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第3章店長(マネージャー)教育の真髄

目次

店長育成をどのように進めたらいいのか

店長の役割は重い

本章では、「店長育成」について、その望ましいあり方や仕組みについて説明します。なぜ、店長育成に一章をわざわざ割くかと言いますと、それがサービス業にとってきわめて重要である一方、非常に難易度が高いと考えられるからです。

サービス業における店長に限らず、営業会社で言うなら営業課長のような現場リーダー層。企業にとっては、売上について最前線で責任を負っている重要な役割です。その育成は、新入社員に初歩的なテクニカル・スキルを教えることなどとは違う難しさがあり、ノウハウがあります。

そのため、育成全般を語った前章とは別に、ここで解説していきたいと考えます。店長育成の難しさの筆頭は、グローイング・サイクルで言うところの「1基準を示す」という部分の中身が、とても重いということと、それが企業の業績に直結しているということです。

さらに、基準を示す項目が、一般社員と比べて多岐にわたります。店長には、多くのスタッフをまとめていくリーダーシップとマネジメント能力が必要ですし、スタッフを育成する責任もあります。

何しろ、店を代表するプレイヤーとして行動しながら、さらに多くのことを実行していかなければならないのが、店長という役割なのです。もう一つの難しさとして、その店長を育成する役割を持つエリアマネージャーとの接点が少ないということが挙げられます。

チェーン展開するサービス業であれば、例外なくそれが課題です。複数店舗のマネジメントを課せられるエリアマネージャーは、各店長と月に1回しか会わないなどということも珍しくなく、直接話す時間がとても少ないのが実情です。

店長が放置状態に

私が日本マクドナルドでエリアマネージャーを務めていたときは、6店舗を担当していましたが、各店長とはマンツーマンでは1カ月に2〜3時間しか話す時間がありませんでした。

その中で育成のために一対一で話す時間はごく少ない。そういう状況ですから、基本は「任せている」という状態です。つまりこれは、ちょっと間違うと放置状態になりかねないということを意味します。

多くのサービス業で「なかなか店長が育たない」という課題が聞かれますが、育てる時間が少ないのですから、ある意味では当たり前です。そうした観点からも、店長育成は難易度が高いのです。

教える人が常に一緒にいる状態であれば、すぐに課題も指摘できるし、評価も的確にできるのですが、なかなかそうはいきません。現場を任されて、放って置かれても大丈夫な優秀な人も、いないわけではありません。しかし、それはごく少数で、そうではない人の方が圧倒的に多いのです。

店で一番の上位者で、店舗経営から顧客サービス、アルバイトを含めた人財育成まで、さまざまなことに目配りしなければならない店長という立場は、ときに孤独に落ち込んだり、逆にお山の大将になったりという弊害がつきものです。

部下から自分の行動を正されるという店長は、ほとんどいません。また本社側は、店長の状況については、例えばトラブルが起きたときでないとわからないものです。店を任されて、そこで自分を冷静に評価して、きちんと律することができる人は、それほど多くはありません。

ですから、ほとんどすべての人に育成の機会が必要ですし、フォローアップが必要です。これをどうするかは、企業にとってはとても重要なポイントです。結論を言えば、上司が接する時間が短くても人財を育成していける仕組みを作る必要があります。

入社したときから始める店長育成

店長が店長候補を育てる

私は、一人の社員が入社したときから店長育成のトレーニングを始めるべきである、と考えています。個別のオペレーションに加え、スタッフのマネジメントや店舗の利益管理まで、それぞれに「基準」を示し、育成のステップを設定するのです。

新入社員には、まず店舗でのテクニカル・スキルから習得してもらうことになりますが、ただ目先の業務を教えるだけでなく、何年かのちに店長に昇格させることを前提として、育成の仕組みを作っておけば、より教育の効率が高くなることは間違いありません。

日本マクドナルドでは、店長になる前の社員に、店長としての研修を受けさせるとともに、OJTを通して育成するという手法をとっていました。言葉を換えれば、店長が店長候補を育成する、ということです。

店長とその部下を師弟関係にすることになりますから、一緒にいる時間が長くなります。育成は積み重ねが大事であり、いきなり一気に情報を与えても、こなすことはできません。

日本マクドナルドでは、このような店長による教育があり、ハンバーガー大学での研修があり、さらに店長になってからの実践を繰り返す、ということで積み重ねを作っていました。

日本マクドナルドは約3000店ありますが、3000人の店長がいるということは、3000の店長トレーナーがいるということになります。これが効率的な育成の仕組みの元になります。

