第8章売上1000億・利益300億円を実現する戦略
1徹底的に無駄を排除する
デジタルマーケティング戦略「数値化」と「ターゲティング」ウェブ集客を内製化する4つのメリットAIを活用したデジタルプロダクトマーケティングAIにできること、人間にできることターゲットにピンポイントで訴求する方法サイコグラフィックデータで「購買理由」がまるわかり三方よしの「ハッピートライアングル」を目指そう2日本を代表する次世代のグローバルメーカーとなるDtoCの代表格として世界ブランドにアメリカのアマゾンで日本発の商品を売るリアルとネットのマーケティング調査法企業の成長段階に応じた利益戦略人生を変えた「NTTのテレホンカード」事件5段階利益管理の項目と施策を連動させるおわりに
第8章売上1000億・利益300億円を実現する戦略
1徹底的に無駄を排除するデジタルマーケティング戦略「数値化」と「ターゲティング」これまでの話で、当社がいかに「無駄」を排除しながら経営してきたかが伝わったと思う。これは「デジタルマーケティング」というある意味、ほとんどの事象を「数値化」しやすい業種だったからやりやすかった側面がある。私は社長とマーケティングの責任者を兼務している。経営直結型のマーケティングを行い、マーケティング数字はすべて経営数字につながっている。「数値」を見ていると「無駄」が浮き彫りになってくる。その「無駄」を排除するために、ターゲットをセグメントし、そこに集中したマーケティング活動を行う。最終章では、デジタルマーケティングにおいて当社がどのように無駄を排除しながら活動しているかについてお話ししたい。ウェブ集客を内製化する4つのメリットマーケティングとは、顧客や社会と企業の結合部分だ。企業は顧客がいて初めて成り立つ。マーケティングが企業の根幹になるのは当然のことだ。北海道の特産品をウェブ販売していた時代から、eコマースと広告を自前で構築してきた当社は、独自にデータ、アルゴリズム解析を積み重ねた。商品開発を先行させるため、一時はウェブ集客を広告代理店に任せたこともあったが、それでは「他社製品との違い」を訴求することは難しい。そこで再度ウェブ集客をインハウス化(内製化)した。つまり、自社の商品・サービスを宣伝する広告運用、広告枠のバイイングやレポーティング、クリエイティブ制作をすべて自社で行うのだ。一般論として、インハウス化のメリットは次のように4つある。①社内に蓄積された情報を活かし、深い視点でマーケティング施策を実施できる商品知識やユーザー理解など、社内でしか把握できない深い情報をマーケティングに活かすことができるので、広告代理店が運用するより深い視点でマーケティング施策が実行できる。②仕事のスピードが速くなる広告代理店に外注する場合、施策への反応の返答待ちがあり、時間ロスが生じる。広告代理店は通常、一人が複数のクライアントを担当しているので、リアクションが遅い。インハウス化すると、社内で完結するので決裁スピードが速くなる。当社ではデイリーで広告効果を把握し、調整している。③広告運用ノウハウを蓄積できる広告代理店に外注する場合は、施策を考えて実行するのは代理店で、自社では代理店から提供された運用結果の情報しか見られない。対して自社で運用すれば、配信するセグメント、入札単価など、運用に必要な全要素を考え、結果を蓄積できる。④広告代理店に外注する際の手数料を削減できる広告出稿金額の20〜30%程度が削減できる。AIを核にしたデジタルマーケティング戦略を行う場合、インハウス化のメリットを活かす意味は非常に大きい。その理由については後述する。次に、一般的にインハウス化には次の3つのデメリットがあるとされている。①広告メディアとのやり取り業務が煩雑になる②人材確保が必要になる③マーケティング施策に関する新しい情報を得るのが難しくなる一長一短ではあるので、インハウス化もしながら、外注も使う両建てがお勧めだが、当社の場合、前述のようにウェブ、マーケティング、クリエイティブのスキルを長年蓄積してきた。