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5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう ──「基本」があれば「応用」できる

目次

5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう ──「基本」があれば「応用」できる

自分を常に「アップデートする」法

「自分のMUJIGRAM」をつくろう

「上手なコミュニケーション」もマニュアル化できる?

家事だって「基本」があると「応用」しやすい

利益を出し続ける原動力としての「マニュアル」

おわりに

あせらず、くさらず、おごらず

5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう ──「基本」があれば「応用」できる

自分を常に「アップデートする」法

仕事とは何か。この本質的な問いに一言で答えるのは難しいのですが、私にとっては「生きる価値そのもの」です。人は一日二四時間のうち、仕事にもっとも多く時間を費やしています。八時間労働なら一日の三分の一、つまり人生の三分の一は仕事に費やす計算です。プライベートも仕事と同じぐらい大事ですが、仕事を充実させるのは人生の大命題です。仕事を充実させるためには、モチベーションの維持の仕方を考えなければなりません。同じ仕事を続けていると、どうしても飽きてきますし、中だるみという壁にぶつかります。モチベーションを維持するために役立つのが、マニュアルです。そういう意味では、マニュアルは組織だけでなく、個人にも必要でしょう。マニュアルに沿った仕事をすると受け身になるといわれますが、それは他人がつくったマニュアルをそのままなぞっているからです。自分のマニュアルをつくれば、自分の仕事を俯瞰できるので、問題点や課題を見つけられます。自分で問題点を発見し、それを改善し、実行する。自分のPDCAサイクルが回るようになれば、確実に生産性は向上します。おそらく、多くの人は自分なりの仕事の仕方を築いているはずです。部課長レベルになると、ベテランなりの経験知が蓄積されているでしょう。しかし、ベテランだからこそ仕事を流れ作業のようにこなしてしまい、成長が止まってしまうリスクがあります。ルーティンワークはどのような仕事にも付きものですが、漫然とこなしていると気が緩んでしまい、大きなトラブルを招きます。医療の現場では〝ヒヤリ・ハット〟が多発しているといわれています。毎日同じ患者さんに同じ薬を投与していたので分量が変わった時に気付くのが遅れた、手術中に必要な器具がそろっていないのに気付いたなど、一歩間違えば大惨事になるようなケースが日常的に起きているようです。ヒヤリ・ハットの多くは、ルーティンワークや慣れから生じるケースが多いでしょう。どんな危険な現場であっても、毎日同じ作業を繰り返していると、人の感覚は麻痺するものなのです。ピアノやギターの弦は放っておくと緩んでしまいます。それを防ぐために、定期的に調

律や調弦をして一定の張りを保たなければなりません。仕事でも緊張感を保つためには、調整が必要です。ルーティンワークこそマニュアルをつくることで、常に精度の高い仕事を実現し、モチベーションも維持できるでしょう。そうすれば、常に仕事を最新版にアップデートすることが可能になるのです。

「自分のMUJIGRAM」をつくろうさて、それではどのように自分のマニュアルをつくればいいのか、実践してみましょう。たとえば、毎朝部署で朝礼を行っているのなら、その内容を書き出してみます。①全員で挨拶する②連絡事項を伝える③当番の社員が一分間スピーチをする④企業の理念を唱和する企業によってはラジオ体操をしたり、社歌を歌うところもあると思います。朝礼は毎日やっているとどうしてもマンネリになってしまい、あくび交じりにダラダラと出席している人もいるはずです。そんな朝礼を続けていると、「連絡事項は、メーリングリストで送信したほうが、効率的ではないですか?」との指摘があるかもしれません。こういう場面で、「なぜ朝礼をしなければいけないのか」をきちんと説明できるでしょうか。説明できないのであれば、自分自身も惰性でやっている証拠です。何のためにやっているのかを確認するためにも、マニュアルづくりは役立ちます。それでは、朝礼のマニュアルを、MUJIGRAM流につくったらどうなるでしょうか。「朝礼」とは何:始業前に社員で集まり、挨拶や連絡をする行事なぜ:部署内の社員同士でコミュニケーションをとるためいつ:毎朝一〇分間誰が:全社員この「なぜ」のところは、社員の士気を高めるため、基本的なビジネスマナーを学ぶためなど、その企業での目的によって変わるでしょう。それから、この目的に沿って、朝礼のメニューを見直してみます。

