「問題解決」には二つのレベルがある毎日が問題解決の連続です。「これをなんとかしたい」「あれをなんとかしたい」という問題を解決することを、プライベートでも仕事でも、誰もが大なり小なり行なっていると思います。でも、なかには、問題を解決できずに困っている人も多いのではないでしょうか?何が問題か、わからない。あるいは解決策を実行してみたけれど、解決しなかった。そんなことで悩んでいる方もいるのではないでしょうか?まず、一つ覚えていただきたいのは、問題といっても、実は二つのレベルがあるということです。一つは、目の前で起きた困った問題を、そのまま解決することです。たとえば胃が痛い。だから痛み止めを飲む。そうすると痛みがとれる可能性が高まります。これは「対症療法的な」問題解決です。しかし、このような「問題解決」では、その瞬間痛みが止まっても、その根本原因が解決されなければ、痛みはまた出てくる可能性があります。もし、胃が痛い原因が日頃の暴飲暴食からくる胃壁のただれだったとしたら、身体にやさしい食事に変更し、胃壁のただれを改善できるような対応をすることが、胃の痛みをなくす根本的な解決策です。これが、二つめのレベルの真の「問題解決」です。あなたが直面している問題をどちらのレベルで解決するのかで、問題解決の精度は異なってくるのです。真の「問題解決」とは、ただ目の前にある問題に対して対症療法的になんとかする、ということではありません。もっと根本的に、問題を解決していくことです。それができなければ、結局同じことの繰り返しで、問題解決の意味がありません。つまり、問題は、その問題と同じレベルで解決しようとしても解決できないということです。「問題解決」には、ある一定の方法があります。この方法を身につけると、二つめのレベルである真の「問題解決」がムダなく的確にできるようになります。この本では、私がマッキンゼーにいた時に学んだことに、自分なりのやり方を加えた「問題解決」の方法を紹介していこうと思っています。問題はさまざまな要因がからみあって起きるものです。そうしたさまざまな要因をモラさず、何が本当の問題で、何が原因なのかを明らかにしていくためには、問題について深さと広がりをもって、考えていく必要があります。そのためには、マッキンゼーで学んだ①ロジックツリーや3Cなどのフレームワークを活用して、②MECE(ミーシー。モレなくダブりなく)に考えることで、真の問題を見い出すことができます。本書ではこうした方法を順に紹介していきます。さて、清古堂の真の問題は何なのでしょうか?このまま倒産するしかないのでしょうか?一緒に考えていきましょう。
1-1「問題解決」とは、何をすることかみなさんも「問題解決」という言葉はよく聞くと思いますが、「問題解決」って一体どんなことだと思いますか?一つ例で考えてみてください。同じチームのAさんのミスが多くて困っています。このままでは、他の人がAさんのミスをカバーしなくてはならず、チーム全体の効率も落ちます。さて、あなたならどうするでしょうか?よく出てくるのは、こんな答えです。「Aさんの仕事を誰かがチェックして、ミスを減らすようにする」これは一見、問題解決に見えます。でも、ダブルチェックをする人の仕事が増えてしまいます。そもそも、Aさんのミスを減らすことで目指したいのは、どんな状況でしょうか?それは単に「Aさんのミスをなくす」ということではないと思います。Aさんのミスをなくして、Aさんもみんなも仕事がはかどる状態にする、ということこそが、目指すべきゴールではないでしょうか。すると「真の問題」は、「どうしたら、チーム全体の効率を上げられるか」だということに気づきます。ミスが多いからミスを減らそうというのは、「コインの裏返し」と呼ばれる発想です。清古堂でも、売上が下がったから上げようという話をしていましたが、それでは、「何が本当の問題か」ということを飛ばしてしまっています。マンガでほまれが言っていたように、コインを裏返しただけでは、ほとんどの場合、根本的な解決にはなりません。「そもそも、なぜ売れないのか」という問題の原因を明確にすることで、やっと問題につながるのです。問題解決というのは、「真の問題」を見つけて、あるべき姿と現状のギャップを埋めることです。Aさんの例なら、Aさんもチーム全員も、負担なく効率よく正確に仕事をしている状態が本来あるべき姿です。いわば、ゴールイメージです。そのゴールイメージと現状のギャップを生み出していることが、「真の問題」になるのです。この「真の問題」を解決できずに、モグラたたきのように目の前の現象だけを片づけても、問題解決をしたことにはなりません。だからこそ、最初に何が私たちの解決すべき問題なのかを把握することが大事です。マッキンゼーでは、「真の問題」が見つかれば、十中八九、正しく問題解決はできると学びました。多くの人は問題が起きると、すぐにその解決策を見つけようとしますが、その前に、・あるべき姿の確認・何が問題なのかという問題設定(問題の把握)を明確にすることが大事なのです。
1―2「真の問題設定」がなければ、正しい解決策にたどりつかない的確な問題設定ができれば、正しい解決策が出てきます。たとえば、ある会社が「商品が売れない。もうこの市場からは撤退しよう」と決断したとします。でも、もし市場が問題なのではなくて売れる商品をつくっていなかったのが問題だったら、売れるいい商品をつくればいいわけであって、その市場から撤退する必要はないわけです。でも、「もうこの市場は駄目だよね」という間違った問題設定をしてしまうと、「もうこの商売はやめて、新しい商売をしよう」という、間違った解決策を導いてしまうことになるのです。インドの逸話で、ゾウと目の見えない7人の物語があります。目の見えない7人が旅をしていると、目の前に何かものすごく大きな障害物がありました。彼らは、それを取り除かないと旅を続けられません。でも目が見えないから、そっとそれに触ったわけです。ある人は足を触り、「これは大木なんじゃないか」と考えます。しっぽを触った人は、「これはひもでしょう」と言います。鼻を触った人は「これは大蛇だ」、耳を触った人は「大きな葉っぱだ」と、それぞれ別々のことを言います。このままだと、大木だと思った人は切ろうとするかもしれませんし、蛇だと思った人は蛇使いを呼んでくるかもしれません。でも、本当はゾウなんです。切ったり、蛇使いを連れてきたとしても、正しい解決策にはなりません。ゾウ使いを連れてくるか、ゾウの好きそうなリンゴやバナナを使って誘導するとか、そういう方法を考えないと、問題解決にはつながりません。この話でわかるのは、「的確に問題を把握しなければ駄目だ」ということです。ゾウを切ろうとするなんて、下手したら、怒ったゾウにつぶされて死んでしまうかもしれません。私たちの仕事のうえでも、似たようなことは、よく起こっています。このインドのゾウの逸話のように間違った問題を設定してしまうと、ムダなコストや労力が生じてしまいます。■「ゾウの問い」を自問自答するしたがって、そもそも、自分たちが取り組むべき問題は何かを明確にするということが大事です。これができれば、その時点で、仮の解決策(仮説)も適切なものが立てやすくなります。だから問題が発生したら、一番最初にすることは、発生した目の前の問題の解決策を考えることよりも、正しく問題を把握することなのです。問題に直面したら「私たちはゾウを把握したのか?」「私のゾウは何か」と自問自答してください。
