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2 パート・アルバイト雇用の現状と課題

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2 パート・アルバイト雇用の現状と課題

景気に左右されるパート・アルバイトの雇用

「相思相愛マネジメント」は、パート・アルバイトについて知り、その特性を踏まえた上で「人を活かす」ためのノウハウだと述べました。

つまり、パート・アルバイトの雇用環境についても、知っておくことが大事です。

正社員同様、パート・アルバイトの雇用も、景気の動向に強く影響されます。景気が後退し有効求人倍率が下がれば、「人を採用しやすく」なります。

人を募集する企業が減り、仕事を探す人が増えた二〇〇九年には、パート・アルバイトの募集広告を出すと、数名募集のところに、数十名の応募があることも、珍しくなくなりました。

実際、とあるコンビニエンスストア本部の、店舗スタッフ採用担当者は「採用は、明らかに楽になりました。

かつては求人広告を出しても反響がなく、人手不足によるオーナーの過労を深刻に心配しましたが、打って変わった状況です。

不況で仕事を探している人が増えたことは、日本全体としては憂慮すべきことですが、コンビニ業界で考えれば、大変な追い風ともいえると思います」と明かします。

半面、景気が良くなれば需給バランスが逆転し、あっという間に「人手不足」とならないとも限りません。

例えば、数年前にある牛丼チェーンは、「昼限定」ですが都心部で、一五〇〇円に迫る時給で募集しました。パート・アルバイトがランチタイムの営業に必要なだけ確保できなかったからです。

また、本来二四時間営業のファミリーレストランチェーンの一部の店舗が、「パート・アルバイトが足りないが、これ以上時給を上げると赤字になる」ということで、深夜営業をやめてしまった例もありました。

「パート・アルバイトが必要な人数採用できない」ことが、とある大型ショッピングセンターのグランドオープンに支障をきたしたこともあったと聞いています。

有効求人倍率から自社の採用しやすさを知る

前出の「有効求人倍率」は、こうした「採用しやすさ」について、今、どういう状況にあるかを示す数字です。具体的には、仕事を探している人一人に対して、企業からの求人がどれだけあるかを表しています。

例えば、有効求人倍率「一倍」は、仕事を探している人と企業からの求人件数が同数であることを示します。これが「二倍」だと、仕事を探している人一人に対して企業からの求人が二件あるということです。

計算上は、働きたい人一人に対して、二社がアプローチしていることとなり、当然人は採りづらくなります。つまり、売り手市場ということです。

一方「〇・五倍」は、この逆です。仕事を探している人一人に対して、企業からの求人が〇・五件、つまり仕事を探している人二人に対して一件しか求人がないということで、当然人は採りやすくなります。要するに買い手市場ということです。

有効求人倍率は、業種や職種、地域によって、数値に開きがあります。

都道府県別や、職種別、雇用形態別の数字が出ているので、これを確認することにより、自社が「採用しやすい」環境にあるのかどうかがわかります。

二〇〇九年一〇月現在のように、人を採用しやすい環境にあるならば、「すぐに採用者を決定せず、より望ましい条件の人からの応募を待つ」など、強気の採用活動が可能でしょう。

「生産性」と「サービス力」を維持する採用

このように「人の採用しやすさ」は、自社の置かれた環境に、いかんともしがたく左右されます。

しかし、自社がどういう環境にあったとしても、「生産性」と「サービス力」に対する意識は、強くもち続けることが大事です。

「良い人が採用できないから」、あるいは「経営が厳しく人を雇えないから」商品やサービスの質が下がったり、納期が遅れても仕方ないと開き直ってしまっては、ジリ貧になるばかりです。

製造業であれば、少ない人員で以前と同じ生産力を維持するための、改善や工夫、あるいは改革が必要です。

サービス業については、人が減ったり、パート・アルバイト化を一層進めても「サービスの質を劣化させない」努力が必須です。

サービスが悪いと、あっという間に客離れが起き、そのお客さまは容易に戻りません。

例えばパート・アルバイトが多数働く居酒屋の場合。繁忙期など、席が空いていても前のお客さまの片付けが済んでいないので、次のお客さまが入れないような場面に遭遇することは少なくありません。

