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第6章HRツール、ベンダー、コミュニティの今後の展望

目次

第6章HRツール、ベンダー、コミュニティの今後の展望

株式会社ワンキャリア寺口浩大6-1明日から使える「ツール/ベンダー/人事コミュニティ」利用マップ6-2HRバブルが生み出した大量のHRツール6-3ベンダーとの付き合い方コラム⑤企業におけるフリーランス活用コラム⑥HRテクノロジー導入時における留意すべき法規制弁護士白石紘一おわりに

第6章HRツール、ベンダー、コミュニティの今後の展望

15秒サマリー文:北野唯我<何が書いてあるか?>この章では、HRに関するツール・ベンダー・勉強会など、日常的なタスクに関することが書かれています。

企業が、HRの外部サービスを使う際に注意すべきなのは大きく2点です。

1つは「そのサービスのアクティブ数(=どれぐらい実際に使われているか)」です。

たとえば、採用のサービスであれば、会員数よりも、アクティブな会員数でみる、などです。

あるいは、ツールであれば、そのサービスを導入している会社数ではなく、実際にそのサービスを使っている会社の声を聞く、などです。

もう1つは「自社の担当者のレベル」です。

特に人材会社は事業の特徴上、参入障壁が低く、担当者によってレベル差が大きいこともあります。

そこでこの章でおすすめしているのが、「人づてに、優秀な担当者を紹介してもらうこと」です。

社内にいる人間から評価の高い担当者を紹介してもらうことで、ばらつきを抑えることができる、と語ります。

<どういう人にオススメか?>このパートはHRに関する日常的なタスクに興味がある方向けです。

主に以下の読者を想定しています。

・人事担当者になり、ツールやベンダー、勉強会など、何から始めていいのかわからない人事・人事向けコミュニティを始めることを検討している会社の方

 

目的別!このページを見よ!6-1明日から使える「ツール/ベンダー/人事コミュニティ」利用マップ→236ページ6-2HRバブルが生み出した大量のHRツール→240ページ6-3ベンダーとの付き合い方→247ページ

6-1明日から使える「ツール/ベンダー/人事コミュニティ」利用マップ集まり始めた人事たち知っているだろうか。

最近は毎晩のように、人事系のイベントが開かれていることを。

人材系の会社ではなく、人事担当者自身が主催しているイベントである。

筆者は元々人材会社の営業をしていたが、人事担当者のホンネが知りたかったため、営業職を辞め、いち採用担当者として、1年間で50以上の人事系のイベントに参加した。

1年間も参加し続けていると、勉強会では古株になってくる。

「初めて社外のイベントに来ました」という人も多かった。

理由は2つで、今までは人材会社が営業目的で開催するものが主流であったこと、外に出るのがあまり一般的でなかったことがある。

全ての勉強会がそうだとは言わないが、集まることが目的となっているものが多くあるのが現状である。

また、最近に至っては、「イベント登壇」と「ツイッターフォロワー数」の話が増えてきた。

すぐに手段を目的化してしまう。

この章では、HRのツール、ベンダー、コミュニティについて整理してまとめる。

これらの情報に効率よくアクセスでき、自社や自身に合うものを担当者が見つけられれば、必要な情報を入手し、自分の仕事に集中できると考えている。

ここでは、人事コミュニティが開催するイベントでどんな話がされているのかを書きたい。

まずイベントには公開型と非公開型がある。

公開型は誰でも参加可能のものであり、非公開型は招待制で声が掛かるものだ。

公開型イベントの特徴は、有名な人事が1時間ほど前で話し、それを聞いた後にテーブルごとに30分ほどちょっとしたワークを行う。

その後懇親会で30分ほど名刺交換を行い解散する。

公開型のイベントに参加していると、フェイスブックの非公開コミュニティやイベントに招待されることがある。

自身に合った非公開コミュニティやイベントへ招待されるポイントは大きく2つある。

①ワークや発表時の存在感の発揮と、②懇親会での課題と施策のシェアである。

特に懇親会の会話は重要だ。

多くのイベントに参加した中でよくある会話内容を以下に記した。

▼良くない例「あの人とつながっています。

お世話になっています」「あの人材会社しつこいですよね」「あそこの人事は微妙ですよね」▼良い例「長期インターンをやってみたいけど、現場が受け入れてくれなさそうです。

どうやってるんですか?」「辞退者がたくさん出てしまうのですが、囲い込みをしていると学生に思われたくない。

フォローはどのようにしていますか?」「想定している候補者が応募してくれません。

こういった候補者にきてほしいのですが、どのような訴求内容を打ち出していますか?」「若手の育成において、社内で責任があいまいです。

採用担当は何年ほど責任を持つか社内で決めていますか?」公開イベントと非公開イベントの違い両者の違いはシェアされる情報の濃さと生々しさである。

特に公開型のイベントでは、ツールの話題が多い。

ツールの話が多い背景として、課題や施策(特に課題)については奇特性の高い情報が多いため、闇雲に共有することが難しい。

最初から最後までツールの情報交換に終始しているものも多くあった。

背景としては、HR系のメディアは営業目的なので偏った情報が多く、「生の情報が入手しにくい」こと、参加している人事担当者が自社の課題を把握できておらず、「外で相談できる課題」を自身の中で整理できていないことにある。

結果、オープン型の勉強会で出会った担当者たちはレベル別に非公開勉強会を開き、それぞれの粒度で情報交換、議論を行う。

それぞれの課題について、どのような施策が効果的か議論する場もあれば、自社の施策を出し合う会、ツールについて情報交換をする会があるが、量で言えばほとんどが施策とツールのシェアに終始しているのが現状である。

6-2HRバブルが生み出した大量のHRツールHR系のツールが次々と生み出される背景にあるHRバブルと、HR部門の目利きの弱さHRバブルが起こっている理由昨今、HR市場は順調に伸長している。

