるといったメリットがあると思いますが、社外の読者にとっても貴重な学びになります。
サイバーエージェントが具体的にやっている取り組みを一つ紹介します。
社内報です。
社内報に「ヒストリエ」というコーナーがあります。
これは撤退したプロジェクトの当事者にインタビューをして「なぜ失敗したのか」を語ってもらうというものです。
プロジェクトの失敗は会社の財産です。
後世に残すべきであり、文字に落として伝えていくべき、貴重なケーススタディなのです。
だから全社員で共有できるよう、社内報に掲載しています。
今まで何十ものプロジェクトを取り上げました。
インタビューに登場する本人は、しゃべるだけで過去の経験を棚卸しできますし、後輩たちは記事から緊張感のあるリアルな現場の様子を感じ取り、ともに失敗から学ぶことができます。
会社としても、失敗をノウハウとして共有する文化があることを、記事を通して発信でき、メリットしかありません。
このインタビューには、もう一つ狙いがあります。
「ヒストリエ」に登場する人は、失敗からある程度時間がたっているので、自らを振り返って話せるくらいの余裕がある状態、つまり内省が終わった段階でインタビューに答えています。
そのため、経験を「経験値」として格上げできていて、読み手にとって学びの多い話ができています。
それだけではありません。
自らの失敗を語っている撤退プロジェクトの当事者が、今、別のプロジェクトや仕事で活躍している人物である点もポイントです。
「ヒストリエ」は、失敗を語ってもらうことで、間接的に「セカンドチャンスの成功例」の紹介になっているのです。
社内報を目にした若手は、「あの活躍している○○さんが!」と、出てくる人の名前を見てまず驚きます。
そして、「社内外の評判がいい○○さんが、過去にこんなふうに失敗していたとは!」と二度驚きます。
そして、失敗してもちゃんと今も活躍している先輩がたくさんいることがリアルにわかり、「失敗していいんだ」と理解するのです。
セカンドチャンスの事例を見せるという意味で、失敗したケーススタディを残し、共有するというのはとても有効です。
サイバーエージェントでは、トップが積極的に失敗談をオープンにし、あちこちでその話を共有しています。
前にも登場した専務の石田裕子は、「2社撤退で10億円の損失」というエピソードを日経xwomanのインタビューで話しています。
同じく、専務の飯塚勇太も、子会社の新規事業転換で失敗して、資金繰りに窮したという失敗経験があります。
本社に1億円の融資を申し入れたところ「何の実績もないのに出せない」と融資を断られてしまったのです(本人いわく「子会社での新規事業の小さな成功で天狗になっていた」ので甘く見ていたとのこと)。
どうにか目先の運転資金の3000万円だけ調達できて、そこから事業がうまく立ち上がり、現在3社の会社の社長をやっています。
失敗を次の成功に変えた話ではありますが、本社としては、3000万円は安い投資だったという言い方もできます。
最後に、私、曽山の失敗経験も。
営業のトップだった時代に、お客様との言った言わない問題で1億円の損失を出すという苦い大失敗を経験しています。
私自身がトラブルを起こしたにもかかわらず、会社はお客様に寄り添いながらも、私にもセカンドチャンスをくれました。
あの失敗経験が私に与えたものは、会社への感謝と助けてくれた仲間を絶対に裏切らないという誓い、そして、常にお客様に誠実であろうという不退転の決意でした。
失敗経験は、このようにプライスレスの価値を生み出すこともあるのです。
上司や先輩が失敗を積極的に話すことで、若手が自己開示できるようになるという大きなメリットもあります。
若手の失敗は、プライドが邪魔して人の力を借りられなかったことが原因であるケースがほとんどです。
上司の新入社員時代のそうした失敗談を聞けたら「上司も自分も同じことをやっていたんだな」と若手が気づき、恥をかくことはこわくないと理解するでしょう。
ただ単にケーススタディとして失敗経験を共有するだけではなく、若手のメンタルブロックを解くという点でも、失敗経験をシェアすることには意味があるのです。
新卒2年目で子会社社長になった、ある若手の話です。
社長になったばかりの頃は担当役員とのコミュニケーションに苦労していると悩んでいました。
ところが、その半年後に話を聞くと「今は全然問題ありません、大丈夫です」とのこと。
よくよく話を聞いてみると、次のような言葉が出てきました。
「やはり今になって振り返ってみると、自分が役員や周りの人たちに対して寄り添っていなかった。
プライドがあって未熟だったなと思います」若手の口からこのような言葉が出てきたら、もう心配はいりません。
すでに失敗を経験値にして、自ら成長している証拠だからです。