■全員で挨拶する挨拶はコミュニケーションの基本である・「おはようございます、今日もよろしくお願いいたします」とハッキリ発音する・お腹から声を出す・笑顔で挨拶をする・お辞儀をするときは四五度の角度で、両手は前で組む・人の話を聞くときは顔を上げる、背筋を伸ばす*下を向いている、声が小さい、姿勢が悪い、あくびをしている人は、その場で注意■連絡事項を伝える①上司から部下に伝えておくべきことを伝える・今週の目標・先週の目標の達成度・前日の会議で決まったこと・他の部署からの連絡事項・取引先からクレームがあった場合は、その報告②部下からの連絡があれば聞くここで、朝礼の「コミュニケーションをとる」という目的が、この方法で実現できているのか、チェックしてみます。挨拶はいいでしょう。連絡事項を伝える項目はどうでしょうか。これでは一方的に上司が伝えるだけになっていると思うのであれば、どうすれば双方向のコミュニケーションをとれるのか、他の方法を考えます。まずは部下に現在抱えている仕事の進捗状況を報告してもらい、それについて上司が意見を述べるのなら、コミュニケーションはとれるでしょう。あるいは、部下に今日一日の仕事のスケジュールを報告してもらい、抜けがあったら指摘する、という方法でも意思の疎通は図れるかもしれません。このように、マニュアルをつくると、今の仕事のやり方で仕事の本質から外れていないかどうかを確認できるのです。朝礼のように習慣化している業務ほど、マニュアルをつくると、問題点や改善点が見えやすくなります。ただ何となくやっている日常の業務の目的を再確認したら、とるべき行動は変わるでしょう。仕事はそのように発見と改善の繰り返しで、常にアップデートできるのです。

「上手なコミュニケーション」もマニュアル化できる?マニュアルは作業ごとにつくるという方法もあれば、目的別につくる方法もあるでしょう。部下に指導するとき、上司と接するとき、取引先と交渉するときなど、マニュアルをつくっておくとコミュニケーションを円滑にする手助けとなるかもしれません。もちろん相手は人なのでマニュアル通りにうまくいくとは限らないのですが、基本があると応用しやすくなります。自分なりの接客マニュアルのようなつもりで考えてみてください。ここでは、一例として「部下に注意をする」マニュアルをつくってみましょう。「部下に注意をする」とは何:部下のミスやトラブルを是正する行為なぜ:部下にミスやトラブルの原因を認識させ、反省してもらうことで成長を促すいつ:部下がミスやトラブルを起こした時誰が:自分■部下に注意をするための準備・注意するときはなるべく二人きりのときを選ぶ・会議室など、別室で話すのが望ましい■注意するときの態度・腕や足を組まない・何か作業をしながらではなく、部下と向かい合う・相手が立っているときは立ち、座っているときは座る・感情的にならない。感情的になりそうなときは深呼吸したり、いったん席を外して気持ちを落ち着ける■注意するときの手順①まず部下の話を聞く・自分が注意をする前に、本人に説明させる

例:同じミスを繰り返す部下に対して「最近、ミスが多いようだけど、何かあったのか」と説明を促す・部下が話をしているときは途中で遮らず、最後まで聞く・相槌を打ちながら聞くと、相手は話しやすい②自分がそのミスやトラブルに対してどう感じたかを伝える・自分を主語にしてどう感じたかを伝える例:僕は君に期待していたから、残念に思っている・頭ごなしに叱らない〈注意するときのNGワード〉×真剣さが足りないんじゃない?×何度同じことを言わせるんだ×もっとできると思ってたんだけど③相手がどう思っているか尋ねる・「君はどう思うか」「なぜそうなったと思うか」と相手の考えを聞き出す・相手の答えがどうであっても、批判はしない。ただ受け止める④どう改善すべきか、部下に考えさせる・自分からは解決策を言わない。自分で言ってしまったら、部下は自分の力で解決しようとしなくなる・その場で改善策が出てこないなら、「考えておいて」と保留にする部下とうまくコミュニケーションを取れていない人は、こうしたことを考えるだけで心が乱れそうですが、マニュアルをつくれば自分のストレスを減らす一助となります。感情的に怒るのではなく、この流れに沿って話を進めるようにすれば、問題はこじれずにすむでしょう。そして、うまくいかなかったら、投げかける言葉を変えてみるなど、ほかの方法を考えてみるのです。NGワードやおすすめワードなど、自分の独自のポイントやコツなども書き込むと血の通ったマニュアルになります。新入社員とベテランの部下とで対応を分けてもいいかもしれません。マニュアル化していないだけで、実際には、このような対処法は誰でも持っているはずです。明文化したほうがいいのは、こうすることで、普段の自分の行動を振り返れるからです。

部下の話を聞かずに叱ってばかりの人は、叱り方を考える前に、手順を考えてみると自分の指導に問題があると気づくかもしれません。つくる段階で問題を発見できるのが、マニュアルの効用なのです。