実際に、人材会社は2018年に最高益を更新している。

主な理由は、①転職者数が増加していること、②HRテクノロジー企業の新規参入による新市場が発生していることだ。

終身雇用制度疲労や、個人のキャリア観の多様化、様々なツールの発生による転職の心理障壁/行動障壁の減少を背景に雇用は流動化しており、転職者数は増加している。

また、転職潜在層も増加していることから、今後も転職者数は増加する事が見込まれる。

また、採用、育成、評価、労務等において200を超える様々なHRテクノロジーのツール/ベンダーが発生している。

これらは他分野でのテクノロジーの発展を横展開したものや、海外のモデルを輸入したものが多い。

また、働き方改革を国が後押ししていることもこれらの市場が拡大している背景の一つとして考えられる。

様々なツール/ベンダーが多く発生している中で、採用担当者にはそれらの特徴を鑑みて、自社での活用方法を考える必要がある。

大量に発生したツールに対して、どのように判断を行えばよいのか。

現状陥っている課題と、判断ポイントを解説する。

HR部門が価値のないツールを掴んでしまう理由HRツールやベンダーの数は市場規模の適正値より多いように見える。

なぜ彼らは生き残れるのだろうか。

それは、提供サービスの質が高くなくとも、生き残っていける仕組みが整ってしまっているからだ。

具体的には、①人事担当者がサービスの競合優位性をビジネス観点で見抜けないこと。

②(特に新卒採用サービスにおいては)効果測定に1年スパンかかること。

③サービス購入以前にそのサービスのクオリティを調べる方法(フェアなメディア)がないことなどが原因である。

例えば、人事担当者の多くは、新卒から人事に配属されているか、営業を数年行い人事に配置転換された人が多い。

コミュニケーションに長けている担当者は多いもののビジネスモデルの評価とROI観点、計数処理について専門性を持っている担当者は極めて少ないように思える。

サービスやツールを評価する際に、モデルを理解すれば、なぜそのサービスが強いのか、今後持続的に競争力のある(使える)サービスなのかがある程度わかる。

例えば、新卒採用においてメディアを選定する際には、PV、流入数に加えてアクティブ率等のエンゲージメント指数を確認することはマーケティング部門の担当者なら当たり前に行っているが、採用担当者は会員数の確認と、エントリーの見込み数しか確認しない場合が多い。

メディア選定のためのフレームワークを知らない担当者が多いのが現状である。

かつて採用サービスのセールスを行っていた際、「昨年度うまくいったので、今期も予算は削られてしまいました。

この予算内でよろしくお願いします」と言われたことがある。

この言葉にはいくつか大きな問題が隠れている。

「うまくいったとはどういうことですか」と聞くと「人数で、学校別/男女別/文理別にたてたKPIを充足した」ということらしい。

「予算内でお願いします」という話もおかしい。

また、これは毎年のことなのだが、夏にインターンの告知がしたいと言われた際に、「〇〇さんの方が安くて人数を約束してくれるのでそちらにします」と言われることがよくあった。

決まってその年度の最後に「人数が足りません、なんとかならないでしょうか」と同じ担当者から連絡が相次いだ。

とにかく目の前で開催されるイベントの集客人数を充足させることに躍起になり、後半で大量に辞退が出て駆け込む。

これを毎年やっている。

なぜ、学習できないのだろうかそれは、HR部門が今まで使ってきた予算はほぼ全て消費によるものだったからである。

掛け捨てのメディアに費用を垂れ流し、イベントに工数と出展費用を垂れ流し、接触人数を確保し安心しては、誰をどのようにフォローすればいいかわからず、とにかく会って同じ話をする。

正直、当人たちも言うように会わなくていい人にも会っている。

辞退者がなぜ辞退したかを確認し、どこに勝ってどこに負けた、のか、なぜそうなったかを分析していることもあまりない。

学生の本音は、人間力によって信頼を得ることで聞き出せると思っている。

HRマーケティングと口をそろえて言うものの、マーケティングの基本のリサーチ、つまりターゲットの行動分析や競合分析もほとんど実行できていない。

正直、リクルートは頭が良かった。

人事部門にビジネス観点、マーケティング観点がない人間が多いと察した彼らは、便利なナビサイトをつくり、更に人事部門を考えない部門にした。

元リクルートで30年前から時

代をつくってきた人の多くは事業会社の役員などに就いている。

彼らとよく昔話をするのだが、導入交渉については決まって社長と直接行ったという。

人事部門に直接話しても何も進められないことを知っていたからだと。

あれから、60年間マーケットも人事担当者のレベルも大きくは進化していないのではないだろうか。

ベンダーの集客方法に対する理解以前、「初期費用で1000万円近く払って、一人も入社しなかった結果そのベンダーを出禁にしてやった」と自慢気に話している担当者がいた。

「恥ずかしくないのかな」と思った。

確かにそのベンダーはダメだったかもしれない。

だが、そのベンダーに投資判断を行う際に、必要な事項は確認したのだろうか。

例えば、候補者を集める方法は確認したのだろうか。

面談でどのように紹介しているのかを確認したのだろうか。

中には高学歴の学生向け限定で複数のブースにチェックインすれば図書券やアマゾン券など数千円分を渡しているところもある。

そのような「アルバイト感覚」の学生の頭数だけ揃えてイベントが成り立っているように見せているベンダーがあることを知っているだろうか。

成果報酬が100万円のA社と200万円のB社があったとき、学生の人格否定をし、どうすればいいかわからなくなった学生に「お前はここでしか活躍できない」と刷り込み、紹介をしているベンダーがいることを知っているだろうか。

裏にあるビジネスモデルの仕組みを確認せずにベンダーと付き合うことは人事担当にとっては自殺行為である。

しかし、それを確認しようとする人事担当者は少ない。

目の前のイベントに何人呼べるか、エントリー数を充足できるか、という自転車操業で採用活動を行っているうちは、このような「足元の頭数だけ揃えられる」ベンダーに付け込まれて、大切な採用予算をドブに捨てることになる。