ところが、店長になってから育成を始めようとすると、育成の主担当者がエリアマネージャーになりますから、そこで接点がぐんと減ってしまうことになります。

さらに、一人のエリアマネージャーが6人とか10人とかの店長を育成しなければならなくなる。考えてみれば、これはかなり無理なやり方と言えます。

だから、店長育成、つまり現場リーダーの育成をどのようにやっていくかは、仕組み化しない限り難しいですし、企業としては、そこに一番力を入れなければならないでしょう。

目標を決めて段階的に仕事を任せていく

店長になる前の店長教育は、一見、実践が難しいと思われるかもしれませんが、そうではありません。まず、新入社員を2年で店長にする、などとゴールを決めて、その間に何をさせるかをカレンダーに書き出してみてください。

プロジェクト・カレンダーを作成するのです。例えば、入社半年でアルバイトのシフトを組むことを教えて、人件費を勘案しながら、サービス・レベルが低下せず、お客様に迷惑にならないような組み方を半年させます。

あるいは発注を、資材を切らさないでできるようにする、ということでもいいでしょう。そのような仕事は、教えれば身につく技術ですから、ある程度、経験を積めばできるようになります。

サービス業に限らず、仕事ができるかどうかには、素質の有無はさほど関係ありません。基本を教えたあとは、それを現場での実践を通して向上させ、洗練させていくことができます。

それをせずに、「あいつはできる、あいつはできない」などとレッテルを貼ることは、意味のないことです。

初期教育でコミュニケーション能力を身につけさせる

こうした店舗オペレーションは言うまでもなく重要ですが、それ以上に大事なことは店長として部下をマネジメントすることです。優秀な店長に共通している要素の一つは、コミュニケーション能力の高さだと私は思います。

店長がスタッフたちときちんとコミュニケーションがとれている店舗は、例えば、アルバイトの定着率も高く維持されています。逆に店長との会話が少ない店舗は退職率が高くなるケースが多くなります。

店長のコミュニケーション能力はアルバイトの定着率を高める上でも欠かせないことなのです。このコミュニケーション能力は、持って生まれた性格や素質によって左右されるところもあります。

業務に関する能力は高くても、人に気軽に話しかけることが苦手な人もいますし、打ち解けるまでに時間がかかる人もいます。でも、素質に任せるのではなく、教育によってコミュニケーション能力は身につくものです。

そして、このコミュニケーション能力は素質に任せるのではなく、教育によって身につくものです。これも初期教育がカギを握ります。前述した入社したときからの店長育成で言えば、例えば、入社して3カ月経ったら、新人アルバイトの受け入れを連続で3人担当させます。

3人ぐらい担当すれば、間違いなく新人の指導ができるようになります。それを店長が見ていて、あるアルバイト・スタッフの習得のスピードが速いとか遅いとかを判断してアドバイスするというように、計画的に育成します。

それによって新人でもコミュニケーション能力と、後輩を育成する力が自ずと身につきます。こうした、言わば事前学習を短期間ではなく、2年ぐらいのスパンで考えていけば、現場レベルでのリーダーがやらなければならないほとんどの仕事を覚えることができ、また最低限のピープル・スキルも身につくようになっていきます。

少し具体的に、コミュニケーションを図る上で大切なことを説明します。まず、相手をきちんと認めることが大前提です。相手が正社員であろうとアルバイトであろうと同じです。

忙しいときでも、しっかり挨拶する。「おい」とか「お前」ではなく、一人一人を名前で呼ぶ。話をするときは、きちんと相手の目を見る。命令するのではなく、依頼をする。そして、それを実行してもらったら、きちんとお礼を言う。どれも当たり前のことのようですが、部下であるスタッフを単なる労働力として見てしまうと、おろそかになりがちです。

そうではなく、一緒に店舗を盛り立てる「仲間」である、と意識することが大事です。この「仲間意識」、あるいは「チーム意識」は、サービス業に限らず、あらゆる組織にとって良好なコミュニケーションの基礎と言えるでしょう。

もう一つ大切なことは、聞く姿勢を持つことです。コミュニケーションの基本は、相手の話を聞いて理解すること。店長のように指示をする立場になると、ついつい一方的に話をしがちになりますが、自分の話をする前に、相手の話を聞くことを心がけます。

特にアルバイトは、自分から店長になかなか話しかけにくいものです。ですから、相手の話を引き出すスキルも必要です。こうしたスキルもまた、教育によって身につくものです。