1-3「問題解決」の流れ本書のストーリーで説明する「問題解決」は、図1-3のような流れになっています。
(STEP1)問題を整理し、構造化して「真の問題」を明確にする目の前で起こっていることを整理することで構造化し、「何が問題なのか(問題定義。あるべき姿の確認)」「その問題がどんな要因で起こっているのか(問題の構造)」が見えるようにします。清古堂では、当初「売上が落ちた」という現象だけを見ていましたが、それだけでは根本的な解決につながりません。コインの裏表的な解決策しか出てこないのです。そこで、清古堂では「なぜ売上が落ちたのか」という要因を、「ロジックツリー」で見える化して、「ヒット商品が開発できていない」という「真の問題」をつかみました。(STEP2)仮説(イシュー)を立てて解決策を分析する「真の問題」が見えてきたら、「何が最も重要な課題であるのか」という仮説(イシュー)を決めます。ロジックツリーを用いて問題の構造を見ていくと、さまざまな解決すべき問題が見えてきます。でも、それをすべて解決しようとしていては、時間が足りません。そこで、「最も本質的で解決のインパクトがありそうな課題」を見つけるのです。ここで使うのは「イシューツリー」というフレームワークです。「最も本質的で解決のインパクトがありそうな課題」を出発点に、それが正しいかどうかを「YES/NO」で検証し、すべてOKであれば、仮説は正しいとみなせるわけです。たとえば、「新商品を開発する」が本質的な課題だとすると、「新商品の開発で顧客は増えるのか」「商品開発をすることができるのか」などの要因に分けて、それぞれ、YESかNOかを判断しながら考えていきます。(STEP3)仮説を検証するSTEP2で立てた仮説を、今度はアンケートや聞き取り調査で検証していきます。実は、マッキンゼーではこの「原典に当たる」ところが重要視されています。(STEP4)実行する実行しながら、現場でさらに改善を加えます。このステップを念頭に、読んでみてくださいね。
1-4「MECE」でモレなく、ダブりなく!「問題解決」を考えるためには、いつでも「MECE」(MutuallyExclusiveandCollectivelyExhaustive)を意識します。「MECE」とは何かというと、「モレなく、ダブりなく」ということです。たとえば、登山に行くためのチェックリストをつくるとします。そこにモレがあると、あとから「取りに戻らなければ!」ということになるかもしれません。またダブりがあれば、余計な荷物を持たなくてはなりません。つまり、「モレなく、ダブりなく」リストをつくることで、必要なものをムダなく準備することができます。これは問題解決も同じです。あとから「あ、これも考えておかなければいけなかった」ということでは、ムダが生じますし、そもそもヌケやダブりがある状態では、情報を整理できているとはいえません。だからこそ、「MECE」であることが大事なのです。「MECE」の例を挙げてみましょう。たとえば、クラスの生徒について、MECEにグルーピングしたいとします(図1-4)。「野球部」「手芸部」で分けるとすると、それ以外の部活に入っている人や、部活に入っていない人は入らないため、「モレ」が生じます。
こんな時は、「運動部」「文化部」「部活に入っていない」とすれば、モレもダブりもなくなりそうですね。今度は、「学校を休んだ」「病気にかかった」というグルーピングをしたとします。これでは、「病気にはかかったけれど学校を休まなかった」というダブりができてしまいます。「病気で学校を休んだ」「病気になったが学校を休まなかった」「病気にならなかった」という分け方ならMECEになります。「MECE」にすることの一番の目的は、現象をちゃんと把握するということです。たとえば、ある商品が売れない原因が本当は「売り方」に問題があるのに、「商品がよくない」ということだけ見ていたら、「売り方」に問題があることに気づきませんよね。だから、モレなくダブりなく、必要なことを外してないかどうかを見るために、この「MECE」が役立つのです。つまり、MECEでグルーピングしたり、情報を集めて整理してみると、自分が見落としていたところに気づくことができるのです。ただし、そもそもMECEにする目的は、「ちゃんと外さないで問題を押さえる」ということです。その時「なんとなくMECEな感覚」=「MECE感」を大事にして欲しいのです。なぜならモレなくダブりなくすることに一生懸命になりすぎて、本来の目的である、問題を外さないで押さえることを忘れてしまっては、問題解決につながらなくなってしまい、本末転倒です。はじめの一歩としては、ものごとを、色んな角度で「2軸」「3軸」に分けて考えてみること。「質と量」「効果と効率」「短期・中期・長期」「過去・現在・将来」など。続けていると、段々と「MECE」な感覚がついてくると思います。
1-5「フレームワーク」とは何なのか?さて、「MECE」を意識する、といわれても、なかなかすぐにはできません。そこで役に立つのが、「フレームワーク」です。「フレームワーク」というのは、モレなくダブりなく思考を整理するためのものです。これを知っておくと、効率的に、感度よくものごとを整理することができます。よく、顧客の属性を考える時に、「年齢を10代、20代、30代、40代に分けよう」などということをしていませんか?これは、顧客を「セグメント」に「グルーピング」して、どんな顧客がいるのかを見ていくやり方なのですが(詳しくは後ほど説明します)、年齢で分けることで、モレとダブりがなくなります。こうしたフレームワークを使うことで、モレなくダブりなく、対象を把握できるようになるのです。すごいコンサルタントになると、自分でフレームワークを創造的にデザインし、ものごとをとらえていきますが、初級者の場合は、基本的なフレームワークを知って、それをまず使ってみることをお勧めします。フレームワークには大きく分けて三つのものがあります。①要素を分解するものSTEP1のマンガにも出てきましたが、ある事柄を要素に分解して問題の構造を探るものです。例:4P、3C、ロジックツリー②流れを見るもの仕事の流れやものごとの順番など、「流れ」で見ながら分析します。例:ビジネスシステム③対比するもの質と量、和と洋など、軸をおいて、たとえば市場などを分析します。例:ポジショニングマトリックス本書では様々なフレームワークを紹介していきますが、それぞれの用途に応じて使うとよいでしょう。