採用単価の考え方「うちは採用単価20万円なので」といった人事担当者に詳細をきくと、年間30回のイベントに出展しているとのことだった。

イベント出展工数すらコスト計算していなかったので、一緒に棚卸しと計算を行うと採用単価は100万円を超えた。

とにかく忙しいのでなんとかしたいと言いつつも、イベントで顔を見ないとわからないからイベント出展にこだわりたいと。

顔を見る方法はイベントしかないのだろうか。

実際その会社の担当者は辞退数に困っていた。

志望度が高く、ターゲットになり得る候補者に効率よく会い、「なんとなく」の候補者に使った時間を彼らのフォローに分配すれば結果は変わっていたかもしれない。

毎回イベントでは同じ話をすると言う。

定量的な会社紹介についてはコンテンツに任せてしまえばいいのではないか。

そこで、エンゲージメントが高まった学生と初めて会い、理解度が深まった時点でリアルの時間を設定し、更にエンゲージメントを高める場にすればよいのではないだろうか。

「忙しい」のは事実だ。

だが、「忙しい」の多くは、知恵で解決できるはずである。

コンテンツは中から外へ最近話題の採用広報についても同様のことが言える。

人事担当者はブログを書くことが多い。

「ブログが読まれた!ランクインした!」と言っている裏で、自社の従業員からなんと言われているか知っているだろうか。

ベンチャーの社員とよく話すことがあるが、「うちの採用担当がお化粧記事ばかり書いているけど、実態は違う。

会社のリアルを書かないと結局ミスマッチが生まれてしまうのに、なぜあのような表面だけのきれいな記事を書き続けているのか。

理解できない」などと、お化粧記事をやめて欲しいというクレームがよく届く。

最近「銀行らしくないひとに会いたい」というメガバンクの採用メッセージが話題になった。

結局現場からは「そんな人を入れても現場で扱えない」と言われ、市場からも「そういった人を扱う覚悟と仕組みはあるのか?」と非難されるものとなった。

この採用施策に対しては、みな「失策だよね」と言っていたが、本質的にやっていることは変わらないのではないだろうか。

では、どうすればよいか。

採用担当の方々には、以下をお勧めしたい。

中長期的なパートナーとなり得るベンダー選択の上では、彼らのビジネスモデルをチェックすること。

マーケティング部門の担当者にベンダーを判断する際に確認している指標などを共有してもらうこと。

その忙しさは、コンテンツで解決できないか考えること。

採用広報施策で作っているコンテンツは社員のエンゲージメントを下げて、ミスマッチを誘発するものになっていないか見直すこと。

具体的に、まずは以下の方法を試して欲しい。

・PV、セッション、ユニークユーザーの違い、CVR、CPA、CTR、MAUなどの基本的な指標、エンゲージメント指数の測り方/改善方法等、マーケティングで使用される基本的な指標や、コンテンツの作り方、広め方などをマーケティング部門の担当者に聞きに行く・それらがHRサービスでは何に相当するのかを考え、質問をつくり、各ベンダーに聞く・作成したコンテンツは社外に出す前に、社員がどのように感じるか確認する。

社員が自身を持って広めたくなるコンテンツはどのようなものかすり合わせる大切な予算と時間を無駄にしないためにも、ビジネスモデルの理解と、コンテンツやマーケティングに対する理解、現場社員の本音に対する理解を深めることが急務である。

6-3ベンダーとの付き合い方問い合わせフォームは警戒私自身、HRベンダーに勤務しているとおもしろい事象がある。

採用担当も兼ねているため、採用担当者とよく話をするのだが、彼らはサービス検討を行うときに私にFBメッセンジャーで連絡を入れてくる。

会社の問い合わせフォームがあるのにもかかわらず、セールスの人間を紹介して欲しいというのだ。

印象的だった出来事は、あるITベンチャーの採用担当を紹介したいと、複数人から連絡があったときだ。

背景を聞くと、フェイスブック上で「ワンキャリアの人とつながっている人がいたら紹介してください」という投稿をしていたそうだ。

どうして会社の問い合わせフォームから連絡しないのか確認したところ、彼らは口を揃えて「紹介経由でないといい担当者がつかない」と言う。

背景には営業担当者のレベルがまちまちで、微妙な担当者がついた結果、嫌気が差すといったことは業界では当然であり、サービスと同じくらい担当者の質を重視しているという。

そして、紹介経由の方がいい担当がつくというのも業界では当たり前の共通知であるということのようだ。

営業マンのクオリティがサービスブランドを毀損するよく言われた話であるが、人材業界においては特にこれが大きい。

知り合いの人事によると、以下のようなことは日常茶飯事だという。

・とりあえず挨拶させて欲しいと何度も営業電話をかけてくる・テレアポが鳴り止まないので基本的に居留守を使っている・メールで要件を伝えてほしいとお願いしても電話をやめない・50件の営業電話に出て、自社課題に対するソリューションを求めたところ誰も答えられなかった。

「要件は?」と聞くと「イベントに出て欲しい」と言われた・会社の事業内容を調べてこない・ATSという言葉を知らない・既存導入サービスで機能の問い合わせはなかなか返ってこないが、その返答の前にDMを買ってくれと言われたこれらは一部だが、ただでさえ忙しい中、自分本意な営業行為に対して相当なストレスを抱えているという。

「サービス自体は好印象だったが、担当が失礼でサービスに対する印象が悪くなった。

営業数字のことしか考えていないことが明らか」という話があるなど、SI(サービスブランド)を構築しているにもかかわらず、現場の営業が原因で、サービス自体のディスブランディングを引き起こしている事例もよくある。

