1 企業力を高める「正社員登用」
パート・アルバイトを正社員登用する三つのメリット
せっかく良い人と巡り会い、いくつものハードルを越えて得た幸せな家庭は、できるだけ長続きさせたいもの。相思相愛マネジメントにより、しっかり戦力化できたパート・アルバイトについても同じです。
その際、長続きの手段として「正社員に登用する」ことを真剣に検討してみる価値があります。三つのメリットがあるからです。第一に、優秀なパート・アルバイトを正社員に登用することで、その人により長く働いてもらえる可能性が高まります。
賃金などの処遇が高くなるばかりでなく、無期雇用契約にすることで安定性が高まり、自然と「腰を据えて」頑張る気持ちが生まれるからです。
雇用契約や仕事の内容、処遇などにより、パート・アルバイトが正社員に比べて「辞めやすい」労働力であると述べましたが、まさにその逆というわけです。第二に、正社員に登用することで、本人のモチベーションが上がります。
実際に正社員に登用された人にインタビューすると、「正社員になったことで責任感が増し、より一層頑張らなくては、と思った」と、ほぼ一様に答えます。
第三に、実際の働きぶりを見た上で登用できることです。その意味では、新たに正社員を募集して採用するより、失敗が少ないといえるでしょう。
正社員を募集しても「これは!」と思う人材からの応募がなかなかない場合など、パート・アルバイトからの登用に視点を変えてみるのは、有効な手段です。もちろん、登用の際は、公平・公正に「人を観て」行うことが大事です。
正社員への登用制度をパート・アルバイト活用戦略の一つとして
パート・アルバイトに正社員への道を開くことは、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法でも企業に義務付けられたことでもあります。
具体的には、企業は以下の四つのいずれかを、行わなければなりません。
- 正社員を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパートに周知する
- 正社員のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパートにも応募機会を与える
- パートが正社員になるための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する
- その他正社員への転換を推進するための措置
「法律で定められた義務」などと言われると、企業の負担が増すように感じられるかもしれません。しかし、自社のパート・アルバイト活用戦略の一つとして、ぜひ積極的に取り入れることをおすすめします。
理由はすでに述べたとおりですが、加えて「正社員への登用制度」が制度としてきちんと存在していることが、パート・アルバイトのモチベーションアップに大きく影響することがあります。
「頑張れば正社員になれる」ということは、それを志向するパート・アルバイトにとって、大きな魅力になるのです。求人募集の際にも、「正社員登用制度あり」などと掲載すれば、求人広告の魅力が高まります。
「将来は正社員になりたい」と思って応募する人は、仕事に対してより意欲的な人だといえます。面接の際、多少厳しいことを言っても応募を取りやめたりすることなく、ガッツでついてきてくれます。
もちろん、制度があるからといって、正社員になりたいパート・アルバイトをすべて正社員に登用することはありません。パートタイム労働法でも、あくまで「パートが正社員になるチャンスを与える」ことを義務付けているに過ぎません。
半面、「正社員登用制度あり」とうたいながら制度に実効性がない場合、それに気づいたパート・アルバイトがやる気をなくしてしまう可能性があるので、注意が必要です。
正社員とパートの違い
ところで正社員とパート・アルバイトの違い、つまり両者の線引きは、具体的にはどのように考えればいいのでしょうか? パートタイム労働法では、パート・アルバイトを「フルタイム正社員より短い時間働く労働者」としていますが、実際の働き方における同異性については、 職務の内容、 人材活用の仕組みや運用など、 契約期間の三方向から見ています。
職務の内容とは、パート・アルバイトの「実質的な業務の内容」や「業務に伴う責任の度合」です。人材活用の仕組みや運用などとは、例えば「“転勤”の有無および範囲」や「“職務の内容の変更”“配置の変更”の有無および範囲」などです。
契約期間は、パート・アルバイトとの雇用契約が「無期雇用契約(または反復更新により無期と同じ)」かどうかです。