家事だって「基本」があると「応用」しやすい無印良品は、『「働きがいのある会社」ランキング』で二〇一一年から三年連続で二五位以内にランクインしています。採用の際は男女での人数の枠は設けず、能力のある人を採用していますし、出産や育児、介護などに関する制度も早い段階で整備しています。それが評価されているのでしょう。日本経済は長らく低迷を続け、結婚後も女性が働かざるを得ない状況になりました。共働きの家庭で必ずと言っていいほど問題になるのが、家事の分担でしょう。とくにお子さんが小さいときは、育児に関する家事もあるので大変です。そのような家庭でマニュアルをつくってみるのはいかがでしょうか。冗談のように聞こえますか?それでも、こうしたことを疎かにしてはいけません。仕事以外にも、「基本」を整えておくとその後の「応用」が円滑になることはいくらでもあるはずです。例のように「家事のマニュアル」は、女性は必要ないと思う人が多いかもしれませんが、男性にとってはありがたいテキストになるはずです。奥さんから「洗濯をしておいて」「掃除をしておいて」といわれても、洗剤は何を使うのか、どれぐらい使うのか、ハンガーはどこにあるのかなど、旦那さんは基本的なことがまったくわからず、右往左往するということもあるでしょう。分担を巡ってケンカになり、ストレスをためるぐらいなら、マニュアルをつくって誰でもその作業をできるようにしておけば、いざこざもなくなるのではないかと思います。「洗濯」とは何:家族の着た洋服を洗濯機で洗う家事なぜ:家族に清潔な洋服を着てもらうためいつ:毎朝または毎晩誰が:月、水、金は○△、火、木、土、日は○△このように「洗濯とは何か」をはっきりさせてから、「洗濯の手順」を考えます。ただ「洗う」と表記するのではなく、「シャツ類は色物と白いものを分ける(色移り防止のため)」など注意すべき点を挙げると、迷うことなくスムーズに作業できます。

マニュアルをつくりながら、「洗濯機で洗濯をする」という作業ひとつで、いろいろな工程があるのだということもわかります。洗濯物を干す段階になると、別のマニュアルが必要かもしれません。普段、奥さんが何も考えずにやっている作業でも、旦那さんにとっては未知の作業です。ここまで具体的な指示を出さないと、望んだとおりの結果にはならないのです。このMUJIGRAMは夫婦だけではなく、お子さんも家事を手伝う時の参考にできます。家庭用のMUJIGRAMですので、家族でワイワイと話し合いながらつくるのをお勧めします。そして、MUJIGRAMは更新していくものです。今まで一人でやっていた作業を複数でやるようになると、「洗濯物はこういう分類のほうがいいのでは」など、新たな視点が加わるでしょう。お子さんの成長によっても変わるかもしれません。それをもとに家族で話し合い、ベストな方法を考えていけばいいのです。たかが洗濯と思うかもしれませんが、スティーブ・ジョブズは洗濯機を購入するときに家族で数週間話し合って決めたというエピソードがあります。ヨーロッパ製を買うか、アメリカ製がいいのかを、毎晩夕食のときに議論して、最終的にはヨーロッパ製を選んだそうです。家事も見方を変えると、家族を結ぶコミュニケーションの場にできるのです。

利益を出し続ける原動力としての「マニュアル」「初心忘れるべからず」という言葉があります。この言葉ほど、実行するのが難しい行動はないでしょう。私は食べるのも飲むのも好きなので、油断をしていると体重がかなり増えてしまいます。多いときは八四キロぐらいまで増えてしまい、健康診断で脂肪が多くて血液が濁っているという結果が出たこともありました。そうなると危機感を持ち、早朝にランニングやウオーキングに出かけるようになります。仕事柄、会食が多いので、週二~三日は夕食を野菜サラダだけの粗食にしたり、抜く場合もあります。食事を抜くのも最初はつらいのですが、三カ月も続けていると胃が小さくなり、心地よい空腹感を保てるようになります。そして体重を一三キロぐらい落とすと、身体も軽くなり、健康診断も人間ドックも問題なく通るので安心します。しかし、そのうち油断が生まれて元の生活に戻り、三年ぐらい経つと徐々に体重が増え始め、気が付くと一〇年後にはまた八〇キロ台になっているのです。このサイクルを、三〇代、四〇代、五〇代と、一〇年周期で繰り返しました。この健康(体重)管理には、企業(仕事)の管理と共通点があります。本書では無印良品で取り組んできた、さまざまな仕組みづくりについて紹介してきました。しかし、どのような仕組みであっても一〇年は持たないのです。企業にいいサイクルを生み出す仕組みであっても、時代の変化と共に劣化していくものです。だからMUJIGRAMも永遠に更新し続けないと、いつか血の通わないマニュアルとなり、また棚の隅で埃をかぶって置かれる状態になるでしょう。私は無印良品の集会などで、本書でお話ししてきたことを、社員に向けても繰り返し伝えています。ところが、一カ月ぐらいしてから尋ねると、九八%ぐらいの人が覚えていません。それは社員のやる気がないという話ではなく、人間とはそもそもそういうものなのです。人はすぐに忘れるものであり、改善してもすぐに元に戻ります。放漫経営で会社が傾きかけ、プロの事業再生屋の力も借りて必死で会社を立て直したものの、経営が安定してくるとまた余計なことに手を出すような中小企業の経営者は大勢います。「喉元すぎれば熱さを忘れる」ということわざもあるように、人は辛い体験や苦しい記憶には背を向けたくなるものなのです。いつも気持ちをリセットして初心を思い出すためには、実行し続けるしかありません。だから私もしつこいぐらいに仕組みをつくってきたのであり、これからもつくっていくで