1-6「ロジックツリー」で問題のありかを見つけるここから少しフレームワークについて紹介していきましょう。その問題がそもそもどんな要因(WHY)で起きているのか、問題はどこにあるのか(WHERE)を見つけるためには、問題を構造化して考えないといけません。構造化というのは、いってみれば、さまざまな要素がごちゃごちゃとからまっている「問題」の全体像をつかむこと。そのために便利なのが「ロジックツリー」です。問題の原因は常に一つとは限りません。ロジックツリーでは、「広がり」と「深さ」の両方を、見える化して検討できます。そこで、ロジックツリーで見ていくことで、一番インパクトのある原因を見つけるのです。ロジックツリーをつくる原則としては、モレなくダブりなくを意識しながら、思いつくことをどんどんツリー上に構造化しながら、まとめていくことです。書き方は、マンガの中で紹介したように上から下にまとめても、図1-5のように左から右に書いてもかまいませんが、左から右に書くのをお勧めします。なぜなら、経験から、左から右に手を動かしたほうが深く考えることを促すからです。
たとえば、「デートに行く時のレストラン」を選びたいとします。その条件をロジックツリーで考えてみましょう。まずは場所。立地としては、相手の会社の近く、ターミナル駅、駅から近いかどうかも気になるところです。雰囲気はどうでしょう。高級感があるところがいいのか、落ち着いてゆっくり話せる自然派レストランがいいのか、隠れ家的な場所がいいのか。もちろん、料理のジャンルも大事です。フレンチ、イタリアン、和食、エスニック、たくさんありますね。最後に値段。あまり高いのは困るけど、安すぎて内容がイマイチなのも嫌ですよね。そんなことを考えると、図1-5のようなツリーができそうです。これで、モレなくダブりなく吟味できるわけです。もう一つ、仕事にすぐ使える定石的なロジックツリーをつくってみましょう(図1-6)。
「利益を伸ばす」という課題があったとします。MECEに分けるためには、これを「数字」で考えます。利益は、どんなふうに数字で表わされるかというと、・利益=売上-コストです。要は、利益を伸ばすには、売上を伸ばすか、コストを下げるかしかないのです。では、売上を伸ばすには、どうしたらいいか。売上は「価格×販売数」で求められます。つまり、・販売数を伸ばす・価格を上げるとこれまた2つに分けられるのです。コーヒーショップで考えたら、スタバは高価格でも利益を得ていますし、ドトールは低価格でも販売数を伸ばすことで利益を得ています。「販売数」を見た時に、それを伸ばすにはどんな要因が考えられるか。プロモーションや、取扱店舗など、またさまざまな要因が考えられます。一方で、コストはどうでしょう。原価を低くできないか、人件費はどうかなど、色々と要因が出てきますが、その何が一番重要かを目配りして考えていきます。
1-7競争戦略などで使われる「3C分析」競争戦略や市場参入戦略を考える時に、一般的によく使われるフレームワークが「3C分析」です。「3C分析」とは、市場(Customer)はどうなの?自社はどんな強み(Company)があるの?競合(Competitor)はどうなの?という3つのCに分けて分析します。清古堂の場合、ほまれは次のように分析していました。・市場(Customer)=スイーツブームは続いているし、外国人観光客も増え、「和菓子」の市場は確実にある・競合(Competitor)=和菓子をつくって実績を上げている他社は安価なものが中心・強み(Company)=職人の高い技術そこで、他社との差別化にもなる職人の高い技術を活かして、スイーツブームに乗れる新商品がつくれないかと考えたわけですね。ここでも、市場・競合・強みという分析に必要な三つのことを、MECE感覚で考えられるようになっています。こうしたフレームがないと、自社のことばかりで競合のことを考えていなかったためにすでに同じような商品があるとか、市場を見ていなくて「そもそも、市場なかったね」ということになるのです。3Cで見ていくことは、市場の変化の激しい今、より必要になってきています。たとえば、レコードプレイヤーという市場。きれいな音が出るように改善して今販売したとしても、市場は「楽曲データを1曲いくらで買う」のが普通の状態です。レコード自体、ごく一部のコアな人以外には売れないのだから、プレイヤーを頑張ってつくっても、広くは売れないですよね(マニア向けに、すごく高いものを出すということはあるかもしれませんが)。レコードからCD、データというように、大きな「代替」があると、その市場ではやっていけなくなることがあるのです。だからこそ、3Cを使って、市場をモレなくちゃんと見るということが大事なのです。
1-8マーケティングの定番フレームワーク「4P」4Pとはマーケティングの代表的なフレームワークです。製品(Product)、価格(Price)、どんな販売をするのか(Place)、売り方(Promotion)の四つで、モレなくダブりなく、他社と比較したりして分析していきます。たとえば、ある商品のマーケティング戦略について競合と自社を比較する場合、・商品はどうなの?・価格はどうなの?・どこで売ってるの?(店頭、卸、インターネット、訪問販売)・プロモーションは何をやっているの?という四つの視点から分析して、モレなくダブりなく、検証ができるフレームワークというわけです。たとえば、東京ばな奈と清古堂の和菓子を比べてみると図1-8のようになるでしょうか。
こういうふうに整理していくと、どんな会社がどんな人を対象にどんな施策をしているかがわかりますし、自社に足りないところ、差別化のために自社がやるべきこともわかるようになるわけです。
1-9ビジネスを流れでとらえる「ビジネスシステム」ビジネスシステムとは、ビジネスを流れでとらえるフレームワークです。「事業を行なううえで必要な要素を機能ごとに分けて、連続した流れにまとめたもの」です。たとえば、メーカーだったら、「開発→製造→マーケティング→物流→卸への営業→店頭での管理」などといった一連の流れがありますし、就職活動なら「自己分析→企業分析→エントリー→面接→内定」といった流れになります。その要素ごとに、他と比較したり、失敗の原因を探ったりして、よりよい業務フローをつくることができます。たとえば、あるレストランが「最近、うまくいっていない。もっとお客さんが来るレストランにしたい」と思っていたとします。そんな時、このビジネスシステムで、自分のレストランと、うまくいっているレストランの仕事の流れを比較してみるのです。お客さんが来るまでの流れを「宣伝→顧客での吟味→来店→食事→再来店・リピート」と考えた時に、うまくいっているレストランは、来店の段階でお客さんを待たせない仕組みをつくっているとか、うちで導入していない「ポイントカード」をつくっているとか、気づくことが出てきます。すると、やるべきことが明確になります。そのほかにも、顧客が商品を手にとるまでのプロセスなど、「見える化」して分析することができます。「ビジネスシステム」のフレームワークはすべての仕事において使えるものです。みなさんも、「あの人みたいに仕事ができるようになりたい」と思ったら、このフレームワークを使って、「あの人」の仕事の仕方を観察して比較してみるといいですよ。