こうした観点から、 職務の内容、および 人材活用の仕組みや運用などにおいてパート・アルバイトと正社員に違いが見られず、かつパート・アルバイトと無期雇用契約(または反復更新により無期と同じ)を結んでいる場合、そのパート・アルバイトは「正社員と同視すべき」だとしています。
なお、ある企業では、パート・アルバイトと正社員の仕事の違いについて、以下のように整理していました。
- 正社員 →仕事の仕組みを考える役割
- パート・アルバイト →仕事の仕組みの中で、実際に作業する役割、仕事の仕組みの中で、その仕組みがよりうまく運用されるよう、判断したり指示する役割
短時間正社員という選択肢も
「短時間正社員」とは文字どおり、フルタイム正社員より短い時間働く正社員です。「え? 労働時間が短いなら、パート・アルバイトじゃないの?」と思われた方も多いでしょう。実際、これまでは「正社員はフルタイム働くもの、短時間勤務ならパート・アルバイト」という考えが一般的でした。
それに対して短時間正社員は、働く時間にとらわれず、一人ひとりのスキルや能力・意欲を評価して「長期にわたって自社戦力として活躍してほしい」人を正社員として雇用していこうという考えであり、パート・アルバイトを正社員に登用する際の、有効な選択肢です。
というのは、能力も意欲も申し分ないにもかかわらず、家庭の事情などからフルタイムでは働けないがゆえに、パート・アルバイトとして雇用されている人がいるからです。こうした人々を短時間正社員に登用することは、本人のモチベーションも定着率も高めます。
もちろん、子どもが大きくなるなど本人の働く環境や意思に応じて、フルタイム勤務に替わってもらうこともできます。
特に看護師など人手不足の職種において、人材確保の有効な手段として注目を集め、また実際に広まっています。長い目で見れば今後、少子高齢化による労働力不足が、他人事ではない自社の課題として表面化することは自明です。
そんななか、優秀な働き手を確保していくための一つの方策として、フルタイム正社員が一時的に短時間勤務をする場合も含めた「短時間正社員」という雇用形態が、意識され始めているのです。
なお、短時間正社員として雇用した場合は、フルタイム正社員が同じ仕事をし、同じ評価を得た場合の賃金を時間給換算し、実際に働いた時間分、支払います。また、その労働時間にかかわらず、社会保険に加入します。
【事例】パートを短時間勤務の正社員に
神戸に本社を構え全国に店舗展開する、洋菓子製造・販売のある老舗企業は、パートタイマーを短時間勤務のまま正社員に登用する人事制度を導入しました。
同時に、フルタイム正社員に対しても「希望すれば理由を問わず短時間勤務を認める」としています。パートを正社員にすれば、当然人件費が上昇します。実際、同社は「導入は決断でした」と振り返ります。
それでも決意したのは、創業八〇年近い同社のさらなる発展のためでした。
同社には、正社員約八〇〇人に対して、パート・アルバイトが二〇〇〇人近くいますが、優秀なパートを正社員化し、その意欲・能力を発揮し定着してもらえれば、長期的には人件費上昇分以上の生産性向上が、期待できると考えたのです。
実際に短時間正社員に登用されたスタッフの一人、三〇代の Aさんは、こう話します。
「私は就職氷河期世代で、短大卒業後パートで入社しました。仕事はすごく楽しくて、途中からパート店長も引き受けました。でも、実際に店長になってみると、仕事は同じなのに正社員とパートではお給料が全然違うことに気づきます。でも、仕方ないと思っていたんです。
だから今回、短時間正社員制度ができ、正社員になれて、本当にうれしいです。もっともっと頑張って、結果を出さないと、と思います」
一方、やはりパート店長から短時間正社員になった Bさんは、
「数社のパートを経験していますが、ここは本当に働きやすく、長く勤めたいと思っていました。そこに今回、短時間正社員制度が導入され『会社は私たちのことを考えてくださったんだ』と思いました。
パート時代から、モチベーションは高く維持してきたつもりですが、制度導入で会社の期待を肌で感じ、今まで以上に責任感をもって働こうと思っています」と話します。
同社は「導入したのは正解だった」と、当時の決断を評価しています。
2 法令遵守で相思相愛
パート・アルバイトも法律で守られている
パート・アルバイトも労働者です。「労働基準法」「パートタイム労働法」ほか、各種労働関係の法律により守られています。