スキルを持った社員が多数在籍しているため、新しく入ったメンバーを短期間で同水準に引き上げられる。当社の特徴は、圧倒的なデータ量と、その背後にあるメディアの持つ思想(アルゴリズム)、ユーザー状況まで思考を結びつける分析力にある。当社のデータサイエンスマーケッターは、一般的な行動心理と実際のユーザーが取る動きが異なる事実や、深い洞察の末に立てた仮説を立証しながら、その共通項や法則性を見出し、ノウハウをシステム化していく。これによって、顧客特性などの細かい分析が可能となり、いつ、どのネット媒体に広告を出せば、購買につながりやすいかわかる。これまでお話ししてきたとおり、商品開発と効果的な広告宣伝が両輪となり、高収益を実現したのである。AIを活用したデジタルプロダクトマーケティング現在のアドテクノロジーは、いかにAIを活用するかにかかっている。当社のAIを活用したデジタルプロダクトマーケティングの大まかな流れは次のとおりだ。①利益から逆算した「上限CPO」を設定する前述したとおり、当社は利益から逆算して売上を考えている。利益から逆算して「上限CPO」を設定する。②デジタルプロダクトマーケティング戦略の立案利益から逆算して、デジタルプロダクトマーケティング(自社製品を製造する企業がプロモーションプラン、販売促進施策を実施する)を行う。デジタルプロダクトマーケティングの肝となるのが「差別化戦略」だ。AIにはそもそも差別化という概念がない。同じカテゴリーに属する自社商品Aと競合商品Bがあった場合、きちんと差別化しないで広告を出すと、同じような人に同じように広告が表示されることになり、広告効果はほとんどなくなる。「カーナビの渋滞理論」というものがあり、みんなが同じカーナビを使うと渋滞が起きる。グーグルやフェイスブックなどは、世界中で同じカーナビを使っているようなものなので、きちんと差別化していないと世界中が競合になる。
③教師データの供給AIは画像を認識する。これは画像から特徴をつかみ、対象物を識別するパターン認識技術の一つだ。人間は画像を見れば、何が映っているかを経験から推測できる。しかし、コンピュータには最初は記憶や経験がない。突然リンゴの画像を一枚見せても、リンゴと認識できない。画像認識では、コンピュータにデータベースから大量の画像を与え、対象物の特徴をコンピュータに自動的に学習させる。コンピュータは画像データからリンゴの特徴を学び、同じ特徴を持った画像が与えられれば、リンゴだと推測できるようになる。コンピュータは画像を表すピクセルデータに対し演算を行い、特徴量を算出する数学的方法でこれを可能にしている。この分野はAIにおけるディープラーニング技術の向上により、急速に発展した。この最初に与える画像データのことを「教師データ」という。この技術を活用するには、人間が「どんな教師データを与えるべきか」を考えなければならない。自社商品の特徴、誰に売るかを明確にしたうえで、AIの学習環境を整えていく。④広告出稿、AIによる運用広告を運用しながら成果を計測する。CPOなどの指標を見ながら、広告出稿のコントロールを行っている。AIにできること、人間にできることAI時代に考えなくてはならないのは、AIの仕事とは何か、人間の仕事とは何かを見極めることだ。マーケッターの中には、「AIに任せれば大丈夫」と言う人がいるが、そんなことはない。AIにできないが、人間にできることは2つある。①手作業……体を使って何かをすること②企画……新しい何かを考え出すことグーグルやフェイスブックに商品広告を出稿したとしよう。グーグルやフェイスブックは適切と思われるユーザーを選び、広告を表示する。そして広告をクリックした人、購入した人などのデータを蓄積する。「どんな人が購入しているか」をAIが学習し、その後、購入しそうな人に優先的に広告を表示する。AIの指示に従い、人間が手作業で広告を出稿する。これが現在の大きな流れで、「AIに任せれば大丈夫」という発言につながる。しかし、それでは利益につながる広告は打てない。AIは「AとBのどちらがいいか」はわかるが、「なぜAがいいか」「なぜBが悪いか」はわからない。