部署内の報告会や勉強会などを活用して、定期的に失敗経験をチームで共有することをおすすめします。
「ねぎらい」で、次は成功する人になる
失敗を許容する風土でセカンドチャンスを与えられた人間は、高い確率で成功します。
社長の藤田は、「失敗者は、挑戦した結果で失敗しているから、ちゃんとねぎらってね」と折に触れて私に話します。
この、「失敗者をねぎらう」が本当に大切で、失敗者をねぎらってしっかりと良い環境を提供すれば、全員成長しますし、次は成功する人になるはずです。
失敗者をねぎらう場として、私は「ねぎらい面談」を活用しています。
先ほどのような、撤退プロジェクトのリーダーの場合。
撤退したプロジェクトのリーダーは、みんな、くやしそうな顔をします。
そのようなリーダーには、1.「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけます。
そして2.「チャレンジしてくれて本当にありがとう」と、チャレンジしたことに対する感謝を伝えます。
「この事業がうまくいかなかったとしても、チャレンジする姿を見せてくれたことが周りの人にとっても勇気になっている、私も俺もやろうという人が出てくると思う、ありがとう」まずはねぎらいと感謝を伝えます。
ここまで伝えてから、チャレンジから学んだことを聞き出します。
例えばスタートして2年で撤退した場合、3.「この2年間(プロジェクト実行期間)で良かったこと、得た学びは何か(ポジティブな経験)」4.「逆に、壁にぶつかった原因はどのあたりだったか(失敗の分析)」5.「次に、このプロジェクトをやるとしたらどうするか(改善点)」という具合に、これまでのプロジェクトについて振り返りをおこないます。
そして、必ず、6.「今後どうしていきたいか(未来)」を確認します。
異動先が決まっていない場合には、7.「サイバーエージェントで何をやりたいか(未来のキャリア)」を聞きます。
面談のポイントは、学んだことや得たことなど、ポジティブな話から聞くこと。
面談というと、本人は「怒られるのかな」「批判されるのかな」「何らかの責めを受けるのではないか」と、緊張して臨む人がほとんどです。
そこで、最初にポジティブな点を聞き出し、それらを認めてあげて「それは財産だよ」としっかり言ってあげることが大事なのです。
「失敗も含め、すべてが財産である。
すべての経験に価値がある」と、受け止めることができれば、とらえ方も変わります。
何より、ポジティブとセットだと、失敗も話しやすくなるのです。
これは、普段の上司と部下の面談にも使える手法です。
失敗者には「やりたい仕事」をやってもらう
失敗者を左遷するといった会社もあると聞きますが、サイバーエージェントの場合、まったく逆です。
意外だと思うかもしれませんが、基本的には本人がやりたいと思っていることをやってもらうというのが鉄則です。
なぜなら、基本的にやりたいことをやらせてもらえるとなると、反骨心やくやしさを持ってリベンジしようとがんばるからです。
おそらく、やりたいことをやらせてくれる会社に対し、恩義を感じる人もいると思います。
そして、ほとんどの人が新しい部署でいっそう努力し、活躍します。
結果、セカンドチャンスから成功体験を積み重ね、いち早く成長していくのです。
先日、ある若手と面談しました。
入社してそれほど経たないうちに会社を立ち上げたのだけれども、3年以内に撤退が決まってしまったという人です。
このときに彼が語っていたのは、次のようなことでした。
【良かった点】事業をつくることのおもしろさ(大変だったが、おもしろかった)【ぶつかった壁】ユーザーに向けてサービスをつくることがいかに難しいかを強烈に感じた。
自分がつくりたいものをつくるのは簡単だけれども、そのことばかりにこだわってしまったと反省【次にやるとしたら】ユーザーの声をもっと聞く。
それだけでなく、自分のアイデアをもっとユーザーにぶつけるべき。
それができず頑固だったと自己分析【今後どうしたいか】足元できちんと成果を出して、また新規事業に挑戦したい入社して数年で「自分は頑固だった」と冷静に自己分析をし、自分の現在の課題と次のチャレンジが明確になっているのです。
このように、早い段階で失敗を経験している人は、成長も早いのです。
失敗した人を元の部署に戻す理由
メンバーの決断は失敗しても、次の「学習」に進めるので問題ないと述べました。
ではマネジャーがおこなった抜擢の失敗は、どう考えればいいのでしょうか。
これも答えは簡単です。
抜擢に失敗した場合は、抜擢した人材を元のポジションに戻せばいいのです。
「元に戻したらプラマイゼロ。
時間が無駄になることを考えれば、むしろマイナスでは?」そのように思われるかもしれません。
しかし、ここまで読んでくれた皆さんなら、もうおわかりだと思います。