パート・アルバイトだからといって好き勝手に働かせていいわけではありませんし、そんなことをしたら世間から「いいかげんな、あこぎな企業」と思われてしまいます。「知らなかった」ではすまされないのです。
同時に、かつてに比べパート・アルバイト本人たちが、「自分たちの働き方」に関する情報を収集しやすい状況になっています。企業側の違法行為が、労働者の訴えによって表面化することも稀ではなくなりました。
よくいわれる従業員の非正社員化が、すべて悪いわけではありません。空いた時間を活用し自分のペースで働きたい人もいますし、拘束を嫌いあえて正社員にならない人もいます。
そういった人たちに短時間や短期間の勤務でも支障がない仕事、つまり熟練を要せず拘束度や責任も低い仕事に就いてもらい、その分低い賃金で雇用することには、妥当性があります。
パート・アルバイトと会社の双方が納得し、双方の満足につながる働き方といえます。ともあれ、法律を知り、法に則った適切なマネジメントを行うことは、パート・アルバイト戦力化の近道です。そこでここでは、法律で定められているマネジメント・ポイントについて、これまで触れてこなかった部分を記します。
男女差別の禁止とセクハラについて
パート・アルバイトにも、男女雇用機会均等法が適用されます。これにより、事業主は、パート・アルバイトに男女を理由とした差別的取扱いをすることを禁じ禁じられています。
具体的には、禁じられている募集とは?で触れた募集・採用、そして配置・昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新の各場面です。
また同法では、職場におけるセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)に関しても、「事業主は雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定しています。
すなわち、職場におけるセクハラに関する方針を明確化し、パート・アルバイトを含むすべての従業員にその内容を周知・啓発します。また、従業員の相談に応じたり苦情を受け付けるべく体制を整備し、それらに迅速かつ適切に対応しなくてはなりません。
なお、相談の対応にあたっては、プライバシーを保護すること、また相談したこと等を理由に不利益な取扱いを行わないことを定め、これもパート・アルバイトを含むすべての従業員に周知・啓発します。
健康診断を実施するパート・アルバイトとは
パート・アルバイトでも、健康診断を受けさせなくてはならない場合があります。以下の二つの要件を、ともに満たしている場合です。期間の定めのない雇用契約によって雇用されている人。
また期間に定めがあっても、契約期間が一年以上(深夜業を含む業務など特定業務に従事する場合は六カ月以上)である人。契約更新により一年以上雇用されることが予定されている人。
もしくはすでに一年以上雇用されている人 一週間の所定労働時間が、その事業所で同種の業務に従事する正社員の四分の三以上の人 なお、一週の所定労働時間が正社員の四分の三未満であっても、おおむね二分の一以上の人に対しては、健康診断を実施することが望ましいとされています。
健康診断の費用は、事業主の負担となります。一方、パート・アルバイトが健康診断を受けた際の時給については、一般健康診断の場合、労使が協議して決めることになっています。
とはいえ労働者の健康は会社の運営に不可欠です。従って、賃金も支払うことが望ましいといえるでしょう。実施時期は、一年に一回定期的(同じぐらいの時期)に行うこととされています。
定期健康診断の結果、「過労死」等に関連する一定の項目で異常の所見が見られる場合、労働者の請求に基づき、労働者災害補償保険(労災保険)により、二次健康診断等給付が受けられます。
妊娠・出産したパート・アルバイトの保護
労働基準法により事業主は、パート・アルバイトに対しても、母性保護措置を取ることが義務付けられています。具体的には、以下の五つです。
妊産婦などの危険有害業務の就業制限……妊娠、出産、哺育などに有害な一定の業務への就業には制限があります
産前産後休業と軽易な業務への転換……産前六週間(多胎妊娠の場合は一四週間)について女性が請求した場合、および産後八週間については、原則的に就業が制限されます。また、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に配置転換させなくてはなりません
妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限……変形労働時間制が採られている場合も、妊産婦が請求すれば、一日および一週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません
時間外労働・休日労働・深夜業の制限……妊産婦が請求した場合、これらが制限されます
育児時間……生後満一年に達しない子どもを育てている女性は、一日二回、少なくとも各三〇分の育児時間を請求することができます なお、これらの母性保護措置を受けたことや、そもそも結婚・妊娠・出産したことなどを理由に、そのパート・アルバイトを解雇したり雇い止め(契約終了(雇い止め)する際の実務参照)にすることなどは、男女雇用機会均等法により禁止されています。
また、企業は、妊娠中および出産後のパート・アルバイトが保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保したり、主治医などから受けた指導事項を守ることができるようにしなければなりません。
産前産後休暇、育児時間等の賃金を有給として取り扱うかどうかは、各企業で決められます。その際、就業規則などで明確にしておくことが大事です。
育児や介護をするパート・アルバイトに対する義務
パート・アルバイトでも、期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合、育児休業や介護休業が取得できます。期間の定めのある雇用契約の場合でも、一定の要件を満たしている場合にはその対象になります。
これは育児・介護休業法により定められていることです。その他、同法により企業は、具体的には以下の四つを実施しなくてはなりません。(なお、育児・介護休業法は、二〇〇九年六月に改正法が成立しました。
※印は、改正法による変更点です。
なお、改正法は、二〇一〇年〈常時一〇〇人以下の労働者を雇用する事業主については二〇一二年〉夏ごろまでに施行される予定です) 育児休業制度 パート・アルバイトが申し出た場合、企業はその子が一歳に達するまでのあいだ、育児休業をさせなければなりません。
また、パート・アルバイトが申し出た場合、子どもが一歳六カ月に達するまでの間、休業期間を延長させなければならない場合もあります ※父母がともに育児休業を取得する場合、一歳二カ月(現行一歳)までの間に、一年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)。
また、父親が出産後八週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。
配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得を不可とすることができる制度は廃止 介護休業制度 パート・アルバイトが申し出た場合、要介護状態にある対象家族一人につき、常時介護を必要とする状態ごとに、一回の介護休業をさせなければなりません 子の看護休暇 小学校就学前の子どもを養育するパート・アルバイトが申し出た場合、年五日まで、病気や怪我をした子どもの看護のために休暇を与えなければなりません ※小学校就学前の子どもが二人以上であれば、年一 ○日に拡充 勤務時間の短縮等の措置 三歳未満の子どもを育てているか、要介護状態にある家族の介護をしているパート・アルバイトについては、勤務時間の短縮等を行います。
その他、以下の改正があります。
※三歳未満の子どもを育てている労働者について短時間勤務制度(一日六時間)を設けることが事業主の義務とされます。
また、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化しなくてはなりません ※介護のための短期の休暇制度を創設しなくてはなりません(要介護状態の対象家族が、一人であれば年五日、二人以上であれば年一〇日) ※苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組みを創設する(二 ○一 ○年四月施行)。
また、勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対する過料を創設する 育児・介護休業中の労働者に、賃金を支払う義務はありません。
ただし賃金については労使間であらかじめ取り決め、きちんと明示しておきます。
雇用保険料については、育児・介護休業ともに、給与を支給していなければ、被保険者(労働者)も事業主も支払いは免除となります。
