第2章弱者のための代表的戦略「地域戦略」
①ランチェスターの「地域戦略」とは?
地域戦略が必要とされる背景には、現在の企業間競争において、この戦略が、弱者でも勝利できて差別化もできる、唯一無二の戦略だという事実があります。
今は、顧客に近い最前線の営業所や店舗にこの戦略が求められ、「顧客に近い=地域に密着している」ことから、競合他社と差別化して企業がターゲットとする地域を制圧するためにも、その地域を細分化し、その中でのナンバーワンの地位・シェアをつくり上げていこうとする考えで戦略が必要なのです。
地域戦略におけるポイントには、以下の3つがあります。
- 地域を細分化し、ターゲットとする地域を集中する
- 地域ごとに一様性がないため、その地域ごとの特性に合わせていく
- 営業活動(営業員や物流など)の生産性・効率性を重視する
以上の理由から、ランチェスター地域戦略とは、地域の特性や事情をもとに対応した地域別の戦略であり、地域において差別化できる戦略といえるのです。
②地域戦略の基本原理
地域戦略における基本的な考え方には、
- 細分化する
- 集中化する
という2つのポイントがあります。
地域戦略の基本をよく示す江戸時代の民話に「対馬での猪退治」というものがあります。
まず、99ページ〔*こちらを参照〕の図を見ていただきたいのですが、このストーリーには、地域戦略の基本原理である以下のようなポイントが入っています。
- 地域を細かく分けて対応するという、セグメンテーションの戦略
- 周辺のいくつかの点を押さえ、周囲から真ん中に向かうという地域攻略のノウハウ
- 団子の串刺し的に隣から隣へと移動していくのではないという戦略
この事例からわかるとおり、ランチェスター地域戦略の基本方針は、ナンバーワンの地域をつくるうえで地域を細分化し、優先順位をつけて一つひとつ集中して攻撃(営業)して、その地域を一つひとつナンバーワン化していくということです。
ランチェスター地域戦略における地域は行政区分で考えがちですが、行政区分で細分化するのではなく、
- 山や川などの地域的要素
- 道路や線路などの分断要素
- 人口の移動や今後の地域開発計画などで影響する地域
で区分していきます。
県境や市境などの行政区分で区切ってしまうと地域を誤って認識してしまうので注意しましょう。
なお、29ページ〔*こちらを参照〕の図では、便宜的に行政区分の地図を使い、また108ページ〔*こちらを参照〕の説明では、まず行政区画を使用していますが、その後で、自社の状況・戦略に応じて線を引き直すのも現実的な方法です。
また、地域を集中して攻撃するということは、経営資源(ヒト・モノ・カネ)が足りない弱者でも勝てるということになります。
③地域戦略が重視される背景
ではなぜ、地域戦略が重視されるのでしょうか?そのポイントは3つあります。
1つ目は、地域ならば差別化も重点化もできるということ。
つまり、地域戦略こそ差別化の最後の切り札であり、経営資源が限られた弱者でもナンバーワンになれる、ナンバーワンになるための原点なのです。
2つ目は、地域によって特性が異なるということです。
地域の特性とは、次のように分類されます。
①気候・風土・風習・県民性・消費購買特性
②農業・工業・商業・ベッドタウン・業務地区などの産業構造
③うちもの地区とよそもの地区
④高シェア地区と低シェア地区
⑤需要の伸びのバラつき
こういった地域の特性により、強者の地域、弱者の地域とは異なるケースも出てきますし、需要と供給のバランスを考えて販売戦略も変えていかなければなりません。
このように、地域の特性とは地域上の体質の違いだけでなく、需給バランスや競合他社との関係の違いなども含めて広く捉えることが必要です。
3つ目に、企業間競争が生産性を高める戦いである以上、効率を上げるためには地域の重点化がもっとも効率的だということです。
企業が営業活動を行なううえで、1時間以上も移動に費やすことがある場合、時間的なロスが生じます。そのようなロスが発生しないよう、1時間でまわれる範囲を重点営業地域としたほうが効率よく営業活動が行なえます。
これを実践している企業に、セブン‐イレブンがあります。セブン‐イレブンは、出店戦略としてドミナント戦略をとっていますが、これは、商品配送などの物流面や、競合参入を阻止しようとする店舗網、店舗経営指導員の営業活動を効率化するためです。