1-10組織を見る「7S」「組織」というとき、それが何なのかはとらえにくいものです。なぜなら、何が要素になって組織が成り立っているのか、わかりにくいからです。たとえば、「あの会社はスピード感がある」とか、「あの会社はフレンドリーだ」と評することがありますが、大抵の場合、社内にいる人は、それを当たり前として仕事をしているので、それに気づきませんし、なぜ、そんなふうになっているのかも、明確には答えられないものです。そうした組織について分析していくのが、「7S」(図1-10)というフレームワークです。
組織を構成する要素を、ハードとソフトに分けて見ていきます。特にハードとソフトはお互いに補完関係があって、組織を改革する時は双方を改善しないとうまくいかないといわれています。具体的にはこんな項目があります。【ハード】戦略(Strategy)組織構造(Structure)社内のシステム(System)【ソフト】組織文化(Style)組織に備わる強み(Skill)人材(Staff)共通の価値観(Sharedvalue)似たような業種でも、組織の中身は違うものです。同じ「通信キャリア」でも、あの会社はスピード感があるなとか、あの会社は保守的な感じがするなどと感じられることがあると思います。この7Sで分析すると、同じ業種の会社でも、なぜ会社の雰囲気が異なるのか、それはどこが異なるのか、などと色々なことがわかるようになります。なお、この分析は、就職・転職活動でも役立ちます。「自分が前に立って積極的に仕事をしていきたい」タイプだったら、社員個人に仕事を任せてくれるような組織のほうが向きますし、「儲けよりも、理念を大切にしたい」という人なら、「価値観」が自分に合っているかで判断できるでしょう。
2-1仮説を検証する「イシューツリー」問題解決においては、早い段階で仮説、つまり仮の答えを立てることが重要です。言い換えれば、早く「当たり」を見つけるということです。なぜ、仮説が必要かというと、早く仮説を立てることで、それが正しい答えなのか、早く検証できるからです。やみくもに解決策を当たるのではなく、最も効果的な解決になりそうな答えを仮におき、それが本当かどうか検証するほうが、問題を無駄なく速く解決できるのです。たとえば、「ヒット商品がないのが課題」ということがわかってきたら、その仮の解決策(仮説)を早く立てて、それが本当にそうなのかどうかを検証します。そして、違っていたら次の仮設を立てて、もう一度検証する、ということを繰り返して、正しい答えを導き出していくわけです。そのために使うのが、「イシューツリー」です。イシューツリーとは、最も重要な課題(イシュー)を出発点にし、それが正しいかどうかを検証するための要素を挙げ、その仮説が正しいかどうかを「YES/NO」で検証していくものです。ロジックツリーが要因(WHY・WHERE)を特定するのに対して、イシューツリーは、方法(HOW)を検証するので、ロジックツリーをWHYツリー、イシューツリーをHOWツリーと呼んだりします。つくり方は、基本的には「ロジックツリー」と同じです。たとえば、清古堂の場合、「ヒット商品をつくるべきか」ということを検証しようとしていました。ただし、このままではどんな商品をつくるべきかわからず、「なんとなく正しいんじゃない?」という曖昧な意見に終わってしまいますね。そこで、「顧客」(誰に売るか。ターゲット)と「商品の市場での立ち位置」(ポジショニング)に分けて、それぞれ考えました。このとき、3Cなどのフレームワークを利用してもいいですし、・WHO(誰に売るか)・WHAT(何を売るか)・WHERE(どこで売るか)・HOW(どうやって売るか)などに分けて、分析してもよいでしょう。分解してできた項目をもとに、今度はそれを検証します。たとえば、「地元以外の人」か「地元の人」で検証し、「地元の人には今までも売ってきたから、地元以外の人に売りたい」と判断したら、「地元以外の人」を「YES」としてそちらに進んでいきます。そうやってあみだくじのように、YESを進んでいっていきつくところに、「つくるべき商品」の像も見えてきます。そして、それぞれ「なぜYESと言えるのか」の理由が明確であれば、イシューは正しいことになります。また、分割していって、完全にYESとは言えないと思ったら、そこは検証すべき点であるということがわかります。こうして、方法をクリアにしていくのです。
ロジックツリーとイシューツリーさて、STEP1のロジックツリーと、イシューツリーの関係ですが、これは図2-2のようになっています。
ロジックツリーで最後に決まったものが、今度はイシューツリーの一番上の「イシュー」となり、それを検証していくわけです。
2-2立ち位置や優先順位を決める「ポジショニングマトリックス」ポジショニングマトリックスは、正方形を二つの軸で分けて、市場にある商品などをそこにおいていくことで、優先順位を決めたり、必要なものを選んだりするマトリックスです。軸としては、マンガでもご説明したとおり、「速さと質」など、対照的なものを選ぶとよいでしょう。みなさんもよくご存じなのは、緊急度と重要性の二軸で仕事の優先順位を考えるマトリックスでしょうか(図2-3上)
緊急度と重要性という軸でやるべきことをプロットし、緊急で重要度も高いところから着手する、といった具合です。また、清古堂でもやっていたように、新商品やサービスを考える時に、自社が市場でどんなポジションをとるかを考える際にも有効です。清古堂では、みやげ菓子として「和風」「洋風」、「職人の技術が高いもの」「職人の技術が低いもの」に分けて、さまざまなお菓子をプロットしてみました(図2-3下)。そこで、競合がいない「外国人観光客向けの、職人の技術が高い和菓子」という市場を見つけました。ここが「スイートスポット」、つまり、競合のない魅力的な市場ということです。ポジショニングマトリックスは、他にもさまざまな使い方ができます。ぜひ応用してみてください。■「二軸」で考える「いい軸を二軸で考える」というのは、考える力をつけるための、とてもよいトレーニングの一つです。ポジショニングをする時に、どの軸を使って分析するかで、その結果は大きく変わってきます。たとえば、ビールは今まで「価格」「味」で検討していたけど、「舌触り」が大事ではないかと考えて、「舌触り」という軸で検討してみたら、新たなニーズを掘り起こせて、ヒット商品が開発できた、ということだってありえるわけです。よって、「いい軸」を見つけることが重要になるのです。いい軸になればなるほど、ブルーオーシャン、つまり競合がなく、かつ、お客さんがすごく欲しがっているエリアというのが見つかりやすくなります(こうした、ぐっとくる「セクシーな分析」を「感度がいい」と言います)。そこに向けて商品を開発すれば、成功の確率は高まります。反対にあまりいい軸でないと、マトリックスのすべてにまんべんなく競合がプロットされてしまいます。つまり市場はレッドオーシャンのままだということになります。