まして「A、BよりもCのほうがいいのではないか」とは考えもしない。だから企画(クリエイティブ)が重要だ。とりわけ差別化戦略を図る必要がある。「AIに任せれば大丈夫」と考えると、次のようなことが起こる。「チーズケーキ」を売る広告を「20代女性」に配信しようとしたのに、甘いものが苦手な「20代女性」にも配信されてしまう。一方でチーズケーキが好きな40代男性はその広告に触れる機会すらない。AIのアルゴリズムを理解し、商品をターゲットにマッチングさせる戦略を立てる。これは人間の経験値がまさる領域だ。具体的に言えば、AIの学習環境を整える。学習は確率論から成り立っているため、スタートダッシュのコンバージョンが間違えていた場合、その要件が継続されてしまう。お茶飲料AとBがあった場合、「Aが好きな人」「Bが好きな人」と学習させずに、「お茶飲料が好きな人」と学習させてしまうと、AもBも同じ広告の動きをするので差別化が図れないのだ。ターゲットにピンポイントで訴求する方法私たちが自分たちで広告を運用するきっかけはそこにあった。広告代理店の担当者は複数のクライアントを扱っているので、一つの商品に深入りできない。商品の本質はメーカーのほうがわかっている。AIが広告の重要な部分を担うようになり、自分たちは本質的な差別化の部分を行うべきだと考えた。AIが学習し、広告表示するプロセスは次のとおりだ。①この商品はどんなものかを認識する②どんな人が買うかを学習する③その人を探して広告を表示するこのとき、AIは最初の20人くらいで概略を決める。この20人をどんな人にするかによってその後の動きは大きく変わる。写真3を見てほしい。
この商品を何ととらえるか。A、この商品を「スイーツ」ととらえ、「とてもおいしいスイーツです」という広告を打つ。それによって最初にマッチングした20人が「スイーツ好きな人」になると、グーグルやフェイスブックは「この商品はスイーツ好きな人が買う」と認識し、スイーツが好きな人に優先的に配信する。この場合、スイーツ好きではない人には配信されない。一見効率的に見えるが、一方で、どら焼きやザッハトルテなど、広い意味でスイーツ好きな人にも配信されてしまう。すると、この商品はどら焼きやザッハトルテと競合し、無駄が生じる。B、この商品を「チーズケーキ」ととらえ、「とてもおいしいチーズケーキです」という広告を打つ。最初にマッチングした20人が「チーズケーキ好きな人」になると、グーグルやフェイスブックは「この商品はチーズケーキ好きの人が買う」と認識し、優先的に配信する。どら焼きやザッハトルテ好きには配信されなくなる。C、この商品を「レアチーズケーキ」ととらえ、「とてもおいしいレアチーズケーキです」という広告を打つ。マッチングした20人が「レアチーズケーキ好きな人」になり、グーグルやフェイスブックは「レアチーズケーキ好きな人」に優先的に配信する。こうすると、同じチーズケーキでもベイクドチーズケーキ好きな人には配信されなくなる。D、この商品を「ゴルゴンゾーラレアチーズケーキ」ととらえ、「とてもおいしいゴルゴンゾーラレアチーズケーキです」という広告を打つ。マッチングした20人が「ゴルゴンゾーラレアチーズケーキ好きな人」になる。これはケーキ好きな人というより、ゴルゴンゾーラチーズ好きな人がターゲットで、チーズのサイトをよく見ている人がターゲットとグーグルやフェイスブックは学習する。このように最初に「この商品は一体何か」を人間が考える必要がある。商品の特徴を見極め、最初の20人を設定し、機械に学習してもらう。それがうまくいけば、効率的な広告が打てる。AIのアルゴリズムを理解してアドテクノロジーを活用すれば、ターゲットにピンポイントで訴求できるのだ。サイコグラフィックデータで「購買理由」がまるわかり多くのマーケッターは、デモグラフィック属性でターゲット設定をしている。一方、当社はサイコグラフィック属性でターゲット設定をしている。◎デモグラフィックデータ……お客様の性別、年齢、収入、独身/既婚など定量的データに基づいた変数◎サイコグラフィックデータ……お客様のライフスタイル、趣味、嗜好、価値観など内面を表す変数図表44を見てほしい。