抜擢された本人にとっては、失敗が大きな経験として残り、人間的にも成長しているはずなので、短期的にも中長期的にもプラスです。
その人は抜擢されたことで、これまでにない経営的な視野を持つことができ、同じポジションに戻ったとしても、以前よりも大きな成果を上げやすくなるでしょう。
そこでまた経験を積んでもらい、また時がくれば再び抜擢すればいいのです。
大事なのは組織の柔軟性です。
誰かを抜擢して失敗したら、その人を元のポジションに戻し、新しい別の人を抜擢する。
抜擢を特別なものとしてとらえるのではなく、当たり前のこととしておけば、抜擢される側も、外される側も、余計なプレッシャーや敗北感を味わうことはありません。
もちろん、前提として、先ほどお伝えした「セカンドチャンス」が保証されていなければなりません。
そうすることで、社員は失敗してポジションを元に戻されたとしても、経験したことを前向きにとらえることができるのです。
繰り返しますが、大きな経験を得て戻ってきた人は、次こそはと成果を出します。
そうなるよう、ポジティブに迎えることがマネジャーの役目なのです。
リスクではなくリターンで考える
投資の世界では、高いリターンを求めるほど、高いリスクが生じます。
人材の世界も同じです。
大きな成長と成果を手にするには、ハイリスク・ハイリターンしかありません。
失敗を恐れると、抜擢も決断もできませんが、飛躍的な成長と圧倒的な成果を得るための「必要不可欠なプロセス」ととらえると、早くやったほうがいいと理解できるはずです。
しかも、「伸びしろ」ベースで考えれば、新入社員のほうが、ハイリターンが得られますし、早い段階で決断経験が得られるという点でもメリットが大きいでしょう。
サイバーエージェントでは、若手社員にも大きなチャンスがあります。
アイデアと行動力さえあれば入社年数は関係ありません。
入社したばかりのある社員が、大きな予算の案件を受注してきたこともあります。
普通なら中堅やベテランのエース社員を投入するところかもしれませんが、彼女がもともといい提案をしていたのでプレゼンターに抜擢したのです。
もし失敗していれば、大きな仕事を逃していたかもしれないのでハイリスクではありましたが、この経験をしたことで彼女は1年目ながら爆発的な成長を遂げました。
今もし、上司のあなたがどうしても失敗できない大きな仕事を持っているなら、それは部下を爆発的に成長させるチャンスカードを持っていると言えます。
予算としては絶対に獲得しないといけない、チームとして失敗は許されないくらいのハイリスクの仕事を部下に任せれば、ハイリターンが見込めます。
「どうせ失敗しても、たいしたダメージはない」という仕事より、「失敗の許されない一大プロジェクト」のほうが任せる側も任せられる側も、覚悟がいります。
部下が本気で大きな仕事に取り組み、たくさんの決断経験と、時には失敗とリカバリーを重ねていく。
そのサポートをすることで急成長するのは上司のほうかもしれません。
優秀な上司ほど、何でも自分でやってしまいがちです。
そこをグッとこらえ、部下に任せ切る。
必要に応じて、適切なタイミングで、最小限のサポートをおこなう。
あとは部下を信じ、自分が今できる「より大きな挑戦」に取り組むのです。
このことで、上司と部下の双方がチャレンジしている姿を、チーム全員に見せることができます。
このプロジェクトを部下が成功させれば、部下は劇的に成長して、その後もチームに大きな成果をもたらしてくれるはずです。
そして部下を大抜擢した上司である、あなたの評価も上がるでしょう。
加えて、あなた自身が挑戦した新しい仕事も成功すれば、手にするリターンは望む以上のものになるはずです。
今の若い人たちは成長を欲しているので、どんどん大きなリスクを取ってチャレンジさせてみるといいでしょう。
失敗の少ない仕事を任せてばかりでは、成長意欲の高い若手は会社から去ってしまいます。
また恐ろしいことに、上司であるあなた自身の成長も、若い人たちは冷静にウォッチしています。
若手の危機感とは、「ここにいたら成長できない」というものです。
自分はもちろん、上司や先輩たちが成長しない会社に未来はあるのだろうか。
成長できない会社にいる意味はないので、時間の無駄だと思えばすぐに離職してしまいます。
一方、上司が大きなチャレンジをして成長し続けている姿を見せていれば、部下も「目指したいロールモデル」としてあなたの背中を追い、ともに成長していきたいと望むはずです。
そしてハイリスク・ハイリターンの抜擢をおこなうことで、能力のある若手は会社に残り、さらに大きな成果を上げることでしょう。
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