ティーチングよりコーチングのスキル

アルバイトを含めた店舗スタッフの育成は、店長にとって重要な役割の一つです。私自身が店長を育成するときに特に感じたのは、ティーチングよりコーチングのスキルが大事だ、ということでした。ティーチングとは、業務知識がない相手に対して、正しい知識や方法を教えることで、特に新人などに対しては必要なことです。

これに対してコーチングとは、相手の目標達成を支援すること。具体的には、正解を教えるのではなく、「問いかけて聞く」という対話を通して、新しい気づきをもたらしたり、考え方や行動の選択肢を増やすことを指します。

前に述べましたが、聞く姿勢を持ち、相手の話を引き出すことが、そのポイントになります。例えば、日本マクドナルドやユニクロでは、新入社員に開店業務や閉店業務を覚えてもらうとき、経験がないため、ティーチングでやり方を一から教えます。

ティーチングについては、店長は自分のテクニカル・スキルも高いですから、オペレーショナルなことは教えられます。それより難しいのは、ある程度オペレーションができるようになった人について、さらに成長させることで、そこでは店長間に違いが出ます。

その違いは何かというと、ある程度、一人前になった人がモチベーション高く成長していける状態に持っていけるか、それともだんだんやる気がなくなっていくか。この違いが大きいのです。そこで必要となるのは、ティーチングではなくコーチングのスキルです。

例えば、アルバイトの離職率を下げる方法を考えさせる、休日の売上を伸ばす対策を考えてもらうなど、答えが一つではなくいろいろな選択肢があり得るケースで自発的行動を促すのがコーチングです。私自身、コミュニケーションやピープル・スキル、人間力を向上させる、といったことにおいては、集合研修で多くのことを学びました。

初めて店長になったのは入社2年目のことですが、一番苦労したのがスタッフとの接し方でした。もともとコミュニケーションが得意ではなかったのですが、人の話を聞くスキルが足りなかったのです。

店舗のオペレーションには自信がありましたから、店長になって張り切って高い目標を設定したのですが、私が求めるようにはスタッフが動いてくれません。

そもそも要求が高すぎたのですが、当時はそのことに気づかず、スタッフにきつく接することもありました。その結果、みんなのモチベーションは上がらず、アルバイトの離職も相次ぎました。

それでもハンバーガー大学の店長研修プログラムを受講し、エリアマネージャーによるアドバイスを実践したこともあり、コミュニケーションのスキルも向上していきました。

人の話が聞けるようになったことで、店長として信頼されるようになっていったことを、今でも鮮明に覚えています。前述した店長になる前のOJTと研修によって、リーダーシップ、ティーチングとコーチング、カウンセリングなどのスキルも、前もって学ぶことができました。

カウンセリングというのは、相手の抱える問題や悩みに対して傾聴のスキルを用いて行う相談援助のことです。

これらを学ぶことで、こういう場合の部下にはティーチング、こういう場合はコーチング、こういう場合にはカウンセリング、と使い分けることができるようになりましたし、意識して実践するようになりました。

「評価を上げるために仕事をする」のは正しい

店長会議を学習の場に利用する

もう一つ、孤独に陥りがちな店長にとって、エリア単位でエリアマネージャーが主催する店長会議に参加することは有益です。これは数人の集まりでも構いません。

業績をいかに上げるかという数字とマネジメントの話、店舗スタッフの育成の話など、エリアマネージャーが一人一人に質問をして、それぞれ答えていくという形で会議を進めますが、他の店長の答えを聞くことがとても勉強になるのです。

私自身もその経験がありますが、エリアに大先輩の店長が何人かいて、優秀な店長は常に余裕が感じられました。店長になりたての頃は、自分に余裕がなかったために、それが非常にうらやましいと思いましたし、刺激になりました。

優れたエリアマネージャーは、このように優秀な店長を利用して、他の店長にいい影響を与えるということを意識的にやるものです。同時に、店長会議は店舗スタッフには話しにくい疑問や悩みを打ち明ける場にもなりますし、話をすることで孤独に落ち込まずに済むという大きな利点があります。

店長育成に有効なグローイング・サイクル

このような「2教える」ことの前提として、ここでも大事なのは「1基準を示す」ことですし、さらに「3要求する」「4評価する」が加わることで、店長の成長が確かなものになります。

標準的な店長と同等なスキルのレベルに達するまでの期間に基準を設けて、実践することを要求します。それに対して遅れているか進んでいるかを測ります。遅れているとすれば、それが本人の問題か、上司の指導力の問題かも、わかります。

店長育成もやはりグローイング・サイクルが基本になります。店長にこうなってほしいということ、やってほしいことと、そのレベル感を整理して、教え、評価するのです。

「4評価する」に関しては、最低でも半年に一回、エリアマネージャーが店長と評価面談をして、良かった点、いま一つだった点をしっかり表面化させ、次期の課題について話し合うことはとても役に立ちます。