どうすれば有能な担当者と仕事ができるか知り合いの人事担当者はこう言った。

「いい担当者と仕事をする方法は簡単だ。

採用がうまくいっている会社の人事担当にその会社の担当を紹介してもらうだけ。

だから、人事同士の横のつながりは大事で、更に自身が紹介されるに足る人事でなければ、実力のある人事には相手にされないし、実力のある人材の営業は紹介してもらえない。

もちろん自分も、この営業を紹介して信頼が壊れないかというのは気にする」有能な担当者と仕事をするには、自身もそれ相応のレベルになっておく必要がありそうだ。

「人材の営業が頼りない」とボヤいている人事担当者をよく見るが、もしかするとそのハイレベルな紹介ネットワークにまだ入れていないのかもしれない。

人事界隈での自身のプレゼンスを高めることは、ハイクオリティなパートナーと仕事を共にできるチャンスの一因となりそうだ。

事実、新卒、中途に限らず、人材会社の有能な担当者は希少性が高いため引っ張りだこである。

彼らはすでに忙しい。

すでにこのようなリファラルのマーケットは存在しており、筆者のところにも、有能な担当を紹介して欲しいとの問い合わせが後を絶たない。

候補者と同じように、待っているだけでは自社の望むパートナーには出会えない。

今後、組織の課題はますます「物が売れない」から「人が採れない」にシフトしていくだろう。

この流れを読み、有能な人材会社の人間と予め信頼関係の構築をしておくことをオススメする。

「人材会社なんて掃いて捨てるほどあるから、とりあえず来た人間を上からジャッジしていく」という担当者もいるが、同時に自分自身のレベルもジャッジされていることを意識しておく必要がありそうだ。

なぜなら狭い業界なので、人材会社の中でもその担当者のレベル感は共有されているからだ。

人事コミュニティに参加すべき?コミュニティに参加するメリットもしあなたが、自社の課題に対する施策が思いつかず困っており、現場での成長感がないのであれば、「参加すべき」だと考える。

但し、自社の状況にあったものを選択し限定する必要がある。

意味のない集まりも多く見受けられるが、そのような遊びの集まりに行って学んだ気になっているくらいなら、自社の社員と1on1などを行い悩みを聞いてあげたほうがいいのではないだろうか。

他の会社の社員から「人事は最近集合写真ばかり撮って遊んでいるけど実際何をしているんですか?」と聞かれることがよくある。

もう一度、何のためにコミュニティに参加するのか考えたほうがいい。

コミュニティに参加するメリットは2つ。

・持続的に気軽に相談できる人事の仲間をつくれること・自社の課題にあった施策を打つうえでのヒントを得られることどんな人と繋がっておけばよいか、どのようなテーマであれば自社の課題解決のためのヒントを得られるかを念頭に置いて参加することをおすすめする。

イベントに参加したあとには、アクションが決まっている状態が理想である。

一定のレベルを超えるとクローズドコミュニティでしか会えない「人事の集まりはだいたい意味がないから、よほどでないかぎり参加しないようにしているんですよ」先日あるメディア主催の非公開で行った人事コミュニティの初回のキックオフイベントに来ていた上場企業の採用マネジャーはこうこぼした。

その集まりには、錚々たる顔ぶれの経営者、採用マネジャー、PRマネジャー、経営企画室の人間も参加していた。

全体で30名ほどだった。

人事コミュニティを作る側の人間も、「コミュニティのブランドを毀損しないように厳選して呼んだ」という。

コミュニティのマネジャーは言う。

「マーケットからの評価が高くない人に、ここに出入りしていると発信されると、微妙な集まりだと思われてしまうので、僭越ではあるが、厳選してお声がけさせていただいている」と。

仕方ないことである。

まずはオープンコミュニティに参加しよう人事コミュニティを俯瞰してみると、①参加メンバーが固定化しているもの、②リピートも多いが新しく参加するメンバーが絶えないもの、③リピートがなく、常に新しいメンバーが参加しているものの3つに大別されるように見える。

おすすめはもちろん②である。

理由はそのようなコミュニティは大体運営がうまく行われており、最小限の時間投資で有益な情報収集と、持続的な信頼関係を構築できる担当者と出会える可能性が高いからだ。

もし、あなたが今から人事コミュニティをうまく活用しようとしているなら、抑えておくべきポイントを紹介したい。

・まずは健全な新陳代謝が行われているコミュニティに参加して、自身の組織の課題を解決するために繋がるべき人は誰かを探す・レベルの高いメンバーが課題について仮説をもって議論しているコミュニティを探すコミュニティ活用のポイント参加した際は、自社のフェーズと課題感が似ている企業の担当者数名としっかりと話したほうがよい。

稀ではあるが、人事コミュニティの中には、主催者が企業の特徴や担当者の特性を把握し、コミュニティ内で「合いそうな人」を繋げてくれるコーディネーターとしての機能を持ったものもある。

今後継続的に情報交換したい担当者を見つけたら、①どうすれば自分と自社を理解してもらえるか、②どうすれば自分が情報やノウハウを持っていてギブの精神があることが伝わるか、を意識して短時間で可能な限り信頼関係を作ることを意識して欲しい。

満遍なく名刺を配るよりは、今後も長期的に付き合えそうな人にしっかりと自分を売り込むのだ。

そうすれば必要な情報や必要な出会いはその人たちが提供してくれる。

自身も複数のコミュニティに参加しながらコミュニティを運営しているが、コミュニティは運営側にいる方が圧倒的に効果的である。

参加者情報が一元化されてわかるうえ、自分を知ってもらえる機会も作ることができ、先に機会を提供してギブできることで自然に情報などを返してもらえるからだ。

但し、コミュニティをつくったり運営したりすることは容易ではない。

次パートでは、コミュニティの立ち上げ、運営のポイントをいくつか紹介する。

成功するコミュニティの作り方コミュニティを機能させるために必要な要素多くのコミュニティに参加し、自身でも複数のコミュニティのデザインやプロデュースを行ってきた。

その中で気づいたことがある。

持続的に成功しているコミュニティには共通する要素がある。

それは、①ビジョンの存在、②良質なコンテンツ、③共同生産者を生む仕掛け、である。

一例を紹介する。

あるキャンペーンで自社の内定式を開示するムーブメントを仕掛けた際に、自身で運営するコミュニティの力を借りた。

その際にはコミュニティ内で「就活を自由なものにする」というビジョンを示し、そのために、「キャンペーンに呼応したアクションの数を最大化する」という共通目標を設定した。