デモグラフィックデータは定量的データに基づいた変数であるのに対し、サイコグラフィックデータは消費者の内面を表す変数であるのが両者の大きな違い。別言すれば、「誰が」買うのかを表すのがデモグラフィックデータ、「なぜ」買うのかを表すのがサイコグラフィックデータだ。人間の消費行動を想像し、仮説を立てながらやっていく。たとえば、スマホに広告を出したとする。時間帯によって購入される率が違う。昼12時から午後1時は、クリック後に購入まで至る率が高く、それ以外は高くない。なぜか。スマホは日常的に見ているが、昼休みの時間はクリック後の飛び先のページをじっくり読めるから、気に入ったら購入する。一方、それ以外の時間帯で電車での移動中に同じ広告を見ても、一つのページに対する集中力は薄いので、購入までには至らない。このように購買理由を考えることが重要だ。つまり、分布図を見て、購入率が高いところに集中させればいいとAI任せにするのではなく、「なぜこの時間帯に購入率が高い(低い)のか」を考えるべきだ。理由を考える力は、日常業務をやりながら経験を磨くしかない。あとは、恥ずかしがらずに人に聞くことだ。人間行動が数値化されているので、「こんな動きがあるけれど、なぜだと思う」と聞くと、ターゲットの人は即答できる。有名な話だが、アメリカのスーパーでおむつとビールを一緒に買う人が多いというデータが出た。理由を考えてもわからなかったが、レジの人に聞いたら一発でわかった。週末に夫婦で車できて、重いものをまとめ買いする。ビールとおむつに関連性があるわけではなく、「重いもの」という属性だった。よってそのスーパーでは、土日にはビール、おむつ、ミネラルウォーター、トイレットぺーパー、お米など、まとめ買いするものを集めたコーナーをつくり、売上を増大させた。当事者や現場の人はすぐにわかるので、どんどん聞いてみよう。三方よしの「ハッピートライアングル」を目指そうこれまで「利益」を意識した経営、マーケティングについてお話ししてきた。では、一社一社が利益を意識したデジタルマーケティングをやるとどうなるか。まず無駄な広告をやめるようになる。広告は限られた広告枠がオークション制で販売されているから、無駄な広告を出す会社が減ると、オークション価格が下がる。すると広告費全体の相場が下がる。無駄な広告をやめた段階で利益が出始め、さらに広告費の相場が下がれば、それに応じて利益がさらに増えるのだ。事業者(広告主)の立場で言えば、利益率が向上するだけでなく、多くの会社がやり始めれば、業界全体の利益率が上がってくる。一方、ネットユーザーの立場で考えると、無意味な広告が減る。採算の合わない広告は、ユーザーから価値を認められない。意味のない広告が減ることで、ユーザーの使い勝手がよくなる。そうなると、ユーザーの視聴時間が長くなり、メディアの販売広告枠が増え、売上が上がる。事業主(広告主)が利益を意識したデジタルマーケティングをやり始めると、同業者全員、ユーザー、メディア三方よしで利益が出る。これをハッピートライアングルという。私は同業者にも講演をしている。ある意味ライバルではあるが、一社一社が売上よりも利益を意識し始めると、当社にも同業者にもいいことがある。同業者が無駄な広告を出すのをやめると、同業者も利益が上がるし、広告費の相場が下がるから、当社にとってもメリットがあるのだ。
2日本を代表する次世代のグローバルメーカーとなるDtoCの代表格として世界ブランドに当社は「びっくりするほどよい商品をつくる」「ブームに乗らない方針」「世界最高峰のネットマーケティング集団」として株価上昇率日本一(2017年株価上昇率1164%:株価125円→1455円)の超効率経営を目指してきた。今後、当社がビジョンとして掲げるのが、日本を代表する次世代グローバルメーカーになることだ。