私は、いい評価を得るためにどうすればいいか、について組織の中で普通に語り合ってほしいと考えています。それはエリアマネージャーと店長の間でもそうですし、店長と店舗スタッフの間でも同じことが言えます。

評価による話し合いが成長につながる

このように言うと「評価のために仕事をするのか?」と反発を感じる方もいるかもしれませんが、評価を上げるために仕事をするという意識と価値観が醸成されないのであれば、何のための評価なのかわかりません。

評価とは、成長するために必要なものです。次期に評価を上げるために何をするかを上司とディスカッションする。そのような習慣ができれば、きっといい組織になるでしょうし、ひいてはいい会社になるに違いありません。

店長に対する評価については、早い段階で人間性を上げていくような評価項目を必ず入れるべきです。もちろん業績による定量的な評価は必要ですが、サービス業では外的影響によって業績が上下しがちですから、それだけで評価するのは、成長のための評価としては適切ではありません。

行動は変えていくことができる

性格ではなく行動に焦点を当てる

私が店長だったとき、常に注意していたのが、アルバイト80人のうち、どのぐらいがモチベーションの高いレベルにいるか、ということでした。例えば、10人中9人がモチベーションの高いレベルにいるというのと、9人がモチベーションの低いレベルにいるという状態では、まったく結果が違います。

良い結果を出しているのは、言うまでもなくモチベーションが高い人たちです。店長としては、この状態にみんながいれば、ほぼ楽勝。顧客満足度が高い状態を保ち、売上・利益とも目標をクリアすることができます。

例えば店長が不在のときに、モチベーションが高い店舗スタッフは、率先して掃除もするし、電気代、水道代を節約しようと考えて行動します。最高の店舗を作るには、常にスタッフのモチベーションを高くキープできるコミュニケーション・スキルが大事になってきます。

具体的にはコーチングのスキルがとても大事です。傾聴のスキルや相手の考えを引き出す質問をしながら、モチベーションを上げていくことは、ある程度、トレーニングによってできるようになります。

意志がないと、人の行動は変わりません。店舗スタッフをマネジメントするには、その人の性格ではなく、行動に焦点を当てることが必要です。これは人財育成の基本ですが、人の性格は変わらないけれど、行動は意識すれば変えられます。

何も考えずストレスフリーの状態にいれば、人は自分が一番居心地のいいところにいたがるものですが、意識して変えていくことができれば、それが習慣になっていきます。行動を変えるきっかけになることを店長はどんどん与えていかなければなりません。

そのきっかけが、実は教育と評価なのです。ここで例を挙げると、私が店長時代に、接客時にまったく笑顔がないアルバイトの女子高生がいました。

しかし、彼女は休憩室では明るい雰囲気で、とても良い笑顔で話しており、その明るい笑顔がいっしょに働く仲間に良い影響を与えていたのです。

私は評価面談時に、彼女の笑顔と明るさが周りの雰囲気を変える力があること、それを接客時に出すことにより、お客様や店舗で働く仲間に対してプラスの影響があるという話をしました。その評価面談をきっかけに、彼女の接客がとても良くなっていったのです。

挫折を通じて学んだこと

ここで私自身の店長体験を振り返ってみます。日本マクドナルドで、私は7店舗で8年、店長を務めました。当時は店長を5年ほど務めるとスーパーバイザーに昇格する人が多かったので、8年というのは長い方だったと思います。

自由が丘店、三軒茶屋店、新宿スタジオアルタ店でそれぞれ店長を務めた後、赤坂見附店でグランド・オープン(新規開店)を任されました。私にとっては大きなチャンスでした。これを成功させて、社内で認められたいと張り切ったのですが、これが初めての挫折の経験になったのです。

立地がいいので、オープンすると売上は非常に上がりました。ただ、スタッフを集めるのに苦労しました。オフィス街であるという土地柄で、近隣に学校がないこともあり、主婦も学生も高校生もいないのです。赤坂見附店には2年いましたが、私の評価は上がりませんでした。

スタッフ集めに苦労する中で、店長として、それこそ朝早くから夜遅くまで頑張っていたのですが、体力の消耗と自分の成長は比例しないということを学びました。働く根性は身についたと思いますが。

その経験を通して、私は自分の意志で行動を変えていかなければならない、と気がついたのだと思います。売上が伸びたのは場所がいいからであって、店長である私の努力の結果ではありません。