実際、売れている商品を分析すると、何か新しい軸で、しかも、競合が手つかずの空白のエリアに商品を投入していることがわかります。よいポジショニングがとれると、商品のコンセプトも自然に明確なものになっていくのです。筋のいい切り口で、どんな軸を考えるかは、コンサルタントの腕の見せどころでもあります。私もマッキンゼーにいた時は、毎日最低10個軸をつくる練習をしていました。こうして今までと違ったスポット、切り口が見つかるとヒットしやすいのです。■「意外性」で隙間を狙うことも「軸」には意外性も大事です。最近「塩」とつくお菓子が増えていますよね。「塩チョコ」とか「塩アイス」など、みなさんも見たことがあるのではないでしょうか?「お菓子メーカーなのだから、甘いのが当り前」と甘いものばかり提供してきたから、思い切って、「しょっぱい甘さ」という軸を考えてみようとしたことがヒットにつながったのかもしれません。切り口次第、軸のとり方次第で、こういう「隙間」を狙う商品も見えてくるのです。どういう切り口をつくれるかということは、コンサルタントの、そして多くのビジネスパーソンの腕の見せどころにもなってくるということです。
2-3広い視野で考えるための「そもそもメソッド」何かの問題について考える時、自分の思い込みの中で考えることはないでしょうか?たとえば、清古堂でも、和菓子と聞いて、当初はみんな「おやつ」とか、「おみやげ」とか、「年配の人が好き」といった発想しか持っていなかったと思います。固定された概念の中で考えていては、自分の経験にからめとられてしまい、ひと味違ういいアイデアは出てこないのです。そんな時のマジックフレーズは、「そもそも」です。「そもそも、この価値はどこにあるんだっけ?」「そもそも、それはどういうことだっけ?」「そもそも、私たちはどうしたいんだっけ?」こんなふうに問いを投げかけると、今まで自分が持っていた意識から出て、さらの状態でものごとを考えることができるのです。これができると、新しい発想が出てきやすくなります。「そもそも、和菓子の価値って何だっけ?」「見た目のきれいさも価値だよね。日本の四季を形にして、ある意味、日本文化を伝える手段でもあるよね」「カロリーの少なさは、ダイエッターのご褒美として最適かも」などなど。考えが煮詰まったら、「そもそも」と考えてみてください。新たな発想が生まれる可能性が高まります。また、「そもそも」は、相手の可能性を広げてあげるためにも有効な言葉です。誰かの仕事がうまくいっていない時に、「なぜ、できないの?」と尋ねても、当人も何も答えられないでしょう。わかっていれば、とっくに行動に移しているはずですから。だから、「そもそも、何が気になっているの?」「そもそも、どうしたいと思っているの?」会議で議論が進まなくなってしまったら、「そもそも、私たちは何をしたいのでしょうか?」などと、問いを投げかけてみるのです。つまり、「そもそも」メソッドを使って根本に立ち返ることで、より広い視野で考えることができ、新しい発想や、見落としていたことが見つかったりするのです。
3-1原典・現場に当たれ!マッキンゼーにおいて、書籍や新聞、インターネットなどの情報やデータは、「事実」とは呼びません。それらは二次情報で、第三者の意見や視点が入っているため、事実ではなく「意見」なのです。よって、それらの情報をうのみにしてはいけないのです。そこで必ず、現場に出向いて「一次情報」に当たるのです。たとえば、新聞で「○○白書」をもとにした記事があったとします。その時は、その新聞記事だけでなく、「○○白書」(原典)を必ず確認します。さらに、その「○○白書」をつくった調査機関に出向いて話を聞くと、そのデータが対象とする市場の定義や、どうやってその市場を定義しているのかなど、より詳しい話が聞けます。また、「現場」でお客さんに接すると、会話でお客さんの考えていることを知るだけでなく、お客さんの行動や言葉などを観察することから、生の声を知ることができます。まるで警察の張り込みと聞き込みですが、マッキンゼーでは、こうして「事実」をつかみ、たとえば、「なぜ、その店を選んだのか」「なぜ、そのメニューを選んだのか」など、データだけではわからない洞察(インサイト)を見つけていくのです。
3-2「アンケートのためのアンケートはとるな」マッキンゼーにいた頃、「アンケートのためのアンケートはとるな」とよく言われました。これは一体どういうことでしょうか?一言でいうと、良いアンケートをしろということです。一見、当たり前のようですが、何が良いアンケートなのでしょうか。アンケートにも良いアンケートと悪いアンケートがあります。たまに、アンケートに、「このデザインは好きですか、嫌いですか」といった項目を見かけませんか?実は、こういう項目が並んだアンケートでは、「好きという声が多かったから、このデザインにしたのに、全然売れなかった」ということになりがちです。それはなぜでしょうか?自分がアンケートに答える時のことを思い出してください。「好きですか」と言われたら、「まあ好きかな」「嫌いまではいかないな」ということで「好き」に丸をつけたりしていませんか?「別に好きかって言われたら好きだけど、買うまでもないな」という人ばかりだと、アンケートでは「好き」と答えてくれた人が多かったのに、実際には全然売れなかった、ということになりがちなのです。これではアンケートをとった気になっていても、まったく結果はついてきません。つまり、使えない悪いアンケートになっているのです。いわば、アンケートのためのアンケートになっているということです。アンケートは、ただ答えてもらって、回答数が一番多かったものを実施すればいい、というものではありません。「本当に欲しがっているものは何なのか」「お金を出してまで買うものは何か」それを徹底的に絞り出すためのものです。聞くことで、相手が自分でも気づいていない、潜在的なニーズをあぶり出すことが、アンケートや現場リサーチの一番の目的なのです。■現場の声を聞くアンケートの項目についての話は、直接、誰かに質問をする時も同じです。あなたがスーパーで、主婦が普段どんな食材を使っているかを調査したいとします。その時、「何が欲しいですか?」という質問は、間違いを引き起こします。たとえば、「何が欲しいですか?」と質問されて、「メロンです(でも高くて買えないのよね)」と答えられても、もともと聞きたかった答えになっていませんよね。だから、この場合、「普段、どんなものを買いますか?」「いつもどんなものを食べますか?」と聞いたほうがよいのです。すると、いつも自分が食べているものを考えて、「お肉と魚と、お野菜を買いますね。お野菜は、じゃがいもとたまねぎと、旬のものをいくつか買うかしら」「肉じゃがとかさんまが多いわね」と答えてくれたら、普段買っているものが見えてきます。質問の言葉一つで、相手の答えはこんなに変わってくるのです。つまり、的確な質問を考えることが大事なのです。では、マッキンゼーでは、リアルな声を聞くために何をしているのか。現場に行って、自分も販売員になってお客さんの声を聞いてみる、ニーズが引き出せるように色んな質問をする――私もそういうことを、徹底させられました。現場で話を聞きながら、「本当に売れてるの?」「売れているのなら誰に売れているのか」「何がいいのか」「何に困っているのか」ということを、質問を使いながらきちんと見ていくことが大事なのです。最後に良い質問の例を挙げておきます(図3-2)。参考にしてください。