消費財のグローバルメーカーというと、ネスレ、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユニリーバ、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ペプシコ、コカ・コーラなどがある。こうしたグローバルメーカーに名を連ねたい。これまでのグローバルメーカーは、リアル店舗を通じた流通で成り立っている。しかし、これからはDtoCによるグローバルメーカーができてもおかしくない。世界中でそういったことが可能な世の中になっている。私たちがDtoCの代表格としてグローバルメーカーになっていきたい。現在は「北の快適工房」というブランドだが、これを世界展開するのではなく、対象国別にブランドを立ち上げる。当社の強みは、お客様の悩みを解決する商品を開発してダイレクトに販売すること。現在は日本人を対象に商品開発をしている。それをそのままアメリカに持っていって売るより、アメリカ人の悩みに合わせて商品開発するほうがいい。マーケットに対して商品をつくり、日本からネットで売るのがビジネスモデルの根幹だ。アメリカのアマゾンで日本発の商品を売るでは、お客様の悩みはどう抽出するか。社内会議で様々な悩みが挙がると、それを解決する商品があるかを調べる。「ヤフー知恵袋」などネット上の悩み相談サイトを見ると、既存商品で解決されている場合と、そうでない場合がある。同時に、その悩みがどれくらいキーワード検索されているかも調べる。悩みを「需要」と考えたときに、それに対する供給量がどれくらいあるかを観察して、空きがあれば商品開発を検討する。このやり方は海外マーケットに進出する場合も変わらないだろう。私たちが明確に区切っているのは「ネット上で」という部分だ。アメリカの実生活になじむのではなく、アメリカ人の悩みを解決する商品がネット上で売れるかどうかを見ている。逆に言えば、基本的にネット上でしか調べない。たとえば、アメリカのアマゾンで商品を販売するとしよう。この場合、現地のアマゾンでどんなものが売れていて、売れているものに対してどんなコメントがついているかを日本で調べる。アメリカのアマゾンで売れるには、アメリカのアマゾンを徹底的に調べるのがベストだ。現地に行って生活者にヒアリングするよりも彼らのネット上での行動を調べるほうが重要だ。ネット上のアマゾンこそが、商品購買のリアルな場所だからだ。リアルとネットのマーケティング調査法生活者に対するリアルなマーケティング調査をやった場合と、アマゾン上で調べる場合とで、必要とされている商品は異なる。たとえば、北海道の特産品を売る場合、新千歳空港で売れる商品とネットで売れる商品はまったく違う。新千歳空港でお客様が商品を買うときはどんな状態か。北海道旅行の帰りで結構テンションが高い。「北海道、楽しかったなあ。思い出に何か買おう」という場合、「北海道らしさ」は重要だ。一方、ネットで買うときはどんな心理状態か。旅行に行っていたわけではないので、テンションはそんなに高くない。新千歳空港ではついカニを衝動買いしてしまうが、ネットでは十分に比較検討する。タラバガニとズワイガニと毛ガニではどれがいいか。さらに松葉ガニと越前ガニと上海ガニと比べたらどうかなど、北海道の特産品を買おうと思っていたはずが、他の地域の特産品にも欲が出てくる。つまり、品質や価格を冷静に比較検討したうえで買う。これはある意味シビアだ。リアルでの販売とは異なり、ネット販売は、「比較検討されたうえで本当に売れるかどうか」が重要だ。その点、ネット販売の場合、取扱説明書をじっくり読んでもらえる。たとえば、当社の健康食品の競合商品はドラッグストアで売られている。ドラッグストアでは、有名メーカーのブランド商品が大きく展開されている。ブランド買いなのでほとんど説明書を読まずに買っていく。一方、ネット販売の場合、商品の隅々まで文章で説明できる。品質に自信があれば、しっかり説明を書いておけばいい。現在は日本を中心にやっているが、これからはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のプラットフォームを通じて世界に展開していく。