ようやく席に通されても、なかなか注文を取りに来なかったり、注文したのに、乾杯のお酒が来なかったり。そんな、嫌な思いをした経験は数知れません。

こんなとき、貴重な時間や、楽しかるべき飲食の場を、台なしにされた事実はしっかり心に残ります。他によほどの魅力がない限り、「二度と使うまい」と思うのが、今の時代のお客さまです。

問題の原因は、三つの「ない」

こうした問題は、パート・アルバイトに関する三つの「ない」、すなわち、「採れない!」「続かない!」「活かせない!」 が原因です。

「採れない!」は、良い人材」が採用できないということです。自社に合った、意欲の高いパート・アルバイトが雇用できていない状況です。良い人材からの応募がない、あるいは応募者の中から自社向けの人材を選考・採用できていないことに因ります。

「続かない!」とは要するに、採用しても、すぐ辞められてしまう状況です。定着率が悪い、とか低い、とも表現されます。

「活かせない!」は、パート・アルバイトをきちんと活用できていない状況です。しっかり教育していないため仕事が非効率だったり、接客・サービスが悪くクレームになってしまったり、客離れを起こしてしまうことをいいます。

この三つの「ない」は、一見、別の問題のようですが、共に連動しています。

例えば、なぜ「採れない!」ことが問題になるのかといえば、それは「続かない!」からです。良い人材が長く頑張ってくれていれば、事業拡大をしない限り、新たに採用する必要はありません。

もちろん、パート・アルバイトが正社員に比べ、比較的辞めやすい労働力であることは確かです。しかし、それを踏まえてもなお退職が多い、それも櫛の歯が抜けるようにポロポロ辞めてしまうようなら、大きな問題です。人材が定着しないからこそ頻繁に採用が必要となり、「採れない!」ことが、大きな課題となるのです。

一方、「活かせない!」理由の背景にも「(良い人材が)採れない!」「続かない!」があります。意欲がなく、担当する業務に不向きな人材では、どんなに簡単な仕事でも期待どおりの成果は出せません。

また、いくら良い人材であっても、ある程度長く働いてくれないことには、ベテラン同様の成果を出すことはできません。

そして「続かない」のはなぜかといえば、それは「活かせない!」「(良い人材が)採れない!」ことが理由です。パート・アルバイトに長く働いてもらうためには、企業の適切なマネジメントが必要です。半面、採用したパート・アルバイト本人の意識や資質に拠るところも大きいからです。

ベテランがいる戦略的な職場へ

このように、「(良い人材が)採れない!」「続かない!」「活かせない!」は、互いに連動した問題です。

しかし中でも、「続かない!」ことが一番大きな問題といえるでしょう。なぜなら、ベテランが育たないからです。

長く勤めてくれているベテランと新人との違いは、できる仕事の種類やスピード、量などにとどまりません。仕事の流れや背景、目的などを熟知しているベテランは、同じ仕事でも新人と違い、自ら判断しながら、最善のやり方でこなしてくれます。

指示に基づいて仕事をしてもらう場合でも、自社での経験の多いパート・アルバイトほど、「あのときと同じように」などで通じるようになります。

一つひとつ説明する手間が省け、指示する方にとっても、される方にとっても、負担が軽くなるのです。

また、長く働くことで仕事や職場、お客さまに愛着が生まれれば、それだけ参画意識は上がります。参画意識、つまり「私の仕事」「私の職場」意識の高いスタッフに支えられた会社は、お客さまからの受けも良くなります。

逆にいえば、パート・アルバイトが、このように自主的に働いてくれなかったら、正社員の負担は増すばかりです。

マニュアル以外の対応が一切できなかったり、正社員があれこれ細かく指示をしてようやく行動するような人ばかりでは、仕事が回っていきません。

これでは、正社員が労働過多でつぶれてしまったり、「本来すべき」仕事がおろそかになってしまいます。本来すべき仕事とは、より「戦略的」な仕事です。

例えば、自社の客層に合わせた顧客満足( CS)経営の方向性を考えたり、スタッフへの教育や、あるいは無駄のない仕事の進め方などの業務改善、自社の収益性を高める工夫といったことです。