しょう。自分のマニュアルをつくったり、部署内の仕組みをつくったりしても、それで終わりではなく、そこからがスタートです。常に問題の芽を摘みつつ実践を積み重ねていると、仕事の仕方も洗練されていきます。うまくいかないことがあるのは当たり前ですし、なかなか結果に結びつかないこともあります。それでも問題から目をそらさずに考え続け、行動している限り、必ず自分も進化していきます。いいマニュアルは、そうやって走り続けるための原動力となるのです。

おわりに

あせらず、くさらず、おごらず莫煩悩──これは社長になったばかりのころに、手帳に書き留めた言葉です。鎌倉時代の幕府の執権・北条時宗は、モンゴル帝国に侵攻されるという、いわゆる元寇に悩まされていました。二度目の元寇の前、建長寺を訪ねて無学祖元に教えを請うたとき、祖元は紙に「莫煩悩」と書いて時宗に渡したといわれています。煩悩するなかれ。迷わず悩まず、ただ一心に目の前のことに取り組みなさい。私は、この言葉からそう教えられました。リーダーが改革を実行するとき、必ずさまざまな障害が立ちふさがります。部下からの抵抗であったり、コスト的な問題であったり、あるいは株主からの反対だったり。壁が立ちふさがっても、そこで後退することはリーダーには許されません。自分の考えた戦略を信じて、やり抜くしかないのです。「部下をうまく指導できない」「自分の抱えるチームでなかなか結果を出せない」という苦境に陥っている人も少なくないでしょう。私は、逆境こそ宝物だと考えています。私自身、順調に物事が進んでいるときより、逆境におかれたときのほうが自分は成長できたと感じています。もともと私が西友から無印良品に出向となったのは、左遷でした。私は西友にいたとき、上司の顔色を窺いながら仕事を進めるタイプではありませんでした。いつも主流派にはいなくて、集団の端っこで自分のペースで仕事をしていたので、上司たちからは煙たがられていました。おそらく、それが左遷の原因ではないかと思います。当時、無印良品は西友が母体であり、その中で展開するショップという位置づけでした。無印良品に移ることが決まったときは、正直ショックでしたが、与えられた場で全力を尽くさないのは、さらに耐え難いという性格でした。無印良品に異動してからは総務人事部の課長となります。課題は山積みだったので取り組み、結果を残そうとしてきました。そうこうしているうちに評価されるようになり、ステップアップしていったのです。私が新入社員の入社式でよく話すのは、

「あせらず、くさらず、おごらず」という三つの心構えが重要だという話です。これは新入社員に限らず、誰にとっても大事な心構えでしょう。この三つを実践していればチャンスは残りますが、もし実行しなければチャンスはなくなります。人間万事塞翁が馬ということわざもあるように、どのように現状が変わっていくのかはわからないものです。今は人生のどん底にいるような気がしても、いつか好転するかもしれません。調子がよいときも悪いときも、自分を磨くチャンスなのだと思い、くさらずに目の前のやるべきことをコツコツとやる、それも結果を残すようにやり続けるしかないのです。そして管理職に就くと途端におごり高ぶり、部下を自分の手先のように使う人は実に大勢います。部下の功績を自分の手柄のようにアピールする管理職もいますが、そういう人に部下はついていきません。結果的には、部下の管理ができないとみなされ、降格となるのもよくある話です。リーダーは自分が率先して、頑張って目標を達成するのがすべてではないはずです。部下が率先して行動するような仕組みをつくり、部下の意識を変えていくのが、リーダーに課せられた使命です。組織にとっても、「あせらず、くさらず、おごらず」という理念は大切です。だからこそマニュアルをつくり、絶望やおごりを回避するのです。逆境はやがて道を拓きます。改革は一朝一夕ではできませんが、あせらず、くさらず、おごらずに進み続けていれば、いつか自分の信じる道へとつながっていくでしょう。(了)

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