以上の3つのポイントからも、地域戦略が重要になっているのです。
④地域戦略の目標と5原則
「こんなに走りまわっているのに、ぜんぜん売り上げが伸びない」「こんなに広い営業エリアなのに、お客様が集まってこない」あなたの会社(店舗)では、このような悩みはありませんか?同じエリアには、たくさんの競争相手がいます。
営業エリアを広げすぎると、競争に負けて同業他社に顧客を奪われる状態が続きます。営業エリアを限定し、集中的に顧客をつくりましょう。増客の効率が上がります。
地域戦略の目標は、細分化された地区の中で、ナンバーワン地区を1つでも多くつくっていき、最終的に、販売地域全体においてナンバーワンになることです。
そのため地域戦略では、次のような5つの原則があります。
それぞれ説明しましょう。
- 一点集中の原則:「1位になれる重点エリアを決めよう」
- 足下の敵攻撃の原則:「ライバルを絞り込もう」
- 地盤強化の原則:「まず地元をしっかり固めよう」
- ナンバーワンキープの原則:「大口顧客やリーダー格顧客を確保しよう」
- 固定化の原則:「離脱客をなくす、フ・ニ・イ・キ作戦の展開を」
ナンバーワンエリアをつくる5原則――①一点集中の原則「1位になれる重点エリアを決めよう」
苦戦している企業は集中化に欠ける傾向があります。これは、力が分散しているからです。たとえば「○○地区限定」「○○専門店」は、一点集中の絞り込みがある企業や店舗です。
経営効率を上げるには、このように営業エリアや市場を限定し、集中的に顧客をつくることが重要なのです。その手順は、「細分化」「重点化」「集中化」。
細分化した地区の中で重点地区を決め、その地区に対して集中攻撃をかけます。まずは、一点集中のために細分化です。
地域で分けると、県・市町村・町丁目・学校区・道路・沿線などで細分化できます(重点市場の発見には、地域だけではなく顧客層~年齢・性別・職業・年収・ライフスタイル・業種・規模別などの細分化もある)。
次に、重点化です。成長性や競合状況を考え、ナンバーワンになれるエリアの絞り込みをします。競合他社が2人の営業員を投入しているのであれば、少なくとも3人以上の営業員が必要です。その力の量は、3倍や1・7()倍(81ページ〔*こちらを参照〕)。これが、集中化です。
ナンバーワンエリアをつくる5原則――②足下の敵攻撃の原則「ライバルを絞り込もう」
戦争と企業間競争の違いは、企業の競争にはライバルが多いということです。その数ある敵の中で、どの敵と戦うかは戦略上の重要なポイント。
とくに、弱者が戦いに勝つには「足下の敵攻撃の原則」にのっとり、自社よりもシェアの低い企業を攻撃目標とすることが大切です。
・競争目標:頭上の敵(自社と同等か、自社より1つ上のライバル)
・攻撃目標:足下の敵(自社より1つ下のライバル)
競争目標と攻撃目標は、市場ごとに分けること。
たとえば自社が業界2位の場合、競争目標は頭上である敵の1位のA社、攻撃目標は足下の敵、3位のC社です(前ページ図)。
しかし、全社スパンにおける競争目標と攻撃目標が、ある支店や店舗では違っているという場合が多くあります。
細分化された地域における自社の地位は、全社のそれと同じではありません。
たとえばビール業界において、札幌では1位だが全国では3位という場合、足下の敵を見誤らないことが肝心です。
「勝ちやすきに勝て」が、戦略となるのです。
ナンバーワンエリアをつくる5原則――③地盤強化の原則「まず地元をしっかり固めよう」
「近い」とは、それだけで差別化になります。あなたの会社(店舗)では、「向こう三軒」が顧客になっていますか?テリトリー全体でナンバーワンになるには、まず地元を固めなければなりません。これを「地盤強化の原則」といいます。
地盤というのは、本社周辺、支店周辺、あるいは営業所周辺、店舗周辺のことをいいますが、メーカーであれば工場周辺も地盤となります。
たとえば、トヨタのシェアがもっとも高いのは地元の愛知県ですが、これは、自社関連の事業所が多いことと、協力工場が集中していることが大きな要因です。
このように考えると、店舗や関連施設、営業所をどこに置くかが、戦略上のポイントとなります。地域攻略の前進拠点を格上地区に置くことができれば、その地域における自社の基盤は強くもなるのです。