中心には、なぜこのキャンペーンを仕掛けたかという背景(Why)のコンテンツを置いた。

コンテンツにはWhyコンテンツ/Howコンテンツ/Whatコンテンツの3種類があるが、共感を生むためには(Why)コンテンツが必要である。

それぞれの定義とこの事例における具体例を以下に示す。

Whyコンテンツ定義:なぜそれをやるべきなのか具体例:現状、就活は不自由な状態であり、髪型や服装だけでなく個人の意思までもが縛られている。

一方で就活において、学生は個人の意思や本音を言いたくても言えない構造的な問題がある。

これを解決しなければ若い才能が意思を持つことなく社会に出続けることになる。

Howコンテンツ定義:どのようにしてやるのか具体例:まずは、当時(内定式シーズン)において、実際にどのような服装や髪型で行けばいいのか悩む学生に対して、企業側が実態を開示する必要がある。

企業側からの開示のアクションで、学生が本音を言える環境をつくる。

Whatコンテンツ定義:具体的になにをやるのか具体例:実際に実際の内定式の様子の写真と、人事本人から内定者や就活生への各企業のスタンスを表明する。

コンテンツで共感をつくることができれば、次は、共感者が自主的に共同生産者になってくれる仕掛けをつくる。

共感者が共同生産者になるためにはいくつかポイントがある。

①そのコミュニティ内で影響力のある人には個別に連絡を行い、アクションを事前に起こしてもらっておくことで心理的安全性を担保すること。

②最低限の具体的アクションの例を明示して行動障壁を低くすること。

人事コミュニティのつくり方の例人事コミュニティに置き換えて考えてみる。

例えば、「同じ課題を持った人事担当者が気軽に相談しあえる環境をつくる」であれば、中心に置くコンテンツは「課題に応じた施策の事例集」であり、共感者を共同生産者に変える余白は「その事例集について詳細をみるためには、自社の課題と施策を提供すること」というコミュニティ内ルールを設定する(※ルールは強制感をできるだけ排除し、自主的な雰囲気をつくる。

貢献報酬には感情報酬と機会報酬、ポジションの報酬などがある。

これらをできるだけノンバーバルメッセージで伝え、コミュニティ内の空気を間接的に醸成する)。

あとは、web上である程度の情報共有をしたうえで、テーマ別にイベントを立ち上げ、それぞれの課題と施策について対面でしか話せないことを話す。

web上での貢献度合いに合わせてリアルイベントへの参加優先度を変えるなど貢献に対する機会の報酬を与えることも必要である。

貢献報酬の考え方は成功しているクラウドファンディングを研究することをオススメする。

Whyに共感していることが必要条件にはなるが、共感者の自主的貢献意欲を高めることができれば、コミュニティ内に更にコンテンツが持続的に貯まり、それが資産化した際に、他のコミュニティに対する差別化要素となりえる。

持続的で生産的なコミュニティができることによって、人事担当者が健全に情報交換ができる信頼関係を効率的に築ければ、人事部門の進化を加速することができるのではないか。

そう願っている。

コラム⑤フリーランスは企業の救世主!企業におけるフリーランス活用弁護士白石紘一2017年3月に政府が決定した「働き方改革実行計画」では、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」と題する項目の中で、フリーランスのような働き方について、(長時間労働を招くことのないよう留意しつつ)その普及を図っていくことが重要であるとしており、また、法的保護の必要性についても検討をするとしている。

フリーランスをめぐる議論については、発注者との関係における立場の低さを原因とした、報酬の不当な低さや発注内容の一方的な変更など、フリーランス側の視点に立った議論が多いが、企業としても、その競争力を維持・強化する観点から、フリーランスを適切に活用していくことがますます求められるようになっている(1)。

経済産業省が2016年~2017年に開催していた「雇用関係によらない働き方に関する研究会」では、個人・企業・社会のそれぞれの観点から、フリーランス活用の必要性やそれに向けた課題等について議論がなされた。

本コラムでは、同研究会の報告書(以下、「報告書」という)をベースに、企業におけるフリーランス活用の要諦について簡単に触れる。

1企業におけるフリーランス活用の必要性企業において、フリーランスを活用していくことが必要となっている大きな背景としては、急激な産業構造の転換とビジネスモデルの変化がある。

2000年代以降、消費市場や労働市場、情報圏のグローバル化/オープン化/知識経済化等の構造変化が進展したことに加え、AI・ビッグデータ・IoT・ロボットの普及に代表される「第4次産業革命」の進展により、ビジネスモデルは大きな変化を余儀なくされている。

“大量製造・大量販売”はもはや勝ちパターンではなく、“イノベーション”が求められるようになり、また、必要なスキルの分化・深化が進み、専門スキルの希少性・重要性がますます高まっている。

さらに、企業や業種の壁を超えて、広範なプレーヤーが参加する競争時代に突入している(2)。

こういった変化に対応するためには、すべてを自社で賄おうとする「自前主義」では限界がある。

なぜなら、分化・深化が進む専門スキルを社内人材のみでまかなうことは、今後ますます困難になるためである。

また、イノベーションは、既存の知とまた別の既存の知とを組み合わせることにより生まれるとされているところ、“別の既存知”については、ともすれば同質的になりがちな社内人材ではなく外部人材によりもたらすことが有用であろう。

この点、フリーランス等の外部人材をすでに活用している企業に対する調査(3)(以下「企業向け調査」という)においては、「フリーランス人材(アウトソーシング)の活用により、企業が得られると考える効果」として、主に「必要な技術・ノウハウや人材の補完」「従業員の業務量・業務負担の軽減」「売上高の増加」といったものが挙げられた。