一方、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、育児休業の場合は事業主が社会保険事務所に申請すれば、被保険者、事業主負担ともに免除されます。
介護休業中の場合は、被保険者、事業主ともに負担しなければなりません。
パート・アルバイトの待遇や苦情に関する会社の責任
例えば、あるパートさんから「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜ給料に差があるの?」と聞かれた場合、きちんと説明しなくてはならないことが、二〇〇八年四月施行の改正パートタイム労働法により義務付けられています。
こうした「待遇の差別的取扱い」「賃金の決定方法」のほか、「教育訓練」や「正社員への転換を推進するための措置」などについても、説明責任があります。
また、公正な待遇を実現するため、パート・アルバイトからの苦情や紛争の解決に関しても、パートタイム労働法によって取り決めがなされています。
具体的には、「労働条件の明示」「差別的取扱い」「教育訓練」「福利厚生施設」「正社員への転換」「待遇についての説明責任」について苦情や紛争があった場合、まずは事業主が、事業所内で、自主的に解決を図ることが、努力義務となっています。
それでも解決しない場合、都道府県労働局長による助言・指導・勧告や、都道府県労働局の紛争調整委員会による調停の対象となります。
3 それでも退職が決まったら
パートが退職を申し出たらどうするか
基本的に、自ら退職を申し出たパートを引き留めるのは、得策ではないと考えます。「辞めよう」という意思表示は、受ける会社側にしてみれば突然のことですが、本人にとってはいろいろと考えた結果です。
そうして行き着いた結論を、他者が覆そうと頑張っても、無理が生じるものだからです。一方、相手にためらいが見えた場合など、退職の意思を改めて確認してみたほうがいいこともあります。特に退職の理由については、じっくりと聞きます。
辞める理由が本人の意思とは違うところにあり、会社側の対応いかんで問題が解決でき、辞めずに済むことがあるからです。例えば、夫の転勤が理由なら、転居先次第では別の店舗で継続勤務できることもあるでしょう。
職場の人間関係が理由なら、異動や仲裁、場合によってはトラブルメーカーとなっている人を突き止め、教育・指導するといった対処の仕方もあるかもしれません。
そもそも退職とは
パートが会社を辞める場合、大きく二つの辞め方があります。一つは、退職。もう一つは、解雇です。退職とは、本人の申し出による退職や、雇用契約期間の満了による退職です。
本人の申し出による退職は、期間の定めのない雇用契約を結んでいるパートか、または一年を超える有期雇用契約を結んだパートが契約後一年を経過した後に退職を申し出た場合、いつでも退職することができる、というものです。
しかしながら、パート・アルバイトを戦力化し、責任ある仕事を任せていれば、当然引き継ぎや後任の選定も簡単ではありません。
そこで、退職の申し出は、例えば「一カ月前まで」など妥当な時期に行うことを、“社内ルール”として就業規則などに明記しておくとよいでしょう。
一方、雇用契約期間の満了による退職は、期間を定めた雇用契約(有期雇用契約)を結んだ場合です。雇用契約期間を定めて初めて雇い入れた場合、その期間が終われば、自動的に契約が満了し、退職することになります。
しかしながら実際は、雇用契約が満了しても、その契約を更新し、引き続き継続雇用している場合が多いようです。なお、更新をせず、契約を終了(雇い止め)する際には、雇い止めの予告をし、理由を明示しなくてはならない場合があります(雇い止めの予告参照)。
また注意すべきは、こうして短期の反復更新を続けていると、「実質上は期間の定めのない雇用契約だった」と判断される場合が多いことです。
つまり雇用契約期間が満了しても、期間満了が退職の理由として認められない場合が生じます。
この場合、使用者がパート・アルバイトとの雇用契約をただちに終了したければ、解雇予告(パート・アルバイトも簡単に解雇できない参照)の手続きをとる必要が生じます。
いずれにしても退職は、円満退職とすることが、双方にとって望ましいといえるでしょう。
契約終了(雇い止め)する際の実務
有期雇用契約により雇用していたパート・アルバイトについて、契約を終了(雇い止め)する場合、「雇い止めの予告」及び「雇い止めの理由の提示」を、行う必要がある場合があります。
これは、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に定められているものです。