おそらく会社はそのようなことはわかっていて、スタッフになる人が少ない店で私がどうするかという、努力と工夫を見ていたのだと思います。

例えばそのときは、人がなかなか集められないという状況の中で、アルバイトリーダーを育てることができなかった、という反省がありました。採用が難しかった、ということも確かなのですが、その前の新宿スタジオアルタ店で成功したという意識があったのだと思います。

新宿ですからアルバイト・スタッフを集めることも容易でしたし、リーダーを育成することもできました。そこでの感覚を、人の少ない赤坂見附でも引きずっていたのです。そんな厳しい経験をきっかけとして、育成に意識的に取り組むようになりました。

スタッフとのコミュニケーションを増やす

その後、店長を務めた店では、研修を通して、あらためて人に関するコミュニケーションを学び直し、実践しました。マクドナルドの教育は一本、筋が通っているのですが、経験を重ねるとともに難易度が上がっていく仕組みでした。

それについていきながら、雑談も含めてスタッフとコミュニケーションをとる時間を意識して増やすようになりましたし、注意深くみんなの行動を観察するようにもなりました。

自分自身が忙しすぎる状況ですと、自分がしんどいだけでなく、スタッフも同じようにしんどくなります。

そうなると、ついついスタッフに厳しく接することができなくなりますから、QSCをはじめとして店舗のレベルが下がっていきます。そのようにならないための店長のあり方、スタッフのモチベーションの保ち方を、失敗経験から学んだと思います。これが、私自身、行動を変えるきっかけでした。

COLUMN3優秀な店長に共通するもの

第3章では、店長の育成について解説してきました。店長は誰にでも務まる、と言うと言い過ぎかもしれませんが、特別な能力を持っていなければ務まらない、というものではなく、育成ができることはご理解いただけたのではないかと思います。

ところで、優秀な店長に共通する条件とは何でしょうか。いろいろな考え方があると思いますが、私が考えるのは「人に強いこと」「数字に強いこと」「顧客満足にこだわること」「目標達成にこだわること」という4つの条件です。

個性は人それぞれですが、それを超えて、優秀な店長は、必ずこの4つを兼ね備えていると思います。「顧客満足にこだわる」ことは、サービス業で働く者にとっては当然のことかもしれません。常にお客様の立場に立って考えることは、基本です。

それは立場と関係なくそうであり、店でそれを代表するのが店長ということになります。お客様の立場に立つことなく、業績や自分の評価だけを追っていくとすれば、必ずどこかで歪みが出るはずです。その結果、目標は達成できなくなるかもしれません。

「顧客満足にこだわること」と「目標達成にこだわること」は、矛盾しません。お客様の立場に立つことが顧客満足度の向上につながり、結果として業績につながる、つまりは目標達成につながるということです。「数字に強い」というのは言うまでもなく、経営数値に強いということです。

接客面でホスピタリティを発揮することはもちろん大事ですが、売上目標をクリアし、人件費をはじめとするコストのコントロールを徹底し、その結果として利益をきちんと押さえていくのは、店舗責任者として必須の要件になります。

「人に強い」というのは、現在の雇用環境では、最も重要なポイントかもしれません。人不足の現状ですから、店長には、より人にフォーカスした仕事が求められます。

私が店長をしていた30年前とは、まったく環境が違います。当時は、募集すれば人が来た時代。その中から選んで採用していました。

また、誰かが辞めても、補充することは難しくありませんでした。今はそうはいきません。だから店長は、より人にフォーカスする、つまり働く人とコミュニケーションをうまくとり、ケアとフォローをして少しでも長く働いてもらう必要があります。

お客様を大切にする気持ちと、仲間を大切にする気持ちは、共通していると私は思います。その根底に備えるべきは「人間力」でしょう。人間力を身につけるためには、人を大切にする、ちゃんと話を聞く、上から目線で接しないなど、基本的なコミュニケーションを身につける必要があります。それが、「人に強い」ということです。

「人に強い」「数字に強い」の2つは、もともとのセンスもあるでしょうが、どちらも後天的に開発することが可能です。OJTと研修、そしてそれらをふまえた実践を通して、身につけることができ、スキルアップが可能です。

考えてみれば、研修はそのためにこそあるので、センスが絶対で、それを変えられないものなら、研修する意味はないでしょう。それらについて、教わらないでもできる人が入社した時代は、とっくに終わりました。

店長を育成するのは難しい。でも、その育成の方法については、「人に強いこと」「数字に強いこと」「顧客満足にこだわること」「目標達成にこだわること」という4つの条件をもとに、いろいろと考えられるのではないでしょうか。

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