また、現在すでに外部人材を活用している企業に対し、今後の活用状況の展望を質問したところ、今後活用を減らしていくと回答した企業は1社もなく、他方で、41%が今後活用をさらに増やしていくと回答しており、実際に外部人材を活用した企業においては、十分な効果が実感されていると考えられる(なお、今後活用をさらに増やしていくと回答した企業のうち、9割以上が、「期待した効果又は期待した以上の効果が得られた」と回答している)。

各企業には、変化する社会環境に柔軟に対応し、その競争力を維持・強化するために、これまで以上に、外部人材も含めたリソースを上手に活用する形で、自社の人材ポートフォリオを組んでいくことが求められているといえる。

2どのようにフリーランスを活用するか企業向け調査によると、フリーランス人材を「活用している」と回答した企業は18.9%に留まり、他方で、「現在活用しておらず、今後の活用も検討していない」と回答した企業は47.6%と、半数近くに上った。

このように、企業による積極的活用は、十分に進んでいるとは言いがたい状況である。

企業がフリーランスを活用するにあたってのボトルネックには、様々なものがあろうが、報告書においてボトルネックの1つとして挙げられていたのが、「そもそも外部人材に業務をアウトソースできるような社内体制となっていない」という点である。

これは、大きくは3つの要素からなる。

1つ目は、①「社内の業務を切り出す体制の未整備」である。

外部に業務をアウトソースするには、そもそもアウトソースする業務を特定しなければならないため、業務の切り出しが必要となる。

しかし、従来の日本企業においては、いわゆる「無限定職務正社員」に代表されるように、ジョブ・ディスクリプションが未整備であり、個別の社員が行う業務を特に定めないなど、業務を切り出す体制が十分ではないことが多い。

また、これに起因して、特定の職務ごとにあげた成果に対する評価基準が確立していないため、アウトソースをしたとしてもその業務の成果を適切に評価できないというケースもあろう。

2つ目は、②「発注スキルの不足」である。

すなわち、そもそも企業側(発注者)側が、発注に際して、求める成果物の内容を十分にフリーランス側に伝えきれておらず、これにより、企業側からは成果物への不満足、フリーランス側からは度重なる差し戻しへの疲弊を生むこととなる。

3つ目は、③「個人と契約する体制の未整備」である。

特に大企業において顕著であるが、法人化していない個人との間では、社内規定上、業務委託契約を締結できないこととしている企業が多い。

その理由としては、主に、「個人だと信用(資力やキャッシュフロー、あるいは事業継続性や納品物の品質)が担保できない」ということが挙げられているようである。

また、個人と契約する場合に生じる、企業側のバックオフィス業務が煩雑であるため、そのコストに鑑み、契約締結を避けがちになるとの声もある(例えば、契約書式の個人向け修正、与信確認、新規口座のチェック、マイナンバーや源泉徴収関係作業等が生じる)。

企業としては、フリーランスを活用していくにあたって、これらのボトルネックを乗り越えていく必要があろう。

この点、企業内業務の見える化・切り出しや、業務単位での成果評価手法を確立することは、上記ボトルネックの①のみならず、②の解消にもつながり、さらに、業務効率の健全化や、労働生産性の向上、長時間労働の是正にも寄与しうる。

そのような見直しを進めることは、外部人材を活用しやすくするのみならず、企業全体にとって有用である。

また、上記ボトルネックの③であるフリーランスに対する信用上の不安を解消する方法としては、契約の間にプラットフォーマーを挟むという方法も考えられるであろう。

本コラムでは、フリーランス活用の効果とともに、活用を阻害するボトルネックも挙げたが、いずれにしても重要な点は、「まずは一度依頼してみる」ということである。

報告書でも、企業にとって、外部人材の利用は、一度経験しさえすれば、課題解決に向けた積極的な選択肢の一つになりうることが示唆されており、そういった姿勢も必要になってくると思われる。

【コラム⑤注】(1)なお、本コラムでのフリーランスの「活用」は、当然ながら、不当に低い契約条件でフリーランスから“搾取”するようなものは含まない。

フリーランスが働くにあたっての環境改善が必要であることについては、別途、報告書をご参照いただければ幸いである。

(2)例えば、トヨタ自動車株式会社の2018年3月期決算発表(2018年5月9日)において、豊田章男社長は、「自動車産業は今、『100年に一度』と言われる『大変革の時代』に突入しております。

ライバルも競争のルールも変わり、まさに『未知の世界』での『生死を賭けた闘い』が始まっているのです。

」と述べ、自動車会社ではなくテクノロジーカンパニーが新たなライバルになっている、としている。

https://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2018/year_end/speech.pdf(3)経済産業省平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)

コラム⑥AI活用で注意するポイントHRテクノロジー導入時における留意すべき法規制弁護士白石紘一本書では、様々な箇所で、人事業務におけるデータ分析等のいわゆる「HRテクノロジー」の活用例や手法が紹介されている。

これだけ多様な活用例が紹介されているとおり、テクノロジーの活用は高い効用を有する。

今は一部の先進事例にとどまっているかもしれないが、そう遠くないうちに、HRの世界においてもテクノロジーを活用することが当たり前のことになるであろう。

人事の経験や知見、直観といったアナログな素養と、デジタルとをいかにうまく組み合わせて、高度な人事を実現するかが、今後ますます重要になってくる。

他方で、HRテクノロジーは、人事業務という、“ヒト”と深く接する世界で用いられることを忘れて活用を進めると、思わぬところで足をすくわれてしまう可能性がある。

そうならないように留意すべき点は、そもそも対象者が“ヒト”という、心を持つ存在であることを踏まえて、温かみをもって活用すべきということであったり、対“ヒト”の関係で適用される法律上の規制などがある。