また、パート・アルバイトが妊娠したり出産した際、妊娠や出産そのものや、母性健康管理や母性保護、あるいは妊娠や出産による能率低下などを理由に雇い止めすることは禁止されています。
●雇い止めの予告 有期雇用契約を結んでいるパート・アルバイトに対してその契約を更新しないとき、以下のようなパート・アルバイトに対しては、少なくともその契約が満了する三〇日前までに予告をしなくてはなりません。
雇い止めの予告をするパート・アルバイトとは、「三回以上契約を更新している」または「雇い入れの日から起算して、(更新の有無にかかわらず)一年を超えて継続勤務をしている」パート・アルバイトです。
一方、あらかじめ契約を更新しない旨を明示している場合には、予告をする必要がありません。
●雇い止めの理由の提示「雇い止めの予告」をした際、パート・アルバイトが「(有期雇用契約を)更新しない理由」について証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければなりません。
実際に雇い止めを行ってから、パート・アルバイトが請求してきた場合も同様です。
なお、雇い止めの理由を提示しなくてはならない有期雇用契約とは、「三回以上契約を更新している」または「雇い入れの日から起算して、(更新の有無にかかわらず)一年を超えて継続をしている」雇用契約で、かつ「あらかじめ契約を更新しない旨を明示していない」雇用契約です。
パート・アルバイトも簡単に解雇できない
「パート・アルバイトなら、自由に解雇できるんでしょ?」――というのは誤解です。パート・アルバイトであっても、以下に記すように「解雇の制限」があり、自由に解雇することはできません。また、解雇をする場合は、「解雇の予告」をしなくてはなりません。
●解雇の制限 解雇が「客観的に合理的な理由を欠き」「社会通念上相当であると認められない」場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法第一六条)。
これは、有期雇用契約のパート・アルバイトが契約の更新を繰り返している場合、その更新をしないときも同様です。解雇案件が出た場合は、それが認められるか否かなど、労働基準監督署に相談した方がいいでしょう。なお、以下のような解雇は、法律で禁じられています。
〈法律上禁止されている解雇〉・労働災害で療養中の期間とその後三〇日間・産前産後休業中とその後三〇日間・女性の婚姻・妊娠・出産・産前産後休業の取得、男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や、労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由とする解雇・育児・介護休業や子の看護休暇の申し出、取得を理由とする解雇 ●解雇の予告 パート・アルバイトを解雇する場合、いずれの場合も正社員同様、少なくとも三〇日前には解雇予告をしなくてはなりません。
三〇日前に解雇予告をしない場合、三〇日分以上の平均賃金を支払わなくてはなりません。
ただし、労働者の責に帰する重大な事由がある場合には、労働基準監督署に「解雇予告手当除外認定」を申請し、認定されれば解雇予告手当を支払わずに即時解雇することが可能です。
また、以下の労働者に対しては、解雇予告をする必要がありません。
〈解雇予告を必要としない労働者〉・日々雇い入れられる者・二カ月以内の期間を定めて使用される者・季節的業務に四カ月以内の期間を定めて使用される者・試用期間中の者(一四日以内) 試用期間中であっても、働き始めて一五日以上経っていれば解雇予告が必要となりますので、注意が必要です。
ちなみに解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の三つがあります。このうち整理解雇とは、事業の縮小など、経営上の理由で行うものです。懲戒解雇は、労働者が服務規律違反など経営秩序に反した場合、その制裁として行うものです。普通解雇は、整理解雇・懲戒解雇以外の理由で、やむを得ず行うものです。
パート・アルバイトが退職するときの実務
パート・アルバイトが退職する際、パート・アルバイトからの請求があった場合には、七日間以内に賃金を支払わなくてはなりません。その退職が、自己都合によるものであっても、雇い止めであっても、解雇であっても同じです。