■ジャッジせずに聞くインタビューをしたり、意見を聞いたりする時に最も大事なことは、「素直に聞く」ということです。「きっとこれはこうだろう」とか「この情報は大事ではないから」などといった自分の思い込みで判断せず、相手の言葉に耳を傾けます。そうすることで、事実が見えてくるのです。自分の判断は一旦脇においたニュートラルな視点を持つと、ゼロ発想にもつながっていくのです。このニュートラルな視点を持つことは、仕事でも大切です。たとえば、仕事においても「失敗した」とか「この仕事は自分にはできない」と、自分で拙速に判断していませんか?その時失敗と思ってもその経験があったからこそ、その後うまくいくこともありますし、やったこともない仕事に対して「無理」とばかり言っていては、貴重な経験を得る機会を失ってしまいます。あれこれ考えず、目の前の仕事に集中する。つまり、「今」+「ここ」に集中するということです。仕事においても、これが大事です。
3-3アンケートや人の意見をどうとらえるか■「意見」と「事実」を分ける人の意見を聞く時に、大事なことは、「意見」と「事実」を分けて聞くということです。あなたは、誰かの話を聞いているうちに考えがまとまらなくなったり、「僕は○○だと思う」という人の話を聞いて、それをすぐ鵜呑みにしたりしていませんか?「私は○○だと思う」これは「思う」のですから、単なる意見です。「私は、○○を買った」「東京の区は23ある」は、事実です。より根拠になる情報を得たいなら、「意見」と「事実」を分けながら聞き、間違いなく事実をつかめるようにする必要があります。でも人の話を聞いている時には、「意見」か「事実」かわからないこともあります。こんな時、できるコンサルタントは、質問をしながら、意見の裏にある事実を引き出していきます。たとえば、「上司と部下のコミュニケーションがうまくいっていない」という不満があったとします。でもそれは実際に調べたわけではなく、単なる意見です。そこで、できるコンサルタントは、相手の話を聞きながらも、「何でこの人はそんな意見を持つに至ったのだろう」と、質問をしていくのです。たとえば、こんな感じです。「なぜ、そう思うのでしょうか」「それは、全体の仕事が滞っているからだ」「なぜ、滞るのでしょうか」「管理職は会議が多いので、なかなか打ち合わせをする機会がないからだ」こんな返事が返ってきたら、コミュニケーションの改善を促すのではなく、会議など上司の負担を減らして、部下とコミュニケーションがしやすいように配慮する、ということが解決につながるのかもしれません。それなのに「上司と部下のコミュニケーションがうまくいっていない」ということを事実だととらえてしまうと、まったく間違った解決策を導いてしまうかもしれないのです。
3-4ピラミッドストラクチャーでストーリーを説明しよう「ピラミッドストラクチャー」は、文字通り、ピラミッド型に論理を積み上げて、メッセージを明らかにするものです。これはプレゼンに有効なツールです。論理が明確になりますので、プレゼンの時にこれを見せながら、「問題はここですね」「なぜならば、その要因はこれです」「だから、こういう解決策が必要です」ということを伝えていけば、説得力は高まります。さて、岳のプレゼンの例で実際にピラミッドストラクチャーをつくってみましょう。ピラミッドストラクチャーは、一番上に伝えたいこと「キーメッセージ」が入ります。そしてその下に、キーメッセージを支える「考え」や「根拠」「方法」など(これらをキーラインといったりします)が配置されます。ピラミッドストラクチャーをつくる流れは次の通りです。岳の場合は、こんな感じでしょうか?⑴課題テーマに基づいてキーメッセージを決める課題テーマは、「清古堂の売上を上げる」。キーメッセージは、「外国人観光客向けのおみやげ菓子をつくる」です。このように、課題テーマに対する答えがキーメッセージになります。⑵論理の枠組みを考える(どんな分析をするかなど)この段階では、3Cで顧客、自社の強み、市場を確認し、ポジショニングマップで目指すべき市場を見つけました。なお、ピラミッドストラクチャーをつくる時にも、こうしたフレームワークは使えます。「なぜならば、市場はこうです、競合はこうです、我が社はこうです」みたいな感じで背景を説明して、「だから、こういう商品がヒットします」といった具合で説得力を増すことができますし、簡単にMECEにまとめることができます(後述のコラムでも、ピラミッドストラクチャーを使ったプレゼンの考え方のプロセスを紹介していますので参考にしてください)。⑶根拠を明らかにする(WhySo?と質問して、その根拠を確認する)「外国人観光客向けのおみやげ菓子をつくる」の根拠を「なぜ?」で確認します。ここでは、⑵で使った3Cで確認しています。岳のピラミッドストラクチャー(図3-4)を見ると、・Customer海外観光客・Competitor他社の商品・Company自社の強みの3Cのフレームワークを使うことで、ピラミッドストラクチャーを書いています。
⑷思考を明らかにする(SoWhat?を繰り返して、その意味を確認する)もう一度ピラミッドの下から「SoWhat?」(だから何?)で見直して、全体の整合性がとれているかを見直します。この時、MECEであるかも同時に見直してください。こういうふうに展開していくと、全体が構造として見え、相手にもわかりやすいものになります。ピラミッドストラクチャーをはじめとする「ロジカルシンキング」は、真の問題をとらえるだけでなく、人にわかりやすく伝えるツールでもあるのです。■説明の注意点最後に説明・プレゼンをする際の注意点を三つ挙げておきます。一つめは、説明文などのストーリーは100文字以内で短く書くこと。人がさっと見て理解できる範囲にします。二つめは、伝えたいことの一文の中に「余計な説明や言い訳」を入れないこと。不安になると、つい余計な説明を入れたくなりますが、それをしてしまうと話がぶれ、かえって相手が理解しにくくなるのです。短かくすることで本当に伝えたいことがクリアになり、はっきりと伝わることにつながるのです。相手を混乱させないこと、伝えたいことがクリスタルクリアで伝わる形になっていることが大事です。最後に、抽象的な表現ではなく「具体的」にすること。たとえば「斬新なアイデア」といっても、相手には、その斬新さがどういうものなのかはわかりません。何がどう斬新なのかを具体的に示さなければ、共感は得られないのです。
3-5マッキンゼー流プレゼンのコツ■発言に説得力を持たせるためにはこの三つを押さえよ自分の発言の説得力を高めるには、・論理にモレがないか・論理が深掘りされているか・論理に筋が通っているかを押さえることが大事です。