現在、ネットで広告を出す際も、広告メディアはたくさんあるが、海外展開しているプラットフォームを活用してノウハウを蓄積している。企業の成長段階に応じた利益戦略現在は一商品で売上50億〜100億円のマスマーケット商品の開発にチャレンジしている。売上1000億円の会社を目指すには、ニッチ商品を積み上げるより、マス商品を複数リリースするほうがいい。競合は増えるが、明確にすぐれた点を持つ商品にすれば、利益率は維持できる。売上100億円未満と100億円以上では事業に関する考え方がまったく違う。第4章で触れたように、売上100億円まではニッチトップ戦略でやってきた。大手が参入するには小さすぎるマーケット、かつ中小では絶対にマネできない品質で参入した。大きなマーケットは競合が多く、売上100億円にするにはコストがかかる。小さなマーケットは競合が少なく、売上10億、20億円程度にしかのびないが、競争コストがかからないので、利益率が高い。これにより売上100億円、利益29億円を達成した。だが、この方法で1000億円まで売上をのばすのは難しい。次は一つの商品で100億円の売上が狙えるマーケットに参入する。シャンプー、ハンドクリーム、オールインワンゲル(スキンケアに必要な機能がすべて詰まったゲル)など大きなマーケットがある。これまではニッチマーケットをほぼ
取ってきたが、今後は大きなマーケットの一部分を獲得する戦略を併用する。ターゲットは、第5章で触れた「イノベーター理論」のイノベーター(革新者)2・5%とアーリーアダプター(初期採用者)13・5%を合わせた16%だ。ここは比較的安いコストで獲得できる。数千億円市場ではトップシェアにならなくても、高い利益率が維持できる。たとえば、シャンプー市場が1000億円あるとしたら、160億円のイノベーターとアーリーアダプターマーケットがある。これを複数つくり、売上1000億円を目指す。もちろん、品質はこれまでどおり大前提になる。ヒットはイノベーターやアーリーアダプターから始まるが、対象物に対して造詣が深い両者に「着目」してもらうには、この両者を唸らせる商品をつくらなければ始まらない。人生を変えた「NTTのテレホンカード」事件私がマーケティングに最初に興味を持ったのは、高校生のときだった。父親が買ってきたビジネス誌をたまたま読んだ。そこに「テレホンカード」の収益性を高めるための「仕掛け」が書いてあったのだ。当時、公衆電話は3分10円で硬貨しか使えなかった。長時間使うには、硬貨をジャラジャラ用意しなければならなかった。そんな中、NTT(当時は日本電信電話公社=電電公社)が1枚500円程度のプリペイドカードを販売し、公衆電話の挿入口に入れれば通話できるようになった。これにより、ユーザーは劇的に便利になった。しかし、NTTにとっては同じ500円の通話売上でも、硬貨の場合:原価=回線使用コストカードの場合:原価=回線使用コスト+カード原価→利益減となる。そこでNTTは「カードを買っても使われなければ、回線使用コストはかからない。収益性が増す」という逆転の発想でアイデアを練った。それが「テレホンカードをコレクション対象にさせる戦略」だったのである。そのための仕掛けとして、最初は、グレーで無機質のデザイン性の乏しいテレホンカードをリリースした。それでも硬貨に比べると便利なので大ヒット。多くの人たちは「使う」ために買った。そして、それが浸透した頃、満を持して、芸術家、岡本太郎氏のデザインした4種類のカードを発売した。これも大ヒットした。このとき、人々は「使う」ためではなく「コレクション」のために買った。その後はアイドルのプロマイドのような「使うのではなく集めたくなる」カードを発売し続けた。感覚値ではあるが、世の中に出回ったテレホンカードの2〜3割は眠ったままではないか。それはすべてNTTの「回線使用コストという原価のかからない売上」となった。私はこの記事に衝撃を受けた。自分の手元にあるこのアイドルタレントのテレホンカードは、NTTの仕掛けによって自分の手元に使われないままあるのだと知った。