しかし、同業が多数いるエリアより、競争の少ないエリアを選ぶのも戦略となります。
ナンバーワンエリアをつくる5原則――④ナンバーワンキープの原則「大口顧客やリーダー格顧客を確保しよう」
成熟した社会・業界になると、顧客は上位に集中します。すなわち、10社あれば上位3社に7割くらい需要が集まる大口顧客です。
ナンバーワンを目指すには、これら地域最大の顧客との取引を強化していくことがポイントとなります。あなたの会社では、地域のリーダー的顧客を攻略しているでしょうか?そのリーダー的大口顧客を攻略するには、次の2点が重要です。
①三層営業を徹底する
自社の幹部・上司・担当者と、相手先の幹部・上司・担当窓口との定期的な面談。
②未取引先は、四回訪問の原則(193ページ〔*こちらを参照〕)で新規開拓する
挨拶訪問・情報収集訪問・仮提案訪問・本提案訪問の4回で、見込み客をつくる。
次に、ナンバーワン顧客づくりです。ナンバーワン顧客とは、顧客内シェアが1位であり、さらに2位を3倍以上引き離している顧客です。
あなたの会社では何軒キープしていますか?しかし、顧客内シェアが100%ではかえって危険性が高まります。なぜなら、適度な競争状態にあったほうが、自分の会社の良さがわかりやすくなり、選んでもらえるからです。
ナンバーワンエリアをつくる5原則――⑤固定化の原則「離脱客をなくす、フ・ニ・イ・キ作戦の展開を」
顧客には、既存客・離脱客・休眠客・新規客・見込み客という5種類があります。この中で客数減にもっとも影響を与えるのが「離脱客」です。
あなたの会社(店舗)では、1年間に何人くらい客離れが発生していますか?離脱客は、多いところで年間40%も発生しているところがあります(飲食店平均で20%)。
戦略というと、基本的には攻めが中心となりがちですが、守りも非常に重要です。現在取引中の顧客が継続して会社の顧客となるよう、守りも固めなければなりません。
そのためには、「顧客管理」と「マイナスのお客様対応」を見直すべきです。
〔フ〕:顧客に不便をかけているところを、洗い出し改善する
〔ニ〕:顧客に二度手間をかけているところを、洗い出し改善する
〔イ〕:顧客にいやな思いをさせているところを、洗い出し改善する
〔キ〕:顧客に嫌われているところを、洗い出し改善する
挨拶をしない、目を見ないで話をする、品物のやり取りなどは1回ですまない……など、挙げたらきりがありません。既存客が固定客として繰り返し取引が続く関係をつくりたいものです。
⑤商圏戦略の方法
商圏戦略では、自社の商圏の形や大きさを把握するのが前提です。商圏がわからないと、競合他社も確定できませんし、チラシの配布地域やポスティングする地域も間違ってしまいます。
マップを使い、まず自社の商圏を知ることが必要です。商圏の形成は、地形・歴史・交通・メディア・人口移動・行政区分・学区などが大きく影響しています。
また、店舗型の商圏やメーカー・卸ビジネスのテリトリーは都市圏の影響下にあるともいわれ、時間軸によって大きく6つに分けられます。
〔最寄圏〕:徒歩で買い物ができる範囲の2キロ圏、15分前後の距離〔買回圏〕:バスや電車で15分の範囲にあり、10キロ圏で目的買いをする圏内〔通勤圏〕:バスや電車で1時間以内で、30キロ圏〔ドライブ圏〕:50、、〔トラック圏〕:70。〔工場立地圏〕:70
あなたの会社では、どのあたりまでを自社のテリトリーと考え、商圏をつかんでいるでしょうか?店舗型ビジネスの「商圏戦略」店舗型ビジネスの商圏では時間を重視します。
たとえば、人の足で歩ける距離は、1分間に60メートルから90メートルです。
店舗型は、時間軸の影響を受けます。
次の、1次商圏・2次商圏・3次商圏は、前述の最寄商圏や買回商圏で活用され、顧客分布や競合店を把握するのに使います。
〔1次商圏〕:確定商圏。
アプローチさえすれば来てもらえる確率の高いエリア。日常の売り上げをつくってくれる顧客の居住地。頻度客が多い。名簿率30%が目標
〔2次商圏〕:売上商圏。
この商圏から売上シェアを算出する。確定商圏を少しでも広めるための、通常の販促商圏。売り上げを確保するために設定する商圏
〔3次商圏〕:最大商圏。
来店してもらえる確率のある商圏。2次商圏拡大のための、年に1、2回はチラシを投入するエリア