論理にモレがないか、というのは、MECEのところでご説明したとおりです。何か抜けがあれば、会議で「この点はどうなのか?考えていないのか!」と問われてしまう可能性大です。また、論理が深掘りされているかについては、「SoWhat?」を繰り返して、考えを深めていきます。最後に「論理に筋が通っているか」です。これについては、「SoWhat?」と考えていった点が正しいかどうかを、「WhySo?」、つまりなぜそういえるのかと問いながらチェックするのです。ここで「WhySo?」が言えれば、論理に筋が通っているといえるのです。つまり、「SoWhat?」と「WhySo?」がサーキュレーション(循環)しているということです。そしてもう一度最後に、「そもそも、どうなのか」「サーキュレーションしているか」と全体を見渡してみます。こうして論理の飛躍がないかを確かめるのです。そうすると、論理がおかしくなっているところが見つかったり、そもそもこの方法はとれないのではないかとか、結論はこうなったけど本当にこれがみんなの欲しいものなのかなどと、課題が見つかるのです。こうして全体を押さえるためにも、ピラミッドストラクチャーは効果的です。■核心は30秒で「真の問題」と「真の解決策」がつかめていれば、「30秒」で伝えることができます(逆にいえば、「30秒」で伝えられなければ、まだ確信がつかみ切れていないともいえるのです)。ですからプレゼンも、「核心」を30秒で伝えることからはじめてみましょう。目指すイメージは、・ワン・センテンスであること・「問題点+解決策+実施方法」が含まれることです。岳の場合であれば、というところでしょうか。そしてプレゼンで一番大事なことは、「共感と共有」です。あなたは、そもそも聞いている相手に共感と共有をもたらしたいと思っているでしょうか?思っているとしたら、何を共有したいと考えているのでしょうか?「自分が言いたいことを言う」だけでは、プレゼンとはいえません。逆にいえば、「何をどう説明するか」ということを考える前に、「何を共有したいのか」を明確にしておかなければならないのです。
3-6「SoWhat?」を繰り返せ!その現象をどこまで、掘り下げるか。マッキンゼーでは、よく「SoWhat?」(それで?)という言葉を使うのですが、これをどこまでできるかが、よい解決につながっていくのです。トヨタでも「なぜ」を繰り返せと言いますね。たとえば、商品Aの売上が落ちたという現象。ありがちなのは、「商品Aの売上を上げろ」という解決策ですが、これがよくないのは、もうすでにみなさんはご存じだと思います。では、どこで「売上が落ちたのか」という問いで、もう少し見ていきます。すると、「どうも地方での落ち込みが大きい」とわかってきます。そこで、「地方へのてこ入れ策が必要だ」というところまで近づいてきました。でももっと、方法が具体的になるように、さらに掘り下げていくのです。「なぜ、地方で売れていないの」(SoWhat?)「地方での営業効率がどうもよくない」「何で、営業効率がよくないの?」(SoWhat?)「営業マンが商品Aを売っていない」「何で商品Aを売らないの?」(SoWhat?)「商品Aの価格体系が営業マンにとって、あまりインセンティブにならない」ここでようやく具体的な解決策につながる問題点が見えてきました。つまり、「営業マンに対するインセンティブをつける」ことがピンポイントな解決策になるわけです。どんどん掘り下げて調べていくことで、真の解決策が見えてくるのです。これをロジックツリーに展開してみると、最初にある軸を深掘りしていくということです。そして一方で、MECEで、モレなくダブりなく見ることで、広がりを持たせます。深さと広がり。両方が必要なのです。だから、適切に問題を考えないで、「商品がいまいちなんじゃないか」とか、「競合に負けてるからどうにかしなきゃ」とか、「競合はこんなことをしているから、うちもそれをやろう」という考え方では、いくら高いお金を出しても、新たなプランを実行しても、効果が出ないということなんです。深く掘っていって、早い段階で当たりをつける。次に、MECEで考えられるフレームワーク(3Cや4P)を使いながら、ロジックツリーで問題を見える化して、広い視野で見てみる。こうやって深掘りしながら広さを持って考えることが大事なのです。ロジックツリーは、実は、自分が幅広い視野でものごとを検討しているかということを確認するためのものでもあるのです。■「I」ではなく「We」で話して人を巻き込む「これは私にとって非常に大事なことです」「これは、私たちにとって非常に大事なことです」この二つの言葉を見比べた時、あなたはどちらのフレーズに共感を持ちますか?おそらく、後者ではないでしょうか。「私たち」と言われることで、「自分たちに関係があるなんて、どういうことだろう」と聞く気になったり、「自分たち」が主役になることで当事者意識が生まれたりするのです。頭ではわかっていても、実際のプレゼンや提案を見ていると、前者のフレーズを使っている場合が多いものです。特に、会議やミーティングの場というのは、自分の意見を通す場ではなく、自分たちが一番よい選択をするための場です。個人の意見であっても、それをきっかけにして、全体をより高いゴールにつなげられるようにしなければなりません。だとしたら、「私が考える重要なポイントは~」と言うよりも、「私たちにとって重要なのは~」と言うほうが共感を呼べるのです。また、最後に「みんなで取り組んで結果を出したい」と、全員が参加意識を持てるようにすること。そのための言葉まで細かく気を配ることが大切なのです。
4-1ものごとを成し遂げる人が持っている「ゼロ発想」と「オタク力」マンガのストーリーでは、「ゼロ発想」でカウンターで職人さんのつくりたて和菓子が食べられるという、新たな業態をつくりだしていましたが、「ゼロ発想」は、今、大切になってきている思考です。「ゼロ発想」というのは、文字どおり「ゼロから考える」ということです。言葉は簡単ですが、意外と難しいもので、私たちは過去にとらわれがちなのです。あなたの周りにも、「前にこれでうまくいったから今回も同じ方法をとろうとする人」がいるのではないでしょうか。過去にそれで成功すると、私たちはまたそれを繰り返してしまいがちです。でも、それが本当に今でも通じるかどうかはわかりません。まして、これだけ世の中のスピードが速くなってきている今、常に「ゼロ発想」でいなければ、今目の前にある問題を解決することはままならなくなってきているのです。ここで「ゼロ発想」の具体例を紹介します。昭和の頃の喫茶店は、どのように儲けていたのか、わかりますか?豆や淹れ方にこだわりのあるマスターがいて、「あのマスターが淹れるコーヒーがいいんだ」という常連客がつく、というビジネスモデルで儲けていた世界でした。クラシック音楽がかかっていて雰囲気も悪くなく、雑誌や新聞も置いてあって、30分も1時間も長居をするお客さんたちが、コーヒーと食事を楽しんでいく。だから、お店としては、いい場所でないと難しいし、コーヒーの価格も少し高めの500円とか1000円というモデルだったわけです。