高校生ながら、「世の中は仕掛けで成り立っている」と知った瞬間だった。そこからは、見るものすべて「どんな仕掛けでこうなったのか」と思うようになった。仕掛けが見えると世の中が変わって見える。そして、世の中が俄然面白くなる!あのときから、世の中はとても楽しいワンダーランドに見えるようになった。ヒットを生み出すには、①商品、作品等の対象物に対して造詣が深い②消費者に対する畏敬の念を持っている③世の中の「仕掛け」に精通しているこの3つの要素を持ったプロデューサーになる必要がある。今の私がこの3つをどれだけ兼ね備えられているかわからないが、少なくともこの3つの要素をこれからも磨き続けたいと思っている。5段階利益管理の項目と施策を連動させる今後も様々なマーケティングの施策を打っていくが、成否は常に数値で判断する。そのスタンスはこれまでも、これからも変わらない。重要数値は2つある。◎KPI(重要業績評価指標:目標の達成度合を計測するための指標)◎KGI(重要目標達成指数:最終目標が達成されているかを計測するための指数)適切なKPIを設定して計測していくには、どんな数値をどうやって取得し、どう分析していくかを突き詰めていかなければならない。すると計測システム開発の工程にたどり着く。最終的に適切なKGIを設定するには、「営業利益」を増やす設計になる。営業利益を突き詰めれば、マーケティングコストだけでなく、連動する販管費や人件費までも計算して最も費用対効果の高い施策をすべきだという「経営管理」の工程にたどり着く。本書では、5段階利益管理を掲げ、それらの項目と施策を連動させながら考えてきた。今後も利益に有効に作用する施策を行っていく。そして企業規模が大きくなれば、責任もそれだけ重くなる。利益を上げ、「無収入寿命」をのばし、永続的な企業をつくっていこうと思う。
おわりに最後までお読みいただきありがとうございました。高い利益率は社長一人で成し遂げられるものではない。社員が利益について正しく理解し、行動してくれた賜物だ。そのために私は、新卒社員や中途入社組には、第2章で触れた「利益は何のためにあるのか」という研修をしてきた。その後は、日々の業務を、利益を念頭に置きながら取り組んでいる。5段階利益管理を行いながら、利益につながらない仕事は潔くやめ、日々改善する。すると利益につながる仕事だけが残っていく。売上重視の施策を考える社員がいると、「それは利益につながるのか」と問いかける。無駄な投資をしそうな社員がいたら、「それはいつ、いくらになって戻ってくるのか」と問いかける。コスト削減で重視するのが時間だ。時間を無駄に使うのは、無駄に人件費を使うことになる。5段階利益管理では「ABC」がこれに当たる。よく社員に話すことだが、なぜ社長はタクシーで移動するのか。社長は偉いからタクシーで移動するわけではない。当社は1か月で約2億円の利益を出している。社長は月2億円の利益を出すための司令塔の役割をしている。つまり営業時間の10分間に換算すると約20万円の利益を出すので、その10分間を有効に活用するには、電車よりタクシーのほうがいい。タクシーに乗って時間を有効活用したほうが利益は出る。一方で、飛行機の場合は、ファーストクラスでもエコノミーでも時間は変わらないのでエコノミーに乗る。時間とお金の話は、ことあるごとに社員にする。たとえば、私との約束に10分遅刻した社員には、「今あなたは会社の利益20万円を無駄に使いましたよ」と言う。制作物のチェックを依頼され、ケアレスミスなどの文字訂正などに10分程度の時間を使ってしまったら、「今20万円のコストを使って文字を修正したことになるんですよ」と言う。普段から人件費や機会損失を金額に置き換えて話しているのだ。当社のクレドの中に「ピッと思ったらパッとやる」がある。この「ピッパの法則」に気づいたのは、リクルートに勤めているときだ。営業で何人もの中小企業の社長と話をして、生意気ながら「そんなにすごい人はいないなあ」と思っていた。対等に話ができていると思っていた。だが、「ちょっと待てよ」と思った。「この社長たちはみんな成功しているのに、自分は一介のサラリーマンにすぎない。