さらに、顧客を地図にプロットしていくと顧客マップができ、いろいろなことがわかってきます。たとえば、「北側に顧客が多くて、南側には少ない」というようなことです。
ダメな会社ほど、商圏やテリトリーをつかんでいないことが多いものです。
メーカー・卸売ビジネスの「テリトリー戦略」「地域情報はマップ化、グラフ化せよ」
地域戦略は、テリトリー全体でナンバーワンになるための戦略です。狭い日本といえども、各地域には地域特性があり、画一的な戦略では機能しません。
支社や支店、営業所などで、それぞれの地域特性にあった戦略を立案展開するのが望ましいでしょう(特性・市場構造・市場体質については次項で解説)。
効果的な地域戦略を展開するには、年齢人口やその動向、地域の歴史、県民性、産業構造や業界という地域の特性をまず、つかむべきです。
たとえば、若者人口が多い地域と高齢者人口が多い地域では、売れるものが違ってきます。同じ県内でも、漁業地域では金銭感覚が大雑把です。
農業地域では保守的傾向が強く、公務員の多い県庁所在地ではブランド志向が強いのです。地域ナンバーワンになるためにはステップがあります。
ここまでのことをまとめてみます。
〔現状把握と細分化〕:顧客の多さ・広さと市場チェック→〔エリア特性分析〕:細分化した地域の特性把握→〔重点エリア決定〕:攻略する地域の決定地域情報は、マップ化やグラフ化で見えないものが見えてくるのです。
⑥地域戦略のためのノウハウ
①七三構造地域は、需要が集中する地域と、分散する地域とに分かれます。そして、それら地域の区分としては、需要の7割が集中する地域と、3割が分散する地域になります。
強者は、需要の7割が集中する地域で勝てなければなりません。それは、需要が集中している地域でシェアが確保できなければシェアアップすることがないからです。
そのため、強者は強者の戦略である、広域戦・確率戦・総合主義で戦っていきます。一方、弱者は分散されている3割の地域で勝てば生き残ることができます。
強者の参入が後まわしになるため、そのエリア内の一部でナンバーワンになれば安定して生き残れるからです。したがって、弱者の戦略は局地戦・接近戦・一騎討ち戦で戦っていくことになります。
②死角・盲点死角とは、ランチェスター地域戦略においては弱者が勝つための地域になります。
地域戦略における常とう手段は「勝ちやすきに勝つ」ことですが、弱者にとって、この「勝ちやすきに勝つ」地域は狙い目です。
そのような地域は、強者の目が届かず後まわしになる地域を指します。それが死角です。具体的には、以下のような地域が死角に該当します。
・幹線道路・鉄道から離れている地域
・島、半島、盆地、ポツンと離れた港町
・川べりや山すそなど、いわゆる田舎やへんぴな場所
強者は、都市部の人口の集中している地域を狙います。それは、市場が大きくて売り上げ・利益が取りやすいからです。
しかし、そのような地域は競争も激しく、確率戦での戦いとなるので弱者には不向きです。ですから、弱者は競争が少なくてライバルとの局地戦や一騎討ち戦で戦いやすい死角を狙うべきなのです。
では、すでに都市部に参入している弱者の場合には、いったいどこを狙えばよいのでしょうか?都市部でも、強者の盲点はあります。
弱者ならば、そこに活路を見出すべきなのです。以下のような地域が、その盲点となります。
・県、市、区などの境目
・普通列車しか止まらない駅やその周辺
・1級河川、幹線道路、鉄道などによって分断されている孤島的な地域(デルタ地域)
・競合する強者の営業拠点から遠い地域
・2等立地
代表的な例としては、衣料品チェーン「しまむら」の出店戦略が参考になります。しまむらの本社は埼玉県さいたま市にありますが、店舗展開している立地は本社のあるさいたま市でも必ずしも1等立地ではなく、強者の死角や盲点の2等立地での出店が多く見受けられます。
さいたま市の中心部といえば大宮駅の周辺一帯となりますが、そういった中心部を避け、おもに住宅街や県道、市道などに立地してドミナントを形成しています。これは一見すると、自社競合によって互いに食い合いすることを考えがちです。
しかし、あくまでも自社の市場占有率を上げることでシェアを高めることを目的としており、局地戦に持ち込むのと同時に、顧客に近づくことでの接近戦が可能となっているのです。
これも、強者の盲点を突いた地域戦略上の差別化に当たるのです。