また、積み立て金や保証金など、本人の権利に属するものがあるならば、すべて本人に返さなければなりません。退職するパート・アルバイト本人に対して、会社は次の書類を交付したり、返還したりします。
・雇用保険被保険者証(被保険者であり、会社で預かっている場合、返還) ・離職票(被保険者の場合、交付) ・厚生年金手帳(被保険者であり、会社が保管している場合、返還) ・源泉徴収票(交付) ・退職証明書(パートから請求があった場合に交付)
なお、退職証明書の記載事項は、 使用期間、 業務の種類、 その事業における地位、 賃金、 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)となりますが、本人が希望しない事項を記入してはいけません。
一方、退職者からは、次の書類等を返還させます。
・健康保険被保険者証(被保険者の場合〈被扶養者分も〉) ・会社が発行した身分証明書、通行証、従業員章(バッジ)など ・会社が貸与した作業服、制服、印鑑など まれに、退職した本人の私物が会社に残ってしまっていることがあります。
その場合、仮に本人との連絡がつかなくても、勝手に処分することには問題があります。本人にとっては大事なものかもしれませんし、後で取りに来る可能性もあります。生鮮品などを除き、しばらくは預かっておいたほうがよいでしょう。
まとめ
「相思相愛」でプラスのスパイラルを回せ!相思相愛の目的は
冒頭でも述べたように、本書の真のテーマはコミュニケーションです。人にはそれぞれ、固有の能力があります。パート・アルバイトであっても、単に働く立場が違うだけで、固有の能力があることは同じです。
そんな個々の社員の能力は、コミュニケーションを良くすることで、より発揮されやすくなるものです。また、個々の能力が有機的に絡み合い、組織力となって、より大きなパワーを発揮します。
経済情勢が悪化するなか、多くの企業は「人件費を潤沢にかけられる」状況にありません。少しでも利益を出すために、最少の人員数で仕事を回すことが求められています。
一〇人で一二人分、一三人分の仕事をしなくては、生き残れない時代なのです。一〇人で一二人分、一三人分の仕事をする際、それが働く人の共感を得ない「労働強化」となってしまってはいけません。
働く人の意欲がなえ、逆に生産性が低くなってしまいます。そうでなく、仕組みややり方を変えることで、作業効率を高めることが重要です。
その際、仕組みややり方の変更に加え、「働く人の意欲を高めてお互いが自然と協力し合えるような関係を作り、個々人の力も、組織力も、無理なく高めていきましょう」というのが本書の主旨。そして、その鍵を握るのがコミュニケーション、それも「相思相愛」のコミュニケーションであるのです。
マネジメントは愛情がすべて
「相思相愛」の関係が上手に作れると、さまざまなものがプラスのスパイラルを描くようになってきます。お互いが思いやり、働く仲間やお客さまに「善かれ」と思う行動を、自然ととるようになるのです。
また、個々人の働きがいや、やりがい、モチベーションが高まります。その結果、職場全体が活気あふれる、思いやりに満ちた場に変わります。
こうした職場で働けることは、パート・アルバイトにとっても、上司にとっても、幸せなことです。同時に、個々の、そして組織の、仕事の質を高めます。
生産性が上がり、お客さまからの評価も高くなり、さらなる売上や利益という形で還元されます。このスパイラルを作る「相思相愛」の最初のひと押しは、再三述べてきたように、上司あるいはマネジャーから行います。
まずは上司から、部下であるパート・アルバイトを愛するのです。愛するとは、大きな心で、人として相手を受け入れていくこと。
きちんと観ること。認めること。認めているということを、プラスであれマイナスであれ“評価”の言葉で、確実に表現していくことです。
もちろん、マネジメントするパート・アルバイトの人数が増えれば、こまやかな対応は物理的に不可能となってくるでしょう。
そんな場合は、自分のかわりにパート・アルバイトをマネジメントするパート・リーダーを育成したり、部下の正社員をリーダーとして登用します。
とにもかくにも、働く側のパート・アルバイトが「一人の働く人として、誰かにきちんと見てもらえ、認められている」と、実感できることが大切です。
本書で記した「一〇ステップ 相思相愛マネジメント」は、パート・アルバイトと上司あるいは企業が、そんな「相思相愛」関係になり、皆がハッピーになるための具体的な方法です。ぜひ、実践してみてください。
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