この差は何か」あるとき気づいた。社長に「こんなことをやったら面白いですよね」と話すと、次に会ったときはすでに実行しているのだ。そして、「これはよかったけど、これはダメだった」と言う。自分は口先ばかりで実践していない。社長はこんなに忙しいのにすぐ実践している。私はなぜできるのかと尋ねてみた。「ピッと思ったらパッとやるからだ。君と話をしていて、こんなことをやったら面白いと感じる。君が帰った瞬間にやる。ピッと思ったらパッとやる癖をつけていくとキャパシティが増える」それからは、ピッと思ったらパッとやる癖をつけた。すると、仕事のキャパシティは4、5倍になった。「ピッパの法則」は社内研修でも行う。やるべきことが起きたとき、「できることは今すぐやる」「すぐできないことは、いつやるかを今すぐ決める」を習慣にする。この習慣をつけると、誰でも仕事をこなす量が3、4倍になる。当社が高収益になった秘密はこれですべてお話しした。出し惜しみは一切ない。あとは、あなたが「ピッパの法則」で実践に移すだけである。
本電子書籍は2021年6月30日にダイヤモンド社より刊行された『売上最小化、利益最大化の法則』(第2刷)を、一部加筆、修正の上、電子書籍化したものです。
著者]木下勝寿(KatsuhisaKinoshita)株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長1968年、神戸生まれ。株式会社リクルート勤務後、2000年に北海道特産品販売サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」を立ち上げる。2002年、株式会社北海道・シーオー・ジェイピーを設立(2009年に株式会社北の達人コーポレーションに商号変更)。2012年札幌証券取引所新興市場「アンビシャス」、2013年札幌証券取引所本則市場(通常市場)、2014年東京証券取引所の市場第二部(東証二部)、2015年東証一部と史上初の4年連続上場。2017年、時価総額1000億円。2019年、「市場が評価した経営者ランキング」第1位(東洋経済オンライン)。日本政府より紺綬褒章7回受章。「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」という高品質の健康食品・化粧品で絶対に利益が出る通販モデルを確立。「北の快適工房」ブランドで、機能性表示食品「カイテキオリゴ」やギネス世界記録認定・世界売上No.1となった化粧品「ディープパッチシリーズ」などヒットを連発。売上の7割が定期購入で18年連続増収。ここ5年で売上5倍、経常利益7倍。利益率29%は、上場しているおもなEC企業平均の12倍の利益率。株価上昇率日本一(2017年、1164%)、社長在任期間中の株価上昇率ランキング日本一(2020年、113・7倍、在任期間8・4年)。日本経営合理化協会セミナー「『北の達人』他社を突き放す5つの戦略」は参加費4万円超ながら327人が受講。本書が初の著書。【株式会社北の達人コーポレーションHP】https://www.kitanotatsujin.com/【ツイッターで最新情報配信中】https://twitter.com/kinoppirx78売上最小化、利益最大化の法則——利益率29%経営の秘密2021年6月15日プリント版第1刷発行2021年6月15日電子版発行著者——木下勝寿発行所——ダイヤモンド社〒150‐8409東京都渋谷区神宮前6‐12‐17http://www.diamond.co.jp/電話/03・5778・7233(編集)03・5778・7263(製作)装丁————————山影麻奈編集協力——————橋本淳司本文フォーマット——布施育哉本文図版——————渡邉和美校正————————加藤義廣、宮川咲DTP・製作進行——ダイヤモンド・グラフィック社編集担当——————寺田庸二
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