前者の、HRテクノロジーを活用するにあたって人事部門が持つべき“温かみ”については、本書におけるそれぞれの具体的活用例の箇所でも触れられているであろう。

本コラムでは、後者の点、すなわち、HRテクノロジーの活用を進めていくにあたって、法律、特に労働法と個人情報保護法との関係で留意すべき点を簡単にご紹介したい。

1労働法の観点労働法の観点、具体的には、「使用者」と「労働者」との関係性で、使用者側が留意しておくべき点は、2つある。

1つ目は、AIやデータに基づいて判断・決定された人事権の行使について、その判断過程を適切に説明することが可能になっているかという観点である。

2つ目は、様々なデータを収集することによって、使用者の安全配慮義務にどのような影響が及ぶか、という観点である。

(1)AIやデータに基づく人事権の行使について企業が行う人事権の行使としては、採用、異動、昇進・降格、報酬決定、退職勧奨者の選定等がある。

いずれにおいても、AIやデータの活用により、より広範なデータを基にした高度な意思決定につながったり、主観的なバイアスを排除した意思決定につながったりなどするわけであるが、問題は、その意思決定過程がブラックボックス化していないか、という点である。

一般的に、人事権の行使の適法性が労働者側から争われる場合(例えば、「自分を○○部に異動させたのは不当である」等)、多くは、「その意思決定が適切になされたものであるか」が問題とされる。

これに対して使用者側は、その労働者の年次、経験、性格等の属性や、現在の社内の人員構成等、意思決定に際してどのような要素をどのように考慮したかを踏まえて、その意思決定が適切になされたものであることを主張・立証していくことになる。

この際、単に「当社が導入しているAIが、それが適切だと判断したので……」というだけでは、適切な意思決定であったことの主張立証としては、不十分であると思われる。

労働者や裁判所に対して、そのAIがどのような要素をどのように考慮したのかを説明しないままに、「AIが判断したのだから正しい」と主張しても、およそ納得は得られないであろう。

したがって、AIやデータを活用する側は、おおよそでもよいので、そのAIの判断プロセス、すなわち「どのようなデータに基づいて、なぜそういった判断をしたのか」について、説明可能な程度に理解しておくことが必要である(1)。

また、人事権の行使が適法であるためには、意思決定内容の適切さのみならず、対象者に対してどのように伝えるのかまで含めた、行使の“過程”の適切さも必要である。

紛争に至った後に説明するためのみではなく、人事権を行使したその場面において、対象者が納得を得られるような説明をするためにも、AIの判断プロセスを理解しておくことは有用であろう(この点は、単に適法性にとどまらず、対象者のモチベーションやエンゲージメント等の観点からも重要である)。

なお、AIの判断プロセスを認識しておくべき理由はもう一つある。

それは、差別の再生産を生まないようにするためである。

AIに学習させるデータ(教師データ)自体に不当な要素が含まれている場合、AIはそれも含めて学習してしまうため、不当な判断を繰り返すことになってしまう。

近時の例でいうと、米Amazon.com社が採用活動時に使うために開発中であったAIツールが、女性に対して低い評価をつけるようになってしまっていたことが話題になったが、これは、AIに学習させた過去の履歴書の大半が男性のものだったためとのことである。

こういった問題を回避するためにも、その判断プロセスを認識し、問題がないかについて自覚的である必要がある。

いずれの点においても、AIによる判断について、無批判に過信しすぎず、あくまで判断材料の一つとして、最後は“人”が判断することが重要であろう。

(2)データ収集が安全配慮義務に及ぼす影響について

従業員データの収集は、企業の「安全配慮義務」にも影響を及ぼす。

企業は、労働者の生命・身体等の安全を確保する安全配慮義務を負っており(労働契約法第5条)、その内容は、「その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」(2)を指し、具体的には、①予見可能性と、これに基づく②結果回避義務の2点からなる。

例えば、過度な長時間労働の存在を企業が認識していれば、従業員の健康状態の悪化を予見でき(①)、これに基づき、残業禁止や休暇取得の指示等、健康を損なう結果を回避する措置をとるべきということになる(②)。

この点、従業員データの収集が進み、特に健康面に関するデータをより多く、あるいはタイムリーに収集できるようになると、その分、企業は、従業員の体調不良やハラスメント等の予兆を検出しやすくなり、上記①の予見可能性が高まることになる。

これに対して、企業が特段の対策をとらずにいると、後になって、「問題発生を予見できたはずなのに結果回避措置(②)をとらなかった。

すなわち、安全配慮義務違反がある」と言われてしまう可能性があるのである。

そこで、企業としては、ただ漫然とデータを収集するだけではなく、収集したデータを適切に活用すべく、積極的に、安全配慮義務を履行するための措置をとっていくべきことになろう。

結果として、これが、問題発生のより良い防止策にもつながり、企業の利益となるだろう。

2個人情報保護法の観点HRテクノロジーを活用するにあたっては、多くの場合、従業員の個人情報が利用されることとなろう。

こういったHRテクノロジーの導入を検討するにあたっては、①当該HRテクノロジーを導入するために、従業員の個人情報の取り扱いに関して、どのような利用目的を設定する必要があるのか、②利用目的を社内規程等で設定しなおす場合、その変更等をどのように行わなければならないのか、という点に留意しておく必要がある。

(1)利用目的について個人情報保護法は、「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。

)をできる限り特定しなければならない。

」(第15条第1項。

下線部筆者)と定めている。

具体的にどの程度の定めをすれば、HRテクノロジー上での利用という目的との関係で「できるだけ特定」されているといえるかは、ケースバイケースの判断となるが、基本的には、従業員の立場から見て、自身の個人情報が具体的にどのように利用・取り扱われるのかが、明確に特定されている必要があるだろう。

なお、利用目的は、本人(従業員)に通知又は公表しなければならないとされているため(同法第18条第1項)、後述するような、個人情報の利用目的を記載した“個人情報取扱規程”のような社内規程を作り、従業員向けに周知するといった方法をとることが必要になる。

(2)利用目的に関する社内規程の変更等について既存の利用目的では、HRテクノロジー上での利用との関係でその特定が不十分である場合、その定めを変更等する必要がある。