③市場構造市場は、商圏の広がりにおける他地域との連動性から、「点の市場」「線の市場」「面の市場」という3つの構造に区分されます。
・「点の市場」:島や盆地、半島、ポツンと離れた港町など、他地域と分断された、独立性の強い局地的で狭域な商圏
・「線の市場」:街道沿いや沿線、海岸線、河川流域など、線でつながっている線域商圏
・「面の市場」:大都市や平野部など、面的な広がりのある広域連動商圏そして、それぞれの市場のポイントととるべき戦略は、以下のとおりとなります。
・「点の市場」:弱者向け。戦略は局地戦・接近戦・一騎討ち戦・「線の市場」:弱者から強者へのステップアップ地域・「面の市場」:強者向け。
戦略は広域戦・確率戦・総合主義
④市場体質
市場体質とは、その地域に住む住民の気質により、「うちもの」市場と「よそもの」市場に分けることを指します。
- 「うちもの」市場:田舎、古い城下町、門前町、郡部、農村部など、土着型で土着型の人の出入りが少ない排他的な地域を指す
- 「よそもの」市場:新興住宅地や宿場町、港町など、人の出入りが多く開放的で、ある意味では他人に対して無関心な地域を指す
また、それぞれの地域の市場性=市場体質としては、次のようなことが言えます。
- 「うちもの」市場:参入しにくいが、参入を果たすとシェアは安定する
- 「よそもの」市場:参入しやすいものの、シェアは不安定で、競争が激化しやすい
市場参入に際しては、地域市場における以上のような体質をきちんと見分ける必要があります。
⑤市場攻略法ランチェスター地域戦略では、競争に勝ちやすい最重点地域を決めて攻略していきます。
中長期的には地域攻略のシナリオが必要になります。そのノウハウとしては、以下の4つの攻略法があります。
・三点攻略法
・西側拠点説
・北守南進論
・点・線・面の市場
このうち、地域攻略法における代表的な攻略法は、三点攻略法になります。三点攻略法は、地域戦略上でもっとも重要な地域攻略法なので、とくにとり上げて説明します。
どの地域においても、市場参入していくときにはもっとも攻略したい本命地域は必ずあります。その本命地域にいきなり参入すると、すでに参入している競合他社との競争になるので、弱者の場合は競争に敗れて撤退することもありえます。
そうではなく、本命地域を攻め入るのは最後にしておき、その地域を中心として、周囲を3つの点で囲うように包囲し、一つひとつ攻略していくという攻略法です。
1つのエリアを攻略して次に移る目安は、そのエリアで40%以上のシェアを取れるか否かが判断基準となります。シェアが40%に満たない状況で、次のエリアに参入してはいけません。あくまでもエリアのシェアを高めてから一つひとつ攻撃していくことを認識しましょう。
〈三点攻略法の手順〉
①自社にとって有利な地域(点の市場)を攻略し、シェア40%まで上げる↓
②本命地域を意識した地域を、第2の地域として攻撃する。
この地域は隣接する必要性はない。この地域もシェア40%以上にする。これで全体の20%ほどのシェアになる。点から線の市場が出来上がる↓
③本命地域を囲うように、第3の地域を同じようにシェア40%になるまで攻撃する。こうすることで、線の市場から面の市場が出来上がる。全体のシェアも30%くらいまでになる↓
④第1・2・3の拠点から、囲った本命地域に向けて物量戦をかけて全体のシェアが40%になるまで攻撃していく。
こうすることで、本命地域を含めて地域ナンバーワン化を実現することができるこれが、最初の点から線になり、面で押さえる三点攻略法になります。
名称は三点攻略法としていますが、別に3点にこだわる必要性はなく、4点・5点でもよいのです。このように、地域を中長期的に見て攻略していくシナリオ=戦略が必要なのです。
⑦シェアアップ戦略の立案(重点エリアの設定プロセス)
ランチェスター地域戦略では、エリア全体でナンバーワンになるのが最終目標です。すでにエリア全体で1位となっている強者にとっては、この目標の実現可能性は高いでしょう。しかし、2位以下の弱者にとっては簡単なことではありません。
では、弱者はいったいどうすればよいのでしょうか?ランチェスター地域戦略では、地域を細分化して小さなエリアを特定し、ナンバーワンを1つずつ重ねることを実践します。
そのためには、ナンバーワンになりやすい重点エリアを選定しなければなりませんが、感覚で重点エリアを選ぶわけにはいきません。戦略の立案には情報が欠かせません。