「続かない」が原因の三つの「コスト(無駄)」

以上、パート・アルバイトの定着が大事な理由として、 1 人材が育たない 2 「戦略的」な仕事ができない ということを挙げましたが、さらに、パート・アルバイトが定着しないことにより、三つの「コスト(無駄)」が発生します。

具体的には「募集コスト」・「採用コスト」・「教育コスト」です。

募集コスト

人が辞めれば、当然「補充」しなければなりません。その際、ハローワークを利用したり、店頭にポスターを貼って対応すれば無料ですが、実際には、それだけでは事足りないことが多く、広告費を使って求人広告などを出すことになります。

さらに、人が短期でどんどん辞めれば、これを何度も繰り返すことになり、費用もうなぎのぼりです。

採用コスト

正社員の採用ほどではないにせよ、パート・アルバイトの採用でも、履歴書のやり取りや採用面接を行う必要があり、いろいろなコストが発生します。

それにかかる実費はもちろん、求人広告会社との打ち合わせ、募集受付、採用面接などに携わる店長や正社員の人件費も費やされます。ここでの「採用コスト」とは、これら見えないコストも含めた概念です。

教育コスト

新人には、当然のことながら、仕事を一から教えなくてはなりません。その「教えた新人」が辞めてしまえば、施した教育のコストが、まさに無駄になってしまいます。この場合、教える側、教えられる側(教えた相手)の人件費が無駄になるだけではありません。

「これから活躍してもらおうと思っていた新人」に、突然退職されるダメージの影響が、実はとても大きいのです。募集・採用や育成に携わってきた担当者の落胆、徒労感は相当です。また、担当者や、トップが気落ちしていると、組織全体の雰囲気を暗くします。

退職が続くと仲間のパート・アルバイトの間に動揺が走ります。また、残った人の業務負担が増すこととなり、これを厭ってさらに退職者が増えることになりかねません。

「相思相愛」で「 Win-Win」の関係作り

すでに触れたように、パート・アルバイトは正社員より短い時間働く労働者です。また、多くの場合、「正社員とは難易度が違う(低い)」「決められた仕事」を部分的に担っています。

そしてその分、待遇などで正社員と差をつけられているわけです。また、多くが期間を定めた契約で雇われています。これが、パート・アルバイトが辞めやすく、与えられた仕事をきちんと行い、知恵を出し合い、助け合う意識が希薄になりがちな理由です。

働き続けたり、仕事を頑張るインセンティブが薄いのです。

年功序列賃金や終身雇用が過去のものとなり、正社員ですらきちんとした評価制度を作り、それを昇進・昇格や、賃金に連動させないとモチベーションが保てない時代です。

パート・アルバイトにもそうした仕組みは必要ですが、これがない場合は特に、別の動機付けが必要です。「相思相愛マネジメント」は、まさにその「別の動機付け」なのです。

これも前に述べたとおり、パート・アルバイトとの間に「相思相愛」の関係を作るポイントは、まず雇う側が率先して関係作りの行動をすることです。

こうして、ひとたび「相思相愛」の関係になれば、パート・アルバイト側にも「相思相愛」を歓迎し、これを維持したり高めようとする気持ちが生まれます。働きがいが格段に上がるからです。

要するに、「相思相愛」を軸に、会社側とパート・アルバイト側がともにハッピーになる「 Win-Win」の関係を作ること。これこそが、本書の主旨であり、狙いです。

ここでいう会社側の「 Win」とは、「パート・アルバイトが続く」「戦力化できる」ことだけにとどまりません。想い合う関係は、さまざまな付加価値を生み出します。

例えば、マナーは、相手を「想う」気持ちの体現です。コミュニケーションは、考えや情報など「想い」を、相手と交換することです。

相手が困っているときに自然と「助けてあげよう」と思ったり、「こうしてあげたら、相手の仕事が楽になるかな」とか「喜んでもらえるかな」といった気づきが生まれるのも、相手を「想う」気持ちがあるからです。

「相思相愛」の関係を作ることで、マナーやコミュニケーションといった仕事の基礎の基礎が、自然に高まる土壌もできてくるのです。

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