この点、従業員の個人情報の利用目的を変更することは、企業が一方的に行うことはできず、本人の同意をとることが原則である(個人情報保護法第16条第1項)。

もっとも、企業規模が大きくなればなるほど、従業員の個別の同意をとることは非現実的となる。

そこで、一括的・集団的に同意をとる方法を検討すべきこととなるが、一般的には、個人情報取扱規程上の利用目的の記載を変更する方法をとることになろう。

ただし、そのような変更については、就業規則に関する法律上の一般的な手続き(労働基準法第89条、第90条等)を踏む必要があるほか、就業規則の不利益変更法理(労働契約法第10条)との関係についても留意する必要がある。

以上、留意点を述べたが、本稿は、当然ながらHRテクノロジーの活用にブレーキをかけようとするものではなく、適切な形で活用が進むことを願うものである。

活用がある程度進んでから、法律上の問題点が発見されてしまうと、目も当てられない。

人事部門や事業部門においてHRテクノロジーの導入を行っていくにあたっては、適宜、法務(総務)部門とも連携していくことが有用と思われる。

なお、紙面の都合上、本稿における記載はかなり概括的なものになっている。

より詳細な分析内容を確認する場合には、『HRテクノロジーで人事が変わるAI時代における人事のデータ分析・活用と法的リスク』(労務行政、共著)をご参照いただきたい。

【コラム⑥注】(1)なお、内閣府に設置された「人間中心のAI社会原則検討会議」においては、2018年12月27日に「人間中心のAI社会原則(案)」が公表されている。

その中では、「AIが社会に受け入れられ適正に利用されるため、社会(特に、国などの立法・行政機関)が留意すべき『AI社会原則』」のうち、「説明責任」として、「AIを利用しているという事実、AIに利用されるデータの取得方法や使用方法、AIの動作結果の適切性を担保する仕組みなど、状況に応じた適切な説明が得られなければならない。

」とされている。

内閣府ホームページ

おわりに「なぜこの本を書いたのか?」と聞かれたら、私はこう答えます。

「不本意な形で、仕事によって命を落とす人を一人でも減らしたいから」いつの時代も、職場で不本意な形で命を絶つ事件はあります。

私はこういうニュースを見る度に思います。

「なぜ、仕事のために人が命を落とさないといけないのだろうか」と。

私は現在、複数のIT企業で役員をしています。

私自身は、仕事が大好きな人間であり、地元に帰っても、プライベートでも、95%仕事の話しかしません。

年末年始は書籍を書き、平日の夜があけば、ビジネスイベントに登壇します。

服には興味が全くないので、年中、同じ服ばかり着ています。

私にとっては仕事とはなくてはならない存在です。

ですが、同時に「それを全ての人に押し付けることは絶対しない」とも決めています。

ビジネスリーダーの多くはときとして「経済成長=絶対善」かのように語ります。

ただ、私は全くそうは思えないのです。

やはり、それぞれの人には「自己実現」や「やりたいこと」が先にある。

そして、その目的を果たす手段の1つとして「仕事がある」「会社がある」、こういうことだと感じます。

だとしたら、仕事という手段によって、もし、不本意に命を落とす人がいたら、一人でも減らしたいと仕事が大好きだからこそ思うのです。

でも、これは容易なことではありません。

資本主義のパワーは強く、私たちは、気をぬくとすぐに「事業成長のために従業員がいる」と捉えがちです。

その結果、不正をしてでも「成長すること」「相手に打ち勝つこと」が推奨されがちです。

私だってそうです。

かつて、数字を達成するために「ギリギリのこと」をしたことがあります。

ただ、あの時の自分を振り返ると、やはりそれは健全な状態ではなかったと感じます。

こうやって仕事が人の心を蝕んでいくのだろう、と感じました。

私にとって「強い人事を作ること」は、綱引きのようなものです。

ほっておくと、人を手段として捉えてしまいがちな資本主義の世界。

その反対側から、正のパワーをもって、バランスをなんとか整えようとする人。

それが人事であり、私がこのフィールドでともに戦いたい仲間なのです。

この国では長らく「仕事=苦役」だと教えられてきました。

私も小さいころ、親や先輩から「仕事とは辛くて当然だ」「いい会社とは、楽して儲けられる会社だよ」と教えられてきました。

ですが、今になって思います。

仕事とは、本来、もっと自由で本質的であるはずです。

私はこの本や、実務活動によって、少しでも理想を実現していきたいと思っています。

この本は正直にいって、理論的にはまだ未熟な部分もあります。

ですが、それでも、誰かが1ミリずつでも世界を前進させていくことには絶対に価値があると信じています。

この本を手にとってくださった方が、何か一つでも持ち帰るものがあったとしたら、これ以上ないほど嬉しく思います。

これからも私たちは、走り続けたいと思います。

そう決意しています。

最後にこの本を書くにあたって、多くの人にお世話になりました。

まず著者メンバーである、寺口浩大氏、西村晃氏、白石紘一氏、西村英丈氏、平岩力氏、堀達也氏、西村隆宏氏とは、何度もディスカッションを重ねてまいりました。

また、今回執筆には参加しなかったものの、この書籍を出すキッカケになった活動に参加してくれた、加賀れい氏、橋本賢二氏、藤岡雅美氏、出光啓祐氏に深く感謝いたします。

今回の書籍は、これまでのディスカッションの集約知です。

次に今回、編集を担当したくださった戸塚健二氏にも感謝いたします。

丁寧で誠実な対応には勇気をいただきました。

温かい人柄と、的確なフィードバックは執筆の助けになりました。

また編集長であり、経営者でもある古屋信吾氏には私のような若い書き手に専門書を執筆するチャンスを頂いたことに深く感謝いたします。

最後にいつも、支えてくれている家族。

いまの自分がいるのは、皆さんのサポートがあったからです。

ありがとうございます。

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