まず、データを集めて分析・意思決定し、行動を起こしましょう。
〔ステップ1〕:、
〔ステップ2〕:、
〔ステップ3〕:、
それではこれらをどのように推進していくのか、具体的に説明してみましょう。
*【ステップ1】自社の商圏分析:顧客・自社・競合他社からおおよそのシェアをつかむ戦略立案で重要な情報は、販売情報と地域情報の2つです。このうち販売情報とは、おもに競合他社に対する情報をいいます。
これには、同一地域における全顧客数、商品別総需要、メーカー別、卸別シェア、セールス数などのほか、数値ではあらわせない顧客情報や競合他社情報などがあります。
一方、地域情報は、人口や世帯数、商店数に所得、地域の風土や県民性などの情報です。エリアに圧倒的強者がいたとしても、その多くが女性向け商品である場合、男性向けでは勝てないかなど、情報を細分化すれば勝機を見つけることができます。
【ステップ2】顧客マップ作成で商圏を再編成する:テリトリーを見直すエリア情報を調べたら、それを地図に落とし込みます。エリアの地図を準備して顧客をプロットします。
たとえば、顧客内で自社が1位は青・2位は黄・3位は緑のシールを貼り、顧客の大小・ライバルの強弱を一目でわかるようにします。
顧客の分布はどうか、自社地盤は強化されているかなどを地図にすると、さまざまなことが見えてきます。重要なことは、弱者は上位他社のエリアと一致させないことです。
【ステップ3】自社商圏の細分化と重点エリアの設定をする:どこに第1点を打つか?自社商圏・テリトリーがつかめたら、地域を細分化して攻撃すべき重点エリアの絞り込みをします。これは10カ所以内程度を目安に区分します。
次に、各エリアにおける市場規模を割り出します。需要が集中しているエリアと分散しているエリアがあるために、市場規模の差が大きく出るケースがあります。
この場合には、市場規模が大きいエリアは2分割する、小さいエリアは2つを1つにまとめるなどの平準化によって調整をします。
その差は数倍以内が目安です。このようにしてエリアを細分化したら、次は自社重点エリアの絞り込みをします。
強者の場合は、成長性の高いエリアや県庁所在地、地域内最大の都市など、代表性のある地域を選びます。弱者の場合は、「ナンバーワンになりやすいエリア」を選びます。
この際には、もっともシェアの高いところ、上位との差がもっとも少なくて逆転しやすいところ(上・下ライバルとの差、点の市場・うちもの地域を考え)を選びます。
Column事例10
地域戦略・一点集中――株式会社諏訪商店――諏訪商店は、千葉県にこだわった特産品を中心に販売する「房の駅」を県内に6店舗展開している。
小売業の苦戦が続く中「局地戦」を展開し、順調に業績を伸ばしてきた諏訪社長は、さらに3店舗を県内に出店する予定。
房の駅で扱う商品は安くはないが、蔵のような江戸時代風の造りを特徴とし、店内装飾などにもこだわることで買い物をしやすい雰囲気になっている。
また、県内各地の土産品から地場企業の醤油や味噌、自社開発の加工食品や菓子類、野菜など年間200品目の新商品が開発され、店頭に並ぶ食品はほとんどが試食できる。
房の駅の顧客は県内の人が8割を占め、自分の住んでいる地域以外の特産品を購入している。このように、リピーターが多く地元住民に愛されていることも好業績の大きな要因となっている。
Column事例11
ローラー調査で全数把握――某セミナールーム――過当競争下、後発にもかかわらず圧倒的な稼働率を誇るセミナールームがある。
その実践ポイントは、フィールド内での徹底した顧客・競合調査にあった。一件一件訪問するローラー調査がその基本作業となるが、このやり方も、業種などによってさまざまな手法がある。
このセミナールームは、まず自社が持つセミナールームの地域を細分化。競合がどこに存在し、そこはどんなサービスや料金体系で運営しているのか、また利用する顧客は誰か。これらの情報を徹底的に集めてきた。
具体的には、エリア内のセミナールームに赴き、その日に利用している企業名などをチェックしていった。そこにダイレクトにアプローチするので、これが非常に効果的なことは容易に想像できるだろう。これを実践することで、このセミナールームの稼働率は格段に上昇したのだ。
コメント