これが当時の普通の喫茶店だったのです。そこにドトールが登場します。1杯150円(当時)で、「ちょっと朝コーヒーを飲みたいな」と思った人が、気軽に店に入れる。しかも、駅前の一等地にあります。こだわりの豆で雰囲気のいい場所を提供する「昭和のよくある喫茶店」こそが成功モデルだ、という発想のままでいたら、あのドトールのモデルなんて、絶対考えられません。既存の枠の中にとどまらずに、無邪気にゼロ発想をしたからこそ、ドトールのようなモデルは考えられたのです。こだわりのマスターがいなくても、誰が淹れても美味しいコーヒーを開発できないかと考えたドトールの創業者は、1杯150円で美味しいコーヒーが飲めるマシンを開発したそうです。これは従来型のこだわりのマスターに頼った喫茶店モデルではできないことです。さらに、立ち食いそば屋のような椅子とテーブル中心の店舗であれば、長居もできません。また、テイクアウトも行ない、収益拡大を狙いました。こうして、顧客回転率を上げ販路を広げれば、低価格でも一等地でお店が開けるのです。お客さんから見れば「すごく居心地がいいわけじゃないけれど、味もよく、安くてさっさと飲めるし、テイクアウトもできていいね」ということになるわけです。■「アンチテーゼ」で次のトレンドに乗るさて、しばらくドトールの時代が続くのですが、いつの時代も「アンチテーゼ」が起こります。スターバックスやコメダ珈琲店の登場です。そして、これが今の主流のモデルになっています。では、次に何が来るのか。ゼロ発想して考えてみることが大事です。さまざまなものがすぐに陳腐化してしまう時代、「当たり前」から脱して、「お客さんが本当に何を求めているのか」「お客さんがぐっとくる新しいものは何か」「それを実現するためには、何ができるのか」という発想が、今後、より重要になってくるのです。ライバルが多くて、他の人と違う発想が求められる時も「ゼロ発想」は必要です。マッキンゼーでは、会議で「私もそう思います」という発言をすることが許されない空気があるのですが、自分なりの立ち位置を示して、自分の発言力を高めていくためにも、ゼロ発想でクリエイティブな提案を目指しましょう。■「横展開」して考えるそれにしても岳の「和菓子カウンター」の例は、おもしろい発想ですね(これは鶴屋吉信さんが実際に行なっています)。お寿司屋のカウンターを和菓子屋に持ってくれば、和風のイメージが湧きますし、職人さんが菓子をつくる姿も見ることができます。それに何より新しさがあります。このように別の分野で行なわれていることを「横展開」することで、今までの延長線ではない、新たなアイデアが生まれることにつながるのです。■あきらめない「オタク力」マッキンゼーの人は、みんなクールにロジカルにものごとを進めていると思うかもしれませんが、実は職人肌の「オタク的」な人が多かったと思います。「オタク的」とは、あきらめずに徹底して追究することを意味します。ずば抜けた仕事とは、最初にひらめきがあって、それが本当にうまくいくのかロジックでつめていくことなのです。この「ひらめき」をロジックにつなげるのは、意外と難題です。さまざまな調査をして、分析を繰り返し、やっとそのひらめきが成り立つ根拠を見つけるまで、あきらめずに考え抜く、調べ尽くすことが大切なのです。ここで大事なのは、徹底して汗をかく「あきらめない思考」です。「目的は何か」「真の問題は何か」を問い続ける。問題のありかがわかったら、それを解決するための効果的な解決策は何かと、常に問い続けていくのです。何度も「なぜ?」を繰り返して、あきらめずに根気よく考えることで、すばらしいアイデアが実現するのです。
4-2「空・雨・傘」で考えるせっかく問題を分析し、解決策を見つけても、実行段階で思わぬ壁にぶつかることもあります。私の感覚だと、実は実行段階で壁にぶつかることが一番多いのですが、そこで止まっては何もなりません。ぶつかった壁がどんなものであるのかを、冷静に見ていく必要があります。マンガのストーリーでの岳も「空・雨・傘」のフレームワークを使って考えていましたね。「空・雨・傘」のフレームワークを使うのは、壁にぶつかった時だけに限りません。マッキンゼーでは、この考え方を徹底させられます。さて、この「空」「雨」「傘」には、次のような意味があります。・空現状はどうなっているか(事実)・雨その現状は何を意味するのか(解釈)・傘その解釈から何をするのか(行動・打ち手)たとえば、空を見ると雲が出てきました(事実)、雨が降りそうだから、濡れるのは嫌だなと思いますよね(解釈)、だったら、傘を持っていく(行動・打ち手)、というわけです。自動車販売の例で考えてみましょう。・空市場を見ると、自社のシェアが減っています。・雨その事実を検証すると、他社の環境にやさしい新製品にお客さんが乗り換えていることがわかりました。お客さんの環境意識の高まりが原因のようです。・傘そこで、自社でも主力商品の環境対策をはかり、既存のお客さんに試乗してもらうことにしました。これが、空・雨・傘で考えるストーリーです。
4-3マッキンゼーが大事にする「PositiveMentalAttitude」最後にマッキンゼーで大切にしている心のあり方を紹介しましょう。「PositiveMentalAttitude」(ポジティブ・メンタル・アティテュード。PMA)というものです。当初、清古堂の社員たちは、会社の危機にもかかわらず、自分から動くことができませんでした。「このままどうなるんだろう」と状況に身を委ねるばかりでした。でも、これでは未来は切り開けません。「PositiveMentalAttitude」とは、常に主体的になる心の持ち方です。どんな状況であれ、自分はどうしたいのか、自分は何ができるのかを考えて、それを常に意識し、自分から動く。これからは、こうした心構えを持つ人が、どのような場であっても、活躍するだろうと思うのです。岳も当初はどうしたらよいかわかりませんでしたが、「清古堂を救いたい」という強い気持ちがありました。そして清古堂を救うためにはどうしたらいいのか?自分には何ができるのかという「自分から動く」姿勢が最初にありました。そして、ほまれに協力を依頼し、先頭に立って新商品開発に取り組み、職人さんを巻き込んで実現し、斬新なアイデアを生み出しました。これは「自分から動く」という気持ちでいなければできないことです。方法ありきではなく、最初に「気持ち」ありきなのです。この本を読んでいるみなさんも、それぞれに成し遂げたいことがあることでしょう。まだ方法はわからなくても、「PMA」でいることができれば、道は開けてきます。そのうえ、みなさんには、これまで学んできた、マッキンゼー流の問題解決メソッドがあります。ぜひ、みなさんの力で、このメソッドを使い、みなさんのやりたいことを実現していただけたらと思います。「PMA」は疲れていると弱りますので「疲れたら休む」ことは心がけてください!
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